説明

電動ブレーキ

【課題】減速機構が太陽歯車と遊星歯車とキャリアとを備えているとともに、遊星歯車のピニオンシャフトの挿入穴およびキャリアの挿入穴にピン部材が挿入されることによりピニオンシャフトのキャリアから抜けが防止されている電動ブレーキにおいて、遠心力によりピン部材が抜けるのを防止できる電動ブレーキを提供する。
【解決手段】ピニオンシャフト27の挿入穴27aは、キャリア23の径方向内側から外側に向かう方向に貫通して延びており、キャリア23の挿入穴23cは、キャリア23の径方向内側から外側にピニオンシャフト27の挿入穴27aを越えて延びているとともに、キャリア23の径方向内側に開口しかつ径方向外側が閉塞しており、ピン部材60は、キャリア23の挿入穴23cに、ピニオンシャフト27の挿入穴27aを貫通して挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、電動モータの回転運動を直動運動に変換する運動変換機構と、電動モータと運動変換機構との間に介在して電動モータの回転力を減速して運動変換機構に伝動する減速機構とを備えて成る電動ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキ装置として、近年、電動モータの回転力によって制動力を発生させる電動ブレーキの開発が行われている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この電動ブレーキは、運転者によるブレーキペダルの踏力を検知し、検知した踏力の力量に応じて電動モータの回転を制御し、所望の制動力を得るものである。
【0003】
電動ブレーキの構成は、電動モータ、減速機構、運動変換機構を備えており、電動モータの回転数を減速機構により減速させ、運動変換機構としてのボールネジやボールランプ機構などにより、減速機構で減速された電動モータの回転運動を、例えば、回転体の回転を制動するブレーキパッドを押圧するロッドの直動運動(直線運動)に変換して制動力を発生させるようになっている。
【0004】
減速機構で減速することによりトルクが大きくなるが、電動ブレーキに減速機構を用いないで電動モータの回転運動を直動運動に変換して制動力を発生させた場合に、減速機構によりトルクが増大されないので、大きなモータトルクが必要となり、大型のモータを使うことになってしまう。この場合に、電動ブレーキが大型化し、車両への搭載性が悪化するという問題が発生する。このため、電動ブレーキの開発に当たっては、減速機構を用いる傾向にある。
【0005】
この減速機構としては、通常、遊星歯車機構や差動歯車機構が使用されている。遊星歯車機構あるいは差動歯車機構は、中心の太陽歯車(サンギヤ)と周囲の内歯車(リングギヤ)との間にピニオンシャフトにより支持された遊星歯車が配置されて成るものである。そして、前記ピニオンシャフトはスプリングピンやスナップリング等を用いてキャリアに固定されている。
【0006】
スプリングピンを用いる例としては、例えば、特許文献3に記載のものがある。この特許文献3では、減速機構に遊星歯車機構を用いており、太陽歯車が入力ギヤとなり、太陽歯車と周囲に固定された内歯車との間に遊星歯車が配置されている。遊星歯車は、ピニオンシャフトに回転自在に支持されており、自転運動と公転運動とを行う。ピニオンシャフトは、キャリアに支持されており、そしてキャリアおよびピニオンシャフトに形成された挿入穴にスプリングピンが挿入されることにより、ピニオンシャフトがキャリアから抜けるのを防止されている。なお、キャリアの回転が出力回転となっている。
【0007】
ところで、特許文献3では、ピニオンシャフトの挿入穴がキャリアの径方向外側に向かって開口しかつ径方向内側が閉塞しているとともに、キャリアの挿入穴がキャリアの径方向外側に開口しかつ径方向内側がピニオンシャフトの前記挿入穴に接続しており、そしてスプリングピンがキャリアの挿入穴およびピニオンシャフトの挿入穴に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−112476号公報
【特許文献2】特開2002−48170号公報
【特許文献3】特開平8−277909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3では、スプリングピンがキャリアの径方向外側から挿入されているので、キャリアの回転数が大きいと、スプリングピンがキャリアおよびピニオンシャフトの挿入穴から抜けるおそれがある。スプリングピンが抜けると、このスプリングピンが他の部材と接触するおそれがあるだけでなく、ピニオンシャフトはキャリアから抜けてしまい、減速機としての機能を果たすことができなくなるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、減速機構が太陽歯車と遊星歯車とキャリアとを備えているとともに、遊星歯車のピニオンシャフトの挿入穴およびキャリアの挿入穴にピン部材が挿入されることによりピニオンシャフトのキャリアから抜けが防止されている電動ブレーキにおいて、遠心力によりピン部材が抜けるのを防止できる電動ブレーキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の電動ブレーキは、電動モータと、電動モータの回転運動を直動運動に変換する運動変換機構と、前記電動モータと前記運動変換機構との間に介在して電動モータの回転力を減速して運動変換機構に伝動する減速機構とを備え、前記減速機構は、太陽歯車と遊星歯車とキャリアとを備えているとともに、前記遊星歯車のピニオンシャフトの挿入穴および前記キャリアの挿入穴にピン部材が挿入されることにより前記ピニオンシャフトが前記キャリアから抜けるのを防止されている電動ブレーキであって、
前記ピニオンシャフトの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に向かう方向に貫通して延びており、
前記キャリアの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に前記ピニオンシャフトの前記挿入穴を越えて延びているとともに、前記キャリアの径方向内側に開口しかつ径方向外側が閉塞しており、
前記ピン部材は、前記キャリアの前記挿入穴に、前記ピニオンシャフトの前記挿入穴を貫通して挿入されている、
ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電動ブレーキは、電動モータと、電動モータの回転運動を直動運動に変換する運動変換機構と、前記電動モータと前記運動変換機構との間に介在して電動モータの回転力を減速して運動変換機構に伝動する減速機構とを備え、前記減速機構は、太陽歯車と遊星歯車とキャリアとを備えているとともに、前記遊星歯車のピニオンシャフトの挿入穴および前記キャリアの挿入穴にピン部材が挿入されることにより前記ピニオンシャフトが前記キャリアから抜けるのを防止されている電動ブレーキであって、
前記ピニオンシャフトの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に向かう方向に延びているとともに、前記キャリアの径方向内側に向かって開口しかつ径方向外側が閉塞しており、
前記キャリアの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に延びているとともに、前記キャリアの径方向内側に開口しかつ径方向外側が前記ピニオンシャフトの前記挿入穴に接続しており、
前記ピン部材は、前記キャリアの前記挿入穴および前記ピニオンシャフトの前記挿入穴に挿入されている、
ことを特徴とする。
上記構成において、前記ピン部材としては、例えば、スプリングピンや中実の圧入ピンなどがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動ブレーキによれば、ピン部材がキャリアの径方向外側から挿入され、ピン部材が挿入される挿入穴のキャリアの径方向外側が閉塞されているので、キャリアの回転数が大きくなり、キャリアの遠心力が大きくなっても、ピン部材がキャリアから抜け出ることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動ブレーキを示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る電動ブレーキの要部を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動ブレーキを示す断面図である。
この電動ブレーキは、例えば、車両の車輪を制動するもので、被制動部材としての車輪と一体に回転するディスクロータ1の両側にブレーキパッド2、2が配置されている。そして、電動ブレーキは、浮動式のキャリパ3を有し、後述するボールネジ機構7の直動部材52とキャリパ3の先端部3aとの間にディスクロータ1と左右のブレーキパッド2、2が配置されている。
【0016】
そして、キャリパ3の先端部3aに対向して設けられる円筒状のキャリパ本体3b内には、その後端部の外周部に電動モータ5が配置され、中央部の外周部に減速機構6が配置され、前端部から中央部の内側(中心部)にボールネジ機構(運動変換機構)7が配置されている。
【0017】
電動モータ5は、その外周部分にステータ11が配置され、ステータ11の内側に有底円筒状のロータ12が軸受13等により回転自在に支持されている。なお、ロータ12は、その前端部に、内側にボールネジ機構7の後部が配置される円筒状部分12aを備えている。ステータ11は、キャリパ本体3bの後端部に嵌合されて取り付けられているモータハウジング8の内側に固定されている。また、ロータ12には、その径方向中心部に固定されたレゾルバシャフト14を介してレゾルバが取り付けられている。レゾルバは電動モータ5の位置制御を行なう際に必要な部品である。
【0018】
そして、電動モータ5の前に配置される減速機構6は、不思議遊星歯車減速機構であって、以下のように構成されている。
すなわち、電動モータ5のロータ12の円筒状部分12aの前部の外周面には、円筒状部分12aと一体的に円環状の第1の太陽歯車21と円環状の第2の太陽歯車22とが前後に並んで形成されている。このため、これら第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車22は、ロータ12と一体にかつ同軸に回転可能となっている。なお、第1の太陽歯車21の前側に第2の太陽歯車22が形成されている。
【0019】
これら第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車22の外周側には、第1のキャリア23が後述の固定内歯車41を介してキャリパ本体3bに固定された軸受24により、また第2のキャリア25が後述の可動内歯車43との間に配置された軸受42により、それぞれ第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車22と同軸に回転自在に支持されている。なお、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車22と、第1のキャリア23および第2キャリア25とは相対回転可能となっている。
【0020】
第1のキャリア23および第2のキャリア25には、第1のピニオンシャフト(軸)26が第1のキャリア23の挿入穴23aおよび第2のキャリア25の挿入穴25aに挿入されることにより支持されているとともに、第2のピニオンシャフト(軸)27が第1のキャリア23の挿入穴23bおよび第2のキャリア25の挿入穴25bに挿入されることにより支持されている。
【0021】
第1のピニオンシャフト26は、スプリングピン(ピン部材)60により第2のキャリア25から抜けるのを防止されている。すなわち、第1のピニオンシャフト26には、挿入穴26aが、第2のキャリア25の径方向内側から外側に向かう方向に貫通して延びるように形成されている。一方、第2のキャリア25には、挿入穴25cが、この第2のキャリア25の径方向内側から外側に第1のピニオンシャフト26の挿入穴26aを越えて延びるとともに、第2のキャリア25の径方向内側に開口しかつ径方向外側が閉塞するように形成されている。そして、スプリングピン60が第2のキャリア25の挿入穴25cに第1のピニオンシャフト26の挿入穴26aを貫通して挿入されている。つまり、スプリングピン60は第1のピニオンシャフト26を貫通して第1のピニオンシャフト26の径方向両側から第2のキャリア25内に突出しており、これにより第1のピニオンシャフト26が第2のキャリア25に対して移動するのを阻止されている。
【0022】
同様に、第2のピニオンシャフト27も、スプリングピン60により第1のキャリア23から抜けるのを防止されている。すなわち、第2のピニオンシャフト27には、挿入穴27aが、第1のキャリア23の径方向内側から外側に向かう方向に貫通して延びるように形成されている。一方、第1のキャリア23には、挿入穴23cが、この第1のキャリア23の径方向内側から外側に第2のピニオンシャフト27の挿入穴27aを越えて延びるとともに、第1のキャリア23の径方向内側に開口しかつ径方向外側が閉塞するように形成されている。そして、スプリングピン60が第1のキャリア23の挿入穴23cに第2のピニオンシャフト27の挿入穴27aを貫通して挿入されている。つまり、スプリングピン60は第2のピニオンシャフト27を貫通して第2のピニオンシャフト27の径方向両側から第1のキャリア23内に突出しており、これにより第2のピニオンシャフト27が第1のキャリア23に対して移動するのを阻止されている。
【0023】
第1のピニオンシャフト26には、第1の遊星歯車31が軸受32を介して回転自在に支持されている。第1の遊星歯車31は、第1のキャリア23と第2のキャリア25との間にブッシュ33、34を介して配置されている。また、第2のピニオンシャフト27には、第2の遊星歯車35が軸受36を介して回転自在に支持されている。第2の遊星歯車35は、第1のキャリア23と第2のキャリア25との間にブッシュ37、38を介して配置されている。したがって、第1の遊星歯車31と第2の遊星歯車35とは、1つの(同じ)ピニオンシャフトに支持されておらず別個のピニオンシャフト26、27に支持されているが、第1の太陽歯車21の回転中心から第1の遊星歯車31の回転中心までの距離と、第2の太陽歯車22の回転中心から第2の遊星歯車35の回転中心までの距離とが等しくされている。したがって、遊星歯車31が第1のキャリア23および第2のキャリア25と一体的に公転するとともに、第2の遊星歯車35もこれらと同じ半径で公転する。
【0024】
たとえば、第1のピニオンシャフト26と、第2のピニオンシャフト27とは、同一円周上に1つおきに等間隔に3本ずつ合わせて6本配置された状態となっている。なお、第1の遊星歯車31と第2の遊星歯車35とを同じ(1つの)ピニオンシャフトに並べて支持させるようにしてもよい。この場合にピニオンシャフトを例えば3本配置することで、3つの第1の遊星歯車31および第2の遊星歯車35を配置することができ、構造が簡略になるが、第1の遊星歯車31と第2の遊星歯車35とが一体に回転するのではなく、互いに相対回転可能とする必要がある。
【0025】
そして、第1のピニオンシャフト26に回転自在に支持される第1の遊星歯車31は、第1の太陽歯車21に噛み合っている。また、第1の遊星歯車31の公転軌跡の外周側には、キャリパ本体3bに固定された固定内歯車41が設けられ、第1の遊星歯車31は、この固定内歯車41に噛み合っている。
【0026】
また、第2のピニオンシャフト27に回転自在に支持される第2の遊星歯車35は、第2の太陽歯車22に噛み合っている。また、第2の遊星歯車35の公転軌跡の外周側には、前記軸受42とキャリパ本体3bに固定されたブッシュ44とにより、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車22と同軸に回転自在に可動内歯車43が配置され、第2の遊星歯車35と噛み合っている。また、可動内歯車43は、その前部が中心側に延出して形成されて内径が縮径された状態となっている。そして、可動内歯車43は、その内周側にボールネジ機構7のナットとしての回転部材51がスプライン結合により一体的に回転可能に結合されている。
【0027】
運動変換機構としてのボールネジ機構7は、回転部材(ナット)51にネジ軸としての直動部材52が転動体(ボール)を介して螺合された周知のものである。直動部材52の先端中央部には、二面幅を持った突起52aが右側のブレーキパッド2の穴部に嵌合されており、これにより直動部材52が回転できないようになっている。回転部材51および直動部材52は、ロータ12の円筒状部分12aの内側から円筒状の可動内歯車43の内側を通って前方に延びるように、キャリパ3の円筒状のキャリパ本体3bの中心部に配置されている。回転部材51は、ロータ12の円筒状部分12a内側との間に介在される軸受46と、キャリパ本体3bの前端部内側との間に介在されるブッシュ47とにより、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車22と同軸に回転自在に支持されている。
また、キャリパ3の先端部3aと直動部材52の先端との間に左右のブレーキパッド2、2が配置され、これら左右のブレーキパッド2、2の間にディスクロータ1を挟む構成となっている。
【0028】
そして、電動モータ5のロータ12の回転が減速機構6の第1の太陽歯車21に入力され、減速機構6の可動内歯車43から減速して出力されることになり、可動内歯車43と一体に回転部材51が回転し、回転部材51に螺合する直動部材52が前進して、右側のブレーキパッド2を押し、これにより左右のブレーキパッド2、2の間にディスクロータ1を挟みこんで制動するようになっている。
【0029】
なお、直動部材52の先端部にはフランジ52bが形成されており、このフランジ52bと回転部材51のフランジ部51aとの間に間座70が挿入されている。また、間座70は直動部材52に対して止め輪71にて軸方向に固定されているが、回転部材51に対して止め輪で軸方向に固定するようにしてもよい。間座70の材質としては、鉄系・非鉄系などの金属、樹脂・ゴムなどの高分子材料などが挙げられる。ここで、直動部材52がブレーキパッド2、2を介してディスクロータ1を押し付けるときに発生する押し付け反力は、回転部材51に設けたフランジ部51aからスラストニードル72を介して固定部材(L字間座)74で受ける構造となっている。
【0030】
このような電動ブレーキにあっては、スプリングピン60が第2のキャリア25の挿入穴25cに第2のキャリア25の径方向内側から第1のピニオンシャフト26の挿入穴26aを貫通して挿入され、第2のキャリア25の挿入穴25cの径方向外側が閉塞されているので、第2のキャリア25の回転数が大きくなり、第2のキャリア25の遠心力が大きくなっても、スプリングピン60が第2のキャリア25から抜け出ることがない。
第1のキャリア23からの第2のピニオンシャフト27のスプリングピン60による抜け出し防止についても同様である。
【0031】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る電動ブレーキの要部を示す断面図である。
この実施の形態では、第2のピニオンシャフト27が、スプリングピン(ピン部材)80により第1のキャリア23から抜けるのを防止されている。すなわち、第2のピニオンシャフト27には、挿入穴27bが、第1のキャリア23の径方向内側から外側に向かう方向に途中まで延びるように形成されている。すなわち、挿入穴27bは、第1のキャリア23の径方向内側に向かって開口しかつ径方向外側が閉塞している。一方、第1のキャリア23には、挿入穴23dが、第1のキャリア23の径方向内側から外側に延びているとともに、第1のキャリア23の径方向内側に開口しかつ径方向外側が第2のピニオンシャフト27の挿入穴27bに接続している。すなわち、挿入穴23dは、第1のキャリア23の径方向内側に開口しているとともに、径方向外側が第1のキャリア23の挿入穴23bに開口している。そして、スプリングピン80が第1のキャリア23の径方向内側から挿入され、第2のピニオンシャフト27の径方向途中まで挿入されている。これにより、第2のピニオンシャフト27が第1のキャリア23に対して移動するのを阻止されている。
第1のピニオンシャフト26も、第2のピニオンシャフト27と同様にして、スプリングピン80により第2のキャリア25から抜けるのを防止されている。
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0032】
このような電動ブレーキにあっては、スプリングピン80が第1のキャリア23の挿入穴23dに第1のキャリア23の径方向内側から挿入され、第2のピニオンシャフト27の挿入穴27bまで挿入されるが、この第2のピニオンシャフト27の挿入穴27bの第1のキャリア23の径方向外側が閉塞されているので、第1のキャリア23の回転数が大きくなり、第1のキャリア23の遠心力が大きくなっても、スプリングピン80が第1のキャリア23から抜け出ることがない。
第2のキャリア25からの第1のピニオンシャフト26のスプリングピン80による抜け出し防止についても同様である。
【0033】
なお、上述の各実施の形態では、ピニオンシャフト26、27の抜け防止のためのピン部材としてスプリングピン60、80を用いたが、中実の圧入ピン等を用いるようにしてもよい。
また、減速機構6としては、上述構成の不思議遊星歯車減速機構だけでなく、他の遊星歯車減速機構あるいは差動歯車減速機構などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0034】
5 電動モータ
6 減速機構
7 ボールネジ機構(運動変換機構)
21 第1の太陽歯車
22 第2の太陽歯車
31 第1の遊星歯車
35 第2の遊星歯車
23 第1のキャリア
25 第2のキャリア
26 第1のピニオンシャフト
27 第2のピニオンシャフト
23c、23d、25c キャリアの挿入穴
26a、27a、27b ピニオンシャフトの挿入穴
60、80 スプリングピン(ピン部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、電動モータの回転運動を直動運動に変換する運動変換機構と、前記電動モータと前記運動変換機構との間に介在して電動モータの回転力を減速して運動変換機構に伝動する減速機構とを備え、前記減速機構は、太陽歯車と遊星歯車とキャリアとを備えているとともに、前記遊星歯車のピニオンシャフトの挿入穴および前記キャリアの挿入穴にピン部材が挿入されることにより前記ピニオンシャフトが前記キャリアから抜けるのを防止されている電動ブレーキであって、
前記ピニオンシャフトの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に向かう方向に貫通して延びており、
前記キャリアの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に前記ピニオンシャフトの前記挿入穴を越えて延びているとともに、前記キャリアの径方向内側に開口しかつ径方向外側が閉塞しており、
前記ピン部材は、前記キャリアの前記挿入穴に、前記ピニオンシャフトの前記挿入穴を貫通して挿入されている、
ことを特徴とする電動ブレーキ。
【請求項2】
電動モータと、電動モータの回転運動を直動運動に変換する運動変換機構と、前記電動モータと前記運動変換機構との間に介在して電動モータの回転力を減速して運動変換機構に伝動する減速機構とを備え、前記減速機構は、太陽歯車と遊星歯車とキャリアとを備えているとともに、前記遊星歯車のピニオンシャフトの挿入穴および前記キャリアの挿入穴にピン部材が挿入されることにより前記ピニオンシャフトが前記キャリアから抜けるのを防止されている電動ブレーキであって、
前記ピニオンシャフトの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に向かう方向に延びているとともに、前記キャリアの径方向内側に向かって開口しかつ径方向外側が閉塞しており、
前記キャリアの前記挿入穴は、前記キャリアの径方向内側から外側に延びているとともに、前記キャリアの径方向内側に開口しかつ径方向外側が前記ピニオンシャフトの前記挿入穴に接続しており、
前記ピン部材は、前記キャリアの前記挿入穴および前記ピニオンシャフトの前記挿入穴に挿入されている、
ことを特徴とする電動ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−127682(P2011−127682A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286223(P2009−286223)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】