説明

電力変換装置の制御装置、および、この制御装置を用いた系統連系インバータシステム

【課題】個別制御状態と一括制御状態とを切り替えるときの各電力変換装置による制御の干渉を防止できる制御装置を提供する。
【解決手段】個別制御状態に切り替える場合、制御目標電圧を電圧値V2,V3としてPWM信号P2,P3の生成を開始し、電圧値V2,V3が目標電圧値V1*に一致したときに接続装置を独立状態に切り替え、切替部94,95が制御目標電圧をV1*に切り替えるようにし、その後、目標電圧値V2*,V3*に切り替えるようにした。また、一括制御状態に切り替える場合、制御目標電圧をV1*に切り替え、V2,V3がV1*に一致したときに接続装置を並列状態に切り替え、その後、制御目標電圧をV2,V3に切り替えてから、PWM信号P2,P3の生成を停止するようにした。すべての電力変換装置が同じ制御を行うか、1台の電力変換装置のみが制御を行っている状態となるので、制御の干渉が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源装置にそれぞれ接続された各電力変換装置の運転を制御する制御装置、およびこの制御装置を用いた系統連系インバータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電源から出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する系統連系インバータシステムが開発されている。また、複数の太陽電池を直列接続した太陽電池モジュールを直流電源とした系統連系インバータシステムにおいて、太陽電池モジュールとインバータとの間にDC/DCコンバータを設けて、太陽電池モジュールの出力電力が最大となるようにDC/DCコンバータの運転を制御(以下では、「最大電力点追従制御」という。)するものが開発されている。
【0003】
また、複数の太陽電池モジュールと複数のDC/DCコンバータとを設けて、太陽電池モジュールの出力電力に応じて、これらの太陽電池モジュールとDC/DCコンバータの接続方法を変更するものも開発されている。
【0004】
図7は、太陽電池モジュールおよびDC/DCコンバータを3台ずつ設けた系統連系インバータシステムを示す図である。同図に示すように、系統連系インバータシステム100は、3台の太陽電池モジュール210,220,230と3台のDC/DCコンバータ410,420,430とをそれぞれ接続する接続線にまたがって設けられている接続装置300を備えている。接続装置300は、内蔵する電磁接触器が閉じられて3つの接続線が互いに接続された状態(以下では、「並列状態」とする。)と、内蔵する電磁接触器が開かれて3つの接続線が互いに接続されない状態(以下では、「独立状態」とする。)のいずれかの状態となるものである。
【0005】
制御装置900は、図示しないセンサの検出値から太陽電池モジュール210,220,230の出力電力の合計値を算出し、算出された合計値に基づいて接続装置300の切り替えとDC/DCコンバータ410,420,430の運転を制御する。すなわち、合計値が所定値以上の場合は、接続装置300を独立状態とし、DC/DCコンバータ410,420,430の運転をそれぞれ制御する。これにより、各太陽電池モジュール210,220,230の出力電力がそれぞれ最大電力点追従制御される。なお、以下では、当該制御状態を「個別制御状態」とする。一方、合計値が所定値未満の場合は、変換効率を高くするために、接続装置300を並列状態とし、1台のDC/DCコンバータ(例えば、DC/DCコンバータ410)のみの運転を制御する(他の2台のDC/DCコンバータの運転を行わない。)。これにより、太陽電池モジュール210,220,230から出力される電力が一括され、この一括された出力電力が最大電力点追従制御される。なお、以下では、当該制御状態を「一括制御状態」とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−268800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、系統連系インバータシステム100においては、個別制御状態と一括制御状態とが切り替えられるときに、各DC/DCコンバータによる制御が互いに干渉する状態が生じるという問題がある。
【0008】
制御装置900は、太陽電池モジュール210,220,230の出力電力の合計値(以下では、「合計電力値」とする。)が所定値W0以上になった場合に一括制御状態から個別制御状態に切り替えを行い、合計電力値が所定値W0未満になった場合に個別制御状態から一括制御状態に切り替えを行う。一括制御状態から個別制御状態への切り替えは、まずDC/DCコンバータ420,430を起動し、その後接続装置300を並列状態から独立状態に切り替ることで行う。また、個別制御状態から一括制御状態への切り替えは、まず接続装置300を独立状態から並列状態に切り替えて、その後DC/DCコンバータ420,430を停止することで行う。
【0009】
図8は、系統連系インバータシステム100における個別制御状態と一括制御状態の切り替えを説明するためのタイムチャートである。
【0010】
同図(a)は、日出(時刻t=t0)から日没(t=t7)までの太陽電池モジュールの出力電力を示す図であり、破線が合計電力値を示し、実線がDC/DCコンバータ410に入力される電力を示している。t=t1〜t2およびt=t5〜t6においては一括制御状態であり、太陽電池モジュール210,220,230の出力電力が一括されてDC/DCコンバータ410に入力されている。なお、DC/DCコンバータ420,430は運転を停止しているので、電力が入力されない。したがって、DC/DCコンバータ410に入力される電力値(実線)と合計電力値(破線)とが一致している。t=t3〜t4においては個別制御状態であり、太陽電池モジュール210,220,230の出力電力はそれぞれDC/DCコンバータ410,420,430に入力されている。また、t=t2〜t3およびt4〜t5においては一括制御状態と個別制御状態の過渡状態であり、太陽電池モジュール210,220,230の一括された出力電力が分割されてDC/DCコンバータ410,420,430に入力されている。したがって、t=t2〜t5では、DC/DCコンバータ410に入力される電力値(実線)が合計電力値(破線)の約1/3になっている。
【0011】
同図(b)は、DC/DCコンバータ410の運転状態を示しており、運転中は「ON」、停止中は「OFF」で示している。DC/DCコンバータ410は、太陽電池モジュール210,220,230で生成される電力で系統連系インバータシステム100が運転可能になったとき(t=t1)に起動し、運転不可能になったとき(t=t6)に停止している。
【0012】
同図(c)は、DC/DCコンバータ420,430の運転状態を示しており、運転中は「ON」、停止中は「OFF」で示している。DC/DCコンバータ420,430は、合計電力値が所定値W0以上になったとき(t=t2)に起動し、合計電力値が所定値W0未満になった後(t=t5)に停止している。
【0013】
同図(d)は、接続装置300の状態を示している。接続装置300は、合計電力値が所定値W0以上になってDC/DCコンバータ420,430が起動された後(t=t3)、並列状態から独立状態に切り替えられ、合計電力値が所定値W0未満になったとき(t=t4)に、独立状態から並列状態に切り替えられている。
【0014】
同図に示すように、個別制御状態と一括制御状態とが切り替えられるときに、接続装置300が並列状態であり、かつ、DC/DCコンバータ420,430が運転中である状態(同図において、t=t2からt3までの期間、および、t=t4からt5までの期間)が生じる。この場合、太陽電池モジュール210,220,230から出力される電力が一括された出力電力を、DC/DCコンバータ410,420,430がそれぞれ最大電力点追従制御する状態となり、各DC/DCコンバータ410,420,430による制御が互いに干渉する状態となる。
【0015】
また、制御の干渉中にt=t5でDC/DCコンバータ420,430の運転を停止した場合、DC/DCコンバータ410に入力される電力が急増することになり、DC/DCコンバータ410による最大電力点追従制御において追従していた最大電力点が急変するという問題点もある。
【0016】
なお、DC/DCコンバータ毎にそれぞれ別のインバータを接続して、各DC/DCコンバータの運転を制御すると同時に接続された各インバータの運転も制御する場合や、DC/DCコンバータを設ける代わりに複数台のインバータを設けて、これらのインバータの運転を制御する場合にも、個別制御状態と一括制御状態とが切り替えられるときに同様の問題が生じる。
【0017】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、個別制御状態と一括制御状態とを切り替えるときの各電力変換装置による制御の干渉を防止することができる制御装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0019】
本発明の第1の側面によって提供される電力変換装置の制御装置は、第1の電源装置と、前記第1の電源装置の出力端に接続された第1の電力変換装置と、第2の電源装置と、前記第2の電源装置の出力端に接続された第2の電力変換装置と、前記第1の電源装置の出力端と前記第2の電源装置の出力端とを互いに接続しない独立状態と前記第1の電源装置の出力端と前記第2の電源装置の出力端とを互いに接続する並列状態のいずれかの状態となる接続装置とを備える系統連系インバータシステムに適用され、前記第1の電源装置および第2の電源装置によって出力される電力が最大になるように前記各電力変換装置の運転を制御する制御装置であって、前記接続装置が前記並列状態となっているときに前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置を運転する場合には、前記第2の電力変換装置による制御を行わないか、前記第1の電力変換装置の制御目標電圧を前記第2の電力変換装置の制御目標電圧として設定することを特徴とする。
【0020】
なお、「電力変換装置」とは、入力電力から必要とされる出力電力を生成するものであり、例えば、直流電力を交流電力に変換するインバータ、および、直流電力の電圧を変換するDC/DCコンバータを含んでいる。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1の電力変換装置のみが運転され、前記接続装置が前記並列状態となっている一括制御状態から、前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置が運転され、前記接続装置が前記独立状態となっている個別制御状態に切り替える場合に、前記第2の電力変換装置による制御を行わずに前記第2の電力変換装置の運転を開始し、並列接続されている前記第1の電源装置および前記第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になった以後に前記第1の電力変換装置の制御目標電圧を前記第2の電力変換装置の制御目標電圧として設定して前記第2の電力変換装置による制御を開始し、前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える場合に、前記第1の電力変換装置の制御目標電圧を前記第2の電力変換装置の制御目標電圧として設定して前記第2の電力変換装置による制御を行い、前記第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になった以後に前記第2の電力変換装置による制御を中止する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記一括制御状態から前記個別制御状態に切り替える場合に、前記並列接続されている第1の電源装置および第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になったときに前記接続装置を前記独立状態に切り替える。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える場合に、前記第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になったときに前記接続装置を前記並列状態に切り替える。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える場合に、前記第2の電力変換装置による制御を行わないようにしてから前記第2の電力変換装置に流れる電流がゼロになったときに、前記第2の電力変換装置の運転を停止する。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1の電源装置および第2の電源装置の出力電力の合計値を算出する算出手段と、前記合計値が所定値以上であるか否かを判別する判別手段とをさらに備え、前記一括制御状態のときに前記判別手段によって前記合計値が前記所定値以上であると判別された場合は、前記一括制御状態から前記個別制御状態に切り替え、前記個別制御状態のときに前記判別手段によって前記合計値が前記所定値未満であると判別された場合は、前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置はDC/DCコンバータを備えている。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置はインバータを備えている。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1の電源装置および第2の電源装置は太陽電池を備えている。
【0029】
本発明の第2の側面によって提供される系統連系インバータシステムは、前記第1の電源装置と、前記第1の電力変換装置と、前記第2の電源装置と、前記第2の電力変換装置と、前記接続装置と、本発明の第1の側面によって提供される制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、接続装置が並列状態となっているときに第1の電力変換装置および第2の電力変換装置が運転される場合、第2の電力変換装置による制御が行われないか、第1の電力変換装置の制御目標電圧が第2の電力変換装置の制御目標電圧として設定される。したがって、並列接続された第1の電源装置と第2の電源装置に対して、第1の電力変換装置と第2の電力変換装置とが異なる制御を行うことがない。これにより、第1の電力変換装置と第2の電力変換装置による制御の干渉を防止することができる。
【0031】
また、個別制御状態から一括制御状態に切り替えられる際、第2の電力変換装置による制御を行わないようにしてから第2の電力変換装置に流れる電流がゼロになったときに第2の電力変換装置の運転を停止する場合、第2の電力変換装置の運転停止によって第1の電力変換装置に入力される電力は変化しない。したがって、第1の電力変換装置による最大電力点追従制御において、追従していた最大電力点が急変するという問題は生じない。
【0032】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る制御装置を備えた系統連系インバータシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明に係る制御装置の内部構成の一例を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明に係る制御装置が行う制御状態切替処理(個別制御状態と一括制御状態の切り替え処理)を説明するためのフローチャートである。
【図4】制御状態切替処理を説明するためのタイムチャートである。
【図5】本発明に係る制御装置を備えた他の系統連系インバータシステムを示すブロック図である。
【図6】本発明に係る制御装置を備えた他の系統連系インバータシステムを示すブロック図である。
【図7】従来の系統連系インバータシステムを示すブロック図である。
【図8】従来の系統連系インバータシステムにおける制御状態切替処理を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0035】
図1は、本発明に係る制御装置を備えた系統連系インバータシステムを示すブロック図である。系統連系インバータシステム1は、太陽電池モジュール21,22,23が出力する直流電力をインバータ5で交流電力に変換して電力系統6に出力するものである。同図に示すように、系統連系インバータシステム1は、太陽電池モジュール21,22,23、接続装置3、DC/DCコンバータ41,42,43、インバータ5、電流センサ71,72,73、電圧センサ81,82,83、および制御装置9を備えている。太陽電池モジュール21,22,23はそれぞれDC/DCコンバータ41,42,43に接続され、DC/DCコンバータ41,42,43はインバータ5に接続され、インバータ5は電力系統6に接続されている。
【0036】
太陽電池モジュール21,22,23は、それぞれ複数の太陽電池を直列接続したものであり、太陽電池が太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して生成した直流電力を出力する。
【0037】
接続装置3は、太陽電池モジュール21,22,23とDC/DCコンバータ41,42,43とをそれぞれ接続する3つの接続線にまたがって設けられており、制御装置9から入力される切替信号に基づいて、3つの接続線が互いに接続された並列状態と、3つの接続線が互いに接続されない独立状態のいずれかの状態となるものである。並列状態のとき、太陽電池モジュール21,22,23は並列接続された状態となり、太陽電池モジュール21,22,23が生成した電力が一括される。また、独立状態のとき、各太陽電池モジュール21,22,23が生成した電力は、それぞれDC/DCコンバータ41,42,43に入力される。本実施形態においては、接続装置3を、太陽電池モジュール21の接続線と太陽電池モジュール22の接続線との間に設けられた電磁接触器31と、太陽電池モジュール22の接続線と太陽電池モジュール22の接続線との間に設けられた電磁接触器32とを備えた構成としているが、これに限られない。並列状態と独立状態とを切り替えられる構成であればよい。
【0038】
DC/DCコンバータ41,42,43は、それぞれ太陽電池モジュール21,22,23に接続されており、各太陽電池モジュール21,22,23から入力される直流電圧を、制御装置9から入力されるPWM信号P1,P2,P3に応じて、それぞれ変換するものである(個別制御状態の場合)。DC/DCコンバータ41,42,43は、出力電圧が所定の電圧Vd(以下、必要に応じて「バス電圧Vd」という。)に固定されているので、入力電圧を目標とする電圧に制御することができる。入力電圧を目標とする電圧に制御して、入力電力が最大となるように目標とする電圧を変化させることで、最大電力点追従制御が行われる。
【0039】
一括制御状態の場合、DC/DCコンバータ41は、並列接続された太陽電池モジュール21,22,23(以下では、「太陽電池モジュール群」とする。)から入力される電圧を、制御装置9から入力されるPWM信号P1に応じて変換する。これにより、DC/DCコンバータ41は、太陽電池モジュール群から入力される電力の最大電力点追従制御を行う。なお、一括制御状態の場合、DC/DCコンバータ42,43の運転は停止されている。
【0040】
インバータ5は、図示しないスイッチング素子をオン・オフ動作させることで、DC/DCコンバータ41,42,43から入力される直流電力を交流電力に変換する。インバータ5は、図示しないローパスフィルタによってスイッチング周波数成分を除去された交流電圧を電力系統6に出力する。なお、図1においては、インバータ5の電力変換動作を制御する制御装置を省略している。系統連系インバータシステム1が電力系統6に連系している状態では、インバータ5は、バス電圧Vdを一定とする制御を行っている。
【0041】
電流センサ71,72,73は、それぞれDC/DCコンバータ41,42,43の入力側に配置されており、それぞれDC/DCコンバータ41,42,43に入力される電流を検出するものである。独立状態においては、各太陽電池モジュール21,22,23はそれぞれDC/DCコンバータ41,42,43とのみ接続されているので、電流センサ71,72,73が検出する電流は、それぞれ太陽電池モジュール21,22,23の出力電流となる。並列状態においては、電流センサ71,72,73が検出する電流は、太陽電池モジュール群から入力される電流のうち、それぞれDC/DCコンバータ41,42,43に入力される電流となる。電流センサ71,72,73は、それぞれ検出した電流の電流値I1,I2,I3を制御装置9に出力する。
【0042】
電圧センサ81,82,83は、それぞれDC/DCコンバータ41,42,43の入力側に配置されており、それぞれDC/DCコンバータ41,42,43の入力側の電圧を検出するものである。独立状態においては、各太陽電池モジュール21,22,23はそれぞれDC/DCコンバータ41,42,43とのみ接続されているので、電圧センサ81,82,83が検出する電圧は、それぞれ太陽電池モジュール21,22,23の出力電圧となる。並列状態においては、電圧センサ81,82,83が検出する電圧は、太陽電池モジュール群から入力される電圧となる。電圧センサ81,82,83は、それぞれ検出した電圧の電圧値V1,V2,V3を制御装置9に出力する。
【0043】
制御装置9は、DC/DCコンバータ41,42,43および接続装置3を制御するものである。制御装置9は、電流センサ71,72,73からそれぞれ入力される電流値I1,I2,I3と電圧センサ81,82,83からそれぞれ入力される電圧値V1,V2,V3とに基づいて、PWM信号P1,P2,P3および切替信号を生成する。制御装置9は、PWM信号P1,P2,P3を入力することでDC/DCコンバータ41,42,43を制御し、切替信号を入力することで接続装置3を制御する。
【0044】
制御装置9は、電流値I1,I2,I3および電圧値V1,V2,V3に基づいて算出された合計電力値(太陽電池モジュール21,22,23の出力電力の合計値)Wに基づいて、接続装置3の切り替えとDC/DCコンバータ41,42,43の運転を制御する。すなわち、合計電力値Wが所定値W0以上の場合は、接続装置3を独立状態とし、DC/DCコンバータ41,42,43の運転をそれぞれ制御する(個別制御状態)。このとき、各太陽電池モジュール21,22,23の出力電力をそれぞれ最大電力点追従制御するための目標電圧値V1*,V2*,V3*が設定され、制御装置9は、電圧値V1,V2,V3がそれぞれ制御目標電圧である目標電圧値V1*,V2*,V3*に一致するようにPWM信号P1,P2,P3を生成して、各DC/DCコンバータ41,42,43に出力する。一方、合計電力値Wが所定値W0未満の場合は、接続装置3を並列状態とし、DC/DCコンバータ41のみの運転を制御する(一括制御状態)。このとき、太陽電池モジュール群の出力電力を最大電力点追従制御するための目標電圧値V1*が設定され、制御装置9は、電圧値V1が目標電圧値V1*に一致するようにPWM信号P1を生成して、DC/DCコンバータ41に出力する。
【0045】
また、制御装置9は、個別制御状態と一括制御状態とを切り替えるときに各DC/DCコンバータ41,42,43による制御が互いに干渉することを防ぐために、過渡時に制御目標電圧の切り替えを行う。
【0046】
一括制御状態から個別制御状態に切り替える場合、制御装置9は、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧をそれぞれ電圧センサ82,83から入力される電圧値V2,V3として、DC/DCコンバータ42,43を起動する。制御目標電圧と制御量とが同じ(偏差がゼロ)なので、制御装置9はDC/DCコンバータ42,43を運転しているが制御を行っていない状態であり、DC/DCコンバータ42,43には今までDC/DCコンバータ41にのみ流れていた電流の一部が流れるようになる。電圧値V2,V3は電圧値V1に一致しており、電圧値V1の制御目標電圧は目標電圧値V1*なので、電圧値V2,V3は目標電圧値V1*に近づいてゆく。制御装置9は、電圧値V2および電圧値V3が目標電圧値V1*に一致した場合に、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧を目標電圧値V1*に切り替えて、接続装置3を独立状態に切り替える。その後、制御装置9は、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧をそれぞれ目標電圧値V2*,V3*に切り替えて、各DC/DCコンバータ41,42,43がそれぞれ太陽電池モジュール21,22,23の出力電力の最大電力点追従制御を行うように制御を行う(個別制御状態)。
【0047】
個別制御状態から一括制御状態に切り替える場合、制御装置9は、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧を目標電圧値V1*に切り替える。電圧値V2および電圧値V3が目標電圧値V1*に一致したときに、接続装置3を並列状態に切り替える。その後、制御装置9は、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧をそれぞれ電圧値V2,V3に切り替える。制御目標電圧と制御量とが同じ(偏差がゼロ)なので、制御装置9はDC/DCコンバータ42,43を運転しているが制御を行っていない状態であり、DC/DCコンバータ42,43に流れる電流が減少する。制御装置9は、電流値I2および電流値I3がゼロになると、DC/DCコンバータ42,43を停止する。その後、制御装置9は、DC/DCコンバータ41のみで、太陽電池モジュール群の出力電力の最大電力点追従制御を行うように制御を行う(一括制御状態)。
【0048】
図2は、制御装置9の内部構成を示すブロック図である。制御装置9は、合計電力算出部91、合計電力比較部92、切替判断部93、切替部94,95、電流判断部96、PI制御部97a,97b,97c、および、PWM信号生成部98a,98b,98cを備えている。
【0049】
合計電力算出部91は、電流センサ71,72,73からそれぞれ入力される電流値I1,I2,I3と電圧センサ81,82,83からそれぞれ入力される電圧値V1,V2,V3とから、太陽電池モジュール21,22,23が出力する電力の合計値(合計電力値)Wを算出して、合計電力比較部92に出力するものである。合計電力算出部91は、電流値I1と電圧値V1とを乗算して電力値W1を算出し、電流値I2と電圧値V2とを乗算して電力値W2を算出し、電流値I3と電圧値V3とを乗算して電力値W3を算出し、電力値W1,W2,W3を加算することで合計電力値W(=I1*V1+I2*V2+I3*V3)を算出する。個別制御状態の場合、電力値W1,W2,W3はそれぞれ太陽電池モジュール21,22,23の出力電力値を示す。一方、一括制御状態の場合、電力値W1は太陽電池モジュール群の出力電力値を示し、電流値I2,I3がゼロとなるので、電力値W2,W3もゼロとなる。
【0050】
合計電力比較部92は、合計電力算出部91から入力される合計電力値Wとあらかじめ設定されている所定値W0とを比較して、比較結果を切替判断部93、切替部94,95、およびPWM信号生成回路98b,98cに出力するものである。本実施形態では、合計電力比較部92は、合計電力値Wが所定値W0以上の場合にハイレベルとなり、合計電力値Wが所定値W0未満の場合にローレベルとなる信号を出力する。なお、合計電力比較部92による比較結果の出力方法は、これに限られない。
【0051】
切替判断部93は、合計電力比較部92からの入力信号、電圧センサ82,83からそれぞれ入力される電圧値V2,V3、および、目標電圧値V1*に基づいて、接続装置3の切り替えを判断するものである。すなわち、切替判断部93は、合計電力比較部92からの入力信号がハイレベル(合計電力値Wが所定値W0以上)であり、電圧値V2および電圧値V3が目標電圧値V1*に一致した場合に、接続装置3を並列状態から独立状態に切り替える切替信号を接続装置3に出力する。当該切替信号は切替部94,95にも出力される。また、切替判断部93は、合計電力比較部92からの入力信号がローレベル(合計電力値Wが所定値W0未満)であり、電圧値V2および電圧値V3が目標電圧値V1*に一致した場合に、接続装置3を独立状態から並列状態に切り替える切替信号を接続装置3に出力する。当該切替信号は切替部94,95にも出力される。本実施形態では、切替判断部93は、合計電力比較部92からの入力信号がハイレベルのときに電圧値V2および電圧値V3が目標電圧値V1*に一致した場合にローレベルからハイレベルに変わり、合計電力比較部92からの入力信号がローレベルのときに電圧値V2および電圧値V3が目標電圧値V1*に一致した場合にハイレベルからローレベルに変わる信号を切替信号として出力する。なお、切替判断部93が出力する切替信号はこれに限られない。
【0052】
切替部94は、合計電力比較部92から入力される信号、切替判断部93から入力される切替信号に基づいて、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧を電圧センサ82から入力される電圧値V2、目標電圧値V1*、目標電圧値V2*の間で切り替えるものである。切替部94は、切替判断部93から入力される切替信号がローレベルからハイレベルに変わったときに(すなわち、接続装置3を並列状態から独立状態に切り替えたときに)、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧を電圧値V2から目標電圧値V1*に切り替え、その後所定時間経過後に目標電圧値V1*から目標電圧値V2*に切り替える。また、切替部94は、合計電力比較部92から入力される信号がハイレベルからローレベルに変わったときに(すなわち、合計電力値Wが所定値W0未満になったときに)、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧を目標電圧値V2*から目標電圧値V1*に切り替え、切替判断部93から入力される切替信号がハイレベルからローレベルに変わったとき(すなわち、接続装置3を独立状態から並列状態に切り替えたとき)から所定時間経過後に、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧を目標電圧値V1*から電圧値V2に切り替える。
【0053】
切替部95は、合計電力比較部92から入力される信号、切替判断部93から入力される切替信号に基づいて、DC/DCコンバータ43の制御目標電圧を電圧センサ83から入力される電圧値V3、目標電圧値V1*、目標電圧値V3*の間で切り替えるものである。切替部95は、切替判断部93から入力される切替信号がローレベルからハイレベルに変わったときに、DC/DCコンバータ43の制御目標電圧を電圧値V3から目標電圧値V1*に切り替え、その後所定時間経過後に目標電圧値V1*から目標電圧値V3*に切り替える。また、切替部95は、合計電力比較部92から入力される信号がハイレベルからローレベルに変わったときに、DC/DCコンバータ43の制御目標電圧を目標電圧値V3*から目標電圧値V1*に切り替え、切替判断部93から入力される切替信号がハイレベルからローレベルに変わったときから所定時間経過後に、DC/DCコンバータ43の制御目標電圧を目標電圧値V1*から電圧値V3に切り替える。
【0054】
電流判断部96は、電流センサ72,73からそれぞれ入力される電流値I2,I3が、ともにゼロになったか否かを判断し、判断結果をPWM信号生成部98b,98cに出力するものである。本実施形態では、電流判断部96は、電流値I2,I3がともにゼロの場合にハイレベルとなり、それ以外の場合にローレベルとなる信号を出力する。なお、電流判断部96が出力する信号はこれに限られない。また、電流判断部96が、電流値I2がゼロの場合にハイレベルとなる信号をPWM信号生成部98bに出力し、電流値I3がゼロの場合にハイレベルとなる信号をPWM信号生成部98cに出力するようにしてもよい。
【0055】
PI制御部97aは、電圧センサ81から入力される電圧値V1と目標電圧値V1*との偏差に基づいてPI制御を行い、補正値をPWM信号生成部98aに出力するものである。PI制御部97bは、電圧センサ82から入力される電圧値V2と切替部94から入力される制御目標電圧との偏差に基づいてPI制御を行い、補正値をPWM信号生成部98bに出力するものである。PI制御部97cは、電圧センサ83から入力される電圧値V3と切替部95から入力される制御目標電圧との偏差に基づいてPI制御を行い、補正値をPWM信号生成部98cに出力するものである。
【0056】
PWM信号生成部98aは、PI制御部97aから入力される補正値に基づいてPWM信号P1を生成して、DC/DCコンバータ41に出力するものである。PWM信号生成部98aは、PI制御部97aから入力される補正値に基づく指令値信号と、内部で生成される所定の周波数(例えば、4kHz)のキャリア信号(例えば、三角波信号)とを比較することでPWM信号P1を生成する。なお、PWM信号の生成法方はこれに限られない。なお、図示していないが、PWM信号生成部98aは、太陽電池モジュール21,22,23で生成される電力で系統連系インバータシステム1が運転可能になったときにPWM信号P1の生成を開始して、運転不可能になったときにPWM信号P1の生成を停止する。DC/DCコンバータ41は、PWM信号P1を入力されている間のみ運転される。
【0057】
PWM信号生成部98bは、PI制御部97bから入力される補正値に基づいてPWM信号P2を生成して、DC/DCコンバータ42に出力するものである。PWM信号の生成法方はPWM信号生成部98aと同様である。また、PWM信号生成部98bは、合計電力比較部92から入力される信号がローレベルからハイレベルに変わったときに(すなわち、合計電力値Wが所定値W0以上になったときに)PWM信号P2の生成を開始し、電流判断部96から入力される信号がローレベルからハイレベルに変わったときに(すなわち、電流値I2,I3がともにゼロになったときに)PWM信号P2の生成を停止する。
【0058】
PWM信号生成部98cは、PI制御部97cから入力される補正値に基づいてPWM信号P3を生成して、DC/DCコンバータ43に出力するものである。PWM信号の生成法方はPWM信号生成部98aと同様である。また、PWM信号生成部98cは、合計電力比較部92から入力される信号がローレベルからハイレベルに変わったときにPWM信号P3の生成を開始し、電流判断部96から入力される信号がローレベルからハイレベルに変わったときにPWM信号P3の生成を停止する。
【0059】
なお、制御装置9は、アナログ回路として実現してもよいし、デジタル回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御装置9として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0060】
次に、図3および図4を参照して、制御装置9による個別制御状態と一括制御状態の切り替え処理(以下では、「制御状態切替処理」とする。)について説明する。
【0061】
図3は、制御装置9が行う制御状態切替処理を説明するためのフローチャートである。当該処理は、所定のタイミングで実施される。
【0062】
まず、合計電力値Wが所定値W0以上であるか否かが判別される(S1)。W≧W0の場合(S1:YES)、個別制御状態であるか否かが判別される(S2)。個別制御状態の場合(S2:YES)、制御状態を切り替える必要がないので、制御状態切替処理が終了される。一方、一括制御状態の場合(S2:NO)、個別制御状態に切り替えるために、ステップS3〜S8の処理が行われる。
【0063】
ステップS3では、DC/DCコンバータ42,43の運転が開始される(S3)。具体的には、PWM信号生成部98b,98cがPWM信号P2,P3の生成を開始し、生成したPWM信号P2,P3をそれぞれDC/DCコンバータ42,43に出力する。DC/DCコンバータ42,43はPWM信号P2,P3の入力が開始されたことにより運転を開始する。なお、このときのDC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧は、それぞれ電圧センサ82,83から入力される電圧値V2,V3になっているので、DC/DCコンバータ42,43は制御を行うことなく運転される。
【0064】
次に、電圧センサ82,83からそれぞれ入力される電圧値V2,V3が目標電圧値V1*に一致したか否かが判別される(S4)。一致しない場合(S4:NO)、ステップS4に戻って再度判別される。すなわち、一致するまで判別が継続される。一致した場合(S4:YES)、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧が電圧値V2,V3から目標電圧値V1*に切り替えられる(S5)。また、接続装置3が並列状態から独立状態に切り替えられる(S6)。具体的には、接続装置3を並列状態から独立状態に切り替える切替信号を出力する。
【0065】
次に、所定時間が経過したか否かが判別される(S7)。未経過の場合(S7:NO)、ステップS7に戻って、所定時間が経過するまで判別が継続される。経過した場合(S7:YES)、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧が目標電圧値V1*からそれぞれ目標電圧値V2*,V3*に切り替えられ(S8)、制御状態切替処理が終了される。
【0066】
ステップS1においてW<W0の場合(S1:NO)、一括制御状態であるか否かが判別される(S9)。一括制御状態の場合(S9:YES)、制御状態を切り替える必要がないので、制御状態切替処理が終了される。一方、個別制御状態の場合(S9:NO)、一括制御状態に切り替えるために、ステップS10〜S16の処理が行われる。
【0067】
ステップS10では、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧が目標電圧値V2*,V3*から目標電圧値V1*に切り替えられる(S10)。次に、電圧センサ82,83からそれぞれ入力される電圧値V2,V3が目標電圧値V1*に一致したか否かが判別される(S11)。一致しない場合(S11:NO)、ステップS11に戻って再度判別される。すなわち、一致するまで判別が継続される。一致した場合(S11:YES)、接続装置3が独立状態から並列状態に切り替えられる(S12)。具体的には、接続装置3を独立状態から並列状態に切り替える切替信号を出力する。
【0068】
次に、所定時間が経過したか否かが判別される(S13)。未経過の場合(S13:NO)、ステップS13に戻って、所定時間が経過するまで判別が継続される。経過した場合(S13:YES)、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧が目標電圧値V1*からそれぞれ電圧値V2,V3に切り替えられる(S14)。
【0069】
次に、電流センサ72,73からそれぞれ入力される電流値I2,I3がともにゼロになったか否かが判別される(S15)。少なくとも一方がゼロになっていない場合(S15:NO)、ステップS15に戻って再度判別される。すなわち、ともにゼロになるまで判別が継続される。ともにゼロになった場合(S15:YES)、DC/DCコンバータ42,43の運転が停止され(S16)、制御状態切替処理が終了される。DC/DCコンバータ42,43の運転の停止は、具体的には、PWM信号生成部98b,98cがPWM信号P2,P3の生成を停止することで行われる。DC/DCコンバータ42,43は、PWM信号P2,P3の入力が停止されたことにより運転を停止する。
【0070】
図4は、制御状態切替処理を説明するためのタイムチャートである。同図(a)は、日出(時刻t=t0)から日没(t=t11)までの太陽電池モジュールの出力電力を示す図であり、破線が合計電力値Wを示し、実線がDC/DCコンバータ41に入力される電力を示している。同図(b)はDC/DCコンバータ41の運転状態を示し、同図(c)はDC/DCコンバータ42,43の運転状態を示している。ともに、運転中は「ON」、停止中は「OFF」で示している。同図(d)はDC/DCコンバータ42の制御目標電圧の切り替えを示し、同図(e)はDC/DCコンバータ42の入力電圧の電圧値(すなわち、電圧センサ82が検出した電圧値)V2(以下では、「入力電圧値V2」とする。)を示している。なお、DC/DCコンバータ43の制御目標電圧の切り替えおよび入力電圧値も同様となる。同図(f)は、接続装置3の状態を示している。
【0071】
日出(時刻t=t0)後、太陽電池モジュール21,22,23で生成される電力で系統連系インバータシステム1が運転可能になったとき(t=t1)、DC/DCコンバータ41が起動されている(同図(b)参照)。なお、前回の個別制御状態から一括制御状態への切り替え(例えば、前日の日没前の切り替え)により、接続装置3は並列状態になっている。DC/DCコンバータ41の起動後、DC/DCコンバータ42,43が起動されるまで(t=t1〜t2)は、太陽電池モジュール21,22,23の出力電力が一括されてDC/DCコンバータ41で制御される一括制御状態である。
【0072】
合計電力値(DC/DCコンバータ41に入力される電力)Wが増加して所定値W0以上になったとき(t=t2)、DC/DCコンバータ42,43が起動されている(同図(c)参照)。このときのDC/DCコンバータ42の制御目標電圧は、電圧センサ82から入力される電圧値V2になっている(同図(d)参照)。その後、DC/DCコンバータ42の入力電圧値V2が目標電圧値V1*に一致したとき(同図(e)t=t3参照)に、接続装置3が並列状態から独立状態に切り替えられ(同図(f)参照)、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧が電圧値V2から目標電圧値V1*に切り替えられている(同図(d)参照)。その後所定時間経過後(t=t4)にDC/DCコンバータ42の制御目標電圧が目標電圧値V1*から目標電圧値V2*に切り替えられている(同図(d)参照)。これにより、各太陽電池モジュール21,22,23の出力電力がそれぞれDC/DCコンバータ41,42,43で制御される個別制御状態となる。
【0073】
日没近くになって合計電力値Wが減少して所定値W0未満になったとき(t=t6)、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧が目標電圧値V2*から目標電圧値V1*に切り替えられている(同図(d)参照)。その後、DC/DCコンバータ42の入力電圧値V2が目標電圧値V1*に一致したとき(同図(e)t=t7参照)に、接続装置3が独立状態から並列状態に切り替えられている(同図(f)参照)。その後所定時間経過後(t=t8)にDC/DCコンバータ42の制御目標電圧が目標電圧値V1*から電圧値V2に切り替えられている(同図(d)参照)。これにより、DC/DCコンバータ42,43の入力電流値I2,I3が減少するので、DC/DCコンバータ42,43に入力される電力が減少している(同図(a)t=t8〜t9参照)。入力電流値I2,I3がともにゼロになったとき(t=t9)に、DC/DCコンバータ42,43が停止されている(同図(c)参照)。
【0074】
その後、太陽電池モジュール21,22,23で生成される電力では系統連系インバータシステム1が運転不能になったとき(t=t10)、DC/DCコンバータ41が停止されている(同図(b)参照)。DC/DCコンバータ42,43が停止されてからDC/DCコンバータ41が停止されるまで(t=t9〜t10)は、太陽電池モジュール21,22,23の出力電力が一括されてDC/DCコンバータ41で制御される一括制御状態である。
【0075】
本実施形態においては、一括制御状態から個別制御状態に切り替えるときの過渡状態(図4におけるt=t2〜t4)、および、個別制御状態から一括制御状態に切り替えるときの過渡状態(図4におけるt=t6〜t9)におけるDC/DCコンバータ42の制御目標電圧を、電圧センサ82から入力される電圧値V2または目標電圧値V1*としている(同図(d)参照)。制御目標電圧を目標電圧値V1*としている間、DC/DCコンバータ42はDC/DCコンバータ41と同じ制御を行う。また、制御目標電圧を電圧値V2としている間、DC/DCコンバータ42は制御を行っていない。したがって、DC/DCコンバータ41とDC/DCコンバータ42による制御の干渉が生じない。また、過渡時のDC/DCコンバータ43の制御目標電圧は、電圧センサ83から入力される電圧値V3または目標電圧値V1*とされるので、DC/DCコンバータ43とDC/DCコンバータ41およびDC/DCコンバータ42による制御の干渉も生じない。これにより、個別制御状態と一括制御状態とを切り替えるときの、各DC/DCコンバータによる制御の干渉を防止することができる。
【0076】
また、本実施形態においては、DC/DCコンバータ42,43の制御目標電圧を目標電圧値V1*から電圧値V2,V3に切り替えて、DC/DCコンバータ42,43の入力電流値I2,I3がともにゼロになってからDC/DCコンバータ42,43の運転を停止している。したがって、DC/DCコンバータ42,43の運転停止によってDC/DCコンバータ41に入力される電力は変化しない。したがって、DC/DCコンバータ41による最大電力点追従制御において追従していた最大電力点が急変するという問題は生じない。
【0077】
なお、上記実施形態においては、DC/DCコンバータ42の入力電圧値V2が目標電圧値V1*に一致したとき(図4(e)t=t3参照)に、接続装置3が並列状態から独立状態に切り替えられ(同図(f)参照)、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧が電圧値V2から目標電圧値V1*に切り替えられる(同図(d)参照)場合について説明したが、これに限られない。接続装置3の独立状態への切り替えのタイミング、および、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧の目標電圧値V1*への切り替えのタイミングは、それぞれ、入力電圧値V2が目標電圧値V1*に一致したときから制御目標電圧を目標電圧値V2*に切り替えるまでの間(t=t3〜t4)とすればよい。また、接続装置3の独立状態への切り替えのタイミング以後であれば、DC/DCコンバータ42の制御目標電圧を電圧値V2から目標電圧値V2*に直接(目標電圧値V1*に切り替えることなく)切り替えるようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、DC/DCコンバータ42の入力電圧値V2が目標電圧値V1*に一致したとき(図4(e)t=t7参照)に、接続装置3が独立状態から並列状態に切り替えられる場合(同図(f)参照)について説明したが、これに限られない。接続装置3の並列状態への切り替えのタイミングは、入力電圧値V2が目標電圧値V1*に一致したときから制御目標電圧を電圧値V2に切り替えるまでの間(t=t7〜t8)とすればよい。また、制御目標電圧の目標電圧値V1*から電圧値V2への切り替えのタイミングは、入力電圧値V2が目標電圧値V1*に一致したとき(t=t7)以降であればよい。
【0079】
また、上記実施形態においては、入力電流値I2がゼロになったとき(t=t9)に、DC/DCコンバータ42の運転を停止する場合(同図(c)参照)について説明したが、これに限られない。DC/DCコンバータ42を停止するタイミングは、入力電流値I2がゼロになったとき(t=t9)以降であればよい。また、DC/DCコンバータ42を停止するタイミングを入力電流値I2がゼロになる前とした場合でも、個別制御状態から一括制御状態に切り替えるときの制御の干渉を防止できるという効果を奏することができる。
【0080】
上記実施形態においては、個別制御状態と一括制御状態とを切り替えるためのしきい値を1つの所定値W0としたが、これに限られない。例えば、一括制御状態から個別制御状態に切り替えるためのしきい値W1と、個別制御状態から一括制御状態に切り替えるためのしきい値W2(W1>W2)とを設定し、ヒステリシスを設けることでチャタリングを抑制するようにしてもよい。また、合計電力値をしきい値と比較する場合に限られず、1つの太陽電池モジュール(例えば、太陽電池モジュール21)の出力電力をしきい値と比較するようにしてもよい。
【0081】
上記実施形態においては、太陽電池モジュールおよびDC/DCコンバータが3台の場合について説明したが、これに限られない。本発明は、太陽電池モジュールおよびDC/DCコンバータが2台の場合でも、4台以上の場合でも適用することができる。また、個別制御状態と一括制御状態とを段階的に切り替える場合でも、本発明を適用することができる。例えば、図1に示す系統連系インバータシステム1において、合計電力値が第1の所定値以上になったときにDC/DCコンバータ43を起動して電磁接触器32を開いて、その後、太陽電池モジュール21の出力電力と太陽電池モジュール22の出力電力の合計値が第2の所定値以上になったときにDC/DCコンバータ42を起動して電磁接触器31を開く場合(太陽電池モジュール21の出力電力と太陽電池モジュール22の出力電力の合計値が第2の所定値未満になったときに電磁接触器31を閉じてDC/DCコンバータ42を停止し、その後、合計電力値が第1の所定値未満になったときに電磁接触器32を閉じてDC/DCコンバータ43を停止)でも、本発明を適用することができる。
【0082】
上記実施形態においては、3台のDC/DCコンバータ41,42,43が出力する電力を1台のインバータ5に入力する場合について説明したが、これに限られない。例えば、図5に示すように、3台のインバータ51,52,53を設けて、各DC/DCコンバータ41,42,43が出力する電力をそれぞれインバータ51,52,53に入力する場合にも、本発明を適用することができる。この場合、DC/DCコンバータ42,43を起動するときにインバータ52,53も起動するようにし、DC/DCコンバータ42,43の運転を停止するときにインバータ52,53の運転も停止するようにすればよい。なお、図5に示す系統連系インバータシステム1’においては、制御装置9がインバータ51,52,53の制御装置も兼ねている。また、図5においては、電流センサ71,72,73および電圧センサ81,82,83の記載を省略している。
【0083】
また、図6に示すように、DC/DCコンバータ41,42,43を設けずに3台のインバータ51,52,53を設けて、各インバータ51,52,53で太陽電池モジュール21,22,23の出力電力を最大電力点追従制御するような場合にも、本発明を適用することができる。この場合、制御装置9が生成するPWM信号P1,P2,P3をそれぞれインバータ51,52,53に入力して制御するようにすればよい。なお、図6に示す系統連系インバータシステム1”においては、DC/DCコンバータの代わりに電圧変換するための変圧器10が設けられている。また、図6においては、電流センサ71,72,73および電圧センサ81,82,83の記載を省略している。
【0084】
また、上記実施形態においては、電源装置が太陽電池モジュールの場合について説明したが、これに限られない。例えば、電源装置が燃料電池であってもよいし、風力発電装置、水車などの水力発電装置、地熱発電装置、波力発電装置などにより発電された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。自然条件などの人為的に変更することができない条件により発電量が変動する電源装置において、本発明は特に有効である。
【0085】
本発明に係る電力変換装置の制御装置および系統連系インバータシステムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電力変換装置の制御装置および系統連系インバータシステムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0086】
1 系統連系インバータシステム
21 太陽電池モジュール(第1の電源装置)
22,23 太陽電池モジュール(第2の電源装置)
3 接続装置
41 DC/DCコンバータ(第1の電力変換装置)
42,43 DC/DCコンバータ(第2の電力変換装置)
5 インバータ
6 電力系統
71,72,73 電流センサ
81,82,83 電圧センサ
9 制御装置
91 合計電力算出部(算出手段)
92 合計電力比較部(判別手段)
93 切替判断部
94,95 切替部
96 電流判断部
97a,97b,97c PI制御部
98a,98b,98c PWM信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源装置と、前記第1の電源装置の出力端に接続された第1の電力変換装置と、第2の電源装置と、前記第2の電源装置の出力端に接続された第2の電力変換装置と、前記第1の電源装置の出力端と前記第2の電源装置の出力端とを互いに接続しない独立状態と前記第1の電源装置の出力端と前記第2の電源装置の出力端とを互いに接続する並列状態のいずれかの状態となる接続装置とを備える系統連系インバータシステムに適用され、前記第1の電源装置および第2の電源装置によって出力される電力が最大になるように前記各電力変換装置の運転を制御する制御装置であって、
前記接続装置が前記並列状態となっているときに前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置を運転する場合には、前記第2の電力変換装置による制御を行わないか、前記第1の電力変換装置の制御目標電圧を前記第2の電力変換装置の制御目標電圧として設定することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1の電力変換装置のみが運転され、前記接続装置が前記並列状態となっている一括制御状態から、前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置が運転され、前記接続装置が前記独立状態となっている個別制御状態に切り替える場合に、前記第2の電力変換装置による制御を行わずに前記第2の電力変換装置の運転を開始し、並列接続されている前記第1の電源装置および前記第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になった以後に前記第1の電力変換装置の制御目標電圧を前記第2の電力変換装置の制御目標電圧として設定して前記第2の電力変換装置による制御を開始し、
前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える場合に、前記第1の電力変換装置の制御目標電圧を前記第2の電力変換装置の制御目標電圧として設定して前記第2の電力変換装置による制御を行い、前記第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になった以後に前記第2の電力変換装置による制御を中止する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記一括制御状態から前記個別制御状態に切り替える場合に、前記並列接続されている第1の電源装置および第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になったときに前記接続装置を前記独立状態に切り替える、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える場合に、前記第2の電源装置の出力電圧が前記第1の電力変換装置の制御目標電圧になったときに前記接続装置を前記並列状態に切り替える、請求項2または3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える場合に、前記第2の電力変換装置による制御を行わないようにしてから前記第2の電力変換装置に流れる電流がゼロになったときに、前記第2の電力変換装置の運転を停止する、請求項2ないし4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1の電源装置および第2の電源装置の出力電力の合計値を算出する算出手段と、
前記合計値が所定値以上であるか否かを判別する判別手段と、
をさらに備え、
前記一括制御状態のときに前記判別手段によって前記合計値が前記所定値以上であると判別された場合は、前記一括制御状態から前記個別制御状態に切り替え、前記個別制御状態のときに前記判別手段によって前記合計値が前記所定値未満であると判別された場合は、前記個別制御状態から前記一括制御状態に切り替える、
請求項2ないし5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置はDC/DCコンバータを備えている、請求項1ないし6のいずれかに記載の制御装置。
【請求項8】
前記第1の電力変換装置および第2の電力変換装置はインバータを備えている、請求項1ないし6のいずれかに記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1の電源装置および第2の電源装置は太陽電池を備えている、請求項1ないし8のいずれかに記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1の電源装置と、前記第1の電力変換装置と、前記第2の電源装置と、前記第2の電力変換装置と、前記接続装置と、前記請求項1ないし9のいずれかに記載の制御装置とを備える系統連系インバータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−19646(P2012−19646A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156532(P2010−156532)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】