説明

電動車両用制御装置、並びに、これを備えた電動車両及びフォークリフト

【課題】高い振動減衰率を有すると共に、加速性能を維持した電動車両用制御装置、並びに、これを備えた電動車両及びフォークリフトを提供する。
【解決手段】駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータMとを備える電動車両F1に用いられ、駆動モータMに対してモータ制御指令T*を供給する電動車両用制御装置1であって、前記車軸を中心とした前記電動車両F1の上下振動を示す振動パラメータによって駆動モータMをフィードバック制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとを備える電動車両に用いられる電動車両用制御装置、並びに、これを備えた電動車両及びフォークリフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような電動車両において、車体の前後方向に上下に揺れるピッチング振動は、操縦者に不快感を与えると共に、車体のコントロール性に悪影響を与える。特に、荷物の運搬を行うフォークリフトにおいては、載荷時に車両全体の重心の位置が変化するために、ピッチング振動が誘発され易いものとなっており、操縦者の不快感や荷崩れを招いて作業性を低下させてしまう。
【0003】
このようなピッチング振動を考慮した電動車両の車体制御装置としては、例えば、下記特許文献1のものがある。すなわち、この車体制御装置は、電動車両のアクセルの踏込量に応じた速度指令(モータ回転数指令)を発生するアクセル入力処理部と、電動機の実際の回転速度である検出速度を基に、ピッチング振動が発生していることを検出するピッチング検出部と、ピッチング検出部がピッチング振動を検出していないときには、アクセル入力処理部にて発生した速度指令を外部に出力する一方、ピッチング検出部がピッチング振動を検出したときには、アクセル入力処理部にて発生した速度指令の代わりに、ピッチング振動発生時の最大検出速度と最小検出速度との和の半分の値になっている速度指令を求めて外部に出力する速度指令調整部とを有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3935039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、速度指令を減少させてピッチング振動を低減させているために、減衰を積極的に行わずに自然に減衰させるものであり、振動減衰率が低いという問題があった。
また、速度指令を減少させているために、加速性能が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、高い振動減衰率を有すると共に、加速性能を維持した電動車両用制御装置、並びに、これを備えた電動車両及びフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る電動車両用制御装置は、駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとを備える電動車両に用いられ、前記駆動モータに対してモータ制御指令を供給する電動車両用制御装置であって、前記車軸を中心とした前記電動車両の上下振動を示す振動パラメータによって前記駆動モータをフィードバック制御することを特徴とする。
【0008】
また、前記モータ制御指令に加えられる振動制御指令を、前記振動パラメータから生成する振動制御部を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記振動制御部は、前記振動パラメータを含む前記電動車両の運動パラメータが入力されるフィルタを備え、該フィルタは、前記上下振動の周波数に基づいた制御周波数帯が設定され、前記入力された運動パラメータから前記振動パラメータを検出することを特徴とする。
【0010】
また、前記運動パラメータは、前記電動車両の加速度データであり、前記振動制御部は、前記フィルタによって前記制御周波数帯の前記加速度データに対して位相調整を行って、前記振動パラメータとなる速度データを取得することを特徴とする。
【0011】
また、前記振動制御部は、前記フィルタの出力に対して時間遅れで位相調整を行う時間遅れ手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記振動制御部は、前記電動車両に作用する静的荷重によって、前記制御周波数帯を変更することを特徴とする。
【0013】
また、前記振動制御部は、前記電動車両に作用する静的荷重によって、前記振動パラメータに対するゲイン係数を変更する増幅部を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記振動制御指令が所定の閾値以上であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる不感帯要素を有することを特徴とする。
【0015】
また、駆動モータの余裕トルクを求める余裕トルク演算手段と、該余裕トルク演算部の演算結果である前記余裕トルクの負の値が許容最小値として設定され、前記振動制御指令のうち前記許容最小値未満の振動制御指令を遮断するリミッタとを備えるトルクリミッタ部を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記電動車両に作用する静的荷重が所定の閾値以上であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる荷重判定部を備えることを特徴とする。
【0017】
また、前記電動車両の車速が所定の閾値以上であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる車速判定部を備えることを特徴とする。
【0018】
また、前記電動車両の旋回量が所定の閾値未満であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる旋回判定部を備えることを特徴とする。
【0019】
また、前記振動制御指令の制御不安定周波数を除去する不安定成分除去フィルタを備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る電動車両用制御装置は、駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとを備える電動車両に用いられ、前記駆動モータに対してモータ制御指令を供給する電動車両用制御装置であって、前記駆動モータの回転数によるフィードバックループに位相調整部を設けたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る電動車両は、駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとを備え、上記のいずれかの電動車両用制御装置を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係るフォークリフトは、駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとリフトとを備え、上記のいずれかの電動車両用制御装置を備えることを特徴とする。
【0023】
また、前記運動データは、前記電動車両の加速度データであり、前記リフトに作用するリフト圧が前記加速度データとして前記フィルタに入力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高い振動減衰率を得ることができると共に加速性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係るフォークリフト(電動車両)F1の電動車両用制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るピッチング制御コントローラ2の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る検出リフト圧Pと時間との関係を示したグラフである。
【図4】本発明の第一実施形態に係るピッチング制御トルク指令T*と時間との関係を示したグラフである。
【図5】本発明の第一実施形態に係るモータ走行トルク(トルク指令T*)と時間との関係を示したグラフである。
【図6】本発明の第二実施形態である電動車両用制御装置501の全体構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る電動車両用制御装置601の全体概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係るフォークリフト(電動車両)F1の電動車両用制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
フォークリフトFは、前側の車軸上に設けられた二つの駆動タイヤと後側の車軸上に設けられた二つの従動タイヤとを有する車体と、二つの駆動タイヤに対してそれぞれ回転トルクを付与する二つの駆動モータM(M,M)と、荷物を昇降可能なリフトLとを備える車両本体Cが、電動車両用制御装置1によって走行制御されている。
【0027】
図1に示すように、電動車両用制御装置1は、アクセル入力処理部100と、第一加算器200と、速度制御コントローラ300と、第二加算器400と、ピッチング制御コントローラ(振動制御部)2とを有している。
【0028】
アクセル入力処理部100は、アクセルの踏み込み量に応じてモータ回転数指令ω*を第一加算器200に出力する。
【0029】
第一加算器200は、モータ回転数指令ω*から、駆動モータM(M,M)から検出された検出モータ回転数ω(駆動モータMの検出モータ回転数ωと、駆動モータMの検出モータ回転数ωとの和の1/2)を減算して偏差Δωを求め、その偏差Δωを速度制御コントローラ300に出力する。
【0030】
速度制御コントローラ300は、第一加算器200から入力された偏差Δωに対して、PI演算を行ってモータ制御トルク指令(モータ制御指令)T*を生成し、このモータ制御トルク指令T*を第二加算器400に出力する。
また、この速度制御コントローラ300には、検出モータ回転数ωのうち、検出モータ回転数ωの割合と、検出モータ回転数ωの割合を示すモータ回転数配分情報が別途入力されるようになっている。そして、速度制御コントローラ300は、入力されたモータ回転数配分情報とハンドル操作角とに応じて、モータ制御トルク指令T*のうち、駆動モータMへの入力分と駆動モータMへの入力分との割合を示すモータ回転数配分情報を出力し、この割合に応じて駆動モータM,Mが駆動されるようになっている(直進の場合には同一の割合で駆動される)。
【0031】
ピッチング制御コントローラ2には、駆動モータM(M,M)から検出された検出モータ回転数ω(ω,ω)とリフトLから検出された検出リフト圧(運動パラメータ、加速度データ)Pとが入力されるようになっている。このピッチング制御コントローラ2は、検出モータ回転数ω(ω,ω)と検出リフト圧Pとからピッチング制御トルク指令(振動制御指令)T*を生成し、このピッチング制御トルク指令T*を第二加算器400に出力する。
なお、ピッチング制御コントローラ2については、後に詳述する。
【0032】
第二加算器400は、モータ制御トルク指令T*と、ピッチング制御トルク指令T*とを加算して、この加算した結果をトルク指令(モータ制御指令)T*として駆動モータM(M,M)に出力する。
なお、ピッチング制御トルク指令T*の出力が0であった場合には、モータ制御トルク指令T*をトルク指令T*として駆動モータM(M,M)に出力する。
【0033】
図2は、ピッチング制御コントローラ2の詳細構成を示すブロック図である。
ピッチング制御コントローラ2は、振動制御部10と、不感帯要素20と、トルクリミッタ部30と、荷重判定部40と、車速判定部50と、旋回判定部60と、ノッチフィルタ(不安定成分除去フィルタ)70と、車速絶対値|U|(|U1|,|U2|)を出力する車速演算部80と、旋回量|ΔU|を出力する旋回量演算部90とを備えている。
【0034】
振動制御部10は、三つの位相調整部11〜13と、検出リフト圧Pの静的成分PDCを検出するLPF(ローパスフィルタ)14と、検出リフト圧Pの静的成分PDCの大きさを三段階で判定するリフト圧判定部15と、リフト圧判定部15の判定結果に応じて三つの位相調整部11〜13のうち何れか一つを選択する選択部16と、選択部16が出力した出力値を増幅するゲイン係数が可変設定される増幅部17とを備えている。
【0035】
位相調整部11〜13は、加速度データとして示される検出リフト圧Pのうち所定の制御周波数帯に位相調整を行って、速度データとして示される検出リフト圧P´を生成するものであり、BPF(フィルタ、11a〜13a)と時間遅れ手段(11b〜13b)とを一組有している。
【0036】
BPF(バンドパスフィルタ)11a〜13aには、それぞれに異なる制御周波数帯が設定されている。この制御周波数帯は、リフトLに作用する静的荷重によって変化するピッチング振動の固有の周波数がそれぞれに設定されている。具体的には、このピッチング振動は、前側の車軸上に設けられた駆動輪を中心としたピッチング振動が想定されている。より具体的には、BPF11aの制御周波数帯は、リフトLの最大静的荷重の25〜50%の静的荷重が作用した際における固有の周波数4.5Hzが設定されており、BPF11bの制御周波数帯は、最大静的荷重の50〜75%における固有の周波数3.5Hzが、BPF11cの制御周波数帯は、最大静的荷重の75〜100%における固有の周波数2.5Hzが、それぞれ設定されている。
【0037】
これらBPF11a〜13aは、入力された検出リフト圧Pが、それぞれに設定された制御周波数帯のみに反応するように、ゲインが大きくされており、制御周波数帯外の低周波及び高周波で反応しないように構成されている。また、電動車両用制御装置1全体の遅れが考慮されて、制御周波数帯の検出リフト圧Pの位相が90度遅れるように設定されている。
すなわち、ピッチング振動が発生した場合には、ピッチング振動に伴ってリフトL上の荷物が振動してリフト圧が変化するために、図3に示すように、検出リフト圧Pの波形がピッチング振動の加速度の波形として表れることとなる。つまり、BPF11a〜13aは、検出リフト圧Pが指し示す加速度データに対して位相調整を行って得られる速度データを振動パラメータとして速度フィードバックするものであり、スカイフック制御理論に基づいてフィルタ設計がされている。
【0038】
時間遅れ手段11b〜13bは、BPF11a〜13aによる検出リフト圧Pの位相調整が十分でなかった場合を考慮して補助的に設けられたものであり、BPF11a〜13aを通過した検出リフト圧P´に対して時間遅れによって位相調整を行う。
【0039】
LPF14は、検出リフト圧Pの動的成分と静的成分とのうち、静的成分PDC(荷物DC成分)のみを出力するように設定されている。換言すれば、このLPF14は、リフトLに載せられた荷物の静的荷重のみを検出する。
【0040】
リフト圧判定部15は、LPF14を通過した静的成分PDCが、リフトLに作用する最大静的荷重の25〜50%,50〜75%,75〜100%のうちいずれの荷重範囲にあるかを判定する。
【0041】
選択部16は、リフト圧判定部15の判定結果に基づいて、位相調整部11〜13のうちいずれか一つを選択するように構成されている。具体的には、リフト圧判定部15が判定した荷重範囲に基づいて、この荷重範囲に対応する制御周波数帯が設定された位相調整部11〜13(フィルタ11a〜13a)を選択する。例えば、リフト圧判定部15が、検出リフト圧Pの静的成分PDCが最大静的荷重の50〜75%の荷重範囲であると判定した場合には、この判定結果に基づいて、最大静的荷重の50〜75%における固有の周波数3.5Hzが設定された位相調整部12(フィルタ12)を選択するように構成されている。
この選択部16は、位相調整部11〜13のうちいずれかから入力された検出リフト圧P´を増幅部17に出力する。
【0042】
増幅部17は、選択部16から出力された検出リフト圧P´を増幅してピッチング制御トルク指令T*を生成し、このピッチング制御トルク指令T*を不感帯要素20に出力するものであり、増幅器17aと、ゲイン係数補正部17bと、乗算器17cとを備えている。
増幅器17aのゲイン係数は、制御が不安定とならない程度の大きさの適切な値が設定される。
【0043】
ゲイン係数補正部17bは、増幅器17aに設定されたゲイン係数の補正を行うものである。すなわち、リフトLに載せられた荷物の静的荷重により、加速度が同一であったとしてもリフト圧の変動成分(動的成分)が異なるため、ゲイン係数補正部17bが、検出リフト圧Pの静的成分PDCに応じた最適なゲイン係数を求めて、この最適なゲイン係数となるように増幅器17aのゲイン係数を補正している。
なお、静的成分PDCに応じた最適なゲイン係数の値は、予め作成した静的成分PDCとゲイン係数との対応付けから求めるようになっている。
【0044】
乗算器17cは、検出リフト圧P´と増幅器17aに設定されたゲイン係数とを乗算する。
【0045】
不感帯要素20は、入力されたピッチング制御トルク指令T*の振幅が閾値T´以上である場合に、ピッチング制御トルク指令T*を通過させる。一方、入力されたピッチング制御トルク指令T*の振幅が閾値T´未満である場合には、ピッチング制御トルク指令T*を遮断する。
この不感帯要素20の閾値T´は、検出モータ回転数ωによらず一定にしてもよいし、検出モータ回転数ωによって変動させてもよい。例えば、予め各モータ回転数(ω)における最大トルクを求めて、各モータ回転数(ω)と最大トルクとの対応付けを作成しておき、この対応付けと検出モータ回転数ωとに基づいて最大トルクを求め、この最大トルクの所定の割合を閾値T´として用いる構成が考えられる。
【0046】
トルクリミッタ部30は、ピッチング制御トルク指令T*の振幅を所定の範囲に制限するものであり、リミッタ31と、余裕トルク演算手段32とを備えている。
リミッタ31は、ピッチング制御トルク指令T*の許容最大値up及び許容最小値loが設定されており、不感帯要素20から入力されたピッチング制御トルク指令T*のうち、許容最大値upを上回る値と、許容最小値loを下回る値については遮断するようになっている。
【0047】
余裕トルク演算手段32は、出力可能な駆動モータM(M,M)の最大トルクから、現在出力しているトルクを差し引いて余裕トルクを求めるものである。この余裕トルクは、駆動モータM(M,M)の特性図を参照して、現在の車速絶対値|U1|からその際の出力可能な最大トルクを求め、この最大トルクから現在出力しているモータ走行トルクの値を差し引いて求めている。
この求められた余裕トルクは、その正の値がリミッタ31の許容最大値upに、負の値が許容最小値loとして設定される。
【0048】
荷重判定部40は、LPF14から入力される検出リフト圧Pの静的成分PDCがリフトLの最大静的荷重の25%以上であることを条件として、ピッチング制御トルク指令T*を車速判定部50に出力する。
より具体的には、荷重変数決定手段41が、静的成分PDCと乗算器42の変数d1(0〜1)との関係が示された荷重変数マップを参照して、入力された静的成分PDCから変数d1を求め、乗算器42が、求められた変数d1と、ピッチング制御トルク指令T*とを積算する。
すなわち、静的成分PDCが最大静的荷重の25%以上である場合には、変数d1倍されたピッチング制御トルク指令T*が車速判定部50に出力される。静的成分PDCが最大静的荷重の25%よりも十分に大きい場合には、入力時の大きさと等倍(d1=1)のピッチング制御トルク指令T*が出力され、静的成分PDCが最大静的荷重の25%よりも僅かに大きい場合には、変数d1倍(0<d1<1)されたピッチング制御トルク指令T*が出力される。
【0049】
車速判定部50は、検出モータ回転数ωのDC成分が所定の閾値以上であることを条件として、ピッチング制御トルク指令T*を旋回判定部60に出力するものであり、車速変数決定手段51と、乗算器52とを備えている。閾値としては、例えば、ピッチング振動が発生し易いモータ回転数500rpmに設定している。
より具体的には、車速変数決定手段51が、静的成分PDCと変数d2(0〜1)との関係が示された車速変数マップ(緩和曲線)を参照して、入力された静的成分PDCから変数d2を求め、乗算器52が、求められた変数d2と、ピッチング制御トルク指令T*とを積算する。
【0050】
旋回判定部60は、駆動モータM,Mの検出モータ回転数ω,ωの偏差Δωの静的成分(ピッチング等によって生じる変動ノイズを除去した値)の旋回絶対値|ΔU|が、所定の閾値以上であることを条件として、ピッチング制御トルク指令T*をノッチフィルタ70に出力するものであり、旋回変数決定手段61と、乗算器62とを備えている。閾値としては、例えば、250rpmに設定している。
より具体的には、旋回変数決定手段61が、静的成分PDCと変数d3(0〜1)との関係が示された旋回変数マップ(緩和曲線)を参照して、入力された静的成分PDCから変数d3を求め、乗算器62が、求められた変数d3と、ピッチング制御トルク指令T*とを積算する。
【0051】
ノッチフィルタ70は、ピッチング制御トルク指令T*が制御不安定周波数の波形となった場合に、制御不安定周波数を除去するものである。すなわち、不感帯要素20及びトルクリミッタ部30において、ピッチング制御トルク指令T*の波形が鋭角となって制御不安定周波数の波形が生成された場合に、この波形が滑らかなものとなる。
このノッチフィルタ70は、入力されたピッチング制御トルク指令T*に対して、上記の処理を行って第二加算器400に出力する
【0052】
車速演算部80は、加算器81、増幅器82、LPF83、絶対値回路84,85を有しており、加算器81によって検出モータ回転数ω,ωを加算し、この加算値をゲイン81によって1/2の値とし、この出力値の絶対値を絶対値回路84によって求め、求めた車速絶対値|U1|をトルクリミッタ部30に出力する。
また、この車速演算部80は、増幅器82の出力値を、LPF83を通過させて車速DC成分(ピッチング等によって生じる変動ノイズを除去した値)を求めた後に、この出力値の絶対値を絶対値回路85によって求め、求めた車速絶対値|U2|を車速判定部50に出力する。
【0053】
旋回量演算部90は、加算器91、LPF93,絶対値回路94を有しており、加算器91によって検出モータ回転数ω,ωの差分を演算し、この差分値を、LPF93を通過させて旋回DC成分ΔωDC(ピッチング等によって生じる変動ノイズを除去した値)を求めた後に、この出力値の絶対値を絶対値回路94によって求め、求めた旋回絶対値|ΔU|を旋回判定部60に出力する。
【0054】
続いて、上記構成からなるピッチング制御コントローラ2の作用を、図を用いて説明する。
まず、車両本体Cのアクセルが踏み込まれると、図1に示すように、アクセル入力処理部100は、アクセル踏み込み量に応じたモータ回転数指令ω*を出力する。
【0055】
第一加算器200は、アクセル入力処理部100から入力されたモータ回転数指令ω*から、駆動モータM(M,M)から検出された検出モータ回転数ωを減算して、その偏差Δωを速度制御コントローラ300に出力する。
【0056】
速度制御コントローラ300は、第一加算器200から入力された偏差ΔωにPI演算を行って、モータ制御トルク指令T*を第二加算器400に出力する。
第二加算器400は、速度制御コントローラ300から入力されたモータ制御トルク指令T*と、ピッチング制御コントローラ2から入力されたピッチング制御トルク指令T*との加算結果をトルク指令T*として駆動モータM(M,M)に出力する。
【0057】
一方、車両本体Cにおいては、検出モータ回転数ω(ω,ω)が駆動モータM(M,M)から第一加算器200と、ピッチング制御コントローラ2とに出力される。
また、検出リフト圧PがリフトLからピッチング制御コントローラ2に出力される。
【0058】
上記処理と並行して、ピッチング制御コントローラ2においては、以下のような処理がなされている。
まず、図2に示すように、検出リフト圧Pが振動制御部10に入力される。
振動制御部10は、入力された検出リフト圧Pを用いて、その際の荷物の静的荷重に応じた最適な位相調整部11〜13を選択する。具体的には、LPF14が検出リフト圧Pの静的成分PDCのみを出力する。そして、リフト圧判定部15が、LPF14を通過した静的成分PDCがリフトLに作用する最大静的荷重の25〜50%,50〜75%,75〜100%のうちいずれの荷重範囲にあるかを判定する。選択部16は、リフト圧判定部15が判定した荷重範囲に対応する位相調整部11〜13を選択する。
以下においては、位相調整部12が選択された場合について、説明する。
【0059】
選択された位相調整部12に検出リフト圧Pが入力されると、この検出リフト圧PがBPF12aを通過する。
この際、検出リフト圧Pのうち、最大静的荷重の50〜75%に対応した制御周波数帯3.5Hzが増幅されると共に、その位相が90度遅れる。
なお、BPF12aの位相調整が不十分であった場合には、時間遅れ手段12bが時間によって位相を調整する。
【0060】
選択部16は、位相調整部12が位相調整を行った検出リフト圧P´を乗算器17cに出力する。
【0061】
一方、ゲイン係数補正部17bは、LPF14から入力された静的成分PDCに対応する最適なゲイン係数を求め、増幅器17aのゲイン係数を補正する。増幅部17は、乗算器17cにおいて最適なゲイン係数で検出リフト圧P´を増幅して、ピッチング制御トルク指令T*を生成し、不感帯要素20に出力する。
【0062】
不感帯要素20は、入力されたピッチング制御トルク指令T*が閾値T´以上である場合に、ピッチング制御トルク指令T*をトルクリミッタ部30に出力する。一方、入力されたピッチング制御トルク指令T*が閾値T´未満である場合には、ピッチング制御トルク指令T*をトルクリミッタ部30に出力せずに遮断する。
なお、ピッチング制御トルク指令T*が遮断された場合には、波形が鋭角となる。
【0063】
トルクリミッタ部30は、ピッチング制御トルク指令T*の振幅を、許容最大値upと許容最小値loとの間の所定の範囲に制限する。これら許容最大値up及び許容最小値loは、余裕トルク演算手段32が、求めた余裕トルクの正の値及び負の値を設定する。
【0064】
リミッタ31は、不感帯要素20から入力されたピッチング制御トルク指令T*のうち、許容最大値upを上回る値と、許容最小値loを下回る値については遮断し、許容最大値upと許容最小値loとの範囲内のピッチング制御トルク指令T*を荷重判定部40に出力する。
なお、ピッチング制御トルク指令T*が遮断された場合には、波形が鋭角となる。
【0065】
荷重判定部40は、LPF14から入力される検出リフト圧Pの静的成分PDCがリフトLの最大静的荷重の25%以上であることを条件として、ピッチング制御トルク指令T*を車速判定部50に出力する。具体的には、ピッチング制御トルク指令T*を変数d1(0〜1)倍して車速判定部50に出力する。
【0066】
車速判定部50は、車速演算部80から入力された車速絶対値|U2|がモータ回転数500rpm以上であることを条件として、ピッチング制御トルク指令T*を旋回判定部60に出力する。具体的には、ピッチング制御トルク指令T*を変数d2(0〜1)倍して旋回判定部60に出力する。
【0067】
旋回判定部60は、旋回量|ΔU|が250rpm以上であることを条件として、ピッチング制御トルク指令T*をノッチフィルタ70に出力する。具体的には、ピッチング制御トルク指令T*を変数d3(0〜1)倍してノッチフィルタ70に出力する。
【0068】
ノッチフィルタ70は、ピッチング制御トルク指令T*が制御不安定周波数を含む場合に、制御不安定周波数を除去する。すなわち、不感帯要素20及びトルクリミッタ部30によって、ピッチング制御トルク指令T*の波形が鋭角になったとしても、その波形が滑らかになる。このようにして、ノッチフィルタ70は、ピッチング制御トルク指令T*を出力する。
【0069】
ピッチング制御トルク指令T*は、第二加算器400において、モータ制御トルク指令T*と加算される。そして、この加算値であるトルク指令T*が駆動モータM(M,M)に入力される。
【0070】
図3は、検出リフト圧Pと時間との関係を示したグラフであり、図4は、ピッチング制御トルク指令T*と時間との関係を示したグラフであり、図5は、モータ走行トルク(トルク指令T*)と時間との関係を示したグラフである。これらのグラフは、フォークリフトFの車速を5km/hとし、路面のギャップを乗り越えさせてピッチング振動を発生させて作成したものである。
【0071】
図3に示すように、ピッチング振動が発生すると、検出リフト圧Pの波形の振幅が大きくなる。
これと同時に、図4に示すように、検出リフト圧Pの波形とは逆の振幅方向にピッチング制御トルク指令T*が生成される。このピッチング制御トルク指令T*は、ピッチング振動の波形と90度位相のずれた逆の波形となるように生成される。
【0072】
このピッチング制御トルク指令T*が、モータ制御トルク指令T*(=T1)に加算されることで、図5に示すように、モータ走行トルク(トルク指令T*)の波形が、モータ制御トルク指令T*(=T1)だけオフセットされた状態で、ピッチング制御トルク指令T*と同様のものとなる。
【0073】
図5に示すように、モータ走行トルク(トルク指令T*)は、ピッチング振動と同様に正弦波となっており、ΔT1(モータ制御トルク指令T*)を基準に増減を繰り返す。この際、車両本体Cにおいては、前側の車軸を中心にして上方から下方にピッチング振動による力が作用するときに、下方から上方へのトルクが車両本体Cに作用することとなり、ピッチング振動による力と打ち消しあう。反対に、前側の車軸を中心にして下方から上方にピッチング振動による力が作用するときに、上方から下方へのトルクが車両本体Cに作用することとなり、ピッチング振動による力と打ち消しあう。この際、T1(モータ制御トルク指令T*)を基準にモータ走行トルク(トルク指令T*)の増減がなされるために、フォークリフトFの加速が妨げられない。
その後、ピッチング振動が減衰に従って、ピッチング制御トルク指令T*の振幅が小さくなり、ピッチング振動がほぼ収束するとピッチング制御トルク指令T*の出力が0となる。モータ走行トルク(トルク指令T*)は、モータ制御トルク指令T*(=T1)の入力分だけとなり、再び一定となる。
ここで、ピッチング振動が減衰するまでの時間は、ピッチング制御コントローラ2の制御をOFFとした場合に比べて、1/3となった。
【0074】
以上説明したように、電動車両用制御装置1によれば、検出リフト圧Pに対して、ピッチング振動の周波数に基づいて定められた制御周波数帯が設定され、かつ、この制御周波数帯の位相が90度遅れるようにフィルタ設計されたフィルタ11a〜13aを備えるので、ピッチング振動の加速度データとして入力された検出リフト圧Pのうち制御周波数帯が増幅されると共に位相調整がされることにより、振動パラメータとしての速度データが生成されて、速度フィードバックされる。
これにより、ピッチング振動に対して高い減衰効果を得ることができる。
さらに、モータ制御トルク指令T*(=T1)を基準にモータ走行トルク(トルク指令T*)の増減がなされるので、フォークリフトFの加速が妨げられず、フォークリフトFの加速性能を維持することができる。
従って、高い振動減衰率を得ることができると共に加速性能を維持することができる。
【0075】
また、BPF11a〜13aを備えるので、比較的に簡素な構成で、検出リフト圧Pに対して、制御周波数帯のゲインを大きくすることができると共に、位相調整を行うことができる。
【0076】
また、時間遅れ手段11b〜13bを備えるので、より確実に検出リフト圧Pの位相を調整することができる。
【0077】
また、三つの位相調整部11〜13を備えると共に、リフト圧判定部15と選択部16とを有するので、リフトLに作用する静的荷重(静的成分PDC)に応じて制御周波数帯を最適なものに設定することができる。これにより、ピッチング振動の固有の周波数の変化に対応して、適切な減衰効果を得ることができる。
【0078】
また、リフトLに作用する静的荷重(検出リフト圧Pの静的成分PDC)によって、増幅器17aのゲイン係数を変更するゲイン係数補正部17bを有するので、リフトLに作用する静的荷重の大小に関わらず、最適なピッチング制御トルク指令T*を得ることができ、適切な減衰効果を得ることができる。
【0079】
また、不感帯要素20を有するので、ピッチング制御トルク指令T*が閾値未満である場合に遮断するので、ピッチング制御トルク指令T*がその大きさに関わらず常時出力されることを防止する。これにより、作業性や居住性に影響を与えることのない小さなピッチング振動については、ピッチング制御トルク指令T*が出力されないので、消費電力を抑制することができる。
【0080】
また、ピッチング制御トルク指令T*の振幅を所定の範囲に制限するトルクリミッタ部30を有するので、余裕トルク以上にピッチング制御トルク指令T*3によるトルクが作用することを防止することができ、走行安定性を高めることができる。
特に、フォークリフトFの前進加速中においては、トルク指令T*が正の値を示しており、トルク指令T*の値から正側の余裕トルクまでの絶対値に対して、負側の余裕トルクまでの絶対値が大きくなる。すなわち、負側の余裕トルクの限度まで逆トルクを作用させると、正側の余裕トルクの限度に対して過大なトルクが作用する恐れがあり、急ブレーキが断続的に作用するような走行状態になる恐れがある。しかしながら、ピッチング制御トルク指令T*の許容最小値loを余裕トルクに設定することで、正側及び負側の双方への振幅の最大値を略同一とすることができ、上記のような不安定な走行状態を防止することができる。
【0081】
また、荷重判定部40を備えるので、所定の閾値以上の静的成分PDCが作用していない場合には、ピッチング制御トルク指令T*が出力されない。これにより、検出リフト圧Pの静的成分PDCが比較的に小さいものであってピッチング振動が生じ難い状況下において、ピッチング制御トルク指令T*が出力されることを防止することができる。このため、消費電力を抑制することができる。
また、荷重変数マップが緩和曲線となっているので、車速が所定の閾値付近の場合にピッチング制御トルク指令T*の出力が徐々に小さくなるようにすることができる(0<d1<1)。これにより、急激にピッチング制御トルク指令T*が出力されることが防止され、走行安定性を向上させることができる。
【0082】
また、車速判定部50を備えるので、車両本体Cの車速絶対値|U2|が所定の閾値以上でない場合には、ピッチング制御トルク指令T*が出力されない。これにより、車両本体Cの車速が比較的に小さい場合等、ピッチング振動が生じ難い状況下でピッチング制御トルク指令T*が出力されることを防止することができる。このため、消費電力を抑制することができる。
また、車速変数マップが緩和曲線となっているので、車速が所定の閾値付近の場合にピッチング制御トルク指令T*の出力が徐々に小さくなるようにすることができる(0<d2<1)。これにより、走行安定性を向上させることができる。
【0083】
また、旋回判定部60を備えるので、車両本体Cの旋回量|ΔU|が所定の閾値以上である場合には、ピッチング制御トルク指令T*が出力されない。これにより、車両本体Cの旋回量|ΔU|が比較的に大きい場合等、ピッチング振動が生じ難い状況下でピッチング制御トルク指令T*が出力されることを防止することができる。これにより、消費電力を抑制することができる。
また、旋回変数マップが緩和曲線となっているので、旋回絶対値|ΔU|が所定の閾値付近の場合にピッチング制御トルク指令T*の出力が徐々に小さくなるようにすることができる。これにより、走行安定性を向上させることができる。
【0084】
また、ノッチフィルタ70を備えるので、駆動モータMの制御が不安定となり易い特定の周波数の制御不安定周波数を除去して、制御安定性を高めることができる。
また、ノッチフィルタ70の代わりに、制御周波数帯の位相に影響を与えないローパスフィルタとして、鋭角になった波形を滑らかにもよい。
【0085】
また、フォークリフトFによれば、上記のいずれかの電動車両用制御装置1を備えるので、ピッチング振動が発生したとしても、高い振動減衰率が得られ、乗り心地や操作性を向上させることができる。
特に、ピッチング振動が生じ易い凹凸が大きい路面においては、あまり高速走行できないことから、車速が低速域(0〜15km/h(好ましくは0〜8km/h))となるために、駆動モータMの余裕トルクが比較的に大きく、これを利用することができるので、既存のフォークリフトFの制御装置にピッチング制御コントローラ2を追加するだけで、ピッチング振動を低減することができる。
なお、フォークリフトFのピッチング振動は、2〜3Hz程度の比較的に低周波のものであると、駆動モータMの追従が容易となる。
【0086】
なお、本実施形態においては、三つの位相調整部11〜13を設けたが、一つのみ設ける構成としてもよい。
【0087】
また、三つの位相調整部11〜13は、それぞれBPF11a〜13aと、時間遅れ手段11b〜13bとで構成したが、BPF11a〜13aのみから構成してもよい。また、BPF11a〜13aは、HPF(ハイパスフィルタ)と、LPFとを組み合わせる構成としてもよい。
【0088】
また、本実施形態においては、スカイフック制御理論を適用してフィルタ11a〜13aのフィルタ設計をしたが、例えば、ピッチング制御コントローラ2にH∞制御や最適制御等の各種制御理論を適用して、これらの制御方式に適合するようにフィルタ設計(制御系設計)をしてもよい。
【0089】
また、本実施形態においては、三つの位相調整部11〜13を備えると共に、リフト圧判定部15と選択部16とを設けて、制御周波数帯を可変にする構成としたが、それ以上の数に分けて、制御周波数帯をより細かく切り替えてもよい。また、可変フィルタ等を用いて制御周波数帯を連続的に可変できる設定にしてもよい。
【0090】
また、本実施形態においては、加速度データとして、検出リフト圧Pを用いる構成としたが、例えば、リフトLの支持部に歪みゲージを設けて加速度データを求めても良いし、荷物又はリフトに加速度計を設けて加速度データを求めてもよい。
【0091】
また、本実施形態においては、前方主体ピッチングの周波数(2〜3Hz)を対象として、位相調整部11〜13の制御周波数帯を設定したが、後方主体ピッチング(4〜6HZ)を対象として位相調整部11〜13の制御周波数帯を設定してもよい。
【0092】
また、本実施形態においては、駆動モータの種類について特に言及しなかったが、例えば、交流電動機、直流電動機を用いることができる。また、交流電動機としては、誘導電動機、同期電動機に用いることができる。
なお、比較的に低周波の車体ピッチング(〜10HZ)に限定して、フィルタ設計を行えば、応答性の悪い誘導電動機でも対応できる。
【0093】
また、本実施形態においては、駆動モータMを二つ(M,M)備えるフォークリフトFに本発明を適用したが、駆動モータMを一つだけ備えるフォークリフトに本発明を適用してもよい。
【0094】
また、本実施形態においては、電動車両としてフォークリフトFに本発明に係る電動車両用制御装置1を適用する構成としたが、電動車両であれば、乗用車等に適用することが可能である。
【0095】
また、本実施形態においては、フォークリフトFの運動パラメータとして加速度データを用い、この加速度データを位相調整して得られる速度データを振動パラメータとして用いる構成としたが、次のような構成でもよい。
すなわち、電動車両の運動パラメータとして変位データを用い、この変位データにおける制御周波数帯に対して微分演算又は位相調整を行って速度データを求め、この速度データを振動パラメータとして用いる構成としてもよい。なお、変位データは、例えば、リフトLの支持部に変位計を設けることによって求めることができる。
また、電動車両の運動パラメータとして速度データを用い、この速度データのうちの制御周波数帯を振動パラメータとして用いる構成としてもよい。なお、速度データは、例えば、リフトLや荷物に速度センサを設けて求めてもよいし、モータ回転数ωを用いる構成としてもよい。
【0096】
また、本実施形態においては、旋回量|ΔU|が閾値以上となった場合には、ピッチング制御トルク指令T*の出力が0となるように構成したが、この旋回量|ΔU|の閾値を設けなかった場合や、旋回量|ΔU|の閾値を比較的に大きく設定した場合には、ピッチング制御トルク指令T*にモータ回転数配分情報を含ませて、駆動モータM,Mのモータ走行トルクに配分を設けてもよい。
【0097】
(第二実施形態)
図6は、本発明の第二実施形態である電動車両用制御装置501の全体構成を示すブロック図である。なお、図6において、図1から図5と同様の構成要素については、同一の符合を付して説明を省略する。
【0098】
上述した第一実施形態の電動車両用制御装置1は、車両本体Cの走行制御に速度制御(モータ回転数制御)を採用したものであったが、本実施形態においては、トルク制御を採用している。
電動車両用制御装置501は、アクセル入力処理部510と、第二加算器400と、ピッチング制御コントローラ2とを有しており、トルク制御によって車両本体Cの走行制御を行うように構成されている。
【0099】
すなわち、アクセル入力処理部510は、アクセルの踏み込み量に応じてモータ制御トルク指令T*を第二加算器400に出力するように構成し、このモータ制御トルク指令T*とピッチング制御トルク指令T*とを加算するようにすれば、本発明をトルク制御に適用することが可能となる。
この構成においても上述した第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
(第三実施形態)
図7は、本発明の第三実施形態に係る電動車両用制御装置601の全体概略構成を示すブロック図である。
なお、図7において、図1から図6と同様の構成要素については、同一の符合を付して説明を省略する。
図7に示すように、モータ回転数のフィードバックループに設けた速度制御コントローラ100にピッチング制御コントローラ2を直接組み込むように構成したものである。
この場合には、運動パラメータは、検出モータ回転数ωとしており、振動パラメータは、検出モータ回転数ωによる速度データとなる。
この構成によっても上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
なお、上述した実施の形態において示したパラメータ値、動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0102】
1,501,601…電動車両用制御装置
2…ピッチング制御コントローラ
10…振動制御部
11〜13…位相調整部
11a〜13a…フィルタ
11b…時間遅れ手段
17…増幅部
20…不感帯要素
30…トルクリミッタ部
31…リミッタ
32…余裕トルク演算手段
40…荷重判定部
50…車速判定部
60…旋回判定部
70…ノッチフィルタ(不安定成分除去フィルタ)
80…車速演算部
90…旋回量演算部
C…車両本体
L…リフト
M(M,M)…駆動モータ
P…検出リフト圧(運動量パラメータ、加速度データ)
T*…トルク指令(モータ制御指令)
T*…モータ制御トルク指令(モータ制御指令)
T*…ピッチング制御トルク指令(振動制御指令)
F1…フォークリフト(電動車両)
DC…静的成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとを備える電動車両に用いられ、前記駆動モータに対してモータ制御指令を供給する電動車両用制御装置であって、
前記車軸を中心とした前記電動車両の上下振動を示す振動パラメータによって前記駆動モータをフィードバック制御することを特徴とする電動車両用制御装置。
【請求項2】
前記モータ制御指令に加えられる振動制御指令を、前記振動パラメータから生成する振動制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の電動車両用制御装置。
【請求項3】
前記振動制御部は、前記振動パラメータを含む前記電動車両の運動パラメータが入力されるフィルタを備え、
該フィルタは、前記上下振動の周波数に基づいた制御周波数帯が設定され、前記入力された運動パラメータから前記振動パラメータを検出することを特徴とする請求項2に記載の電動車両用制御装置。
【請求項4】
前記運動パラメータは、前記電動車両の加速度データであり、
前記振動制御部は、前記フィルタによって前記制御周波数帯の前記加速度データに対して位相調整を行って、前記振動パラメータとなる速度データを取得することを特徴とする請求項3に記載の電動車両用制御装置。
【請求項5】
前記振動制御部は、前記フィルタの出力に対して時間遅れで位相調整を行う時間遅れ手段を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の電動車両用制御装置。
【請求項6】
前記振動制御部は、前記電動車両に作用する静的荷重によって、前記制御周波数帯を変更することを特徴とする請求項2から5のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項7】
前記振動制御部は、前記電動車両に作用する静的荷重によって、前記振動パラメータに対するゲイン係数を変更する増幅部を有することを特徴とする請求項2から6のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項8】
前記振動制御指令が所定の閾値以上であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる不感帯要素を有することを特徴とする請求項2から7のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項9】
駆動モータの余裕トルクを求める余裕トルク演算手段と、
該余裕トルク演算部の演算結果である前記余裕トルクの負の値が許容最小値として設定され、前記振動制御指令のうち前記許容最小値未満の振動制御指令を遮断するリミッタとを備えるトルクリミッタ部を有することを特徴とする請求項2から8のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項10】
前記電動車両に作用する静的荷重が所定の閾値以上であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる荷重判定部を備えることを特徴とする請求項2から9のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項11】
前記電動車両の車速が所定の閾値以上であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる車速判定部を備えることを特徴とする請求項2から10のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項12】
前記電動車両の旋回量が所定の閾値未満であることを条件として、前記振動制御指令を通過させる旋回判定部を備えることを特徴とする請求項2から11のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項13】
前記振動制御指令の制御不安定周波数を除去する不安定成分除去フィルタを備えることを特徴とする請求項2から12のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置。
【請求項14】
駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとを備える電動車両に用いられ、前記駆動モータに対してモータ制御指令を供給する電動車両用制御装置であって、
前記駆動モータの回転数によるフィードバックループに位相調整部を設けたことを特徴とする電動車両用制御装置。
【請求項15】
駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとを備え、
請求項1から13のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項16】
駆動タイヤ及び車軸を有する車体と前記駆動タイヤにトルクを付与する駆動モータとリフトとを備え、
請求項1から13のうちいずれか一項に記載の電動車両用制御装置を備えることを特徴とするフォークリフト。
【請求項17】
前記運動データは、前記電動車両の加速度データであり、
前記リフトに作用するリフト圧が前記加速度データとして前記フィルタに入力されることを特徴とする請求項16に記載のフォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78241(P2011−78241A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228331(P2009−228331)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】