説明

開閉装置

【課題】各種電子機器に使用される開閉装置に関し、滑らかで確実な開閉操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】ばね7と可動体13または固定ケース5の、少なくとも一方の間に摺動部材15や16を設け、ばね7端部を可動体13や固定ケース5ではなく、摺動部材15や16に弾接させると共に、摺動部材15や16または可動体13、固定ケース5の一方の中央部に突出部13Aや16Aを設け、この面積の小さな突出部13Aや16Aを他方に当接させることによって、開閉操作時の摺動部材15や16と可動体13や固定ケース5の摩擦が小さなものとなり、これらの磨耗を少なくできるため、開閉操作が長期間繰り返された場合でも、引っ掛かり感等がなく、滑らかで確実な開閉操作を行うことが可能な開閉装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の、各種電子機器に使用される開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の小型化や軽量化が進む中、固定筐体に対し可動筐体が開閉可能に装着された、所謂、折畳み式のものが増えており、これらに用いられる開閉装置においても、滑らかで確実な開閉操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の開閉装置について、図5〜図7を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図6は従来の開閉装置の断面図、図7は同分解斜視図であり、同図において、1は略円筒状の固定体で、この左端面外周には、突出部2A、及びこの突出部2Aから上下へ延出する二つの傾斜部2B、2Cから形成された、一対の固定カム2が設けられている。
【0006】
また、3は同じく略円筒状の可動体で、固定体1に対し開閉方向へ回転可能に、かつ軸線方向へ移動可能に配置されると共に、固定カム2との対向面である右端面外周には一対の可動カム4が設けられている。
【0007】
そして、5は略円筒状の固定ケース、6は略円柱状の可動軸で、固定ケース5右端の開口部に固定体1が固着されると共に、可動軸6の右端部がこの固定体1内を挿通し、外方へ回転可能に突出している。
【0008】
さらに、可動軸6の中間部には可動体3が、軸線方向へ移動可能に装着されると共に、可動軸6の左端部はかしめ等によって、固定ケース5外側面に回転可能に係止されている。
【0009】
また、7はコイル状のばねで、可動体3左端面と固定ケース5内側面の間に、ばね7がやや撓んだ状態で装着され、このばね7によって可動体3が右方向へ付勢され、可動カム4の先端が固定カム2の傾斜部2Cへ弾接している。
【0010】
さらに、これら固定体1や可動体3、可動体3を固定体1の方向へ付勢するばね7等が、固定ケース5内に収納されて、開閉装置10が構成されている。
【0011】
そして、このように構成された開閉装置10が、例えば、図5の携帯電話の斜視図に示すように、固定ケース5が上面に複数のキーからなる操作部21Aやマイクロフォン等の音声入力部21Bが形成された固定筐体21へ、固定ケース5右端から突出した可動軸6の右端部が、表面に液晶表示素子等の表示部22Aやスピーカ等の音声出力部22Bが形成された可動筐体22へ各々固着され、開閉装置10によって固定筐体21に対して可動筐体22が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0012】
以上の構成において、図6に示したように、可動カム4の先端が固定カム2下側の傾斜部2Cへ弾接した状態では、可動体3がばね7によって下方向の閉方向へ付勢されているため、可動軸6が装着された可動筐体22は、固定筐体21に対して閉じた状態で保持されている。
【0013】
そして、この閉状態から、可動筐体22を手で開くと、可動筐体22に右端部が装着固定された可動軸6が回転し、可動体3が固定ケース5内を左方向の軸線方向へ回転しながら移動して、可動カム4先端が固定カム2の突出部2Aを超えて、上側の傾斜部2Bへ弾接すると、可動体3が開方向へ付勢されるため、この力によって可動筐体22に開く方向の力が加わり、可動筐体22が固定筐体21に対して所定角度に開いた状態となる。
【0014】
つまり、可動筐体22に装着された可動軸6を回転させることによって、ばね7に付勢された可動体3を軸線方向へ移動させ、可動カム4先端を固定カム2の傾斜部2Bまたは2Cのいずれかへ弾接させて、固定筐体21に対する可動筐体22の開閉操作が行われるように構成されている。
【0015】
なお、このように開閉操作を行う際、可動体3を付勢するばね7が、可動体3左端面と固定ケース5内側面の間にやや撓んだ状態で装着され、ばね7右端は可動体3左端面に、ばね7左端は固定ケース5内側面に各々弾接しているため、ばね7が回転しない状態では可動体3左端面との間に、ばね7が可動体3と共に回転する状態では固定ケース5内側面との間に、各々摩擦が生じる。
【0016】
そして、この摩擦によって可動体3左端面や固定ケース5内側面に磨耗が生じ、これが甚だしくなると、ばね7両端と可動体3や固定ケース5の間に引っ掛かり感等が発生し、滑らかな操作感触が損なわれてしまう。
【0017】
このため、ばね7両端と可動体3や固定ケース5の間に、オイルやグリス等の潤滑剤を塗布し、これらの間の摩擦を少なくする等の対策が行われてはいるが、開閉操作が長期間繰り返された場合、このような操作感触の劣化を防ぐことは困難なものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−271008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来の開閉装置においては、可動体3を付勢するばね7が、可動体3左端面と固定ケース5内側面の間にやや撓んだ状態で装着され、開閉操作時に、ばね7両端と可動体3や固定ケース5の間に摩擦が生じるため、開閉操作が長期間繰り返された場合、可動体3や固定ケース5に磨耗が生じ、これが甚だしくなると引っ掛かり感等が発生して、滑らかな操作感触が損なわれてしまう場合があるという課題があった。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、滑らかで確実な開閉操作が可能な開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明は、ばねと可動体または固定ケースの、少なくとも一方の間に摺動部材を設けると共に、摺動部材または可動体、固定ケースの一方の中央部に突出部を設け、この突出部を他方に当接させて開閉装置を構成したものであり、ばね端部を可動体や固定ケースではなく、摺動部材に弾接させると共に、摺動部材と可動体や固定ケースを、面積の小さな突出部で当接させることによって、開閉操作時の摺動部材と可動体や固定ケースの摩擦が小さなものとなり、これらの磨耗を少なくできるため、開閉操作が長期間繰り返された場合でも、引っ掛かり感等がなく、滑らかで確実な開閉操作を行うことが可能な開閉装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、滑らかで確実な開閉操作が可能な開閉装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同他の実施の形態による断面図
【図4】同分解斜視図
【図5】携帯電話の斜視図
【図6】従来の開閉装置の断面図
【図7】同分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0026】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0027】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0028】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1は略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の固定体で、この左端面外周には、突出部2A、及びこの突出部2Aから上下へ延出する二つの傾斜部2B、2Cから形成された、一対の固定カム2が設けられている。
【0029】
そして、13は同じく略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の可動体で、固定体1に対し開閉方向へ回転可能に、かつ軸線方向へ移動可能に配置されると共に、固定カム2との対向面である右端面外周には一対の可動カム4が設けられている。
【0030】
また、5は略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金、或いは合成樹脂等の固定ケース、6は同じく略円柱状の可動軸で、固定ケース5右端の開口部に固定体1が固着されると共に、可動軸6の右端部がこの固定体1内を挿通し、外方へ回転可能に突出している。
【0031】
さらに、可動軸6の中間部には可動体13が、軸線方向へ移動可能に装着されると共に、可動軸6の左端部はかしめ等によって、固定ケース5外側面に回転可能に係止されている。
【0032】
そして、7はコイル状で銅合金や鋼線製のばね、15は略リング状で鋼や銅合金製の摺動部材で、この摺動部材15左端面と固定ケース5内側面の間に、ばね7がやや撓んだ状態で装着され、このばね7によって可動体13が右方向へ付勢され、可動カム4の先端が固定カム2の傾斜部2Cへ弾接している。
【0033】
さらに、可動体13左端面の中央部には左方へ突出する突出部13Aが形成され、ばね7が左端面外周に弾接した摺動部材15の中央部に、この突出部13Aが当接している。
【0034】
また、これら固定体1や可動体13、可動体13を固定体1の方向へ付勢するばね7等が、固定ケース5内に収納されて、開閉装置20が構成されている。
【0035】
そして、このように構成された開閉装置20が、例えば、図5の携帯電話の斜視図に示すように、固定ケース5が上面に複数のキーからなる操作部21Aやマイクロフォン等の音声入力部21Bが形成された固定筐体21へ、固定ケース5右端から突出した可動軸6の右端部が、表面に液晶表示素子等の表示部22Aやスピーカ等の音声出力部22Bが形成された可動筐体22へ各々固着され、開閉装置20によって固定筐体21に対して可動筐体22が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0036】
以上の構成において、図1に示したように、可動カム4の先端が固定カム2下側の傾斜部2Cへ弾接した状態では、可動体13が摺動部材15を介してばね7によって下方向の閉方向へ付勢されているため、可動軸6が装着された可動筐体22は、固定筐体21に対して閉じた状態で保持されている。
【0037】
そして、この閉状態から、可動筐体22を手で開くと、可動筐体22に右端部が装着固定された可動軸6が回転し、可動体13が固定ケース5内を左方向の軸線方向へ回転しながら移動して、可動カム4先端が固定カム2の突出部2Aを超えて、上側の傾斜部2Bへ弾接すると、可動体13が開方向へ付勢されるため、この力によって可動筐体22に開く方向の力が加わり、可動筐体22が固定筐体21に対して所定角度に開いた状態となる。
【0038】
つまり、可動筐体22に装着された可動軸6を回転させることによって、ばね7に付勢された可動体13を軸線方向へ移動させ、可動カム4先端を固定カム2の傾斜部2Bまたは2Cのいずれかへ弾接させて、固定筐体21に対する可動筐体22の開閉操作が行われるように構成されている。
【0039】
そして、この時、可動体13は左端面中央部の突出部13Aが、左端面外周にばね7が弾接した摺動部材15の右端面中央部に当接し、外周に比べ当接面積の小さな突出部13Aが、摺動部材15の右端面中央部に弾接して可動体13が回転するため、摺動部材15に対する可動体13の摩擦モーメントが小さなものとなり、摺動部材15及び可動体13中央部の磨耗が各々少なくなるようになっている。
【0040】
すなわち、可動体13左端面と摺動部材15右端面の全面を当接させるのではなく、中央部の突出部13Aを摺動部材15の中央部に当接させることによって、例えば突出部13Aの当接面積が、全面を当接させた場合に対し半分であった場合には、可動体13と摺動部材15の間の摩擦モーメントを半分にすることができる。
【0041】
つまり、ばね7右端と可動体13の間に摺動部材15を設け、ばね7の右端を可動体13に直接弾接させるのではなく、摺動部材15を介して弾接させると共に、可動体13左端面の中央部に突出部13Aを設け、この面積の小さな突出部13Aを摺動部材15の中央部に当接させることによって、開閉操作時の摺動部材15と可動体13の摩擦が小さなものとなり、これらの磨耗を少なくできるため、開閉操作が長期間繰り返された場合でも、引っ掛かり感等がなく、滑らかで確実な開閉操作を行うことができるように構成されている。
【0042】
なお、以上の説明では、ばね7右端と可動体13の間に摺動部材15を設けると共に、可動体13左端面の中央部に突出部13Aを形成した構成について説明したが、図3の断面図や図4の分解斜視図に示すように、ばね7左端と固定ケース5内側面の間に摺動部材16を設け、この摺動部材16左端面の中央部に突出部16Aを形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0043】
すなわち、同図においては、略リング状の摺動部材16左端面の中央部に形成された突出部16Aが、固定ケース5内側面の中央部に当接すると共に、ばね7が摺動部材15右端面と可動体13左端面の間にやや撓んだ状態で装着され、可動体13を右方向へ付勢して、可動カム4の先端が固定体1の固定カム2に弾接している。
【0044】
したがって、開閉操作を行った場合、上述した構成とは異なり、ばね7が可動体13と共に回転すると共に、このばね7が右端面外周に弾接した摺動部材16が、左端面の面積の小さな突出部16Aを、固定ケース5内側面の中央部に当接させて回転する。
【0045】
つまり、ばね7左端と固定ケース5内側面の間に摺動部材16を設けると共に、摺動部材16左端面の中央部に突出部16Aを形成し、この面積の小さな突出部16Aを固定ケース5内側面の中央部に当接させることによって、開閉操作時の摺動部材16と固定ケース5の摩擦が小さなものとなり、これらの磨耗を少なくできるように構成されている。
【0046】
なお、このように摺動部材16左端面の中央部に突出部16Aを形成した構成や、上述したように可動体13左端面の中央部に突出部13Aを形成した構成のほか、ばね7右端と可動体13の間に摺動部材15を設けた場合には、摺動部材15右端面の中央部に突出部を、ばね7左端と固定ケース5内側面の間に摺動部材16を設けた場合には、固定ケース5内側面の中央部に突出部を各々形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0047】
また、以上の説明では、略リング状で鋼や銅合金製の摺動部材15や16を用い、これらを可動体13や固定ケース5に弾接させる構成について説明したが、摺動部材15や16にフッ素含有の無電解ニッケルめっき等の潤滑めっきを施すことによって、可動体13や固定ケース5との摩擦をさらに小さなものとすることができる。
【0048】
このように本実施の形態によれば、ばね7と可動体13または固定ケース5の、少なくとも一方の間に摺動部材15や16を設け、ばね7端部を可動体13や固定ケース5ではなく、摺動部材15や16に弾接させると共に、摺動部材15や16または可動体13、固定ケース5の一方の中央部に突出部13Aや16Aを設け、この面積の小さな突出部13Aや16Aを他方に当接させることによって、開閉操作時の摺動部材15や16と可動体13や固定ケース5の摩擦が小さなものとなり、これらの磨耗を少なくできるため、開閉操作が長期間繰り返された場合でも、引っ掛かり感等がなく、滑らかで確実な開閉操作を行うことが可能な開閉装置を得ることができるものである。
【0049】
なお、以上の説明では、開閉装置20の固定ケース5を携帯電話の固定筐体21へ、固定ケース5右端から突出した可動軸6の右端部を、可動筐体22へ各々固着した構成として説明したが、これとは逆に固定ケース5を可動筐体22へ、可動軸6の右端部を固定筐体21へ各々固着し、固定体1や固定ケース5等を可動部材として、可動体13や可動軸6等を固定部材として各々用いる構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による開閉装置は、滑らかで確実な開閉操作が可能なものを得ることができ、各種電子機器に使用される開閉装置として有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 固定体
2 固定カム
2A 突出部
2B、2C 傾斜部
4 可動カム
5 固定ケース
6 可動軸
7 ばね
13 可動体
13A 突出部
15、16 摺動部材
16A 突出部
20 開閉装置
21 固定筐体
21A 操作部
21B 音声入力部
22 可動筐体
22A 表示部
22B 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定カムが設けられた固定体と、この固定体に対し回転可能に配置されると共に、上記固定カムに弾接する可動カムが設けられた可動体と、この可動体を上記固定体の方向へ付勢するばねと、これらを収納した略円筒状の固定ケースからなり、上記ばねと上記可動体または上記固定ケースの、少なくとも一方の間に摺動部材を設けると共に、上記摺動部材または上記可動体、上記固定ケースの一方の中央部に突出部を設け、この突出部を他方に当接させた開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−33128(P2011−33128A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180301(P2009−180301)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】