説明

電圧変換回路の制御装置

【課題】電圧変換回路の出力電圧が印加される経路の異常の有無をより適切に判断することのできる電圧変換回路の制御装置を提供する。
【解決手段】DC−DCコンバータの出力電圧は、監視ラインL3を介して監視される。PWMコンパレータ70は、ノードNaの電圧と基準電圧源68の電圧との差についての誤差増幅器66による出力に基づき、出力電圧を制御するパルスを生成する。差動増幅アンプ78は、ノードNbの電圧とノードNcの電圧との差圧に応じた信号を、断線検出コンパレータ80に出力する。断線検出コンパレータ80は、上記差圧に応じた信号が基準電圧源82の閾値電圧以上となると、フィルタ回路84に論理「H」の信号を出力する。フィルタ回路84は、断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」の状態が規定時間継続することで、論理「H」の信号である異常がある旨の信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電源の電圧を変圧してバッテリに出力する電圧変換回路に適用され、該電圧変換回路の出力電圧を所望の電圧に制御する電圧変換回路の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に、DC−DCコンバータの制御装置100の構成を示す。制御装置100は、図示しないイグニッションスイッチがオンとされることで制御リレー34が導通状態となると、バッテリ30の電力が給電されるものである。制御装置100は、バッテリ30による給電が維持される間、DC−DCコンバータのスイッチング素子をオン・オフ作動することで、入力電源の電圧を所望の電圧に変圧する制御を行う。こうして制御されるDC−DCコンバータの出力電圧は、出力ラインOWを介してバッテリ30に充電される。
【0003】
上記制御装置100において、バッテリ30近傍に接続される配線であるリモートセンシングラインRWと接地との間には、抵抗62R,64Rの直列接続体が接続されている。これら抵抗62R,64Rによって分圧されるリモートセンシングラインRWの電圧は、バッテリ30の電圧の検出値として、誤差増幅器66Rに取り込まれる。誤差増幅器66Rは、取り込んだ電圧と、基準電圧源68の基準電圧との差に応じた信号を、PWMコンパレータ70Rの非反転入力端子に出力する。PWMコンパレータ70Rの反転入力端子には、三角波生成回路72によって生成される三角波形を有する電圧信号が印加される。上記PWMコンパレータ70Rの出力する信号は、DC−DCコンバータのスイッチング素子をオン・オフ作動するための原型となるものである。
【0004】
制御装置100においては、更に、DC−DCコンバータの出力端子近傍の電圧を直接監視するためのローカルセンシングラインLWと接地との間に、抵抗62L,64Lの直列接続体が接続されている。これら抵抗62L,64Lによって分圧されるローカルセンシングラインLWの電圧は、DC−DCコンバータの出力電圧の検出値として、誤差増幅器66Lに取り込まれる。誤差増幅器66Lは、取り込んだ電圧と上記基準電圧源68の基準電圧との差に応じた信号を、PWMコンパレータ70Lの非反転入力端子に出力する。PWMコンパレータ70Lの反転入力端子には、上記三角波生成回路72によって生成される三角波形を有する電圧信号が印加される。上記PWMコンパレータ70Lの出力する信号も、DC−DCコンバータのスイッチング素子をオン・オフ作動するための原型となるものである。
【0005】
PWMコンパレータ70R及びPWMコンパレータ70Lの出力する信号のいずれかが、選択回路73によって選択され、AND回路74に取り込まれる。AND回路74の出力は、上記選択された出力信号が論理「H」であって、且つ保護回路76の出力信号が論理「H」であるときに、論理「H」となる。AND回路74の出力信号は、DC−DCコンバータのスイッチング素子に印加され、これにより、DC−DCコンバータの出力電圧が所望の電圧に制御される。
【0006】
更に、ローカルセンシングラインLWと接地との間には、抵抗102,104の直列接続体が接続されている。そして、抵抗102,104によって分圧されたローカルセンシングラインLWの電圧が、DC−DCコンバータの出力電圧の検出値として、断線検出コンパレータ80の非反転入力端子に出力される。断線検出コンパレータ80の反転入力端子には、基準電圧源82の閾値電圧が印加されている。この閾値電圧は、DC−DCコンバータの出力電圧が過度に大きな値となる状態を検出するための値に設定されている。そして、断線検出コンパレータ80の出力は、フィルタ付きラッチ回路106に取り込まれる。フィルタ付きラッチ回路106は、断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」である状態が規定時間継続することで、自身の出力を論理「H」に反転してその状態を保持するものである。
【0007】
フィルタ付きラッチ回路106の出力信号が論理「L」であるときには、選択回路73がPWMコンパレータ70Rの出力を選択する。このため、正常時には、DC−DCコンバータの出力電圧は、リモートセンシングラインRWの電圧に基づき制御されることとなる。そして、フィルタ付きラッチ回路106の出力信号が論理「H」となると、選択回路73においてPWMコンパレータ70Lが選択され、また、異常状態である旨の警報信号が出力される。
【0008】
上記ローカルセンシングラインLWの電圧が過度に大きくなる要因は、主として、DC―DCコンバータの出力端子からバッテリ30までの出力ラインOWの断線がある。図12に、出力ラインOWのうちどこか(図11中、×印にてブレークポイントBP1〜BP3として例示)に断線が生じるときの制御装置100の動作を示す。詳しくは、図12(a)は、断線の有無を示し、図12(b)は、DC−DCコンバータの出力電圧を示し、図12(c)は、断線検出コンパレータ80の出力を示し、図12(d)は、フィルタ付きラッチ回路106の出力を示し、図12(e)は、選択回路73の選択状態を示し、図12(f)は、警報出力を示す。
【0009】
図12(a)に示されるように、出力ラインOWに断線が生じると、バッテリ30にDC−DCコンバータの出力電圧が印加されないために、リモートセンシングラインRWの電圧が低下する。これにより、PWMコンパレータ70RがDC−DCコンバータの出力電圧を上昇させるようにその出力信号を変化させるため、図12(b)に示すように、DC−DCコンバータの出力電圧が上昇する。そして、出力電圧が、図中、一点鎖線にて示す閾値電圧以上となると、断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」となり、規定時間経過後、フィルタ付きラッチ回路106の出力が論理「H」となる。これにより、選択回路73によってPWMコンパレータ70Lが選択される。PWMコンパレータ70Lは、DC−DCコンバータの出力端子近傍の電圧を監視しているため、DC−DCコンバータの出力電圧が過大であるとして、出力電圧を減少させる信号を出力する。このため、選択回路73によってPWMコンパレータ70Lが選択された後には、DC−DCコンバータの出力電圧が低下する。また、フィルタ付きラッチ回路106の出力が論理「H」となることで、図示しない警報器に異常である旨の信号が出力される。
【0010】
ところで、DC―DCコンバータの制御装置としては、出力電圧を制御するためのスイッチング素子の作動信号を生成するための回路を、リモートセンシングラインRWとローカルセンシングラインLWとの2つの系統についてそれぞれ備えるものに限らない。図13に、ローカルセンシングラインLWの電圧に基づき出力電圧を制御し、リモートセンシングラインRWの電圧に基づく制御系統を有しない制御装置110を示す。なお、図13において、先の図11と同一の部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0011】
この制御装置110においては、出力ラインOWの断線時、図14に示す動作をする。ここで、図14(a)は、断線の有無を示し、図14(b)は、DC−DCコンバータの出力電圧を示し、図14(c)は、DC−DCコンバータの出力電流を示し、図14(d)は、断線検出コンパレータ80の出力を示し、図14(e)は、フィルタ付きラッチ回路106の出力を示し、図14(f)は、警報出力を示す。
【0012】
図示されるように、断線が生じることで、DC−DCコンバータの負荷が変動するため、DC−DCコンバータの出力電流は減少する。すなわち、先の図13に示すように、ブレークポイントBP3で断線した場合には、出力電流はゼロなり、また、ブレークポイントBP2で断線した場合には、出力電流は、たかだか負荷LO1による電力消費相当となる。ただし、断線が生じても、ローカルセンシングラインLWの電圧を監視する限り、異常が見られないため、断線検出コンパレータ80の出力やフィルタ付きラッチ回路106の出力は論理「L」のままである。このため、異常である旨の信号が出力されることは無い。
【0013】
なお、電圧変換回路の制御装置としては、図11及び図13に示したものに限らず、例えば下記特許文献1に記載されているものがある。
【特許文献1】特開2002−247837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、入力電源の電圧を変圧してバッテリ等に出力する電圧変換回路の出力電圧を所望に制御するに際し、電圧変換回路の出力電圧が印加される経路の異常の有無をより適切に判断することのできる電圧変換回路の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0016】
請求項1記載の発明は、前記電圧変換回路の出力端子近傍の電圧と前記バッテリ近傍の電圧との差圧を検出する検出手段と、該検出手段によって検出される差圧が予め定められた閾値以上となることで、前記電圧変換回路の出力電圧が印加される経路に異常がある旨の信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記構成において、電圧変換回路の出力電圧が印加される経路に異常がある場合であっても、出力端子近傍の電圧は上記所望の電圧に近似している。ただし、出力電圧がバッテリに印加されなくなるために、バッテリの電力消費に伴い、バッテリ近傍の電圧は低下していく。このため、上記異常が生じることで、出力端子近傍の電圧とバッテリ近傍の電圧との間には差が生じる。上記構成では、この性質に着目し、出力端子近傍の電圧とバッテリ近傍の電圧との差圧に基づき、異常がある旨の判断をすることができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記出力手段は、前記差圧が前記閾値以上であるか否かを判断する判断手段と、該閾値以上である継続時間が予め定められた時間以上であるときに前記異常がある旨の信号を出力する手段とを備えて構成されることを特徴とする。
【0019】
上記構成では、差圧が閾値以上であることが継続するときに異常があると判断するために、検出手段等にノイズが混入することで一時的に差圧が閾値以上となった場合であっても、これにより異常があるとの誤判断をすることを回避することができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記電圧変換回路の出力する電流が規定電流以上であるとき、前記異常がある旨の信号の出力を禁止する禁止手段を更に備えることを特徴とする。
【0021】
上記構成において、電圧変換回路の出力する電流が大きいときには、電圧変換回路の出力端子とバッテリとを接続する経路において大きな電流が流れるため、同経路における電圧降下も大きなものとなる。このため、出力端子近傍の電圧に対してバッテリの電圧が低下するおそれがある。この場合、経路に異常が生じていないにもかかわらず、異常が生じていると誤判断するおそれがある。この点、上記構成では、電圧変換回路の出力電流が規定電流以上であるときに異常がある旨の信号の出力を禁止することで、こうした問題を回避することができる。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記電圧変換回路は、トランスを備えて且つ、該トランスの1次側のスイッチング素子のスイッチング制御により前記電圧の制御を行うものであるとともに、前記トランスの2次側に、該2次側の電流を整流するための同期整流用スイッチング素子を備えるものであり、前記電圧変換回路の出力電流が所定以下であるときに同期整流制御を禁止する手段を更に備え、前記禁止手段は、前記同期整流用スイッチング素子を用いた同期整流制御が許可されているとき、前記規定電流以上であると判断することを特徴とする。
【0023】
上記構成においては、出力電流が少ないときには、同期整流制御が禁止される。これは、出力電流が少ないときには、電流が逆流することで同期整流用スイッチング素子の劣化を招くおそれがあるからである。この点、上記構成では、同期整流制御が禁止されているか否かを判断するという簡易な構成にて、出力電流が規定電流以上であるか否かを判断することができる。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記電圧変換回路は、トランスを備えて且つ、該トランスの1次側のスイッチング素子のスイッチング制御により前記電圧の制御を行うものであるとともに、前記トランスの2次側に、該2次側の電流を整流するための同期整流用スイッチング素子を備えるものであり、前記禁止手段は、前記1次側を流れる電流の検出値に基づき、前記電圧変換回路の出力電流が規定電流以上であるか否かを判断することを特徴とする。
【0025】
上記構成のように1次側の電圧を変圧して2次側から出力する電圧変換回路にあっては、2次側の電流量が大きなものとなるため、2次側の電流を検出する場合には、検出手段の発熱量の増大を招く等の問題が生じる。この点、上記構成では、1次側の電流の検出値に基づき、2次側の電流が規定電流以上であるか否かを判断することで、こうした問題を回避することができる。
【0026】
請求項6記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記禁止手段は、前記電圧変換回路の出力電流に応じて、前記閾値を可変設定することを特徴とする。
【0027】
上記構成において、電圧変換回路の出力する電流が大きいときには、電圧変換回路の出力端子とバッテリとを接続する経路において大きな電流が流れるため、同経路における電圧降下も大きなものとなる。このため、出力端子近傍の電圧に対してバッテリの電圧が低下するおそれがある。この場合、経路に異常が生じていないにもかかわらず、異常が生じていると誤判断するおそれがある。この点、上記構成では、電圧変換回路の出力電流に応じて閾値を可変設定することで、こうした問題を回避することができる。
【0028】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記バッテリと当該制御装置との間には、車両の起動スイッチがオンとされることで導通状態となるスイッチ手段が設けられており、当該制御装置は、前記スイッチ手段を介して取り込まれる前記バッテリからの電力に基づき所定の定電圧を生成する定電圧回路の出力を電力源とするものであって且つ、前記バッテリ近傍の電圧として、前記定電圧回路に印加される電圧を取り込むことを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、バッテリと定電圧回路とを接続する経路を利用することで、上記検出手段の構成のために新たに経路を設ける必要を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電圧変換回路の制御装置を、ハイブリッド車に搭載されるDC−DCコンバータの制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に、本実施形態にかかるDC−DCコンバータ及び同コンバータの制御装置の全体構成を示す。
【0032】
図示されるように、DC−DCコンバータ20は、車両において発電される電力を高圧状態で蓄電する高圧バッテリ10の電圧を変圧し、出力ラインOWを介して低圧のバッテリ30に出力するものである。詳しくは、DC−DCコンバータ20は、トランス21の1次側コイル21aと2次側コイル21b,21cとの巻数比に応じて、1次側コイル21aの電圧を2次側コイル21bの電圧に変換する。
【0033】
DC−DCコンバータ20は、1次側コイル21aと接続される1次側回路として、上記高圧バッテリ10に並列接続される、パワースイッチング素子22,23の直接接続体と、パワースイッチング素子24,25の直列接続体と、コンデンサ26とを備えている。そして、1次側コイル21aは、パワースイッチング素子22,23の接続点と、パワースイッチング素子24,25の接続点との間に接続される。
【0034】
一方、2次側コイル21b及び2次側コイル21c間には、同期整流用スイッチング素子27,28が直列接続されており、各同期整流用スイッチング素子27,28には、それぞれダイオード27a,28aが並列接続されている。そして、同期整流用スイッチング素子27,28の接続点は接地されており、2次側コイル21b,21cの端子のうち同期整流用スイッチング素子27,28と接続されていない端子は、平滑回路29に接続されている。平滑回路29は、2次側コイル21b,21cの出力電圧が印加されるインダクタ29aと、コンデンサ29cとを備えて構成されている。
【0035】
一方、制御装置40は、DC−DCコンバータ20の出力電圧を所望の電圧に制御すべく、パワースイッチング素子22〜25にそれぞれ作動信号DS1〜DS4を出力することで、パワースイッチング素子22〜25を作動する。この際、所定の条件下、同期整流用スイッチング素子27,28に作動信号SS1,SS2を出力することで、同期整流用スイッチング素子27,28を作動して同期整流制御を行なう。
【0036】
制御装置40は、車両の起動スイッチ(イグニッションスイッチ32)がオンとされることで制御リレー34が導通状態となると、給電ラインLBを介してバッテリ30による給電がなされるものである。制御装置40は、バッテリ30の電力に基づき一定の電圧を生成する定電圧回路42を備えており、定電圧回路42の電力が、給電ラインL1を介してコントローラ44に給電される。
【0037】
コントローラ44は、制御リレー34と定電圧回路42との間に接続される監視ラインL2と接続されており、監視ラインL2を介して制御リレー34の状態を監視する機能を有する。また、コントローラ44は、平滑回路29とDC−DCコンバータ20の出力端子T1との間に接続される監視ラインL3を介して、DC−DCコンバータ20の出力電圧を監視する。そして、この監視される出力電圧に基づき、駆動回路46を介して、上記作動信号DS1〜DS4を出力する。ここで、作動信号DS1〜DS4は、DC−DCコンバータ20の出力電圧と所望の電圧との差に応じてオン・オフ作動の周期に対するオン時間の比(デューティ)を調節する信号である。また、コントローラ44は、パワースイッチング素子22,23の接続点と1次側コイル21aとの間に接続される電流センサ50によって検出される1次側コイル21aを流れる電流の検出値に基づき、所定の条件下、上記作動信号SS1,SS2を出力する。なお、電流センサ50は、1次側コイル21aを流れる電流を整流する機能を有しており、1次側コイル21aを流れる電流を整流したものを検出値として出力する。
【0038】
上記駆動回路46は、定電圧回路42と高圧バッテリ10との双方を給電手段として利用するものである。すなわち、定電圧回路42の電力に基づき作動信号SS1,SS2を生成し、また、高圧バッテリ10の電力に基づき作動信号DS1〜DS4を生成する。
【0039】
図2に、制御装置40のうち、特にコントローラ44内において、作動信号DS1〜DS4を生成する回路の構成を示す。
【0040】
図示されるように、DC−DCコンバータ20の出力ラインOWには、バッテリ30のみならず、負荷LO1〜LO5が接続されている。また、給電ラインLBにも、制御装置40を含むいくつかの負荷LO6、LO7が接続されている。
【0041】
上記コントローラ44において、監視ラインL3と接地との間には、抵抗62,64の直列接続体が接続されている。これら抵抗62,64の接続されるノードNaの電圧は、DC−DCコンバータ20の出力電圧の検出値として、誤差増幅器66に取り込まれる。誤差増幅器66は、演算増幅器66aの反転入力端子がノードNaと接続されるとともに、演算増幅器66aの非反転入力端子に基準電圧源68が接続され、且つ演算増幅器66aの出力が抵抗66bを介して演算増幅器66aの反転入力端子に帰還されるものである。
【0042】
誤差増幅器66の出力は、PWMコンパレータ70の非反転入力端子に印加される。PWMコンパレータ70の反転入力端子には、三角波生成回路72によって生成されるキャリアとしての三角波形を有する電圧信号が印加される。
【0043】
上記PWMコンパレータ70の出力する信号は、上記作動信号DS1〜DS4の原型となるものである。PWMコンパレータ70の出力する信号は、基準電圧源68によって印加される基準電圧とノードNaの電圧との差圧に応じたパルス幅の信号となっている。PWMコンパレータ70の出力する信号は、AND回路74に入力される。AND回路74の出力は、PWMコンパレータ70の出力が論理「H」であって、且つ保護回路76の出力信号が論理「H」であるときに、論理「H」となる。このAND回路74の出力が、駆動回路46において電力変換され、作動信号DS1〜DS4としてパワースイッチング素子22〜25に出力される。
【0044】
保護回路76は、パワースイッチング素子22〜25の作動の禁止が所望される条件が成立するときに、その出力を論理「L」とするものである。この禁止が所望される条件としては、例えばDC−DCコンバータ20の温度が過度に高くなるとの条件がある。
【0045】
上記監視ラインL3上にあって抵抗62の上流のノードNbの電圧と、監視ラインL2のノードNcの電圧とは、差動増幅アンプ78に取り込まれる。差動増幅アンプ78では、これらノードNbの電圧とノードNcの電圧との差圧に応じた信号を断線検出コンパレータ80の非反転入力端子に出力する。断線検出コンパレータ80の反転入力端子には、基準電圧源82の閾値電圧が印加されている。断線検出コンパレータ80では、差動増幅アンプ78の出力に基づき、上記差圧が閾値電圧以上であるときに、論理「H」の信号をフィルタ回路84に出力する。フィルタ回路84では、断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」である状態が規定時間以上となると、論理「H」の信号を、先の図1に示す警報器52に出力する。この論理「H」の信号が、出力ラインOWに異常がある旨を示す警報信号である。これにより、警報器52では、出力ラインOWに異常がある旨の報知をする。なお、上記規定時間は、差動増幅アンプ78の入力信号にノイズが混入するなどして差圧が一時的に大きくなったときに、これにより異常がある旨の信号を出力することを禁止するためのものである。
【0046】
図3に、出力ラインOWに断線が生じた場合の制御装置40の動作を示す。詳しくは、図3(a)に、出力ラインOWの断線の有無を示し、図3(b)に、ノードNbの電圧を示し、図3(c)に、DC−DCコンバータ20の出力電流を示し、図3(d)に、ノードNcの電圧を示し、図3(e)に、差動増幅アンプ78の出力を示し、図3(f)に、断線検出コンパレータ80の出力を示し、図3(g)に、フィルタ回路84の出力を示す。
【0047】
図示されるように、時刻t1に出力ラインOWに断線が生じても、出力端子T1近傍と接続される監視ラインL3のノードNbには変化はない。しかし、DC−DCコンバータ20の出力電流は、減少する。ここで、先の図2に示すブレークポイントBP3にて断線が生じるときには、DC−DCコンバータ20は、バッテリ30及び負荷LO1〜LO5のいずれにも電流を出力しないために、電流は略ゼロとなる。また、先の図2に示すブレークポイントBP2にて断線が生じるときには、DC−DCコンバータ20の出力は、負荷LO1,LO2に印加されるのみであるため、出力電流は、たかだか負荷LO1,LO2に流れる電流程度となる。
【0048】
一方、断線が生じることでDC−DCコンバータ20からバッテリ30に充電がなされなくなるため、ノードNcの電圧は低下していく。このため、ノードNbの電圧とノードNcの電圧との差圧が増大し、差動増幅アンプ78の出力が上昇する。そして、この出力が基準電圧源82の閾値電圧Vth以上となる時刻t2において、断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」となる。そして、断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」となる状態が規定時間Δt以上となると、フィルタ回路84の出力が論理「H」となる(フィルタ回路84から警報器52に、出力ラインOWに異常がある旨の信号が出力される)。
【0049】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0050】
(1)DC−DCコンバータ20の出力端子T1近傍(ノードNb)の電圧とバッテリ30近傍(ノードNc)の電圧との差圧が予め定められた閾値以上となることで(より正確には、差圧に基づく差動増幅アンプ78の出力が閾値電圧以上となることで)、出力ラインOWに異常がある旨の信号を出力した。これにより、出力ラインOWに異常がある旨の判断をより適切に行なうことができる。
【0051】
(2)断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」となる状態の継続が規定時間以上であるときに、フィルタ回路84により、出力ラインOWに異常がある旨の信号を出力した。これにより、差動増幅アンプ78の入力にノイズが混入することにより異常があると誤判断をすることを回避することができる。
【0052】
(3)給電ラインLBに印加される電圧をバッテリ30近傍の電圧として取り込むことで、バッテリ30近傍の電圧を検出するために、新たに配線を設けることを回避することができる。しかも、監視ラインL2を用いることで、コントローラ44において別の用途で用いる配線を利用することもできる。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0054】
本実施形態では、DC−DCコンバータ20の出力電流が規定電流以上であるとき、上記異常がある旨の信号の出力を禁止する。これは、DC−DCコンバータ20の出力電流が大きい場合、出力端子T1及びバッテリ30間における電圧降下が大きくなり、これによりノードNcの電圧とノードNbの電圧との差圧が大きくなるおそれがあるためである。
【0055】
上記電圧降下は、DC−DCコンバータ20の出力電流によって一義的に定まるものではない。これは、先の図2に示したように、出力ラインOWには、バッテリ30のみならず、様々な負荷LO1〜LO5が接続されていることによる。すなわち、出力電流が一定であったとしても、例えば、DC−DCコンバータ20の電力が負荷LO1,LO2及びバッテリ30に供給されるときと、負荷LO4,LO5及びバッテリ30に供給されるときでは電圧降下の大きさは相違する。
【0056】
図4に、DC−DCコンバータ20の出力電流と、出力端子T1及びバッテリ30間における電圧降下を示す。図において、特性V1は、負荷LO1〜LO3が、電力の供給されないオフの状態であるときの電圧降下の特性を示す。この場合、出力電流に比例して電圧降下量が増加している。これに対し、特性V2に、負荷LO2,LO3が電力の供給されないオフ状態であって且つ負荷LO1が電力の供給されるオン状態であるときを示し、また、特性V3に、LO3が電力の供給されないオフ状態であって且つ負荷LO1,LO2が電力の供給されるオン状態であるときを示す。図示されるように、これらの場合、出力端子T1からバッテリ30に向かうにつれて電流量が少なくなるため、電圧降下量が低下している。
【0057】
このように、出力電流が増大するに伴い電圧降下が大きくなり得るため、DC-DCコンバータ20の出力電流が規定電流以上であるときに、上記異常がある旨の信号の出力を禁止する。ここで、この禁止にかかる処理を行なうための構成を極力簡易なものとすべく、本実施形態では、同期整流用スイッチング素子27,28による同期整流制御が許可されるときを規定電流以上の電流が流れているときとする。すなわち、同期整流制御は、出力電流が小さいときには禁止されるため、同期整流制御の許可及び禁止の切り替え状態に応じて簡易に上記異常がある旨の信号の出力の禁止にかかる処理を行なう。
【0058】
以下では、まず図5〜図7を用いて同期整流制御の許可及び禁止の切り替え手法を説明し、その後、図8に基づき、出力電流が規定電流以上であるときに異常がある旨の信号の出力を禁止する処理について説明する。
【0059】
図5に、上記同期整流用スイッチング素子27,28を用いた同期整流制御がなされているときの電流の挙動を示す。詳しくは、図5(a)に、インダクタ29aを流れる電流を示し、図5(b)に、DC―DCコンバータ20の出力電流Ioutを示し、図5(c)に、1次側コイル21aを流れる電流の整流後の電流を示し、図5(d)に、パワースイッチング素子22〜25のいずれかの作動態様を示し、図5(e)に、同期整流用スイッチング素子27,28のいずれかの作動態様を示す。
【0060】
図示されるように、パワースイッチング素子22〜25のいずれかがオンとされ、これと同期して同期整流用スイッチング素子27,28のいずれかがオンとされると、インダクタ29aを流れる電流は、漸増する。また、スイッチング素子22〜25のいずれかがオフとされ、これに同期して同期整流用スイッチング素子27,28もオフとされると、インダクタ29aを流れる電流は、漸減する。ちなみに、同期整流用スイッチング素子27,28がオフされるときには、上記同期整流用スイッチング素子27,28と並列に接続されたダイオード27a,28aを介して電流が流れる。このように、インダクタ29aを流れる電流は、漸増及び漸減を繰り返すが、DC−DCコンバータ20の出力電流Ioutは、インダクタ29aを流れる電流がコンデンサ29cにより平滑化されるため、図5(b)のように略安定した出力値となる。
【0061】
これに対し、図5(c)に示すように、1次側コイル21aを流れる電流は、パワースイッチング素子22〜25のいずれかがオン作動されることで立ち上がり、同いずれかがオフ作動されることでゼロとなる断続的な電流である。また、上記オン作動直後からオフ作動直前まで、電流は漸増している。そして、図示されるように、1次側コイル21aを流れる電流の整流後の電流のうち、オン作動直後の値とオフ作動直前の値との中間の値が、上記出力電流Ioutをトランス21の巻数比Nで除算した値「Iout/N」と略等しくなっている。これは、1次側コイル21aを流れる電流の整流後の電流が、出力電流Ioutに応じた上記電流値「Iout/N」に、インダクタ29aを流れる電流の交流成分を巻数比Nで除算した値を有する電流と、トランス21による励磁電流とが重畳したものとなっているからである。ここで、巻数比Nは、1次側コイル21aの巻数Npと、2次側コイル21b,21cの巻き数Nsとによって、「N=Np/Ns」によって定義される。
【0062】
上記同期整流用スイッチング素子27,28のオン作動は常時行なえるものではない。すなわち、図5(a)に示す漸減から漸増への切り替わり時(オン作動直前)の電流値I0がゼロよりも小さくなるときには、2次側回路において電流が逆流し、同期整流用スイッチング素子27,28の劣化が促進されるおそれがあるため、同期整流用スイッチング素子27,28のオン作動を禁止する。この同期整流制御の禁止及び許可の切り替えを、出力電流を直接検出することで行なう場合には、2次側に流れる電流が大きいため、発熱量が増大する等の問題がある。そこで、本実施形態では、1次側コイル21aに流れる電流の検出値に基づき、2次側回路を流れる電流を把握することで、同期整流制御の許可及び禁止の切り替えを行なう。ここで、1次側コイル21aを流れる電流を検出するうえでの留意点について説明する。
【0063】
図6(a)に、出力電流Ioutが一定であるとの条件下、1次側コイル21aに流れる電流が整流されたものの上記デューティによる変化態様を示す。図示されるように、1次側コイル21aに流れる電流のピーク値(オフ作動直前の電流値)は、デューティが大きくなるほど減少する傾向にある。また、オン作動による電流の立ち上がり時の値も、デューティの変化に応じて変化する。このため、1次側コイル21aを流れる電流を整流したものに基づき、インダクタ29aを流れる電流の漸減から漸増への切り替わり時の電流値I0(先の図5(a))を把握することは困難である。
【0064】
更に、図6(b)に示すように、1次側コイル21aを流れる電流には、実際にはスイッチングノイズ(サージノイズ)が重畳する。このノイズは、オン作動直後においてもっとも大きく、その後時間の経過とともに減衰していく。
【0065】
以上により、1次側コイル21aを流れる電流を検出するに際しては、オフ作動直前の電流を検出することが、サージノイズの影響を抑制する観点からは望ましい。また、1次側コイル21aを流れる電流に応じて2次側回路を流れる電流値を把握するためには、1次側コイル21aを流れる電流を整流したものと2次側を流れる電流との関係のデューティによる変化を補償することが望まれる。
【0066】
ここで本実施形態では、図6(a)に2点鎖線にて示すように、オフ作動直前の電流がデューティの増加に比例して減少することに着目する。この関係によれば、図7に斜線にて示す鋸波を1次側コイル21aに流れる電流を整流した電流値に重畳することで、オフ作動直前において、その値を、出力電流Ioutが一定である限り、同一とすることができる。
【0067】
ここで、上記鋸波の形状について考察する。
【0068】
同期整流用スイッチング素子27,28がオンとされるときにインダクタ29aを流れる電流ILは、先の図5(a)に示す電流値I0、入力電圧Vin、出力電圧Vout、トランス21の巻数比N、インダクタ29aのリアクタンスL、時間tを用いると、下記の式(c1)となる。

IL=(Vin/N−Vout)t/L+I0 …(c1)

先の図5(a)に示すインダクタ29aに流れる電流の変化量h、すなわちオン作動からオフ作動までの間の電流の変化量hは、上記の式(c1)の右辺第1項において、時間tをオン時間tonとすることで算出することができる。ここで、オン時間tonは、パワースイッチング素子22〜25を作動する際のスイッチング制御のデューティDと、スイッチング周波数fとを用いて、「ton=D/f」と表されるため、変化量hは、下記の式(c2)となる。

h=(Vin/N−Vout)D/fL …(c2)

これにより、1次側コイル21aを流れる電流Icは、出力電流Ioutを用いることで、下記の式(c3)となる。

Ic=Iout/N−(Vin/N−Vout)D/2fLN
+(Vin/N−Vout)t/NL…(c3)

上記の式(c3)において、1次側コイル21aを流れる電流は、出力電流Ioutを巻数比Nで徐算したものと、インダクタ29aを流れる電流の交流成分を巻数比Nで徐算したものとの和として算出されている。すなわち、トランス21による励磁電流による交流成分についてはこれを無視している。これは、本実施形態では、インダクタ29aのリアクタンスLと比較して、トランス21のリアクタンスの方がはるかに大きな値となっているため、トランス21による励磁電流の効果は、インダクタ29aによる交流成分の効果と比べて無視し得るほど小さいことを理由とする。
【0069】
上記式(c3)において、右辺第2項は、オン作動に伴う電流の立ち上がり時(t=0における値を定めるためのものである。また、右辺第3項は、オン作動に伴う電流の変化を表す項である。
【0070】
上記式(c3)において、時間tをオン時間tonとすることで、オフ作動直前の電流値を算出することができる。ここで、「ton=D/f」を用いると、オフ作動直前の電流(ピーク値Ip)は、下記の式(c4)となる。

Ip=Iout/N+(Vin/N−Vout)D/2fLN …(c4)

ここで、定常状態においては、入力電圧Vinと、出力電圧Voutと、デューティDとの間に「D=NVout/Vin」の関係が成立することに鑑みれば、上記式(c4)の右辺第2項は、下記の式(c5)となる。

(c4)の右辺第2項=(Vin/N−Vout)D/2fLN
=(1−D)Vout/2fLN …(c5)

ここで、先の図7に示す鋸波の高さHは、上記式(c4)の右辺第2項において、「D=0」とすることで、下記の式(c6)となる。

H=Vout/2fLN …(c6)

これにより、鋸波は、時間tの関数F(t)として、下記の式(c7)となる。

F(t)=(Vout/2LN)×t …(c7)

図8に、本実施形態にかかるコントローラ44の回路構成を示す。なお、図8において、先の図2と同一の機能を有する部材には、便宜上、同一の符号を付している。
【0071】
上記三角波生成回路72は、キャリアとともに、上記式(c7)にて示される鋸波を生成する。そして、三角波生成回路72の生成した鋸波は、加算器86に出力される。加算器86では、上記鋸波と、電流センサ50の出力とを加算し、禁止処理用コンパレータ87の非反転入力端子に出力する。禁止処理用コンパレータ87の反転入力端子には、基準電圧源88の所定電圧が印加されている。この所定電圧は、2次側回路を流れる電流が逆流することのない規定電流に応じて設定される。
【0072】
禁止処理用コンパレータ87の出力は、AND回路74の出力の立ち下がりエッジに同期してフリップフロップ89にラッチされる。そして、AND回路90では、AND回路74の出力と、フリップフロップ89によってラッチされた値との論理積信号を生成し、上記駆動回路46を介して同期整流用スイッチング素子27,28に出力する。
【0073】
ここで、AND回路74の出力の立ち下がりのタイミングで、加算器86の出力が基準電圧源88の所定電圧以上となる場合には、同期整流制御を許可すべく、フリップフロップ89の出力が論理「H」となる。
【0074】
一方、AND回路91は、上記断線検出コンパレータ80の出力と、フリップフロップ89の出力との論理積信号を上記フィルタ回路84に出力する。このため、AND回路91では、断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」であって且つ、フリップフロップ89の出力が論理「H」であるときにのみ論理「H」となる。
【0075】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0076】
(4)DC−DCコンバータの出力する電流が規定電流以上であるとき、異常がある旨の信号の出力を禁止することで、断線が生じていないにもかかわらず、出力ラインOWにおける電圧降下によって上記異常がある旨の信号が出力されることを回避することができる。
【0077】
(5)同期整流用スイッチング素子27,28を用いた同期整流制御が許可されているとき、上記規定電流以上であると判断することで、同期整流制御が禁止されているか否かを判断するという簡易な構成にて、出力電流が規定電流以上であるか否かを判断することができる。
【0078】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0079】
上記第2の実施形態では、同期整流用スイッチング素子27,28を用いた同期整流制御が許可されているときに、DC−DCコンバータ20の出力電流が、上記異常がある旨の信号の出力を禁止する規定電流以上であると判断した。しかし、この場合、例えば先の図2に示すブレークポイントBP2にて断線が生じて且つ負荷LO1及び負荷LO2がオン状態であるときにも、DC−DCコンバータ20の出力電流が増大し、同期整流制御が許可されることで異常がある旨の信号の出力が禁止される懸念がある。そこで、本実施形態では、先の図4に示す特性V1による電圧降下によっても断線がないにもかかわらず断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」となることはない出力電流の上限値に基づき、上記規定電流を設定する。
【0080】
図9に、本実施形態にかかるコントローラ44の回路構成を示す。なお、図9において、先の図8に示した部材と同一の機能を有する部材には、便宜上、同一の符号を付している。
【0081】
図示されるように、本実施形態においては、DC−DCコンバータ20の出力電流が上記規定電流以上であるか否かを判断する規定電流判定コンパレータ92を備えている。この規定電流判定コンパレータ92の反転入力端には、上記加算器86の出力が印加され、非反転入力端子には、基準電圧源93の規定電圧が印加されている。このため、規定電流判定コンパレータ92の出力は、加算器86の出力が規定電流以上となるときには、論理「L」を出力する。この規定電圧は、上記規定電流を判断するためのものである。
【0082】
そして、規定電流判定コンパレータ92の出力は、AND回路74の出力の立ち下がりエッジに同期してフリップフロップ94にラッチされる。そして、フリップフロップ94の出力と、断線検出コンパレータ80の出力との論理積信号が、フィルタ回路84に出力される。
【0083】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果や、先の第2の実施形態の上記(4)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0084】
(6)先の図4に示す特性V1による電圧降下によっても断線がないにもかかわらず断線検出コンパレータ80の出力が論理「H」となることはない出力電流の上限値に基づき、上記規定電流を設定することで、断線の有無をより適切に判断することができる。更に、1次側を流れる電流の検出値(1次側を流れる電流の整流されたものの検出値)に基づき、出力電流が規定電流以下であるか否かを判断することで、大電流が流れる2次側の電流を直接検出する場合に生じる発熱量の増大を招く等の問題を回避することができる。
【0085】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0086】
本実施形態では、DC−DCコンバータ20の出力電流に応じて、上記異常がある旨の信号の出力を禁止するための基準となる規定電流を可変設定する。
【0087】
図10に、本実施形態にかかるコントローラ44の回路構成を示す。なお、図10において、先の図2に示した部材と同一の機能を有する部材には、便宜上、同一の符号を付している。
【0088】
本実施形態では、閾値電圧補正部95を備えている。閾値電圧補正部95は、電流センサ50の検出値に基づき把握されるDC−DCコンバータ20の出力電流に応じて、基準電圧源82の閾値電圧を可変設定する。詳しくは、出力電流が大きいほど閾値電圧を大きな値に設定する。これは、出力電流が大きいほど、電圧降下が大きくなる傾向にあるため、ノードNcの電圧とノードNbの電圧との差圧も大きくなる傾向にあるからである。
【0089】
上記閾値電圧補正部95は、出力電流に応じて連続的又は3値以上の段階的に閾値電圧を可変設定する構成であってもよい。また、閾値電圧を2値的に可変設定してもよい。これを実現する構成の一例としては、例えば先の図9に示すフリップフロップ94等を備えて且つ、フリップフロップ92の出力が論理「H」であるか論理「L」であるかに応じて、閾値電圧を2値的に変更するものが考えられる。
【0090】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0091】
(7)DC−DCコンバータ20の出力電流に応じて、基準電圧源82の閾値電圧を可変設定した。これにより、出力ラインOWに断線が生じていないにもかかわらず、出力端子T1及びバッテリ30間における電圧降下が大きいためにノードNbの電圧とノードNcの電圧との差圧が大きくなる場合であっても、出力ラインOWに異常がある旨の信号を出力することを回避することができる。
【0092】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0093】
・上記第4の実施形態において、出力端子T1及びバッテリ30間における電圧降下が、同一の出力電流であっても負荷LO1〜LO3の作動状態に応じて変化することに着目して、負荷LO1〜LO3のそれぞれが作動しているか否かに応じて、閾値電圧を更に可変してもよい。
【0094】
・上記第3の実施形態では、オフ作動直前に出力電流に鋸波を重畳したものと、規定電圧とを比較したがこれに限らない。例えば、基準電圧源92の閾値電圧から三角波生成回路72の出力する鋸波の電圧値を減算したものを、規定電流判定コンパレータ92の非反転入力端子に印加するようにしてもよい。また、規定電流判定コンパレータ92に印加される2つの入力のいずれか一方の値を、出力電圧に応じて更に補正してもよい。ここで、出力電圧によって補正を行なう理由は、オフ作動直前の電流センサ50の検出値に三角波を重畳したものが、出力電流Ioutの変化にかかわらず一定となるのは、出力電圧が一定であることを前提としているためである。
【0095】
更に例えば、電流センサ50の検出値と規定電圧とを比較するのみであっても、出力電流が大きいときに上記異常がある旨の信号の出力を禁止することはできる。
【0096】
・上記第2の実施形態では、同期整流制御の許可を判断するための信号としてフリップフロップ89の出力を利用したが、これに限らず、例えばAND回路90の出力を利用してもよい。すなわち、AND回路90の出力が、スイッチング周期内で論理「L」から論理「H」へ変化するなら、同期整流制御が許可されていると判断できる。
【0097】
・上記各実施形態では、コントローラ44を専用のハードウェア手段として構成したが、これに限らず、PWMコンパレータ70や、三角波生成回路72、断線検出コンパレータ80による処理を記述したプログラムと、中央処理装置(CPU)にて構成してもよい。
【0098】
・その他、ハイブリッド車に搭載されるものに限らず、例えば電気自動車に搭載されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1の実施形態におけるDC−DCコンバータ及びその制御装置の全体構成を示す図。
【図2】同実施形態における制御装置内の構成を示す図。
【図3】同実施形態における出力ラインの断線時の制御装置の動作を示すタイムチャート。
【図4】出力電流と、出力ラインにおける電圧降下との関係を示す図。
【図5】DC−DCコンバータの作動及び電流の流通態様を示すタイムチャート。
【図6】1次側を流れる電流の検出に伴う問題点を説明する図。
【図7】第2の実施形態において電流センサの検出値に重畳する鋸波を示す図。
【図8】同実施形態における制御装置内の構成を示す図。
【図9】第3の実施形態における制御装置内の構成を示す図。
【図10】第4の実施形態における制御装置内の構成を示す図。
【図11】従来のDC−DCコンバータの制御装置の回路構成を示す図。
【図12】出力ラインの断線時における上記制御装置の動作を示すタイムチャート。
【図13】従来のDC−DCコンバータの制御装置の別の回路構成を示す図。
【図14】出力ラインの断線時における上記制御装置の動作を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0100】
10…高圧バッテリ、20…DC−DCコンバータ、21…トランス、21a…1次側コイル、21b,21c…2次側コイル、22〜25…パワースイッチング素子、30…バッテリ、40…制御装置、70…PWMコンパレータ、78…差動増幅アンプ、80…断線検出コンパレータ、84…フィルタ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源の電圧を変圧してバッテリ等に出力する電圧変換回路に適用され、該電圧変換回路の出力電圧を所望の電圧に制御する電圧変換回路の制御装置において、
前記電圧変換回路の出力端子近傍の電圧と前記バッテリ近傍の電圧との差圧を検出する検出手段と、
該検出手段によって検出される差圧が予め定められた閾値以上となることで、前記電圧変換回路の出力電圧が印加される経路に異常がある旨の信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とする電圧変換回路の制御装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記差圧が前記閾値以上であるか否かを判断する判断手段と、該閾値以上である継続時間が予め定められた時間以上であるときに前記異常がある旨の信号を出力する手段とを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の電圧変換回路の制御装置。
【請求項3】
前記電圧変換回路の出力する電流が規定電流以上であるとき、前記異常がある旨の信号の出力を禁止する禁止手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の電圧変換回路の制御装置。
【請求項4】
前記電圧変換回路は、トランスを備えて且つ、該トランスの1次側のスイッチング素子のスイッチング制御により前記電圧の制御を行うものであるとともに、前記トランスの2次側に、該2次側の電流を整流するための同期整流用スイッチング素子を備えるものであり、
前記電圧変換回路の出力電流が所定以下であるときに同期整流制御を禁止する手段を更に備え、
前記禁止手段は、前記同期整流用スイッチング素子を用いた同期整流制御が許可されているとき、前記規定電流以上であると判断することを特徴とする請求項3記載の電圧変換回路の制御装置。
【請求項5】
前記電圧変換回路は、トランスを備えて且つ、該トランスの1次側のスイッチング素子のスイッチング制御により前記電圧の制御を行うものであり、
前記禁止手段は、前記1次側を流れる電流の検出値に基づき、前記電圧変換回路の出力電流が規定電流以上であるか否かを判断することを特徴とする請求項3記載の電圧変換回路の制御装置。
【請求項6】
前記禁止手段は、前記電圧変換回路の出力電流に応じて、前記閾値を可変設定することを特徴とする請求項1又は2記載の電圧変換回路の制御装置。
【請求項7】
前記バッテリと当該制御装置との間には、車両の起動スイッチがオンとされることで導通状態となるスイッチ手段が設けられており、
当該制御装置は、前記スイッチ手段を介して取り込まれる前記バッテリからの電力に基づき所定の定電圧を生成する定電圧回路の出力を電力源とするものであって且つ、前記バッテリ近傍の電圧として、前記定電圧回路に印加される電圧を取り込むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電圧変換回路の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−202353(P2007−202353A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19796(P2006−19796)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】