説明

電子カメラおよびその露出制御方法

【課題】撮影モードに移行した後、遅延することなく、好適な露出制御が行なわれた画像を表示する電子カメラの提供。
【解決手段】電子カメラ10の電源オフ時に、絞り36およびシャッタ38を開放して所定の露出を行ない、固体撮像素子14に起電力を生じさせる。この起電力は、独立した電源によって駆動する増幅回路16、A/D変換器18および信号処理部22によってデジタルデータ58として検出され、信号処理部22は、その露出値決定機能24を用いて、起電力に対応する起動時露出値を予め決定する。電源が投入されるなどして電子カメラ10が撮影モードに移行すると、予め決定された起動露出値により光学系12が適切な露出を施した固体撮像素子から出力される画像が最初からモニタ49に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カメラおよびその露出制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子カメラでは被写体の明るさに応じた露出制御が行なわれている。露出制御では、処理時間を短縮しつつ、正確な露出値を求めることが重要である。とりわけ、カメラ起動時には、未だ被写体の明るさが不明であるため、起動直後の1フレームの画像を用い、被写体の明るさを推定して自動露出(Auto Exposure; AE)処理を行い、その評価値を基に、絞り調整およびシャッタスピードの決定による露出制御を行なうことが知られている。あるいは、調光センサなどを用いて、センサが感知する明るさを基に、絞り調整およびシャッタスピードの決定による露出制御を行なうことも知られている。
【0003】
特許文献1に記載の撮像装置では、露出粗調整として電荷結合素子(Charge Coupled Device; CCD)からの電荷読み出しを高速化することにより、露出制御の処理時間を短縮している。
【特許文献1】特開平7−303206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように、起動直後に得られる1フレームの画像信号を用いて被写体の明るさを推定し自動露出処理を行なう場合、推定した明るさが実際の明るさと異なると、画像が過剰に明るくなり、あるいは過剰に暗くなる現象が生じてしまう。そのため、起動直後の1フレームについてはモニタに表示させないという対策も存在するが、これを実行すると、ユーザにとっては起動までの時間が長く感じられてしまうという問題があった。
【0005】
また、調光センサ等のセンサを用いて被写界の明るさを正確に測定し、露出制御に利用する方法では、センサをカメラに設置しなければならないため、カメラが大きくなり、またコストもかかるという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の撮像装置では、絞りを閉じて遮光した状態で固体撮像素子から電荷を読み出し、その後、絞りを限界まで小さく開いた状態で再度固体撮像素子から電荷を読み出すため、固体撮像素子の読み出しを高速化してもなお露出制御に時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑み、処理時間が短く、正確な露出制御を行なう電子カメラおよび露出制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電子カメラは上述の課題を解決するために、露出中に被写界からの光を光電変換して画像信号を生成するとともに光の光量に応じた起電力を発生する感光素子を二次元状に配列した固体撮像素子と、固体撮像素子から画像信号が出力されていない間、固体撮像素子に所定の露出を行なわせる露出制御手段と、所定の露出によって固体撮像素子に発生する起電力に基づいて露出値を決定する露出値決定手段と、決定された露出値を実現するよう露出制御手段が行なう露出により固体撮像素子に生成され出力される画像信号で形成される画像を最初から表示する表示手段とを含む。
【0009】
また、本発明による電子カメラの露出制御方法は、上述の課題を解決するために、被写界からの光を光電変換して画像信号を生成するとともに該光の光量に応じた起電力を発生する感光素子を二次元状に配列した固体撮像素子からの画像信号の出力を停止する工程と、画像信号の出力の停止中に、固体撮像素子に所定の露出を行なわせる工程と、所定の露出によって固体撮像素子に発生する起電力に基づいて露出値を決定する工程と、決定された露出値を実現するよう露出制御手段が行なう露出により、固体撮像素子に画像信号を生成し素子から出力させる工程と、出力させた画像信号で形成される画像を最初から表示手段に表示させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露出値決定手段は、電子カメラの電源がオフの場合や、電源がオンの場合であっても固体撮像素子から画像信号が出力されていないモード、すなわち撮影モード以外のモードの場合に、予め露出値を決定し、電子カメラに電源が投入されたり他のモードから移行することにより、電子カメラが撮影モードに入る場合に、予め決定された露出値を実現するよう露出制御された固体撮像素子から出力される画像信号で形成される画像を、最初から表示手段に表示できる。すなわち、正確に露出制御されて得られた画像を、撮影モードに移行した後に迅速に表示することができる。これにより、起動時等にユーザが感じる遅延の感覚を解消できる。
【0011】
また、露出制御を固体撮像素子を用いて行なうため、調光センサ等のセンサを必要とせず、省スペース化にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に添付図面を参照して本発明による電子カメラおよびその露出制御方法の実施例を詳細に説明する。図1は本発明による電子カメラの実施例を示すブロック図である。本発明による電子カメラ10は、電源オフ時から固体撮像素子14に蓄積されていた電荷から得られる起電力を基に、起動時の一時的な露出値(以下、起動時露出値と称する)を決定するカメラであり、その構成について以下説明する。
【0013】
カメラ10は操作部26を含み、これは制御部20に接続されていて、ユーザが操作することにより、制御部20に対して各種操作信号88を供給する部位である。制御部20は、これに接続されているカメラ10内の各種要素を制御する装置である。カメラ10は図示しない電源を含み、制御部20から信号線を介して供給される制御信号によって、カメラ全体あるいはカメラの一部の要素にのみ、電源入力を行なう。操作部26は、電源ボタン28とモード切替ボタン30とを有する。電源ボタン28が押下されていないときは、後述の光学系12、固体撮像素子14、増幅回路16、A/D変換器18、制御部20およびデジタル信号処理回路22にのみ、独立して電力が供給される。これを本文では第1の電源入力と呼ぶ。一方、電源ボタン28が押し下げられると、制御部20を介してカメラ全体の電源がオンになる。これを本文では第2の電源入力と呼ぶ。
【0014】
本発明の実施例では、カメラの電源オフ時にも絞り36およびシャッタ38により所定の露出が行なわれているため、固体撮像素子14には起電力が発生する。この起電力は、カメラの電源がオフであっても、カメラのうち上述の第1の電源入力を受ける一部の要素によって検出され、露出値が決定される。このようにカメラの電源オフ時に予め決定された露出値は、電源オン時すなわち起動直後の一時的な露出値として用いられる。固体撮像素子14からデジタル信号処理回路22までは、2つの経路があり、それは増幅回路16を経由する経路と、CDS 42を経由する経路とであるところ、前者の経路上の要素のみに、第1の電源入力によって、電源が供給される。
【0015】
カメラ10は、被写界から光を取り込む光学系12と、光学系12から供給される光50の照射を受ける14とを含み、固体撮像素子14は、フォトダイオードによって光50を電気信号に変換する固体撮像素子であり、本実施例では(Charge Coupled Device; CCD)型の固体撮像素子であるが、これに代えて、相補型金属酸化膜半導体(C-MOS; Complementary Metal Oxide Semiconductor)型など、MOS型固体撮像素子を用いてもよい。
【0016】
図2は、図1に示す固体撮像素子の構成図である。固体撮像素子14は、複数のフォトダイオード100を含む。フォトダイオード100は、2つの相反する性質を持つP型およびN型半導体を接合し、その接合部分に効果的に光が当たるようにして、光導電電流を流れやすくしたダイオードである。フォトダイオード100は、PN接合部に光が入射すると光電変換を起こして光が電荷へ変換される。フォトダイオード100は、変換した電荷を垂直CCD 102に供給する。垂直CCD 102は、各フォトダイオードから供給される電荷を順次水平CCD 104に転送し、水平CCD 104は、各垂直CCD 102から供給される電荷を順次出力部106に転送する。出力部106は、水平CCD 104から供給される電荷を電圧に変換し、画像信号として出力する。
【0017】
図12は図2に示すフォトダイオードの断面構造を示す図である。被写界からの光111は、遮光膜105の間から入射する。図12において、PN接合部107はフォトダイオード100として利用される。本発明では、光111の入射により、P型半導体Pwellと、N型半導体Nsubとで形成されるPN接合部109で発生する起電力を利用して、露出制御に役立てる。なおフォトダイオード100として利用される図12の上部のPN接合部107において生じる起電力を利用してもよいが、PN接合部109で発生する起電力を利用するほうが望ましい。
【0018】
一般的に露出制御を行なう場合、通常、固体撮像素子から出力される画像信号から被写体の輝度を算出し、露出値を決定する。しかし、フォトダイオードなどの感光素子のPN接合部には、電圧を印加していなくとも、光が入射すれば光電変換を起こし、起電力が発生する。この起電力は光量に応じて変動するため、光量感知センサとしても利用可能である。この性質を利用すれば、カメラが被写体の輝度データを未だ有していない場合、すなわちカメラの電源をオンにして起動した直後や、カメラが再生モードから撮影モードに切り替わった直後であっても、予め決定された露出値を実現するよう露出制御された固体撮像素子から出力される画像信号で形成される画像を、最初から表示手段に表示できる。すなわち、正確に露出制御されて得られた画像を、撮影モードに移行した後に迅速に表示することができる。
【0019】
図13は図12に示すPN接合部から起電力を検出する機構を示す回路図である。光111の入射により、PN接合部109で生じた、例えば0〜-0.3V程度の起電力は、スイッチ113を介して検出される。スイッチ113を固体撮像素子と接続する端子115は、フォトダイオード100に接続された垂直CCDに駆動パルスを供給するピンとしてよい。すなわち、スイッチ113が端子117を選択する場合は、後述のタイミングジェネレータ119から与えられる駆動パルスが固体撮像素子14に与えられ、固体撮像素子は撮影モードとなる。一方、それ以外の例えば再生モードの場合やカメラの電源がオフの場合は、スイッチ113は端子52を選択し、PN接合部109で生じた起電力を増幅回路16へ出力する。
【0020】
図1に示す増幅回路16は、図1には図示しないスイッチ113を介して固体撮像素子14に接続されていて、固体撮像素子14から到来する電気信号52をA/D(Analog to Digital)変換器18に入力しやすい振幅に変換し、信号線56を介して供給する回路である。増幅回路16は制御部20にも接続されていて、制御信号60によって制御される。
【0021】
A/D変換器18は回路16に接続されていて、回路16から到来するアナログ画像データをデジタル画像データに変換する変換器である。
【0022】
デジタル信号処理回路22は、露出値決定機能24を含み、A/D変換器18から到来するデジタル信号から起動時露出値を決定するとともに、A/D変換器46から到来するデジタル画像信号から、起動後の露出値を決定する装置である。以下、起動時の露出値決定機能24について説明する。機能24は、デジタルデータ58の起電力の値に対応した、予め設定されている適切な露出値を決定する。例えば、図3および図4に示す対応関係に従って、露出値を決定してよい。すなわち、得られる起電力によって被写体の明るさを領域A、領域Bおよび領域Cに分割し、領域毎に適切な露出値を図4に示す。図3および図4では、得られる起電力が0.6[V]未満は領域Aで露出値は17[EV]、0.6[V]以上1.2[V]未満は領域Bで露出値は13[EV]、1.2[V]以上1.8[V]未満は領域Cで露出値は9[EV]としているが、領域の取り方および対応する露出値は任意の値で構わない。デジタル信号処理回路22は、決定した起動時露出値を、信号線64、制御部20および信号線66を介して光学系12に供給する。
【0023】
本発明による電子カメラ10は、図1に示す増幅回路16を含まなくてもよい。その場合は、固体撮像素子14から供給される電気信号がそのままA/D変換器18に供給される。増幅回路16で増幅を行なっていないため、露出値決定機能24は例えば図5に記載の対応関係を用いてデジタルデータ58の起電力から対応する適切な露出値を判定してよい。
【0024】
光学系12は、レンズ34、絞り36、シャッタ38およびAE/AF(Auto Exposure/Auto Focus)駆動機能40を含む。AE/AF駆動機能40は、供給される露出値66を基に絞り36を調整して光50の光量を調整し、シャッタ38のシャッタスピードを決定する露出制御を行なう。AE/AF駆動機能は、レンズ34を動かしてピント調整を行なう。
【0025】
絞り36とシャッタ38とは、カメラの電源がオフの時、すなわち、起動時露出値を決定する要素のみに電力が供給されている、第1の電源入力が行なわれている場合には、完全に開放もしくは部分的に開放されていて、完全に遮光することはない。すなわち、固体撮像素子14は、所定の露出を行なっている。
【0026】
図示しない電源は、電源ボタン28が押し下げられると、カメラ全体への第2の電源入力を行なう。すなわち、CDS 42、AGC 44、A/D変換器、画像表示部48およびD/A変換器90にも電力が供給される。言いかえると、固体撮像素子14からデジタル信号処理回路22までは、2つの経路があり、それは増幅回路16を経由する経路と、CDS 42を経由する経路とであるところ、後者の経路上の要素にも、カメラ全体への第2の電源入力によって、電源が供給される。
【0027】
CDS(Correlated Double Sampling)42は、固体撮像素子14に接続された、ノイズを除去する回路である。CDS 42は、供給される電気信号68のノイズを除去してサンプリングを行い、得られた電気信号を信号線70を介してAGC(Automatic Gain Control)44に供給する。AGC 44は、信号レベルを自動補正し、一定レベルに自動利得調整する回路である。AGC 44は、供給される電気信号70の信号レベルに応じて利得調整をし、信号線74を介してA/D変換器46に供給する。A/D変換器46は、A/D変換器18と同様の変換器である。A/D変換器46は、アナログデータである電気信号74をデジタルデータに変換して、信号線76を介してデジタル信号処理回路22に供給する。
【0028】
デジタル信号処理回路22は、デジタルデータ76が供給された場合、デジタルデータ76から被写体の輝度を算出し、被写体の輝度に基づいて露出値を決定する、起動後の露出値決定処理を行なう。この露出値決定は、電源オフ時から固体撮像素子14に蓄積されていた信号電荷から得られる起電力を基に起動時露出値を決定する方法とは異なる。デジタル信号処理回路22は、得られた起動後の露出値を信号線64、制御部20および信号線66を介して光学系12に供給する。
【0029】
デジタル信号処理回路22は、デジタル画像データ76が供給された場合、デジタル画像データにガンマ変換、同時化処理、画像変換処理、圧縮/伸長処理、入出力インタフェース処理および画像縮小処理等を行なう。デジタル信号処理回路22は、各処理を施したデジタルデータを信号線82を介してメモリ32に、もしくは、信号線84を介してD/A変換器90に供給する。
【0030】
メモリ32は、電源を切っても記憶内容を保持することができる不揮発性メモリである。メモリ32は、供給されるデジタルデータ82を保存する。
【0031】
D/A変換器90は、デジタルデータをアナログデータに変換する変換器である。D/A変換器90は、供給されるデジタルデータ84をアナログデータに変換し、信号線92を介して画像表示部48に供給する。
【0032】
画像表示部48は、モニタ49と図示しない表示コントローラを有し、表示コントローラにより、供給されるアナログデータ92が表示デバイスにて動作することにより、画像を表示する。モニタ49には、一般的に液晶モニタが用いられる。液晶モニタには、液晶表示コントローラが配設されている。液晶コントローラは、デジタルデータ84を基に液晶分子の並び方や電圧の印加によりスイッチング制御している。この制御により液晶モニタは、画像を表示する。モニタ49は、液晶モニタに限定されず、小型、画像の確認および電力の消費が抑えられる表示機器であれば、十分に用いることができることは言うまでもない。画像表示部48は、制御部20から供給される制御信号86によって制御される。
【0033】
操作部26のモード切替ボタン30は、再生モードと撮影モードとを切り替えるボタンである。再生モードは、メモリ32に保存されているデジタルデータをモニタ49に表示させるモードである。操作部26は、再生モードが選択された場合、再生モード信号を作成して信号線88、制御部20および信号線64を介してデジタル信号処理回路22に供給する。
【0034】
操作部26は、モード切替ボタン30によって撮影モードが選択された場合、撮影モード信号を作成して、信号線88、制御部20および信号線54を介して固体撮像素子14に供給し、図示しない電源は第1の電源入力を行なう。
【0035】
デジタル信号処理回路22は、再生モード信号が供給された場合、メモリ32に保存されているデジタルデータを圧縮/伸長処理および入出力インタフェース処理によって読み出し、画像縮小処理を施して画像表示部48に供給する。
【0036】
以上のように構成された本発明の実施例の動作について、各々説明する。図6は、本発明の実施例である電子カメラ10のフローチャートである。ステップS150において、電源ボタン28が押下されていないときは、図示しない電源は光学系12、固体撮像素子14、増幅回路16、A/D変換器18、制御部20およびデジタル信号処理回路22に電力を供給する第1の電源入力を行なう。これにより、起動時露出値を決定する準備が整う。
【0037】
ステップS152において、固体撮像素子14は、電源オフ時から蓄積されていた電気信号を、信号線52を介して増幅回路16に供給する。増幅回路16は、供給される電気信号の振幅を変換し、変換した電気信号を信号線56を介してA/D変換器18に供給する。A/D変換器18は、アナログデータである電気信号56をデジタルデータに変換して、信号線58を介してデジタル信号処理回路22に供給する。デジタル信号処理回路22は、露出値決定機能24を用いて、供給される電気信号58の起電力に対応する起動時露出値を決定する。
【0038】
その後、電源ボタン28が押されると、ステップS154において、図示しない電源はCDS 42、AGC 44、A/D変換器、画像表示部48およびD/A変換器90に電力を供給する、カメラ全体への第2の電源入力を行なう。ステップS156では、カメラが撮影モードにあるか否かを確認し、撮影モードになるまでは、待機状態となる。一方、撮影モードであれば、ステップS158において、露出制御が行なわれる。すなわち、デジタル信号処理回路22は、決定された起動時露出値を、信号線64、制御部20および信号線66を介して光学系12に供給し、光学系12は、AE/AF駆動機能によって、供給される起動時露出値66を基に、絞り36を調整して光50の光量を調整し、シャッタ38のシャッタスピードを決定する露出制御を行なう。
【0039】
また、かかる露出制御によって得られた画像信号で形成される画像は、最初から、画像表示部48のモニタ49に表示する(ステップS160)。これにより、ユーザに撮影モードの起動時間が長いと感じさせることなく、適切に露出制御された画像を、迅速にモニタ49に表示可能である。続いて、ステップS162では、固体撮像素子14から出力される画像信号68が種々の処理を受けてデジタル画像信号74として信号処理回路22に到達すると、デジタル画像信号74から被写体の輝度を算出して起動後の露出値を決定する。
【0040】
その後、再びステップS164において撮影モードか否かを確認し、撮影モードが維持されていれば、ステップS158に戻り、起動後の露出値に基づく露出制御を行なう。一方、撮影モードでなければ、処理を終了する。
【0041】
以上のように、カメラ全体への第2の電源入力直後もしくは再生モードから撮影モードに切り替えた直後は、固体撮像素子14から得られる起電力を基に起動時露出値を一時的に用い、その後、通常どおり、デジタル画像データから起動後の露出値を決定することによって、好適で迅速な露出制御が可能となる。
【0042】
図7は、本発明による電子カメラを携帯情報端末に適用した実施例であり、図1の電子カメラ10のブロック図に光学系202、固体撮像素子204、増幅回路206およびA/D変換器208をそれぞれ加えた携帯情報端末200の図である。つまり図8および図9に記載の、カメラを2つ有する携帯情報端末200である。図中、同様の要素は同一の参照符号によって示す。
【0043】
携帯情報端末200は、使用していない方のカメラの固体撮像素子から起電力を取得し、電子カメラ10の実施例と同様の方法で、起動時露出値を決定することに特徴がある。
【0044】
操作部220は、電源ボタン28およびモード切替ボタン30に加え、カメラ使用ボタン218を有する。カメラ使用ボタン218は、カメラの使用を決定するボタンであり、その際、2つのどちらのカメラを使用するかを決定するボタンである。固体撮像素子14が不使用の場合、図示しない電源は、光学系12、固体撮像素子14、増幅回路16、A/D変換器18およびデジタル信号処理回路22に電力を供給する。固体撮像素子204が不使用の場合、図示しない電源は、光学系202、固体撮像素子204、増幅回路206、A/D変換器208およびデジタル信号処理回路22に電力を供給する。すなわち、不使用中のいずれかの固体撮像素子に蓄積されている信号電荷を基に、他方の固体撮像素子がいざ撮影モードに入ることとなった場合の起動時露出値を求めるのが本実施例の特徴である。
【0045】
光学系202、固体撮像素子204、増幅回路206およびA/D変換器208はそれぞれ、光学系12、固体撮像素子14、増幅回路16およびA/D変換器18と同様のものであり、制御部20から供給される制御信号によってそれぞれ制御される。
【0046】
固体撮像素子14・204は、不使用時、光50をフォトダイオードが変換して得られた電気信号を増幅回路16もしくは光222を変換して得られた1つ以上のフォトダイオードの電気信号を増幅回路206に供給する。
【0047】
デジタル信号処理回路22は、デジタルデータ58もしくはデジタルデータ228が供給された場合、露出値決定機能24を用いてデジタルデータの起電力から露出値を決定する。
【0048】
デジタル信号処理回路22は、デジタルデータ228から起動時露出値を決定した場合、起動時露出値を信号線64、制御部20および信号線66を介して光学系12に供給する。これに続いて、図示しない電源は、カメラ全体への第2の電源入力を行なう。
【0049】
デジタル信号処理回路22は、デジタルデータ58から起動時露出値を決定した場合、露出値を信号線64、制御部20および信号線230を介して光学系202に供給する。これに続いて電源はカメラ全体への第2の電源入力を行い、さらに固体撮像素子204にも電力を供給する。
【0050】
操作部220は、モード切替ボタン30によって再生モードから撮影モードに切り替わった場合、撮影モード信号を作成し、制御部20を介して固体撮像素子14もしくは固体撮像素子204のいずれかに供給する。撮影モード信号は、直近に使用していなかったカメラの固体撮像素子に供給するようにしてもよい。
【0051】
以上のように構成することによって、使用していないカメラの固体撮像素子から起電力を取得し、起動時露出値を決定することによって、カメラ全体への第2の電源入力直後や再生モードから撮影モードに切り替わる場合であっても、好適な露出制御が迅速に可能となる。
【0052】
図10は、電子カメラ10の構成に発光ダイオード(Light Emitting Diode; LED)358を加えた電子カメラ300の構成図である。電子カメラ300は、信号処理部352に供給されるデジタルデータ58の起電力によって、LED 358に光量を調整することに特徴がある。
【0053】
信号処理部352は、補助光調整機能354を有し、補助光調整機能354は供給されるデジタルデータ58の起電力から調整値を算出し、補助光調整信号とともに信号線64、制御部20および信号線356を介してD/A変換器360に供給する。信号処理部352は、起電力に対応する調整値を予め有する。これは例えば図4に示すものと同様に、3段階程度の起電力に応じて、LED 358の光量を3段階に調整してよい。また、調整値は任意に設定しても構わない。
【0054】
図14は図10に示すD/A変換器とLEDとの詳細な回路図であり、図14には、図10では図示を省略している増幅器364を示す。D/A変換器360は、D/A変換器90と同様の構成を有し、供給されるデジタルデータをアナログデータに変換する変換器である。D/A変換器360は、供給されるデジタルデータである補助光調整信号を、同時に供給される調整値分ゲインさせてアナログデータに変換する。このゲインアップは、図14に示すように、増幅器364によって行なえばよい。D/A変換器360は、補助光調整信号をLED 358に供給する。
【0055】
LED 358は、暗い場所での撮影を可能にするために設置された補助光であり、その光量は供給される補助光調整信号362によって決定される。
【0056】
操作部314は、モード切替ボタン30と補助光ボタン316とを有し、補助光ボタン316は補助光であるLED 358を点灯させることを決定するボタンである。操作部314は、補助光ボタン316が押下された場合、図示しない電源が光学系12、固体撮像素子14、増幅回路16、A/D変換器18、制御部20、デジタル信号処理回路22、LED358およびD/A変換器360に電力を供給する。
【0057】
以上のように構成することによって、カメラを使用していない間はカメラの固体撮像素子から得られる起電力を利用して、LEDの光量を適切に調整することができる。
【0058】
図10に記載の本発明を適用した電子カメラ300の動作について説明する。操作部314は、補助光ボタン316が押下され、図示しない電源が光学系12、固体撮像素子14、増幅回路16、A/D変換器18、制御部20、デジタル信号処理回路22、LED 358およびD/A変換器360に電力を供給する。
【0059】
電子カメラ10の動作と同様の方法によって、デジタル信号処理回路22にはデジタルデータ58が供給される。
【0060】
信号処理部352は、補助光調整機能354を用いて供給されるデジタルデータ58の起電力から調整値を算出し、補助光調整信号とともに信号線64、制御部20および信号線356を介してD/A変換器360に供給する。D/A変換器は、供給されるデジタルデータである補助光調整信号を、同時に供給される調整値分ゲインさせてアナログデータに変換する。D/A変換器360は、変換した補助光調整信号を信号線362を介してLED 358に供給する。LED 358は、供給される補助光調整信号362を基に光量を決定し、発光する。
【0061】
図11は、電子カメラ10の構成にバックライト304を加えた電子カメラ350の構成図である。電子カメラ350は、信号処理部306に供給されるデジタルデータ58の起電力によって、モニタ49のバックライト304の光量を調整することに特徴がある。
【0062】
信号処理部306は、表示輝度調節機能308を有し、供給されるデジタルデータ58の起電力によって調整値を算出して、表示輝度信号とともに信号線84を介してD/A変換器90に供給する。信号処理部306は、起電力に対応する調整値を予め有するが、その調整値の設定は任意に設定して構わない。
【0063】
D/A変換器90は、供給される表示輝度信号をアナログデータに変換する。D/A変換器90は、表示輝度信号をアナログデータに変換する際に、表示輝度信号と同時に供給される調整値分ゲインをする。D/A変換器90は、アナログデータに変換された表示輝度信号92を画像表示部302に供給する。
【0064】
画像表示部302は、モニタ49とバックライト304とを有し、バックライト304の光量を供給される表示輝度信号92によって決定する。
【0065】
操作部312は、電源ボタン28とモード切替ボタン30とに加え、カメラボタン310を有する。カメラボタン310は、カメラの使用を決定するボタンであり、押下されるとカメラ使用ボタン64を作成し、信号線88、制御部20および信号線64を介して信号処理部352に供給する。
【0066】
信号処理部306は、カメラ使用信号64が供給された場合、表示輝度調整機能による調整値の算出を停止する。
【0067】
以上のように構成することによって、カメラを使用していない間はカメラの固体撮像素子から得られる起電力を利用して、モニタ49のバックライトの光量を適切に調整することができる。
【0068】
図11に記載の本発明を適用した電子カメラ350の動作について、図15を用いて説明する。図15は、図11に示す携帯情報端末の動作を説明するフローチャートである。電子カメラ10の動作と同様の方法で、信号処理部306にはデジタルデータ58が供給される。
【0069】
まずステップS402において、カメラ350が起動しているか否かを確認する。起動していればそのまま終了する。起動していなければ、ステップS404に進み、増幅器16、A/D変換器18およびデジタル信号処理回路306に電源を投入する。すなわち、第1の実施例における「第1の電源入力」に相当する処理を行なう。この後、ステップS406において、電源が投入された各要素16、18を用いて、固体撮像素子の起電力を読み取り、さらに、ステップS408にて、信号処理部306により、起電力を被写体の明るさに換算し、D/A変換器90の設定値を算出する。その後、ステップS410にて、画像が表示される。すなわち、画像表示部302にのモニタ49に、D/A変換器90によって調整値分ゲインアップされた表示輝度信号92が与えられ、これを基に決定された光量にて、バックライト304は発光し、モニタ49の明るさを決定する。なお、輝度が調節されるモニタ49の明るさとは、カメラ350による撮影が行なわれる時以外の表示輝度である。
【0070】
その後、ステップS412にて、ステップS406と同様に、固体撮像素子の起電力を読み取り、この起電力に基づいて、ステップS414にて、周囲の明るさが変動したか否かを確認する。変動していなければ処理を終了し、変動していれば、再びステップS408に戻って、D/A変換器90の設定値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による電子カメラの実施例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す固体撮像素子の構成図である。
【図3】図1に示す固体撮像素子に蓄積された信号電荷の起電力と、被写体の明るさとの対応関係を示す図である。
【図4】図3に示す起電力に対応する、起動時露出値を示す図である。
【図5】図1に示す固体撮像素子に蓄積された信号電荷を増幅させない場合の起電力を示す図である。
【図6】図1に示す電子カメラの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明による電子カメラを2つ有する携帯情報端末のブロック図である。
【図8】図7に示す携帯情報端末の内側の立体図である。
【図9】図7に示す携帯情報端末の外側の立体図である。
【図10】本発明の実施例である、発光ダイオードを有する携帯情報端末のブロック図である。
【図11】本発明の実施例である、モニタにバックライトを有する携帯情報端末のブロック図である。
【図12】図2に示すフォトダイオードの断面図である。
【図13】図12に示すPN接合部から起電力を検出する機構を示す回路図である。
【図14】図10に示すD/A変換器と発光ダイオードとの詳細な回路図であ
【図15】図11に示す携帯情報端末の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
10 電子カメラ
12 光学系
14 固体撮像素子
16 増幅回路
18・46 A/D変換器
20 制御部
22 デジタル信号信号処理回路
26 操作部
32 メモリ
42 CDS
44 AGC
48 画像表示装置
90 D/A変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出中に被写界からの光を光電変換して画像信号を生成するとともに該光の光量に応じた起電力を発生する感光素子を二次元状に配列した固体撮像素子と、
該固体撮像素子から画像信号が出力されていない間、該固体撮像素子に所定の露出を行なわせる露出制御手段と、
該所定の露出によって前記固体撮像素子に発生する起電力に基づいて露出値を決定する露出値決定手段と、
該決定された露出値を実現するよう前記露出制御手段が行なう露出により前記固体撮像素子に生成され出力される画像信号で形成される画像を最初から表示する表示手段とを含むことを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子カメラにおいて、前記露出値決定手段は、独立した電源によって駆動され、電子カメラに含まれるその他の要素に電源が供給されていない場合に前記露出値を決定することを特徴とする電子カメラ。
【請求項3】
露出中に被写界からの光を光電変換して画像信号を生成するとともに該光の光量に応じた起電力を発生する感光素子を二次元状に配列した、第1および第2の固体撮像素子と、
第1の固体撮像素子に所定の露出を行なわせる第1の露出制御手段と、
該所定の露出によって第1の固体撮像素子に発生する起電力に基づいて露出値を決定する露出値決定手段と、
該決定された露出値を実現するよう第2の固体撮像素子を露出させる第2の露出制御手段と、
該露出により第2の固体撮像素子に生成され出力される画像信号で形成される画像を最初から表示する表示手段とを含むことを特徴とする電子カメラ。
【請求項4】
露出中に被写界からの光を光電変換して画像信号を生成するとともに該光の光量に応じた起電力を発生する感光素子を二次元状に配列した固体撮像素子と、
被写界に光を照射する補助光源と、
前記固体撮像素子に所定の露出を行なわせる露出制御手段と、
該所定の露出によって前記固体撮像素子に発生する起電力に基づいて露出値を決定する露出値決定手段と、
該決定された露出値を実現するよう前記補助光源を調光する調光手段とを含むことを特徴とする電子カメラ。
【請求項5】
請求項4に記載の電子カメラにおいて、前記補助光源は発光ダイオードであることを特徴とする電子カメラ。
【請求項6】
露出中に被写界からの光を光電変換して画像信号を生成するとともに該光の光量に応じた起電力を発生する感光素子を二次元状に配列した固体撮像素子と、
前記画像信号で形成される画像を表示する表示手段と、
前記固体撮像素子に所定の露出を行なわせる露出制御手段と、
該所定の露出によって前記固体撮像素子に発生する起電力に基づいて前記表示手段の輝度を決定する輝度決定手段と、
前記表示手段の輝度を前記決定された輝度に調整する輝度調整手段とを含むことを特徴とする電子カメラ。
【請求項7】
被写界からの光を光電変換して画像信号を生成するとともに該光の光量に応じた起電力を発生する感光素子を二次元状に配列した固体撮像素子からの画像信号の出力を停止する工程と、
該画像信号の出力の停止中に、前記固体撮像素子に所定の露出を行なわせる工程と、
該所定の露出によって前記固体撮像素子に発生する起電力に基づいて露出値を決定する工程と、
該決定された露出値を実現するよう前記露出制御手段が行なう露出により、前記固体撮像素子に画像信号を生成し該素子から出力させる工程と、
該出力させた画像信号で形成される画像を最初から表示手段に表示させる工程とを含むことを特徴とする電子カメラの露出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−42248(P2008−42248A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209854(P2006−209854)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】