釣り用履き物
【課題】滑止性能に優れた釣り用履き物のアウトソールの提供。
【解決手段】アウトソールは、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイク46とを備える。スパイク46は、多数のワイヤー58からなるシャンク54を備える。好ましくは、シャンク54は多数のワイヤー58が撚り合わされて形成される。好ましくは、スパイク46はフランジ56をさらに備える。フランジ56は、多数のワイヤー58からなる。これらワイヤー58のそれぞれは、シャンク54を構成するワイヤー58と連続する。スパイク46の製造方法は、(1)多数のワイヤー58が撚り合わされて、ケーブルが形成される工程、(2)このケーブルが溶断される工程及び(3)溶断されたケーブルの一部において、それぞれのワイヤー58が曲げられてフランジ56が形成される工程を含む。
【解決手段】アウトソールは、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイク46とを備える。スパイク46は、多数のワイヤー58からなるシャンク54を備える。好ましくは、シャンク54は多数のワイヤー58が撚り合わされて形成される。好ましくは、スパイク46はフランジ56をさらに備える。フランジ56は、多数のワイヤー58からなる。これらワイヤー58のそれぞれは、シャンク54を構成するワイヤー58と連続する。スパイク46の製造方法は、(1)多数のワイヤー58が撚り合わされて、ケーブルが形成される工程、(2)このケーブルが溶断される工程及び(3)溶断されたケーブルの一部において、それぞれのワイヤー58が曲げられてフランジ56が形成される工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用されるブーツ、シューズ等の履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り人は、ターゲットである魚を求めて釣り場を移動する。釣り人の地面の状況は、刻々と変化する。様々な状況において優れた滑止性能を発揮するブーツが求められている。
【0003】
ブーツは、アウトソールを備えている。このアウトソールが、地面と接触する。スリップ防止の観点から、このアウトソールについて様々な検討がなされている。この検討の一例が、特開2006−296624公報に開示されている。
【0004】
アウトソールがゴムからなるブーツがある。このアウトソールの、岩等の地面との摩擦係数は大きい。このアウトソールが岩と直接に接触する場合、十分なグリップ力が得られる。しかし、アウトソールと岩との間に水膜が介在する場合、グリップ力は不十分である。アウトソールと岩との間に海草、藻等が介在する場合も、グリップ力は不十分である。
【0005】
アウトソールがフェルトからなるブーツがある。フェルトは、変形能に優れている。このアウトソールは、凹凸のある地面に追従しやすい。フェルトは、吸水性にも優れる。このため、フェルトからなるアウトソールと地面との間に水膜は形成しにくい。フェルトからなるアウトソールは、滑止性能に優れる。しかし、このフェルトからなるアウトソールでも、アウトソールと岩との間に海草、藻等が介在する場合、滑止性能は不十分である。フェルトは、早期に摩耗する。しかも、このアウトソールでは、偏摩耗が生じやすい。摩耗(又は偏摩耗)が進行したアウトソールは、もはや滑止性能に寄与し得ない。
【0006】
図10は、従来のアウトソール2の一例が示された底面図である。図11は、図10のXI−XI線に沿った拡大断面図である。この図10に示されているアウトソール2は、新品である。このアウトソール2は、フェルトからなる主部4と、ポリマー発泡体からなる上板6と、スパイク8とを備えている。スパイク8は、1本の金属製のワイヤーに曲げ加工が施されて形成されている。このスパイク8の先端10は、アウトソール2の底面12に露出している。このスパイク8は、地面に突き刺さる。
【0007】
図12は、図11のスパイク8の一部が示された拡大断面図である。この図12には、スパイク8の先端10が示されている。図示されているように、この先端10にはエッジ14が存在している。このエッジ14は、岩への引っ掛かりに寄与しうる。このスパイク8は、岩にも引っ掛かり易い。このスパイク8は、スリップ防止に寄与しうる。
【特許文献1】特開2006−296624公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、スパイク8の先端10はアウトソール2の底面12に露出している。このスパイク8は、釣り人の体重を支える。スパイク8の先端10は、岩などとの接触により摩耗していく。
【0009】
図13は、使用により摩耗したスパイク8の一部が示された拡大断面図である。図示されているように、スパイク8の先端10は丸みを帯びている。新品のアウトソール2に存在していたエッジ14(図12参照)が、使用により摩耗し消失している。このように先端が丸くなったスパイク8では、そのスリップ防止効果が低減してしまう。このアウトソール2では、優れた滑止性能が持続されないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、滑止性能に優れた釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る釣り用履き物のアウトソールは、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えている。このスパイクは、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている。
【0012】
好ましくは、この釣り用履き物のアウトソールでは、上記シャンクは多数のワイヤーが撚り合わされて形成されている。好ましくは、この釣り用履き物のアウトソールでは、上記スパイクは、フランジをさらに備えている。このフランジは、多数のワイヤーからなる。これらワイヤーのそれぞれは、上記シャンクを構成するワイヤーと連続している。
【0013】
本発明に係る釣り用履き物は、アッパーと、アウトソールとを備えている。このアウトソールは、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えている。このスパイクは、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている。
【0014】
本発明に係るスパイクは、シャンクと、フランジとを備えている。このシャンク及びフランジのそれぞれは、多数のワイヤーからなる。このシャンクを構成するワイヤーのそれぞれは、フランジを構成するワイヤーと連続している。
【0015】
本発明に係るスパイクの製造方法は、
(1)多数のワイヤーが撚り合わされて、ケーブルが形成される工程と、
(2)このケーブルが溶断される工程と、
(3)この溶断されたケーブルの一部において、それぞれのワイヤーが曲げられてフランジが形成される工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る釣り用履き物のアウトソールでは、スパイクを構成するシャンクが地面に突き刺さる。このシャンクは、滑止性能に寄与しうる。このシャンクは、多数のワイヤーからなる。使用により、これらワイヤーは摩耗していくが、これらワイヤーのそれぞれが独立して地面に引っ掛かる。このアウトソールは、滑止性能に優れる。使用により、隣接するワイヤー同士の間隔が拡がるので、ワイヤーはより効果的に地面に引っ掛かる。このアウトソールでは、スパイクの先端が摩耗しても、このスパイクによるスリップ防止効果は持続される。このアウトソールは、滑止性能に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物(ブーツ16)が示された断面図である。このブーツ16は、アッパー18、インソール20、ミッドソール22、面ファスナー24及びアウトソール26を備えている。
【0019】
アッパー18は、フット28及びレッグ30を備えている。フット28は、釣り人の甲に当接する。レッグ30は、釣り人の脛を包み、脛を保護する。アッパー18は、ブーツ16の中への水の浸入を防ぐ。アッパー18は、 典型的には、ポリ塩化ビニルからなる。このアッパー18は、強度及び剛性に優れる。図示されていないが、アッパー18には、その内面に位置する裏地が積層されている。アッパー18が、他の合成樹脂からなってもよい。アッパー18が、ゴムからなってもよい。
【0020】
インソール20は、板状のベース32と、このベース32の周縁においてこのベース32から起立する側壁34とを有している。ベース32は、ミッドソール22の上面に載置されている。ベース32は、三次元形状を有する。このインソール20は、「カップインソール」と称されている。インソール20は、ポリマー発泡体である。この発泡体の典型的な基材ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である。メッシュ状のインソール20が用いられてもよい。
【0021】
ミッドソール22は、ゴム組成物が架橋されてなる。ミッドソール22には、強度に優れたゴムが用いられる。好ましいゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が例示される。ミッドソール22は、接着剤によってアッパー18と接合されている。ミッドソール22が、加硫接着によってアッパー18と接合されてもよい。ミッドソール22が合成樹脂からなってもよい。ミッドソール22は、その外縁にリブ36を備えている。リブ36は、下向きに垂下している。
【0022】
面ファスナー24は、フック面38とループ面40とを備えている。フック面38は、接着剤によってミッドソール22に接合されている。ループ面40は、接着剤によってアウトソール26に接合されている。フック面38がアウトソール26に接合され、ループ面40がミッドソール22に接合されてもよい。典型的な面ファスナー24は、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。ミッドソール22のリブ36は、面ファスナー24よりも下方にまで延在している。
【0023】
アウトソール26は、面ファスナー24によってミッドソール22と積層されている。アウトソール26の上部は、リブ36に囲まれている。リブ36により、アウトソール26のミッドソール22からの意図せぬ離脱が防止される。このアウトソール26は、上板42、主部44及びスパイク46を備えている。
【0024】
上板42は、ポリマー発泡体からなる。典型的な基材ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。この上板42に、ループ面40が接合されている。主部44は、フェルトからなり板状である。このフェルトでは、多数の繊維が絡み合っている。ナイロン繊維、ポリエステル繊維等が、フェルトに用いられうる。主部44は、接着剤等の手段によって上板42に接合されている。主部44により、ブーツ16の底面48が形成されている。
【0025】
図2は、図1のブーツ16のアウトソール26が示された底面図である。図2から明らかなように、複数のスパイク46がアウトソール26の全面に分散している。スパイク46の数は、3本以上25本以下が好ましい。スパイク46の配置は、適宜決定される。サイズの異なる複数種のスパイク46が混在してもよい。
【0026】
図3は、図2のIII−III線に沿った拡大断面図である。図3には、上板42、主部44及びスパイク46が示されている。主部44は、穴50を備えている。スパイク46は、この穴50に配置されている。換言すれば、スパイク46は、主部44に収容されている。スパイク46の先端52は、主部44の底面48に露出している。
【0027】
図4は、アウトソール26に設けられたスパイク46が示された拡大斜視図である。図5は、スパイク46の上面図である。便宜上、図4及び図5では、先端52が上向きの状態で、スパイク46が示されている。
【0028】
スパイク46は、シャンク54と、フランジ56とを備えている。シャンク54は、円柱状である。このシャンク54の一端が、上記先端52である。このブーツ16では、シャンク54は多数のワイヤー58からなる。この先端52において、ワイヤー58同士は溶着している。このワイヤー58は、金属材料からなる。典型的な金属材料は、スチールである。
【0029】
図6は、図4のVI−VI線に沿った断面図である。この図6には、シャンク54の断面が示されている。このシャンク54は、19本のワイヤー58が撚り合わされて形成されている。このシャンク54は、撚り線である。これらワイヤー58のうち、その中心に位置するワイヤー58aは芯線と称される。この芯線の外側に位置しており6本のワイヤー58bからなる部分は、内層と称される。この内層のさらに外側に位置しており12本のワイヤー58cからなる部分は、外層と称される。なお、このシャンク54におけるワイヤー58の構成は、ブーツ16の仕様等が考慮され適宜決められる。
【0030】
フランジ56は、シャンク54の他端の側に位置している。このフランジ56は、シャンク54から庇のように突き出ている。このフランジ56の外縁60は、シャンク54の外縁62よりも外側に位置している。このフランジ56の中心に、シャンク54は位置している。このブーツ16では、このフランジ56は多数のワイヤー58からなる。このフランジ56は、これらワイヤー58のそれぞれが折り曲げられて形成されている。ワイヤー58は、金属材料からなる。典型的な金属材料は、スチールである。
【0031】
このブーツ16では、フランジ56を構成するワイヤー58のそれぞれは、シャンク54を構成するワイヤー58と連続している。このフランジ56とシャンク54とは、一体的に形成されている。なお、フランジ56が板状のディスクから構成されてもよい。この場合、このディスクの中心に多数のワイヤー58からなるシャンク54が設けられる。
【0032】
図7は、図4のスパイク46を形成するための製造装置64の一部が示された模式図である。この製造装置64は、芯線供給部66、側線供給部68、ダイス70及び切断機72を備えている。芯線供給部66には、一のボビン74が装着される。この芯線供給部66から、ワイヤー58が芯線として送り出される。図示されていないが、側線供給部68には、複数のボビン74が装着される。この側線供給部68において、これらボビン74は芯線から等しい距離に等しい間隔で配置される。この側線供給部68は、芯線を中心として回転しつつボビン74からワイヤー58を送り出すように構成されている。ダイス70は、この側線供給部68から引き出されたワイヤー58と上記芯線とを束ね、ケーブルを形成する。この製造装置64では、側線供給部68は芯線を中心として回転するから、このダイス70において多数のワイヤー58が撚り合わされる。この撚り合わせにより、ケーブル76が形成される。切断機72は、ケーブル76を所定の長さに溶断し、ストランド78を形成する。この溶断により、ストランド78の両端面80において、ワイヤー58の先端同士が溶接されるので、このストランド78はワイヤー58が撚り合わされた状態で保持される。なお、図4に示されたスパイク46の先端52が、この溶断によりワイヤー58の先端同士が溶接された部分に相当する。
【0033】
このブーツ16では、スパイク46は上記製造装置64を用いて次のようにして製造される。ワイヤー58が巻かれたボビン74が多数準備され、製造装置64に供給される。これらボビン74の内、一のボビン74が芯線供給部66に装着され、残りのボビン74が側線供給部68に装着される。それぞれのボビン74から送り出されたワイヤー58が撚り合わされ、ケーブル76が形成される。このケーブル76が所定の長さで溶断され、ストランド78が形成される。このストランド78の一部において、このストランド78を構成するワイヤー58のそれぞれが曲げられてフランジ56が形成される。このようにして、図4で示されたスパイク46が得られる。
【0034】
図3に示されるように、スパイク46のシャンク54は主部44の穴50に通されている。フランジ56の外縁60は主部44の穴50よりも外側に位置している。このフランジ56は、主部44と当接している。このフランジ56が主部44に引っ掛かるので、このスパイク46が穴50を通じて引き抜かれることはない。フランジ56は、上板42と当接している。このフランジ56は、上板42で覆われている。フランジ56は、上板42と主部44とに挟まれている。前述したように、主部44は接着剤等の手段によって上板42に接合されている。このブーツ16では、スパイク46のアウトソール26からの脱落が防止されている。このブーツ16では、スパイク46はアウトソール26に安定に固定されている。
【0035】
前述の通り、スパイク46の先端52は底面48に露出している。このブーツ16を着用した釣り人が歩行すると、海草等がアウトソール26と地面との間に介在してしても、スパイク46がこの海草を突き破って地面に刺さる。従って、ブーツ16のスリップが防止される。このアウトソール26は、滑止性能に優れる。
【0036】
スパイク46の先端52には、溶断により形成されたエッジ82が存在している。このエッジ82は、岩への引っ掛かりに寄与しうる。このスパイク46は、スリップ防止に寄与しうる。
【0037】
釣り人の体重は、スパイク46によって支えられる。使用によりシャンク54の先端52の部分は摩耗していく。この摩耗により、溶断によりワイヤー58同士が溶接された部分は消失していく。
【0038】
図8は、使用中にあるアウトソール26の底面48の一部が示された斜視図である。便宜上、この図8では、底面48が上向きの状態で、アウトソール26が示されている。図示されているように、スパイク46の先端52は底面48に露出している。使用により新品のスパイク46に存在していたワイヤー58同士の溶接部分(図4参照)は、消失している。この消失により、この先端52には、多数のワイヤー58の先端が露出している。使用により、これらワイヤー58は摩耗していくが、これらワイヤー58のそれぞれが独立して地面に引っ掛かる。このアウトソール26は、滑止性能に優れる。
【0039】
図示されているように、使用により隣接するワイヤー58同士の間隔は拡がる。このため、ワイヤー58はより効果的に地面に引っ掛かる。このアウトソール26を備えたブーツ16では、スパイク46の先端52が摩耗しても、このスパイク46による引っ掛かり効果は持続される。このアウトソール26は、滑止性能に優れる。
【0040】
図5において矢印φ1で示されているのは、スパイク46のシャンク54の太さである。海草等を突き破りやすいとの観点から、太さφは10.0mm以下が好ましく、5.0mm以下が好ましい。強度の観点から、太さは2.0mm以上が好ましい。
【0041】
図5において矢印Lで示されているのは、スパイク46のフランジ56の大きさである。この大きさLはシャンク54からフランジ56の外縁60までの長さの計測により得られる。スパイク46の脱落防止の観点から、この大きさLは2.0mm以上が好ましい。軽量化の観点から、10.0mm以下が好ましい。
【0042】
図6において矢印φ2で示されているのは、ワイヤー58の外径である。スパイク46による引っ掛かり効果が持続されうるという観点から、外径φ2は、2.0mm以下が好ましく、1.0mm以下が好ましい。強度の観点から、この外径φ2は0.5mm以上が好ましい。
【0043】
前述の通り、主部44はフェルトからなる。凹凸のある地面を釣り人が歩行したとき、この凹凸に応じてフェルトが変形する。この変形により、ブーツ16のスリップが防止される。フェルトは吸水性に優れるので、アウトソール26と地面との間に水膜は形成しにくい。これによっても、ブーツ16のスリップが防止される。
【0044】
前述したように、釣り人の体重はスパイク46によって支えられる。従って、主部44にかかる圧力は、小さい。このアウトソール26では、フェルトの摩耗が抑制される。このアウトソール26では、偏摩耗も抑制される。スリットによって追従性が高められているので、これによっても偏摩耗が抑制される。このアウトソール26は、長持ちする。
【0045】
このブーツ16が繰り返し使用されると、アウトソール26が摩耗する。摩耗の進行したアウトソール26は、ミッドソール22から引き剥がされる。この引き剥がしは、フック面38からのループ面40の分離によってなされる。アウトソール26及びループ面40は、廃棄される。そして、新しいアウトソール26が、ループ面40と共にフック面38に接合される。アウトソール26の交換により、このブーツ16が長期間にわたって使用されうる。このブーツ16は、経済的である。
【0046】
図9は、図1のブーツ16のアウトソール26の一部が示された拡大断面図である。図9(a)には、釣り人が起立したときのアウトソール26が示されている。図9(b)には、釣り人が歩行しているときのアウトソール26が示されている。このアウトソール26は、主部44(すなわちフェルト)にスリット84を備えている。主部44が底面48から上方に向かって切り込まれることにより、スリット84が形成されている。スリット84の上端86は、上板42にまでは至っていない。図2から明らかなように、スリット84は実質的に幅方向(図2の左右方向)に延在している。スリット84は、幅方向に対して波状である。この実施形態では、スリット84の数は5である。
【0047】
図9(b)に示されるように、歩行によってアウトソール26が変形する。スリット84が開きつつ主部44が変形するので、この変形において生じる応力は小さい。このアウトソール26は、釣り人の足の変形に容易に追従する。このブーツ16を着用した釣り人の足は、疲れにくい。
【0048】
図9において矢印Dで示されているのは、スリット84の深さである。深さDは、4mm以上が好ましい。深さDが4mm以上である主部44は、追従性に優れる。追従性に優れた主部44は、偏摩耗しにくい。追従性に優れた主部44を有するブーツ16は、履き心地に優れる。この観点から、深さDは6mm以上がより好ましい。深さDは主部44の厚みTの40%以上が好ましく、60%以上が特に好ましい。深さDが厚みTと同一であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るアウトソールは、ブーツのみならず、シューズ、足袋、ウェーダー等に適用されうる。本発明に係る履き物は、種々の釣り場において利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物(ブーツ)が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のブーツのアウトソールが示された底面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った拡大断面図である。
【図4】図4は、アウトソールに設けられたスパイクが示された拡大斜視図である。
【図5】図5は、スパイクの上面図である。
【図6】図6は、図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図7は、図4のスパイクを形成するための製造装置の一部が示された模式図である。
【図8】図8は、使用中にあるアウトソールの底面の一部が示された斜視図である。
【図9】図9は、図1のブーツのアウトソールの一部が示された拡大断面図である。
【図10】図10は、従来のアウトソールの一例が示された底面図である。
【図11】図11は、図10のXI−XI線に沿った拡大断面図である。
【図12】図12は、図11のスパイクの一部が示された拡大断面図である。
【図13】図13は、使用により摩耗したスパイクの一部が示された拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
2、26・・・アウトソール
4、44・・・主部
6、42・・・上板
8、46・・・スパイク
16・・・ブーツ
18・・・アッパー
20・・・インソール
22・・・ミッドソール
24・・・面ファスナー
54・・・シャンク
56・・・フランジ
58、58a、58b、58c・・・ワイヤー
64・・・製造装置
66・・・芯線供給部
68・・・側線供給部
70・・・ダイス
72・・・切断機
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用されるブーツ、シューズ等の履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り人は、ターゲットである魚を求めて釣り場を移動する。釣り人の地面の状況は、刻々と変化する。様々な状況において優れた滑止性能を発揮するブーツが求められている。
【0003】
ブーツは、アウトソールを備えている。このアウトソールが、地面と接触する。スリップ防止の観点から、このアウトソールについて様々な検討がなされている。この検討の一例が、特開2006−296624公報に開示されている。
【0004】
アウトソールがゴムからなるブーツがある。このアウトソールの、岩等の地面との摩擦係数は大きい。このアウトソールが岩と直接に接触する場合、十分なグリップ力が得られる。しかし、アウトソールと岩との間に水膜が介在する場合、グリップ力は不十分である。アウトソールと岩との間に海草、藻等が介在する場合も、グリップ力は不十分である。
【0005】
アウトソールがフェルトからなるブーツがある。フェルトは、変形能に優れている。このアウトソールは、凹凸のある地面に追従しやすい。フェルトは、吸水性にも優れる。このため、フェルトからなるアウトソールと地面との間に水膜は形成しにくい。フェルトからなるアウトソールは、滑止性能に優れる。しかし、このフェルトからなるアウトソールでも、アウトソールと岩との間に海草、藻等が介在する場合、滑止性能は不十分である。フェルトは、早期に摩耗する。しかも、このアウトソールでは、偏摩耗が生じやすい。摩耗(又は偏摩耗)が進行したアウトソールは、もはや滑止性能に寄与し得ない。
【0006】
図10は、従来のアウトソール2の一例が示された底面図である。図11は、図10のXI−XI線に沿った拡大断面図である。この図10に示されているアウトソール2は、新品である。このアウトソール2は、フェルトからなる主部4と、ポリマー発泡体からなる上板6と、スパイク8とを備えている。スパイク8は、1本の金属製のワイヤーに曲げ加工が施されて形成されている。このスパイク8の先端10は、アウトソール2の底面12に露出している。このスパイク8は、地面に突き刺さる。
【0007】
図12は、図11のスパイク8の一部が示された拡大断面図である。この図12には、スパイク8の先端10が示されている。図示されているように、この先端10にはエッジ14が存在している。このエッジ14は、岩への引っ掛かりに寄与しうる。このスパイク8は、岩にも引っ掛かり易い。このスパイク8は、スリップ防止に寄与しうる。
【特許文献1】特開2006−296624公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、スパイク8の先端10はアウトソール2の底面12に露出している。このスパイク8は、釣り人の体重を支える。スパイク8の先端10は、岩などとの接触により摩耗していく。
【0009】
図13は、使用により摩耗したスパイク8の一部が示された拡大断面図である。図示されているように、スパイク8の先端10は丸みを帯びている。新品のアウトソール2に存在していたエッジ14(図12参照)が、使用により摩耗し消失している。このように先端が丸くなったスパイク8では、そのスリップ防止効果が低減してしまう。このアウトソール2では、優れた滑止性能が持続されないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、滑止性能に優れた釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る釣り用履き物のアウトソールは、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えている。このスパイクは、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている。
【0012】
好ましくは、この釣り用履き物のアウトソールでは、上記シャンクは多数のワイヤーが撚り合わされて形成されている。好ましくは、この釣り用履き物のアウトソールでは、上記スパイクは、フランジをさらに備えている。このフランジは、多数のワイヤーからなる。これらワイヤーのそれぞれは、上記シャンクを構成するワイヤーと連続している。
【0013】
本発明に係る釣り用履き物は、アッパーと、アウトソールとを備えている。このアウトソールは、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えている。このスパイクは、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている。
【0014】
本発明に係るスパイクは、シャンクと、フランジとを備えている。このシャンク及びフランジのそれぞれは、多数のワイヤーからなる。このシャンクを構成するワイヤーのそれぞれは、フランジを構成するワイヤーと連続している。
【0015】
本発明に係るスパイクの製造方法は、
(1)多数のワイヤーが撚り合わされて、ケーブルが形成される工程と、
(2)このケーブルが溶断される工程と、
(3)この溶断されたケーブルの一部において、それぞれのワイヤーが曲げられてフランジが形成される工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る釣り用履き物のアウトソールでは、スパイクを構成するシャンクが地面に突き刺さる。このシャンクは、滑止性能に寄与しうる。このシャンクは、多数のワイヤーからなる。使用により、これらワイヤーは摩耗していくが、これらワイヤーのそれぞれが独立して地面に引っ掛かる。このアウトソールは、滑止性能に優れる。使用により、隣接するワイヤー同士の間隔が拡がるので、ワイヤーはより効果的に地面に引っ掛かる。このアウトソールでは、スパイクの先端が摩耗しても、このスパイクによるスリップ防止効果は持続される。このアウトソールは、滑止性能に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物(ブーツ16)が示された断面図である。このブーツ16は、アッパー18、インソール20、ミッドソール22、面ファスナー24及びアウトソール26を備えている。
【0019】
アッパー18は、フット28及びレッグ30を備えている。フット28は、釣り人の甲に当接する。レッグ30は、釣り人の脛を包み、脛を保護する。アッパー18は、ブーツ16の中への水の浸入を防ぐ。アッパー18は、 典型的には、ポリ塩化ビニルからなる。このアッパー18は、強度及び剛性に優れる。図示されていないが、アッパー18には、その内面に位置する裏地が積層されている。アッパー18が、他の合成樹脂からなってもよい。アッパー18が、ゴムからなってもよい。
【0020】
インソール20は、板状のベース32と、このベース32の周縁においてこのベース32から起立する側壁34とを有している。ベース32は、ミッドソール22の上面に載置されている。ベース32は、三次元形状を有する。このインソール20は、「カップインソール」と称されている。インソール20は、ポリマー発泡体である。この発泡体の典型的な基材ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である。メッシュ状のインソール20が用いられてもよい。
【0021】
ミッドソール22は、ゴム組成物が架橋されてなる。ミッドソール22には、強度に優れたゴムが用いられる。好ましいゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が例示される。ミッドソール22は、接着剤によってアッパー18と接合されている。ミッドソール22が、加硫接着によってアッパー18と接合されてもよい。ミッドソール22が合成樹脂からなってもよい。ミッドソール22は、その外縁にリブ36を備えている。リブ36は、下向きに垂下している。
【0022】
面ファスナー24は、フック面38とループ面40とを備えている。フック面38は、接着剤によってミッドソール22に接合されている。ループ面40は、接着剤によってアウトソール26に接合されている。フック面38がアウトソール26に接合され、ループ面40がミッドソール22に接合されてもよい。典型的な面ファスナー24は、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。ミッドソール22のリブ36は、面ファスナー24よりも下方にまで延在している。
【0023】
アウトソール26は、面ファスナー24によってミッドソール22と積層されている。アウトソール26の上部は、リブ36に囲まれている。リブ36により、アウトソール26のミッドソール22からの意図せぬ離脱が防止される。このアウトソール26は、上板42、主部44及びスパイク46を備えている。
【0024】
上板42は、ポリマー発泡体からなる。典型的な基材ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。この上板42に、ループ面40が接合されている。主部44は、フェルトからなり板状である。このフェルトでは、多数の繊維が絡み合っている。ナイロン繊維、ポリエステル繊維等が、フェルトに用いられうる。主部44は、接着剤等の手段によって上板42に接合されている。主部44により、ブーツ16の底面48が形成されている。
【0025】
図2は、図1のブーツ16のアウトソール26が示された底面図である。図2から明らかなように、複数のスパイク46がアウトソール26の全面に分散している。スパイク46の数は、3本以上25本以下が好ましい。スパイク46の配置は、適宜決定される。サイズの異なる複数種のスパイク46が混在してもよい。
【0026】
図3は、図2のIII−III線に沿った拡大断面図である。図3には、上板42、主部44及びスパイク46が示されている。主部44は、穴50を備えている。スパイク46は、この穴50に配置されている。換言すれば、スパイク46は、主部44に収容されている。スパイク46の先端52は、主部44の底面48に露出している。
【0027】
図4は、アウトソール26に設けられたスパイク46が示された拡大斜視図である。図5は、スパイク46の上面図である。便宜上、図4及び図5では、先端52が上向きの状態で、スパイク46が示されている。
【0028】
スパイク46は、シャンク54と、フランジ56とを備えている。シャンク54は、円柱状である。このシャンク54の一端が、上記先端52である。このブーツ16では、シャンク54は多数のワイヤー58からなる。この先端52において、ワイヤー58同士は溶着している。このワイヤー58は、金属材料からなる。典型的な金属材料は、スチールである。
【0029】
図6は、図4のVI−VI線に沿った断面図である。この図6には、シャンク54の断面が示されている。このシャンク54は、19本のワイヤー58が撚り合わされて形成されている。このシャンク54は、撚り線である。これらワイヤー58のうち、その中心に位置するワイヤー58aは芯線と称される。この芯線の外側に位置しており6本のワイヤー58bからなる部分は、内層と称される。この内層のさらに外側に位置しており12本のワイヤー58cからなる部分は、外層と称される。なお、このシャンク54におけるワイヤー58の構成は、ブーツ16の仕様等が考慮され適宜決められる。
【0030】
フランジ56は、シャンク54の他端の側に位置している。このフランジ56は、シャンク54から庇のように突き出ている。このフランジ56の外縁60は、シャンク54の外縁62よりも外側に位置している。このフランジ56の中心に、シャンク54は位置している。このブーツ16では、このフランジ56は多数のワイヤー58からなる。このフランジ56は、これらワイヤー58のそれぞれが折り曲げられて形成されている。ワイヤー58は、金属材料からなる。典型的な金属材料は、スチールである。
【0031】
このブーツ16では、フランジ56を構成するワイヤー58のそれぞれは、シャンク54を構成するワイヤー58と連続している。このフランジ56とシャンク54とは、一体的に形成されている。なお、フランジ56が板状のディスクから構成されてもよい。この場合、このディスクの中心に多数のワイヤー58からなるシャンク54が設けられる。
【0032】
図7は、図4のスパイク46を形成するための製造装置64の一部が示された模式図である。この製造装置64は、芯線供給部66、側線供給部68、ダイス70及び切断機72を備えている。芯線供給部66には、一のボビン74が装着される。この芯線供給部66から、ワイヤー58が芯線として送り出される。図示されていないが、側線供給部68には、複数のボビン74が装着される。この側線供給部68において、これらボビン74は芯線から等しい距離に等しい間隔で配置される。この側線供給部68は、芯線を中心として回転しつつボビン74からワイヤー58を送り出すように構成されている。ダイス70は、この側線供給部68から引き出されたワイヤー58と上記芯線とを束ね、ケーブルを形成する。この製造装置64では、側線供給部68は芯線を中心として回転するから、このダイス70において多数のワイヤー58が撚り合わされる。この撚り合わせにより、ケーブル76が形成される。切断機72は、ケーブル76を所定の長さに溶断し、ストランド78を形成する。この溶断により、ストランド78の両端面80において、ワイヤー58の先端同士が溶接されるので、このストランド78はワイヤー58が撚り合わされた状態で保持される。なお、図4に示されたスパイク46の先端52が、この溶断によりワイヤー58の先端同士が溶接された部分に相当する。
【0033】
このブーツ16では、スパイク46は上記製造装置64を用いて次のようにして製造される。ワイヤー58が巻かれたボビン74が多数準備され、製造装置64に供給される。これらボビン74の内、一のボビン74が芯線供給部66に装着され、残りのボビン74が側線供給部68に装着される。それぞれのボビン74から送り出されたワイヤー58が撚り合わされ、ケーブル76が形成される。このケーブル76が所定の長さで溶断され、ストランド78が形成される。このストランド78の一部において、このストランド78を構成するワイヤー58のそれぞれが曲げられてフランジ56が形成される。このようにして、図4で示されたスパイク46が得られる。
【0034】
図3に示されるように、スパイク46のシャンク54は主部44の穴50に通されている。フランジ56の外縁60は主部44の穴50よりも外側に位置している。このフランジ56は、主部44と当接している。このフランジ56が主部44に引っ掛かるので、このスパイク46が穴50を通じて引き抜かれることはない。フランジ56は、上板42と当接している。このフランジ56は、上板42で覆われている。フランジ56は、上板42と主部44とに挟まれている。前述したように、主部44は接着剤等の手段によって上板42に接合されている。このブーツ16では、スパイク46のアウトソール26からの脱落が防止されている。このブーツ16では、スパイク46はアウトソール26に安定に固定されている。
【0035】
前述の通り、スパイク46の先端52は底面48に露出している。このブーツ16を着用した釣り人が歩行すると、海草等がアウトソール26と地面との間に介在してしても、スパイク46がこの海草を突き破って地面に刺さる。従って、ブーツ16のスリップが防止される。このアウトソール26は、滑止性能に優れる。
【0036】
スパイク46の先端52には、溶断により形成されたエッジ82が存在している。このエッジ82は、岩への引っ掛かりに寄与しうる。このスパイク46は、スリップ防止に寄与しうる。
【0037】
釣り人の体重は、スパイク46によって支えられる。使用によりシャンク54の先端52の部分は摩耗していく。この摩耗により、溶断によりワイヤー58同士が溶接された部分は消失していく。
【0038】
図8は、使用中にあるアウトソール26の底面48の一部が示された斜視図である。便宜上、この図8では、底面48が上向きの状態で、アウトソール26が示されている。図示されているように、スパイク46の先端52は底面48に露出している。使用により新品のスパイク46に存在していたワイヤー58同士の溶接部分(図4参照)は、消失している。この消失により、この先端52には、多数のワイヤー58の先端が露出している。使用により、これらワイヤー58は摩耗していくが、これらワイヤー58のそれぞれが独立して地面に引っ掛かる。このアウトソール26は、滑止性能に優れる。
【0039】
図示されているように、使用により隣接するワイヤー58同士の間隔は拡がる。このため、ワイヤー58はより効果的に地面に引っ掛かる。このアウトソール26を備えたブーツ16では、スパイク46の先端52が摩耗しても、このスパイク46による引っ掛かり効果は持続される。このアウトソール26は、滑止性能に優れる。
【0040】
図5において矢印φ1で示されているのは、スパイク46のシャンク54の太さである。海草等を突き破りやすいとの観点から、太さφは10.0mm以下が好ましく、5.0mm以下が好ましい。強度の観点から、太さは2.0mm以上が好ましい。
【0041】
図5において矢印Lで示されているのは、スパイク46のフランジ56の大きさである。この大きさLはシャンク54からフランジ56の外縁60までの長さの計測により得られる。スパイク46の脱落防止の観点から、この大きさLは2.0mm以上が好ましい。軽量化の観点から、10.0mm以下が好ましい。
【0042】
図6において矢印φ2で示されているのは、ワイヤー58の外径である。スパイク46による引っ掛かり効果が持続されうるという観点から、外径φ2は、2.0mm以下が好ましく、1.0mm以下が好ましい。強度の観点から、この外径φ2は0.5mm以上が好ましい。
【0043】
前述の通り、主部44はフェルトからなる。凹凸のある地面を釣り人が歩行したとき、この凹凸に応じてフェルトが変形する。この変形により、ブーツ16のスリップが防止される。フェルトは吸水性に優れるので、アウトソール26と地面との間に水膜は形成しにくい。これによっても、ブーツ16のスリップが防止される。
【0044】
前述したように、釣り人の体重はスパイク46によって支えられる。従って、主部44にかかる圧力は、小さい。このアウトソール26では、フェルトの摩耗が抑制される。このアウトソール26では、偏摩耗も抑制される。スリットによって追従性が高められているので、これによっても偏摩耗が抑制される。このアウトソール26は、長持ちする。
【0045】
このブーツ16が繰り返し使用されると、アウトソール26が摩耗する。摩耗の進行したアウトソール26は、ミッドソール22から引き剥がされる。この引き剥がしは、フック面38からのループ面40の分離によってなされる。アウトソール26及びループ面40は、廃棄される。そして、新しいアウトソール26が、ループ面40と共にフック面38に接合される。アウトソール26の交換により、このブーツ16が長期間にわたって使用されうる。このブーツ16は、経済的である。
【0046】
図9は、図1のブーツ16のアウトソール26の一部が示された拡大断面図である。図9(a)には、釣り人が起立したときのアウトソール26が示されている。図9(b)には、釣り人が歩行しているときのアウトソール26が示されている。このアウトソール26は、主部44(すなわちフェルト)にスリット84を備えている。主部44が底面48から上方に向かって切り込まれることにより、スリット84が形成されている。スリット84の上端86は、上板42にまでは至っていない。図2から明らかなように、スリット84は実質的に幅方向(図2の左右方向)に延在している。スリット84は、幅方向に対して波状である。この実施形態では、スリット84の数は5である。
【0047】
図9(b)に示されるように、歩行によってアウトソール26が変形する。スリット84が開きつつ主部44が変形するので、この変形において生じる応力は小さい。このアウトソール26は、釣り人の足の変形に容易に追従する。このブーツ16を着用した釣り人の足は、疲れにくい。
【0048】
図9において矢印Dで示されているのは、スリット84の深さである。深さDは、4mm以上が好ましい。深さDが4mm以上である主部44は、追従性に優れる。追従性に優れた主部44は、偏摩耗しにくい。追従性に優れた主部44を有するブーツ16は、履き心地に優れる。この観点から、深さDは6mm以上がより好ましい。深さDは主部44の厚みTの40%以上が好ましく、60%以上が特に好ましい。深さDが厚みTと同一であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るアウトソールは、ブーツのみならず、シューズ、足袋、ウェーダー等に適用されうる。本発明に係る履き物は、種々の釣り場において利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物(ブーツ)が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のブーツのアウトソールが示された底面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った拡大断面図である。
【図4】図4は、アウトソールに設けられたスパイクが示された拡大斜視図である。
【図5】図5は、スパイクの上面図である。
【図6】図6は、図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図7は、図4のスパイクを形成するための製造装置の一部が示された模式図である。
【図8】図8は、使用中にあるアウトソールの底面の一部が示された斜視図である。
【図9】図9は、図1のブーツのアウトソールの一部が示された拡大断面図である。
【図10】図10は、従来のアウトソールの一例が示された底面図である。
【図11】図11は、図10のXI−XI線に沿った拡大断面図である。
【図12】図12は、図11のスパイクの一部が示された拡大断面図である。
【図13】図13は、使用により摩耗したスパイクの一部が示された拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
2、26・・・アウトソール
4、44・・・主部
6、42・・・上板
8、46・・・スパイク
16・・・ブーツ
18・・・アッパー
20・・・インソール
22・・・ミッドソール
24・・・面ファスナー
54・・・シャンク
56・・・フランジ
58、58a、58b、58c・・・ワイヤー
64・・・製造装置
66・・・芯線供給部
68・・・側線供給部
70・・・ダイス
72・・・切断機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えており、
このスパイクが、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている釣り用履き物のアウトソール。
【請求項2】
上記シャンクが、多数のワイヤーが撚り合わされて形成されている請求項1に記載の釣り用履き物のアウトソール。
【請求項3】
上記スパイクが、フランジをさらに備えており、
このフランジが、多数のワイヤーからなり、
これらワイヤーのそれぞれが、上記シャンクを構成するワイヤーと連続している請求項1又は2に記載の釣り用履き物のアウトソール。
【請求項4】
アッパーと、アウトソールとを備えており、
このアウトソールが、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えており、
このスパイクが、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている釣り用履き物。
【請求項5】
シャンクと、フランジとを備えており、
このシャンク及びフランジのそれぞれが、多数のワイヤーからなり、
このシャンクを構成するワイヤーのそれぞれが、フランジを構成するワイヤーと連続しているスパイク。
【請求項6】
多数のワイヤーが撚り合わされて、ケーブルが形成される工程と、
このケーブルが溶断される工程と、
この溶断されたケーブルの一部において、それぞれのワイヤーが曲げられてフランジが形成される工程とを含むスパイクの製造方法。
【請求項1】
フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えており、
このスパイクが、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている釣り用履き物のアウトソール。
【請求項2】
上記シャンクが、多数のワイヤーが撚り合わされて形成されている請求項1に記載の釣り用履き物のアウトソール。
【請求項3】
上記スパイクが、フランジをさらに備えており、
このフランジが、多数のワイヤーからなり、
これらワイヤーのそれぞれが、上記シャンクを構成するワイヤーと連続している請求項1又は2に記載の釣り用履き物のアウトソール。
【請求項4】
アッパーと、アウトソールとを備えており、
このアウトソールが、フェルトからなり板状である主部と、主部に収容されかつその端面が主部の底面に露出するスパイクとを備えており、
このスパイクが、多数のワイヤーからなるシャンクを備えている釣り用履き物。
【請求項5】
シャンクと、フランジとを備えており、
このシャンク及びフランジのそれぞれが、多数のワイヤーからなり、
このシャンクを構成するワイヤーのそれぞれが、フランジを構成するワイヤーと連続しているスパイク。
【請求項6】
多数のワイヤーが撚り合わされて、ケーブルが形成される工程と、
このケーブルが溶断される工程と、
この溶断されたケーブルの一部において、それぞれのワイヤーが曲げられてフランジが形成される工程とを含むスパイクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−172652(P2010−172652A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21427(P2009−21427)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
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