説明

軌道敷管理作業機

【課題】軌道上を走行しながら、軌道敷地内に植生された植物の管理作業を効率よく行うことのできる軌道敷管理作業機を提供する。
【解決手段】軌道1上を走行しながら軌道敷地S内を管理作業する軌道敷管理作業機であって、軌道敷地S内に植生された植物4を刈り取る刈り取り部40と、刈り取られた植物4を収容する収容部50と、刈り取り部40と収容部50間を接続する輸送管60を備える。軌道1上を走行する下部走行体20の上に上部旋回体30を旋回可能に搭載し、収容部50、輸送管60を上部旋回体30に搭載し、刈り取り部40を下部走行体20の進行方向前方に位置させて上部旋回体30から支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道走行車輪により軌道上を走行し、軌道敷地内の管理作業を行う軌道敷管理作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両が走行しない深夜時間帯に軌道上を低速で走行させ、鉄道車両が走行する前記軌道や鉄道車両に電力を供給する架線を保守点検する軌道作業車が知られている。例えば特許文献1に開示された軌道作業車は、軌道上を走行する軌道巡回車と、軌道巡回車に牽引される軌道台車と、軌道巡回車と軌道台車を連結する連結装置とを備え、補修に必要な搬送物を軌道台車に搭載し、軌道巡回車で作業現場まで運搬し、作業現場で補修作業を行うことができるようになっている。
【0003】
また、特許文献2に開示された軌道作業車は、道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の鉄輪を備え、道路走行用には鉄輪を格納してタイヤ車輪により道路上を走行し、軌道走行時には鉄輪を軌道に接触させて張り出し、鉄輪又はタイヤ車輪を駆動して軌道上を走行させ、走行体に備えた作業台上で高所作業、例えばトロリ線の保守点検作業を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−237969号公報
【特許文献2】特開2007−50859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、都市の公共交通システムとして、主に市街地の道路上に敷設された軌道を走行する路面電車が、環境負荷の軽減、低床車両によるバリアフリー及び交通渋滞緩和の観点から、近年再評価されており、中心市街で自動車の乗り入れを禁止し公共交通と歩行者のみを交通可能としたトランジット化も検討されている。
【0006】
さらに、路面電車の再評価に合わせるように、都市のヒートアイランド現象の緩和や都市景観の向上に貢献する軌道敷緑化が推進されており、鹿児島市の軌道敷緑化事業は先進事例として全国各都市から注目を集めている。この軌道敷緑化は、軌道敷地内に芝生を植生するもので、従来の軌道敷の保守点検作業に加えて、散水、施肥、刈り取りなど、植生した芝生の管理作業が新たに発生する。しかしながら、これらの管理作業は専ら作業員の人手に頼っており、その負担が大きく、軌道敷地の緑化を推進する上で大きな課題とされていた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、軌道上を走行しながら、軌道敷地内に植生された植物の管理作業を効率よく行うことのできる軌道敷管理作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る軌道敷管理作業機は、軌道上を走行しながら軌道敷地内を管理作業する軌道敷管理作業機であって、軌道敷地内に植生された植物を刈り取る刈り取り部と、刈り取られた植物を収容する収容部と、刈り取り部と収容部間に接続されている輸送管を備えることを最も主要な特徴とする。
【0009】
本発明に係る軌道敷管理作業機によると、軌道上を走行しながら、軌道敷地内に植生された植物を刈り取り部によって刈り取り、刈り取った植物を、輸送管を通して収容部に収容し、これにより、軌道敷地内に植生された植物の管理作業を効率よく行うことができる。
【0010】
本発明に係る軌道敷管理作業機は、軌道上を走行する下部走行体と、下部走行体の上に旋回可能に搭載された上部旋回体とを備え、上部旋回体に前記収容部および輸送管が搭載され、下部走行体の進行方向前方に位置して上部旋回体から前記刈り取り部が支持されていることを第2の特徴とする。
【0011】
往路の軌道上を下部走行体により走行しながら、進行方向前方の刈り取り部によって、往路の軌道敷地に植生された植物の刈り取り作業を行い、その後、往路に隣接する復路の軌道に下部走行体を同じ向きのまま乗り移らせ、上部旋回体を旋回させて、刈り取り部を下部走行体の進行方向前方に位置させることができる。そして、当該姿勢で、復路の軌道上を下部走行体により走行しながら、進行方向前方の刈り取り部によって、復路の軌道敷地に植生された植物の刈り取り作業を行うことができる。
【0012】
本発明に係る軌道敷管理作業機は、前記刈り取り部が、軌道の内側敷地に位置する中央刈り取りユニットと、軌道の側部敷地に位置し、中央刈り取りユニットに対し上方へ折り畳み可能に連結された側部刈り取りユニットとから構成されていることを第3の特徴とする。
【0013】
軌道敷地内に例えば電停プラットホームの出っ張り等の障害物がある場合には、障害物がある側の側部刈り取りユニットを上方へ折り畳み、これにより障害物を回避することができる。
【0014】
本発明に係る軌道敷管理作業機は、前記刈り取り部における刈刃が、回転刃または往復動するバリカン刃から構成されていることを第4の特徴とする。
【0015】
本発明に係る軌道敷管理作業機は、前記刈り取り部における刈刃の高さを調整する高さ調整機構が設けられていることを第5の特徴とする。
【0016】
本発明に係る軌道敷管理作業機は、前記輸送管内に収容部へ向かう吸引力を発生させる吸引力発生手段が設けられていることを第6の特徴とする。
【0017】
本発明に係る軌道敷管理作業機は、散水機構が設けられていることを第7の特徴とする。
【0018】
本発明に係る軌道敷管理作業機は、施肥手段が設けられていることを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る軌道敷管理作業機によると、往路および復路の各軌道上を走行しながら、軌道敷地内に植生された植物を刈り取りし、刈り取った植物を刈り取り部から収容部に輸送管を介して回収することができ、軌道敷地内の植物の管理作業を効率よく行うことができるという優れた効果を奏する。
【0020】
また、軌道敷地を管理作業する作業者の負担および作業コストが軽減され、軌道敷地の緑化促進に大きく寄与するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を示すもので、軌道敷管理作業機の正面図、
【図2】図1に示す軌道敷管理作業機の側面図、
【図3】図1に示す軌道敷管理作業機の平面図、
【図4】図1に示す軌道敷管理作業機の刈り取り部における折り畳み機構を示す要部拡大図、
【図5】図4に示す刈り取り部の折り畳み機構付近を示す要部、
【図6】折り畳み機構の作用を示す軌道敷管理作業機の正面図、
【図7】往路の軌道敷地内の芝刈り取り作業を示す平面図、
【図8】基地内で上部旋回体を180度旋回した様子を示す平面図、
【図9】復路の軌道敷地内の芝刈り取り作業を示す平面図、
【図10】本発明の第2実施形態を示すもので、散水作業を合わせて行う様子を示す側面図、
【図11】本発明の第3実施形態を示すもので、施肥作業を合わせて行う様子を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1ないし図3において、符号1は路面電車用の軌道、符号10は軌道敷管理作業機を示している。
【0023】
図1に示す舗装道路には、中央分離帯2を挟んで、図7に示すように、二条のレール3,3からなる往路の軌道1と、二条のレール3,3からなる復路の軌道1が隣接して敷設されている。図3に示すように、各軌道1の軌道敷地S内には、レール3,3の内側敷地S1と、レール3,3の側方の側部敷地S2,S2にそれぞれ芝4が植生されている。芝4の植生方法としては、ブロック表面に芝生を植生させた緑化基盤を多数軌道敷地S内に敷き込む等の方法がある。
【0024】
軌道敷管理作業機10は、軌道1上を走行しながら軌道敷地S内を管理作業する作業機であって、図2に示すように、下部走行台車20と、上部旋回体30と、芝刈り取り部40と、芝収容コンテナ50と、輸送菅60A・・・とを備える基本構成とされている。
【0025】
下部走行台車(下部走行体)20は、軌道1のレール3上を走行する軌道走行車輪21を左右前後に備えるとともに、上部旋回体30に搭載されたエンジン33により図示しない油圧ポンプ等が駆動され、この油圧ポンプ等により駆動される図示しない油圧モータによって、各軌道走行車輪21・・・が駆動され、軌道1上を走行するように構成されている。
【0026】
下部走行台車20の上面には、旋回軸22を介して、前記上部旋回体30が180度旋回可能に搭載支持されている。上部旋回体30は、作業床フレーム31が旋回軸22に対しエンジン33からの駆動力により図示しないチェーンおよびスプロケットを介して180度旋回可能に支持されている。作業床フレーム31の上面の進行方向前方寄りに運転席32が取り付けられている。また、運転席32の後方で作業床フレーム31の上面中央付近に、左右にエンジン33と送風機34とが搭載され、エンジン33と送風機34の後方で作業床フレーム31の上面後部に前記芝収容コンテナ50が搭載されている。
【0027】
送風機34は、それぞれファンを内蔵する第1ケーシング34Aと第2ケーシング34Bを備え、各第1、第2ケーシング34A、34Bは、図3に示す枠体34C内に配置されるとともに、エンジン33からの駆動力によって回転する回転軸34Dによって、それらのファンが回転駆動されるようになっている。枠体34Cは、図2に示す支柱34Eによって四隅が支持されると共に、油圧シリンダ34Fによって枠体34Cが上昇操作されることでエンジン33からの駆動力が回転軸34Dに伝達され、枠体34Cが下降操作されることでエンジン33からの駆動力が回転軸34Dに伝達されないようになっている。運転席32の前方には、各種操作を行う操作ハンドル35が設けられている。
【0028】
芝刈り取り部40は、図1ないし図3に示すように、下部走行台車20の進行方向前方に位置し、上部旋回体30の前部から支持されている。芝刈り取り部40は、軌道敷地S内に植生し、成長した芝4を所定の高さに刈り取るもので、内側敷地S1内の芝4を刈り取る中央部刈り取りユニット41と、左右の側部敷地S2の芝4を刈り取る側部刈り取りユニット42,42とに分割されている。
【0029】
中央部刈り取りユニット41には、軌道1と直角方向で左右に延びる箱形ユニットの内部に刈刃収容室43Aが設けられ、刈刃収容室43Aは、前面が開口すると共に、区画案内板43aにより複数(図示例では4つ)の室に区画されている。各室には各室を跨る回転軸44Aにより同時に回転する刈刃45が収容されている。回転軸44Aは各区画案内板43aを左右に貫通し、軸受44aにより回転自在に支持されている。
【0030】
左右の側部刈り取りユニット42には、中央部刈り取りユニット41と同じく、箱形ユニットの内部に刈刃収容室43Bが設けられ、各刈刃収容室43Bは、前面が開口し、区画案内板43aにより複数の室(図示例では2つ)に区画されている。各室には各室を跨る回転軸44Bにより同時に回転する刈刃45が収容され、回転軸44Bは区画案内板43aを左右に貫通し、軸受44bにより回転自在に支持されている。
【0031】
中央部刈り取りユニット41には、同箱形ユニットを水平支持する支持フレーム46が設けられている。支持フレーム46は、左右に延びる上下の水平部材46A,46Bと、上下の水平部材46A,46Bに連結された左右一対の垂直部材46C,46Cと、上方の水平部材46Aから前方下向きに延びる左右一対の前後部材46D,46Dと、左右一対の前後部材46D,46Dの前端に連結された前方水平部材46Eとから構成されている。
【0032】
支持フレーム46の各垂直部材46C,46Cの背面には、芝刈り取り部40全体を支持する上下の互いに平行な連結アーム47A,47Bの一端がピン結合され、連結アーム47A,47Bの各他端は作業床フレーム31の前面にピン結合されている。上方の各連結アーム47Aの前端寄りに上下用シリンダ36の伸縮ロッド36aの先端がピン結合され、上下用シリンダ36の後端が作業床フレーム31の前面に立設された支柱37の上端にピン結合されている。
【0033】
これにより、上下用シリンダ36の伸縮ロッド36aの縮小により、連結アーム47A,47Bを介して、中央部刈り取りユニット41を上昇させ、上下用シリンダ36の伸縮ロッド36aの伸長により、連結アーム47A,47Bを介して、中央部刈り取りユニット41を下降させ、これにより軌道敷地Sからの各刈刃45の高さを調整することができる。前記上下の連結アーム47A,47Bと、上下用シリンダ36は、刈り取り部40の刈刃45の高さを調整する高さ調整機構を構成する。
【0034】
中央部刈り取りユニット41、左右の側部刈り取りユニット42の底面と軌道敷地Sとの間には、所定の隙間hが設けられている。中央部刈り取りユニット41の上面左右端部、左右の側部刈り取りユニット42の上面内側端部(刈刃収容室43A寄り)には、それぞれ、図4および図5に示すように、それぞれの各刈刃45を回転駆動する油圧モータ48が搭載されている。油圧モータ48は、エンジン33の駆動による油圧により駆動され、同駆動力がチェーン48a、スプロケット48bを介して各刈刃45の回転軸44A,44Bに伝達されるようになっている。なお、チェーン48aおよびスプロケット48bは、チェーンカバー48cにより覆われている。
【0035】
中央部刈り取りユニット41と左側の側部刈り取りユニット42との間、中央刈り取りユニット41と右側の側部刈り取りユニット42との間には、それぞれ回動連結軸80が設けられている。中央部刈り取りユニット41の上面左右端部には、前後の水平部材46E,46B間に油圧モータ48を跨るように連結支持部材46Fが取り付けられ、これに対面する左右の側部刈り取りユニット42の上面端部にも、前後の水平部材46E,46B間に油圧モータ48を跨るように連結支持部材46Fが取り付けられている。そして、両連結支持部材46F,46F間に上記回動連結軸80が連結片を介して取り付けられている。
【0036】
また、各側部刈り取りユニット42側の後方の水平部材46Bには、左右の側部刈り取りユニット42,42を回動連結軸80回りに上向きに折り畳むための折り畳み用シリンダ38の伸縮ロッド38aの先端がピン結合され、折り畳み用シリンダ38の後端は中央部刈り取りユニット42の支持フレーム46の垂直部材46Cの上端側面にピン結合されている。
【0037】
これにより、折り畳み用シリンダ38の伸縮ロッド38aの縮小により、図6に示すように、中央部刈り取りユニット41に対し、左右の側部刈り取りユニット42,42を回動連結軸80回りに独立して回動させ、上向きの折り畳み姿勢に保持し、また、折り畳み用シリンダ38の伸縮ロッド38aの伸長により、左右の折り畳み姿勢の側部刈り取りユニット42,42を回動連結軸80回りに回動させ、図1に示す水平姿勢に戻すようになっている。
【0038】
中央部刈り取りユニット41の背面には、図3に示すように、刈刃収容室43Aの右側(運転姿勢の右手側)の各室に連通する第1チャンバー室49A、左側(運転姿勢の左手側)の各室に連通する第2チャンバー室49Bがそれぞれ設けられている。右側の第1チャンバー室49Aの後端には送風機34の側方に取り回された第1輸送管60Aの一端が、左側の第2チャンバー室49Bの後端にはエンジン33の側方に取り回された第2輸送管60Bの一端がそれぞれ接続されている。第1輸送管60Aの他端は芝収容コンテナ50の右側側面に、第2輸送管60Bの他端は芝収容コンテナ50の左側面にそれぞれ接続されている。
【0039】
右側の側部刈り取りユニット42の背面には、刈刃収容室43Bの各室に連通する第3チャンバー室49Cが設けられ、左側の側部刈り取りユニット42の背面には、刈刃収容室43Bの各室に連通する第4チャンバー室49Dが設けられている。第3チャンバー室49Cの後端には送風機34の側方に取り回された第3輸送管60Cの一端が、第4チャンバー室49Dの後端にはエンジン33の側方に取り回された第4輸送管60Dの一端がそれぞれ接続されている。第3輸送管60Cの他端は芝収容コンテナ50の右側側面に、第4輸送管60Dの他端は芝収容コンテナ50の左側面にそれぞれ接続されている。
【0040】
中央部刈り取りユニット41の右側(運転姿勢の右手側)の第1チャンバー室49Aの上面には、第1ケーシング34Aから右に取り回された第1送風管70Aの一方の分岐管70Cが接続されている。この第1送風管70Aの他方の分岐管70Cは、右側の側部刈り取りユニット42の第3チャンバー室49Cの上面に接続されている。各分岐管70Cの先端は、それら第1チャンバー室49A、第3チャンバー室49C内にそれぞれ下向きに一旦延びて後方へ屈曲されている。
【0041】
また、中央部刈り取りユニット41の左側(運転姿勢の左手側)の第2チャンバー室49Bの上面には、第2ケーシング34Bから左に取り回された第2送風管70Bの一方の分岐管70Dが接続されている。この第2送風管70Bの他方の分岐管70Dは、左側の側部刈り取りユニット42の第4チャンバー室49Dの上面に接続されている。各分岐管70Dの先端は、それら第2チャンバー室49B、第4チャンバー室49D内にそれぞれ下向きに一旦延びて後方へ屈曲されている。
【0042】
これにより、送風機34の各ファンの駆動により第1および第2送風管70A,70B内に発生した圧力風が、第1〜第4チャンバー室48A〜48D内で後方へ向けて噴出され、第1〜第4輸送管60A〜60Dへ向かう吸引力を第1〜第4チャンバー室48A〜48D内に発生させるようになっている。それら、送風機、送風管、チャンバー室は、芝収容コンテナに向かう吸引力を各輸送管に発生させる吸引力発生手段を構成する。
【0043】
作業床フレーム31の上面後部に搭載された芝収容コンテナ50は、図示しない水平移動機構により軌道1近くの路上に待機するトラックの荷台の上方に芝収容コンテナ50を水平移動させ、底面の蓋を開口して、内部の芝4をトラックの荷台上に全部排出することができるようになっている。また、別の手段として、底面の蓋を開口させることなく、水平移動させた芝収容コンテナ50を図示しないコンテナ回転リンク機構により傾けて、内部の芝4をトラックの荷台上に全部排出する構成とすることもできる。
【0044】
次に、以上のように構成された軌道敷管理作業機10を用いて、軌道敷地S内の芝4を刈り取り作業する方法について、図7ないし図9を参照して説明する。
【0045】
軌道敷地S内の芝4の刈り取り作業は、最初に、図7に示すように、往路L1の軌道1を走行して往路L1の軌道敷地S内の芝4を刈り取り作業し、次いで、図8に示すように、基地K内で上部旋回体30を180度旋回させて芝刈り取り部40を復路L2の進行方向前方に向け、次いで、図9に示すように、復路L2の軌道1に移り、復路L2の軌道1を走行しながら軌道敷地S内の芝4を刈り取り作業して行う。
【0046】
最初に往路L1の軌道1のスタート地点に軌道敷管理作業機10を移動させ、軌道敷地Sに植生された芝4の高さに合わせて、左右の上下用シリンダ36により、芝刈り取り部40の各刈刃45の高さを調整する。
【0047】
エンジン33を始動し、送風機34の各ファンを回転駆動して、第1、第2送風管70A,70Bから第1〜第4チャンバー室49A〜49D内に後ろ向きの圧力風を噴出させ、負圧により第1〜第4チャンバー室49A〜49D内に第1〜第4輸送管60A〜60Dへ向かう吸引力を発生させる。油圧モータ48の駆動を開始し、中央部刈り取りユニット41の各刈刃45、左右の側部刈り取りユニット42の各刈刃45をそれぞれ回転させる。同時に、油圧モータにより下部走行台車20を低速走行させる。
【0048】
低速走行に伴い、内側敷地S1内の芝4が中央部刈り取りユニット41の刈刃収容室43A内に、側部敷地S2,S2の芝4が側部刈り取りユニット42,42の刈刃収容室43B,43B内にそれぞれ案内され、回転する各刈刃45により、それぞれ所定の高さまで刈り取られる。
【0049】
刈り取られた芝4は、後方の第1〜第4チャンバー室49A〜49Dに吸引され、そこから第1〜第4輸送管60A〜60D内を輸送され、芝収容コンテナ50に排出される。このように、往路の軌道1上を低速走行しながら、前方の芝刈り取り部40において軌道敷地S内の芝4を全幅に亘り所定の高さに刈り取るとともに、刈り取った芝4を、各輸送管を介して後方の芝収容コンテナ50にことごとく収容することができる。
【0050】
また、軌道敷地S内に落ち葉がある場合には、各刈刃収容室43A,43Bに発生する吸引力により、落ち葉を吸引して、各輸送管を通して芝収容コンテナ50内に回収することができる。
【0051】
軌道敷地S内の左右いずれかの側部敷地S2の途中に障害物(電停プラットホームのブロック等)がある場合には、図6に示すように、障害物がある側の側部刈り取りユニット42を、折り畳み用シリンダ38により独立して回動連結軸80回りに上向きに回動させて折り畳み、同姿勢を保持して障害物を回避することができる。
【0052】
このようにして軌道敷管理作業機10により、往路L1の軌道敷地S内の芝刈り取り作業が終了したら、図8に示すように、軌道1の引込み線L3に従って基地K内に軌道敷管理作業機10を一旦移動させ、基地K内で下部走行台車20に対し旋回軸22回りに上部旋回体30を180度旋回させる。これにより、復路L2の軌道1に対し、芝刈り取り部40を下部走行台車30の進行方向前方に位置させ、上部旋回体30上の運転席32および操作ハンドル35を進行方向に向けることができる。
【0053】
上部旋回体30を180度旋回させたら、基地Kを出発し、引き出し線L3に従って復路L2の軌道1に乗り移り、復路L2の軌道敷地Sの芝4の刈り取り作業を行う。
【0054】
芝収容コンテナ50が刈り取った芝4で一杯になったら、軌道1近くの路上に待機するトラックの荷台の上方に芝収容コンテナ50を、図示しない水平移動機構により水平移動させて、底面の蓋を開口し、内部の芝4をトラックの荷台上に全部排出する。
【0055】
軌道敷地S内の芝刈り取り作業においては、刈り取った芝を人力で搬出する場合や搬出用トラックが待機していない場合も想定される。その場合、刈り取った芝を収容する収容部として、可撓性のある袋、例えばナイロン製の網袋を用いてよい。このナイロン製の網袋は、芝収容コンテナ50の内側に着脱可能に装着し、あるいは芝収容コンテナ50の代わりに、支持部材を介して作業床フレーム31の上面後部に搭載し、第1〜第4輸送管60A〜60Dの出口に装着するようにしてもよい。
【0056】
以上の実施形態では、軌道敷地S内の芝刈り取り作業の例を説明したが、本発明の軌道敷管理作業機10を軌道敷地S内の他の管理作業にも用いることができる。
【0057】
図10は、本発明の軌道敷管理作業機の第2実施形態を示すもので、本実施形態の軌道敷管理作業10には、散水機構90が装備されている。散水機構90は、貯水タンク91と動力式噴霧器92とから構成されている。貯水タンク91は作業床フレーム31の上面後部に芝収容コンテナ50と並び搭載され、動力式噴霧器92は作業床フレーム31の張り出し部31Aに搭載されている。動力式噴霧器92はエンジン33からの動力により、貯水タンク91内の水を、附属の給水パイプ93、軌道敷地Sと略全幅に延びる水平パイプ94を通して、水平パイプ94の下面の各噴霧ノズル95から、軌道敷地S内全体に散水するようになっている。
【0058】
これにより、芝4の刈り取り作業を行いながら、同時に刈り取った後の芝面に対し散水作業を行うことができる。なお、本実施形態の軌道敷管理作業機は、刈り取り部40、芝収容コンテナ50、輸送管60A・・・等を脱着式として、エンジン33、貯水タンク91、動力式噴霧器92、給水パイプ93、水平パイプ94、噴霧ノズル95を搭載し、専用の散水作業機として利用することもできる。
【0059】
図11は、本発明の軌道敷管理作業機の第3実施形態を示すもので、本実施形態の軌道敷管理作業機10には、施肥手段100が設けられている。施肥手段100は、作業床フレーム31の張り出し部31Aに肥料ホッパー101が搭載され、肥料ホッパー101から続くホース102の先端に肥料散布口103が設けられている。軌道1に沿って軌道敷管理作業機10を低速走行させながら、肥料ホッパー101に投入された肥料を、エンジン33からの動力により肥料散布口103から軌道敷地S内の芝4に施肥する施肥作業を同時または単独に行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態の軌道敷管理作業機は、刈り取り部40、芝収容コンテナ50、輸送管60A・・・等を脱着式として、エンジン33、肥料ホッパー101、ホース102を搭載し、専用の施肥作業機として利用することもできる。
【0061】
かくして、本発明の軌道敷管理作業機によれば、往路および復路の軌道敷地内に植生した芝等の植物に対し、軌道上を走行させながら、刈り取り〜散水〜施肥等の一連の管理作業を効率よく行うことができる他、軌道上に落葉がある場合には効率よく回収することができる。また、刈り取った芝等の植物は、輸送管を通して収容コンテナに効率よく回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、軌道敷地内に植生した植物を維持管理する軌道敷管理作業機として、利用可能である。また、軌道敷地内の落ち葉を回収する落葉回収機としても、利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 軌道
2 中央分離帯
3 レール
4 芝
10 軌道敷管理作業機
20 下部走行台車(下部走行体)
21 軌道走行車輪
22 旋回軸
30 上部旋回体
31 作業床フレーム
31A 張り出し部
32 運転席
33 エンジン
34 送風機
34A 第1ケーシング
34B 第2ケーシング
34C 枠体
34D,44A,44B 回転軸
34E 支柱
34F 油圧シリンダ
35 操作ハンドル
36 上下用シリンダ
36a,38a 伸縮ロッド
37 支柱
38 折り畳み用シリンダ
40 芝刈り取り部
41 中央部刈り取りユニット
42 側部刈り取りユニット
43A,43B 刈刃収容室
43a 区画案内板
44a,44b 軸受
45 刈刃
46 支持フレーム
46A,46B,46E 水平部材
46C 垂直部材
46D 前後部材
46F 連結支持部材
47A,47B 連結アーム
48 油圧モータ
48a チェーン
48b スプロケット
48c チェーンカバー
49A 第1チャンバー室
49B 第2チャンバー室
49C 第3チャンバー室
49D 第4チャンバー室
50 芝収容コンテナ(収容部)
60 輸送管
60A 第1輸送管
60B 第2輸送管
60C 第3輸送管
60D 第4輸送管
70A 第1送風管
70B 第2送風管
70C,70D 分岐管
80 回動連結軸
90 散水機構
91 貯水タンク
92 動力式噴霧器
93 給水パイプ
94 水平パイプ
95 噴霧ノズル
100 施肥手段
101 肥料ホッパー
102 ホース
103 肥料散布口
h 隙間
K 基地
L1 往路
L2 復路
L3 引き込み線
S 軌道敷地
S1 内側敷地
S2 側部敷地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行しながら軌道敷地内を管理作業する軌道敷管理作業機であって、軌道敷地内に植生された植物を刈り取る刈り取り部と、刈り取られた植物を収容する収容部と、刈り取り部と収容部間に接続されている輸送管を備えることを特徴とする軌道敷管理作業機。
【請求項2】
軌道上を走行する下部走行体と、下部走行体の上に旋回可能に搭載された上部旋回体とを備え、上部旋回体に前記収容部および前記輸送管が搭載され、下部走行体の進行方向前方に位置して上部旋回体から前記刈り取り部が支持されていることを特徴とする、請求項1記載の軌道敷管理作業機。
【請求項3】
前記刈り取り部が、軌道の内側敷地に位置する中央刈り取りユニットと、軌道の側部敷地に位置し、中央刈り取りユニットに対し上方へ折り畳み可能に連結された側部刈り取りユニットとから構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の軌道敷管理作業機。
【請求項4】
前記刈り取り部における刈刃が、回転刃または往復動するバリカン刃から構成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の軌道敷管理作業機。
【請求項5】
前記刈り取り部における刈刃の高さを調整する高さ調整機構が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の軌道敷管理作業機。
【請求項6】
前記輸送管内に収容部へ向かう吸引力を発生させる吸引力発生手段が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の軌道敷管理作業機。
【請求項7】
散水機構が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の軌道敷管理作業機。
【請求項8】
施肥手段が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の軌道敷管理作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−166887(P2010−166887A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14481(P2009−14481)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(592264237)松元機工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】