説明

適応流量制御を実施するアクチュエータ制御システム

アクチュエータ制御システム(26)が開示される。アクチュエータ制御システムは、ポンプ(30)と少なくとも1つのアクチュエータ(36A)とを含むことが可能である。さらに、アクチュエータ制御システムは、少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されたアクチュエータ弁(46)を含むことが可能である。アクチュエータ制御システムはまた、ポンプ圧力値を決定するように構成されたポンプ圧力センサ(64)と、負荷圧力値を決定するように構成された負荷圧力センサ(66)とを含むことが可能である。追加して、アクチュエータ制御システムは、ポンプ圧力値及び負荷圧力値を受信するように構成された制御器(56)を含んでもよい。さらに、制御器は、ポンプ圧力値と負荷圧力値とを比較し、この比較に基づき一次制御方式及び二次制御方式を選択的に実施するように構成可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、一般に制御システム、より詳しくは適応流量制御を実施するアクチュエータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、掘削機、ローダ、ブルドーザ、モータグレーダのような機械、及び他の種類の重機は、様々な仕事を達成するためにエンジン駆動ポンプから油圧流体が供給される複数のアクチュエータを使用する。これらのアクチュエータは、オペレータが入力装置、例えばジョイスティックを動かすと、制御弁を移動するためにある量のパイロット流体が制御弁に向けられるように、典型的にパイロット制御される。制御弁が移動されると、比例する量の流体がポンプからアクチュエータに向けられる。ポンプとアクチュエータとの間の流体流量を制御するために、負荷感知制御方式を含む様々な油圧制御方式が実施されてきた。負荷感知制御方式により、複数のアクチュエータの最大負荷圧力とポンプ吐出圧力との圧力差が測定される。制御器は、典型的に、圧力差データを受信して、最大負荷要求を送るためのポンプの容量を制御する。より詳しくは、負荷感知制御システムは、ポンプ容量を制御して、ポンプ吐出圧力と最大負荷圧力との間に所望のバッファ圧力を維持することを試みる。可変容量型ポンプは、負荷圧力の変化にゆっくりと反応することが知られているので、ポンプは、最大負荷圧力がアクチュエータに利用可能であることを保証するために、過度圧力で流体を送るように典型的に制御される。したがって、ポンプは、それ自体の遅い応答を克服するために必要な圧力よりも大きな圧力を送るようにしばしば要求される。
【0003】
このような負荷感知制御システムの1つの例が、和泉らへの(特許文献1)に記載されている。具体的に、(特許文献1)は、可変容量型ポンプ、2つのシリンダ、2つの制御弁、及びアンロード弁を実装する油圧制御システムを開示している。さらに、(特許文献1)は、2つのシリンダからの最大負荷を感知するための負荷圧力センサ、及びポンプ斜板位置検出器を開示している。負荷圧力センサ及び斜板位置検出器から感知された値に基づき、ポンプと最大負荷との圧力差が決定され、制御器に送信される。制御器は、ポンプ吐出圧力が最大負荷圧力よりも大きいことを確実にするために、過度の量の圧力を送ることを可変容量型ポンプに指示する。差圧を設定値未満に保持するために、アンロード弁がポンプと制御弁との間に位置付けられる。この結果、(特許文献1)は、ポンプと最大負荷との間に小さな又は大きな圧力差があるとき、ポンプの吐出量を制御することができる。
【0004】
負荷感知ポンプ制御は、それ自体、ある状態について十分であり得るが、時には、限定されまた非効率であり得る。すなわち、必要な負荷圧力の変化に対するポンプ制御の応答は遅い可能性がある。また、ポンプ制御システムは、必要な最大負荷に見合う程度にポンプ圧力が十分であることを確実にするために、比較的大きな量の圧力差を維持しなければならない。これらの高圧は、機械に対し不必要な歪みをもたらす可能性があり、これによって、ポンプが酷使され、動力源による非効率な燃料使用がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,129,230号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開示したアクチュエータ制御システムは、上述の問題の1つ以上を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一形態において、本発明の開示は、アクチュエータ制御システムに関する。アクチュエータ制御システムは、ポンプと少なくとも1つのアクチュエータとを含むことが可能である。さらに、アクチュエータ制御システムは、少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されたアクチュエータ弁を含むことが可能である。アクチュエータ制御システムはまた、ポンプ圧力値を決定するように構成されたポンプ圧力センサと、負荷圧力値を決定するように構成された負荷圧力センサとを含むことが可能である。追加して、アクチュエータ制御システムは、ポンプ圧力値及び負荷圧力値を受信するように構成された制御器を含んでもよい。さらに、制御器は、ポンプ圧力値と負荷圧力値とを比較し、この比較に基づき一次制御方式及び二次制御方式を選択的に実施するように構成可能である。
【0008】
他の形態では、本発明の開示は、アクチュエータを制御する方法に関する。本方法は、ポンプ圧力値を感知するステップと、負荷圧力値を感知するステップとを含むことが可能である。さらに、本方法は、ポンプ圧力値と負荷圧力値とを比較するステップを含むことが可能である。本方法はまた、比較に基づき一次制御方式と二次制御方式を選択的に実施するステップを含むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】開示した例示的な機械の概略側面図である。
【図2】図1の機械に使用するための開示した例示的な油圧制御システムの概略図である。
【図3】図2の油圧制御システムを操作する方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、例示的な機械10を示している。機械10は、採鉱、建設、農業のような産業、又は公知の他の任意の産業と関連するある種類の作業を実行する固定又は移動機械であり得る。例えば、機械10は、掘削機、ブルドーザ、ローダ、バックホー、モータグレーダ、ダンプトラックのような土工機械、又は他の任意の土工機械であり得る。機械10は、フレーム12、少なくとも1つの作業器具14、オペレータステーション16、動力源18、及び少なくとも1つの牽引装置20を含むことが可能である。動力源18は、操作ステーション16を介して受信された命令に応答して牽引装置20及び作業器具14の運動を駆動することが可能である。
【0011】
フレーム12は、機械10及び/又は作業器具14の移動を補助する任意の構造ユニットを含んでもよい。フレーム12は、例えば、電源18を牽引装置20に連結する固定ベースフレーム、リンケージシステムの移動可能なフレーム部材、又は公知の他の任意のフレームでもよい。
【0012】
作業器具14は、仕事の実行に使用される任意の装置を含んでもよい。例えば、作業器具14は、バケット、ブレード、シャベル、リッパ、ダンプベッド、ハンマ、オーガー、又は他の任意の適切な仕事実行装置を含んでもよい。作業器具14は、公知の他の任意の方法で、フレーム12に対し旋回、回転、摺動、揺動、又は移動するように構成可能である。
【0013】
オペレータステーション16は、機械10の上に位置付けられ、オペレータインターフェース装置22を含んでもよい。オペレータインターフェース装置22は、所望の機械の移動を示す機械オペレータからの入力を受信するように構成可能である。入力は、代わりに、オペレータを支援する自動化システム、又はオペレータの代わりに動作する自律システムからのコンピュータで生成された命令でもよいことが考えられる。オペレータインターフェース装置22は、多軸ジョイスティックを含み、また作業器具14を位置付け及び/又は方向付けるように構成された比例型制御器であり得、この場合、作業器具14の移動速度は、作動軸を中心とするオペレータインターフェース装置22の作動位置に関係する。オペレータインタフェースステーション16内に、例えば、ホイール、ノブ、プッシュプル装置、スイッチ、及び公知の他のオペレータインターフェース装置のような追加の及び/又は異なるオペレータインターフェース装置を含めてもよいことが考えられる。
【0014】
動力源18は、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、天然ガスエンジンのようなエンジン、又は公知の他の任意のエンジンでもよい。代わりに、動力源18は、燃料電池、電力貯蔵装置、及び電気モータのような他の動力源、又は公知の他の動力源でもよいことが考えられる。
【0015】
牽引装置20は、機械10の両側(1つのみの側を図示)に配置された履帯を含んでもよい。代わりに、牽引装置20は、車輪、ベルト、又は他の牽引装置を含んでもよい。牽引装置20は、操舵可能でも、そうでなくてもよい。
【0016】
図2に示したように、機械10は、協働して作業器具14(図1参照)を移動させる及び/又は機械10を推進する複数の流体構成要素を有する油圧システム24を含むことが可能である。具体的に、油圧システム24は、流体供給を保持するタンク28と、流体を加圧して、加圧流体を1つ以上の油圧シリンダ36A〜C(シリンダ36Aと36Bのみを図2に図示)に、1つ以上の流体モータ(図示せず)に、及び/又は公知の任意の他の追加の流体アクチュエータに向けるように構成されたポンプ30とを含んでもよい。油圧システム24はまた、油圧システム24の流体構成要素と連通した制御システム26を含んでもよい。油圧システム24は追加的なおよび/または異なる構成要素、例えば、アキュムレータ、制限オリフィス、圧力逃し弁、メーキャップ弁、圧力等化通路、及び公知の他の構成要素を含んでもよいことが考えられる。
【0017】
タンク28は、流体供給を保持するように構成されたリザーバを構成し得る。流体は、例えば、専用の油圧オイル、エンジン潤滑油、変速機潤滑油、又は公知の他の任意の流体を含んでもよい。機械10内の1つ以上の油圧システムは、タンク28から流体を引き、タンク28に流体を戻すことが可能である。油圧システム24を複数の別個の流体タンクに連結してもよいことも考えられる。
【0018】
ポンプ30は、加圧流体流を生じるように構成可能であり、例えば、可変容量型ポンプ、固定容量型ポンプ、又は可変吐出量型ポンプを含んでもよい。ポンプ30は、例えば、カウンタシャフト34、ベルト(図示せず)、電気回路(図示せず)によって、又は他の任意の適切な方法で、作業機械10の動力源18に駆動可能に連結してもよい。代わりに、ポンプ30は、トルクコンバータ、ギヤボックスを介して、又は他の任意の適切な方法で動力源18に間接的に連結してもよい。ポンプ30は、油圧流体の容量及び/又は吐出を変更し得る。例えば、可変容量型ポンプは、ポンプ出力の可変制御を可能にするために、オペレータ入力装置22からのオペレータ入力信号及び/又は様々な機械センサ(図示せず)からの機械入力信号に基づき電子制御可能である調整可能な斜板(図示せず)を含んでもよい。油圧システム24に加圧流体を供給するために、複数のポンプを相互連結してもよいことが考えられる。
【0019】
ポンプ30からの利用可能な流量は、ポンプ30内で斜板の角度を感知することによって又はポンプ30に送られた実際の命令を観測することによって決定し得る。ポンプ30からの利用可能な流量は、代わりに、ポンプ30からの実際の流量出力を測定するように構成された感知装置によって決定し得ることが考えられる。ポンプ30からの利用可能な流量は、様々な理由で、例えば、要求されるポンプ動力が高いポンプ圧力で利用可能な入力動力(動力源18からの)を越えないことを確実にするために、又は油圧システム24内の圧力を変更するために、減少又は増加させることが可能である。
【0020】
油圧シリンダ36A〜Cは、直接旋回軸を介して、油圧シリンダ36A〜Cのそれぞれがリンケージシステムの1つの部材を形成するリンケージシステムを介して、又は他の任意の適切な方法で、作業器具14をフレーム12(図1を参照)に連結し得る。油圧シリンダ36A〜Cのそれぞれは、管38と、管38内に配置されたピストン組立体40とを含んでもよい。管38及びピストン組立体40の一方は、フレーム12に旋回可能に連結してもよく、一方、管38及びピストン組立体40の他方は、作業器具14に旋回可能に連結してもよい。代わりに、管38及び/又はピストン組立体40は、フレーム12又は作業器具14に固定連結するか、あるいはフレーム12の2つ以上の部材の間に連結してもよいことが考えられる。油圧シリンダ36A〜Cのそれぞれは、ピストン組立体40によって分離された第1のチャンバ42と第2のチャンバ44とを含んでもよい。第1及び第2のチャンバ42、44に加圧流体を選択的に供給し、それから加圧流体を排出して、管38内でピストン組立体40を変位させることが可能であり、これによって、油圧シリンダ36A〜Cの有効長さが変更される。油圧シリンダ36A〜Cの伸張及び収縮は、作業器具14の移動を支援するように機能し得る。
【0021】
ピストン組立体40は、管38と軸方向に整列されかつ管38内に配置されたピストン41と、フレーム12及び作業器具14の一方に連結可能なピストンロッド43とを含み得る(図1参照)。ピストン41は、2つの逆向きの油圧面を含んでもよく、その一方は、第1のチャンバ42及び第2のチャンバ44のそれぞれと関連付けられる。ピストン組立体40に対する力のアンバランスは、管38内のピストン組立体40の軸方向移動を引き起こす可能性がある。例えば、第2の逆向きの油圧面に作用する第2の油圧チャンバ44内の流体圧力に起因する力よりも大きい、第1の油圧面に作用する第1の油圧チャンバ42内の流体圧力に起因する力は、ピストン組立体40を変位させて、油圧シリンダ36A〜Cの有効長さを大きくし得る。同様に、生じる第2の力が、生じる第1の力よりも大きい場合、ピストン組立体40は、管38内で後退して、油圧アクチュエータ36A〜Cの有効長さを小さくし得る。
【0022】
油圧シリンダ36A〜Cのそれぞれは、ポンプ30から第1及び第2の油圧チャンバ42、44の一方に加圧流体を配量するように機能する少なくとも1つの比例制御弁46と、第1及び第2のチャンバ42、44の他方からタンク28への流体の排出を可能にするように機能する少なくとも1つのドレン弁(図示せず)とを含むことが可能である。比例制御弁46は、ばね付勢の比例弁機構を含んでもよく、この比例弁機構はソレノイド作動され、かつ第1及び第2のチャンバ42、44の一方への流体の流れが可能にされる第1の位置と、第1及び第2のチャンバ42、44からの流体の流れが遮断される第2の位置との間で移動するように構成される。第1の位置と第2の位置との間の弁機構の配置により、関連する第1及び第2のチャンバ42、44内にまたそこから向けられる加圧流体の流量を決定することが可能である。弁機構は、作業器具14の所望の移動をもたらす要求された流量に応答して、第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり得る。ドレン弁は、ばね付勢の弁機構を含んでもよく、この弁機構はソレノイド作動され、かつ第1及び第2のチャンバ42、44からの流体の流れが可能にされる第1の位置と、第1及び第2のチャンバ42、44からの流体の流れが遮断される第2の位置との間で移動するように構成される。代わりに、比例制御弁46及びドレン弁は、油圧式に作動し、機械式に作動し、空圧式に作動し、又は他の任意の適切な方法で作動してもよいことが考えられる。
【0023】
ポンプ30は、油圧ライン48を介して比例制御弁46と流体連通し得る。さらに、それぞれの比例制御弁46は、油圧ライン50を介して油圧シリンダ36A〜Cと連通し得る。
【0024】
油圧システム24はまた、後補償弁52と、それぞれの油圧シリンダ36A〜Cに関連付けられた逆止弁54とを含み得る。後補償弁52及び逆止弁54は、アクチュエータの間の負荷圧をバランスさせて、負荷分担を補助するように機能し得ることが考えられる。より詳しくは、それぞれの後補償弁52は、相互連結されて、同一の圧力差で動作することが可能である。したがって、任意の1つのアクチュエータの最大負荷圧力は、後補償器54を介してすべてのアクチュエータに適用可能である。このようにして、すべての油圧シリンダA〜Cの速度は、ポンプ出力が任意の1つの油圧シリンダ36A〜Cの要求に見合うには不十分である場合、実質的に均一に低減することが可能である。
【0025】
さらに、油圧システム24は、負荷感知装置70、例えば、シリンダ36A〜Cの最大流体圧力を感知するためのシャトル弁を含み得る。代わりに、負荷感知装置70は、複数の消費装置の最大負荷圧力を識別するための公知の任意の機構でもよい。
【0026】
制御システム26は、制御器56を含むことが可能である。制御器56は、油圧システム24の操作を制御するための手段を含む単一のマイクロプロセッサ又は複数のマイクロプロセッサに具体化し得る。商業的に入手可能な複数のマイクロプロセッサは、制御器56の機能を実行するように構成できる。制御器56は、複数の機械の機能を制御できる一般的な機械のマイクロプロセッサに容易に具体化できることを認識すべきである。制御器56は、メモリ、二次記憶装置、プロセッサ、及びアプリケーションを実行するための他の任意の構成要素を含んでもよい。電源回路、信号調整回路、ソレノイド駆動回路、及び他の種類の回路のような様々な他の回路を制御器56と関連付けてもよい。
【0027】
制御器56は、オペレータインターフェース装置22から入力を受信し、この入力に応答して油圧シリンダ36A〜Cへの加圧流体の流量を制御するように構成可能である。具体的に、制御器56は、通信ライン58を介して油圧シリンダ36A〜Cのそれぞれの比例制御弁46と、通信ライン60を介してオペレータインターフェース装置22と連通し得る。制御器56は、オペレータインターフェース装置22によって生成された比例信号を受信し、また所望の作業工具の移動を行うために、1つ以上の比例制御弁46を選択的に作動して、油圧シリンダ36A〜Cと関連付けられた第1又は第2の作動チャンバを選択的に充填し得る。
【0028】
制御器56は、通信ライン62を介してポンプ制御装置32と連通し、加圧流体に対する要求に応答してポンプ30の動作を変更するように構成し得る。具体的に、制御器56は、機械オペレータが所望する機械移動を行うために必要とされ、かつオペレータインターフェース装置22を介して示される加圧流体の流量(合計の所望の流量)を決定するように構成可能である。流量マップ(図示せず)を制御器56のメモリに記憶してもよく、必要なポンプ流量を決定するための指示を制御器56に行うことが考えられる。流量マップは、オペレータ入力信号及び様々な機械入力信号に基づき、オペレータの所望の機械移動に見合うために必要なポンプ流量を制御器56に提供し得る。オペレータ入力は、オペレータ入力装置22からの信号を含むことが可能である。機械入力は、制御弁位置を示す制御弁46と関連付けられた位置検出器(図示せず)からの信号を含んでもよい。さらに、機械入力は、他の機械システムからのポンプ30に対する制限を示す信号を含んでもよい。例えば、他の機械信号は、ポンプ30に利用可能なトルク量を示す信号を含んでもよい。特に、トルクセンサ(図示せず)は、ポンプ30に利用可能な限定された動力源のトルクを示す信号を制御器56に送信し得る。すべてのオペレータ入力及び機械入力を受信した後、制御器56は、入力信号に基づく流量マップを適用して、ポンプ制御装置32に必要なポンプ流量の命令を送ることが可能である。さらに、ポンプ制御装置32は、制御器56によって電子的に操作してもよい。
【0029】
制御システム26は、2つの圧力センサ、すなわちポンプ圧力センサ64及び負荷圧力センサ66を含み得る。ポンプ圧力センサ64は、ポンプ30の近くに配置して、ポンプ30を出る流体圧力を監視し得る。さらに、ポンプ圧力センサ64は、ポンプ圧力データを制御器56に送信するために、通信ライン68を介して制御器56と連通してもよい。負荷圧力センサ66は、油圧ライン72を介して負荷感知装置70と流体連通してもよく、これによって、負荷感知装置70は、油圧シリンダ36A〜Cの最大に等しい圧力で油圧流体の通過を可能にし得る。さらに、負荷圧力センサ66は、最大負荷圧力データを制御器56に送信するために、通信ライン74を介して制御器56と連通してもよい。代わりに、制御システム26は、ポンプ圧力センサ64及び負荷圧力センサ66の代わりに、又はそれに加えて、差圧センサ(図示せず)を含んでもよい。
【0030】
制御器56によって決定されるように、測定されたポンプ圧力値と測定された負荷圧力値との間の差の関数は、マージン圧力値として定義し得る。したがって、マージン圧力は、アクチュエータが十分な流体圧力を有することを保証するためにポンプによって生成される過剰流体圧力の基準として機能し得る。下方範囲限界値(例えば、500KPa)及び上方範囲限界値(例えば、2000KPa)を含むマージン範囲値を設定することが望ましいかもしれない。マージン圧力値が下方範囲限界値未満に低下した場合、制御システム26の動作は、安定性が欠けかつ信頼性が低くなる可能性がある。マージン圧力値が上方範囲限界値を越えた場合、制御システム26の動作は、非効率になる可能性がある。制御システム26は、マージン圧力値が下方範囲限界値及び上方範囲限界値内にあるときにポンプ調整される一次制御方式を実施し得ることが考えられる。さらに、制御システム26は、マージン圧力が下方範囲限界値及び上方範囲限界値外にあるときに弁調整される二次制御方式を実施し得ることが考えられる。言い換えれば、一次制御方式は、ポンプ圧力と最大負荷圧力との圧力差が予設定のマージン範囲内にあるとき、通常の運転状態下で実施し得る。対照的に、ポンプ圧力と最大負荷圧力との圧力差が予設定のマージン範囲外にあるとき、二次制御方式を選択的に実施してもよい。
【0031】
図3は、一次及び二次制御方式を実施することによって、油圧システム24を制御する方法を示したフローチャートを示している。図3について、次のセクションで詳細に説明する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
開示した制御システムは、安定し、信頼性が高く、また効率的な油圧制御が問題である任意の機械に使用することが可能である。開示した制御システムは、ポンプ制御を実施する一次制御方式と弁制御を実施する二次制御方式とを介して油圧流体を調整することが可能である。ポンプ圧力と最大負荷圧力との圧力差が予設定のマージン範囲外にあるとき、二次制御方式は、予設定のマージン範囲内まで圧力差を低減し得るアクチュエータ制御システムを実装してもよい。次に、油圧制御システム26の操作について説明する。
【0033】
図3に関し、制御システム26は、機械始動において油圧システム24の調整を始めることが可能である。始動時、ポンプ制御を実施する一次制御方式を利用することが可能である(ステップ76)。したがって、制御器56は、入力信号を受信した後、記憶された流量マップにアクセスして、オペレータ入力装置22に基づく必要なポンプ流量を決定することが可能である。
【0034】
しかし、ある状態下では、一次制御方式は、システムの要求に見合うには不十分であり得、二次制御方式が必要となるかもしれない。例えば、マージン圧力が予設定のマージン範囲(PMR)外にあるとき、アクチュエータの圧力要求に見合うために、より応答性の高い二次制御方式が必要となるかもしれない。さもなければ、マージン圧力が予設定のマージン範囲の上方にあるとき、油圧システム24は効率的でない可能性があり、マージン圧力が予設定のマージン範囲の下方にあるとき、負荷の間の十分な流量分担を提供しない可能性がある。
【0035】
二次制御方式が必要であり得るときを決定するために、制御器56によって様々なシステム入力を受信することが可能である。例えば、ポンプ圧力値(PPV)は、ポンプ圧力センサ64から受信してもよく、最大負荷圧力値(LPV)は、負荷圧力センサ66から受信してもよい。ポンプ圧力センサ64及び負荷圧力センサ66は、通信ライン68と74それぞれを介してポンプ及び最大負荷圧力値を制御器56に送信してもよい(ステップ78)。
【0036】
制御器56は、最大負荷圧力値とポンプ圧力値との差の関数としてマージン圧力値(MPV)を計算し、マージン圧力値を予設定のマージン範囲と比較し得る(ステップ80)。予設定のマージン範囲は、予設定の目標マージン値の上方及び下方の限界値を含む圧力範囲として定義し得る。予設定のマージン範囲は、予設定の目標マージン値、上方範囲限界、及び下方範囲限界を含み得る。上方範囲限界及び下方範囲限界は、所定の範囲に基づき予設定の目標マージン値から選択してもよい。例えば、予設定のマージン範囲は、1250KPaの予設定の目標マージン値、2000KPaの上限値、及び500KPaの下限値を含み、予設定の目標マージン値からの所定の範囲は750KPaであり得る。予設定の目標マージン値及び予設定の目標マージン値からの所定の範囲は、所定の油圧システムについて必要に応じて調整して、システム性能を最適化し得る。比較に基づき、制御器56は、マージン圧力値が予設定のマージン範囲の下方及び上方の範囲限界内にあるかどうかを決定し得る(ステップ82)。例えば、予設定のマージン範囲が500KPaの下方範囲限界及び2000KPaの上方範囲限界を含む場合、1100KPaのマージン圧力値は予設定のマージン範囲内にある。この状態におけるように、マージン圧力値が予設定の範囲内にあるとき、制御器56は、二次制御方式が現在実施されているかどうかを決定し得る(ステップ86)。二次制御方式が現在実施されている場合、制御器56は、二次制御方式を一時停止する(すなわち、一次制御方式に逆戻りする)ことが可能であるが、この理由は、二次制御方式がもはや必要とされない可能性があるからである(ステップ88)。代わりに、マージン圧力値が予設定のマージン範囲内にあるときに第2の制御方式を一時停止する代わりに、マージン圧力値が予設定のマージン範囲内に留まることを確実にするために、二次制御方式が現在実施されるように維持することが望ましいかもしれない。制御器56が二次制御方式を一時停止するか、又は二次制御方式が現在実施されていないことを識別すると、制御器56は、ステップ78〜82を連続的に繰り返して、制御システム入力の変更に応答して二次制御方式が必要であるかどうかを決定することが可能である。
【0037】
しかし、予設定のマージン範囲が500KPaの下方範囲限界及び2000KPaの上方範囲限界を含む場合、300KPaであると決定されたマージン圧力値は、予設定のマージン範囲外にあり得、制御器56は、二次制御方式を実施してもよい(ステップ84)。より詳しくは、制御器56は、マージン圧力値が予設定のマージン範囲の上方又は下方にあるかどうかを決定し得る(ステップ90)。この状態では、300KPaのマージン圧力値は、500KPaの下方範囲限界の下方にあり、システムが負荷の間の流量分担を確実にしかつ維持することを保証するために、マージン圧力を増大することが望ましいかもしれない。マージン圧力を増大するために、制御器56は、制御弁46が閉位置に向かって移動することを指示し得る(ステップ92)。さらに、マージン圧力が上方範囲限界の上方にある場合、システム効率を増加するために、マージン圧力を減少させることが望ましいかもしれない。マージン圧力を減少させるために、制御器56は、制御弁46が開位置に向かって移動することを指示し得る(ステップ94)。二次制御方式が実施されると、制御器56は、ステップ78〜82を連続的に繰り返して、制御システム入力の変更に応答して二次制御方式がなお必要であるかどうかを決定することが可能である。
【0038】
制御器56は、制御弁46が、マージン圧力値が予設定のマージン範囲外にある量に比例して開鎖することを指示し得る。例えば、マージン圧力値が予設定のマージン範囲の上方範囲限界値のわずか上方50KPaにある場合、制御弁46は、小さな量だけ開いて、マージン圧力を減少させることが可能である。対照的に、マージン圧力値が予設定のマージン範囲の上方範囲限界値の上方600KPaにある場合、制御弁46は、大きな量開いて、マージン圧力をより急速に減少させることが可能である。
【0039】
通常動作の間、マージン圧力値が予設定のマージン範囲内に留まるとき、一次制御方式を介したポンプ制御は、信頼性が高く、安定し、また効率的な油圧システム制御を維持する程度に十分であり得る。通常動作からの逸脱は、摩擦又は他の効率損失のようなシステム妨害により、流量マップがポンプ出力と所定の制御弁位置との不適切な整合を識別するときに生じ得る。この状態では、ポンプ30と無関係に制御弁46を制御して、マージン圧力を調整し得る。一次制御方式は、システムの操作全体にわたって連続的に実施し得ることが考えられる。したがって、二次制御方式が一次制御方式と平行して行われることが好ましいかもしれない。したがって、一制御方式及び二次制御方式は、互いに独立して実施可能である。例えば、マージン圧力弁が予設定のマージン範囲外にあるときでも、オペレータ入力及びシステム入力に基づく流量マップに従って、ポンプ制御を同時に実施してもよい。
【0040】
独立して操作されるポンプ及びアクチュエータ制御方式の実施により、信頼性が高く、安定し、また効率的な油圧システム制御を提供することが可能である。最も注目すべきことに、アクチュエータ制御により、複数のアクチュエータの十分な操作を保証するために必要なマージン圧力を低減することによって、油圧システム制御の効率を高めることが可能である。したがって、二重の制御方式から利用可能な追加の信頼性及び安定性の提供に加えて、普通のポンプ制御よりも応答性の高いアクチュエータ制御により、効率の向上も利用可能である。
【0041】
本開示の範囲から逸脱することなく、開示した制御システムに様々な修正及び変更を行うことができることが、当業者には明らかであろう。本明細書に開示した制御システムの説明と実施を考慮することにより、制御システムの他の実施形態が当業者には明白であろう。説明及び実施例は例示的なものに過ぎないと考えられ、本開示の真の範囲は、次の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ制御システム(26)であって、
ポンプ(30)と、
少なくとも1つのアクチュエータ(36A)と、
少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されたアクチュエータ弁(46)と、
ポンプ圧力値を決定するように構成されたポンプ圧力センサ(64)と、
負荷圧力値を決定するように構成された負荷圧力センサ(66)と、
制御器(56)であって、
ポンプ圧力値と負荷圧力値とを受信し、
ポンプ圧力値と負荷圧力値とを比較し、
比較に基づき一次制御方式及び二次制御方式を選択的に実施するように構成された制御器と、
を備えるアクチュエータ制御システム。
【請求項2】
制御器が、ポンプとアクチュエータ弁とに命令を独立して送信するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
制御器が、ポンプ圧力値と負荷圧力値との差の関数としてマージン圧力値を計算することによって、ポンプ圧力値と負荷圧力値とを比較するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
制御器が、マージン圧力値をマージン範囲と比較するようにさらに構成され、マージン範囲が下方範囲限界と上方範囲限界とを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
制御器が、マージン圧力値がマージン範囲外にあるときに、命令をアクチュエータ弁に送って、二次制御方式を実施するようにさらに構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
マージン圧力値が下方範囲限界の下方にあるときアクチュエータ弁に対して閉位置に向かって適合してマージン圧力を増大するように命令するように、およびマージン圧力値が上方範囲限界の上方にあるとき制御弁に対して開位置に向かって適合してマージン圧力を減少させるように命令するように、制御器がさらに構成される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
制御器が、マージン圧力値がマージン範囲内にあるときに二次制御方式を一時停止するようにさらに構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
アクチュエータを制御する方法であって、
ポンプ圧力値を感知するステップ(78)と、
負荷圧力値を感知するステップと、
ポンプ圧力値と負荷圧力値とを比較するステップ(80)と、
比較に基づき一次制御方式及び二次制御方式を選択的に実施するステップ(82)と、
を含む方法。
【請求項9】
一次制御方式を選択的に実施するステップがポンプ動作を制御することを含み、二次制御方式を選択的に実施するステップがアクチュエータ弁動作を制御することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポンプ圧力値と負荷圧力値とを比較するステップが、ポンプ圧力値と負荷圧力値との差の関数としてマージン圧力値を計算することを含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−539411(P2010−539411A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524838(P2010−524838)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/010169
【国際公開番号】WO2009/035509
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】