説明

電子内視鏡、内視鏡プロセッサ、および内視鏡ユニット

【課題】マスク領域に混入するノイズの影響を低減化する。
【解決手段】電子内視鏡は内視鏡画像処理システム31および撮像素子32を有する。撮像素子32は画像信号を生成する。画像信号は複数の画素信号を有する。内視鏡画像処理システム31はマスク発生部31cおよびメモリ31dを有する。画像信号をA/Dコンバータ31aおよび信号処理部31bを介してマスク発生部31cに入力する。マスク発生部31cはマスク領域に配置された画素の画素信号の信号強度を最大値に変換する。メモリ31dはマスク領域の位置を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に撮像された画像の一部にマスクをかける電子内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡の挿入管に設置可能な対物光学系では、撮像素子の受光面周辺での光学像の歪みや光量落ちの発生を十分に抑えることが難しい。それゆえ、受光面の四辺の周辺部位を黒色に塗りつぶすことにより、受光面の中央付近における歪みの少ない光学像をマスクで覆ったマスク画像が作成される(特許文献1参照)。
【0003】
マスク画像に相当するマスク画像信号は、受光面の四辺の周辺部位に設けられた画素における信号強度を黒レベルに変換することにより生成される。マスク画像信号は電子内視鏡内の信号処理回路で生成されることが一般的である。
【0004】
生成したマスク画像信号を内視鏡プロセッサに送信するときにノイズが混入することがある。マスクとして表示する位置に対してノイズが混入すると、マスク上にノイズに応じた画像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−194528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明では、ノイズの影響を低減化するマスク画像を生成する電子内視鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の電子内視鏡は、受光面に2次元上に配置される複数の画素を有し受光面に形成される光学像に基づいて複数の画素それぞれが受光量に応じて生成する複数の画素信号によって構成される画像信号を生成する撮像素子と、撮像素子により生成された画像信号において受光面内において受光面の中心部を囲う領域として定められるマスク領域に配置された画素に対応する画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最大値である第1の最大値に変換することにより画像信号を第1のマスク画像信号に変換するマスク設定部とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、撮像素子は一定の周期で画像信号を生成し、マスク部は画像信号の受信開始後に第1〜第nのフレームの画像信号から第1のマスク画像信号への変換を実行し第nのフレームの画像信号の次に受信する第(n+1)のフレーム以降の画像信号に対してはマスク領域に配置された画素に対応する画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最小値に変換することにより画像信号を第2のマスク画像信号に変換することが好ましい。
【0009】
あるいは、撮像素子は一定の周期で画像信号を生成し、マスク部は画像信号の受信開始後に第1〜第nのフレームの画像信号から第1のマスク画像信号への変換を実行し第nのフレームの画像信号の次に受信する第(n+1)のフレーム以降の画像信号に対しては第1のマスク画像信号への変換を停止することが好ましい。
【0010】
また、本発明の第1の内視鏡プロセッサは、受光面に2次元上に配置される複数の画素を有し受光面に形成される光学像に基づいて複数の画素それぞれが受光量に応じて生成する複数の画素信号によって構成される画像信号を生成する撮像素子と撮像素子により生成された画像信号において受光面内において受光面の中心部を囲う領域として定められるマスク領域に配置された画素に対応する画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最大値である第1の最大値に変換することにより画像信号を第1のマスク画像信号に変換するマスク設定部とを有する電子内視鏡から第1のマスク画像信号を受信する受信部と、第1のマスク画像信号を構成する画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、第1の閾値を超えると判別された画素信号の信号強度をマスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより第1のマスク画像信号をモニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の第2の内視鏡プロセッサは、受光面に2次元上に配置される複数の画素を有し受光面に形成される光学像に基づいて複数の画素それぞれが受光量に応じて生成する複数の画素信号によって構成される画像信号を生成する撮像素子と撮像素子により生成された画像信号において受光面内において受光面の中心部を囲う領域として定められるマスク領域に配置された画素に対応する画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最大値である第1の最大値に変換することにより画像信号を第1のマスク画像信号に変換するマスク設定部とを有し撮像素子は一定の周期で前記画像信号を生成しマスク部は画像信号の受信開始後に第1〜第nのフレームの画像信号から第1のマスク画像信号への変換を実行し第nのフレームの画像信号の次に受信する第(n+1)のフレーム以降の画像信号に対してはマスク領域に配置された画素に対応する画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最小値に変換することにより画像信号を第2のマスク画像信号に変換する電子内視鏡から第1、第2のマスク画像信号を受信する受信部と、第1のマスク画像信号を構成する画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、第1の閾値を超えると判別された画素信号に対応する画素をマスク画素として記憶するメモリと、第2のマスク画像信号を構成する各画素信号に対応する画素が前記マスク画素である場合には画素信号の信号強度を前記マスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより第2のマスク画像信号をモニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備えることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の第3の内視鏡プロセッサは、受光面に2次元上に配置される複数の画素を有し受光面に形成される光学像に基づいて複数の画素それぞれが受光量に応じて生成する複数の画素信号によって構成される画像信号を生成する撮像素子と撮像素子により生成された画像信号において受光面内において受光面の中心部を囲う領域として定められるマスク領域に配置された画素に対応する画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最大値である第1の最大値に変換することにより画像信号を第1のマスク画像信号に変換するマスク設定部とを有し撮像素子は一定の周期で画像信号を生成しマスク部は画像信号の受信開始後に第1〜第nのフレームの画像信号から第1のマスク画像信号への変換を実行し第nのフレームの画像信号の次に受信する第(n+1)のフレーム以降の画像信号に対しては第1のマスク画像信号への変換を停止する電子内視鏡から第1のマスク画像信号および画像信号を受信する受信部と、第1のマスク画像信号を構成する画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、第1の閾値を超えると判別された画素信号に対応する画素をマスク画素として記憶するメモリと、画像信号を構成する各画素信号に対応する画素がマスク画素である場合には画素信号の信号強度をマスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより画像信号をモニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備えることを特徴としている。
【0013】
なお、マスク作成部は第1のマスク画像信号を構成する画素信号であって第1の閾値を超えると判別された画素信号の信号強度を第1の色に対応する信号強度に変換することにより第1のマスク画像信号を第3のマスク画像信号に変換することが好ましい。
【0014】
また、本発明の内視鏡ユニットは、受光面に2次元上に配置される複数の画素を有し受光面に形成される光学像に基づいて複数の画素それぞれが受光量に応じて生成する複数の画素信号によって構成される画像信号を生成する撮像素子と、撮像素子により生成された画像信号において受光面内において受光面の中心部を囲う領域として定められるマスク領域に配置された画素に対応する画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最大値である第1の最大値に変換することにより画像信号を第1のマスク画像信号に変換するマスク設定部と、マスク設定部から第1のマスク画像信号を受信する受信部と、第1のマスク画像信号を構成する画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、第1の閾値を超えると判別された画素信号の信号強度をマスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより第1のマスク画像信号をモニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノイズの影響を低減化したマスク画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態を適用した電子内視鏡および内視鏡プロセッサを含む内視鏡ユニットの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】内視鏡画像処理システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】受光面上における中央領域およびマスク領域を示す受光面の平面図である。
【図4】第1の実施形態のプロセッサ画像処理システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態の内視鏡画像処理システムにより実行される第1、第2のマスク処理を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態のプロセッサ画像処理システムにおいて実行されるマスク領域の認識の処理を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態のプロセッサ画像処理システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態の内視鏡画像処理システムにより実行される第1のマスク処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態のプロセッサ画像処理システムにおいて実行されるマスク領域の認識の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を適用した電子内視鏡および内視鏡プロセッサを有する内視鏡ユニットの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0018】
内視鏡ユニット10は、内視鏡プロセッサ20、電子内視鏡30、およびモニタ11によって構成される。内視鏡プロセッサ20は、電子内視鏡30、およびモニタ11に接続される。
【0019】
内視鏡プロセッサ20から被写体を照明するための照明光が電子内視鏡30に供給される。照明光を照射された被写体が電子内視鏡30により撮像される。電子内視鏡30の撮像により生成する画像信号が内視鏡プロセッサ20に送られる。
【0020】
内視鏡プロセッサ20では、電子内視鏡30から得られた画像信号に対して所定の信号処理が施される。所定の信号処理を施した画像信号はモニタ11に送信され、送信された画像信号に相当する画像がモニタ11に表示される。
【0021】
次に、内視鏡プロセッサ20の構成について説明する。内視鏡プロセッサ20には、光源システム21、プロセッサ画像処理システム22、システムコントローラ23、およびタイミングコントローラ24などが設けられる。
【0022】
電子内視鏡30を内視鏡プロセッサ20に接続すると、光源システム21は電子内視鏡30に設けられるライトガイド33と光学的に接続される。光源システム21からは、被写体を照明するための照明光が出射される。光源システム21が出射する照明光はライトガイド33の入射端に入射される。
【0023】
電子内視鏡30を内視鏡プロセッサ20に接続すると、プロセッサ画像処理システム20は電子内視鏡30に設けられる内視鏡画像処理システム31に電気的に接続される。電子内視鏡30に設けられる撮像素子32が生成した画像信号は、内視鏡画像処理システム31を介してプロセッサ画像処理システム22に受信される。
【0024】
後述するように、プロセッサ画像処理システム22において、画像信号に対してマスク確定処理を含む信号処理が施される。信号処理が施された画像信号がモニタ11に送信される。
【0025】
システムコントローラ23により、内視鏡ユニット10の各部位の動作が制御される。また、タイミングコントローラ24により、内視鏡ユニット10の各部位の動作の同期が取られる。
【0026】
次に、電子内視鏡30の構成について説明する。電子内視鏡30には、内視鏡画像処理システム31、撮像素子32、ライトガイド33、および撮像素子駆動回路34などが設けられる。
【0027】
ライトガイド33は、内視鏡プロセッサ20と接続されるコネクタ35から挿入管36の先端まで延設される。内視鏡プロセッサ20から供給される照明光がライトガイド33の入射端に入射される。入射端に入射した照明光は出射端まで伝達される。出射端に伝達された照明光が、挿入管36の先端方向の被写体に照射される。
【0028】
照明光が照射された被写体の反射光による光学像が、挿入管36の先端に設けられた撮像素子32の受光面に到達する。撮像素子32の受光面には、複数の画素(図示せず)が2次元状に配置される。各画素は受光量に応じた信号強度の画素信号を生成する。全画素に対応する全画素信号により画像信号は構成される。
【0029】
撮像素子32は撮像素子駆動回路34に制御され、一定の周期、例えば、1/60秒毎に1フレームの画像信号を生成するように制御される。撮像素子32により生成された画像信号は、内視鏡画像処理システム31に送信される。内視鏡処理システム31では、以下に説明するように、画像信号に第1のマスク処理または第2のマスク処理が施される。
【0030】
図2に示すように、内視鏡画像処理システム31には、A/Dコンバータ31a、信号処理部31b、マスク発生部31c(マスク設定部)、メモリ31d、およびシステムコントローラ31eなどが設けられる。
【0031】
撮像素子32から受信した画像信号は、A/Dコンバータ31aによりデジタル信号に変換される。デジタル化された画像信号は、信号処理部31bにおいてホワイトバランス処理などの所定の信号処理が施される。
【0032】
所定の信号処理の施された画像信号は、マスク発生部31cにおいて、第1のマスク処理または第2のマスク処理が施される。なお、画像信号の生成開始後最初のフレームから5番目のフレームの画像信号には、第1のマスク処理が施される。以後のフレームの画像信号には、第2のマスク処理が施される。以下に、第1、第2のマスク処理を説明する。
【0033】
図3に示すように、撮像素子32の受光面RSにおいて、受光面RSの中心を含む所定の広さの領域が中央領域CAに定められる。また、受光面RSにおいて中央領域CAの周囲を囲う領域がマスク領域MAに定められる。
【0034】
前述のように、撮像素子32が生成する画像信号は複数の画素信号によって構成される。それぞれの画素信号は、対応する画素の配置された位置に到達する光の受光量に応じた信号強度である。
【0035】
第1のマスク処理では、マスク領域MAに配置された画素の画素信号の信号強度が最大の信号強度に置換される。第2のマスク処理では、マスク領域MAに配置された画素の画素信号の信号強度が最小の信号強度に置換される。第1のマスク処理または第2のマスク処理の施された画像信号は、プロセッサ画像処理システム22に送信される。なお、信号強度の最大値、最小値は、内視鏡画像処理システム31が計算可能なデジタル信号の階調の最大値と最小値である。
【0036】
なお、マスク発生部31cはシステムコントローラ31eの制御に基づいて、画像信号に対して第1のマスク処理または第2のマスク処理を施す。なお、マスク領域MAの位置はメモリ31dに格納されており、第1、第2のマスク処理のためにマスク発生部31cに読出される。
【0037】
次に、プロセッサ画像処理システム22におけるマスク確定処理について、プロセッサ画像処理システム22の構成とともに説明する。図4に示すように、プロセッサ画像処理システム22は、プレ信号処理部22a(受信部)、画像メモリ22b、メイン信号処理部22c(マスク作成部)、比較器22d(判別部)、およびマスクメモリ22eによって構成される。
【0038】
マスク発生部31cから送信される画像信号は、比較器22dに受信される。比較器22dは第1のマスク処理が施された画像信号を受信するときに機能し、第2のマスク処理が施された画像信号を受信するときに機能を停止するようにタイミングコントローラ24によって制御される。
【0039】
比較器22dは画像信号を受信すると、受信した画像信号をマスクメモリ22eに格納する。前述のように、第1〜第5のフレームの画像信号に第1のマスク処理が施されるので、第1〜第5のフレームの画像信号が比較器22dを介してマスクメモリ22eに格納される。
【0040】
第5のフレームの画像信号を格納すると、マスクメモリ22eから第1〜第5のフレームの画像信号が比較器22dに読出され、平均化される。なお、画像信号の平均化とは、画像信号を構成する画素信号を、同じ画素に対応する画素信号同士で平均化することを意味している。
【0041】
画像信号を平均化すると、比較器22dでは、平均化された画像信号を構成する画素信号の信号強度が閾値と比較される。なお、閾値は信号強度の最大値から、送信中に混入し得る最大のノイズ成分を減じた値より低い値に定められる。
【0042】
信号強度が閾値以下である場合は、対応する画素は中央領域CAに配置された画素と判別される。信号強度が閾値を超える場合は、対応する画素はマスク領域MAに配置された画素と判別される。マスク領域MAに配置されたと判別された画素の位置がマスクメモリ22eに格納される。したがって、マスク領域MAの位置がマスクメモリ22eに格納される。
【0043】
なお、マスク発生部31cから送信される画像信号は、プレ信号処理部22aにも受信される。画像信号はプレ信号処理部22aにおいて色補完処理などの所定の信号処理が施される。所定の信号処理が施された画像信号は画像メモリ22bに格納される。
【0044】
画像メモリ22bに格納された画像信号は、メイン信号処理部22cに送信される。メイン信号処理部22cでは、マスク確定処理を含む所定の信号処理が画像信号に施される。所定の信号処理の施された画像信号は、モニタ11に送信される。
【0045】
マスク確定処理では、画像メモリ22bから受信する画像信号を構成する画素信号の中で、マスク領域MAに配置された画素に対応する画素信号の信号強度が信号強度の最小値または黒レベルに相当する値に変換される。なお、マスク確定処理のために、マスクメモリ22eからシステムコントローラ23およびタイミングコントローラ24を介して、マスク領域MAの位置がメイン信号処理部22cに読出される。
【0046】
次に、マスク発生部31cにより実行される第1、第2のマスク処理を図5のフローチャートを用いて説明する。第1、第2のマスク処理は、電子内視鏡30による画像観察の開始と同時に開始する。また、第1、第2のマスク処理は、電子内視鏡30による画像観察の終了とともに終了する。
【0047】
ステップS100では、画像信号のフレーム番号Fnを1にリセットする。フレーム番号のリセット後、ステップS101に進む。
【0048】
ステップS101では、フレーム番号Fnが6未満、すなわち1〜5であるか否かを判別する。フレーム番号Fnが6未満である場合には、ステップS102に進む。フレーム番号Fnが6以上である場合には、ステップS103に進む。
【0049】
ステップS102では、第1のマスク処理を実行するためにマスク値を信号強度の最大値であるVmaxに設定する。一方、ステップS103では、第2のマスク処理を実行するためにマスク値を信号強度の最低値であるVminに設定する。ステップS102またはステップS103におけるマスク値の設定後、ステップS104に進む。
【0050】
ステップS104では、受信した画像信号を構成する画素信号に対応する画素を順番に選択する。画素の選択後、ステップS105に進む。
【0051】
ステップS105では、ステップS104において選択した画素がマスク領域MA内に配置されているか否かを判別する。画素がマスク領域MA内に配置されている場合には、ステップS106に進む。画素がマスク領域MA外に配置されている場合には、ステップS107に進む。
【0052】
ステップS106では、ステップS104で選択された画素の画素信号の信号強度を、ステップS102またはステップS103において設定したマスク値に変換して、出力する。一方、ステップS107では、選択された画素の画素信号の信号強度の変換を行うことなく出力する。ステップS106またはステップS107における画素信号のプロセッサ画像処理システム22への送信後、ステップS108に進む。
【0053】
ステップS108では、受信した画像信号の全画素信号に対してステップS104における選択が終了したか否かを判別する。全画素に対する選択が終了していない場合には、ステップS104に戻る。以後、全画素に対する選択が終了するまで、ステップS104〜ステップS108の処理を繰返す。全画素に対する選択が終了すると、ステップS109に進む。
【0054】
ステップS109では、次のフレームの画像信号の受信を待ち、フレーム番号Fnに+1を加算する。フレーム番号の加算後、ステップS101に戻る。以後、ステップS101〜ステップS109の処理を繰返す。
【0055】
次に、比較器22dおよびマスクメモリ22eにより実行されるマスク領域MAの認識について図6のフローチャートを用いて説明する。なお、マスク領域MAの認識は、プロセッサ画像処理システム22が第1のフレームの画像信号を受信するときに開始する。
【0056】
ステップS200では、画像信号のフレーム番号Fnを1にリセットする。フレーム番号のリセット後、ステップS201に進む。
【0057】
ステップS201では、フレーム番号Fnが6未満、すなわち1〜5であるか否かを判別する。フレーム番号Fnが6未満である場合には、ステップS202に進む。
【0058】
ステップS202では、受信した画像信号をマスクメモリ22eに格納する。マスクメモリ22eへの格納後、ステップS203に進む。ステップS203では、次のフレームの画像信号の受信を待ち、フレーム番号Fnに+1を加算する。フレーム番号の加算後、ステップS201に戻る。以後、ステップS201〜ステップS203の処理を繰返す。
【0059】
ステップS201においてフレーム番号が6以上である場合には、ステップS204に進む。ステップS204では、マスクメモリ22eに格納された第1〜第5のフレームの画像信号を平均化する。平均化の終了後、ステップS205に進む。
【0060】
ステップS205では、平均化した画像信号を構成する画素信号に対応する画素を順番に選択する。画素の選択後、ステップS206に進む。
【0061】
ステップS206では、ステップS205において選択した画素の画素信号の信号強度が閾値を超えるか否かを判別する。信号強度が閾値を超える場合にはステップS207に進む。信号強度が閾値以下である場合にはステップS207をスキップして、ステップS208に進む。
【0062】
ステップS207では、ステップS205において選択した画素はマスク領域MAに配置された画素と認識し、画素の位置をマスクメモリ22eに格納する。画素の位置の格納後、ステップS208に進む。
【0063】
ステップS208では、平均化した画像信号の全画素信号に対してステップS205における選択が終了したか否を判別する。全画素の選択が終了していない場合には、ステップS205に戻る。以後、全画素の選択が終了するまで、ステップS205〜ステップS208の処理を繰返す。全画素の選択が終了すると、マスク領域MAの認識を終了する。
【0064】
以上のように、第1の実施形態を適用した電子内視鏡30および内視鏡プロセッサ20によれば、電子内視鏡30においてマスク領域MAの画素の画素信号が最大の信号強度に変換されて、送信されるので、ノイズ成分を撮影画像と誤認識することを防ぎながらマスク領域MAにおけるノイズ混入の影響を低減化可能である。
【0065】
従来の電子内視鏡では、マスク領域MAの画素の画素信号は、モニタ11に表示するマスクの色である黒色に相当する黒レベルの信号強度に変換されていた。しかし、一般的に電子内視鏡により撮影される被写体は暗く、このような被写体をマスクと誤認識することを防ぐためには信号強度と比較する閾値を黒レベルから大きく離間することは困難であった。しかし、閾値を黒レベルに近い値に設定すると、ノイズの混入したマスク領域MAの画素の画素信号が画像として認識される可能性があった。
【0066】
一方、本実施形態では、前述のように、電子内視鏡30においてマスク領域MAの画素の画素信号が最大の信号強度、すなわち白色に相当する白レベルに変換される。電子内視鏡30の被写体が白レベル付近となる可能性は黒レベルより低い。それゆえ、想定されるノイズ成分を白レベルから減じた値を閾値として用いることが可能である。したがって、ノイズ成分を撮影画像と誤認識することを防ぎながら、マスク領域MAのノイズの影響を低減化させることが可能である。
【0067】
また、第1の実施形態では、内視鏡プロセッサ20によりマスク領域MAの位置を判別した後に比較器22dの機能を停止することにより、以後のフレームの画像信号に対してはマスク領域MAの位置の判別が行われない。したがって、光量を増やすことにより中央領域CA内で白飛びする画素が生じても、マスク領域MAの位置の判別後であれば白飛びの画素がマスク領域MAに配置された画素と判別されることを防ぐことが可能である。
【0068】
また、第1の実施形態では、第1のマスク処理を施した複数の画像信号を平均化して、プロセッサ画像処理システム22におけるマスク領域MAの位置判別に用いている。このように、複数の画像信号を平均化することにより、単一の画像信号を用いる場合に比べて、ノイズの混入や、偶発的に中央領域CAに生じる白飛びの影響を低減化することが可能である。
【0069】
次に、本発明の第2の実施形態を適用した電子内視鏡および内視鏡プロセッサについて説明する。第2の実施形態の電子内視鏡は、すべての画像信号に対して第1のマスク処理を実行する点において第1の実施形態と異なっている。また、第2の実施形態の内視鏡プロセッサは、マスク領域MAの画素の認識方法が第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、第1の実施形態と同じ機能を有する部位には、同じ符号を付す。
【0070】
第2の実施形態の電子内視鏡30は、マスク発生部31cが受信した画像信号すべてに第1のマスク処理を施す以外の機能および構成は第1の実施形態と同じである。
【0071】
また、第2の実施形態の内視鏡プロセッサ20は、比較器およびマスクメモリにおける動作以外の構成および機能は第1の実施形態と同じである。以下に、第2の実施形態における比較器およびマスクメモリの動作について説明する。
【0072】
図7に示すように、マスク発生部31cから送信される画像信号は、比較器220dに受信される。比較器220dでは、受信した画像信号を構成する画素信号の信号強度が閾値と比較される。
【0073】
第1の実施形態と同じく、信号強度が閾値以下である場合は、対応する画素は中央領域CAに配置された画素と判別される。信号強度が閾値を超える場合には、対応する画素はマスク領域MAに配置された画素と判別される。マスク領域MAに配置されたと判別された画素の位置がマスクメモリ220eに格納される。したがって、マスク領域MAの位置がマスクメモリ220eに格納される。
【0074】
第1の実施形態と異なり、マスク発生部31cからは常に第1のマスク処理の施された画像信号が送信される。比較器220dでは、受信する画像信号毎にマスク領域の判別を行い、判別したマスク領域MAの位置を画像信号毎にマスクメモリ220eに格納する。
【0075】
第1の実施形態と同様に、マスク発生部31cから送信される画像信号は、プレ信号処理部22aにも受信される。また、第1の実施形態と同様に、プレ信号処理部22aにおいて所定の信号処理の施された画像信号が画像メモリ22bに格納され、メイン信号処理部22dに送信される。第1の実施系と同じく、メイン信号処理部22dでは、マスク領域MAに配置された画素に対応する画素信号の信号強度が信号強度の最小値または黒レベルに相当する値に変換される。
【0076】
次に、マスク発生部31cにより実行される第1のマスク処理を図8のフローチャートを用いて説明する。第1のマスク処理はマスク発生部31cに1フレームの画像信号が入力されるときに開始する。
【0077】
ステップS300では、受信した画像信号を構成する画素信号に対応する画素を順番に選択する。画素の選択後、ステップS301に進む。
【0078】
ステップS301では、ステップS300において選択した画素がマスク領域MA内に配置されているか否かを判別する。画素がマスク領域MA内に配置されている場合には、ステップS302に進む。画素がマスク領域MA外に配置されている場合には、ステップS303に進む。
【0079】
ステップS302では、ステップS300で選択された画素の画素信号の信号強度を、信号強度の最大値に変換して、出力する。一方、ステップS303では、選択された画素の画素信号の信号強度の変換を行うことなく出力する。ステップS302またはステップS303における画素信号のプロセッサ画像処理システム22への送信後、ステップS304に進む。
【0080】
ステップS304では、受信した画像信号の全画素信号に対してステップS300における選択が終了したか否かを判別する。全画素に対する選択が終了していない場合には、ステップS300に戻る。以後、全画素に対する選択が終了するまで、ステップS300〜ステップS304の処理を繰返す。全画素に対する選択が終了すると、第1のマスク処理を終了する。
【0081】
次に、比較器220dおよびマスクメモリ220eにより実行されるマスク領域MAの認識について図9のフローチャートを用いて説明する。なお、マスク領域MAの認識は、プロセッサ画像処理システム22が画像信号を受信するたびに開始する。
【0082】
ステップS400では、平均化した画像信号を構成する画素信号に対応する画素を順番に選択する。画素の選択後、ステップS401に進む。
【0083】
ステップS401では、ステップS400において選択した画素の画素信号の信号強度が閾値を超えるか否かを判別する。信号強度が閾値を超える場合にはステップS402に進む。信号強度が閾値以下である場合にはステップS402をスキップして、ステップS403に進む。
【0084】
ステップS402では、ステップS400において選択した画素はマスク領域MAに配置された画素と認識し、画素の位置をマスクメモリ220eに格納する。画素の位置の格納後、ステップS403に進む。
【0085】
ステップS403では、平均化した画像信号の全画素信号に対してステップS400における選択が終了したか否を判別する。全画素の選択が終了していない場合には、ステップS400に戻る。以後、全画素の選択が終了するまで、ステップS400〜ステップS403の処理を繰返す。全画素の選択が終了すると、マスク領域MAの認識を終了する。
【0086】
以上のように、第2の実施形態を適用した電子内視鏡および内視鏡プロセッサによれば、第1の実施形態と同じく、ノイズ成分を撮影画像と誤認識することを防ぎながら、マスク領域MAのノイズの影響を低減化させることが可能である。
【0087】
なお、第1の実施形態における電子内視鏡30では、第6のフレーム以降の画像信号に対してマスク発生部31cが第2のマスク処理を施す構成であるが、第6のフレーム以降の画像信号に対してマスク発生部31の機能を停止させてもよい。
【0088】
すなわち、マスク発生部31cに入力された画像信号は第2のマスク処理を施されることなく、プロセッサ画像処理システム22に送信される。すでに、プロセッサ画像処理システム22において、マスク領域MAの位置が判別されているので、以後の画像信号が第2のマスク処理を施さなくても撮影した画像の周囲をマスクで覆ったマスク画像をプロセッサ画像処理システム22において作成可能である。
【0089】
また、第1の実施形態では、マスク発生部31cは第1〜第5のフレームの画像信号に対して第1のマスク処理を施し、比較器22dは第1〜第5のフレームの画像信号に対してマスク領域MAの判別を行う構成であるが、第5のフレームの画像信号までに限られない。第1〜第nのフレーム(nは正の整数)の画像信号に対して第1のマスク処理を施し、マスク領域MAの判別を行ってもよい。
【0090】
また、第1、第2の実施形態では、メイン信号処理部22c、220cにおいてマスク領域MAに配置された画素の画素信号を信号強度の最小値または黒レベルに相当する値に変換される構成であるが、どのような色に相当する信号強度に変換されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 内視鏡ユニット
20 内視鏡プロセッサ
22 プロセッサ画像処理システム
22c メイン信号処理部
22d、220d 比較器
22e、220e マスクメモリ
23 システムコントローラ
24 タイミングコントローラ
30 電子内視鏡
31 内視鏡画像処理システム
31c マスク発生部
31d メモリ
32 撮像素子
CA 中央領域
MA マスク領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面に2次元上に配置される複数の画素を有し、前記受光面に形成される光学像に基づいて前記複数の画素それぞれが受光量に応じて生成する複数の画素信号によって構成される画像信号を生成する撮像素子と、
前記撮像素子により生成された前記画像信号において前記受光面内において前記受光面の中心部を囲う領域として定められるマスク領域に配置された前記画素に対応する前記画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最大値である第1の最大値に変換することにより、前記画像信号を第1のマスク画像信号に変換するマスク設定部とを備える
ことを特徴とする電子内視鏡。
【請求項2】
前記撮像素子は、一定の周期で前記画像信号を生成し、
前記マスク部は、前記画像信号の受信開始後に第1〜第nのフレームの前記画像信号から前記第1のマスク画像信号への変換を実行し、前記第nのフレームの画像信号の次に受信する第(n+1)のフレーム以降の前記画像信号に対しては前記マスク領域に配置された前記画素に対応する前記画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最小値に変換することにより前記画像信号を第2のマスク画像信号に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡。
【請求項3】
前記撮像素子は、一定の周期で前記画像信号を生成し、
前記マスク部は、前記画像信号の受信開始後に第1〜第nのフレームの前記画像信号から前記第1のマスク画像信号への変換を実行し、前記第nのフレームの画像信号の次に受信する第(n+1)のフレーム以降の前記画像信号に対しては第1のマスク画像信号への変換を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡。
【請求項4】
請求項1に記載の電子内視鏡から、前記第1のマスク画像信号を受信する受信部と、
前記第1のマスク画像信号を構成する前記画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、
前記第1の閾値を超えると判別された前記画素信号の信号強度を、前記マスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより、前記第1のマスク画像信号を、モニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備える
ことを特徴とする内視鏡プロセッサ。
【請求項5】
請求項2に記載の電子内視鏡から、前記第1、第2のマスク画像信号を受信する受信部と、
前記第1のマスク画像信号を構成する前記画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、
前記第1の閾値を超えると判別された前記画素信号に対応する前記画素をマスク画素として記憶するメモリと、
前記第2のマスク画像信号を構成する各画素信号に対応する前記画素が前記マスク画素である場合には前記画素信号の信号強度を前記マスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより、前記第2のマスク画像信号を、モニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備える
ことを特徴とする内視鏡プロセッサ。
【請求項6】
請求項3に記載の電子内視鏡から、前記第1のマスク画像信号および前記画像信号を受信する受信部と、
前記第1のマスク画像信号を構成する前記画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、
前記第1の閾値を超えると判別された前記画素信号に対応する前記画素をマスク画素として記憶するメモリと、
前記画像信号を構成する各画素信号に対応する前記画素が前記マスク画素である場合には前記画素信号の信号強度を前記マスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより、前記画像信号を、モニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備える
ことを特徴とする内視鏡プロセッサ。
【請求項7】
前記マスク作成部は、前記第1のマスク画像信号を構成する前記画素信号であって前記第1の閾値を超えると判別された前記画素信号の信号強度を、前記第1の色に対応する信号強度に変換することにより、前記第1のマスク画像信号を、前記第3のマスク画像信号に変換することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の内視鏡プロセッサ。
【請求項8】
受光面に2次元上に配置される複数の画素を有し、前記受光面に形成される光学像に基づいて前記複数の画素それぞれが受光量に応じて生成する複数の画素信号によって構成される画像信号を生成する撮像素子と、
前記撮像素子により生成された前記画像信号において前記受光面内において前記受光面の中心部を囲う領域として定められるマスク領域に配置された前記画素に対応する前記画素信号の信号強度を調節可能範囲内の最大値である第1の最大値に変換することにより、前記画像信号を第1のマスク画像信号に変換するマスク設定部と、
前記マスク設定部から前記第1のマスク画像信号を受信する受信部と、
前記第1のマスク画像信号を構成する前記画素信号の信号強度が第1の閾値を超えるか否かを判別する判別部と、
前記第1の閾値を超えると判別された前記画素信号の信号強度を、前記マスク領域として表示する第1の色に対応する信号強度に変換することにより、前記第1のマスク画像信号を、モニタに表示される画像に相当する第3のマスク画像信号に変換するマスク作成部とを備える
ことを特徴とする内視鏡ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−234789(P2011−234789A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106496(P2010−106496)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】