説明

配線回路基板集合体シート

【課題】判別マークによる配線回路基板集合体シートやその周辺の汚染を防止することのできる、配線回路基板集合体シートを提供すること。
【解決手段】複数の回路付サスペンション基板2と、回路付サスペンション基板2を整列状態で支持する支持シート3とを備える回路付サスペンション基板集合体シート1において、回路付サスペンション基板2に、判別マーク形成部4を堰部5によって区画されるように設ける。そして、マーキング工程において、回路付サスペンション基板2の判別マーク形成部4に判別マーク15を形成して、その回路付サスペンション基板2が不良品であることを示す場合に、堰部5によって、判別マーク15が判別マーク形成部4から流出することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板集合体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブに搭載される回路付サスペンション基板は、1枚の金属支持基板に、回路付サスペンションが複数形成される回路付サスペンション基板集合体シートとして製造されている。
より具体的には、回路付サスペンション基板集合体シートでは、その製造において、1枚の金属支持基板に、整列状態で、回路付サスペンション基板を形成した後、回路付サスペンション基板の外形形状に対応するように金属支持基板を部分的に切り抜くことにより、回路付サスペンション基板と、回路付サスペンション基板を支持する支持シートとを形成するようにしている。これにより、回路付サスペンション基板は、1枚の金属支持基板に、複数の回路付サスペンション基板が整列状態で設けられる回路付サスペンション基板集合体シートとして製造されている。
【0003】
そして、回路付サスペンション基板は、上記した回路付サスペンション基板集合体シートから、適宜、切り離されて、種々の電気機器や電子機器に広く用いられている。
このような回路付サスペンション基板集合体シートには、回路付サスペンション基板に対応して、良否を判別するための判別マークを設けることが知られている。
例えば、回路付サスペンション基板集合体シートにおいて、回路付サスペンション基板は、支持シートに支持された状態でそれぞれ検査され、検査の結果、不良品と判定された回路付サスペンション基板は、サインペン(フェルト・ペン)により、それぞれ、判別マーク(インク)が塗布(マーキング)されることによって、マーキングされた回路付サスペンション基板が不良品であることを判別することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−151070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案される回路付サスペンション基板集合体シートでは、回路付サスペンション基板の所定箇所に判別マーク(インク)を塗布しているが、このマーキング時に、判別マーク(インク)が、かかる所定箇所から流出して、回路付サスペンション基板集合体シートやその周辺を汚染するという不具合がある。
本発明の目的は、判別マークによる配線回路基板集合体シートやその周辺の汚染を防止することのできる、配線回路基板集合体シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の配線回路基板集合体シートは、複数の配線回路基板と、前記配線回路基板を整列状態で支持する支持シートとを備える配線回路基板集合体シートにおいて、前記配線回路基板は、前記配線回路基板の良否を判別するための判別マークが形成される判別マーク形成部を備え、前記判別マーク形成部は、前記判別マークの前記判別マーク形成部からの流出を防止するための堰部によって区画されていることを特徴としている。
【0007】
この配線回路基板集合体シートによれば、配線回路基板の判別マーク形成部に判別マークを形成して、その配線回路基板が良品または不良品のいずれかであることを示す場合に、堰部によって、判別マークが判別マーク形成部から流出することを有効に防止することできる。
そのため、判別マークによる配線回路基板集合体シートやその周辺の汚染を防止することができる。
【0008】
また、本発明の配線回路基板集合体シートでは、前記配線回路基板は、金属支持層と、前記金属支持層の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを備え、前記支持シートは、前記金属支持層からなり、前記堰部は、前記ベース絶縁層、前記導体パターンおよび前記カバー絶縁層からなる群から選択される少なくとも1種の層からなることが好適である。
【0009】
この配線回路基板集合体シートでは、配線回路基板と支持シートとを、ともに同一の金属支持層から形成することができる。また、配線回路基板と堰部とを、ともに同一の、ベース絶縁層、導体パターンおよびカバー絶縁層からなる群から選択される少なくとも1種の層から形成することができる。
そのため、製造工程の簡略化を図ることができ、生産効率のよい配線回路基板集合体シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、判別マークによる配線回路基板集合体シートやその周辺の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の配線回路基板集合体シートの一実施形態である回路付サスペンション基板集合体シートの平面図を示す。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの回路付サスペンション基板の拡大平面図を示す。
【図3】図2に示す回路付サスペンション基板のA−A線に沿う断面図を示す。
【図4】回路付サスペンション基板集合体シートの製造方法を示す工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、金属支持基板の上にベース絶縁層を、堰部が形成されるパターンで形成する工程、(c)は、ベース絶縁層の上に導体パターンを形成する工程、(d)は、ベース絶縁層の上にカバー絶縁層を形成する工程、(e)は、金属支持基板を切り抜く工程、(f)は、不良品の回路付サスペンション基板の判別マーク形成部に判別マークを形成する工程、(g)は、不良品の回路付サスペンション基板を支持シートから除去する工程を示す。
【図5】本発明の配線回路基板集合体シートの他の実施形態(堰部がベース絶縁層およびカバー絶縁層から形成される態様)である回路付サスペンション基板集合体シートの回路付サスペンション基板の判別マークの断面図を示す。
【図6】本発明の配線回路基板集合体シートの他の実施形態(堰部がカバー絶縁層から形成される態様)である回路付サスペンション基板集合体シートの回路付サスペンション基板の判別マークの断面図を示す。
【図7】本発明の配線回路基板集合体シートの他の実施形態(堰部が導体パターンから形成される態様)である回路付サスペンション基板集合体シートの回路付サスペンション基板の判別マークの断面図を示す。
【図8】本発明の配線回路基板集合体シートの他の実施形態(堰部が金属支持層から形成される態様)である回路付サスペンション基板集合体シートの回路付サスペンション基板の判別マークの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の配線回路基板集合体シートの一実施形態である回路付サスペンション基板集合体シートの平面図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの回路付サスペンション基板の拡大平面図、図3は、図2に示す回路付サスペンション基板のA−A線に沿う断面図、図4は、回路付サスペンション基板集合体シートの製造方法を示す工程図である。なお、図1および図2において、カバー絶縁層9(後述)は、導体パターン8の相対配置を明確に示すため、省略されている。
【0013】
図1において、この回路付サスペンション基板集合体シート1は、複数の配線回路基板としての回路付サスペンション基板2と、回路付サスペンション基板2を支持する支持シート3とを備えている。
回路付サスペンション基板2は、支持シート3内において、互いに間隔を隔てて整列状態で配置されており、切断可能な支持部17を介して支持シート3に支持されている。
【0014】
この回路付サスペンション基板2は、ハードディスクドライブの磁気ヘッド(図示せず)を実装して、その磁気ヘッドを、磁気ヘッドと磁気ディスク(図示せず)とが相対的に走行するときの空気流に抗して、磁気ディスクとの間に微小な間隔を保持しながら支持する。回路付サスペンション基板2には、磁気ヘッドと、リード・ライト基板(図示せず)とを接続するための導体パターン8が一体的に形成されている。
【0015】
なお、導体パターン8は、後述するが、図2に示すように、磁気ヘッドの接続端子に接続するための磁気ヘッド側接続端子12と、リード・ライト基板の接続端子に接続するための外部側接続端子13と、磁気ヘッド側接続端子12と外部側接続端子13とを接続するための配線11とを一体的に備えている。
回路付サスペンション基板2は、図3に示すように、金属支持層6と、金属支持層6の上に形成されるベース絶縁層7と、ベース絶縁層7の上に形成される導体パターン8と、ベース絶縁層7の上に、導体パターン8を被覆するように形成されるカバー絶縁層9とを備えている。
【0016】
金属支持層6は、図1に示すように、後述する支持シート3とともに金属支持基板14(図4(a)参照)から形成され、回路付サスペンション基板2の外形形状に対応する形状で、長手方向に延びる平帯状の薄板から形成されている。金属支持層6には、図2に示すように、回路付サスペンション基板2において、その先端部(長手方向一端部)に、磁気ヘッド側接続端子12を挟むように形成され、磁気ヘッドを実装するためのジンバル10が設けられている。また、金属支持層6を含む金属支持基板14を形成する金属としては、例えば、ステンレス、42アロイなどが用いられ、好ましくは、ステンレスが用いられる。また、金属支持層6を含む金属支持基板14の厚みは、例えば、10〜100μm、好ましくは、15〜50μmである。
【0017】
ベース絶縁層7は、図3に示すように、金属支持層6の上面全面(後述する判別マーク形成部4に対応する部分を除く。)に形成されている。また、ベース絶縁層7を形成する絶縁体としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂が用いられる。好ましくは、ポリイミド樹脂が用いられる。また、ベース絶縁層7の厚みは、例えば、3〜30μm、好ましくは、5〜15μmである。
【0018】
導体パターン8は、図2に示すように、互いに間隔を隔てて並列配置される複数(6本)の配線11と、配線11の先端部から連続する磁気ヘッド側接続端子12および配線11の後端部(長手方向他端部)からそれぞれ連続する外部側接続端子13とを一体的に備えている。導体パターン8を形成する導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだまたはこれらの合金などの金属箔が用いられ、導電性、廉価性および加工性の観点から、好ましくは、銅箔が用いられる。
【0019】
また、導体パターン8の厚みは、例えば、3〜20μm、好ましくは、7〜15μmである。また、各配線11の幅は、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜200μmであり、各磁気ヘッド側接続端子12および各外部側接続端子13の幅は、例えば、20〜800μm、好ましくは、30〜500μmである。また、各配線11間の間隔、各磁気ヘッド側接続端子12間の間隔、および、各外部側接続端子13間の間隔は、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜200μmである。
【0020】
カバー絶縁層9は、図3に示すように、ベース絶縁層7の上面において、導体パターン8が形成される部分に対応するパターンとして形成されている。具体的には、カバー絶縁層9は、配線11を被覆し、かつ、図3において図示されないが、磁気ヘッド側接続端子12および外部側接続端子13が露出するパターンで形成されている。カバー絶縁層9を形成する絶縁体としては、上記したベース絶縁層7と同様の絶縁体が用いられ、好ましくは、ポリイミド樹脂が用いられる。また、カバー絶縁層9の厚みは、例えば、2〜20μm、好ましくは、4〜15μmである。
【0021】
支持シート3は、図1および図2に示すように、後述する回路付サスペンション基板集合体シート1の製造方法(図4(a)参照)において、金属支持基板14を、回路付サスペンション基板2の外形形状に対応するように、部分的に切り抜くことにより、支持部17および金属支持層6とともに形成される。
また、支持シート3には、回路付サスペンション基板2を囲む、支持シート3の内周縁部と、回路付サスペンション基板2の外周縁部との間に、回路付サスペンション基板2を囲む平面視略枠状の隙間溝24が形成されている。
【0022】
また、この支持シート3には、隙間溝24を横切るようにして、複数の支持部17が形成されている。
そして、この回路付サスペンション基板集合体シート1における回路付サスペンション基板2は、図3に示すように、後述するマーキング工程においてマーキングされる判別マーク15(図4(f)参照)が形成される判別マーク形成部4を備えている。
【0023】
判別マーク形成部4は、図1に示すように、各回路付サスペンション基板2に対応してそれぞれ設けられ、平面視において、回路付サスペンション基板2内に配置されている。すなわち、判別マーク形成部4は、図2に示すように、長手方向における磁気ヘッド側接続端子12および外部側接続端子13間において、幅方向に隣接する配線11間に、それらと幅方向に間隔を隔てて配置されている。
【0024】
また、判別マーク形成部4は、図3に示すように、堰部5によって区画されている。
堰部5は、判別マーク15の判別マーク形成部4からの流出を防止するために設けられており、ベース絶縁層7から形成され、平面視において、判別マーク形成部4を囲んでいる。また、堰部5は、ベース絶縁層7における判別マーク形成部4を露出するベース開口部16の周囲部分として形成されている。堰部5を形成するベース絶縁層7は、導体パターン8(配線11)に対応するベース絶縁層7と幅方向に連続して形成されている。
【0025】
ベース開口部16は、判別マーク形成部4に対応するように、ベース絶縁層7を平面視において略円形状に貫通するように形成されている。
堰部5の内径(ベース開口部16の内径)は、例えば、50〜1000μm、好ましくは、100〜600μmである。堰部5の内径が、上記した範囲に満たない場合には、マーキング工程後における判別マーク15の視認性が低下する場合がある。また、堰部5の内径が、上記した範囲を超える場合には、導体パターン8の配置のレイアウトの制限を受ける場合がある。
【0026】
判別マーク15は、図4(f)に示すように、回路付サスペンション基板の良否を判別するために形成される。判別マーク15は、例えば、インクである。インクの色は、特に限定されず、金属支持層6を形成する金属がステンレス(白色系)である場合には、視認性およびコントラストの観点から、好ましくは、黒色系インク、オレンジ系インクなどが用いられる。
【0027】
次に、この回路付サスペンション基板集合体シート1の製造方法について、図4を参照して説明する。
この方法では、まず、図4(a)に示すように、金属支持基板14を用意する。金属支持基板14は、図1が参照されるように、平面視略矩形平板形状に形成されている。
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、金属支持基板14の上に、ベース絶縁層7を形成する。ベース絶縁層7は、回路付サスペンション基板2に対応し、かつ、その回路付サスペンション基板2においてベース開口部16(堰部5)が形成されるパターンで形成する。
【0028】
ベース絶縁層7を形成するには、例えば、金属支持基板14の上面全面に、合成樹脂の溶液(ワニス)を上記したパターンで塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。また、ベース絶縁層7を形成するには、感光性の合成樹脂を用いる場合には、それを金属支持基板14の上面全面に塗布し、その後、感光性の合成樹脂を露光および現像して、上記したパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。さらに、ベース絶縁層7を形成するには、上記の方法に制限されず、例えば、予め合成樹脂を上記したパターンのフィルムに形成して、そのフィルムを、金属支持基板14の上面全面に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0029】
これにより、ベース開口部16、すなわち、堰部5を形成することができ、そして、堰部5により区画される判別マーク形成部4が形成される。
次いで、この方法では、図4(c)に示すように、ベース絶縁層7の上に導体パターン8を上記したパターンで形成する。導体パターン8を形成するには、アディティブ法やサブトラクティブ法などの公知のパターンニング法が用いられる。好ましくは、アディティブ法が用いられる。
【0030】
次いで、この方法では、図4(d)に示すように、ベース絶縁層7の上にカバー絶縁層9を上記したパターンで形成する。
カバー絶縁層9を形成するには、例えば、ベース絶縁層7の上面に、上記した合成樹脂の溶液を上記したパターンで塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。また、カバー絶縁層9を形成するには、感光性の合成樹脂を用いる場合には、それをベース絶縁層7の上面全面に塗布し、その後、その感光性の合成樹脂を露光および現像して、上記したパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。さらに、カバー絶縁層9を形成するには、上記の方法に制限されず、例えば、予め合成樹脂を上記したパターンのフィルムに形成して、そのフィルムをベース絶縁層7の上面全面に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0031】
次いで、この方法では、図4(e)に示すように、金属支持基板14を切り抜いて、回路付サスペンション基板2のジンバル10と支持シート3の隙間溝24とを同時に形成する。
ジンバル10と隙間溝24とを形成するには、例えば、エッチングなどが用いられる。
これにより、判別マーク形成部4が形成された回路付サスペンション基板2と、支持シート3とが形成された回路付サスペンション基板集合体シート1を得ることができる。
【0032】
なお、エッチングにより、支持部17も同時に形成される。
その後、得られた回路付サスペンション基板集合体シート1において、例えば、まず、回路付サスペンション基板2の導体パターン8の断線の有無を検査する(検査工程)。導体パターン8の断線の有無は、例えば、公知の導通検査が用いられる。
次いで、図4(f)に示すように、上記した検査によって回路付サスペンション基板2が不良品と判別されたときには、その回路付サスペンション基板2に対応する判別マーク形成部4に判別マーク15を形成する(マーキング工程)。
【0033】
具体的には、マーキング工程では、不良品と判別された回路付サスペンション基板2における判別マーク形成部4にインクを塗布する。判別マーク形成部4にインクを塗布するには、例えば、サインペンなどのインク塗布手段を備える公知のマーキング装置、例えば、インクジェットプリンタなどを用いる。
これにより、導体パターン8が断線している回路付サスペンション基板2では、それに対応する判別マーク形成部4に判別マーク15が形成される。その後、判別マーク形成部4に判別マーク15が形成されていることを、例えば、目視や、CCDカメラなどの光学センサなどで観察する(判別工程)。
【0034】
これより、判別マーク15がある回路付サスペンション基板2が不良品であることを判別することができる。
その後、図4(g)に示すように、不良品と判別された回路付サスペンション基板2に対応する支持部17を切断加工することにより、不良品の回路付サスペンション基板2を、支持シート3から除去する。
【0035】
一方、判別工程において、良品と判別された回路付サスペンション基板2では、判別マーク形成部4に判別マーク15が形成されていないので、判別マーク形成部4に判別マーク15が形成されていないことを、例えば、目視や、CCDカメラなどの光学センサなどで観察する。これにより、回路付サスペンション基板2が良品であることを判別することができる。その後、良品である回路付サスペンション基板2を支持シート3から切り離し(分離工程)、良品である回路付サスペンション基板2をハードディスクドライブに搭載する(搭載工程)。
【0036】
そして、この回路付サスペンション基板集合体シート1によれば、マーキング工程において、回路付サスペンション基板2の判別マーク形成部4に判別マーク15を形成して、その回路付サスペンション基板2が不良品であることを示す場合に、堰部5によって、判別マーク15が判別マーク形成部4から流出することを防止することできる。とりわけ、図4(f)の仮想線で示すように、判別マーク形成部4に対して過剰量の判別マーク15が塗布された場合においても、堰部5によって、判別マーク15が判別マーク形成部4から判別マーク形成部4の外側に向かって流出することを有効に防止することできる。
【0037】
そのため、判別マーク15による回路付サスペンション基板集合体シート1やその周辺の汚染を防止することができる。
また、この回路付サスペンション基板集合体シート1では、回路付サスペンション基板2と支持シート3とを、ともに同一の金属支持層6から形成することができる。また、回路付サスペンション基板2と堰部5とを、ともに同一のベース絶縁層7から形成することができる。
【0038】
そのため、製造工程の簡略化を図ることができ、生産効率のよい回路付サスペンション基板集合体シート1を得ることができる。
なお、上記した図4(b)の説明では、判別マーク形成部4を、ベース絶縁層7の形成と同時に形成したが、例えば、図示しないが、まず、ベース絶縁層7を、金属支持層6の上面全面に形成した後、判別マーク形成部4が形成される部分に対応するベース絶縁層7を除去することもできる。
【0039】
ベース絶縁層7を除去するには、例えば、エッチングなどが用いられ、具体的には、薬液を用いるウエットエッチング、レーザー光を用いるドライエッチングなどが用いられる。好ましくは、金属支持層6(を形成するステンレスなど)が浸食されないアルカリ性薬液を用いるウエットエッチングが用いられる。
上記した判別マーク形成部4(堰部5)の形成方法のうち、好ましくは、判別マーク形成部4を、ベース絶縁層7の形成と同時に形成する。
【0040】
これにより、ベース絶縁層7を除去する工程(例えば、エッチング工程)を省略することができる。そのため、製造工程の簡略化を図ることができ、生産効率のよい回路付サスペンション基板集合体シート1を得ることができる。
図5〜図8は、本発明の配線回路基板集合体シートの他の実施形態である回路付サスペンション基板集合体シートの回路付サスペンション基板の判別マークの断面図を示す。なお、上記した部材に対応する部材については、以降の図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0041】
次に、本発明の配線回路基板集合体シートの他の実施形態である回路付サスペンション基板集合体シートについて、図5〜図8を参照して、説明する。
上記した図3の説明では、堰部5を、ベース絶縁層7から形成しているが、例えば、図5に示すように、ベース絶縁層7およびカバー絶縁層9の両方から形成することができ、また、図6に示すように、カバー絶縁層9から形成することができ、さらに、図7に示すように、導体パターン8から形成することもでき、さらにまた、図8に示すように、金属支持層6から形成することができる。
【0042】
図5において、堰部5は、ベース開口部16の周囲部分と、カバー絶縁層9において、それを厚み方向に貫通するカバー開口部18の周囲部分として形成されている。カバー開口部18は、平面視において、ベース開口部16と同一形状に形成されている。
また、堰部5を形成するカバー絶縁層9は、導体パターン8に対応するカバー絶縁層9と連続して形成されている。つまり、カバー絶縁層9は、磁気ヘッド側接続端子12および外部側接続端子13を除き、平面視において、ベース絶縁層7と同一形状に形成されている。
【0043】
図5に示す回路付サスペンション基板集合体シート1を製造するには、カバー絶縁層9を、上記したカバー開口部18が形成されるパターンで形成する以外は、上記と同様に処理する。
図5に示す回路付サスペンション基板集合体シート1では、堰部5をベース絶縁層7およびカバー絶縁層9の両方で形成することにより、堰部5における十分な厚みを確保でき、判別マーク15の流出をより一層有効に防止できる。
【0044】
図6において、堰部5は、カバー開口部18の周囲部分として形成されている。
ベース絶縁層7は、導体パターン8が形成される部分に対応するパターンとして形成されている。
カバー絶縁層9は、ベース絶縁層7から露出する金属支持層6の上にも形成されている。
【0045】
図6に示す回路付サスペンション基板集合体シート1を製造するには、ベース絶縁層7を、上記した導体パターン8が形成される部分に対応するパターンで形成し、カバー絶縁層9を、ベース絶縁層7の上と、ベース絶縁層7から露出する金属支持層6の上とに、上記したパターンで形成する以外は、上記と同様に処理する。
図6に示す回路付サスペンション基板集合体シート1では、回路付サスペンション基板2と堰部5とを、ともに同一のカバー絶縁層9から形成することができる。そのため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0046】
図7において、堰部5は、導体パターン8から形成される導体堰部20として形成されている。導体堰部20は、金属支持層6の上に、平面視略リング(円環)形状に形成されている。つまり、導体堰部20は、その内側に開口される導体開口部19の周囲部分として形成されている。
図7に示す回路付サスペンション基板集合体シート1を製造するには、導体パターン8を、導体堰部20を有するパターンで形成する以外は、上記と同様に処理する。
【0047】
図7に示す回路付サスペンション基板集合体シート1では、回路付サスペンション基板2と堰部5とを、ともに同一の導体パターン8から形成することができる。そのため、製造工程の簡略化を図ることができる。
図8において、堰部5は、金属支持層6の上側がくり抜かれるように形成される溝部21の周囲の段部として形成されている。
【0048】
図8に示す回路付サスペンション基板集合体シート1を製造するには、カバー絶縁層9が形成された金属支持層6(図4(d)参照)において、判別マーク形成部4が形成される部分を上側から厚み方向途中までハーフエッチングすることにより、溝部21を形成する以外は、上記と同様に処理する。
上記した図3および図5〜図8に示す回路付サスペンション基板集合体シート1のうち、好ましくは、堰部5がベース絶縁層7から形成される態様(図3)、堰部5がベース絶縁層7およびカバー絶縁層9から形成される態様(図5)、堰部5がカバー絶縁層9から形成される態様(図6)、堰部5が導体パターン8から形成される態様(図7)が挙げられる。これらによれば、溝部21(図8)を形成するためのハーフエッチングを不要とすることができる。そのため、製造工程の簡略化をより一層図ることができ、生産効率がより一層優れた回路付サスペンション基板集合体シート1を得ることができる。
【0049】
また、上記した説明では、判別マーク形成部4を、回路付サスペンション基板2に対して、それぞれ1つ設けているが、その数は特に限定されず、例えば、複数設けることもできる。
また、上記した説明では、判別マーク形成部4を、平面視略円形状に形成しているが、その形状は特に限定されず、例えば、平面視略矩形状、平面視略三角形状など、適宜の形状に形成することができる。
【0050】
また、上記した説明では、判別マーク形成部4を、長手方向における磁気ヘッド側接続端子12および外部側接続端子13間において、幅方向に隣接する配線11間に設けているが、その配置は特に限定されない。判別マーク形成部4を、例えば、磁気ヘッド側接続端子12の先側(長手方向一方側)、または、外部側接続端子13の後側(長手方向他方側)に設けることができ、配線11の幅方向両外側に設けることもできる。
【0051】
また、上記した図2の説明では、導体パターン8を、磁気ヘッド側接続端子12、外部側接続端子13および配線11を備えるように形成したが、例えば、図示しないが、検査用端子をさらに備えるように形成することもできる。
この場合には、検査用端子は、判別工程後の回路付サスペンション基板2を導通検査する公知の導通検査装置の接続端子に接続するために設けられており、外部側接続端子13の後側に配置されている。
【0052】
また、外部側接続端子13の後側には、図示しない検査用配線が、外部側接続端子13に連続して形成されており、検査用端子と外部側接続端子13とを接続している。
また、カバー絶縁層9は、検査用配線を被覆し、検査用端子を露出するパターンで形成されている。
導体パターン8は、磁気ヘッド側接続端子12、外部側接続端子13、検査用端子(図示せず)、配線11および検査用配線(図示せず)を一体的に備えている。
【0053】
かかる回路付サスペンション基板2において、検査用端子に対応する部分(金属支持層6、ベース絶縁層7およびカバー絶縁層9)は、搭載工程時(あるいは、分離工程後で搭載工程前に)、磁気ヘッド側接続端子12、外部側接続端子13、およびそれらの間の配線11に対応する部分から切り離される。
かかる回路付サスペンション基板2においては、判別マーク形成部4を、磁気ヘッド側接続端子12および外部側接続端子13の間に設けることが好ましい。
【0054】
判別マーク形成部4を、磁気ヘッド側接続端子12および外部側接続端子13の間に設けることにより、搭載工程後の回路付サスペンション基板2には、判別マーク形成部4が残存している。そのため、ハードディスクドライブに不具合が生じても、判別マーク形成部4に判別マーク15が形成されていないことを観察することにより、良品である回路付サスペンション基板2をハードディスクドライブに搭載したことを確実に確認することができる。換言すれば、不良品である回路付サスペンション基板2をハードディスクドライブに搭載していないことを確実に確認することができる。
【0055】
なお、上記した説明では、検査用端子を、外部側接続端子13の後側に配置しているが、例えば、図示しないが、磁気ヘッド側接続端子12の先側に配置することもできる。この場合には、検査用配線(図示せず)は、磁気ヘッド側接続端子12の先側に連続して形成されており、検査用端子と磁気ヘッド側接続端子12とを接続している。
また、上記した説明では、マーキング工程において、不良品と判別された回路付サスペンション基板2における判別マーク形成部4にインクを塗布しているが、例えば、その逆にすることもできる。すなわち、マーキング工程では、良品と判別された回路付サスペンション基板2における判別マーク形成部4にインクを塗布して、判別マーク15がない回路付サスペンション基板2が不良品であることを判別することができる。
【0056】
また、上記した説明では、本発明の配線回路基板集合体シートを、回路付サスペンション基板2を備える回路付サスペンション基板集合体シート1として説明しているが、本発明の配線回路基板は、これに限定されず、例えば、金属支持層6を補強層として備えるフレキシブル配線回路基板を備えるフレキシブル配線回路基板集合体シートなど、他の配線回路基板集合体シートにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 回路付サスペンション基板集合体シート
2 回路付サスペンション基板
3 支持シート
4 判別マーク形成部
6 金属支持層
7 ベース絶縁層
8 導体パターン
9 カバー絶縁層
15 判別マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線回路基板と、前記配線回路基板を整列状態で支持する支持シートとを備える配線回路基板集合体シートにおいて、
前記配線回路基板は、前記配線回路基板の良否を判別するための判別マークが形成される判別マーク形成部を備え、
前記判別マーク形成部は、前記判別マークの前記判別マーク形成部からの流出を防止するための堰部によって区画されていることを特徴とする、配線回路基板集合体シート。
【請求項2】
前記配線回路基板は、金属支持層と、前記金属支持層の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターンと、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層とを備え、
前記支持シートは、前記金属支持層からなり、
前記堰部は、前記ベース絶縁層、前記導体パターンおよび前記カバー絶縁層からなる群から選択される少なくとも1種の層からなることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板集合体シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−161302(P2010−161302A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3872(P2009−3872)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】