説明

電動機制動用ブレーキ

【課題】
クレーンなどの電動機によって駆動される機器における電動機制動用ブレーキにおいて、当該電動機ブレーキの制動時の鳴き音を低減する電動機制動用ブレーキを提供すること。
【解決手段】
ブレーキシューにブレーキライニングが取り付けられる面側の中央にシート部材を貼り付けた構造とする。また、逆に、ブレーキライニングにブレーキシュー側に取り付けられる面側の中央にシート部材を貼り付ける構造とする。また、ブレーキシュー、またはブレーキライニングの一部を切り欠いた切り欠き部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーンなどの制動に使用するブレーキを提供する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「制振材により摩擦材の摩擦振動を確実に抑制でき、ブレーキ鳴きを防止できる」構成を開示したものに、特許文献1がある。
【0003】
【特許文献1】特開平8−28616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、制振材を摩擦材と一体的に形成し、シューに固着されるように設ける構成としているものである。
【0005】
ところで、電動機によって、例えば、クレーンを駆動させる場合には、クレーンの動作(巻上下げ、横行、走行)に伴い電動機の制動用として、例えば、電磁ブレーキを使用する。制動方法は電動機に取り付けられたブレーキドラムの外周面を、電磁ブレーキに取り付けられたブレーキライニングとの接触により摩擦、制動、停止させるものである。
【0006】
この制動時には、ブレーキライニングの材質やブレーキドラムとブレーキライニングの接触面の状態、また、この接触面の温度に係わり、鳴き音を発生させることがある。
【0007】
そして、この鳴き音の原因として、制動時の振動に起因することが知られている。
【0008】
上記振動は、機械的に制動させる構造である限り、多かれ少なかれ発生するものと言える。従って、発生した振動の影響を如何にして低減することが、鳴き音の低減に関係しているものと考えられる。
【0009】
本発明の目的は、いわゆる鳴き音を低減したブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、ブレーキドラムを挟みつける互いに接する、若しくは離れる方向としての接離方向に移動可能なる対のブレーキシューと、そのブレーキシューに勘合などによって、設けられるブレーキライニングとの間に振動を吸収するなどの働きを有する部材を設けることにより達成される。
【0011】
なお、この部材は耐熱に優れ、可とう性のあるテープ状、シート状の構造が望ましい。
【0012】
また、ブレーキシュー、またはブレーキライニングの一部を切り欠くなどによって、上記振動を分散させ得る構造にすることでも上記目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも、制動時、騒音などの環境性の改善が図れることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による電磁ブレーキについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
先ず、図1は、本発明を適用する電磁ブレーキの一実施形態であり、ベース部材1にブレーキドラム2を回動自在に支持すると共に、ベース部材1の両側部にはポスト部材3、3の下部をベース部材1に支持し、上部は互いに接離方向に揺動可能にして対設し、この各ポスト部材3にブレーキドラム外周面と対峙して、互いにブレーキドラム2を挟んで対向してブレーキシュー4、4を揺動自在に配設し、この各シューに所要のライニング5、5を取り付け対峙する両ポストの上端部間をバネ7および連結ロッド8を介して連結し、一方のポスト部材3もしくは連結ロッド8を電磁石9にて揺動するようにし、これにより電磁石の励磁にて対峙する両ブレーキシューは、ブレーキドラム2に接近してこのブレーキドラム2とライニング5が押圧制動するように構成されている。
【0016】
図2は、ブレーキドラム2を挟みつける、ブレーキライニング5を取り付けたブレーキシュー4であり、ライニング5はシュー4の両端部でライニング当板6をボルトにより強固に固定されている。
【0017】
ここで図3は、ブレーキライニング5が取り付けられる面側の円弧形状での略中央にシート部材10を貼り付けたブレーキシュー4である。
【0018】
図4は、図3とは逆に、ブレーキシュー4側に取り付けられる面側の円弧形状での略中央にシート部材10を貼り付けたブレーキライニング5である。
図3、図4の別個とも制動時のブレーキライニング5とブレーキシュー4の振動がシート10で吸収され鳴き音を発生させることが従来よりも低減される。
【0019】
なお、図5、図6はそれぞれの円弧形状での略中央にて接触する部分で、前記ブレーキドラム2の回転軸方向に切り欠き部設けて、接触しないように逃げた構造としたものである。当該切り欠き部を設けることで、鳴き音の低減を図ろうとするものである。
【0020】
本発明による実施例であれば、ライニングの材質や使用環境に関係なく鳴き音の発生を低減し、快適なクレーン操作を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による電磁ブレーキの一実施形態を示す側面図である。
【図2】同形態のブレーキシューおよびブレーキライニングの取り付け方を示す側面図である。
【図3】本発明の実施例のブレーキシューの外観図である。
【図4】本発明の実施例のブレーキライニングの外観図である。
【図5】本発明の異なる実施例のブレーキシューの外観図である。
【図6】本発明の異なる実施例のブレーキライニングの外観図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ベース部材
2 ブレーキドラム
3 ポスト部材
4 ブレーキシュー
5 ブレーキライニング
6 ライニング当板
7 制動バネ
8 ロッド
9 電磁石
10 シート部材
A ブレーキシュー溝
B ブレーキライニング溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の回転力が伝達されるブレーキドラムと、
ブレーキライニングを有しており、前記ブレーキドラムを挟んで対向するシューと、
前記ブレーキシューを支持するポスト部材と、
前記ポスト部材を支持するベース部材と、
前記ブレーキライニングを前記ブレーキドラムに接近させるように前記ブレーキシューを揺動させる揺動機構と
を有する電動機制動用ブレーキにおいて、
前記ブレーキライニングと前記ブレーキシューとの間にシート部材を設けることを特徴とする電動機制動用ブレーキ。
【請求項2】
電動機の回転力が伝達されるブレーキドラムと、
ブレーキライニングを有しており、前記ブレーキドラムを挟んで対向するブレーキシューと、
前記ブレーキシューを支持するポスト部材と、
前記ポスト部材を支持するベース部材と、
前記ブレーキライニングを前記ブレーキドラムに接近させるように前記ブレーキシューを揺動させる揺動機構と
を有する電動機制動用ブレーキにおいて、
前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングに接する側の円弧形状の略中央部を前記ブレーキドラムの回転軸方向に切り欠いた切り欠き部を前記ブレーキシューに設けることを特徴とする電動機制動用ブレーキ。
【請求項3】
電動機の回転力が伝達されるブレーキドラムと、
ブレーキライニングを有しており、前記ブレーキドラムを挟んで対向するブレーキシューと、
前記ブレーキシューを支持するポスト部材と、
前記ポスト部材を支持するベース部材と、
前記ブレーキライニングを前記ブレーキドラムに接近させるように前記ブレーキシューを揺動させる揺動機構と
を有する電動機制動用ブレーキにおいて、
前記ブレーキライニングの円弧形状の略中央部を前記ブレーキドラムの回転軸方向に切り欠いた切り欠き部を前記ブレーキライニングの前記ブレーキシューに接する側に設けることを特徴とする電動機制動用ブレーキ。
【請求項4】
電動機制動用ブレーキにおいて、
互いに接離方向に移動可能なるブレーキシューと、そのブレーキシューに設けられるブレーキライニングとの接触面にシート部材を取り付けたことを特徴とする電動機制動用ブレーキ。
【請求項5】
電動機制動用ブレーキにおいて、
ブレーキシューとブレーキライニングの接触面において、ブレーキシュー側の面に切り欠いた溝を設けたことを特徴とする電動機制動用ブレーキ。
【請求項6】
電動機制動用ブレーキにおいて、
ブレーキシューとブレーキライニングの接触面において、ブレーキシュー側の面と対峙するライニング側の面に切り欠いた溝を設けたことを特徴とする電動機制動用ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−16832(P2007−16832A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196960(P2005−196960)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】