説明

電力変換装置

【課題】 独立して並列運転することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】 第1入力端子12と第1出力端子16との間に直列に接続されたコイルL_chopと、コイルL_chopの出力端から第1出力端子16へ順方向に接続されたダイオードD_chopと、第2入力端子14とコイルL_chopの出力端との間の接続を切替えるスイッチSw_chopと、スイッチSw_chopのオンおよびオフを制御する信号を出力する制御回路CTRLとを備え、制御回路CTRLは、垂下特性を模擬した垂下ゲインを乗じた値が引かれた入力信号に基づいて、系統電圧のゼロクロス検出信号に基づく周期で最大電力点追従するMPPT制御部32と、MPPT制御部32から出力された基準と入力信号との差分がゼロになるよう、電圧指令値を出力する制御部34,36と、電圧指令値と三角波電圧とに基づいてPWM信号を出力するPWMコンパレータ38と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電時に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを利用した発電設備を設置し、電力供給システムの低炭素化が検討されている。太陽光発電システム、風力発電システム、燃料電池システムなど、分散型電源が電力系統と連系して電力を供給することが検討されている。分散型電源と電力系統とが連系する場合、分散型電源から出力された電力を系統と同期するように変換する電力変換装置が必要となる。
【0003】
この電力変換装置は、分散型電源の容量と同じ容量として構成される。分散型電源が設置される場所の制約や、電力変換装置の単機容量が分散型電源の容量と同じにならない場合には、複数の電力変換装置を並列接続して所定の容量としている。電力変換装置の並列運転では、通信機能を用いて基準となるマスター機からスレーブ機に制御タイミングや指令値を送信して、マスター機とスレーブ機とを同期して運転する方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A Novel Droop Method for Converter Parallel Operation, IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL.17, NO. 1, JANUARY 2002, pp25-32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の電力変換装置を並列接続する場合、各電力変換装置が通信機能を用いて送受信される制御タイミングや指令値により同期を取ると、電力変換装置に通信機能を搭載することにより構成が複雑となりコストの増加に繋がっていた。また、マスター機の故障した場合には、電力変換装置同士で同期を取ることができなくなり、さらには全体のシステムが運転停止する可能性があった。
【0006】
また、従来、複数の電力変換装置に流れる電流の大きさのバランスを取るために、入力端子には抵抗器を直列に取り付ける場合があった。このように抵抗器を取り付けた場合、取り付ける抵抗器の抵抗の大きさにより精度を向上させることが可能であるが、抵抗の値が大きくなる程、電力の損失が大きくなるため発電電力を効率よく使用することが困難であった。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みて成されたものであって、独立して並列運転することが可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による電力変換装置は、直流電源の正極と接続される第1入力端子と、前記直流電源の負極と接続される第2入力端子と、前記第1入力端子と電気的に接続された第1出力端子と、前記第2入力端子と電気的に接続された第2出力端子と、前記第1入力端子と前記第1出力端子との間に直列に接続されたコイルと、前記コイルの出力端から第1出力端子へ順方向に接続されたダイオードと、前記第2入力端子と前記コイルの出力端との間の接続を切替えるスイッチと、前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に接続されたコンデンサと、前記スイッチのオンおよびオフを制御する信号を出力する制御回路と、前記第1出力端子と前記第2出力端子とから出力された直流電力を交流電力に変換して出力するDC−ACインバータ部と、を備え、前記制御回路は、垂下特性を模擬した垂下ゲインを乗じた値が引かれた入力信号に基づいて、系統電圧のゼロクロス検出信号に基づく周期で最大電力点追従するMPPT制御部と、前記MPPT制御部から出力された基準と入力信号との差分がゼロになるよう、電圧指令値を出力する制御部と、前記電圧指令値と三角波電圧とに基づいてPWM波を出力するPWMコンパレータと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る電力変換装置を並列接続した例を示す図である。
【図2】図1に示す電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
【図3】第1実施形態に係る電力変換装置の、DC−DCコンバータ部の制御回路の一構成例を説明するためのブロック図である。
【図4】山登り法と呼ばれるMPPT(Maximum Power Point Tracker)制御の例について説明するフローチャートである。
【図5】MPPT制御が同期するMPPTタイミング信号の一例について説明するための図である。
【図6】MPPT制御が同期するMPPTタイミング信号の他の例について説明するための図である。
【図7】第2実施形態に係る電力変換装置の、DC−DCコンバータ部の制御回路の一構成例を説明するためのブロック図である。
【図8】第3実施形態に係る電力変換装置の、DC−DCコンバータ部の制御回路の一構成例を説明するためのブロック図である。
【図9】第4実施形態に係る電力変換装置の、DC−DCコンバータ部の制御回路の一構成例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照して説明する。
図1に、第1実施形態に係る電力変換装置を並列に接続して用いる例を示す。本実施形態に係る電力変換装置は分散型電源の電力変換装置である。図1ではN個の電力変換装置PCS_1〜PCS_Nが並列に接続されている。
【0011】
N個の電力変換装置PCS_1〜PCS_Nには、直流電源として並列に接続されたN個の太陽電池アレイPV_1〜PV_Nからの直流電力が入力されている。各太陽電池アレイPVの出力端子には、逆流を防止するためのダイオードD_1〜D_Nが接続されている。N個の電力変換装置PCS_1〜PCS_Nの出力端子は一括して電力系統に接続されている。
【0012】
図2に、電力変換装置PCSの一構成例を示す。電力変換装置PCSは、直流電力が供給されるDC−DCコンバータ(チョッパ)部10と、直流電力を交流電力に変換して出力するDC−ACインバータ部20とを備えている。
【0013】
DC−DCコンバータ部10は、電力系統に連系して電力変換を行なうために分散型電源の直流入力電圧を昇圧して出力するブーストコンバータである。DC−ACインバータ部20は、直流入力電圧と直流入力電流とを3相の交流電圧と交流電流に変換して出力する。
【0014】
DC−DCコンバータ部10は、太陽電池アレイPV_1〜PV_Nの正極出力端子と電気的に接続された第1入力端子12と、負極出力端子と電気的に接続された第2入力端子14と、第1入力端子12と電気的に接続された第1出力端子16と、第2入力端子14と電気的に接続された第2出力端子18と、第1入力端子12と第1出力端子16との間に直列に接続されたコイルと、コイルの出力端から第1出力端子16へ順方向に接続されたダイオードと、第2入力端子14とコイルの出力端との間の接続を切替えるスイッチと、第1出力端子16と第2出力端子18との間に接続されたコンデンサと、スイッチのオンおよびオフを制御する信号を出力する制御回路と、を備えている。
【0015】
第1入力端子12と第2入力端子14との間はコンデンサC_inを介して接続されている。第1入力端子12は、チョークコイルL_chopとダイオードD_chopとを介して第1出力端子16と接続され、第1出力端子16はDC_ACインバータ部20の第3入力端子22と電気的に接続されている。ダイオードD_chopはチョークコイルL_chopから第1出力端子16へ順方向となるように接続されている。
【0016】
第2入力端子14と第2出力端子18との間の配線は、ダイオードD_chopの入力端(チョークコイルL_chopの出力端)とスイッチSw_chopを介して接続され、さらに、コンデンサC_linkを介してダイオードD_chopの出力端と接続されている。第2出力端子18は、DC_ACインバータ部20の第4入力端子24と電気的に接続されている。
【0017】
スイッチSw_chopはソース端子、ドレイン端子、およびドレイン端子を備え、ドレイン端子に印加される信号により、ソース端子とドレイン端子との間の接続が制御される。DC−DCコンバータ部10は、スイッチSw_chopのゲート端子電位を制御するPWM信号を出力する制御回路を備えている。
【0018】
スイッチSw_chopが導通しているとき(オンのとき)には第1入力端子12からチョークコイルL_chopを介して第2入力端子14へ電流が流れる。スイッチSw_chopが導通していないとき(オフのとき)には、第1入力端子12からチョークコイルL_chopを介して第1出力端子16へ電流が流れる。
【0019】
また、スイッチSw_chopのソース電極とドレイン電極とが導通しているとき(オンのとき)には、太陽電池アレイPV_1〜PV_Nから流れ込む電流によりチョークコイルL_chopにエネルギーが蓄えられ、スイッチSw_chopのソース電極とドレイン電極とが導通していないとき(オフのとき)には、チョークコイルL_chopに蓄えられたエネルギーが放出され、太陽電池アレイPV_1〜PV_Nから入力される電圧に加算されてDC−ACインバータ部20へ出力される。
【0020】
DC−ACインバータ部20は、2つの入力端子22、24と、3つの出力端子26、27、28とを備えている。第3入力端子22と第3出力端子26との間にはスイッチSw1が介在している。第3入力端子22と第4出力端子27との間にはスイッチSw3が介在している。第3入力端子22と第5出力端子28との間にはスイッチSw5が介在している。第4入力端子24と第3出力端子26との間にはスイッチSw2が介在している。第4入力端子24と第4出力端子27との間にはスイッチSw4が介在している。第4入力端子24と第5出力端子28との間にはスイッチSw6が介在している。
【0021】
図3に、DC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート端子電位を制御する制御回路の制御ブロックの一例を示す。図3に示す制御ブロックは、直流電圧(コンバータ入力電圧Vconv−k1×Iconv)とコンバータ入力電流Iconvとが入力されるMPPT制御部32と、PI制御を行なう電圧制御部(AVR:Automatic Voltage Regulator)34およびPI制御を行なう電流制御部(ACR:Automatic Current Regulator)36を含む制御部CTRLと、PWMコンパレータ38と、を備えている。
【0022】
MPPT制御部32にはMPPTタイミング信号MPPT_syncがMPPT制御の動作を同期するために入力される。なお、コンバータ入力電圧Vconvは太陽電池アレイPV_1〜PV_Nの出力電圧であり、コンバータ入力電流Iconvは太陽電池アレイPV_1〜PV_Nの出力電流である。
【0023】
図4に、山登り法と呼ばれるMPPT制御の一例を説明するフローチャートを示す。山登り法は、分散型電源である太陽光発電システムにおいて一般的に使われている方法であり、開放電圧を初期値として太陽電池アレイの出力電力が最大となるように基準電圧を探索する方法である。
【0024】
まず、入力された直流電圧とコンバータ入力電流Iconvとを検出してMPPT周期毎の直流電圧誤差ΔV(=V(k)−V(k−1))と直流電力誤差ΔP(=P(k)−P(k−1))とを算出する(ステップST1)。
【0025】
続いて、直流電力誤差ΔPがゼロか否か判断し(ステップST2)、直流電力誤差ΔPがゼロである場合には電圧変動なしとする。直流電力誤差ΔPがゼロでない場合には、さらに直流電力誤差ΔPがゼロより大きいか否か判断する(ステップST3)。
【0026】
直流電力誤差ΔPがゼロより大きい場合には直流電圧誤差ΔVがゼロより大きいか否かさらに判断する(ステップST4)。直流電圧誤差ΔVがゼロより大きい場合には電圧を増加する。直流電圧誤差ΔVがゼロ以下である場合には、電圧を減少する。
【0027】
ステップST3で直流電力誤差ΔPがゼロ以下である場合には直流電圧誤差ΔVがゼロより大きいか否かさらに判断する(ステップST5)。直流電圧誤差ΔVがゼロより大きい場合には電圧を減少する。直流電圧誤差ΔVがゼロ以下である場合には電圧を増加する。
【0028】
MPPT制御部32は、上記のようにコンバータ入力電圧Vconvとコンバータ入力電流IconvをセンシングしてMPPT周期毎の直流電圧誤差ΔVと直流電力誤差ΔPを出力し、その大きさの大小によって基準電圧を増加、減少、または、変動無しとし、判断結果に基づく基準電圧Vconvを出力する。
【0029】
図5に、上記MPPT制御を行なうMPPT周期の基準となるMPPTタイミング信号MPPT_syncの一例について説明する図を示す。本実施形態では、電力系統の系統電圧を検出し、この系統電圧がゼロとなるタイミング(ゼロクロス)を検出して、ゼロクロスから所定期間ハイレベル(ON)となるパルスを生成して、MPPTタイミング信号MPPT_syncとして使用する。
【0030】
このように、電力系統の系統電圧と同期する信号をMPPTタイミング信号MPPT_syncとして採用することにより、複数の電力変換装置を並列に接続した場合でも、MPPT制御部32が同期して動作することが可能となる。したがって、電力変換装置に通信機能を搭載する必要がなくなり構成が複雑になることを回避することができるとともに、個々の電力変換装置が独立して動作することが可能となる。
【0031】
図6に、MPPT制御を行なうMPPT周期の基準となるMPPTタイミング信号MPPT_syncの他の例について説明する図を示す。図6に示す場合では、信号発生器によりMPPTタイミング信号MPPT_syncとなるパルスを生成している。
【0032】
信号発生器は、並列接続された複数の電力変換装置PCS_1〜PCS_Nの1つに搭載され、他の電力変換装置と補助信号線(図示せず)により接続されている。例えば停電等、電力系統の不具合により電力系統から系統電圧を検出することができなくなった場合には、信号発生器により生成されたパルスをMPPTタイミング信号MPPT_syncとして用いる。
【0033】
このように、信号発生器によるMPPTタイミング信号MPPT_syncを補助的に使用可能とすることによって、電力系統に不具合があった場合であっても電力変換装置PCS_1〜PCS_Nを停止することなく運転を継続することが可能となる。なお、この場合に電力変換装置PCS_1〜PCS_N間に接続される補助信号線は、通信を行なう必要が無いため複雑な構成を必要としない。したがって、信号発生器を搭載した電力変換装置から他の電力変換装置へMPPTタイミング信号MPPT_syncを送信する場合には、電力変換装置の構成を複雑にすることなく、コストを上昇させることもない。
【0034】
MPPT制御部32に入力される直流電圧は、コンバータ入力電流Iconvに抵抗相当値(垂下ゲイン)k1を乗じた値をコンバータ入力電圧Vconvから引いた直流電圧である。抵抗相当値k1は、電力変換装置の入力端に直列に接続される抵抗を模擬するものである。
【0035】
すなわち、このようにコンバータ入力電流Iconvに抵抗相当値k1を乗じた値をコンバータ入力電圧Vconvから引いた直流電圧をMPPT制御部32に入力することにより、制御的に電力変換装置の入力端に抵抗器を接続したものと同等となり、実際に抵抗器を接続する必要がなくなる。
【0036】
したがって、電力変換装置の入力端に接続される抵抗器により電力損失が生じることを回避することができ、太陽電池アレイでの発電電力をより効率よく利用することが可能となるとともに、実際に抵抗器を取り付けた場合と同様に個々の電力変換装置に流れる電流のバランスを調整することが可能となる。なお、抵抗相当値k1は、個々の電力変換装置について異なる値を設定することが可能である。
【0037】
MPPT制御部32から出力された基準電圧Vconvは、MPPT制御部32に入力された直流電圧(Vconv−k1×Iconv)を減じて電圧制御部34に入力される。
【0038】
電圧制御部34は、入力された電圧差分値(Vconv−(Vconv−k1×Iconv))に基づいて、この差分がゼロとなるような基準電流Iconvを出力する。電圧制御部34から出力された基準電流Iconvは、コンバータ入力電流Iconvを減じて電流制御部36に入力される。
【0039】
電流制御部36は、入力された差分値(Iconv−Iconv)に基づいて、この差分がゼロとなるように制御し、PWMコンパレータ38の電圧指令値Vpwm_refを出力する。
【0040】
PWMコンパレータ38は、電流制御部36から出力された電圧指令値Vpwm_refと三角波電圧Vtriとを比較して、所定のデューティ比のPWM信号Vpwmを出力する。PWM信号Vpwmは図1に示すDC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート電極に印加される。
【0041】
すなわち、PWM信号Vpwmのデューティ比を調整することにより、スイッチSW_chopのオン期間を調整することができ、DC−DCコンバータ部10で昇圧してDC−ACインバータ部20へ出力される直流電圧の値を調整することができる。
【0042】
上記のように、本実施形態に係る電力変換装置によれば、独立して並列運転することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【0043】
次に、第2実施形態に係る電力変換装置について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において上述の第1実施形態に係る電力変換装置と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態に係る電力変換装置は、DC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート端子電位を制御する制御ブロックが上述の第1実施形態と異なっている。
【0044】
図7に本実施形態に係る電力変換装置において、DC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート端子電位を制御する制御ブロックの一例を示す。図7に示す制御ブロックは、直流電流(コンバータ入力電流Iconv−Vconv/k1)とコンバータ入力電圧Vconvとが入力されるMPPT制御部72と、PI制御を行なう電流制御部(ACR:Automatic Current Regulator)74を含む制御部CTRLと、PWMコンパレータ76と、を備えている。
【0045】
MPPT制御部72には、MPPTタイミング信号MPPT_syncが入力されている。本実施形態で採用されるMPPTタイミング信号MPPT_syncは、上述の第1実施形態と同様に、系統電圧のゼロクロス信号から生成される。
【0046】
したがって上述の第1実施形態と同様に、電力系統の系統電圧と同期する信号をMPPTタイミング信号MPPT_syncとして採用することにより、複数の電力変換装置を並列に接続した場合でも、MPPT制御部72が同期して動作することが可能となる。したがって、電力変換装置に通信機能を搭載する必要がなくなり構成が複雑になることを回避することができるとともに、個々の電力変換装置が独立して動作することが可能となる。
【0047】
さらに、電力系統の不具合等により系統電圧を取得できない場合のために、信号発生器によりMPPTタイミング信号MPPT_syncを生成可能に構成してもよい。その場合には、上述の第1実施形態の場合と同様に、複数の電力変換装置を補助信号線で接続し、信号発生器から出力されるMPPTタイミング信号MPPT_syncを並列接続された全ての電力変換装置に入力する。
【0048】
MPPT制御部72は、基準電流Iconvを出力する。すなわち、本実施形態では、MPPT周期で実行するMPPT制御において、直流電流誤差ΔI(=I(k)−I(k−1))と直流電力誤差ΔPとを算出し、直流電力誤差ΔPがゼロである場合には電流変動なしとする。直流電力誤差ΔPがゼロよりも大きい場合には、さらに直流電流誤差ΔIがゼロよりも大きいか否かを判断し、直流電流誤差ΔIがゼロよりも大きい場合には電流を増加し、直流電流誤差ΔIがゼロ以下の場合は、電流を減少する。直流電力誤差ΔPがゼロ以下の場合には、さらに直流電流誤差ΔIがゼロよりも大きいか否か判断し、直流電流誤差ΔIがゼロよりも大きい場合には電流を減少し、直流電流誤差ΔIがゼロ以下である場合には電流を増加する。
【0049】
MPPT制御部72に入力される直流電流は、コンバータ入力電圧Vconvを抵抗相当値k1で割った値をコンバータ入力電流Iconvから引いた直流電流である。抵抗相当値k1は、電力変換装置の入力端に直列に接続される抵抗を模擬するものである。
【0050】
すなわち、このようにコンバータ入力電圧Vconvを抵抗相当値k1で割った値をコンバータ入力電流Iconvから引いた直流電流をMPPT制御部72に入力することにより、制御的に電力変換装置の入力端に抵抗器を接続したものと同等となり、実際に抵抗器を接続する必要がなくなる。
【0051】
したがって、電力変換装置の入力端に接続される抵抗器により電力損失が生じることを回避することができ、太陽電池アレイでの発電電力をより効率よく利用することが可能となるとともに、実際に抵抗器を取り付けた場合と同様に個々の電力変換装置に流れる電流のバランスを調整することが可能となる。
【0052】
MPPT制御部72から出力された基準電流Iconvは、MPPT制御部72に入力された直流電流(Iconv−Vconv/k1)を減じて電流制御部74に入力される。
【0053】
電流制御部74は、入力された差分値(Iconv−(Iconv−Vconv/k1))に基づいて、この差分値がゼロとなるように制御し、PWMコンパレータ76の電圧指令値Vpwm_refを出力する。
【0054】
PWMコンパレータ76は、電流制御部74から出力された電圧指令値Vpwm_refと三角波電圧Vtriとを比較して、所定のデューティ比のPWM信号Vpwmを出力する。PWM信号Vpwmは図1に示すDC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート電極に印加される。
【0055】
すなわち、PWM信号Vpwmのデューティ比を調整することにより、スイッチSW_chopのオン期間を調整することができ、DC−DCコンバータ部10で昇圧してDC−ACインバータ部20へ出力される直流電圧の値を調整することができる。
【0056】
上記のように、本実施形態に係る電力変換装置によれば、独立して並列運転することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【0057】
次に、第3実施形態に係る電力変換装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、DC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート端子電位を制御する制御ブロックが上述の第1実施形態と異なっている。
【0058】
図8に本実施形態においてDC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート端子電位を制御する制御ブロックの一例を示す。図8に示す制御ブロックは、コンバータ入力電圧Vconvとコンバータ入力電流Iconvとが入力されるMPPT制御部82と、PI制御を行なう電圧制御部(AVR:Automatic Voltage Regulator)84およびPI制御を行なう電流制御部(ACR:Automatic Current Regulator)86を含む制御部CTRLと、PWMコンパレータ88と、を備えている。
【0059】
MPPT制御部82の動作は上述の第1実施形態のMPPT制御部32と同様である。MPPT制御部82には、MPPTタイミング信号MPPT_syncが入力されている。本実施形態で採用されるMPPTタイミング信号MPPT_syncは、上述の第1実施形態と同様に、系統電圧のゼロクロス信号から生成される。
【0060】
したがって上述の第1実施形態と同様に、電力系統の系統電圧と同期する信号をMPPTタイミング信号MPPT_syncとして採用することにより、複数の電力変換装置を並列に接続した場合でも、MPPT制御部82が同期して動作することが可能となる。したがって、電力変換装置に通信機能を搭載する必要がなくなり構成が複雑になることを回避することができるとともに、個々の電力変換装置が独立して動作することが可能となる。
【0061】
さらに、電力系統の不具合等により系統電圧を取得できない場合のために、信号発生器によりMPPTタイミング信号MPPT_syncを生成可能に構成してもよい。その場合には、上述の第1実施形態の場合と同様に、複数の電力変換装置を補助信号線で接続し、信号発生器から出力されるMPPTタイミング信号MPPT_syncを並列接続された全ての電力変換装置に入力する。
【0062】
MPPT制御部82は基準電圧Vconvを出力する。MPPT制御部82から出力された基準電圧Vconvには、垂下制御のフィードバックコンバータ電圧値ΔVconvを加えて電圧Vconv_droop(=Vconv*+ΔVconv)とし、さらにコンバータ入力電圧Vconvを減じた電圧(Vconv_droop−Vconv)が電圧制御部84に入力される。
【0063】
垂下制御のフィードバックコンバータ電圧値ΔVconvは、電圧を変動させるMPPT制御より最大電力点よりも大きい場合にマイナス(−)、最大電力点よりも小さい場合にプラス(+)を示す符号k3と、基準電流Iconvに垂下ゲインk2を乗じた値とを乗じた値である。垂下ゲインk2は、電力変換装置の入力端に直列に接続される抵抗を模擬するものである。
【0064】
すなわち、このように基準電流Iconvに抵抗相当値k2を乗じた値を、基準電圧Vconvに加算あるいは減算することにより、制御的に電力変換装置の入力端に抵抗器を接続したものと同等となり、実際に抵抗器を接続する必要がなくなる。
【0065】
したがって、電力変換装置の入力端に接続される抵抗器により電力損失が生じることを回避することができ、太陽電池アレイでの発電電力をより効率よく利用することが可能となるとともに、実際に抵抗器を取り付けた場合と同様に個々の電力変換装置に流れる電流のバランスを調整することが可能となる。なお、抵抗相当値k2は、個々の電力変換装置について異なる値を設定することが可能である。
【0066】
電圧制御部84は、入力された垂下制御後の電圧Vconv*_droopとコンバータ入力電圧Vconvとの差分(Vconv*_droop−Vconv)がゼロになるような基準電流Iconvを出力する。基準電流Iconv*は、コンバータ入力電流Iconvと比較され、その差分(Iconv−Iconv)が電流制御部86に入力される。
【0067】
電流制御部86は、入力された差分(Iconv−Iconv)に基づいて、この差分値がゼロとなるように制御し、PWMコンパレータ88の電圧指令値Vpwm_refを出力する。
【0068】
PWMコンパレータ88は、電流制御部86から出力された電圧指令値Vpwm_refと三角波電圧Vtriとを比較して、所定のデューティ比のPWM信号Vpwmを出力する。PWM信号Vpwmは図1に示すDC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート電極に印加される。
【0069】
すなわち、PWM信号Vpwmのデューティ比を調整することにより、スイッチSW_chopのオン期間を調整することができ、DC−DCコンバータ部10で昇圧してDC−ACインバータ部20へ出力される直流電圧の値を調整することができる。
【0070】
上記のように、本実施形態に係る電力変換装置によれば、独立して並列運転することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【0071】
次に、第4実施形態に係る電力変換装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、DC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート端子電位を制御する制御ブロックが上述の第1実施形態と異なっている。
【0072】
図9に本実施形態においてDC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート端子電位を制御する制御ブロックの一例を示す。図9に示す制御ブロックは、コンバータ入力電圧Vconvとコンバータ入力電流Iconvとが入力されるMPPT制御部92と、PI制御を行なう電流制御部(ACR:Automatic Current Regulator)94を含む制御部CTRLと、PWMコンパレータ96と、を備えている。
【0073】
MPPT制御部92の動作は、上述の第2実施形態のMPPT制御部72と同様である。MPPT制御部92には、MPPTタイミング信号MPPT_syncが入力されている。本実施形態で採用されるMPPTタイミング信号MPPT_syncは、上述の第1実施形態と同様に、系統電圧のゼロクロス信号から生成される。
【0074】
したがって上述の第1実施形態と同様に、電力系統の系統電圧と同期する信号をMPPTタイミング信号MPPT_syncとして採用することにより、複数の電力変換装置を並列に接続した場合でも、MPPT制御部92が同期して動作することが可能となる。したがって、電力変換装置に通信機能を搭載する必要がなくなり構成が複雑になることを回避することができるとともに、個々の電力変換装置が独立して動作することが可能となる。
【0075】
さらに、電力系統の不具合等により系統電圧を取得できない場合のために、信号発生器によりMPPTタイミング信号MPPT_syncを生成可能に構成してもよい。その場合には、上述の第1実施形態の場合と同様に、複数の電力変換装置を補助信号線で接続し、信号発生器から出力されるMPPTタイミング信号MPPT_syncを並列接続された全ての電力変換装置に入力する。
【0076】
MPPT制御部92は、基準電流Iconvを出力する。MPPT制御部92から出力された基準電流Iconvには、垂下制御のフィードバックコンバータ電流値ΔIconvを加えて電流Iconv_droop(=Iconv*+ΔIconv)とし、さらにコンバータ入力電流Iconvを減じた電流(Iconv_droop−Iconv)が電流制御部94に入力される。
【0077】
垂下制御のフィードバックコンバータ電流値ΔIconvは、電流を変動させるMPPT制御より最大電力点よりも大きい場合にプラス(+)、小さい場合にマイナス(−)を示す符号k3と、電圧指令値Vpwm_refに垂下ゲイン1/k2とを乗じた値とを乗じて演算する。垂下ゲイン1/k2のk2は、電力変換装置の入力端に直列に接続される抵抗を模擬するものである。
【0078】
すなわち、このように電圧指令値Vpwm_refに垂下ゲイン1/k2を乗じた値を、基準電流Iconvに加算あるいは減算することにより、制御的に電力変換装置の入力端に抵抗器を接続したものと同等となり、実際に抵抗器を接続する必要がなくなる。
【0079】
したがって、電力変換装置の入力端に接続される抵抗器により電力損失が生じることを回避することができ、太陽電池アレイでの発電電力をより効率よく利用することが可能となるとともに、実際に抵抗器を取り付けた場合と同様に個々の電力変換装置に流れる電流のバランスを調整することが可能となる。なお、抵抗相当値k2は、個々の電力変換装置について異なる値を設定することが可能である。
【0080】
電流制御部94は、入力された垂下制御後の電流Iconv*_droopとコンバータ入力電流Iconvとの差分(Iconv*_droop−Iconv)に基づいて、差分がゼロになるように制御し、PWMコンパレータ96の電圧指令値Vpwm_refを出力する。
【0081】
PWMコンパレータ96は、電流制御部94から出力された電圧指令値Vpwm_refと三角波電圧Vtriとを比較して、所定のデューティ比のPWM信号Vpwmを出力する。PWM信号Vpwmは図1に示すDC−DCコンバータ部10のスイッチSw_chopのゲート電極に印加される。
【0082】
すなわち、PWM信号Vpwmのデューティ比を調整することにより、スイッチSW_chopのオン期間を調整することができ、DC−DCコンバータ部10で昇圧してDC−ACインバータ部20へ出力される直流電圧の値を調整することができる。
【0083】
上記のように、本実施形態に係る電力変換装置によれば、独立して並列運転することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
PCS(PCS_1〜PCS_N)…電力変換装置、PV(PV_1〜PV_N)…太陽電池アレイ、C_in…コンデンサ、L_chop…チョークコイル、D_chop…ダイオード、Sw_chop…スイッチ、C_link…コンデンサ、Iconv…コンバータ入力電流、Vconv…コンバータ入力電圧、Vconv…基準電圧、k1、k2…抵抗相当値(垂下ゲイン)、Iconv…基準電流、Vpwm_ref…電圧指令値、Vtri…三角波電圧、10…DC−DCコンバータ部、20…ACインバータ部、32、72、82、92…MPPT制御部、CTRL…制御部、34、84…電圧制御部、36、74、86、94…電流制御部、38、76、88、96…PWMコンパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極と接続される第1入力端子と、
前記直流電源の負極と接続される第2入力端子と、
前記第1入力端子と電気的に接続された第1出力端子と、
前記第2入力端子と電気的に接続された第2出力端子と、
前記第1入力端子と前記第1出力端子との間に直列に接続されたコイルと、
前記コイルの出力端から第1出力端子へ順方向に接続されたダイオードと、
前記第2入力端子と前記コイルの出力端との間の接続を切替えるスイッチと、
前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に接続されたコンデンサと、
前記スイッチのオンおよびオフを制御する信号を出力する制御回路と、
前記第1出力端子と前記第2出力端子とから出力された直流電力を交流電力に変換して出力するDC−ACインバータ部と、を備え、
前記制御回路は、垂下特性を模擬した垂下ゲインを乗じた値が引かれた入力信号に基づいて、系統電圧のゼロクロス検出信号に基づく周期で最大電力点追従するMPPT制御部と、前記MPPT制御部から出力された基準と入力信号との差分がゼロになるよう、電圧指令値を出力する制御部と、前記電圧指令値と三角波電圧とに基づいてPWM信号を出力するPWMコンパレータと、を備えた電力変換装置。
【請求項2】
直流電源の正極と接続される第1入力端子と、
前記直流電源の負極と接続される第2入力端子と、
前記第1入力端子と電気的に接続された第1出力端子と、
前記第2入力端子と電気的に接続された第2出力端子と、
前記第1入力端子と前記第1出力端子との間に直列に接続されたコイルと、
前記コイルの出力端から第1出力端子へ順方向に接続されたダイオードと、
前記第2入力端子と前記コイルの出力端との間の接続を切替えるスイッチと、
前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に接続されたコンデンサと、
前記スイッチのオンおよびオフを制御する信号を出力する制御回路と、
前記第1出力端子と前記第2出力端子とから出力された直流電力を交流電力に変換して出力するDC−ACインバータ部と、を備え、
前記制御回路は、入力信号に基づいて系統電圧のゼロクロス検出信号に基づく周期で最大電力点追従するMPPT制御部と、前記MPPT制御部から出力された基準から垂下特性を模擬した値を引いた値と入力信号との差分がゼロになるよう、電圧指令値を出力する制御部と、前記電圧指令値と三角波電圧とに基づいてPWM信号を出力するPWMコンパレータと、を備えた電力変換装置。
【請求項3】
前記MPPT制御部は電圧基準を出力し、
前記制御部は入力された前記差分がゼロになるように電流基準を出力する電圧制御部と、前記電流基準と入力電流信号との差分がゼロになるように前記電圧指令値を出力する電流制御部と、を備える請求項1又は請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記MPPT制御部は電流基準を出力し、
前記制御部は入力された差分がゼロになるように前記電圧指令値を出力する電流制御部を備える請求項1又は請求項2記載の電力変換装置。
【請求項5】
MPPT制御部の動作タイミングを制御するタイミング信号を生成する信号発生器をさらに備える請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173773(P2012−173773A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32087(P2011−32087)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】