農作業機
【課題】動力伝達軸体の折れ角度を一定に維持できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機１は、前進作業位置および後退作業位置に移動可能で土作業手段２を支持する可動機枠21を備える。農作業機１は、可動機枠21に対して回動可能で中間入力軸14を支持する中間入力軸支持体15を備える。中間入力軸支持体15には、動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21との当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する回動規制体61を設ける。
【解決手段】農作業機１は、前進作業位置および後退作業位置に移動可能で土作業手段２を支持する可動機枠21を備える。農作業機１は、可動機枠21に対して回動可能で中間入力軸14を支持する中間入力軸支持体15を備える。中間入力軸支持体15には、動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21との当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する回動規制体61を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、トラクタ等の走行車の走行により移動しながら土作業手段で土作業をする農作業機に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、後退作業可能な農作業機としては、例えばトラクタ等の走行車に連結される機枠と、機枠に２本の回動アーム体を介して連結された可動機枠と、可動機枠にて支持され中間入力軸側から動力を受けて土作業をする土作業手段と、一端側が入力軸に接続され他端側が可動機枠に固定された支持体にて支持された中間入力軸に接続された動力伝達軸体と、可動機枠を前進作業位置、後退作業位置および格納非作業位置に固定するための固定手段とを備えた畦塗り機が知られている（例えば、特許文献１参照）。
【特許文献１】特開２００２−７８４０３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、上記従来の農作業機のように、中間入力軸を支持する中間入力軸支持体が可動機枠に対して固定されていると、安定した作業ができないおそれがある。そこで、中間入力軸支持体を可動機枠に対して回動可能とすることが考えられるが、この場合、動力伝達軸体の折れ角度、つまり前進・後退作業時における動力伝達軸体のジョイント部の折れ角度が問題となる。
【０００４】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、動力伝達軸体の折れ角度を一定に維持でき、安定した作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
請求項１記載の農作業機は、走行車の走行により移動しながら土作業手段で土作業をする農作業機であって、前進作業時には前記土作業手段が前記走行車の前進走行に基づいて土作業をする前進作業位置に設定され、後退作業時には前記土作業手段が前記走行車の後退走行に基づいて土作業をする後退作業位置に設定され、前記土作業手段を支持する可動機枠と、この可動機枠に対して回動可能となっており、中間入力軸を支持する中間入力軸支持体と、一端側が入力軸に接続され、他端側が前記中間入力軸に接続された屈曲自在の動力伝達軸体と、前記中間入力軸支持体に設けられ、前記動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように前記可動機枠との当接により前記可動機枠に対する前記中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体とを備えるものである。
【０００６】
そして、動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように可動機枠との当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体が中間入力軸支持体に設けられているため、動力伝達軸体の折れ角度が一定に維持され、安定した作業が可能である。
【０００７】
請求項２記載の農作業機は、請求項１記載の農作業機において、可動機枠は、第１受面部および第２受面部を有し、回動規制体は、前進作業時に前記第１受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第１回動規制部および後退作業時に前記第２受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第２回動規制部を有するものである。
【０００８】
そして、前進作業時において第１回動規制部と第１受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制可能であり、後退作業時において第２回動規制部と第２受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制可能である。
【０００９】
請求項３記載の農作業機は、請求項２記載の農作業機において、第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されているものである。
【００１０】
そして、第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されているため、可動機枠と回動規制体との当接の際における衝撃が緩和される。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１に係る発明によれば、動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように可動機枠との当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体が中間入力軸支持体に設けられているため、動力伝達軸体の折れ角度を一定に維持でき、安定した作業ができる。
【００１２】
請求項２に係る発明によれば、前進作業時において第１回動規制部と第１受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制でき、後退作業時において第２回動規制部と第２受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制できる。
【００１３】
請求項３に係る発明によれば、第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されているため、可動機枠と回動規制体との当接の際における衝撃を緩和できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【００１５】
図１および図２において、１は農作業機で、この農作業機１は、走行車であるトラクタ（図示せず）に連結して使用する牽引式のものである。そして、農作業機１は、トラクタの走行により圃場上を畦に沿って進行方向に移動しながら、片側の土作業手段２で土作業である畦塗り作業（畦修復作業）をする畦塗り機である。なお、農作業機１は、土作業手段２を前後反転させた状態でトラクタを後退走行させることにより圃場の端部でも畦塗り作業を行える後退作業つまりリターン作業可能なものである（図６参照）。
【００１６】
農作業機１は、図示しないトラクタの３点リンク部（作業機昇降支持装置）に連結された機枠３を備えている。機枠３は、トップピン４を先端部に有するトップマスト５とロワピン６を先端部に有する左右のロワアーム７とにて構成された３点連結部（走行車連結部）８を有し、この３点連結部８にトラクタの３点リンク部が連結されている。また、機枠３は、軸受部９を有し、この軸受部９にてトラクタ側からの動力を入力する前後方向の入力軸10が回転可能に支持されている。入力軸10には、トラクタのＰＴＯ軸がユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続されている。
【００１７】
また、農作業機１は、長手状の１本の回動アーム体11を備えている。回動アーム体11の一端側は、機枠３に上下方向の軸12を介して上下方向の第１縦軸線（縦軸線）Ｙ1を中心として水平回動可能に連結されている。
【００１８】
さらに、農作業機１は、中間入力軸14を回転可能に支持する略箱状のギアボックス等の中間入力軸支持体15を備えている。中間入力軸支持体15は、一端側が機枠３に第１縦軸線Ｙ1を中心として水平回動可能に連結された回動アーム体11の他端側の下部に、図示しないベアリングを介して上下方向の第２縦軸線（縦軸線）Ｙ2を中心として水平回動可能に連結されている。すなわち、中間入力軸支持体15は回動アーム体11に対して第２縦軸線Ｙ2を中心として回動可能となっている。また、中間入力軸14は、中間入力軸支持体15にて回転可能に支持され、この中間入力軸支持体15の側面開口部16から突出している。さらに、中間入力軸支持体15の上面部には上方に向って突出したピン部17が形成され、このピン部17は、回動アーム体11の他端部に形成された略円弧状のピン案内孔部18内にこのピン案内孔部18に沿って移動可能に挿通されている。そして、ピン部17とピン案内孔部18の端部との当接により回動アーム体11に対する中間入力軸支持体15の回動が規制される。
【００１９】
また、農作業機１は、前進作業時に土作業手段２がトラクタの前進走行に基づいて畦塗り作業をする前進作業位置、後退作業時に土作業手段２がトラクタの後退走行に基づいて畦塗り作業をする後退作業位置、および非作業時に土作業手段２がトラクタの後方に位置する格納非作業位置に選択的に移動可能な可動機枠21を備えている。つまり、この可動機枠21は、前進作業時には所望の前進作業位置に設定され、後退作業時には所望の後退作業位置に設定され、非作業時には所望の格納非作業位置に設定されるものである。
【００２０】
図２から明らかなように、可動機枠21は、上部が回動アーム体11に水平回動可能に連結された中間入力軸支持体15の下部に、図示しないベアリングを介して上下方向の第２縦軸線（縦軸線）Ｙ2を中心として水平回動可能に連結されている。すなわち、中間入力軸支持体15は可動機枠21に対して第２縦軸線Ｙ2を中心として回動可能となっている。
【００２１】
そして、この可動機枠21にて、中間入力軸14側から動力を受けて駆動回転しながら土作業である畦塗り作業をする土作業手段２が支持されている。また、機枠３と可動機枠21とにわたって１本の屈曲自在の動力伝達軸体23が配設され、この動力伝達軸体23の一端側が機枠３側の入力軸10に接続されかつこの動力伝達軸体23の他端側が可動機枠21側の中間入力軸14に接続されている。
【００２２】
ここで、土作業手段２は、所定方向に駆動回転しながら土を耕耘して盛り上げる盛土手段であるロータリ25と、所定方向に駆動回転しながら進行方向前方のロータリ25にて盛り上げられた土を締め固めて新たな畦を形成する畦形成手段である畦塗り体（ディスク）26と、ロータリ25より進行方向前方の位置で畦上面を前処理する前処理ロータリ27とを有している。
【００２３】
また、屈曲自在の動力伝達軸体23は、入力軸10からの動力を中間入力軸14に伝達するもので、その軸方向両端側が屈曲自在の構成となっている。すなわち、動力伝達軸体23は軸方向両端側の２箇所で屈曲するものである。
【００２４】
そして、この動力伝達軸体23は、例えば軸方向に伸縮可能な伝動軸部31と、伝動軸部31の一端部に設けられた屈曲自在のジョイント部である入力軸側広角等速ジョイント部（広角ＣＶジョイント）32と、伝動軸部31の他端部に設けられた屈曲自在のジョイント部である中間入力軸側広角等速ジョイント部（広角ＣＶジョイント）33とを有している。
【００２５】
伝動軸部31は、インナーシャフトおよびアウターシャフト等にて構成されている。入力軸側広角等速ジョイント部32は、十字状をなす２個のクロスピン（スパイダ）、入力軸側ヨーク、中間ヨーク（ＣＶヨーク）および伝動軸部側ヨークにて構成されている。中間入力軸側広角等速ジョイント部33は、十字状をなす２個のクロスピン（スパイダ）、中間入力軸側ヨーク、中間ヨーク（ＣＶヨーク）および伝動軸部側ヨークにて構成されている。そして、入力軸側広角等速ジョイント部32の入力軸側ヨークには、入力軸10がそのヨークと一体に形成されることにより接続されている。中間入力軸側広角等速ジョイント部33の中間入力軸側ヨークには、中間入力軸14がスプライン嵌合により接続されている。また、動力伝達軸体23は、その略全体略円筒状の軸体カバー（図示せず）にて覆われている。
【００２６】
そして、可動機枠21が後退作業位置へ移動する際には、この可動機枠21の移動に連動して中間入力軸支持体15が回動アーム体11に対して第２の縦軸線Ｙ2を中心として回動し、この中間入力軸支持体15の回動により後退作業時における動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32の折れ角度が減少する。
【００２７】
また一方、農作業機１は、前進作業時には可動機枠21を前進作業位置に固定し、後退作業時には可動機枠21を後退作業位置に固定し、運搬時等の非作業時には可動機枠21を格納非作業位置に固定するための固定手段41を備えている。
【００２８】
固定手段41は、伸縮可能な第１伸縮固定部43と、伸縮可能な第２伸縮固定部44とを有している。第１伸縮固定部43および第２伸縮固定部44は、いずれも、孔付きのシリンダ本体45と、このシリンダ本体45内に出し入れ可能に挿入された孔付きのロッド46と、互いに一致するシリンダ本体45の孔とロッド46の孔に対して差し込む脱着可能な止めピン47とにて構成されている。
【００２９】
そして、第１伸縮固定部43の一端側は機枠３に回動可能に連結され、第１伸縮固定部43の他端側は回動アーム体11の連結軸部11aに回動可能に連結されている。第２伸縮固定部44の一端側は可動機枠21に回動可能に連結され、第２伸縮固定部44の他端側は回動アーム体11の連結軸部11aに回動可能に連結されている。
【００３０】
また、固定手段41は、前進作業時に機枠３の第１固定部49に対して可動機枠21を固定する脱着可能な第１止めピン50と、後退作業時に機枠３の第２固定部51に対して可動機枠21を固定する脱着可能な第２止めピン52とを有している。
【００３１】
また一方、農作業機１は、動力伝達軸体23の折れ角度（前進・後退作業時におけるジョイント部32，33の折れ角度）が一定になるように可動機枠21との当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する回動規制体61を備えている。
【００３２】
回動規制体61は、１ユニット化されたもので、図２に示されるように、中間入力軸支持体15の下面部に固着されている。回動規制体61は、中間入力軸支持体15の下面部に固着された水平面状の固着板部62と、この固着板部62の両側に平面視で略ハ字状をなすように設けられた垂直面状で略板状の第１回動規制部63および第２回動規制部64とを有している。
【００３３】
そして、第１回動規制部63は、前進作業時に動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21の第１受面部65との面状当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する。また、第２回動規制部64は、後退作業時に動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21の第２受面部66との面状当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する。なお、可動機枠21が有する四角パイプ状のフレーム部67の側面部の所定部位が第１受面部65および第２受面部66となっている。また、第１回動規制部63の表面部および第２回動規制部64の表面部がいずれも弾性変形可能なゴム板等の弾性板68にて構成されている。
【００３４】
次に、上記農作業機１の作用等を説明する。
【００３５】
トラクタの前進走行により土作業手段２で畦塗り作業を行う前進作業時には、図１および図３に示すように、土作業手段２を支持した可動機枠21を前進作業位置に固定手段41にて固定し、その土作業手段２を構成したロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27を所望の前進作業状態に設定する。
【００３６】
そして、トラクタを前進走行させると、農作業機１がトラクタとともに進行方向（前方）に移動し、トラクタ側からの動力が入力軸10、動力伝達軸体23、中間入力軸14および伝動手段（中間入力軸支持体15内および可動機枠21内に配設されたギア、シャフト等）を経て土作業手段２まで伝達される。
【００３７】
トラクタ側からの動力が土作業手段２に伝わると、ロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27がそれぞれ所定方向に駆動回転し、畦上面が前処理ロータリ27にて前処理され、畦塗り用の土がロータリ25にて耕耘されて畦上に盛り上げられ、この盛り上げられた土が畦塗り体26にて締め固められ、新たな畦が形成される。
【００３８】
このような前進作業時において、２つのジョイント部32，33で屈曲した状態で回転する動力伝達軸体23は、一直線状になろうとするが、回動規制体61の第１回動規制部63と可動機枠21の第１受面部65との面状当接により、固定状態の可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の第２縦軸線Ｙ2を中心とする回動が規制され、その結果、動力伝達軸体23のジョイント部32，33の折れ角度（使用角度）が一定に維持される。
【００３９】
また、塗り残しがないよう圃場の端部において、トラクタの後退走行により土作業手段２で畦塗り作業を行う後退作業時（リターン作業時）には、図６に示すように、土作業手段２を支持した可動機枠21を後退作業位置に固定手段41にて固定し、その土作業手段２を構成したロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27を所望の後退作業状態に設定する。すなわち例えば、作業者は、図３ないし図６に示すように、可動機枠21を農作業機１右側の前進作業位置から農作業機１左側の後退作業位置に移動させつつ、前後反転するよう略１８０度回動させる。
【００４０】
そして、可動機枠21が後退作業位置へ移動する途中で、可動機枠21の移動に連動して中間入力軸支持体15が回動アーム体11に対して第２の縦軸線Ｙ2を中心として回動し、この中間入力軸支持体15の回動により後退作業時における動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32の折れ角度が減少する。
【００４１】
ここで、図５に示す状態は、可動機枠21が格納非作業位置および後退作業位置間の中間位置に位置した状態、すなわち可動機枠21が後退作業位置に位置する直前の状態であり、この状態では、動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32は例えば約７０°の折れ角度（図示α）をもって大きく折れ曲がっている。
【００４２】
しかし、作業者が可動機枠21をその中間位置から後退作業位置へ移動させると、図６に示すように、中間入力軸支持体15は、可動機枠21の後退作業位置への移動に連動して回動アーム体11に対して第２の縦軸線Ｙ2を中心として回動し、この中間入力軸支持体15の回動に応じて動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32の折れ角度が約４０°の折れ角度（図示β）まで減少し、これによりリターン作業時に入力軸側広角等速ジョイント部32に無理な負荷がかかるようなことがない。
【００４３】
なお、農作業機１が図５に示す状態から図６に示す状態に切り換えられる場合、回動アーム体11は機枠３に対して第１縦軸線Ｙ1を中心として回動せず所定位置に停止したままで、可動機枠21が、中間入力軸支持体15および回動規制体61と一体となってピン部17がピン案内孔部18の端部と当接するまで回動アーム体11に対して第２縦軸線Ｙ2を中心として回動する。
【００４４】
そして、この図６に示す状態でトラクタを後退走行させると、農作業機１がトラクタとともに進行方向（後方）に移動し、前進作業時の場合と同様、畦上面が前処理ロータリ27にて前処理され、畦塗り用の土がロータリ25にて耕耘されて畦上に盛り上げられ、この盛り上げられた土が畦塗り体26にて締め固められ、圃場の端部において新たな畦が形成される。
【００４５】
このような後退作業時において、２つのジョイント部32，33で屈曲した状態で回転する動力伝達軸体23は、一直線状になろうとするが、回動規制体61の第２回動規制部64と可動機枠21の第２受面部66との面状当接により、固定状態の可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の第２縦軸線Ｙ2を中心とする回動が規制され、その結果、動力伝達軸体23のジョイント部32，33の折れ角度が一定に維持される。
【００４６】
なお、農作業機１を倉庫等の保管場所まで運搬する運搬時等の格納非作業時には、図示しないが、可動機枠21を格納非作業位置に固定手段41にて固定し、ロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27を所望の格納非作業状態に設定する。このとき、ロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27は、トラクタ側方に突出せず、トラクタの後方領域内に格納された状態となる。このため、農作業機１を保管場所まで容易に運搬できる。
【００４７】
そして、上記農作業機１によれば、動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21との当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する回動規制体61が中間入力軸支持体15に設けられているため、動力伝達軸体23の折れ角度を一定に確実に維持でき、安定した畦塗り作業ができる。
【００４８】
また、可動機枠21が後退作業位置へ移動する際にこの可動機枠21の移動に連動して中間入力軸支持体15が回動アーム体11に対して回動し、この中間入力軸支持体15の回動により後退作業時における動力伝達軸体23の折れ角度が減少するため、２本の回動アーム体等を備えた従来の構成に比べて構造の簡素化を図れるばかりでなく、動力伝達軸体23の耐久性の向上を図ることができ、しかも操作性が良好である。すなわち動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32がリターン作業時に強度不足を起して損傷するようなことがなく、入力軸側広角等速ジョイント部32の耐久性が向上する。
【００４９】
また、リターン作業時に可動機枠21をトラクタ寄りの後退作業位置に固定しても、動力伝達軸体23のジョイント角度（折れ角度）が悪化せず、リターン作業時におけるトラクタの前後バランスが良好であり、安定した畦塗り作業ができる。
【００５０】
なお、農作業機１の土作業手段２は、畦塗り作業をするものには限定されず、溝掘作業等をするもの等でもよい。
【００５１】
また、前進作業時に可動機枠21が位置決め固定される前進作業位置は複数でもよく、例えば前進作業状態の土作業手段２の左右方向位置をオフセット調節可能としてもよい。また、可動機枠21は、少なくとも前進作業位置と後退作業位置とに設定可能なものであればよい。
【００５２】
さらに、農作業機１は、手動操作により人力で可動機枠21を各位置へ移動させるものには限定されず、例えば油圧シリンダ、モータ等の駆動手段からの動力で可動機枠21を移動させるようにしてもよい。
【００５３】
また、回動規制体61の回動規制部63，64は、その表面部がゴム板等の弾性板68にて構成されたものには限定されず、ゴム板等の弾性板68を有しない構成でもよく、またゴム板等の弾性板を可動機枠の受面部65，66側に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】本発明の農作業機の一実施の形態を示す平面図である。
【図２】同上農作業機の要部斜視図である。
【図３】同上農作業機の前進作業時の平面図である。
【図４】同上農作業機の可動機枠の回動途中の平面図である。
【図５】同上農作業機の可動機枠の回動途中の平面図である。
【図６】同上農作業機の後退作業時の平面図である。
【符号の説明】
【００５５】
１ 農作業機
２ 土作業手段
10 入力軸
14 中間入力軸
15 中間入力軸支持体
21 可動機枠
23 動力伝達軸体
61 回動規制体
63 第１回動規制部
64 第２回動規制部
65 第１受面部
66 第２受面部
68 弾性板
【技術分野】
【０００１】
本発明は、トラクタ等の走行車の走行により移動しながら土作業手段で土作業をする農作業機に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、後退作業可能な農作業機としては、例えばトラクタ等の走行車に連結される機枠と、機枠に２本の回動アーム体を介して連結された可動機枠と、可動機枠にて支持され中間入力軸側から動力を受けて土作業をする土作業手段と、一端側が入力軸に接続され他端側が可動機枠に固定された支持体にて支持された中間入力軸に接続された動力伝達軸体と、可動機枠を前進作業位置、後退作業位置および格納非作業位置に固定するための固定手段とを備えた畦塗り機が知られている（例えば、特許文献１参照）。
【特許文献１】特開２００２−７８４０３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、上記従来の農作業機のように、中間入力軸を支持する中間入力軸支持体が可動機枠に対して固定されていると、安定した作業ができないおそれがある。そこで、中間入力軸支持体を可動機枠に対して回動可能とすることが考えられるが、この場合、動力伝達軸体の折れ角度、つまり前進・後退作業時における動力伝達軸体のジョイント部の折れ角度が問題となる。
【０００４】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、動力伝達軸体の折れ角度を一定に維持でき、安定した作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
請求項１記載の農作業機は、走行車の走行により移動しながら土作業手段で土作業をする農作業機であって、前進作業時には前記土作業手段が前記走行車の前進走行に基づいて土作業をする前進作業位置に設定され、後退作業時には前記土作業手段が前記走行車の後退走行に基づいて土作業をする後退作業位置に設定され、前記土作業手段を支持する可動機枠と、この可動機枠に対して回動可能となっており、中間入力軸を支持する中間入力軸支持体と、一端側が入力軸に接続され、他端側が前記中間入力軸に接続された屈曲自在の動力伝達軸体と、前記中間入力軸支持体に設けられ、前記動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように前記可動機枠との当接により前記可動機枠に対する前記中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体とを備えるものである。
【０００６】
そして、動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように可動機枠との当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体が中間入力軸支持体に設けられているため、動力伝達軸体の折れ角度が一定に維持され、安定した作業が可能である。
【０００７】
請求項２記載の農作業機は、請求項１記載の農作業機において、可動機枠は、第１受面部および第２受面部を有し、回動規制体は、前進作業時に前記第１受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第１回動規制部および後退作業時に前記第２受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第２回動規制部を有するものである。
【０００８】
そして、前進作業時において第１回動規制部と第１受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制可能であり、後退作業時において第２回動規制部と第２受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制可能である。
【０００９】
請求項３記載の農作業機は、請求項２記載の農作業機において、第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されているものである。
【００１０】
そして、第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されているため、可動機枠と回動規制体との当接の際における衝撃が緩和される。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１に係る発明によれば、動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように可動機枠との当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体が中間入力軸支持体に設けられているため、動力伝達軸体の折れ角度を一定に維持でき、安定した作業ができる。
【００１２】
請求項２に係る発明によれば、前進作業時において第１回動規制部と第１受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制でき、後退作業時において第２回動規制部と第２受面部との面状当接により可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を適切に規制できる。
【００１３】
請求項３に係る発明によれば、第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されているため、可動機枠と回動規制体との当接の際における衝撃を緩和できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【００１５】
図１および図２において、１は農作業機で、この農作業機１は、走行車であるトラクタ（図示せず）に連結して使用する牽引式のものである。そして、農作業機１は、トラクタの走行により圃場上を畦に沿って進行方向に移動しながら、片側の土作業手段２で土作業である畦塗り作業（畦修復作業）をする畦塗り機である。なお、農作業機１は、土作業手段２を前後反転させた状態でトラクタを後退走行させることにより圃場の端部でも畦塗り作業を行える後退作業つまりリターン作業可能なものである（図６参照）。
【００１６】
農作業機１は、図示しないトラクタの３点リンク部（作業機昇降支持装置）に連結された機枠３を備えている。機枠３は、トップピン４を先端部に有するトップマスト５とロワピン６を先端部に有する左右のロワアーム７とにて構成された３点連結部（走行車連結部）８を有し、この３点連結部８にトラクタの３点リンク部が連結されている。また、機枠３は、軸受部９を有し、この軸受部９にてトラクタ側からの動力を入力する前後方向の入力軸10が回転可能に支持されている。入力軸10には、トラクタのＰＴＯ軸がユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続されている。
【００１７】
また、農作業機１は、長手状の１本の回動アーム体11を備えている。回動アーム体11の一端側は、機枠３に上下方向の軸12を介して上下方向の第１縦軸線（縦軸線）Ｙ1を中心として水平回動可能に連結されている。
【００１８】
さらに、農作業機１は、中間入力軸14を回転可能に支持する略箱状のギアボックス等の中間入力軸支持体15を備えている。中間入力軸支持体15は、一端側が機枠３に第１縦軸線Ｙ1を中心として水平回動可能に連結された回動アーム体11の他端側の下部に、図示しないベアリングを介して上下方向の第２縦軸線（縦軸線）Ｙ2を中心として水平回動可能に連結されている。すなわち、中間入力軸支持体15は回動アーム体11に対して第２縦軸線Ｙ2を中心として回動可能となっている。また、中間入力軸14は、中間入力軸支持体15にて回転可能に支持され、この中間入力軸支持体15の側面開口部16から突出している。さらに、中間入力軸支持体15の上面部には上方に向って突出したピン部17が形成され、このピン部17は、回動アーム体11の他端部に形成された略円弧状のピン案内孔部18内にこのピン案内孔部18に沿って移動可能に挿通されている。そして、ピン部17とピン案内孔部18の端部との当接により回動アーム体11に対する中間入力軸支持体15の回動が規制される。
【００１９】
また、農作業機１は、前進作業時に土作業手段２がトラクタの前進走行に基づいて畦塗り作業をする前進作業位置、後退作業時に土作業手段２がトラクタの後退走行に基づいて畦塗り作業をする後退作業位置、および非作業時に土作業手段２がトラクタの後方に位置する格納非作業位置に選択的に移動可能な可動機枠21を備えている。つまり、この可動機枠21は、前進作業時には所望の前進作業位置に設定され、後退作業時には所望の後退作業位置に設定され、非作業時には所望の格納非作業位置に設定されるものである。
【００２０】
図２から明らかなように、可動機枠21は、上部が回動アーム体11に水平回動可能に連結された中間入力軸支持体15の下部に、図示しないベアリングを介して上下方向の第２縦軸線（縦軸線）Ｙ2を中心として水平回動可能に連結されている。すなわち、中間入力軸支持体15は可動機枠21に対して第２縦軸線Ｙ2を中心として回動可能となっている。
【００２１】
そして、この可動機枠21にて、中間入力軸14側から動力を受けて駆動回転しながら土作業である畦塗り作業をする土作業手段２が支持されている。また、機枠３と可動機枠21とにわたって１本の屈曲自在の動力伝達軸体23が配設され、この動力伝達軸体23の一端側が機枠３側の入力軸10に接続されかつこの動力伝達軸体23の他端側が可動機枠21側の中間入力軸14に接続されている。
【００２２】
ここで、土作業手段２は、所定方向に駆動回転しながら土を耕耘して盛り上げる盛土手段であるロータリ25と、所定方向に駆動回転しながら進行方向前方のロータリ25にて盛り上げられた土を締め固めて新たな畦を形成する畦形成手段である畦塗り体（ディスク）26と、ロータリ25より進行方向前方の位置で畦上面を前処理する前処理ロータリ27とを有している。
【００２３】
また、屈曲自在の動力伝達軸体23は、入力軸10からの動力を中間入力軸14に伝達するもので、その軸方向両端側が屈曲自在の構成となっている。すなわち、動力伝達軸体23は軸方向両端側の２箇所で屈曲するものである。
【００２４】
そして、この動力伝達軸体23は、例えば軸方向に伸縮可能な伝動軸部31と、伝動軸部31の一端部に設けられた屈曲自在のジョイント部である入力軸側広角等速ジョイント部（広角ＣＶジョイント）32と、伝動軸部31の他端部に設けられた屈曲自在のジョイント部である中間入力軸側広角等速ジョイント部（広角ＣＶジョイント）33とを有している。
【００２５】
伝動軸部31は、インナーシャフトおよびアウターシャフト等にて構成されている。入力軸側広角等速ジョイント部32は、十字状をなす２個のクロスピン（スパイダ）、入力軸側ヨーク、中間ヨーク（ＣＶヨーク）および伝動軸部側ヨークにて構成されている。中間入力軸側広角等速ジョイント部33は、十字状をなす２個のクロスピン（スパイダ）、中間入力軸側ヨーク、中間ヨーク（ＣＶヨーク）および伝動軸部側ヨークにて構成されている。そして、入力軸側広角等速ジョイント部32の入力軸側ヨークには、入力軸10がそのヨークと一体に形成されることにより接続されている。中間入力軸側広角等速ジョイント部33の中間入力軸側ヨークには、中間入力軸14がスプライン嵌合により接続されている。また、動力伝達軸体23は、その略全体略円筒状の軸体カバー（図示せず）にて覆われている。
【００２６】
そして、可動機枠21が後退作業位置へ移動する際には、この可動機枠21の移動に連動して中間入力軸支持体15が回動アーム体11に対して第２の縦軸線Ｙ2を中心として回動し、この中間入力軸支持体15の回動により後退作業時における動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32の折れ角度が減少する。
【００２７】
また一方、農作業機１は、前進作業時には可動機枠21を前進作業位置に固定し、後退作業時には可動機枠21を後退作業位置に固定し、運搬時等の非作業時には可動機枠21を格納非作業位置に固定するための固定手段41を備えている。
【００２８】
固定手段41は、伸縮可能な第１伸縮固定部43と、伸縮可能な第２伸縮固定部44とを有している。第１伸縮固定部43および第２伸縮固定部44は、いずれも、孔付きのシリンダ本体45と、このシリンダ本体45内に出し入れ可能に挿入された孔付きのロッド46と、互いに一致するシリンダ本体45の孔とロッド46の孔に対して差し込む脱着可能な止めピン47とにて構成されている。
【００２９】
そして、第１伸縮固定部43の一端側は機枠３に回動可能に連結され、第１伸縮固定部43の他端側は回動アーム体11の連結軸部11aに回動可能に連結されている。第２伸縮固定部44の一端側は可動機枠21に回動可能に連結され、第２伸縮固定部44の他端側は回動アーム体11の連結軸部11aに回動可能に連結されている。
【００３０】
また、固定手段41は、前進作業時に機枠３の第１固定部49に対して可動機枠21を固定する脱着可能な第１止めピン50と、後退作業時に機枠３の第２固定部51に対して可動機枠21を固定する脱着可能な第２止めピン52とを有している。
【００３１】
また一方、農作業機１は、動力伝達軸体23の折れ角度（前進・後退作業時におけるジョイント部32，33の折れ角度）が一定になるように可動機枠21との当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する回動規制体61を備えている。
【００３２】
回動規制体61は、１ユニット化されたもので、図２に示されるように、中間入力軸支持体15の下面部に固着されている。回動規制体61は、中間入力軸支持体15の下面部に固着された水平面状の固着板部62と、この固着板部62の両側に平面視で略ハ字状をなすように設けられた垂直面状で略板状の第１回動規制部63および第２回動規制部64とを有している。
【００３３】
そして、第１回動規制部63は、前進作業時に動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21の第１受面部65との面状当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する。また、第２回動規制部64は、後退作業時に動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21の第２受面部66との面状当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する。なお、可動機枠21が有する四角パイプ状のフレーム部67の側面部の所定部位が第１受面部65および第２受面部66となっている。また、第１回動規制部63の表面部および第２回動規制部64の表面部がいずれも弾性変形可能なゴム板等の弾性板68にて構成されている。
【００３４】
次に、上記農作業機１の作用等を説明する。
【００３５】
トラクタの前進走行により土作業手段２で畦塗り作業を行う前進作業時には、図１および図３に示すように、土作業手段２を支持した可動機枠21を前進作業位置に固定手段41にて固定し、その土作業手段２を構成したロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27を所望の前進作業状態に設定する。
【００３６】
そして、トラクタを前進走行させると、農作業機１がトラクタとともに進行方向（前方）に移動し、トラクタ側からの動力が入力軸10、動力伝達軸体23、中間入力軸14および伝動手段（中間入力軸支持体15内および可動機枠21内に配設されたギア、シャフト等）を経て土作業手段２まで伝達される。
【００３７】
トラクタ側からの動力が土作業手段２に伝わると、ロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27がそれぞれ所定方向に駆動回転し、畦上面が前処理ロータリ27にて前処理され、畦塗り用の土がロータリ25にて耕耘されて畦上に盛り上げられ、この盛り上げられた土が畦塗り体26にて締め固められ、新たな畦が形成される。
【００３８】
このような前進作業時において、２つのジョイント部32，33で屈曲した状態で回転する動力伝達軸体23は、一直線状になろうとするが、回動規制体61の第１回動規制部63と可動機枠21の第１受面部65との面状当接により、固定状態の可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の第２縦軸線Ｙ2を中心とする回動が規制され、その結果、動力伝達軸体23のジョイント部32，33の折れ角度（使用角度）が一定に維持される。
【００３９】
また、塗り残しがないよう圃場の端部において、トラクタの後退走行により土作業手段２で畦塗り作業を行う後退作業時（リターン作業時）には、図６に示すように、土作業手段２を支持した可動機枠21を後退作業位置に固定手段41にて固定し、その土作業手段２を構成したロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27を所望の後退作業状態に設定する。すなわち例えば、作業者は、図３ないし図６に示すように、可動機枠21を農作業機１右側の前進作業位置から農作業機１左側の後退作業位置に移動させつつ、前後反転するよう略１８０度回動させる。
【００４０】
そして、可動機枠21が後退作業位置へ移動する途中で、可動機枠21の移動に連動して中間入力軸支持体15が回動アーム体11に対して第２の縦軸線Ｙ2を中心として回動し、この中間入力軸支持体15の回動により後退作業時における動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32の折れ角度が減少する。
【００４１】
ここで、図５に示す状態は、可動機枠21が格納非作業位置および後退作業位置間の中間位置に位置した状態、すなわち可動機枠21が後退作業位置に位置する直前の状態であり、この状態では、動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32は例えば約７０°の折れ角度（図示α）をもって大きく折れ曲がっている。
【００４２】
しかし、作業者が可動機枠21をその中間位置から後退作業位置へ移動させると、図６に示すように、中間入力軸支持体15は、可動機枠21の後退作業位置への移動に連動して回動アーム体11に対して第２の縦軸線Ｙ2を中心として回動し、この中間入力軸支持体15の回動に応じて動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32の折れ角度が約４０°の折れ角度（図示β）まで減少し、これによりリターン作業時に入力軸側広角等速ジョイント部32に無理な負荷がかかるようなことがない。
【００４３】
なお、農作業機１が図５に示す状態から図６に示す状態に切り換えられる場合、回動アーム体11は機枠３に対して第１縦軸線Ｙ1を中心として回動せず所定位置に停止したままで、可動機枠21が、中間入力軸支持体15および回動規制体61と一体となってピン部17がピン案内孔部18の端部と当接するまで回動アーム体11に対して第２縦軸線Ｙ2を中心として回動する。
【００４４】
そして、この図６に示す状態でトラクタを後退走行させると、農作業機１がトラクタとともに進行方向（後方）に移動し、前進作業時の場合と同様、畦上面が前処理ロータリ27にて前処理され、畦塗り用の土がロータリ25にて耕耘されて畦上に盛り上げられ、この盛り上げられた土が畦塗り体26にて締め固められ、圃場の端部において新たな畦が形成される。
【００４５】
このような後退作業時において、２つのジョイント部32，33で屈曲した状態で回転する動力伝達軸体23は、一直線状になろうとするが、回動規制体61の第２回動規制部64と可動機枠21の第２受面部66との面状当接により、固定状態の可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の第２縦軸線Ｙ2を中心とする回動が規制され、その結果、動力伝達軸体23のジョイント部32，33の折れ角度が一定に維持される。
【００４６】
なお、農作業機１を倉庫等の保管場所まで運搬する運搬時等の格納非作業時には、図示しないが、可動機枠21を格納非作業位置に固定手段41にて固定し、ロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27を所望の格納非作業状態に設定する。このとき、ロータリ25、畦塗り体26および前処理ロータリ27は、トラクタ側方に突出せず、トラクタの後方領域内に格納された状態となる。このため、農作業機１を保管場所まで容易に運搬できる。
【００４７】
そして、上記農作業機１によれば、動力伝達軸体23の折れ角度が一定になるように可動機枠21との当接により可動機枠21に対する中間入力軸支持体15の回動を規制する回動規制体61が中間入力軸支持体15に設けられているため、動力伝達軸体23の折れ角度を一定に確実に維持でき、安定した畦塗り作業ができる。
【００４８】
また、可動機枠21が後退作業位置へ移動する際にこの可動機枠21の移動に連動して中間入力軸支持体15が回動アーム体11に対して回動し、この中間入力軸支持体15の回動により後退作業時における動力伝達軸体23の折れ角度が減少するため、２本の回動アーム体等を備えた従来の構成に比べて構造の簡素化を図れるばかりでなく、動力伝達軸体23の耐久性の向上を図ることができ、しかも操作性が良好である。すなわち動力伝達軸体23の入力軸側広角等速ジョイント部32がリターン作業時に強度不足を起して損傷するようなことがなく、入力軸側広角等速ジョイント部32の耐久性が向上する。
【００４９】
また、リターン作業時に可動機枠21をトラクタ寄りの後退作業位置に固定しても、動力伝達軸体23のジョイント角度（折れ角度）が悪化せず、リターン作業時におけるトラクタの前後バランスが良好であり、安定した畦塗り作業ができる。
【００５０】
なお、農作業機１の土作業手段２は、畦塗り作業をするものには限定されず、溝掘作業等をするもの等でもよい。
【００５１】
また、前進作業時に可動機枠21が位置決め固定される前進作業位置は複数でもよく、例えば前進作業状態の土作業手段２の左右方向位置をオフセット調節可能としてもよい。また、可動機枠21は、少なくとも前進作業位置と後退作業位置とに設定可能なものであればよい。
【００５２】
さらに、農作業機１は、手動操作により人力で可動機枠21を各位置へ移動させるものには限定されず、例えば油圧シリンダ、モータ等の駆動手段からの動力で可動機枠21を移動させるようにしてもよい。
【００５３】
また、回動規制体61の回動規制部63，64は、その表面部がゴム板等の弾性板68にて構成されたものには限定されず、ゴム板等の弾性板68を有しない構成でもよく、またゴム板等の弾性板を可動機枠の受面部65，66側に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】本発明の農作業機の一実施の形態を示す平面図である。
【図２】同上農作業機の要部斜視図である。
【図３】同上農作業機の前進作業時の平面図である。
【図４】同上農作業機の可動機枠の回動途中の平面図である。
【図５】同上農作業機の可動機枠の回動途中の平面図である。
【図６】同上農作業機の後退作業時の平面図である。
【符号の説明】
【００５５】
１ 農作業機
２ 土作業手段
10 入力軸
14 中間入力軸
15 中間入力軸支持体
21 可動機枠
23 動力伝達軸体
61 回動規制体
63 第１回動規制部
64 第２回動規制部
65 第１受面部
66 第２受面部
68 弾性板
【特許請求の範囲】
【請求項１】
走行車の走行により移動しながら土作業手段で土作業をする農作業機であって、
前進作業時には前記土作業手段が前記走行車の前進走行に基づいて土作業をする前進作業位置に設定され、後退作業時には前記土作業手段が前記走行車の後退走行に基づいて土作業をする後退作業位置に設定され、前記土作業手段を支持する可動機枠と、
この可動機枠に対して回動可能となっており、中間入力軸を支持する中間入力軸支持体と、
一端側が入力軸に接続され、他端側が前記中間入力軸に接続された屈曲自在の動力伝達軸体と、
前記中間入力軸支持体に設けられ、前記動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように前記可動機枠との当接により前記可動機枠に対する前記中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項２】
可動機枠は、第１受面部および第２受面部を有し、
回動規制体は、前進作業時に前記第１受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第１回動規制部および後退作業時に前記第２受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第２回動規制部を有する
ことを特徴とする請求項１記載の農作業機。
【請求項３】
第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されている
ことを特徴とする請求項２記載の農作業機。
【請求項１】
走行車の走行により移動しながら土作業手段で土作業をする農作業機であって、
前進作業時には前記土作業手段が前記走行車の前進走行に基づいて土作業をする前進作業位置に設定され、後退作業時には前記土作業手段が前記走行車の後退走行に基づいて土作業をする後退作業位置に設定され、前記土作業手段を支持する可動機枠と、
この可動機枠に対して回動可能となっており、中間入力軸を支持する中間入力軸支持体と、
一端側が入力軸に接続され、他端側が前記中間入力軸に接続された屈曲自在の動力伝達軸体と、
前記中間入力軸支持体に設けられ、前記動力伝達軸体の折れ角度が一定になるように前記可動機枠との当接により前記可動機枠に対する前記中間入力軸支持体の回動を規制する回動規制体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項２】
可動機枠は、第１受面部および第２受面部を有し、
回動規制体は、前進作業時に前記第１受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第１回動規制部および後退作業時に前記第２受面部との面状当接により前記可動機枠に対する中間入力軸支持体の回動を規制する第２回動規制部を有する
ことを特徴とする請求項１記載の農作業機。
【請求項３】
第１回動規制部の表面部および第２回動規制部の表面部がいずれも弾性板にて構成されている
ことを特徴とする請求項２記載の農作業機。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００６−１０１７４８（Ｐ２００６−１０１７４８Ａ）
【公開日】平成１８年４月２０日（２００６．４．２０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−２９１６８１（Ｐ２００４−２９１６８１）
【出願日】平成１６年１０月４日（２００４．１０．４）
【出願人】（０００１８８００９）松山株式会社 (285)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年４月２０日（２００６．４．２０）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年１０月４日（２００４．１０．４）
【出願人】（０００１８８００９）松山株式会社 (285)
【Ｆターム（参考）】
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