説明

透水構造材

【課題】透水性路盤を施工するための透水構造材であって、高い強度と高い透水性とを両立しつつ、さらに高い生産性と高い品質安定性を兼ね備える透水構造材を提供する。
【解決手段】 高炉水砕スラグと粒径5mm以下である高炉水砕スラグを含有しない骨材とからなり、前記骨材の含有量が40質量%以上であって、前記透水構造材の均等係数が6.73以下である。前記骨材は、鉄鋼スラグ、廃レンガ、廃コンクリート、砕石、砂利、玉砕および砂からなる群から選ばれる一種または二種以上で構成されるものであることが好ましく、かかる構造材は人工芝路盤材として使用されることが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉水砕スラグと骨材とを混合した透水構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年都市化が進むにつれ、地表面におけるアスファルト面積が増え、地表面から地中への降雨の浸透量が減少することが、地下水の枯渇やヒートアイランド現象の一因とされてきた。その対策として、降雨が舗装された地表面から地中へ浸透する量が増加できるように、透水性機能を備えた舗装材や路盤材の採用が増加してきている。
【0003】
一般的な透水構造材は透水性を高めるために路盤材を単粒度構成とし、支持力確保のために、舗装材にセメント系材料と水とを混練したセメントペースト材料を用いた透水構造材が知られている。この中で、道路用の構造材(路盤及び加熱アスファルト混合物)に使用される鉄鋼スラグについては、JISA5015に詳細に規定されており、この規格に適合する範囲において、強度や透水性を高めることが検討されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、骨材とエポキシ樹脂とを混合することにより得られる透水性舗装であって、空隙率が5〜20容量%であり、上記エポキシ樹脂接着剤が2液性の常温速硬化型であり、且つその20℃における粘度が800〜1100mPa/sec、引張強度が320kg/cm以上である透水性舗装が開示されている。
【0005】
特許文献2には、高炉にて副生する高炉徐冷スラグなどの粒度25〜5mmの粗粒品、石灰石などの粒度5〜0mmの中粒品、高炉水砕スラグなどの粒度2.5〜0mm細粒品のうち少なくとも一つと、1〜14重量%の高炉水砕スラグ微粉末とからなる骨材と:1〜14重量%のアルカリ刺激材と:を主体とし、骨材の粒度曲線は、特定の範囲内にある透水性組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3には、粒径が5〜40mmである高炉徐冷スラグ又は製鋼スラグ50〜90質量%と、粒径が10mm以下である高炉水砕スラグ50〜10質量%とを含有する透水性路盤材料が開示されている。
【0007】
特許文献4には、重量で:微粉末化しておらず細粒分が少ないままの最大粒径5mm以下の高炉水砕スラグ75〜35%:比表面積3000〜4500cm/gの高炉水砕スラグ微粉末3〜10%、最大粒径15mm以下で、ふるい目0.4mm通過が15〜20%、ふるい目0.074mm通過が4〜10%の転炉スラグ20〜60%からなる水硬性舗装材が開示されている。
【0008】
特許文献5には、高炉水砕スラグに対し、塩化ナトリウム20〜30重量部、塩化マグネシウム20〜30重量部、塩化カリウム35〜45重量部、塩化カルシウム5〜15重量部及びクエン酸4〜8重量部からなる混合物を、整形された路盤状に敷設して、透水性を有する舗装を形成せしめる舗装工法が開示されている。
【0009】
特許文献6には、砕石、砂利もしくは鉱滓などの粒状材からなり、基礎地盤上に形成された下地層と、ゴムチップなどからなる高分子粒状材を樹脂でバインドし、上記下地層上において直接現場施工された層厚が15〜50mmの範囲である弾性層とを備え、同弾性層上に砂入り人工芝生を敷設した人工芝生製舗装構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−234503号公報
【特許文献2】特公平7−115909号公報
【特許文献3】特開2005−139829号公報
【特許文献4】特公平6−86318号公報
【特許文献5】特公平2−15504号公報
【特許文献6】実公平7−6165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの特許文献に開示される材料には次のような問題がある。
特許文献1に記載される透水性舗装は、エポキシ樹脂と骨材を混合したものであるため、透水性を高めるために空隙率を上げる必要があり、砕石等の骨材以外にエポキシ樹脂を使用している。しかし、エポキシ樹脂は、特に低温下(5℃以下)においては硬化が遅く、また、紫外線に弱いため別途紫外線防止剤を添加する必要もあり、施工性には優れていない。
【0012】
特許文献2に記載される透水性組成物では、粗粒品として25mm〜5mmの粒度範囲と広い範囲に分布している。そのため、施工時に粒度が不均一になりやすく、強度や透水性にばらつきが生じやすいといった問題がある。
【0013】
特許文献3に記載される透水性路盤材料では、高炉徐冷スラグや製鋼スラグを粗粒品として使用しているが、粒度範囲が広い。このため、施工時に粒度が不均一になりやすく、強度や透水性にばらつきが生じやすいといった問題がある。
【0014】
特許文献4に記載される水硬性舗装材は、高炉水砕スラグと高炉徐冷スラグと転炉スラグが混合されてなるものであるが、細粒部が多く、さらに単粒度でないため、透水性を得ることが難しく、透水性が必要な舗装では使用ができない。
【0015】
特許文献5に記載される混合物は、高炉水砕スラグ以外に塩化ナトリウムや塩化マグネシウム等の無機塩類といった添加材が混合されてなるものであり、強度発現のために約半ヶ月養生する必要がある。そのため、施工時間が長い。
【0016】
特許文献6に記載される人工芝生製舗装構造体は、砕石層の上にゴムチップを樹脂でバインドした弾性層の2層構造となっている。この技術では従来の方法に比較すると施工期間やコストを改善したものであるが、まだ十分とは言えない。また、透水性を確保する場合には弾性層の空隙率を高く保持することを述べているが、強度と透水性を同時に満足するものは得られにくい。
【0017】
本発明は、上記の従来技術の問題点を克服し、高い強度と高い透水性とを両立しつつ、さらに高い生産性と高い品質安定性を兼ね備える透水構造材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために提供される本発明は以下のとおりである。
(1)透水性路盤を施工するための透水構造材であって、高炉水砕スラグと粒径5mm以下である高炉水砕スラグを含有しない骨材とからなり、前記骨材の含有量が40質量%以上であって、前記透水構造材の均等係数が6.73以下であることを特徴とする透水構造材。
【0019】
(2)前記骨材が、鉄鋼スラグ、廃レンガ、廃コンクリート、砕石、砂利、玉砕および砂からなる群から選ばれる一種または二種以上で構成されるものであることを特徴とする上記(1)に記載された透水構造材。
【0020】
ここで、「鉄鋼スラグ」の具体的なものとして、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグが例示され、「砕石」の具体的なものとして、単粒度砕石、切込砕石、粒度調整砕石が例示され、「砂利」の具体的なものとして、山砂利、川砂利、海砂利が例示される。
【0021】
(3)人工芝路盤材として使用されることを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載された透水構造材。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る透水構造材は、充分な強度と高炉水砕スラグが単粒度であることから得られる透水性とを兼ね備える。また、高炉水砕スラグも骨材も単粒度であるうえにそれぞれの粒度範囲が狭いことから、それぞれの粒度分布の均一性が高く、かつ透水構造材としての品質のばらつきが少ない。
【0023】
このような優れた特性を有するため、本発明に係る透水構造材は施工が簡単であって、しかも施工面の平坦性に優れている。そのうえ、骨材の中から鉄鋼スラグを選択すれば、副生品利用という面でも資源の有効リサイクルであり、二酸化炭素削減にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】骨材の配合率と修正CBRとの関係を示すグラフである。
【図2】骨材の配合率と透水係数との関係を示すグラフである。
【図3】実施例において使用したスラグの粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の透水構造材について以下に説明する。
本発明に係る透水構造材は透水性路盤を施工するためのものであって、高炉水砕スラグと粒径5mm以下である高炉水砕スラグを含有しない骨材とからなり、骨材の含有量が40質量%以上であって、透水構造材の均等係数が6.73以下である。
【0026】
ここで、「高炉水砕スラグ」とは、高炉から生成する溶融スラグに多量の圧力水を噴射することにより急冷した砂状のガラス質のスラグである。また、急冷されることでスラグは急激に熱収縮することから、製造過程においてスラグは自律的に破砕される。このため、高炉水砕スラグの大きさは製造条件(噴射水の圧力、量など)によらずおおむね5mm以下となる。したがって、本発明に係る高炉水砕スラグは実際には5mm超の粒径を有するものが存在する場合でも、そのようなものの粒径は10mm以下であってしかも存在比率は高々数質量%程度であり、製造過程において圧力水との接触が不十分であったものが例外的に含まれているに過ぎない。しかも、熱収縮によって自律的に破砕されるため、高炉水砕スラグは、表1に例示されるように、機械的な破砕により製造される高炉徐冷スラグに比べて均等係数が低く、相対的に粒径のばらつきが少ない(例えば、「土木用水砕スラグ」鉄鋼スラグ協会(1996)2頁参照)。
【0027】
【表1】

【0028】
「均等係数」とは、質量通過百分率において、60%に相当する粒径を10%に相当する粒径で除した値、すなわち(60%に相当する粒径/10%に相当する粒径)をいい、均等係数が小さいほど、粒径のばらつきが少ない。
【0029】
「高炉水砕スラグを含有しない骨材」における「高炉水砕スラグを含有しない」とは、骨材が大量に高炉水砕スラグを含有していると別途高炉水砕スラグの含有量を規定する意味がなくなるため、そのような大量の高炉水砕スラグを有さないという意味であり、骨材に若干量の高炉水砕スラグが含まれていても、その量が別途含有させる高炉水砕スラグの量に比べて十分に少なければ、骨材に含まれることは許容される。
【0030】
骨材として用いられる材料は特に限定されないが、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ(ここで、「製鋼スラグ」とは、転炉スラグおよび電気炉スラグの総称を意味する。)などの鉄鋼スラグ;廃レンガ、廃コンクリート、単粒度砕石、切込砕石、粒度調整砕石等の砕石;山砂利、川砂利、海砂利等の砂利;ならびに玉砕および砂から選ばれる一種または二種以上で構成されるものであれば、高炉水砕スラグの水硬特性を阻害することもなく、好適である。これらの中でも鉄鋼スラグを用いれば、副生品の利用となるため、リサイクルの観点から特に好ましい。
【0031】
続いて、高炉水砕スラグおよび骨材の含有量について説明する。
これらの含有量範囲を決定するために、高炉水砕スラグと骨材(粒径5mm以下)とを混合して得られる構造材の透水性および修正CBRについて確認した。その際、資源リサイクルという点でも優位性のある高炉徐冷スラグを、混合対象のうちの骨材として選択した。他の骨材(5mm以下)でも、強度、透水性ともに同等である。下表2のように骨材の配合率を変化させ、構造材の修正CBRおよび透水性を調査した。なお、各配合率における構造材の60%相当粒径、10%相当粒径、およびこれらから求められる均等係数は表2のとおりであった。
【0032】
【表2】

【0033】
その結果は図1、図2のようになった。
図1は骨材の配合率と構造材の修正CBRとの関係を示すグラフである。なお、「修正CBR値」とは、路盤材料や盛り土材料の品質基準を示す指標であって、JIS A 1210の呼び名E−bによって求めた最大乾燥密度の一般に95%の締固め度に相当するCBR値をいう。
【0034】
図1に示されるように、構造材の修正CBRの試験結果は、骨材の配合率が40質量%以上であれば目標値である80%(路盤材JIS規格値)以上となることを確認した。
図2は骨材の配合率と構造材の透水係数との関係を示すグラフである。なお、「透水係数」とは、多孔体中の間隙を流れる水の浸透速度は道水勾配に比例するという関係に基づいた比例係数を意味する。また、透水係数の目標値は気象庁で強い雨と定義している20mm/Hつまり5.6×10−4cm/sとした。
【0035】
図2に示されるように、骨材の配合率が30〜60質量%、すなわち構造材の均等係数として3.92〜6.73の場合には、骨材の配合率が増加するにつれて、構造材の透水係数は、減少傾向を示すものの目標値以上であり、所期の透水性を示した。これに対し、骨材の配合率が70質量%、すなわち構造材の均等係数として8.06の場合には、透水性が悪く、正常な試験結果が得られなかった。
【0036】
以上の結果から骨材の配合率を40質量%以上としつつ、構造材の均等係数を6.73以下(上記の結果ではこれに相当する骨材の配合率は60質量%以下)にすることで、強度(修正CBR)と透水性(透水係数)の両目標値を満足することを確認した。さらに、今回の骨材である高炉徐冷スラグの粒径が5mm以下であることから、高炉水砕スラグとの混合物である構造材の粒径もほぼ5mm以下である。このため、粒度のばらつきが生じにくく、表面の平坦性が優れており、転圧等の施工期間の短縮につながるという利点もある。
【0037】
以上の調査から、60〜40質量%の含有量で高炉水砕スラグを用いることで充分な透水性が実現され、40〜60質量%の含有量で高炉徐冷スラグを使用することで充分な強度が得られることが確認された。また、粒度分布を同等に整粒すれば、高炉徐冷スラグに限定せず、製鋼スラグ、さらには他の無機材料の使用も可能である。しかし、資源リサイクルの観点からは、高炉徐冷スラグや製鋼スラグを使用するのが良い。さらに、5mm以下に限定することで、粒度分布におけるばらつきが小さくなる。また品質のばらつきも小さくなるとともに、表面の平坦性が上がり、簡易に施工できるため、施工期間の短縮につながる。
【0038】
本発明の透水構造材は、人工芝路盤材として使用することが好ましい。人工芝路盤材は、通常の路盤材と比較して、求められる表面の強度が低い。このため、本発明の透水構造材を人工芝路盤材として用いると、構造材自体の強度が高いため、アスファルト混合物などを路盤材の下に敷設する必要がない。このため、従来の人工芝路盤材において行われていた2層施工(アスコン+路盤材)を1層施工に簡略化することができ、施工コストの低下および施工期間の短縮が実現される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
表3に示す配合条件で製造した透水構造材で実施工を行った。施工では、高炉水砕スラグと骨材である高炉徐冷スラグとが混合された透水構造材を現路床の上に敷き、ローラーで締め固めることにより転圧したのち、その上面に人工芝を敷いた。
【0040】
【表3】

【0041】
またこの際使用したスラグの粒度は、図3に示されるように、高炉水砕スラグおよび骨材である高炉徐冷スラグの双方とも、5mm以下の粒度分布であり、高炉水砕スラグは粒度分布幅の小さい単粒度であった。なお、図3における「粒度」とは、粒径と同じ意味である。
【0042】
こうして得られた透水構造材の強度および透水性は表4に示す結果であり、それぞれの目標値を達成することができた。
【0043】
【表4】

【0044】
また、施工時の平坦性の仕上がりも問題なく、現在施工後2年経過したが、平坦性および透水性も問題ない状態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性路盤を施工するための透水構造材であって、高炉水砕スラグと粒径5mm以下である高炉水砕スラグを含有しない骨材とからなり、前記骨材の含有量が40質量%以上であって、前記透水構造材の均等係数が6.73以下であることを特徴とする透水構造材。
【請求項2】
前記骨材が、鉄鋼スラグ、廃レンガ、廃コンクリート、砕石、砂利、玉砕および砂からなる群から選ばれる一種または二種以上で構成されるものであることを特徴とする請求項1に記載された透水構造材。
【請求項3】
人工芝路盤材として使用されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された透水構造材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−6299(P2011−6299A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152516(P2009−152516)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】