説明

釣り用ブーツ及びインソールセット

【課題】釣り人の甲高さにかかわらずフィット感が得られる釣り用ブーツ2の提供。
【解決手段】ブーツ2は、アッパー4、ミッドソール6、面ファスナー8、アウトソール10及びインソール12を備えている。このインソール12は、本体22、第一前アジャストシート24a、第二前アジャストシート24b、第一後アジャストシート24c及び第二後アジャストシート24dを備えている。第一前アジャストシート24aは、拇指球相当位置において、本体22の底面に貼着されている。第二前アジャストシート24bは、第一前アジャストシート24aの底面に貼着されている。第一後アジャストシート24cは、踵の近傍において、本体22の底面に貼着されている。第二後アジャストシート24dは、第一後アジャストシート24cの底面に貼着されている。アジャストシート24a、24b、24c、24dの枚数は、釣り人の甲高さに応じて変更されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用されるブーツと、このブーツに適用されうるインソールセットとに関する。
【背景技術】
【0002】
釣りには、ブーツタイプ、シューズタイプ等の履き物が使用されている。履き物は、インソールを備えている。三次元形状を有するインソールが、主として用いられている。このインソールは、「カップインソール」と称されている。カップインソールを備えた履き物が、株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」の第228ページに開示されている。
【0003】
釣りは、前下がりの斜面で行われることが多い。この斜面に釣り人が立つと、釣り人の足には前向きの力が加わる。足は、履き物の中で前方へ移動しようとする。シューズタイプの履き物では、紐、テープ等によってアッパーが締め付けられる。この締め付けにより、アッパーが足の甲にフィットし、足の移動が阻止されうる。締め付けの程度は、釣り人の甲高さ、好み等に応じて決定される。
【非特許文献1】株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブーツタイプの履き物は、紐、テープ等を備えていない。この履き物では、アッパーが甲にフィットしにくい。この履き物が前下がりの斜面で用いられると、足が前方へ移動し、指がアッパーに強く押し付けられる。釣りが長時間に及ぶと、釣り人は指に苦痛を感じる。
【0005】
アッパーとインソールとの間のスペースが狭く設定されれば、フィット感が得られる。しかし、この履き物は、甲高の釣り人には向かない。甲高さに応じ、アッパーとインソールとの間のスペースが異なる多品種のブーツが用意されれば、釣り人は自らの足に応じたブーツを選択することができる。しかし、多品種のブーツの準備は、ブーツの製造コストを押し上げる。
【0006】
本発明の目的は、甲高さにかかわらずフィット感が得られる釣り用ブーツの提供にある。本発明の他の目的は、このブーツのためのインソールセットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る釣り用ブーツのためのインソールセットは、本体と、この本体に積層されうるアジャストシートとを備える。
【0008】
好ましくは、このインソールセットは、拇指球相当位置にて本体に積層される前アジャストシートと、踵近傍にて本体に積層される後アジャストシートとを備える。
【0009】
好ましくは、このインソールセットは、アジャストシートに積層される他のアジャストシートをさらに備える。
【0010】
本発明に係る釣り用ブーツは、アッパー、アウトソール、ミッドソール及びインソールを備える。このインソールは、本体と、この本体に積層されたアジャストシートとを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るインソールセットでは、足の甲高さに応じて、本体にアジャストシートが積層される。このアジャストシートにより、インソールの総厚みが変更されうる。このインソールセットが用いられたブーツでは、釣り人の甲高さにかかわらず、アッパーが足を締め付ける。このブーツでは、甲高さにかかわらず、フィット感が得られうる。このブーツでは、釣り人が指の苦痛を感じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用ブーツ2が示された一部切り欠き断面図である。このブーツ2は、アッパー4、ミッドソール6、面ファスナー8、アウトソール10及びインソール12を備えている。
【0014】
アッパー4は、 典型的には、ポリ塩化ビニルからなる。このアッパー4は、強度及び剛性に優れる。図示されていないが、アッパー4は、その内面に裏地を備えている。アッパー4が、他の合成樹脂からなってもよい。アッパー4が、ゴムからなってもよい。アッパー4は、足部14及び脛部16を備えている。足部14は、人体の甲に当接する。脛部16は、人体の脛を包み、脛を保護する。
【0015】
ミッドソール6は、ゴム組成物が架橋されてなる。ミッドソール6には、強度に優れたゴムが用いられる。好ましいゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムが例示される。ミッドソール6は、接着剤によってアッパー4と接合されている。ミッドソール6が、加硫接着によってアッパー4と接合されてもよい。ミッドソール6が合成樹脂からなってもよい。
【0016】
面ファスナー8は、フック面18とループ面20とを備えている。フック面18は、接着剤によってミッドソール6に接合されている。ループ面20は、接着剤によってアウトソール10に接合されている。フック面18がアウトソール10に接合され、ループ面20がミッドソール6に接合されてもよい。典型的な面ファスナー8は、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。
【0017】
アウトソール10は、面ファスナー8によってミッドソール6と積層されている。アウトソール10は、架橋ゴムからなる。アウトソール10が、フェルトからなってもよい。アウトソール10が、スパイクピンを備えてもよい。面ファスナー8を介さず、アウトソール10が直接にミッドソール6に接合されてもよい。
【0018】
図2は図1のブーツ2のインソール12が示された底面図であり、図3は図2のIII− III線に沿った断面図である。このインソール12は、本体22、第一前アジャストシート24a、第二前アジャストシート24b、第一後アジャストシート24c及び第二後アジャストシート24dを備えている。
【0019】
本体22は、板状のベース26と、このベース26の周縁においてこのベース26から起立する側壁28とを有している。この本体22は、「カップインソール」と称されている。本体22は、気泡を含むポリマー成形体である。典型的には、本体22の基材ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。本体22は、衝撃吸収性に優れる。
【0020】
第一前アジャストシート24aは、ベース26に積層されている。第一前アジャストシート24aは、ベース26の底面に貼着されている。典型的には、粘着剤により、第一前アジャストシート24aがベース26に貼着される。第一前アジャストシート24aは、人体の拇指球に相当する位置において、ベース26と積層されている。第一前アジャストシート24aの材質は、本体22の材質と同等である。
【0021】
第二前アジャストシート24bの形状及び寸法は、第一前アジャストシート24aのそれと同等である。第二前アジャストシート24bは、第一前アジャストシート24aに積層されている。第二前アジャストシート24bは、第一前アジャストシート24aの底面に貼着されている。典型的には、粘着剤により、第二前アジャストシート24bが第一前アジャストシート24aに貼着される。第二前アジャストシート24bの材質は、本体22の材質と同等である。
【0022】
第一後アジャストシート24cは、ベース26に積層されている。第一後アジャストシート24cは、ベース26の底面に貼着されている。典型的には、粘着剤により、第一後アジャストシート24cがベース26に貼着される。第一後アジャストシート24cは、人体の踵に相当する位置の近傍において、ベース26と積層されている。第一後アジャストシート24cの材質は、本体22の材質と同等である。
【0023】
第二後アジャストシート24dの形状及び寸法は、第一後アジャストシート24cのそれと同等である。第二後アジャストシート24dは、第一後アジャストシート24cに積層されている。第二後アジャストシート24dは、第一後アジャストシート24cの底面に貼着されている。典型的には、粘着剤により、第二後アジャストシート24dが第一後アジャストシート24cに貼着される。第二後アジャストシート24dの材質は、本体22の材質と同等である。
【0024】
図1に示されるように、4枚のアジャストシート24により、本体22はミッドソール6から上方に離れて位置している。従って、インソール12と足部14とのスペースS1は、小さい。
【0025】
図4は、図2のインソール12のためのインソールセット30が示された斜視図である。このインソールセット30は、本体22、第一前部材32a、第二前部材32b、第一後部材32c及び第二後部材32dを備えている。第一前部材32a及び第一後部材32cは、本体22と離間している。第二前部材32bは、第一前部材32aと離間している。第二後部材32dは、第一後部材32cと離間している。
【0026】
図5は、図4のインソールセット30の第一前部材32aの一部が示された拡大断面図である。この第一前部材32aは、第一前アジャストシート24a、粘着層34及び離型紙36を備えている。離型紙36が剥がされることで、粘着層34が露出する。この粘着層34の粘着剤により、第一前アジャストシート24aがベース26に貼着される。
【0027】
図示されていないが、第二前部材32b、第一後部材32c及び第二後部材32dの層構成は、第一前部材32aのそれと同等である。第二前部材32bは、第二前アジャストシート24b、粘着層34及び離型紙36を備えている。離型紙36が剥がされることで、粘着層34が露出する。この粘着層34の粘着剤により、第二前アジャストシート24bが第一前アジャストシート24aに貼着される。第一後部材32cは、第一後アジャストシート24c、粘着層34及び離型紙36を備えている。離型紙36が剥がされることで、粘着層34が露出する。この粘着層34の粘着剤により、第一後アジャストシート24cがベース26に貼着される。第二後部材32dは、第二後アジャストシート24d、粘着層34及び離型紙36を備えている。離型紙36が剥がされることで、粘着層34が露出する。この粘着層34の粘着剤により、第二後アジャストシート24dが第一後アジャストシート24cに貼着される。
【0028】
図6は、図1のブーツ2が示された一部切り欠き断面図である。このブーツ2のインソール12は、本体22、第一前アジャストシート24a及び第一後アジャストシート24cからなる。第二前アジャストシート24b(図3参照)及び第二後アジャストシート24dは、インソール12に用いられていない。
【0029】
2枚のアジャストシート24により、本体22はミッドソール6から上方に離れて位置している。インソール12と足部14とのスペースS2は、図1に示されたスペースS1よりも大きい。スペースS2とスペースS1との差(S2−S1)は、アジャストシート24の厚みと同等である。
【0030】
図7は、図1のブーツ2が示された一部切り欠き断面図である。このブーツ2のインソール12は、本体22のみからなる。第一前アジャストシート24a、第二前アジャストシート24b、第一後アジャストシート24c及び第二後アジャストシート24dは、インソール12に用いられていない。
【0031】
アジャストシート24がないので、本体22はミッドソール6に接している。インソール12と足部14とのスペースS3は、図1に示されたスペースS1よりも大きく、図6に示されたスペースS2よりも大きい。スペースS3とスペースS2との差(S3−S2)は、アジャストシート24の厚みと同等である。
【0032】
このインソールセット30では、総厚みが調整されうる。例えば、ベース26の厚みが3mmであり、第一前アジャストシート24a、第二前アジャストシート24b、第一後アジャストシート24c及び第二後アジャストシート24dの厚みが2mmである場合、図1に示された状態ではインソール12の総厚みは7mmであり、図6に示された状態ではインソール12の総厚みは5mmであり、図7に示された状態ではインソール12の総厚みは3mmである。
【0033】
このインソールセット30は、図4に示された状態で流通する。このインソールセット30を入手した釣り人は、自らの甲高さに応じ、アジャストシート24の枚数を決定する。甲が低い釣り人は、図1に示されるように、2枚のアジャストシート24を重ねる。標準的な甲高さの釣り人は、図6に示されるように、重ねることなくアジャストシート24をベース26に貼着する。甲が高い釣り人は、図7に示されるように、アジャストシート24を用いない。インソール12の総厚みの調整により、釣り人の甲高さにかかわらず、足部14が甲を締め付ける。このインソール12が用いられたブーツ2では、従来のブーツでは不可能であったフィット感の調整が可能である。このブーツ2では、指の苦痛が生じにくい。
【0034】
このインソール12では、拇指球相当位置及び踵近傍にて、アジャストシート24がベース26に貼着される。土踏まず相当位置には、アジャストシート24は存在しない。従って、ベース26が三次元形状を有する場合でも、アジャストシート24が容易に形成されうる。土踏まず相当位置ではベース26がミッドソール6から浮き上がるが、土踏まず相当位置には体重があまりかからないので、釣り人は違和感をほとんど感じない。
【0035】
釣り人は、冬は厚いソックスを履き、夏は薄いソックスを履く。このソックスの厚みに応じ、アジャストシート24の枚数が設定されてもよい。具体的には、夏には多数のアジャストシート24が用いられる。冬には、少数のアジャストシート24が用いられるが、アジャストシート24が用いられない。
【0036】
材質の異なる複数のアジャストシート24が準備されてもよい。例えば、高反発なアジャストシート24と低反発なアジャストシート24が準備されてもよい。アウトソール10がスパイクピンを有する場合、高反発なアジャストシート24が用いられることで、スパイクピンからの突き上げ感が軽減されうる。アウトソール10がスパイクピンを有さない場合、低反発なアジャストシート24が用いられることで、優れた履き心地が得られうる。
【0037】
図8は、本発明の他の実施形態に係るインソールセット40が示された斜視図である。このインソールセット40は、本体42、第一部材44a及び第二部材44bを備えている。本体42の形状は、図4に示された本体22の形状と同等である。本体42は、ベース46及び側壁48を備えている。図示されていないが、第一部材44aは、第一アジャストシート、粘着層及び離型紙を備えている。離型紙が剥がされることで、粘着層が露出する。この粘着層の粘着剤により、第一アジャストシートがベース46に貼着される。この第一アジャストシートは、ベース46の底面のほぼ全体を覆う。第二部材44bは、第二アジャストシート、粘着層及び離型紙を備えている。離型紙が剥がされることで、粘着層が露出する。この粘着層の粘着剤により、第二アジャストシートが第一アジャストシートに貼着される。第二アジャストシートの形状は、第一アジャストシートの形状と同等である。このインソールセット40が用いられたブーツでも、アジャストシートの枚数により、インソールと足部とのスペースが調整されうる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るブーツは、種々の釣り場において利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用ブーツが示された一部切り欠き断面図である。
【図2】図2は、図1のブーツのインソールが示された底面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図2のインソールのためのインソールセットが示された斜視図である。
【図5】図5は、図4のインソールセットの第一前部材の一部が示された拡大断面図である。
【図6】図6は、図1のブーツが示された一部切り欠き断面図である。
【図7】図7は、図1のブーツが示された一部切り欠き断面図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係るインソールセットが示された斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
2・・・ブーツ
4・・・アッパー
6・・・ミッドソール
8・・・面ファスナー
10・・・アウトソール
12・・・インソール
14・・・足部
22、42・・・本体
24・・・アジャストシート
26、46・・・ベース
28、48・・・側壁
30、40・・・インソールセット
32a・・・第一前部材
32b・・・第二前部材
32c・・・第一後部材
32d・・・第二後部材
34・・・粘着層
36・・・離型紙
44a・・・第一部材
44b・・・第二部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体に積層されうるアジャストシートとを備えた、釣り用ブーツのためのインソールセット。
【請求項2】
上記本体に拇指球相当位置にて積層される前アジャストシートと、上記本体に踵近傍にて積層される後アジャストシートとを備えた請求項1に記載のインソールセット。
【請求項3】
上記アジャストシートに積層される他のアジャストシートをさらに備えた請求項1に記載のインソールセット。
【請求項4】
アッパー、アウトソール、ミッドソール及びインソールを備えており、
このインソールが、本体と、この本体に積層されたアジャストシートとを有する釣り用ブーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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