説明

遮断弁

【課題】流体が正逆両方向に流される流体回路で使用することができるとともに、流体の特定方向への漏洩を確実に防止することのできる遮断弁を提供する。
【解決手段】主弁体30内に、主弁室15とパイロット室16とを連通するための第1連通路41及び第2入出口32とパイロット室16とを連通するためのパイロット通路42が形成され、逆止弁組立体50は、第1連通路41を介して主弁室15からパイロット室16への流入は許容するがパイロット室16から主弁室15への流出は阻止する第1逆止弁体51、パイロット通路42の上端開口を開閉するためのパイロット弁体52を備え、主弁体30内に、前記パイロット通路42とは別に、第2入出口32とパイロット室16とを連通するための第2連通路43が設けられるとともに、該第2連通路43に、第2入出口32からパイロット室16への流入は許容するがパイロット室16から第2入出口32への流出は阻止する第2逆止弁体65が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、1台の室外機に対して小型の室内機が複数台設置されるマルチエアコンシステム等において流体(冷媒)回路を途中で遮断するために使用される遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
上記マルチエアコンシステムにおいて、室内機側への冷媒漏洩時には、システム内の全冷媒が室内に洩れ、酸欠状態になる可能性があるので、冷媒回路を途中で遮断する必要があり、この冷媒回路の遮断に、遮断弁が用いられる。
【0003】
かかる冷媒回路用遮断弁には、次のような仕様が要求される。
(1)正逆両方向の流れで作動できる。
(2)停電時には閉弁する。
(3)室外から室内への冷媒の漏洩を確実に防止できる。
【0004】
上記要求仕様から、冷媒が正逆両方向(第1流れ方向と第2流れ方向)に流される冷媒回路に使用される一般的な双方向電磁弁は、弁動作が同じであるため、遮断弁として代用が可能であると考えられる。
【0005】
上記冷媒回路に用いられる双方向電磁弁は、例えば下記特許文献1等にも見られるように、パイロット弁体と圧力導入用(均圧用)弁体とを一つの逆止弁体で兼ねるようにされており、正方向(第1流れ方向)用と逆方向(第2流れ方向)用とに2個の逆止弁体が備えられている。
【0006】
より詳しくは、上記冷媒回路用双方向電磁弁は、コイル、吸引子、プランジャ、及び該プランジャを閉弁方向に付勢するプランジャばね等を有する電磁式アクチュエータと、前記プランジャの下部に設けられた逆止弁組立体と、ピストン型の主弁体と、該主弁体が摺動可能に嵌挿される円筒状空所及び前記主弁体により開閉される主弁口が設けられ、前記円筒状空所における前記主弁体より上側に前記逆止弁組立体が配在されるパイロット室が画成されるとともに、前記主弁体より下側に主弁室が画成される弁ハウジングと、を有し、前記弁ハウジングには、前記主弁室に直接連なる室外側入出口及び前記主弁口を介して前記主弁室に連なる室内側入出口が設けられ、前記主弁体内に、前記主弁室と前記パイロット室とを連通するための室外側連通路及び前記室内側入出口と前記パイロット室とを連通するための室内側連通路が形成され、前記逆止弁組立体は、前記室外側連通路を介して前記主弁室から前記パイロット室への流入は許容するが前記パイロット室から前記主弁室への流出は阻止する室外側逆止弁体、及び、前記室内側連通路を介して前記室内側入出口から前記パイロット室への流入は許容するが前記パイロット室から前記室内側入出口への流出は阻止する室内側逆止弁体を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−101780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記冷媒回路用双方向電磁弁は、冷媒回路内での開閉を目的としているため、閉弁時の冷媒漏洩量が多く、そのままでは遮断弁として使用することは難しい。
【0009】
すなわち、上記双方向電磁弁では、室外側逆止弁体及び室内側逆止弁体を圧縮コイルばねで主弁体に押し付けることにより室外側連通路及び室内側連通路の上端開口(弁シート部)を閉じる構成となっているが、前記逆止弁体が微小差圧でも開弁するように、前記圧縮コイルばねのばね荷重が比較的弱く設定されている。そのため、逆止弁体を主弁体の弁シート部に押し付ける力が弱く、冷媒が漏洩しやすいという問題がある。
【0010】
また、逆止弁体がプランジャ側に設けられ、弁シート部(連通路)は主弁体に設けられているので、それらの間に位置ずれや相対傾斜が生じやすく、この点からも冷媒が漏洩しやすいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、流体が正逆両方向に流される流体回路で使用することができるとともに、流体の特定方向への漏洩を確実に防止することのできる遮断弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る遮断弁は、基本的には、コイル、吸引子、プランジャ、及び該プランジャを下方に付勢するプランジャばね等を有する電磁式アクチュエータと、前記プランジャの下部に設けられた逆止弁組立体と、ピストン型の主弁体と、該主弁体が摺動可能に嵌挿される円筒状空所及び前記主弁体により開閉される主弁口が設けられ、前記円筒状空所における前記主弁体より上側に前記逆止弁組立体が配在されるパイロット室が画成されるとともに、前記主弁体より下側に主弁室が画成される弁ハウジングと、を有し、前記弁ハウジングには、前記主弁室に直接連なる第1入出口及び前記主弁口を介して前記主弁室に連なる第2入出口が設けられ、前記主弁体内に、前記主弁室と前記パイロット室とを連通するための第1連通路及び前記第2入出口と前記パイロット室とを連通するためのパイロット通路が形成され、前記逆止弁組立体は、前記第1連通路を介して前記主弁室から前記パイロット室への流入は許容するが前記パイロット室から前記主弁室への流出は阻止する第1逆止弁体、及び、前記パイロット通路の上端開口を開閉するためのパイロット弁体を備え、前記主弁体内に、前記パイロット通路とは別に、前記第2入出口と前記パイロット室とを連通するための第2連通路が設けられるとともに、該第2連通路に、前記第2入出口から前記パイロット室への流入は許容するが前記パイロット室から前記第2入出口への流出は阻止する第2逆止弁体が設けられていることを特徴としている。
【0013】
好ましい態様では、前記パイロット弁体及び前記第2逆止弁体の少なくともシール面部がゴム等の弾性材料で作製される。
【0014】
前記逆止弁組立体は、好ましくは、前記プランジャの下部に取り付けられた支持基体と、該支持基体に軸方向に移動可能に支持されるとともに抜け止め係止される前記第1逆止弁体と、前記支持基体の下端部に固定された前記パイロット弁体と、前記第1逆止弁体を下方に付勢する圧縮コイルばねとを備える。
【0015】
他の好ましい態様では、前記パイロット通路に、前記パイロット室から前記第2入出口に向かう流れは許容するが、その逆の流れは阻止する一方向弁が配在される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る遮断弁では、従来の冷媒回路用双方向電磁弁における室内側逆止弁体の機能を、プランジャ側に設けられたパイロット弁体と主弁体側に設けられた第2逆止弁体の二つの弁体で分担するようにされている。言い換えれば、前記室内側逆止弁体が、パイロット弁体と第2逆止弁体とに分けられているため、パイロット弁体をプランジャ側に固定することができる。そのため、パイロット弁体をばね荷重の大きなプランジャばねで主弁体(に設けられたパイロット通路の上端開口である弁シート部)に強く押し付けることができ、これによって、パイロット通路を介する、特定方向(室外→室内)への流体(冷媒)の漏洩を確実に抑えることができる。
【0017】
また、第2逆止弁体とこれにより閉じられるべき第2連通路(の小孔=弁シート部)は共に主弁体内に設けられているので、それらの間に位置ずれや相対傾斜が生じ難くなり、この点からも特定方向(室外→室内)への流体(冷媒)の漏洩を確実に抑えることができる。
【0018】
また、パイロット弁体及び第2逆止弁体の少なくともシール面部(弁シート部に圧接する部分)がゴム等の弾性材料で作製されることにより、シール性が一層向上し、漏洩をより確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る遮断弁の一実施例を示す縦断面図。
【図2】実施例の遮断弁における細部構成及び第1流れ方向開閉動作の説明に供される主要部拡大断面図。
【図3】実施例の遮断弁における細部構成及び第1流れ方向開閉動作の説明に供される主要部拡大断面図。
【図4】実施例の遮断弁における細部構成及び第2流れ方向開閉動作の説明に供される主要部拡大断面図。
【図5】実施例の遮断弁における細部構成及び第2流れ方向開閉動作の説明に供される主要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る遮断弁の一実施例を示す縦断面図、図2〜図5は、図1に示される遮断弁の細部構成及び動作説明に供される主要部拡大断面図である。
【0022】
図示実施例の遮断弁10は、1台の室外機に対して小型の室内機が複数台設置され、流体(冷媒)が正逆両方向(第1流れ方向と第2流れ方向)に流されるマルチエアコンシステムに使用されるもので、電磁式アクチュエータ20と、ピストン型の主弁体30と、弁ハウジング12とを備え、基本的にはパイロット式双方向電磁弁の形態をとる。
【0023】
電磁式アクチュエータ20は、通電励磁用のコイル22、このコイル22の外周を覆うように配在されたケース21、コイル22の上部内周側に配在されてボルト28によりケース21に固定された吸引子24、この吸引子24の下側に対向配置されたプランジャ25を備えている。吸引子24の下部には円錐台状の凹部24aが形成され、プランジャ25の上部には前記凹部24aに嵌合する凸部25aが設けられている。プランジャ25は、コイル22と吸引子24との間にその上部が配在されたガイドパイプ26に摺動自在に嵌挿されている。ガイドパイプ26の上端は、吸引子24の外周段差部にろう付け固定され、その下部は、弁ハウジング12(上部体12A)の上面部中央に設けられた取付口12aに挿入されてろう付け等により固定されている。
【0024】
また、プランジャ25の下部には、逆止弁組立体50(後で詳述)がプランジャ25と一体的に軸方向に移動可能に組み付けられている。また、吸引子24とプランジャ25との間には、プランジャ25を下方に付勢するプランジャばね(圧縮コイルばね)27が縮装されている。
【0025】
弁ハウジング12は、下面が開口した天井部12b付き円筒状の上部体12Aと、該上部体12Aが螺着される断面凸形状の下部体12Bとからなっており、前記ピストン型の主弁体30が摺動可能に嵌挿される円筒状空所13及び主弁体30により開閉される主弁口(弁シート部)14が設けられ、前記円筒状空所13における主弁体30より上側にパイロット室16が画成されるとともに、主弁体30より下側に主弁室15が画成されている。
【0026】
なお、本実施例の遮断弁10の中心線Oは、プランジャ25、逆止弁組立体50、弁ハウジング12(の円筒状空所13)、主弁体30等の共通の中心線となっている。
【0027】
また、弁ハウジング12の下部左側には、主弁室15に直接連なる第1入出口31が設けられ、弁ハウジング12の下部右側には、主弁口14を介して主弁室15に連なる第2入出口32が設けられている。第1入出口31は、導管61を介して室外機に接続され、第2入出口32は、導管62を介して室内機に接続されている。
【0028】
ここで、高圧の冷媒が導管61を介して第1入出口31及び主弁室15に導入される流れを第1流れ(方向)と称し、高圧の冷媒が導管62を介して第2入出口32に導入される流れを第2流れ(方向)と称する。
【0029】
主弁体30は、断面逆凸字状外形を有し、その底部に主弁口(弁シート部)14に離接してそれを開閉する、ゴムあるいはテフロン(登録商標)等からなる短円筒状のシール材33が固定され、その上面部外周には、弁ハウジング12の天井部12bに接当して主弁体30の上方移動限界を定める短円筒状のストッパ34が突設され、また、上面部近くの外周部にはシール材(ピストンリング)39が装着されている。
【0030】
また、主弁体30を上方(開弁方向)に付勢すべく、主弁体30の上部段差部分と弁ハウジング12の下部体12Bにおける内周段差部分との間に圧縮コイルばね35が縮装されている。
【0031】
そして、主弁体30内には、主弁室15とパイロット室16とを連通するための第1連通路41、第2入出口32とパイロット室16とを連通するためのパイロット通路42、及び、該パイロット通路42とは別の、第2入出口32とパイロット室16とを連通するための第2連通路43が形成されている。
【0032】
第1連通路41は、上端が主弁体30の上面部30aに開口する比較的小さな孔径の縦孔(均圧ポート)41aと該縦孔41aの下端に連なる縦孔41aより大きな孔径の横孔41bとからなり、縦孔41aの上端開口(弁シート部)は当該電磁弁10の中心線Oから半径方向外周側へ所定の距離だけ偏心した部位に設けられている。
【0033】
パイロット通路42は、主弁体30の上面部30aに開口する前記第1連通路41の縦孔41aより大きな孔径の縦孔(パイロットポート)42aと該縦孔42aの下端に連なる前記縦孔42aより大径の、後述する一方向弁45が装填された一方向用装填穴42bとからなり、縦孔42a及び装填穴42bは共に中心線O上に設けられている。
【0034】
第2連通路43は、一端が一方向用装填穴42bに開口し、他端が主弁体30にかしめ固定された盲蓋板36により閉塞された横孔43と、パイロット室16に開口する逆止用装填穴64と、この逆止用装填穴64の底部に形成され小孔(弁シート部)44とからなっている。
【0035】
一方、プランジャ25の下部に組み付けられている逆止弁組立体50は、大径部と小径部とを有する段付き円柱状の支持基体55を備える。該支持基体55は、図2の拡大図を参照すればよくわかるように、上から順に、大径頭部55a、中間小径部55b、中央大径部55c、下部小径部55d、下端円筒部55eからなっている。前記大径頭部55aは、プランジャ25の下部に設けられた逆凹形穴25bに嵌挿されるとともに、プランジャ25の下端部にかしめ固定されたリング状係止片29により抜け止め係止されている。
【0036】
前記中央大径部55cの外周(に形成された環状溝)には、大径円筒体56の上部がかしめ固定されており、この大径円筒体56の下部内周面と前記下端円筒部55eの外周面との間に、第1逆止弁体51が軸方向に摺動可能に嵌挿されている。
【0037】
第1逆止弁体51は、上部大径部と下部小径部とからなる段付き短円筒状とされ、その底面が前記第1連通路41(縦孔41a)の上端開口(弁シート部)を閉止し得る、当該電磁弁10の中心線Oを中心とした円環状のシール面となっている。この第1逆止弁体51は、その上部大径部51aが大径円筒体56の下端折曲部により抜け止め係止されるようになっており、該第1逆止弁体51と支持基体55の中央大径部55cとの間には、第1逆止弁体51を下方に付勢する圧縮コイルばね53が介装されている。
【0038】
また、支持基体55の下端円筒部55eには、ゴム等の弾性材料で作製された円板状のパイロット弁体52がかしめ固定されている。このパイロット弁体52は、プランジャばね27の付勢力によりプランジャ25及び逆止弁組立体50を介してパイロット通路52の上端開口(弁シート部)に押し付けられる。
【0039】
なお、前記したプランジャ25、支持基体55、大径円筒体56には、それらの内外を連通させる透孔(均圧孔)67、68、58が形成されている。
【0040】
前記パイロット通路42の一方向用装填穴42bに装填されている一方向弁45は、パイロット室16から第2入出口32に向かう流れは許容するが、その逆の流れは阻止するように働くもので、円錐台状頭部と横断面が正六角形の六角胴部と下部小径部とからなっており、一方向用装填穴42bの内周面と六角胴部との間に形成される空所が冷媒流通路となる。この一方向弁45は、パイロット通路42を冷媒が流通しないときは、弁挿入孔42bの下部に螺着された抜け止め係止用の穴付きナット48上に自重で着座するようになっている。円錐台状頭部の頂部は、該一方向弁45が押し上げられた際に前記縦孔42aの下端部に挿入されてそこを閉塞し、冷媒を通れなくする。
【0041】
第2連通路43の逆止用装填穴64に挿入された第2逆止弁体65は、上部にすり割りが設けられた断面H形の円筒状胴部と、この下端部にかしめ固定されたゴム等の弾性材料で作製された円板状のシール部材65aを有し、このシール部材65aを逆止用装填穴64の底部に形成され小孔(弁シート部)44に離接させることにより第2連通路43を開閉するようになっている。
【0042】
ここで、第2入出口32の圧力がパイロット室16の圧力より高い場合は、図4に示される如くに、第2逆止弁体65が抜け止めナット66に接当係止されるまで押し上げられ、このときは、小孔44を通った冷媒が装填穴64の内周面と第2逆止弁体65の外周面との間に形成される摺動面間隙及びすり割り部分を通ってパイロット室16に導入される。
【0043】
次に、上記構成とされた遮断弁10の開閉動作を、高圧の冷媒が導管61を介して第1入出口31及び主弁室15に導入される第1流れ方向の場合(図2、図3)と、高圧の冷媒が導管62を介して第2入出口32に導入される第2流れ方向の場合(図4〜図5)とに分けて説明する。
【0044】
第1流れ方向の場合、コイル22が通電されていないときには、第1入出口31及び主弁室15の高圧が第1連通路41を介して第1逆止弁体51の円環状シール面に作用する。そのため、図2に示される如くに、第1逆止弁体51が僅かではあるが押し上げられ、パイロット室16に高圧が導入される。これにより、主弁体30の上面に高圧が作用するため、主弁体30は主弁口14に圧接してこれを閉じる。
【0045】
次に、コイル22が通電されると、図3に示される如くに、吸引子24にプランジャ25が吸引され、プランジャ25と一体的に逆止弁組立体50(第1逆止弁体51及びパイロット弁体52)も上方に引き上げられ、第1連通路41及びパイロット連通路42(の上端開口)が開弁する。
【0046】
この場合、第1連通路41(の縦孔41a)の孔径よりパイロット通路42(の縦孔42a)の孔径の方が大きくされているので、パイロット室16の圧力がパイロット通路42(そこに配在された一方向弁45と一方向用装填穴42aとの間の空所)を介して第2入出口32側へ排出され、パイロット室16の圧力が主弁室15の圧力より小さくなる。そのため、主弁体30が押し上げられ、主弁口14が開弁し、高圧の冷媒が第1入出口31→主弁室15→主弁口14→第2入出口32へと流れる。
【0047】
次に、コイル22への通電を停止すると、吸引子24による吸引力が無くなるため、プランジャばね27の付勢力によりプランジャ25及び逆止弁組立体50(第1逆止弁体51及び第2逆止弁体52)が押し下げられ、第1逆止弁体51及びパイロット弁体52により第1連通路41及び第2連通路42(の上端開口)が閉弁される。第1連通路41及び第2連通路42が閉弁されると、パイロット室16の圧力が低圧側(第2入出口32)へ排出されなくなる。そのため、図2に示される場合と同様に、第1入出口31及び主弁室15の高圧が第1連通路41を介して第1逆止弁体51に作用し、第1逆止弁体51が僅かではあるが押し上げられ、パイロット室16に高圧が導入されるので、主弁体30の上面に高圧が作用し、主弁体30が押し下げられて主弁口14を閉弁する。
【0048】
一方、第2流れ方向の場合、コイル22が通電されていないときには、図4に示される如くに、第2入出口32の高圧が第2連通路43(小孔44、装填穴64の内周面と第2逆止弁体65の外周面との間に形成される摺動面間隙、及び第2逆止弁体65の上部すり割り部分)を介してパイロット室16に導入される。これにより、主弁体30の上面に高圧が作用するため、主弁体30は主弁口14に圧接してこれを閉じる。
【0049】
次に、コイル22が通電されると、図5に示される如くに、吸引子24にプランジャ25が吸引され、プランジャ25と一体的に逆止弁組立体50(第1逆止弁体51及び第2逆止弁体52)も上方に引き上げられ、第1連通路41及びパイロット通路42(の上端開口)が開弁する。
【0050】
この場合、パイロット弁体52が引き上げられてパイロット通路42の上端開口(弁シート部)が開弁し、高圧がパイロット連通路42を通ると、図5に示される如くに、一方向弁45が上方に押し上げられ、その円錐台状頭部の上端部が縦孔42aの下端部に挿入されてそれを閉塞する。そのため、第2入出口32の高圧は、第2連通路43(小孔44、装填穴64の内周面と第2逆止弁体65の外周面との間に形成される摺動面間隙、及び第2逆止弁体65の上部すり割り部分)を介してパイロット室16に導入される。ここでは、小孔44の孔径より第1連通路41(の縦孔41a)の孔径の方が大きくされているので、パイロット室16の圧力が第1連通路41を介して第1入出口31側へ排出され、パイロット室16の圧力が主弁室15の圧力より小さくなる。そのため、主弁体30が押し上げられ、主弁口14が開弁し、高圧の冷媒が第2入出口32→主弁口14→主弁室15→第1入出口31へと流れる。
【0051】
次に、コイル22への通電を停止すると、吸引子24による吸引力が無くなるため、プランジャばね27の付勢力によりプランジャ25及び逆止弁組立体50(第1逆止弁体51及びパイロット弁体52)が押し下げられ、第1逆止弁体51及びパイロット弁体52により第1連通路41及びパイロット通路42(の上端開口)が閉弁される。第1連通路41及びパイロット通路42が閉弁されると、パイロット室16の圧力が低圧側(第1入出口31)へ排出されなくなる。この場合、図4に示される場合と同様に、第2入出口32の高圧が第2連通路43を介してパイロット室16に導入されるので、主弁体30の上面に高圧が作用し、主弁体30が押し下げられて主弁口14を閉弁する。
【0052】
上記の如くの構成とされた本実施例の遮断弁10においては、従来の冷媒回路用双方向電磁弁における室内側逆止弁体の機能を、プランジャ25側に設けられたパイロット弁体52と主弁体30側に設けられた第2逆止弁体65の二つの弁体で分担するようにされている。言い換えれば、前記室内側逆止弁体が、パイロット弁体52と第2逆止弁体65とに分けられているため、パイロット弁体52をプランジャ25側に固定することができる。そのため、パイロット弁体52をばね荷重の大きなプランジャばね27で主弁体30(に設けられたパイロット通路42の上端開口である弁シート部)に強く押し付けることができ、これによって、パイロット通路42を介する、特定方向(室外→室内)への冷媒の漏洩を確実に抑えることができる。
【0053】
また、第2逆止弁体52とこれにより閉じられるべき第2連通路43(の小孔44=弁シート部)は共に主弁体30内に設けられているので、それらの間に位置ずれや相対傾斜が生じ難くなり、この点からも特定方向(室外→室内)への冷媒の漏洩を確実に抑えることができる。
【0054】
また、パイロット弁体52及び第2逆止弁体65の少なくともシール面部(弁シート部に圧接する部分)がゴム等の弾性材料で作製されているので、シール性が一層向上し、漏洩をより確実に抑えることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 遮断弁
12 弁ハウジング
13 円筒状空所
14 主弁口
15 主弁室
16 パイロット室
20 電磁式アクチュエータ
22 コイル
24 吸引子
25 プランジャ
27 プランジャばね
30 主弁体
31 第1入出口
32 第2入出口
35 圧縮コイルばね
41 第1連通路
41a 縦孔
42 パイロット通路
42a 縦孔
43 第2連通路
44 小孔
45 一方向弁
50 逆止弁組立体
51 第1逆止弁体
52 パイロット弁体
53 圧縮コイルばね
55 支持基体
65 第2逆止弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル、吸引子、プランジャ、及び該プランジャを下方に付勢するプランジャばね等を有する電磁式アクチュエータと、前記プランジャの下部に設けられた逆止弁組立体と、ピストン型の主弁体と、該主弁体が摺動可能に嵌挿される円筒状空所及び前記主弁体により開閉される主弁口が設けられ、前記円筒状空所における前記主弁体より上側に前記逆止弁組立体が配在されるパイロット室が画成されるとともに、前記主弁体より下側に主弁室が画成される弁ハウジングと、を有し、前記弁ハウジングには、前記主弁室に直接連なる第1入出口及び前記主弁口を介して前記主弁室に連なる第2入出口が設けられ、前記主弁体内に、前記主弁室と前記パイロット室とを連通するための第1連通路及び前記第2入出口と前記パイロット室とを連通するためのパイロット通路が形成され、前記逆止弁組立体は、前記第1連通路を介して前記主弁室から前記パイロット室への流入は許容するが前記パイロット室から前記主弁室への流出は阻止する第1逆止弁体、及び、前記パイロット通路の上端開口を開閉するためのパイロット弁体を備えている遮断弁であって、
前記主弁体内に、前記パイロット通路とは別に、前記第2入出口と前記パイロット室とを連通するための第2連通路が設けられるとともに、該第2連通路に、前記第2入出口から前記パイロット室への流入は許容するが前記パイロット室から前記第2入出口への流出は阻止する第2逆止弁体が設けられていることを特徴とする遮断弁。
【請求項2】
前記パイロット弁体及び前記第2逆止弁体の少なくともシール面部がゴム等の弾性材料で作製されていることを特徴とする請求項1に記載の遮断弁。
【請求項3】
前記逆止弁組立体は、前記プランジャの下部に取り付けられた支持基体と、該支持基体に軸方向に移動可能に支持されるとともに抜け止め係止される前記第1逆止弁体と、前記支持基体の下端部に固定された前記パイロット弁体と、前記第1逆止弁体を下方に付勢する圧縮コイルばねとを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮断弁。
【請求項4】
前記パイロット通路に、前記パイロット室から前記第2入出口に向かう流れは許容するが、その逆の流れは阻止する一方向弁が配在されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−57676(P2012−57676A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199918(P2010−199918)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】