説明

電動車両のバッテリパック搭載構造

【課題】バッテリパック内部の冷却によって生じる凝結水をバッテリパック外部へ排出することができる一方、必要に応じてバッテリパック内部に水を充満させることを可能とした電動車両のバッテリパック搭載構造を提供する。
【解決手段】複数の駆動用のバッテリモジュール11と、バッテリモジュール11を載置する電池トレイ17と、バッテリモジュール11の冷却を行う冷却ユニット13と、冷却ユニット13において生じる凝結水を排出する排水穴14e,17bとを備えるバッテリパック1を搭載し、アンダーカバー20で電池トレイ17の下部を覆う電動車両のバッテリパック搭載構造において、電池トレイ17とアンダーカバー20との間に、排水穴14e,17bから排出された凝結水を電動車両の外部に排出するための隙間25と、アンダーカバー20の変形に伴って隙間25を閉塞する第一シール部材24とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のバッテリパック搭載構造に関し、とくにバッテリパック内の冷却に伴って生じる凝結水を排出する排水構造を備えた電動車両のバッテリパック搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を動力源として用いる電気自動車や、電動機と他の駆動源とを組み合わせて用いるハイブリッド車などの電動車両においては、電動機に電力を供給するための車両用バッテリが当該車両に搭載される。
【0003】
車両用バッテリは、充放電時の内部抵抗によるジュール熱や、充放電時のバッテリ内部における化学反応により発熱が生じるが、高温になると充放電効率や電池寿命が低下するため、バッテリパック内を冷却する冷却装置が必要となる。
【0004】
下記特許文献1には、バッテリパック内を冷却する冷却装置として、バッテリパック内にエバポレータと、冷却ファンと、冷却ダクトとを設け、エバポレータにおいて冷却された空気を冷却ファンを介して冷却ダクトへ送ることにより、バッテリパック内に冷却風を供給する構成が開示されている。
【0005】
そして、下記特許文献2には、バッテリパック内に冷却装置を設けたことによりエバポレータの表面等に発生する凝結水をバッテリパックの外部へ排出するための排水構造を備えたバッテリパックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−134615号公報
【特許文献2】特開2011−173447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した排水構造を備えるバッテリパックを搭載した車両が何らかの理由で水没した場合には、バッテリを保護するため、車両を引き上げたあとにバッテリパックの上部から注水を行ってバッテリパック内に水を充満させる必要がある。
【0008】
しかしながら、上述したような従来のバッテリパックにあっては、バッテリパック内部に注入した水は排水構造により排出されてしまう。そのため、必要時にバッテリパック内部に水を充満させることが困難であるという問題があった。
【0009】
このようなことから本発明は、バッテリパック内部の冷却によって生じる凝結水をバッテリパック外部へ排出することができる一方、必要に応じてバッテリパック内部に水を充満させることを可能とした車両用バッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する第1の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、複数の駆動用のバッテリと、前記バッテリを載置する電池トレイと、前記バッテリの冷却を行う冷却ユニットと、前記冷却ユニットにおいて生じる凝結水を排出する凝結水排出部とを備えるバッテリパックを搭載し、アンダーカバーで前記バッテリパックの下部を覆う電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記電池トレイと前記アンダーカバーとの間に、前記凝結水排出部から排出された凝結水を前記電動車両の外部に排出するための排水経路と、前記アンダーカバーの変形に伴って前記排水経路または前記凝結水排出部を閉塞する第一シール部材とを設けたことを特徴とする。
【0011】
また、上記の課題を解決する第2の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、第1の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記第一シール部材が、少なくとも前記凝結水排出部に対応する位置に配設された弾性部材からなる板状の部材であり、前記アンダーカバーの変形に伴って前記電池トレイ側に押圧されることにより前記排水経路または前記凝結水排出部を閉塞することを特徴とする。
【0012】
また、上記の課題を解決する第3の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、第2の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記凝結水排出部が、前記電池トレイに形成された固定用孔に嵌着される軸体と、前記軸体の前記アンダーカバー側に設けられ前記電池トレイに設けられた排水穴を覆う第二シール部材とを有するドレンバルブを備え、前記弾性部材が、前記第二シール部材を前記電池トレイ側に押圧することにより、前記凝結水排出部を閉塞することを特徴とする。
【0013】
また、上記の課題を解決する第4の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、第3の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記弾性部材が、少なくとも前記軸体を中心として前記第二シール部材の前記排出穴より外側を前記電池トレイ側に押圧することにより、前記凝結水排出部を閉塞することを特徴とする。
【0014】
また、上記の課題を解決する第5の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、第1ないし第4のいずれか一つの発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記アンダーカバーが、前記凝結水排出部に対応する位置に、前記バッテリパックの外側から前記凝結水排出部の位置を示す位置表示手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記の課題を解決する第6の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、第4の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記位置表示手段が、前記アンダーカバーの前記凝結水排出部に対応する位置に形成された、前記電池トレイに向かって突出する段部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した第1の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、複数の駆動用のバッテリと、前記バッテリを載置する電池トレイと、前記バッテリの冷却を行う冷却ユニットと、前記冷却ユニットにおいて生じる凝結水を排出する凝結水排出部とを備えるバッテリパックを搭載し、アンダーカバーで前記バッテリパックの下部を覆う電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記電池トレイと前記アンダーカバーとの間に、前記凝結水排出部から排出された凝結水を前記電動車両の外部に排出するための排水経路と、前記アンダーカバーの変形に伴って前記排水経路または前記凝結水排出部を閉塞する第一シール部材とを設けたので、通常時においてはバッテリパック内の凝結水を排出経路から電動車両外部へ排出することができる一方、バッテリパック内に水を充満させる必要が生じた場合にはアンダーカバーを変形させることにより排出経路または凝結水排出部を閉塞してバッテリパック内部から電動車両の外部へ水が排出されることを防止することができる。
【0017】
また、第2の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、第1の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記第一シール部材が、少なくとも前記凝結水排出部に対応する位置に配設された弾性部材からなる板状の部材であり、前記アンダーカバーの変形に伴って前記電池トレイに押圧されることにより前記排水経路または前記凝結水排出部を閉塞するので、バッテリパック内に水を充満させる必要が生じた場合にバッテリパック内部から電動車両の外部へ水が排出されることを確実に防止することができる。
【0018】
また、第3の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、第2の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記凝結水排出部が、前記電池トレイに形成された固定用孔に嵌着される軸体と、前記軸体の前記アンダーカバー側に設けられ前記電池トレイに設けられた排水穴を覆う第二シール部材とを有するドレンバルブを備え、前記弾性部材が、前記第二シール部材を前記電池トレイ側に押圧することにより、前記凝結水排出部を閉塞するので、バッテリパック内に水を充満させる必要が生じた場合にバッテリパック内部から水が排出されることを確実に防止することができる。
【0019】
また、第4の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、第3の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記弾性部材が、少なくとも前記軸体を中心として前記第二シール部材の前記排出穴より外側を前記電池トレイ側に押圧することにより、前記凝結水排出部を閉塞するので、弾性部材の大きさをよりコンパクトにしながら、バッテリパック内に水を充満させる必要が生じた場合にバッテリパック内部から水が排出されることを確実に防止することができる。
【0020】
また、第5の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、第1ないし第4のいずれか一つの発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記アンダーカバーが、前記凝結水排出部に対応する位置に、前記バッテリパックの外側から前記凝結水排出部の位置を示す位置表示手段を備えるので、バッテリパック内に水を充満させる必要が生じた場合にはアンダーカバーを変形させる位置を容易かつ確実に確認することができる。
【0021】
また、第6の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、第5の発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、前記位置表示手段が、前記アンダーカバーの前記凝結水排出部に対応する位置に形成された、前記電池トレイに向かって突出する段部であるので、バッテリパック内に水を充満させる必要が生じた場合にはアンダーカバーを変形させる位置を簡易な構造で容易かつ確実に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の内部構造を示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】本発明の実施例1に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の凝結水排出の流れを示す説明図である。
【図6】本発明の実施例1に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の注水時における状態を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例2に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の内部構造の一部を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例2に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の注水時における状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の他の例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の詳細を説明する。
【実施例1】
【0024】
図1ないし図5を用いて本発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の第1の実施例について説明する。
【0025】
本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、例えば、電気自動車に搭載され、電気自動車の走行用モータに電力を供給するものであって、図示はしないが車両フロアの下方に固定されている。
【0026】
図1ないし図3に示すように、バッテリパック1は、複数(本実施例では12個)の駆動用のバッテリモジュール11と、機器ボックス12と、バッテリパック1内に冷却風を供給する冷却ユニット13とを備えている。
【0027】
バッテリモジュール11は、バッテリパック1の外部に設けられた電動機に対して電力を供給するものであり、例えば電池トレイ17上に所定の間隔で配置されている。なお、ここでのバッテリモジュール11は、本発明で言うバッテリの一例である。
【0028】
機器ボックス12は、PN線の接続部、コンタクタ、プリチャージレジスタ、電流センサ、漏電センサ等の電気要素部品を収納する容器であり、バッテリモジュール11の車両前方側に配置されている。
なお、PN線はバッテリパック1の高電圧入出力電線であり、図示しないモータコントロールユニットや、DC−DCコンバータ、充電器、急速充電口などの高電圧系要素部品に接続される。
【0029】
冷却ユニット13はエバポレータ14、冷却ファン15、及び冷却ダクト16を備えて構成されている。エバポレータ14はバッテリパック1内の空気を冷却するものであり、該エバポレータ14の本体を構成するコア14aに冷媒を供給する第一冷媒配管14bと、コア14aから冷媒を送り出すための第二冷媒配管14cが接続されて構成されている(図4参照)。本実施例においてエバポレータ14は機器ボックス12の車両前方側に配置されている。また、エバポレータ14の上部はファンダクト19によって冷却ファン15と接続されている。
【0030】
冷却ファン15はファンダクト19を介してエバポレータ14から冷却ダクト16へ冷却風を供給するものであり、本実施例においては機器ボックス12及びエバポレータ14の上方に配置されている。
冷却ダクト16は冷却ファン15より送り出された冷却風をバッテリパック1内に供給するための通路であって、バッテリモジュール11の上方に配置されている。
【0031】
これらバッテリモジュール11、機器ボックス12、冷却ユニット13は、電池トレイ17上に配置され、電池カバー18によって覆われている。そして、本実施例においては、電池トレイ17の下部が樹脂製のアンダーカバー20によって覆われている。なお、アンダーカバー20は電池トレイ17との間に空隙を有するように配設されている。
【0032】
また、電池カバー18には、車室内とバッテリパック1内とを連通させるメンテナンスプラグカバー21が設けられている一方、冷却ファン15及び冷却ダクト16に対応する部分に凸状部18aが形成されている。
【0033】
ここで、図4に示すように本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造においては、エバポレータ14のカバー14dの底面に凝結水を排出するための排水穴(以下、エバポレータ側排水穴という)14eが形成されている。そして、エバポレータ14のカバー14d底面はエバポレータ側排水穴14eに向かうにしたがって低くなるように傾斜している。
【0034】
また、電池トレイ17には、エバポレータ側排水穴14eに対向する位置にドレンバルブ22を固定するためのドレンバルブ固定用貫通孔17aが形成されるとともに、このドレンバルブ固定用貫通孔17aの周囲に凝結水を排出するための複数の排水穴(以下、電池トレイ側排水穴という)17bが形成されている。
なお、電池トレイ17には、エバポレータ側排水穴14eに対向する位置にエバポレータ14側に突出した円形の段部(以下、第一段部という)17cが形成されており、ドレンバルブ固定用貫通孔17a及び電池トレイ側排水穴17bはこの第一段部17c内に設けられている。
【0035】
ドレンバルブ22は、軸部22aと軸部22aの下端に設けられた弾性を有する円形状の第二シール部材22bとを備えている。軸部22aはドレンバルブ固定用貫通孔17aに嵌入され、第二シール部材22bは電池トレイ側排水穴17bを下から覆っている。なお、第二シール部材22bはその外縁側が電池トレイ17の下面に接する一方、軸部22a側が電池トレイ17の下面との間に微小空間を有している。
【0036】
また、エバポレータ14のカバー14dと第一段部17cとの間には、エバポレータ側排水穴14e及び電池トレイ側排水穴17bを囲む位置に弾性部材からなる環状の第三シール部材23が設けられている。より詳しくは、第一段部17cはその周縁17dがエバポレータ側に突出した形状となっており、第三シール部材23はこの周縁17dの内側に配設されている。
【0037】
さらに、本実施例において、アンダーカバー20には第一段部17cに対向する位置に電池トレイ17側に突出した位置表示手段としての円形の段部(以下、第二段部という)20aが形成されており、この第二段部20aの上面に弾性部材からなる円盤状の第一シール部材24が固着されている。なお、通常時において第一シール部材24と電池トレイ17との間には排水経路として所望(例えば、数ミリメートル)の隙間25が設けられている。また、第二段部20a及び第一シール部材24は第一段部17cに比較して大径に形成されている。
【0038】
以下、図5及び図6を用いて本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造による作用効果について説明する。
【0039】
本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、通常時にエバポレータ14内で発生した凝結水は図5中に矢印で示すようにエバポレータ14のカバー14d底面に設けられた傾斜に沿って移動し、エバポレータ側排水穴14eから排出される。エバポレータ側排水穴14eから排出された凝結水は第三シール部材23によって閉塞された空間内に一時的に蓄積され、ある一定の重量を超えると図5に示すようにドレンバルブ22の第二シール部材22bが変形して開くことにより電池トレイ17とアンダーカバー20との間を通って、バッテリパック1の外部へ排出される。
【0040】
一方、車両が水没した等により、バッテリパック1を保護するためにバッテリパック1内に水を充満させたい場合は、図6に一点鎖線で示すように例えば第二段部20aに下から板等を当てたうえで、ジャッキ等により第二段部20aを下から押圧し、アンダーカバー20を変形させて第一シール部材24を電池トレイ17に密着させることにより、電池トレイ17と第一シール部材24との間に設けた隙間25を塞いだ後、メンテナンスプラグカバー21から水を注水する。これにより、バッテリパック1内から水が排出されることを防止し、バッテリパック1内に水を充満させることができる。
【0041】
以上に説明したように、本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、通常時には電池トレイ17とアンダーカバー20との間に設けた隙間25から凝結水を排出することができ、バッテリパック1内に水を充満させたい場合はアンダーカバー20を変形させることによって電池トレイ17とアンダーカバー20との間の隙間25を第一シール部材24によって塞ぐことによりバッテリパック1内から電動車両の外部へ水が排出されることを防止することができる。
【0042】
さらに、第二段部20aを設けたことにより、バッテリパック1内に水を充満させたい場合に「アンダーカバー20のどの部分を押圧すればよいか」をバッテリパック1の外側からであっても作業者に明確に知らせることができるため、作業をより円滑に行うことが可能となる。また、第二段部20aに囲まれた第一シール部材24に対応するアンダーカバー20の領域を電池トレイ17の下面と平行な平面とすることで、第一シール部材24の厚みを一定とすることができる上、作業者がジャッキ等により第二段部20aを下から押圧する際に作業がしやすくなる。
【実施例2】
【0043】
図7及び図8を用いて本発明に係る電動車両のバッテリパック搭載構造の第2の実施例について説明する。
【0044】
本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造は、第1の実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において説明した第一シール部材24に代えて、後述する位置表示手段としての第三段部20b、第四段部20c及び第一シール部材26を設けたものである。その他の構成は図1ないし図6に示し上述した構成と同様であり、以下、同様の作用を奏する部材については同一の符号を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0045】
図7及び図8に示すように、本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造において、アンダーカバー20には、第一段部17cに対向する位置で電池トレイ17側に突出する円状の段部(以下、第三段部という)20bと、この第三段部20b上に形成されて電池トレイ17側に突出する環状の段部(以下、第四段部という)20cとが設けられている。
【0046】
第三段部20bは第一段部17cに比較して小径であって且つ第二シール部材22bの外径に比較して大径に形成されている。
【0047】
第四段部20cは電池トレイ側排水穴17bの外接円より大径であって且つ第二シール部材22bの外径より小径に形成されている。すなわち、第四段部20cは電池トレイ側排水穴17bと第二シール部材22bの外径との間の位置に対応するように配設されている。
【0048】
さらに、第四段部20cの上面には弾性部材よりなる環状の第一シール部材26が固着されている。通常時において、第二シール部材22bと第一シール部材26との間には排水経路として所望(例えば、数ミリメートル)の隙間27が設けられている。
【0049】
以下、本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造による作用効果について説明する。
本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、通常時においては、エバポレータ14内で発生した凝結水はエバポレータ14のカバー14dの底面に設けられた傾斜に沿って移動し、エバポレータ側排水穴14eから排出される。エバポレータ側排水穴14eから排出された凝結水は第三シール部材23によって密閉された空間内に一時的に蓄積され、ある一定の重量を超えると図7に一点鎖線で示すようにドレンバルブ22の第二シール部材22bが変形して開くことにより隙間27を通って電動車両の外部に排出される。
【0050】
一方、車両が水没した等により、バッテリパック1を保護するためにバッテリパック1内に水を充満させたい場合は、図8に示すように例えばジャッキ等により第二段部20aを下から押圧し、アンダーカバー20を変形させて第一シール部材26を電池トレイ17側に押圧して第二シール部材22bを押し上げた後、メンテナンスプラグカバー21から水を注水する。これにより、第二シール部材22bが水の重量で変形して開くことがなくなり、バッテリパック1内から水が排出されることを防止し、バッテリパック1内に水を充満させることができる。
【0051】
以上に説明したように、本実施例に係る電動車両のバッテリパック搭載構造によれば、通常時には電池トレイ17とアンダーカバー20との間に設けた隙間27から凝結水を排出することができ、バッテリパック1内に水を充満させたい場合はアンダーカバー20を変形させることによって第一シール部材26を電池トレイ17側に押圧して第二シール部材22bを押し上げ、第二シール部材22bが水の重量で開かないようにすることによりバッテリパック1内から電動車両外部へ水が排出されることを防止することができる。
【0052】
さらに、第三段部20bを設けたことにより、バッテリパック1内に水を充満させたい場合に「アンダーカバー20のどの部分を押圧すればよいか」をバッテリパック1の外側からであっても作業者に明確に知らせることができるため、作業をより円滑に行うことが可能となる。
【0053】
なお、上述した実施例ではアンダーカバー20に第二段部20a、又は第三段部20b及び第四段部20cを設ける例を示したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。
【0054】
例えば、図9に示すように実施例1において説明したアンダーカバー20の第二段部20aを廃止するとともに、第一シール部材24に代えて第一シール部材24に比較して厚みのある第一シール部材28を設け、図9(a)に示すように通常時に電池トレイ側排出穴17bから排出された凝結水を電動車両の外部へ排出する一方、バッテリパック1内に水を充満させたい場合は、図9(b)に示すようにアンダーカバー20を変形させることにより第一シール部材28を電池トレイ17に密着させて隙間29を閉塞し、バッテリパック1の内部から電動車両の外部へ水が排出されることを防止するようにしてもよい。
【0055】
また、例えば、図10に示すように、図9で示した第一シール部材28に代えて、アンダーカバー20を変形させた際に、ドレンバルブ22の第二シール部材22bに下から接触可能な第一シール部材30を設け、図10(a)に示すように通常時に電池トレイ側排出穴17bから排出された凝結水を隙間31から電動車両の外部へ排出する一方、バッテリパック1内に水を充満させたい場合は、図10(b)に示すようにアンダーカバー20を変形させることにより第一シール部材30を電池トレイ17側に押圧して第二シール部材22bを押し上げ、第二シール部材22bが水の重量で開かないようにし、バッテリパック1の内部から電動車両の外部へ水が排出されることを防止するようにしてもよい。
【0056】
要するに、通常時には凝結水をバッテリパック1の内部から電動車両の外部へ排出させる一方、バッテリパック1内に水を充満させたい場合はアンダーカバー20を変形させて第一シール部材を電池トレイ17に密着させることでバッテリパック1内から電動車両外部へ水が排出されることを防止することができる構成であればよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電動車両のバッテリパック搭載構造に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0058】
1 バッテリケース
11 バッテリモジュール
12 機器ボックス
13 冷却ユニット
14 エバポレータ
14a コア
14b 第一冷媒配管
14c 第二冷媒配管
14d カバー
14e エバポレータ側排水穴
15 冷却ファン
16 冷却ダクト
17 電池トレイ
17a ドレンバルブ固定用貫通孔
17b 電池トレイ側排水穴
17c 第一段部
17d 第一段部周縁
18 電池カバー
19 ファンダクト
20 アンダーカバー
20a 第二段部
20b 第三段部
20c 第四段部
21 メンテナンスプラグカバー
22 ドレンバルブ
22a 軸部
22b 第二シール部材
23 第三シール部材
24,26,28,30 第一シール部材
25,27,29,31 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用のバッテリと、前記バッテリを載置する電池トレイと、前記バッテリの冷却を行う冷却ユニットと、前記電池トレイに設けられ前記冷却ユニットにおいて生じる凝結水を排出する凝結水排出部とを備えるバッテリパックを搭載し、アンダーカバーで前記バッテリパックの下部を覆う電動車両のバッテリパック搭載構造において、
前記電池トレイと前記アンダーカバーとの間に、前記凝結水排出部から排出された凝結水を前記電動車両の外部に排出するための排水経路と、前記アンダーカバーの変形に伴って前記排水経路または前記凝結水排出部を閉塞する第一シール部材とを設けた
ことを特徴とする電動車両のバッテリパック搭載構造。
【請求項2】
前記第一シール部材が、少なくとも前記凝結水排出部に対応する位置に配設された弾性部材からなる板状の部材であり、前記アンダーカバーの変形に伴って前記電池トレイ側に押圧されることにより前記排水経路または前記凝結水排出部を閉塞する
ことを特徴とする請求項1記載の電動車両のバッテリパック搭載構造。
【請求項3】
前記凝結水排出部が、前記電池トレイに形成された固定用孔に嵌着される軸体と、前記軸体の前記アンダーカバー側に設けられ前記電池トレイに設けられた排水穴を覆う第二シール部材とを有するドレンバルブを備え、
前記弾性部材が、前記第二シール部材を前記電池トレイ側に押圧することにより、前記凝結水排出部を閉塞する
ことを特徴とする請求項2記載の電動車両のバッテリパック搭載構造。
【請求項4】
前記弾性部材が、少なくとも前記軸体を中心として前記第二シール部材の前記排出穴より外側を前記電池トレイ側に押圧することにより、前記凝結水排出部を閉塞する
ことを特徴とする請求項3記載の電動車両のバッテリパック搭載構造。
【請求項5】
前記アンダーカバーが、前記凝結水排出部に対応する位置に、前記バッテリパックの外側から前記凝結水排出部の位置を示す位置表示手段を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリパック搭載構造。
【請求項6】
前記位置表示手段が、前記アンダーカバーの前記凝結水排出部に対応する位置に形成された、前記電池トレイに向かって突出する段部である
ことを特徴とする請求項5記載の電動車両のバッテリパック搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86641(P2013−86641A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228519(P2011−228519)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】