説明

電力変換装置の初期充電装置

【課題】突入電流を小さくして初期充電が行え、通電容量のみを備えた充電切換スイッチを使用することができ、充電切換スイッチの小型・軽量化、メンテナンス性の向上、コストダウンが図れる、電力変換装置の初期充電装置を提供する。
【解決手段】直流電源から入力される電圧を平滑するための平滑コンデンサを備えた電力変換装置において、前記直流電源と平滑コンデンサとの間に、電流を断続して通流率を制御するチョッパ装置とこのチョッパ装置と前記直流電源との間を開閉する充電切換スイッチとからなる初期充電装置を設け、チョッパ装置の通流率を制御することにより充電電流の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置の電源を投入して運転を開始する前に、電力変換装置の入力回路に設けた平滑コンデンサの充電を行う初期充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力を所望の周波数および電圧の交流電力に変換して交流負荷に供給する交流電力変換装置又は、所望の直流電圧の直流電力に変換して直流負荷に供給する直流電力変換装置等の電力変換装置は、入力部に直流電圧を平滑するために平滑コンデンサを備える。
【0003】
このような電力変換装置に、運転開始のために電源を投入すると、この入力側に設けた平滑コンデンサに大きな突入電流が流れる。このような突入電流を抑制するために、特許文献1等に示されるように、電力変換装置に充電抵抗と、この充電抵抗をバイパスするスイッチとからなる初期充電装置を設けることが従来から行われている。
【0004】
このような初期充電装置を備えた従来の電力変換装置の構成を図9に示し、その動作波形を図10に示す。
【0005】
図9において、1は、ここではバッテリで示されている直流電源、10は、直流電源1から供給される直流電力を所望の周波数および電圧の交流電力に変換する電力変換装置である。電力変換装置10の入力には、直流電源1の出力電圧を平滑する平滑コンデンサ9が並列に接続され、さらに、充電スイッチ31と充電抵抗32とで構成された初期充電装置3と電源スイッチ2を介して、直流電源1が接続される。20は、電流検出器6、電圧検出器7から入力される電力変換装置10の入力回路の電流23および電圧24にしたがって電力変換装置10へ制御信号29を与える制御装置、21は、直流電源1から与えられる直流電圧を変成して制御装置20に操作電圧を供給する制御電源装置である。さらに、4は、電力変換装置10を過電流から保護するためのヒューズである。充電スイッチ31は、連動するa接点31aと、b接点31bを備え、b接点31bは、充電抵抗32と直列接続され、a接点31aは、b接点31bと充電抵抗32との直列回路に並列に接続され、充電抵抗32のバイパス回路を形成する。
【0006】
このように構成された電力変換装置10において、電源スイッチ2をオンにすると、オフ状態にある充電スイッチ31のオンされているb接点31b→充電抵抗32→平滑コンデンサ9を通して供給される充電電流Icによって平滑コンデンサ9が充電される。
【0007】
図10に示すように、充電電流Icは、平滑コンデンサの電圧値Vcが0(V)であるとすれば、電源投入時点t1において、Icp1=Vb÷Rで示される初期電流が流れ、その後、時定数t=C×Rに応じて減少する。平滑コンデンサの電圧値Vcは図10に示すように時定数tに応じて上昇する。ここで、Vbは、直流電源1の電圧値、Rは充電抵抗32の抵抗値、Cは平滑コンデンサ9の静電容量値である。
【0008】
図10のt3時点で平滑コンデンサの電圧値VcがVc3に至ったことを制御装置20が検出して信号25を発して充電切換スイッチ31をオンさせる。充電切換スイッチ31がオンすることにより、b接点31bがオフに、a接点31aがオンに切り替わる。
【0009】
t3時点における電源電圧値Vbと平滑コンデンサの電圧値Vcの電圧差ΔVc=Vb−Vcは、電圧検出誤動作を防止するために電源電圧値Vbの5〜10%程度の電圧に設定されることが多い。このため、充電切換スイッチ31のb接点31bがオフ、a接点31aがオンに切り換わったときに、充電抵抗32をバイパスして、充電切換スイッチ31のa接点31aを通して、電圧差ΔVcと充電抵抗32の抵抗値Rによって決まる突入電流Icp2=ΔVc÷Rが平滑コンデンサ9に流れてこれを充電するので、平滑コンデンサの電圧値Vcがさらに上昇する。
【0010】
充電切換スイッチ31が切り換わった後のt4時点で充電が完了し、Vb=Vcとなる。このt4時点から所定時間おいたt5時点で電力変換装置へ運転開始信号Sが発せられることにより、電力変換装置10の運転が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−050120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような従来の初期充電装置においては次のような問題がある。
1)充電開始時、および充電完了直前の充電抵抗バイパス時に大きな突入電流が発生する。特に電圧変動の大きい、例えば電池を電源とする装置では、高い電圧領域での突入電流が電圧値に比例して大きくなり、平滑コンデンサ9に与えるダメージが大きくなる。
2)複数台の電力変換装置で構成されるシステムの場合、複数台の電力変換装置を一括して初期充電を行うと、充電電流が過大となって給電電路に支障を与えることが懸念される。これを避けるために、複数台ずつグループ化して各グループを、時間をずらして順次、初期充電する方法を採れば、複雑なシーケンス回路が必要となり装置が大型化し、コストアップを伴うとともに、充電に要する時間が長くなる。
3)突入電流による平滑コンデンサのダメージ抑制および、給電電路へ与える影響を排除するために充電抵抗の抵抗値を大きくすると充電時間が長くなり、電力変換装置の運転開始が遅れる。
4)充電完了直近のt3時点で充電抵抗をバイパスするときに突入電流Icp2が発生するため、充電切換スイッチ31のa接点31aは突入電流Icp2に耐える接点容量を有する必要があり、また、b接点31bは、t3時点の充電電流Ic(t3)を遮断する接点容量を有する必要がある。よって、充電切換スイッチ31は大形化し、かつ開閉動作による接点消耗・磨耗が発生するので、定期的なメンテナンスが必要になる。
【0013】
この発明は、前記のような問題点を解消するために、突入電流を小さくして初期充電が行え、通電容量のみを備えた充電切換スイッチを使用することができ、充電切換スイッチの小型・軽量化、メンテナンス性の向上、コストダウンが図れる、電力変換装置の初期充電装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するため、この発明は、直流電源から入力される電圧を平滑するための平滑コンデンサを備えた電力変換装置において、前記直流電源と平滑コンデンサとの間に、電流を断続して通流率を制御するチョッパ装置と前記直流電源との間を開閉する充電切換スイッチとからなる初期充電装置を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
この発明においては、前記チョッパ装置により、前記電力変換装置の平滑コンデンサを充電するとき、その通流率を時間的に漸次増加することにより充電電流を調整する制御手段を設けるのがよい。
【0016】
また、前記チョッパ装置により、前記電力変換装置の平滑コンデンサを充電するとき、前記平滑コンデンサの充電電流が一定になるように前記チョッパ装置の通流率を制御する制御手段を設けることもできる。
【0017】
そして、前記チョッパ装置の充電電流を漸次増加する制御手段と一定電流に制御する手段を選択できるようにしてもよい。
【0018】
通流率を漸次増加する制御においては、通流率が100%となった時に充電を完了して、前記バイパス用スイッチをオンにすることができる。
【0019】
また、この発明においては、1つのチョッパ装置を備えた初期充電装置により、複数の電力変換装置の平滑コンデンサを一括して初期充電を行うようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、電流の断続動作を行うチョッパ装置の通流率を制御して、平滑コンデンサの充電電流を調整することができるので、電源投入時の平滑コンデンサへの突入電流を抑えることができるから、平滑コンデンサへ与える影響を無くすことができる。
【0021】
また、充電電流が0(A)の状態で充電完了時の充電切換スイッチの切換を行うので、切換スイッチの開閉に伴う接点消耗がなく、保守性が向上し、かつ、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の基本的な構成を示す回路構成図。
【図2】この発明の動作を説明するための波形図。
【図3】この発明の第1の実施例を示す回路構成図。
【図4】この発明の第1の実施例の動作を説明するための波形図。
【図5】この発明の第2の実施例を示す回路構成図。
【図6】この発明の第2の実施例の動作を説明するための波形図。
【図7】この発明の第1の実施例の応用例を示す回路構成図。
【図8】この発明の第3の実施例を示す回路構成図。
【図9】従来装置の構成を示す回路構成図。
【図10】従来装置の動作を説明するための波形図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
図1に、この発明による電力変換装置の初期充電装置の実施例を示し、また、図2にこの実施例の初期充電動作波形を示す。
【0024】
図1の実施例は、図9に示す従来装置とは、初期充電装置3の構成が相違するだけで、その他の構成は同一であるので、この初期充電装置3について説明する。
【0025】
初期充電装置3には、従来装置における充電抵抗32に代えて、電流の断続動作を行うトランジスタ等の半導体スイッチング素子36と、リアクトル37およびフリーホイールダイオード38とで構成されたチョッパ装置35が設けられている。このチョッパ装置35に、充電切換スイッチ31のb接点31bを直列に接続し、そして、a接点31aを並列に接続して初期充電装置3が構成される。チョッパ装置35は、電力変換装置の制御装置20からのオン、オフする充電信号Dsによって断続動作し、その通流率の制御によって、通電電流を調整する。
【0026】
このようなチョッパ装置35を備えたこの発明の初期充電装置の動作を、図2に示す動作波形図を参照して説明する。
【0027】
電力変換装置10の運転を開始するために、t1時点において、電源スイッチ2を投入し、これをオンにする。このとき、初期充電装置3の充電切換スイッチ31は、オフ状態にあるから、b接点31bがオン、a接点31aがオフとなっている。直流電源1の電圧を変成して制御電源を生成する制御電源装置21は、電源スイッチ2の投入から少し遅れたt2時点で、安定した出力電圧値Eを、制御装置20に出力し、これの動作を開始させる。
【0028】
t3時点で制御装置20はチョッパ装置35のスイッチング素子36に断続動作させるためのパルス状の充電信号Dsを与える。これによりチョッパ装置35がオン、オフ動作を開始し、直流電源1と電力変換装置10との間に設けられた平滑コンデンサ9へ供給される充電電流を断続して充電電流が過大にならないように調整する。
【0029】
平滑コンデンサ9の充電初期は、充電電荷量がゼロ又は小さいので、直流電源1の電圧値Vbと平滑コンデンサ9の電圧値Vcとの差電圧ΔVcが大きいため、チョッパ装置35の通流率αを小さくして充電電流を小さく抑える。
【0030】
通流率αは、チョッパ装置の断続周期をT0とし、導通(オン)して電流を通流している時間幅をTnとしたとき、α=Tn/T0(%)として表される。
【0031】
チョッパ装置35の導通により平滑コンデンサ9が充電されると、平滑コンデンサの電圧値Vcは、次第に上昇し、直流電源1の電圧値Vbとの差電圧ΔVcが次第に小さくな
るので、これに対応してチョッパ装置35の通流率αを高めて、充電電流がほぼ一定になるようにする。このようなチョッパ装置35の通流率αの制御は、制御装置20で行う。
【0032】
チョッパ装置35の通流率αが100%(全導通)となったところで、平滑コンデンサの電圧値Vcが直流電源1の電圧値Vbに達して充電電流Icがゼロとなり、平滑コンデ
ンサ9の充電が完了するようにする。充電電流Icがゼロとなって充電が完了したt5時
点から所定の時間後のt6時点で、制御装置20から充電切換スイッチ31に切換指令信号Scを加えてこれをオンする。これにより、充電切換スイッチ31は、図2の(c)、(d)に示すようにa接点31aがt6時点でオンに、そしてb接点31bが、これよりわずかに遅れたt7時点でオフに切り換わる。これにより、チョッパ装置35は、充電切換スイッチ31のa接点31aにより短絡されて、バイパスされるとともに、b接点31bにより直流電源1から切り離される。平滑コンデンサ9および電力変換装置10には、直流電源1からa接点31aを介して直接給電されるようになる。t6時点で充電切換スイッチ31がオンされてからそのb接点31bが完全にオフに切換わる時間が経過したt7時点において、電力変換装置10の初期充電が完全に完了するので、制御装置20から、チョッパ装置35への充電信号Dsを停止し、電力変換装置10へ動作開始指令信号Sが出力される。
【0033】
このように、チョッパ装置35を通して平滑コンデンサ9の初期充電を行うようにすると、充電電流が大きくなるところでは、チョッパ装置35の通流率αを小さくして充電電流の絞り込みを行い、充電電流が小さくなるところでは、通流率αを大きくして、充電電流の増加を図ることができることにより、平滑コンデンサの初期充電時の突入電流を抑え、ほぼ一定の電流で充電をおこなうことができるので、充電時間の短縮を図ることが可能となる。
【0034】
次に、このように一定電流で平滑コンデンサの初期充電を行うためのこの発明による2つの充電方式につて説明する。
【実施例1】
【0035】
通流率漸増充電方式
この方式は、予め、平滑コンデンサ9の静電容量値C、直流電源1の最小電圧値Vbl等から、平滑コンデンサ9をゼロから直流電源1の電圧値Vbまで充電するのに必要な充電時間Tcを求め、これを充電時間Tcとして設定する。そして、この充電時間Tc内でチョッパ装置35の通流率αが0(%)から100(%)となるようにこの通流率αを定率で漸増することにより、平滑コンデンサ9の初期充電を行う方式である。
【0036】
この方式の初期充電装置の実施例を図3に示す。
【0037】
初期充電装置3のチョッパ装置35の通流率αを制御するために、制御装置20に通流制御部20−1を設ける。予め、充電時間設定器20−2により充電時間Tcを設定し、これを通流制御部20−1に加える。
【0038】
通流制御部20−1は、設定された充電時間Tc内で平滑コンデンサ9の充電を行うために、通流率αを決め、これを漸増する充電信号Dsを形成し、これをチョッパ装置35に加える。
【0039】
通流制御部20−1で形成される充電信号Dsの波形を図4(a)に示す。充電信号Dsは、断続周期T0で断続されるが、各周期における通電時間をT1からTnへ次第に大きくして、通流率αを漸増するようにしている。通電時間は、T1ずつ定率で増加する。t1−t2期間の通電時間をT1とすると、t2−t3期間では通電時間T2は、T1×2=2T1となり、次のt3−t4期間での通電時間T3は、T1×3=3T1となる。そして、最後のtn−tn+1期間では、通電時間Tnが、T1×n=nT1=T0となり、断続周期T0と等しくなって、通流率が100%、すなわち全導通となるようにチョッパ装置35の通流率を漸増制御する。
【0040】
このようにチョッパ装置35の通流率αを定率で漸増するように制御すると、このチョッパ装置35から平滑コンデンサ9には、図4(b)に示すように各周期において最大値がIc1となる充電電流Icが流れる。これは、例えば、t1−t2期間において通電時間T1に流れる電流により、平滑コンデンサ9が、図4(c)に示すようにVc1まで充電されているので、次のt2−t3期間において通電時間がT2に増大されても、通電時間がT1になるまではチョッパ装置35の出力電圧が平滑コンデンサの電圧値Vc1より低く、平滑コンデンサ9への充電電流は流れず、チョッパ装置35の出力電圧が平滑コンデンサの電圧値Vcを超える残りの充電時間T1において充電電流Icが流れ、これにより平滑コンデンサ9が充電され、平滑コンデンサの電圧値がVc2に上昇する。t3時点以降も同じで、図4(b)に示すように各周期における通電時間の終わりの通電時間T1においてのみ充電電流が流れ、平滑コンデンサの電圧値Vcがジグザグ状に上昇し、通電時間Tcの最後の周期において直流電源1の電圧値Vbと等しい電圧に達し、充電が終了する。
【0041】
このような通流率漸増充電方式によれば、充電を常に設定した充電時間Tcで終了することができる。
【0042】
このため、通流率漸増充電方式を、図7に示すように電力変換装置10が、複数台の電力変換装置10−1〜10−nで構成されるシステムに適用した場合、初期充電装置3の充電チョッパ装置35の電流容量を電力変換装置の設置台数に応じて決めておけば、設定値の変更等は何もしないで、電力変換装置の運転台数に関係なく、1個の初期充電装置で複数台の電力変換装置の平滑コンデンサの初期充電を一括して簡単に行うことができる。
【実施例2】
【0043】
定電流充電方式
この定電流充電方式を用いる場合は、図5に示すように、制御装置20内に電流調節部20−3を設け、これにより、初期充電装置3のチョッパ装置35の断続制御を行う。この電流調節部20−3は、外部に設けた電流設定器20−5により充電電流設定値Ic*を設定し、加算器20−4でこの充電電流設定値Ic*に対する電流検出器6で検出された充電電流Icの検出値との差を求め、この差が零となるような通流率の充電信号Dsを発生し、これを初期充電装置3のチョッパ装置35に加える。
【0044】
この実施例2の初期充電装置の動作を図6に示す動作波形図を参照して説明する。
【0045】
図6のt1時点において制御装置20から指令により初期充電が開始され、図6(a)に示すように、電流調節部20−3からチョッパ装置35に充電信号Dsが与えられる。
【0046】
これにより、チョッパ装置35のスイッチング素子36が導通し、直流電源1からリアクトル37を介して平滑コンデンサ9に充電電流Icが供給され、充電が開始される。充電電流Icは、チョッパ装置35の導通とともに回路定数にしたがって立ち上がり、充電電流設定値Ic*に達すると充電信号Dsがオフされ、次の周期で充電信号Dsがオンされ、充電電流設定値Ic*に達したところでオフされる動作が繰り返される。その後も充電電流Icが充電電流設定値Ic*に保たれるように、電流直接部20−3によってチョッパ装置35の通流率の制御が行われる。
【0047】
このため、チョッパ装置35は、平滑コンデンサ9への充電電流Icを、充電電流設定値Ic*に一定に保ち、平滑コンデンサ9を一定の電流で充電することができる。これにより、平滑コンデンサ9の電圧値Vcは、図6(c)に示すように時間とともに直線的に上昇する。そして、平滑コンデンサ9の電圧値Vcが、直流電源1の電圧値Vbに達すると充電電流がゼロに低下するので、電流検出器6から帰還される電流検出値がゼロとなることにより、電流調節部20−3は、調節動作が飽和し、チョッパ装置35に通流率100%(全導通)の充電信号Dsを出力する。したがって、チョッパ装置35の充電信号Dsが通流率100%となったことを検出することにより、平滑コンデンサ9の充電が完了したことを確実に検出することができる。
【0048】
制御装置20は、電流調節部20−3から、通流率100%の充電信号Dsが出力されたことにより、平滑コンデンサ9の初期充電の完了を検知すると、充電切換スイッチ31に切換信号Scを出力するとともに、電力変換装置10に運転開始指令信号Sを出力する。これにより、充電切換スイッチ31のa接点31aがオンに切り換わり、b接点31bがオフに切り換わるので、初期充電装置3がa接点31aによりバイパスされるとともに、b接点31bにより直流電源1から切り離されるので、運転を開始する電力変換装置10には直流電源1から直接給電されるようになる。
【0049】
このような定電流充電方式によれば、直流電源1の電圧が変動しても、設定した一定電流で平滑コンデンサを充電することができるので、充電時間を一定にできる効果がある。
【実施例3】
【0050】
この発明による初期充電装置を、A系統、B系統の2系統の電力変換装置を備えたシステムに適用した際の実施例を図8に示す。
【0051】
この場合は、図8に示すように、A系統、B系統の装置は、それぞれ、直流電源1、電源スイッチ2、初期充電装置3、複数の電力変換装置10−1〜10−nを備える。A系統およびB系統の各構成要素にはそれぞれAおよびBの符号を付けて示す。
【0052】
A系統とB系統の直流の電源母線PA,NAとPB、NBとは、連系スイッチ5を介して連系接続され、初期充電装置3A,3Bの出力線3oAと3oBとは、連系切換スイッチ39Aおよび39Bを介して連系接続される。
【0053】
このような2系統を備えるシステムにおいては、通常は、連系スイッチ5および39A,39Bはオフされ、それぞれの系統が独立して作動する。すなわち、A系統の電力変換装置10−1A〜10−nAの平滑コンデンサ9-1A〜9−nAは、直流電源1Aから初期充電装置3Aのチョッパ装置35Aを通して初期充電され、初期充電が終わると充電切換スイッチ31Aを切り替えて、チョッパ装置35Aをb接点31bAにより切り離すとともにa接点31aAにより短絡してバイパスする。そして、B系統の電力変換装置10−1B〜10−nBの平滑コンデンサ9-1B〜9−nBは、直流電源1Bから初期充電装置3Bのチョッパ装置35Bを通して初期充電され、初期充電が終わると充電切換スイッチ31Bを切り替えて、チョッパ装置35Bをb接点31bBにより切り離すとともにa接点31aBにより短絡してバイパスする。
【0054】
例えばA系統の充電チョッパ35Aが故障したときは、初期充電装置3Aと3Bの出力線を連系する切換スイッチ39Aをオンにし、そのa接点39Aaをオン、b接点39Bbをオフにして、健全な側のB系統の初期充電装置3Bの出力線3oBをA系統の初期充電装置3Aの出力線3oAに接続する。このとき、電源スイッチ2Aは遮断され、電源スイッチ2Bは投入されている。
【0055】
これにより、B系統の直流電源1Bから初期充電装置3Bのチョッパ装置35Bを通して、出力線3oBおよび3oAを介してA系統およびB系統の電力変換装置10−1A〜10−nAおよび10−1B〜10−nBの平滑コンデンサ9−1A〜9−nAおよび9−1B〜9−nBが一括して充電される。このとき、チョッパ装置35Bを定電流充電モードで動作するようにすると、平滑コンデンサ9の静電容量が増えても、一定の電流で充電することができるので、チョッパ装置35Bの定格容量内で充電することができる。
【0056】
充電後に、チョッパ装置35Bを切り離し、A系統の電源スイッチ2Aを投入しても、平滑コンデンサの突入電流は流れることがなく、A系統の電力変換装置10−1A〜10−nAを円滑にA系統の直流電源1Aから駆動することができる。
【0057】
一方の系統の直流電源の電圧が規定の最低電圧値より低下するなどの異常が生じた場合は、異常となった、例えばB系統の電源スイッチ2Bを遮断して、電源母線の連系スイッチ5を投入し、両系統の電源母線を連系接続する。これにより、両系統の初期充電装置3A、3Bに連系接続された電源母線を介して正常な直流電源1Aから給電されるので、それぞれの初期充電装置からそれぞれの系統の電力変換装置の平滑コンデンサの初期充電を行うことができる。
【0058】
このように、実施例3に示すように、2系統の電力変換装置の電源、初期充電装置を連系接続すれば、何れか一方の系統の直流電源や、初期充電装置に異常が生じても、他方の直流電源および初期充電装置でこれを補完することができるので、装置全体が運転停止に至ることを抑制でき、運転の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0059】
1:直流電源
2:電源スイッチ
3:初期充電装置
35:チョッパ装置
9:平滑コンデンサ
10:電力変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置の入力部に備えられ、直流電源から入力される電圧を平滑するための平滑コンデンサを充電する初期充電装置であって、前記直流電源と平滑コンデンサとの間に、電流を断続して通流率を制御するチョッパ装置と前記直流電源との間を開閉する充電切換スイッチとで構成されていることを特徴とする電力変換装置の初期充電装置。
【請求項2】
前記初期充電装置は、前記チョッパ装置により、前記電力変換装置の平滑コンデンサを充電するとき、その通流率を時間的に漸次増加することにより充電電流を調整する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の初期充電装置。
【請求項3】
前記初期充電装置は、前記チョッパ装置により、前記電力変換装置の平滑コンデンサを充電するとき、前記平滑コンデンサの充電電流が一定になるように前記チョッパ装置の通流率を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の初期充電装置。
【請求項4】
前記初期充電装置は、前記チョッパ装置により、前記電力変換装置の平滑コンデンサを充電するとき、その通流率を時間的に漸次増加することにより充電電流を調整する制御手段と、前記平滑コンデンサの充電電流が一定になるように前記チョッパ装置の通流率を制御する制御手段とを備え、前記両制御手段が選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の初期充電装置。
【請求項5】
前記チョッパ装置の制御手段は、前記通流率の指令が100%になったことにより充電の完了を検知し、前記充電切換スイッチに切換指令を送り、前記チョッパ装置を前記入力回路から切り離すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置の初期充電装置。
【請求項6】
入力部に直流電源から入力される電圧を平滑するための平滑コンデンサを備えた複数の電力変換装置を共通の直流電源に並列に接続し、前記複数の平滑コンデンサを充電する電力変換装置の初期充電装置であって、前記共通の直流電源と前記複数の電力変換装置の平滑コンデンサとの間に、電流を断続して通流率を制御するチョッパ装置とこのチョッパ装置と前記直流電源との間を開閉する充電切換スイッチとからなる回路を共通に1つ設けたことを特徴とする電力変換装置の初期充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27095(P2013−27095A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157826(P2011−157826)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】