農作業車用旋回制御装置
【課題】土壌が軟弱な圃場を含む幅広い湿田条件において、旋回内側のクローラのロック状態を回避して安定した旋回動作が可能となる農作業車用旋回制御装置を提供する。
【解決手段】農作業車用旋回制御装置は、旋回操作具の操作量に応じて初期作動圧P0wからブレーキ位置作動圧の範囲で一様に変化する旋回操作特性によって減速用作動圧を制御する制御部からなり、上記旋回操作特性は、標準モードおよび湿田モードの選択と対応して切替可能に、かつ、それぞれのブレーキ位置作動圧を調整可能に構成され、上記湿田モード用の旋回操作特性は、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力Pbs未満の場合にこのブレーキ位置基準圧力Pbsからの差分を旋回操作具の全操作範囲で減速用作動圧から一律に差し引いた旋回操作特性により旋回制御する。
【解決手段】農作業車用旋回制御装置は、旋回操作具の操作量に応じて初期作動圧P0wからブレーキ位置作動圧の範囲で一様に変化する旋回操作特性によって減速用作動圧を制御する制御部からなり、上記旋回操作特性は、標準モードおよび湿田モードの選択と対応して切替可能に、かつ、それぞれのブレーキ位置作動圧を調整可能に構成され、上記湿田モード用の旋回操作特性は、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力Pbs未満の場合にこのブレーキ位置基準圧力Pbsからの差分を旋回操作具の全操作範囲で減速用作動圧から一律に差し引いた旋回操作特性により旋回制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の農作業車に備えるクローラ等の旋回走行手段を旋回制御する農作業車用旋回制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
左右のクローラの動力伝達を制御する農作業車用旋回制御装置は、例えば、本出願人が先に提案した特許文献1に示すように、旋回内側の伝動系に対してブレーキ力を加えることにより抑速して旋回走行を可能とする。そのブレーキ力は、旋回レバーの左右の傾倒角度と対応して変化させることにより、旋回レバーの操作に応じて抑速調節し、旋回半径を調節することができる。また、湿田における旋回のために、標準よりブレーキ力を弱く設定した湿田モードを選択可能に設けることにより、湿田における旋回動作に対応することが可能となる。
【0003】
しかし、上記のように、湿田モードを選択して比較的弱いブレーキ力によって旋回する場合にあっても、土壌が軟弱な圃場にあっては、旋回内側のクローラがロック状態となって走行不能となり、作業性の低下を招く場合があった。
【特許文献1】特開2003−146239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、土壌が軟弱な圃場を含む幅広い湿田条件において、旋回内側のクローラのロック状態を回避して安定した旋回動作が可能となる農作業車用旋回制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、旋回操作具の操作量に応じて初期作動圧からブレーキ位置作動圧の範囲で一様に変化する旋回操作特性により、機体走行用の左右の伝動系の一方に加える減速用作動圧を制御して機体を旋回制御する制御部からなり、上記旋回操作特性は、標準モードおよびそれより作動圧を小さく抑えた湿田モードの選択と対応して切替可能に、かつ、それぞれのブレーキ位置作動圧を調整可能とする農作業車用旋回制御装置において、上記湿田モード用の旋回操作特性は、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満の場合にこのブレーキ位置基準圧力からの差分を旋回操作具の全操作範囲で減速用作動圧から一律に差し引いた旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする。
湿田モードの選択時には、ブレーキ位置作動圧の調整が所定のブレーキ位置基準圧力未満であればその差分が全操作範囲で一律に差し引かれて減速用作動圧が修正され、この旋回操作特性による減速用作動圧により、旋回操作具の操作量に応じて機体が旋回制御される。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記旋回操作具の最小操作量と対応する初期作動圧は、その変化範囲の下限を所定の初期位置下限圧力とし、この初期位置下限圧力と対応するブレーキ位置作動圧未満に前記ブレーキ位置作動圧が調整された場合に、上記初期作動圧から前記ブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に減速用作動圧を加える旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする。
湿田モードの選択時に、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満でその初期作動圧が所定の下限値に達することとなる場合は、この初期作動圧から上記ブレーキ位置作動圧までの範囲で旋回操作具の操作量と対応して一様に変化する減速用作動圧により機体が旋回制御される。
【0007】
請求項3に係る発明は、左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を規定する切替クラッチについて旋回操作具の操作量と対応して直進用の高速から旋回用の低速までの範囲で作動圧を調節制御する農作業車用旋回制御装置において、上記切替クラッチの作動圧制御は、急旋回制御によって作動圧を増加可能とし、かつ、速度比制御によって左右の伝動系の速度比を固定可能とし、これら急旋回制御と速度比制御とを選択操作によって切替可能に制御することを特徴とする。
上記切替クラッチの作動圧の制御により、左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を介して機体が旋回制御され、また、急旋回制御と速度比制御が選択操作に応じて切替えられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の効果は、湿田モードの選択時には、ブレーキ位置作動圧の調整が所定のブレーキ位置基準圧力未満であればその差分が全操作範囲で一律に差し引かれて減速用作動圧が修正され、この旋回操作特性による減速用作動圧により、旋回操作具の操作量に応じて機体が旋回制御されることから、上記農作業車用旋回制御装置により、ブレーキ位置作動圧を調整操作することによって小なる初期作動圧による旋回が可能となるので、旋回内側のクローラがロックして旋回不能となるような事態を回避して、やや軟らかめの圃場から超湿田までの幅広い条件に対応することができる。
【0009】
請求項2の効果は、湿田モードの選択時に、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満でその初期作動圧が所定の下限値に達することとなる場合は、この初期作動圧から上記ブレーキ位置作動圧までの範囲で旋回操作具の操作量と対応して一様に変化する減速用作動圧により機体が旋回制御されることから、上記農作業車用旋回制御装置により、ブレーキ位置作動圧を大幅に落として調整した場合でも、旋回操作具の操作量に応じたブレーキによる旋回が可能となるので、旋回内側のクローラがロックして旋回不能となるような事態を回避して、やや軟らかめの圃場から超湿田までの幅広い条件に対応することができる。
【0010】
請求項3の効果は、上記切替クラッチの作動圧の制御により、左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を介して機体が旋回制御され、また、急旋回制御と速度比制御が選択操作に応じて切替えられることから、上記構成の農作業車用旋回制御装置により、オペレータは、圃場条件に応じて急旋回制御と速度比制御を選択操作することができるので、幅広い圃場条件に適応できるとともに、緩旋回による圃場面の保護や急旋回による作業性向上等のそれぞれの意図に沿った圃場作業が可能となり、オペレータの幅広い個人差に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明の農作業車用旋回制御装置を適用するコンバインは、例えば、図1に示すように、刈取部A、脱穀部B、収納部C、搬出部D等の作業機と、走行用の左右のクローラE,Eと、作業機稼動および機体走行を操作するための操縦部F等を備える。この機体内には、図示せぬ原動機とその動力を受けて左右のクローラE,E等を駆動制御する走行伝動装置、農作業車用旋回制御装置等を備える。
【0012】
上記コンバインの走行伝動装置は、その機体の進行方向を変えるべく旋回走行する場合には、左右のクローラE,Eの旋回内側の回転を調節するべく、走行伝動装置の旋回調節部において、左右の走行系の旋回内側の回転伝動を走行伝動系から旋回調節系に切り替え、この旋回調節系に設けた切替クラッチを介して旋回内側の回転速度を調節する。
【0013】
具体的には、走行伝動装置1は、その展開断面図を図2に示すように、原動機動力を前後進可能に無段変速する図示せぬ無段変速部の変速動力を受ける入力軸3からその動力伝達を受けて伝動を切り替える伝動切替部材5を摺動可能に支持する副変速軸6と、伝動切替部材5により多段変速出力する副変速カウンタ軸7と、その動力を左右の伝動系に係脱可能に分岐する左右のサイドクラッチギヤ8,8を軸支するサイドクラッチ軸9と、このサイドクラッチ軸9から直進用と旋回用の高低2速を出力するギヤ9a,9bの伝動を切替える予圧型の2連クラッチ(切替クラッチ)10a,10bを備える切替クラッチ軸11と、この切替クラッチ軸11の出力ギヤ11gをデフケース12cに受ける差動機構12と、この差動機構12の両側に差動出力する左右の差動ギヤ13,13、および、左右のサイドクラッチギヤ8,8とそれぞれ噛合する左右の出力ギヤ14,14と、この左右の出力ギヤ14,14から減速伝動される左右の走行軸15,15等を備えて構成される。
【0014】
上記構成の走行伝動装置1は、伝動切替部材5により選択された副変速速度において、左右のサイドクラッチギヤ8,8から左右の出力ギヤ14,14を経て左右の走行軸15,15を同速に伝動して直進走行を行い、この時、差動機構12を同期させるために、切替クラッチ軸11に高速のギヤ9aの出力を受ける。また、旋回走行に際しては、旋回操作具として操縦部Fに設けた所謂パワステレバーを旋回内側方向に傾動操作することにより、制御部が旋回内側のサイドクラッチギヤ8の伝動を遮断するとともに、2連クラッチ10a,10bの注入圧力を制御することにより、減速動力が差動機構12のデフケース12cに伝動され、旋回内側の差動ギヤ13から走行軸15に到る伝動系が調節される。
【0015】
上記走行伝動装置1による旋回調節は、サイドクラッチ軸9の旋回用の低速ギヤ9bによる減速範囲内で、2連クラッチ10a,10bへの注入圧力に応じて定められる内外側の伝動速度差に応じた旋回半径で機体旋回が可能となる。具体的には、旋回内側の伝動速度が外側より低速の緩旋回から、旋回内側を停止速(速度ゼロ)とするブレーキ旋回、旋回内側が外側伝動系と逆方向の所定速(例えば、外側速度の1/3)とするスピン状の急旋回までの範囲でパワステレバーの操作により機体旋回が可能となる。この走行伝動装置の伝動系の構成と旋回動作についての詳細な説明は、別途、後述する。
【0016】
上記走行伝動装置1を制御する旋回制御装置の制御部31は、図3の入出力系統図に示すように、湿田切替を入力するための湿田モードスイッチ32、旋回力アップ操作を入力するための旋回力アップスイッチ33、旋回操作具の傾動操作を入力するためのパワステレバーポジションセンサ34、標準モードブレーキ圧を調節設定するための調整ダイヤル35、湿田モードブレーキ圧を調節設定するための調整ダイヤル36等を入力接続し、切替クラッチ10a,10bへの注入圧力を調節する調整ソレノイド37、右または左のサイドクラッチを係脱制御するためのプッシュシリンダソレノイド38a,38b等を出力接続する。
【0017】
上記制御部31は、パワステレバーポジションセンサ34の信号と対応して調整ソレノイド37等を制御することにより、パワステ(旋回操作具)による左右方向のそれぞれの傾動操作角度に応じて切替クラッチ10a,10bへの注入圧力を変化させ、左右の伝動系が同速の直進走行から片側の伝動系を抑速して旋回走行までの範囲について、所定の旋回操作特性に沿って制御する。
【0018】
制御部31による旋回操作特性は、図4の操作特性図(構成例1)に示すように、旋回操作具の左右の傾動操作範囲において、中立不感帯による初期角度位置A0から所定のブレーキ角度位置Abを経て最大角度位置Afまでの各角度位置に対する旋回作動圧Pを定めた特性線により表される。また、各種の条件に合わせて旋回制御するために、上記特性線を変更可能とし、または、特性線を複数種類を設定して選択切替え可能に制御部を構成する。
【0019】
標準モードでは、各角度位置と対応して初期作動圧P0からブレーキ位置作動圧Pbまで一様に変化し、最大角度位置Afまで一定の標準モード特性線Cとして設定する。湿田モードスイッチ32によるモード切替時は、湿田における機体旋回性と対応するように、小圧力の初期作動圧P0wからブレーキ位置作動圧Pbwまで圧力を抑えて一様に変化する湿田モード特性線Cwにより旋回制御する。
【0020】
この湿田モード特性線Cwにおけるブレーキ位置作動圧Pbwは、調整ダイヤル36の調節操作によって増減変更し、そのダイヤル位置と対応して特性線を変更するとともに、その特性パターンを切替えるために所定のブレーキ位置基準圧力Pbsを設定する。調整ダイヤル36によって調整したブレーキ位置作動圧がブレーキ位置基準圧力Pbsから標準モードのブレーキ位置作動圧Pbまでの範囲については、初期作動圧P0wからブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に変化するように特性線を変更可能に構成(第一調整範囲)し、ブレーキ位置作動圧がブレーキ位置基準圧力Pbs未満の範囲については、その差分を全角度範囲で低減するように特性線を変更可能に構成(第二調整範囲)する。また、必要により、所定の初期位置下限圧力P0Lを設定し、これを初期作動圧P0wの変更下限としてその対応するブレーキ位置対応圧力PbLを下限として調整ダイヤル36による変更調整範囲を限定する。
【0021】
上記制御部による旋回操作特性は、湿田モードの選択時には、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力Pbsと比較され、このブレーキ位置基準圧力Pbs未満と判定されればその差分が差し引かれて減速用作動圧が小さく修正され、この旋回操作特性による減速用作動圧により、旋回操作具の操作量に応じて機体が旋回制御される。したがって、上記農作業車用旋回制御装置により、ブレーキ位置作動圧を小さく調整することによって小なる初期作動圧による旋回が可能となるので、旋回内側のクローラがロックして旋回不能となるような事態を回避して、やや軟らかめの圃場から超湿田までの幅広い条件に対応することができる。
【0022】
次に、上記操作特性に加えて更に広範囲に特性変更する例を図5の操作特性図(構成例2)により説明する。
上記ブレーキ位置作動圧が調整ダイヤル36により減少調節され、これに伴って初期作動圧P0wが所定の初期位置下限圧力P0Lに達した場合の対応するブレーキ位置作動圧をブレーキ位置対応圧力PbLとし、このブレーキ位置対応圧力PbL未満の範囲については、初期位置下限圧力P0Lからブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に変化するように特性線を変更可能に構成(第三調整範囲)する。
【0023】
このように構成することにより、調整ダイヤル36による調整域を前述の範囲よりさらに拡大し、更に小なる作動圧による旋回制御(第三調整範囲)が可能となるので、更に幅広い圃場条件に対応して機体を安定して旋回制御することが可能となる。
【0024】
次に、上記旋回操作特性により旋回制御する場合において、ブレーキ作動圧を圃場条件に応じて調整する例について説明する。
制御部41は、図6の入出力系統図(構成例3)に示すように、車体水平制御機能43,44を備え、また、ブレーキ圧の調整とパワステレバー用の湿田モード機能32等を備え、図7の旋回制御操作特性図(構成例3)の対応特性線Csに示すように、ブレーキ力が湿田モード状態で車体用湿田モード機能42が選択された時に、ブレーキ圧が自動的に低くなる特性Csに切替るように構成する。
【0025】
このように、自動的にブレーキ圧が調整されることから、圃場状態に合ったブレーキ力が得られるので、圃場条件適応性が向上する。また、オペレータによるブレーキ力の調整頻度が軽減されるため、操作性を向上することができる。
【0026】
次に、切替スイッチにより旋回制御操作特性を切替える例について説明する。図8の制御部50の入出力構成例の系統図に示すように、デフ構成旋回機構のブレーキ圧調整により旋回制御し、標準モードと湿田モードを切替えるスイッチ51を設け、湿田モード時にHSTレバーのスイッチ52により、旋回の内外側の速度比をフィードバック制御による固定制御とブレーキ圧が昇圧される小回り旋回制御とをオペレータが選択可能に構成する。
【0027】
上記制御部50により、フィードバック制御と小回り旋回制御とをオペレータが選択できることから、圃場状態に合った機能を選択できるので、圃場条件適応性が向上する。また、オペレータの個人差による対応も可能となり、旋回時の駆動力確保のために緩旋回を選択したり、効率化のために旋回力アップを選択できるので、操作性を向上することができる。上記制御部は、標準モード時についても同様に構成することにより、湿田モード時に限らず、標準モード時において上記同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
次に、自動方向制御については、図9の制御部61の入出力構成例の系統図(構成例1)に示すように、自動方向制御機能62、前後傾斜機能を備える場合において、図10の制御特性図(構成例1)に示すように、方向制御圧力をピッチングセンサ63による前後傾斜量に応じて自動方向制御圧力(ACD圧力)を低くするように制御部を構成する。
【0029】
このように構成することにより、従来のような自動方向制御の圧力を一定に設定することに伴う適合性の限定範囲が拡大されて追従性が良くなることから、機体へのショックが少なくなることにより操作性が向上し、また、圃場条件に対する自動方向制御の適応性が向上することにより、適用可能な圃場が多くなるので、オペレータの作業負荷を軽減することができる。
【0030】
同様にして、自動方向制御については、図11の制御部71の入出力構成例の系統図(構成例2)に示すように、自動方向制御機能62、車高上下機能を備える場合において、図12の制御特性図(構成例2)に示すように、方向制御圧力(ACD圧力)を車高上げ量に応じて自動方向制御圧力を低くするように構成することにより、前記同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
また、図13の制御部81の入出力構成例の系統図(構成例3)に示すように、車体水平制御機能を選択している時、または、ブレーキ力が湿田モード状態で、車体用湿田モード機能82が選択された時に、自動方向制御圧力を低く設定することにより、上記同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
次に、旋回力アップ制御については、図14の制御部91aの入出力構成例の系統図(構成例1)に示すように、左右傾斜センサ92を設け、図15のフローチャート(構成例1)に示すように、左右傾斜に応じて旋回力アップを牽制制御するように制御部を構成することにより、機体が左右に傾斜した時に旋回力アップが牽制されて安全性を向上することができる。
【0033】
同様にして、図16の制御部91bの入出力構成例の系統図(構成例2)に示すように、前後傾斜センサ93を設け、図17のフローチャート(構成例2)に示すように、前後傾斜に応じて旋回力アップを牽制制御するように制御部を構成することにより、機体が前後に傾斜した時に旋回力アップが牽制されて安全性を向上することができる。
【0034】
つぎに、前述の走行伝動装置(走行ミッション装置)における旋回動作について伝動系の構成とともに詳細に説明する。
図18は、詳細説明用の走行ミッション装置14を展開して示す断面図であり、また、図19に差動歯車装置のギアの回転数の関係図を示す。図20にはクラッチ軸70部分の拡大図を示す。
【0035】
走行ミッション装置14は、図18に示す油圧式無段変速装置(走行用HST)18の出力軸17、第一副変速軸27、第二副変速軸33、サイドクラッチ軸41、ホイール軸11からなる走行トランスミッション基本伝動系とカウンタ軸60、クラッチ軸70及び差動歯車機構支持軸50を備えた走行ミッション差動伝動系(補助伝動系)を備えている。
【0036】
まず、走行ミッション装置14の走行トランスミッション基本伝動系を主に図18で説明する。
図示しないエンジンからの回転駆動力が走行用HST18に伝動され、正・逆転の切換えや変速回転動力が出力軸17から出力される構成としている。そして、主変速レバーgにより走行用HST18の増減速の変速と前後進(正・逆転の切換え)の切換えができる構成としている。
そして、操向レバーPを操作して、後述のサイドクラッチ41の「入」・「切」と増減速の変速操作により差動歯車装置6を駆動させて旋回走行ができる構成としている。
【0037】
走行ミッションケース12内には、副変速装置24とサイドクラッチ装置25と差動歯車装置6が設けられ、これらの装置の伝動下手側の左右のホイールシャフト11L、11Rから駆動スプロケット16L、16Rを介して左右の走行クローラe、eを駆動する構成になっている。
【0038】
走行用HST18の出力軸17の広幅伝動ギア26からの動力はカウンタ軸60のカウンタギア61に伝達され、該カウンタギア61から副変速装置24の第一副変速軸27上の伝動ギア62に動力が伝動される。
【0039】
副変速装置24の第一副変速軸27上に一体に設けられた大ギア28と中ギア29と小ギア30と第二副変速軸33上に設けられた変速大ギア34、変速中ギア35及び変速小ギア36から構成される。第一副変速軸27上に、一体に設けられたギア28〜30は副変速レバーtの操作で第一副変速軸27の軸方向に摺動自在に軸装して変速可能に構成している。そして、上記第一副変速軸27は、端部を走行ミッションケース12から外側に延長して刈取伝動プーリ(図示せず)を軸着して車速に同調した回転動力を刈取装置aなどの回転各部に入力できる構成としている。
【0040】
また、第二副変速軸33は、前記第一副変速軸27の伝動下手側に軸架し、変速大ギア34、変速中ギア35、変速小ギア36及び伝動ギア37をそれぞれ軸着している。第二副変速軸33のギア34〜37は不動で、第一副変速軸27上に、一体に設けられた大ギア28と中ギア29と小ギア30が図示しないシフタにより摺動するので、第二副変速軸33の変速大ギア34は前記第一副変速軸27の小ギア30に噛合し、変速中ギア35は第一副変速軸27の中ギア29に噛合し、変速小ギア36は第一副変速軸27の大ギア28にそれぞれ噛合する。さらに伝動ギア37はサイドクラッチ装置25のセンターギア40に常時噛合している。
【0041】
サイドクラッチ装置25は、センターギア40を中心として、その左右に伸びるサイドクラッチ軸41を一体で備えている。該サイドクラッチ軸41上にはそれぞれスリーブ42L、42Rが遊嵌しており、前記センターギア40にはクラッチギア43L、43Rが係合、解放可能な爪40bL、40bRを備えている。また、クラッチギア43L、43Rはサイドクラッチ軸41上にスプライン係合したクラッチギア43Lと一体のスリーブ42Lとともにサイドクラッチ軸41上を摺動する。
【0042】
クラッチギア43L、43Rはカウンタ軸63に遊嵌している伝動ギア64L、64Rに常時噛合しているので、クラッチギア43L、43Rからの動力は伝動ギア64L、64Rからギア63La、63Raを経由してホイールシャフトギア48L、48Rに伝達され、ホイールシャフトギア48L、48Rからホイールシャフト11L、11Rを経由し、駆動スプロケット16L、16Rから左右の走行クローラe,eに伝達される。
【0043】
爪クラッチ式に噛合したクラッチギア43L、43Rとセンターギア40の爪部40bL、40bRからなる構成をそれぞれサイドクラッチ44L、44Rと呼ぶことにする。
また、スリーブ42L、42Rと走行ミッションケース12との間にそれぞれスプリング46L、46Rが設けられ、このスプリング46L、46Rによりスリーブ42L、42Rとクラッチギア43L、43Rは常時センターギア40側に付勢されている。そして、旋回時に油圧力でシフタ47L、47Rのいずれかを作動させて対応する前記スプリング46L、46Rのいずれかの付勢力に打ち勝つ方向に移動可能な構成になっている。これにより、旋回内側のサイドクラッチ44L又は44Rが切れる。
【0044】
シフタ47L、47Rは直進走行時には作動せず、サイドクラッチ44L、44Rが共に係合した状態であるので、後述の伝達経路で左右の走行クローラe,eが等速回転する。また所望の旋回方向に操向レバーPを操作することでシフタ47L又は47Rが作動して、旋回内側のサイドクラッチ44L又は44Rの係合と解放が選択される。
【0045】
センターギア40の外周ギア40aはクラッチ軸70上に遊嵌している円筒回転体72のギア72aと常時噛合している。該円筒状回転体72と爪係合している円筒体72bとクラッチ軸70にスプライン係合している円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる直進用クラッチ81を構成している。
【0046】
また、円筒状回転体72の外周には円筒状回転体74が遊嵌しており、該円筒状回転体74にはセンターギア40の第三のギア40cに常時係合しているギア74aを備えている。また円筒状回転体74と円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる旋回用クラッチ82を構成している。直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82との間には圧縮バネ75が配置され、該圧縮バネ75の付勢力は直進用クラッチ81が「入」となるように設置されている。
また、円筒状回転体71の外周には直進用クラッチ81と圧縮バネ75と旋回用クラッチ82の間をそれぞれ仕切る円盤状プレート76a、76bを備えた円筒体76が一体化して設けられている。
【0047】
油口77から圧油の導入がない場合には圧縮バネ75によって円筒状回転体71と円筒状回転体72との間で常時直進用クラッチ81が係合する「入」方向に付勢されている。直進用クラッチ81は常時「入」状態を保ち、旋回用クラッチ82は常時「切」状態を保っている。
【0048】
油口77から圧油の導入があると、ピストン73と円筒体76の円盤状プレート76aと76bがバネ75の付勢力に打ち勝って図18の左側方向にシフトし、直進用クラッチ81は解放(「切」状態)となり、旋回用クラッチ82が係合(「入」状態)になる。
【0049】
直進用クラッチ81が「入」の場合は副変速装置24からの駆動力がサイドクラッチ軸41のセンターギア40の外周ギア40aと円筒状回転体72のギア72aを経由して円筒状回転体72、円筒体72b、直進用クラッチ81、円筒体76、円筒状回転体71、直進用クラッチ81及びクラッチ軸70を回転させ、該クラッチ軸70と一体の伝動ギア78と、該伝動ギア78に常時係合している差動歯車機構6のリングギア53を回転させる。このとき旋回用クラッチ82が「切」であるのでセンターギア40の第三ギア40cに常時噛合している円筒状回転体74のギア74aの回転動力はクラッチ軸70には伝達されないで円筒状回転体74は空回りする。
【0050】
また、旋回用クラッチ82が「入」の場合は、直進用クラッチ81が「切」となり、クラッチ軸70に遊嵌している円筒状回転体72を空回りさせるが、このときセンターギア40の第三ギア40cからの駆動力が円筒状回転体74のギア74aを経由して円筒状回転体74から旋回用クラッチ82と円筒体76を経由して円筒状回転体71を回転させ、該回転体71の回転でクラッチ軸70を駆動させる。この結果、クラッチ軸70に固定された伝動ギア78が回転して、該伝動ギア78に常時係合している差動歯車装置6のリングギア53を回転させる。
【0051】
差動歯車装置6には、中間ベベルギア52の外周に設けたデフケース54と一体のリングギア53が設けられており、また、支持軸50には側部ベベルギア51L、51Rが回転可能に支持されており、また、側部ベベルギア51L、51Rの外周には左右のサイドギア55L、55Rがそれぞれ固定している。
これらサイドギア55L、55Rはカウンタ軸63にそれぞれ係合し、伝動ギア64L、64Rはカウンタ軸63に遊嵌し、伝動ギア64Lとカウンタ軸63Lは一体であり、ギア63Laはホイールシャフトギア48Lに常噛している。
【0052】
図18から明らかなように、直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82を同一軸であるクラッチ軸70に設けることにより両クラッチ81、82を択一的に操作できるので、構成が簡素化でき、安価になる。また両クラッチ81、82の切り替えのタイミングを機械的に調整できるので複雑な制御が不要となる。
【0053】
上記構成からなる走行ミッション装置14のギア機構において、コンバインの直進時はサイドクラッチ装置25の左右のサイドクラッチ44L、44Rが共に係合したままであり、エンジン動力は副変速装置24の第二副変速軸33に伝達され、該第二副変速軸33の出力ギア37を経由してセンターギア40に伝達される。該センターギア40にはサイドクラッチ軸41が共に係合しているので、センターギア40の回転力はクラッチ44L、44Rを介してクラッチギア43L、43Rに伝達され、該クラッチギア43L、43Rに常時係合している伝動ギア64L、64Rに伝達され、伝動ギア64L、64Rからカウンタ軸63のギア63La、63Raとホイールギア48L、48Rをそれぞれ経由して左右の走行クローラeが共に回転する。
【0054】
副変速レバーtの作動で副変速シフタステー32が副変速装置24の第一副変速軸27のギア28、29、30とそれぞれ対応する第二副変速軸33のギア34、35、36のいずれかの組のギア同士を噛合させて、適切な速度段で直進走行ができる。
このとき直進用クラッチ81は「入」で、旋回用クラッチ82は「切」であり、直進時の差動歯車装置6の状態は次の通りである。
【0055】
(イ)第二副変速軸33の駆動力がセンタギア40の爪ギア40bL、40bRとを経由してサイドクラッチ装置25のサイドクラッチ44L、44R及び左右のサイドクラッチ軸41のクラッチギア43L、43Rを経由して伝動ギア64L、64Rが共に回転しているので、伝動ギア64L、64Rがそれぞれ噛合している差動歯車装置6のサイドギア55L、55Rは同じ方向に共に等速回転する。従って、サイドギア55L、55Rとそれぞれ一体回転する側部ベベルギア51L、51Rを介してデフケース54と該デフケース54と一体のリングギア53も同じ方向に回転し、前記側部ベベルギア51L、51Rに噛み合っている中間ベベルギア52、52aが支持軸50を中心に公転する。
【0056】
(ロ)第二副変速軸33の駆動力がセンターギア40の外周ギア40aから回転円筒体72に伝達され回転円筒体72と爪係合する円筒体72b、直進用クラッチ81、円筒体76のプレート76a、円筒状回転体71、クラッチ軸70、伝動ギア78及びリングギア53に順次動力伝達され、リングギア53と同じ回転方向にベベルギア52も回転する。
【0057】
このようにリングギア53は上記(イ)、(ロ)の二系統から回動されるので上記(イ)、(ロ)の二系統からのリングギア53への変速比を同じに設定する。従ってサイドクラッチ44L又は44Rを「切」にしたとき、上記(ロ)の伝動系統からの動力がリングギア53からサイドギア55L、55Rと伝動ギア64L、64R、カウンタギア63La、63Ra、ホイールシャフトギア48L、48Rにそれぞれ伝わるので、ショックが防止される。また、センターギア40と一体の第三ギア40cから、ギア74a、円筒状回転体74に伝達される旋回用の動力は、旋回用クラッチ82で空転している。
【0058】
次に前記ギア機構の左旋回時の作動について説明する。
操向レバーPを左側に傾斜させることで、シフタ47Lを作動させ、サイドクラッチ44Lを「切」にすると、図示しない機構により油口77から圧油が導入され、ピストン73と円筒体76が図18の左方向に移動する。この移動により直進用クラッチ81を「切」として、旋回用クラッチ82を「入」とする。溶接で一体構成されたセンターギア40と第三のギア40cの回転力は旋回用クラッチ82の円筒状回転体74の外周に設けられた対応するギア74a、旋回用クラッチ82、円筒体76、円筒状回転体71、クラッチ軸70、伝動ギア78、リングギア53、側部ベベルギア51L、サイドギア55L、カウンタ軸63の伝動ギア64L、ギア63La、ホイールシャフトギア48L、クローラ駆動スプロケット16Lをそれぞれ経由して左の走行クローラeを駆動させる。この時、センターギア40の動力はクラッチギア43Rからカウンタ軸63の伝動ギア64R、ギア63Ra、ホイールギア48R、クローラ駆動スプロケット16Rをそれぞれ経由して旋回外側の右の走行クローラeを駆動する。
【0059】
旋回用クラッチ82は、その多板式摩擦板を油圧力を無段階的(連続的)に設定した旋回モードまで制御することができる。なお、この旋回用クラッチ82の摩擦板の油圧力の制御は操縦席fに設けた操向レバーPに付属するポテンショメータ(図示せず)で検出される傾動角度の制御で行うことができる。
【0060】
センターギア40の第三のギア40cと円筒状回転体74のギア74aの変速比の関係により、例えば旋回用クラッチ82を完全に接続させた場合にサイドギア55Lの回転数はサイドクラッチ44R側のサイドギア55Rの回転数の−1/3になり、急旋回(スピンターン)状態になるように設定しているので、緩旋回からブレーキ旋回と急旋回への移行が可能になっている。
【0061】
すなわち、図19に示すように左旋回時には旋回外側であるサイドクラッチ44Rが「入」状態であるので、ホイールシャフトギア48Rの回転がクラッチギア43Rから一定回転で伝動されるとともに、クラッチギア43Rの回転はサイドギア55Rを一定回転で伝動する。一方、リングギア53の回転数が旋回用クラッチ82の摩擦力が強くなるに従い減速されていくと、それに比例してサイドギア55Lの回転数が減少していく。リングギア53の回転数がサイドギア55Rの1/2になると、サイドギア55Lはゼロ回転となり、サイドギア55Lからホイールシャフトギア48Lを経由する回転数がゼロになり、左走行クローラeにブレーキが利いているのではないが左走行クローラeが回転しない、いわゆるブレーキ旋回が行われる。
さらにリングギア53が減速していくと、サイドギア55Rの回転方向に対してサイドギア55Lは逆転回転をして左走行クローラeが逆回転し、いわゆる急旋回が行われる。
【0062】
サイドギア55Rの回転数に対してサイドギア55Lの逆転回転数は、ギア40cとギア74aの変速比を図19の点Xに設定していると、サイドギア55Lがサイドギア55Rに対して−1/3スピンターンまで実行可能な逆転回転数まで設定が可能である。
また、右旋回選択時はサイドクラッチ44Rを「切」にすることで、前記左旋回と全く逆の作動が走行ミッション装置14で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の農作業車用旋回制御装置を適用したコンバインの側面図である。
【図2】旋回調節部を備える農作業車用旋回制御装置の展開断面図である。
【図3】旋回制御装置の制御部の入出力系統図である。
【図4】旋回操作特性図(構成例1)である。
【図5】旋回操作特性図(構成例2)である。
【図6】旋回制御装置(構成例3)の制御部の入出力系統図である。
【図7】旋回操作特性図(構成例3)である。
【図8】機能選択構成例の制御部の入出力系統図である。
【図9】自動方向制御(構成例1)の入出力構成例の系統図である。
【図10】自動方向制御(構成例1)の制御特性図である。
【図11】自動方向制御(構成例2)の入出力構成例の系統図である。
【図12】自動方向制御(構成例2)の制御特性図である。
【図13】自動方向制御(構成例3)の入出力系統図である。
【図14】旋回力アップ制御(構成例1)の入出力系統図である。
【図15】旋回力アップ制御(構成例1)のフローチャートである。
【図16】旋回力アップ制御(構成例2)の入出力系統図である。
【図17】旋回力アップ制御(構成例2)のフローチャートである。
【図18】詳細説明用のトランスミッション装置の展開断面図である。
【図19】差動歯車装置のギア回転数の関係図である。
【図20】クラッチ軸の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0064】
1 走行伝動装置
10a,10b 切替クラッチ
31 制御部
32 湿田モードスイッチ
34 パワステレバーポジションセンサ
36 調整ダイヤル
37 調整ソレノイド
38a,38b プッシュシリンダソレノイド
41 制御部
A0 初期角度位置
Ab ブレーキ角度位置
Af 最大角度位置
C 標準モード特性線
Cw 湿田モード特性線
P0L 初期位置下限圧力
P0w 初期作動圧
PbL ブレーキ位置対応圧力
Pbs ブレーキ位置基準圧力
Pbw ブレーキ位置作動圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の農作業車に備えるクローラ等の旋回走行手段を旋回制御する農作業車用旋回制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
左右のクローラの動力伝達を制御する農作業車用旋回制御装置は、例えば、本出願人が先に提案した特許文献1に示すように、旋回内側の伝動系に対してブレーキ力を加えることにより抑速して旋回走行を可能とする。そのブレーキ力は、旋回レバーの左右の傾倒角度と対応して変化させることにより、旋回レバーの操作に応じて抑速調節し、旋回半径を調節することができる。また、湿田における旋回のために、標準よりブレーキ力を弱く設定した湿田モードを選択可能に設けることにより、湿田における旋回動作に対応することが可能となる。
【0003】
しかし、上記のように、湿田モードを選択して比較的弱いブレーキ力によって旋回する場合にあっても、土壌が軟弱な圃場にあっては、旋回内側のクローラがロック状態となって走行不能となり、作業性の低下を招く場合があった。
【特許文献1】特開2003−146239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、土壌が軟弱な圃場を含む幅広い湿田条件において、旋回内側のクローラのロック状態を回避して安定した旋回動作が可能となる農作業車用旋回制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、旋回操作具の操作量に応じて初期作動圧からブレーキ位置作動圧の範囲で一様に変化する旋回操作特性により、機体走行用の左右の伝動系の一方に加える減速用作動圧を制御して機体を旋回制御する制御部からなり、上記旋回操作特性は、標準モードおよびそれより作動圧を小さく抑えた湿田モードの選択と対応して切替可能に、かつ、それぞれのブレーキ位置作動圧を調整可能とする農作業車用旋回制御装置において、上記湿田モード用の旋回操作特性は、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満の場合にこのブレーキ位置基準圧力からの差分を旋回操作具の全操作範囲で減速用作動圧から一律に差し引いた旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする。
湿田モードの選択時には、ブレーキ位置作動圧の調整が所定のブレーキ位置基準圧力未満であればその差分が全操作範囲で一律に差し引かれて減速用作動圧が修正され、この旋回操作特性による減速用作動圧により、旋回操作具の操作量に応じて機体が旋回制御される。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記旋回操作具の最小操作量と対応する初期作動圧は、その変化範囲の下限を所定の初期位置下限圧力とし、この初期位置下限圧力と対応するブレーキ位置作動圧未満に前記ブレーキ位置作動圧が調整された場合に、上記初期作動圧から前記ブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に減速用作動圧を加える旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする。
湿田モードの選択時に、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満でその初期作動圧が所定の下限値に達することとなる場合は、この初期作動圧から上記ブレーキ位置作動圧までの範囲で旋回操作具の操作量と対応して一様に変化する減速用作動圧により機体が旋回制御される。
【0007】
請求項3に係る発明は、左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を規定する切替クラッチについて旋回操作具の操作量と対応して直進用の高速から旋回用の低速までの範囲で作動圧を調節制御する農作業車用旋回制御装置において、上記切替クラッチの作動圧制御は、急旋回制御によって作動圧を増加可能とし、かつ、速度比制御によって左右の伝動系の速度比を固定可能とし、これら急旋回制御と速度比制御とを選択操作によって切替可能に制御することを特徴とする。
上記切替クラッチの作動圧の制御により、左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を介して機体が旋回制御され、また、急旋回制御と速度比制御が選択操作に応じて切替えられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の効果は、湿田モードの選択時には、ブレーキ位置作動圧の調整が所定のブレーキ位置基準圧力未満であればその差分が全操作範囲で一律に差し引かれて減速用作動圧が修正され、この旋回操作特性による減速用作動圧により、旋回操作具の操作量に応じて機体が旋回制御されることから、上記農作業車用旋回制御装置により、ブレーキ位置作動圧を調整操作することによって小なる初期作動圧による旋回が可能となるので、旋回内側のクローラがロックして旋回不能となるような事態を回避して、やや軟らかめの圃場から超湿田までの幅広い条件に対応することができる。
【0009】
請求項2の効果は、湿田モードの選択時に、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満でその初期作動圧が所定の下限値に達することとなる場合は、この初期作動圧から上記ブレーキ位置作動圧までの範囲で旋回操作具の操作量と対応して一様に変化する減速用作動圧により機体が旋回制御されることから、上記農作業車用旋回制御装置により、ブレーキ位置作動圧を大幅に落として調整した場合でも、旋回操作具の操作量に応じたブレーキによる旋回が可能となるので、旋回内側のクローラがロックして旋回不能となるような事態を回避して、やや軟らかめの圃場から超湿田までの幅広い条件に対応することができる。
【0010】
請求項3の効果は、上記切替クラッチの作動圧の制御により、左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を介して機体が旋回制御され、また、急旋回制御と速度比制御が選択操作に応じて切替えられることから、上記構成の農作業車用旋回制御装置により、オペレータは、圃場条件に応じて急旋回制御と速度比制御を選択操作することができるので、幅広い圃場条件に適応できるとともに、緩旋回による圃場面の保護や急旋回による作業性向上等のそれぞれの意図に沿った圃場作業が可能となり、オペレータの幅広い個人差に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明の農作業車用旋回制御装置を適用するコンバインは、例えば、図1に示すように、刈取部A、脱穀部B、収納部C、搬出部D等の作業機と、走行用の左右のクローラE,Eと、作業機稼動および機体走行を操作するための操縦部F等を備える。この機体内には、図示せぬ原動機とその動力を受けて左右のクローラE,E等を駆動制御する走行伝動装置、農作業車用旋回制御装置等を備える。
【0012】
上記コンバインの走行伝動装置は、その機体の進行方向を変えるべく旋回走行する場合には、左右のクローラE,Eの旋回内側の回転を調節するべく、走行伝動装置の旋回調節部において、左右の走行系の旋回内側の回転伝動を走行伝動系から旋回調節系に切り替え、この旋回調節系に設けた切替クラッチを介して旋回内側の回転速度を調節する。
【0013】
具体的には、走行伝動装置1は、その展開断面図を図2に示すように、原動機動力を前後進可能に無段変速する図示せぬ無段変速部の変速動力を受ける入力軸3からその動力伝達を受けて伝動を切り替える伝動切替部材5を摺動可能に支持する副変速軸6と、伝動切替部材5により多段変速出力する副変速カウンタ軸7と、その動力を左右の伝動系に係脱可能に分岐する左右のサイドクラッチギヤ8,8を軸支するサイドクラッチ軸9と、このサイドクラッチ軸9から直進用と旋回用の高低2速を出力するギヤ9a,9bの伝動を切替える予圧型の2連クラッチ(切替クラッチ)10a,10bを備える切替クラッチ軸11と、この切替クラッチ軸11の出力ギヤ11gをデフケース12cに受ける差動機構12と、この差動機構12の両側に差動出力する左右の差動ギヤ13,13、および、左右のサイドクラッチギヤ8,8とそれぞれ噛合する左右の出力ギヤ14,14と、この左右の出力ギヤ14,14から減速伝動される左右の走行軸15,15等を備えて構成される。
【0014】
上記構成の走行伝動装置1は、伝動切替部材5により選択された副変速速度において、左右のサイドクラッチギヤ8,8から左右の出力ギヤ14,14を経て左右の走行軸15,15を同速に伝動して直進走行を行い、この時、差動機構12を同期させるために、切替クラッチ軸11に高速のギヤ9aの出力を受ける。また、旋回走行に際しては、旋回操作具として操縦部Fに設けた所謂パワステレバーを旋回内側方向に傾動操作することにより、制御部が旋回内側のサイドクラッチギヤ8の伝動を遮断するとともに、2連クラッチ10a,10bの注入圧力を制御することにより、減速動力が差動機構12のデフケース12cに伝動され、旋回内側の差動ギヤ13から走行軸15に到る伝動系が調節される。
【0015】
上記走行伝動装置1による旋回調節は、サイドクラッチ軸9の旋回用の低速ギヤ9bによる減速範囲内で、2連クラッチ10a,10bへの注入圧力に応じて定められる内外側の伝動速度差に応じた旋回半径で機体旋回が可能となる。具体的には、旋回内側の伝動速度が外側より低速の緩旋回から、旋回内側を停止速(速度ゼロ)とするブレーキ旋回、旋回内側が外側伝動系と逆方向の所定速(例えば、外側速度の1/3)とするスピン状の急旋回までの範囲でパワステレバーの操作により機体旋回が可能となる。この走行伝動装置の伝動系の構成と旋回動作についての詳細な説明は、別途、後述する。
【0016】
上記走行伝動装置1を制御する旋回制御装置の制御部31は、図3の入出力系統図に示すように、湿田切替を入力するための湿田モードスイッチ32、旋回力アップ操作を入力するための旋回力アップスイッチ33、旋回操作具の傾動操作を入力するためのパワステレバーポジションセンサ34、標準モードブレーキ圧を調節設定するための調整ダイヤル35、湿田モードブレーキ圧を調節設定するための調整ダイヤル36等を入力接続し、切替クラッチ10a,10bへの注入圧力を調節する調整ソレノイド37、右または左のサイドクラッチを係脱制御するためのプッシュシリンダソレノイド38a,38b等を出力接続する。
【0017】
上記制御部31は、パワステレバーポジションセンサ34の信号と対応して調整ソレノイド37等を制御することにより、パワステ(旋回操作具)による左右方向のそれぞれの傾動操作角度に応じて切替クラッチ10a,10bへの注入圧力を変化させ、左右の伝動系が同速の直進走行から片側の伝動系を抑速して旋回走行までの範囲について、所定の旋回操作特性に沿って制御する。
【0018】
制御部31による旋回操作特性は、図4の操作特性図(構成例1)に示すように、旋回操作具の左右の傾動操作範囲において、中立不感帯による初期角度位置A0から所定のブレーキ角度位置Abを経て最大角度位置Afまでの各角度位置に対する旋回作動圧Pを定めた特性線により表される。また、各種の条件に合わせて旋回制御するために、上記特性線を変更可能とし、または、特性線を複数種類を設定して選択切替え可能に制御部を構成する。
【0019】
標準モードでは、各角度位置と対応して初期作動圧P0からブレーキ位置作動圧Pbまで一様に変化し、最大角度位置Afまで一定の標準モード特性線Cとして設定する。湿田モードスイッチ32によるモード切替時は、湿田における機体旋回性と対応するように、小圧力の初期作動圧P0wからブレーキ位置作動圧Pbwまで圧力を抑えて一様に変化する湿田モード特性線Cwにより旋回制御する。
【0020】
この湿田モード特性線Cwにおけるブレーキ位置作動圧Pbwは、調整ダイヤル36の調節操作によって増減変更し、そのダイヤル位置と対応して特性線を変更するとともに、その特性パターンを切替えるために所定のブレーキ位置基準圧力Pbsを設定する。調整ダイヤル36によって調整したブレーキ位置作動圧がブレーキ位置基準圧力Pbsから標準モードのブレーキ位置作動圧Pbまでの範囲については、初期作動圧P0wからブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に変化するように特性線を変更可能に構成(第一調整範囲)し、ブレーキ位置作動圧がブレーキ位置基準圧力Pbs未満の範囲については、その差分を全角度範囲で低減するように特性線を変更可能に構成(第二調整範囲)する。また、必要により、所定の初期位置下限圧力P0Lを設定し、これを初期作動圧P0wの変更下限としてその対応するブレーキ位置対応圧力PbLを下限として調整ダイヤル36による変更調整範囲を限定する。
【0021】
上記制御部による旋回操作特性は、湿田モードの選択時には、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力Pbsと比較され、このブレーキ位置基準圧力Pbs未満と判定されればその差分が差し引かれて減速用作動圧が小さく修正され、この旋回操作特性による減速用作動圧により、旋回操作具の操作量に応じて機体が旋回制御される。したがって、上記農作業車用旋回制御装置により、ブレーキ位置作動圧を小さく調整することによって小なる初期作動圧による旋回が可能となるので、旋回内側のクローラがロックして旋回不能となるような事態を回避して、やや軟らかめの圃場から超湿田までの幅広い条件に対応することができる。
【0022】
次に、上記操作特性に加えて更に広範囲に特性変更する例を図5の操作特性図(構成例2)により説明する。
上記ブレーキ位置作動圧が調整ダイヤル36により減少調節され、これに伴って初期作動圧P0wが所定の初期位置下限圧力P0Lに達した場合の対応するブレーキ位置作動圧をブレーキ位置対応圧力PbLとし、このブレーキ位置対応圧力PbL未満の範囲については、初期位置下限圧力P0Lからブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に変化するように特性線を変更可能に構成(第三調整範囲)する。
【0023】
このように構成することにより、調整ダイヤル36による調整域を前述の範囲よりさらに拡大し、更に小なる作動圧による旋回制御(第三調整範囲)が可能となるので、更に幅広い圃場条件に対応して機体を安定して旋回制御することが可能となる。
【0024】
次に、上記旋回操作特性により旋回制御する場合において、ブレーキ作動圧を圃場条件に応じて調整する例について説明する。
制御部41は、図6の入出力系統図(構成例3)に示すように、車体水平制御機能43,44を備え、また、ブレーキ圧の調整とパワステレバー用の湿田モード機能32等を備え、図7の旋回制御操作特性図(構成例3)の対応特性線Csに示すように、ブレーキ力が湿田モード状態で車体用湿田モード機能42が選択された時に、ブレーキ圧が自動的に低くなる特性Csに切替るように構成する。
【0025】
このように、自動的にブレーキ圧が調整されることから、圃場状態に合ったブレーキ力が得られるので、圃場条件適応性が向上する。また、オペレータによるブレーキ力の調整頻度が軽減されるため、操作性を向上することができる。
【0026】
次に、切替スイッチにより旋回制御操作特性を切替える例について説明する。図8の制御部50の入出力構成例の系統図に示すように、デフ構成旋回機構のブレーキ圧調整により旋回制御し、標準モードと湿田モードを切替えるスイッチ51を設け、湿田モード時にHSTレバーのスイッチ52により、旋回の内外側の速度比をフィードバック制御による固定制御とブレーキ圧が昇圧される小回り旋回制御とをオペレータが選択可能に構成する。
【0027】
上記制御部50により、フィードバック制御と小回り旋回制御とをオペレータが選択できることから、圃場状態に合った機能を選択できるので、圃場条件適応性が向上する。また、オペレータの個人差による対応も可能となり、旋回時の駆動力確保のために緩旋回を選択したり、効率化のために旋回力アップを選択できるので、操作性を向上することができる。上記制御部は、標準モード時についても同様に構成することにより、湿田モード時に限らず、標準モード時において上記同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
次に、自動方向制御については、図9の制御部61の入出力構成例の系統図(構成例1)に示すように、自動方向制御機能62、前後傾斜機能を備える場合において、図10の制御特性図(構成例1)に示すように、方向制御圧力をピッチングセンサ63による前後傾斜量に応じて自動方向制御圧力(ACD圧力)を低くするように制御部を構成する。
【0029】
このように構成することにより、従来のような自動方向制御の圧力を一定に設定することに伴う適合性の限定範囲が拡大されて追従性が良くなることから、機体へのショックが少なくなることにより操作性が向上し、また、圃場条件に対する自動方向制御の適応性が向上することにより、適用可能な圃場が多くなるので、オペレータの作業負荷を軽減することができる。
【0030】
同様にして、自動方向制御については、図11の制御部71の入出力構成例の系統図(構成例2)に示すように、自動方向制御機能62、車高上下機能を備える場合において、図12の制御特性図(構成例2)に示すように、方向制御圧力(ACD圧力)を車高上げ量に応じて自動方向制御圧力を低くするように構成することにより、前記同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
また、図13の制御部81の入出力構成例の系統図(構成例3)に示すように、車体水平制御機能を選択している時、または、ブレーキ力が湿田モード状態で、車体用湿田モード機能82が選択された時に、自動方向制御圧力を低く設定することにより、上記同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
次に、旋回力アップ制御については、図14の制御部91aの入出力構成例の系統図(構成例1)に示すように、左右傾斜センサ92を設け、図15のフローチャート(構成例1)に示すように、左右傾斜に応じて旋回力アップを牽制制御するように制御部を構成することにより、機体が左右に傾斜した時に旋回力アップが牽制されて安全性を向上することができる。
【0033】
同様にして、図16の制御部91bの入出力構成例の系統図(構成例2)に示すように、前後傾斜センサ93を設け、図17のフローチャート(構成例2)に示すように、前後傾斜に応じて旋回力アップを牽制制御するように制御部を構成することにより、機体が前後に傾斜した時に旋回力アップが牽制されて安全性を向上することができる。
【0034】
つぎに、前述の走行伝動装置(走行ミッション装置)における旋回動作について伝動系の構成とともに詳細に説明する。
図18は、詳細説明用の走行ミッション装置14を展開して示す断面図であり、また、図19に差動歯車装置のギアの回転数の関係図を示す。図20にはクラッチ軸70部分の拡大図を示す。
【0035】
走行ミッション装置14は、図18に示す油圧式無段変速装置(走行用HST)18の出力軸17、第一副変速軸27、第二副変速軸33、サイドクラッチ軸41、ホイール軸11からなる走行トランスミッション基本伝動系とカウンタ軸60、クラッチ軸70及び差動歯車機構支持軸50を備えた走行ミッション差動伝動系(補助伝動系)を備えている。
【0036】
まず、走行ミッション装置14の走行トランスミッション基本伝動系を主に図18で説明する。
図示しないエンジンからの回転駆動力が走行用HST18に伝動され、正・逆転の切換えや変速回転動力が出力軸17から出力される構成としている。そして、主変速レバーgにより走行用HST18の増減速の変速と前後進(正・逆転の切換え)の切換えができる構成としている。
そして、操向レバーPを操作して、後述のサイドクラッチ41の「入」・「切」と増減速の変速操作により差動歯車装置6を駆動させて旋回走行ができる構成としている。
【0037】
走行ミッションケース12内には、副変速装置24とサイドクラッチ装置25と差動歯車装置6が設けられ、これらの装置の伝動下手側の左右のホイールシャフト11L、11Rから駆動スプロケット16L、16Rを介して左右の走行クローラe、eを駆動する構成になっている。
【0038】
走行用HST18の出力軸17の広幅伝動ギア26からの動力はカウンタ軸60のカウンタギア61に伝達され、該カウンタギア61から副変速装置24の第一副変速軸27上の伝動ギア62に動力が伝動される。
【0039】
副変速装置24の第一副変速軸27上に一体に設けられた大ギア28と中ギア29と小ギア30と第二副変速軸33上に設けられた変速大ギア34、変速中ギア35及び変速小ギア36から構成される。第一副変速軸27上に、一体に設けられたギア28〜30は副変速レバーtの操作で第一副変速軸27の軸方向に摺動自在に軸装して変速可能に構成している。そして、上記第一副変速軸27は、端部を走行ミッションケース12から外側に延長して刈取伝動プーリ(図示せず)を軸着して車速に同調した回転動力を刈取装置aなどの回転各部に入力できる構成としている。
【0040】
また、第二副変速軸33は、前記第一副変速軸27の伝動下手側に軸架し、変速大ギア34、変速中ギア35、変速小ギア36及び伝動ギア37をそれぞれ軸着している。第二副変速軸33のギア34〜37は不動で、第一副変速軸27上に、一体に設けられた大ギア28と中ギア29と小ギア30が図示しないシフタにより摺動するので、第二副変速軸33の変速大ギア34は前記第一副変速軸27の小ギア30に噛合し、変速中ギア35は第一副変速軸27の中ギア29に噛合し、変速小ギア36は第一副変速軸27の大ギア28にそれぞれ噛合する。さらに伝動ギア37はサイドクラッチ装置25のセンターギア40に常時噛合している。
【0041】
サイドクラッチ装置25は、センターギア40を中心として、その左右に伸びるサイドクラッチ軸41を一体で備えている。該サイドクラッチ軸41上にはそれぞれスリーブ42L、42Rが遊嵌しており、前記センターギア40にはクラッチギア43L、43Rが係合、解放可能な爪40bL、40bRを備えている。また、クラッチギア43L、43Rはサイドクラッチ軸41上にスプライン係合したクラッチギア43Lと一体のスリーブ42Lとともにサイドクラッチ軸41上を摺動する。
【0042】
クラッチギア43L、43Rはカウンタ軸63に遊嵌している伝動ギア64L、64Rに常時噛合しているので、クラッチギア43L、43Rからの動力は伝動ギア64L、64Rからギア63La、63Raを経由してホイールシャフトギア48L、48Rに伝達され、ホイールシャフトギア48L、48Rからホイールシャフト11L、11Rを経由し、駆動スプロケット16L、16Rから左右の走行クローラe,eに伝達される。
【0043】
爪クラッチ式に噛合したクラッチギア43L、43Rとセンターギア40の爪部40bL、40bRからなる構成をそれぞれサイドクラッチ44L、44Rと呼ぶことにする。
また、スリーブ42L、42Rと走行ミッションケース12との間にそれぞれスプリング46L、46Rが設けられ、このスプリング46L、46Rによりスリーブ42L、42Rとクラッチギア43L、43Rは常時センターギア40側に付勢されている。そして、旋回時に油圧力でシフタ47L、47Rのいずれかを作動させて対応する前記スプリング46L、46Rのいずれかの付勢力に打ち勝つ方向に移動可能な構成になっている。これにより、旋回内側のサイドクラッチ44L又は44Rが切れる。
【0044】
シフタ47L、47Rは直進走行時には作動せず、サイドクラッチ44L、44Rが共に係合した状態であるので、後述の伝達経路で左右の走行クローラe,eが等速回転する。また所望の旋回方向に操向レバーPを操作することでシフタ47L又は47Rが作動して、旋回内側のサイドクラッチ44L又は44Rの係合と解放が選択される。
【0045】
センターギア40の外周ギア40aはクラッチ軸70上に遊嵌している円筒回転体72のギア72aと常時噛合している。該円筒状回転体72と爪係合している円筒体72bとクラッチ軸70にスプライン係合している円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる直進用クラッチ81を構成している。
【0046】
また、円筒状回転体72の外周には円筒状回転体74が遊嵌しており、該円筒状回転体74にはセンターギア40の第三のギア40cに常時係合しているギア74aを備えている。また円筒状回転体74と円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる旋回用クラッチ82を構成している。直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82との間には圧縮バネ75が配置され、該圧縮バネ75の付勢力は直進用クラッチ81が「入」となるように設置されている。
また、円筒状回転体71の外周には直進用クラッチ81と圧縮バネ75と旋回用クラッチ82の間をそれぞれ仕切る円盤状プレート76a、76bを備えた円筒体76が一体化して設けられている。
【0047】
油口77から圧油の導入がない場合には圧縮バネ75によって円筒状回転体71と円筒状回転体72との間で常時直進用クラッチ81が係合する「入」方向に付勢されている。直進用クラッチ81は常時「入」状態を保ち、旋回用クラッチ82は常時「切」状態を保っている。
【0048】
油口77から圧油の導入があると、ピストン73と円筒体76の円盤状プレート76aと76bがバネ75の付勢力に打ち勝って図18の左側方向にシフトし、直進用クラッチ81は解放(「切」状態)となり、旋回用クラッチ82が係合(「入」状態)になる。
【0049】
直進用クラッチ81が「入」の場合は副変速装置24からの駆動力がサイドクラッチ軸41のセンターギア40の外周ギア40aと円筒状回転体72のギア72aを経由して円筒状回転体72、円筒体72b、直進用クラッチ81、円筒体76、円筒状回転体71、直進用クラッチ81及びクラッチ軸70を回転させ、該クラッチ軸70と一体の伝動ギア78と、該伝動ギア78に常時係合している差動歯車機構6のリングギア53を回転させる。このとき旋回用クラッチ82が「切」であるのでセンターギア40の第三ギア40cに常時噛合している円筒状回転体74のギア74aの回転動力はクラッチ軸70には伝達されないで円筒状回転体74は空回りする。
【0050】
また、旋回用クラッチ82が「入」の場合は、直進用クラッチ81が「切」となり、クラッチ軸70に遊嵌している円筒状回転体72を空回りさせるが、このときセンターギア40の第三ギア40cからの駆動力が円筒状回転体74のギア74aを経由して円筒状回転体74から旋回用クラッチ82と円筒体76を経由して円筒状回転体71を回転させ、該回転体71の回転でクラッチ軸70を駆動させる。この結果、クラッチ軸70に固定された伝動ギア78が回転して、該伝動ギア78に常時係合している差動歯車装置6のリングギア53を回転させる。
【0051】
差動歯車装置6には、中間ベベルギア52の外周に設けたデフケース54と一体のリングギア53が設けられており、また、支持軸50には側部ベベルギア51L、51Rが回転可能に支持されており、また、側部ベベルギア51L、51Rの外周には左右のサイドギア55L、55Rがそれぞれ固定している。
これらサイドギア55L、55Rはカウンタ軸63にそれぞれ係合し、伝動ギア64L、64Rはカウンタ軸63に遊嵌し、伝動ギア64Lとカウンタ軸63Lは一体であり、ギア63Laはホイールシャフトギア48Lに常噛している。
【0052】
図18から明らかなように、直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82を同一軸であるクラッチ軸70に設けることにより両クラッチ81、82を択一的に操作できるので、構成が簡素化でき、安価になる。また両クラッチ81、82の切り替えのタイミングを機械的に調整できるので複雑な制御が不要となる。
【0053】
上記構成からなる走行ミッション装置14のギア機構において、コンバインの直進時はサイドクラッチ装置25の左右のサイドクラッチ44L、44Rが共に係合したままであり、エンジン動力は副変速装置24の第二副変速軸33に伝達され、該第二副変速軸33の出力ギア37を経由してセンターギア40に伝達される。該センターギア40にはサイドクラッチ軸41が共に係合しているので、センターギア40の回転力はクラッチ44L、44Rを介してクラッチギア43L、43Rに伝達され、該クラッチギア43L、43Rに常時係合している伝動ギア64L、64Rに伝達され、伝動ギア64L、64Rからカウンタ軸63のギア63La、63Raとホイールギア48L、48Rをそれぞれ経由して左右の走行クローラeが共に回転する。
【0054】
副変速レバーtの作動で副変速シフタステー32が副変速装置24の第一副変速軸27のギア28、29、30とそれぞれ対応する第二副変速軸33のギア34、35、36のいずれかの組のギア同士を噛合させて、適切な速度段で直進走行ができる。
このとき直進用クラッチ81は「入」で、旋回用クラッチ82は「切」であり、直進時の差動歯車装置6の状態は次の通りである。
【0055】
(イ)第二副変速軸33の駆動力がセンタギア40の爪ギア40bL、40bRとを経由してサイドクラッチ装置25のサイドクラッチ44L、44R及び左右のサイドクラッチ軸41のクラッチギア43L、43Rを経由して伝動ギア64L、64Rが共に回転しているので、伝動ギア64L、64Rがそれぞれ噛合している差動歯車装置6のサイドギア55L、55Rは同じ方向に共に等速回転する。従って、サイドギア55L、55Rとそれぞれ一体回転する側部ベベルギア51L、51Rを介してデフケース54と該デフケース54と一体のリングギア53も同じ方向に回転し、前記側部ベベルギア51L、51Rに噛み合っている中間ベベルギア52、52aが支持軸50を中心に公転する。
【0056】
(ロ)第二副変速軸33の駆動力がセンターギア40の外周ギア40aから回転円筒体72に伝達され回転円筒体72と爪係合する円筒体72b、直進用クラッチ81、円筒体76のプレート76a、円筒状回転体71、クラッチ軸70、伝動ギア78及びリングギア53に順次動力伝達され、リングギア53と同じ回転方向にベベルギア52も回転する。
【0057】
このようにリングギア53は上記(イ)、(ロ)の二系統から回動されるので上記(イ)、(ロ)の二系統からのリングギア53への変速比を同じに設定する。従ってサイドクラッチ44L又は44Rを「切」にしたとき、上記(ロ)の伝動系統からの動力がリングギア53からサイドギア55L、55Rと伝動ギア64L、64R、カウンタギア63La、63Ra、ホイールシャフトギア48L、48Rにそれぞれ伝わるので、ショックが防止される。また、センターギア40と一体の第三ギア40cから、ギア74a、円筒状回転体74に伝達される旋回用の動力は、旋回用クラッチ82で空転している。
【0058】
次に前記ギア機構の左旋回時の作動について説明する。
操向レバーPを左側に傾斜させることで、シフタ47Lを作動させ、サイドクラッチ44Lを「切」にすると、図示しない機構により油口77から圧油が導入され、ピストン73と円筒体76が図18の左方向に移動する。この移動により直進用クラッチ81を「切」として、旋回用クラッチ82を「入」とする。溶接で一体構成されたセンターギア40と第三のギア40cの回転力は旋回用クラッチ82の円筒状回転体74の外周に設けられた対応するギア74a、旋回用クラッチ82、円筒体76、円筒状回転体71、クラッチ軸70、伝動ギア78、リングギア53、側部ベベルギア51L、サイドギア55L、カウンタ軸63の伝動ギア64L、ギア63La、ホイールシャフトギア48L、クローラ駆動スプロケット16Lをそれぞれ経由して左の走行クローラeを駆動させる。この時、センターギア40の動力はクラッチギア43Rからカウンタ軸63の伝動ギア64R、ギア63Ra、ホイールギア48R、クローラ駆動スプロケット16Rをそれぞれ経由して旋回外側の右の走行クローラeを駆動する。
【0059】
旋回用クラッチ82は、その多板式摩擦板を油圧力を無段階的(連続的)に設定した旋回モードまで制御することができる。なお、この旋回用クラッチ82の摩擦板の油圧力の制御は操縦席fに設けた操向レバーPに付属するポテンショメータ(図示せず)で検出される傾動角度の制御で行うことができる。
【0060】
センターギア40の第三のギア40cと円筒状回転体74のギア74aの変速比の関係により、例えば旋回用クラッチ82を完全に接続させた場合にサイドギア55Lの回転数はサイドクラッチ44R側のサイドギア55Rの回転数の−1/3になり、急旋回(スピンターン)状態になるように設定しているので、緩旋回からブレーキ旋回と急旋回への移行が可能になっている。
【0061】
すなわち、図19に示すように左旋回時には旋回外側であるサイドクラッチ44Rが「入」状態であるので、ホイールシャフトギア48Rの回転がクラッチギア43Rから一定回転で伝動されるとともに、クラッチギア43Rの回転はサイドギア55Rを一定回転で伝動する。一方、リングギア53の回転数が旋回用クラッチ82の摩擦力が強くなるに従い減速されていくと、それに比例してサイドギア55Lの回転数が減少していく。リングギア53の回転数がサイドギア55Rの1/2になると、サイドギア55Lはゼロ回転となり、サイドギア55Lからホイールシャフトギア48Lを経由する回転数がゼロになり、左走行クローラeにブレーキが利いているのではないが左走行クローラeが回転しない、いわゆるブレーキ旋回が行われる。
さらにリングギア53が減速していくと、サイドギア55Rの回転方向に対してサイドギア55Lは逆転回転をして左走行クローラeが逆回転し、いわゆる急旋回が行われる。
【0062】
サイドギア55Rの回転数に対してサイドギア55Lの逆転回転数は、ギア40cとギア74aの変速比を図19の点Xに設定していると、サイドギア55Lがサイドギア55Rに対して−1/3スピンターンまで実行可能な逆転回転数まで設定が可能である。
また、右旋回選択時はサイドクラッチ44Rを「切」にすることで、前記左旋回と全く逆の作動が走行ミッション装置14で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の農作業車用旋回制御装置を適用したコンバインの側面図である。
【図2】旋回調節部を備える農作業車用旋回制御装置の展開断面図である。
【図3】旋回制御装置の制御部の入出力系統図である。
【図4】旋回操作特性図(構成例1)である。
【図5】旋回操作特性図(構成例2)である。
【図6】旋回制御装置(構成例3)の制御部の入出力系統図である。
【図7】旋回操作特性図(構成例3)である。
【図8】機能選択構成例の制御部の入出力系統図である。
【図9】自動方向制御(構成例1)の入出力構成例の系統図である。
【図10】自動方向制御(構成例1)の制御特性図である。
【図11】自動方向制御(構成例2)の入出力構成例の系統図である。
【図12】自動方向制御(構成例2)の制御特性図である。
【図13】自動方向制御(構成例3)の入出力系統図である。
【図14】旋回力アップ制御(構成例1)の入出力系統図である。
【図15】旋回力アップ制御(構成例1)のフローチャートである。
【図16】旋回力アップ制御(構成例2)の入出力系統図である。
【図17】旋回力アップ制御(構成例2)のフローチャートである。
【図18】詳細説明用のトランスミッション装置の展開断面図である。
【図19】差動歯車装置のギア回転数の関係図である。
【図20】クラッチ軸の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0064】
1 走行伝動装置
10a,10b 切替クラッチ
31 制御部
32 湿田モードスイッチ
34 パワステレバーポジションセンサ
36 調整ダイヤル
37 調整ソレノイド
38a,38b プッシュシリンダソレノイド
41 制御部
A0 初期角度位置
Ab ブレーキ角度位置
Af 最大角度位置
C 標準モード特性線
Cw 湿田モード特性線
P0L 初期位置下限圧力
P0w 初期作動圧
PbL ブレーキ位置対応圧力
Pbs ブレーキ位置基準圧力
Pbw ブレーキ位置作動圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回操作具の操作量に応じて初期作動圧からブレーキ位置作動圧の範囲で一様に変化する旋回操作特性により、機体走行用の左右の伝動系の一方に加える減速用作動圧を制御して機体を旋回制御する制御部からなり、上記旋回操作特性は、標準モードおよびそれより作動圧を小さく抑えた湿田モードの選択と対応して切替可能に、かつ、それぞれのブレーキ位置作動圧を調整可能とする農作業車用旋回制御装置において、
上記湿田モード用の旋回操作特性は、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満の場合にこのブレーキ位置基準圧力からの差分を旋回操作具の全操作範囲で減速用作動圧から一律に差し引いた旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする農作業車用旋回制御装置。
【請求項2】
前記旋回操作具の最小操作量と対応する初期作動圧は、その変化範囲の下限を所定の初期位置下限圧力とし、この初期位置下限圧力と対応するブレーキ位置作動圧未満に前記ブレーキ位置作動圧が調整された場合に、上記初期作動圧から前記ブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に減速用作動圧を加える旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする請求項1記載の農作業車用旋回制御装置。
【請求項3】
左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を規定する切替クラッチについて旋回操作具の操作量と対応して直進用の高速から旋回用の低速までの範囲で作動圧を調節制御する農作業車用旋回制御装置において、
上記切替クラッチの作動圧制御は、急旋回制御によって作動圧を増加可能とし、かつ、速度比制御によって左右の伝動系の速度比を固定可能とし、これら急旋回制御と速度比制御とを選択操作によって切替可能に制御することを特徴とする農作業車用旋回制御装置。
【請求項1】
旋回操作具の操作量に応じて初期作動圧からブレーキ位置作動圧の範囲で一様に変化する旋回操作特性により、機体走行用の左右の伝動系の一方に加える減速用作動圧を制御して機体を旋回制御する制御部からなり、上記旋回操作特性は、標準モードおよびそれより作動圧を小さく抑えた湿田モードの選択と対応して切替可能に、かつ、それぞれのブレーキ位置作動圧を調整可能とする農作業車用旋回制御装置において、
上記湿田モード用の旋回操作特性は、ブレーキ位置作動圧が所定のブレーキ位置基準圧力未満の場合にこのブレーキ位置基準圧力からの差分を旋回操作具の全操作範囲で減速用作動圧から一律に差し引いた旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする農作業車用旋回制御装置。
【請求項2】
前記旋回操作具の最小操作量と対応する初期作動圧は、その変化範囲の下限を所定の初期位置下限圧力とし、この初期位置下限圧力と対応するブレーキ位置作動圧未満に前記ブレーキ位置作動圧が調整された場合に、上記初期作動圧から前記ブレーキ位置作動圧までの範囲で一様に減速用作動圧を加える旋回操作特性により旋回制御することを特徴とする請求項1記載の農作業車用旋回制御装置。
【請求項3】
左右の伝動系の間に介設した差動機構のデフケース入力を規定する切替クラッチについて旋回操作具の操作量と対応して直進用の高速から旋回用の低速までの範囲で作動圧を調節制御する農作業車用旋回制御装置において、
上記切替クラッチの作動圧制御は、急旋回制御によって作動圧を増加可能とし、かつ、速度比制御によって左右の伝動系の速度比を固定可能とし、これら急旋回制御と速度比制御とを選択操作によって切替可能に制御することを特徴とする農作業車用旋回制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−8043(P2006−8043A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191137(P2004−191137)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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