説明

電子内視鏡システム

【課題】温度センサを設けて挿入部を太径化させることなく、先端部の温度を正確に測定することができる電子内視鏡システムを提供する。
【解決手段】電子内視鏡システム11は、電子内視鏡12、光源装置14、温度換算部38を備える。電子内視鏡12は、被検体内に挿入する挿入部の先端(先端部20)に、被検体内を撮像するCMOSセンサ21を有する。光源装置14は照明光を発生する装置であり、照明光はライトガイド28等を通じて先端部20から被検体内に照射される。温度換算部38は、CMOSセンサ21から出力される撮像信号に含まれるオプティカルブラック(OB)部のデータの平均値を取得し、温度換算テーブル39のデータと比較することで、CMOSセンサ21の温度を測定する。温度換算テーブル39は、これをOB部のデータの平均値とCMOSセンサ21の温度の対応関係を示すものであり、ROM36に予め記憶される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に挿入される先端部に撮像素子を有する電子内視鏡によって被検体内を撮影する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において、電子内視鏡システムを利用した検査が広く普及している。電子内視鏡システムは、被検体(患者)の体内に挿入される挿入部を有する電子内視鏡と、電子内視鏡に接続されるプロセッサ装置及び光源装置等から構成される。
【0003】
電子内視鏡は、被検体内に照明光を照射する照明窓や、被検体内を撮像する撮像素子を挿入部の先端(以下、先端部という)に有する。プロセッサ装置は、撮像素子から出力される撮像信号に対して各種処理を施し、診断に供する観察画像を生成する。観察画像は、プロセッサ装置に接続されたモニタに表示される。光源装置は、光量を調節可能な白色光源を有し、電子内視鏡に照明光を供給する。照明光は、電子内視鏡内に挿通されたライトガイドを通じて先端部に導光され、レンズ等からなる照明光学系を介して照明窓から被検体内に照射される。
【0004】
先端部は、電子内視鏡を使用すると、ライトガイドの伝達損失による発熱や、撮像素子の発熱等によって温度が上昇する。先端部の温度が上昇すると、撮像素子の暗電流ノイズが増加し、白く目立つ画素(いわゆる白傷)が目立つようになり、観察画像が劣化する。
【0005】
こうした先端部の温度上昇の問題を解決するために、近年では、先端部の温度を監視する温度センサを設け、先端部の温度が所定温度以上に上昇しないように照明光の光量を制御する電子内視鏡システムが知られている(特許文献1,2)。
【0006】
また、先端部に照明光を発するLEDを設けた電子内視鏡も知られているが、照明光を発光するときにLEDが発熱するので、先端部の発熱の問題は上述と同様であり、温度センサによって測定した先端部の温度に応じて照明光の光量を制限する電子内視鏡が知られている(特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−071233号公報
【特許文献2】特開2007−117538号公報
【特許文献3】特開2007−252516号公報
【特許文献4】特開2008−035883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように先端部の温度を測定し、照明光の光量等を調節して先端部温度の上昇を抑えることは必要であるが、先端部に温度センサを設けると、温度センサの設置スペースや、温度センサからの信号を伝送するための配線が必要となるので、挿入部(及び先端部)は太径化し、被検者の負担が増大するという問題がある。
【0009】
また、先端部の温度に応じて照明光の光量を制御する場合、照明光の光量を制限しすぎると観察画像が暗くなって診察に支障をきたすという弊害も生じる。このため、先端部の温度、特に撮像素子の温度をできるだけ正確に把握する必要がある。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、温度センサを設けて挿入部を太径化させることなく、先端部の温度を正確に測定することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子内視鏡システムは、被検体内に挿入する挿入部の先端に前記被検体内を撮像する撮像素子を有する電子内視鏡と、前記挿入部の先端から前記被検体内に照明光を照射する照明手段と、前記撮像素子において、光を受光しない画素で発生する暗時出力値と、前記撮像素子の温度との対応関係を記憶する記憶手段と、前記暗時出力値に基づいて前記撮像素子の温度を測定する温度測定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
前記温度測定手段によって測定された前記撮像素子の温度に応じて前記照明光の光量を調節する光量調節手段を備えることが好ましい。
【0013】
前記撮像素子は、前記被検体内からの光を受光して光電変換する第1画素群と、前記被検体内からの光を受光しない第2画素群とを有し、前記温度測定手段は、前記被検体内の撮影時に前記第2画素群の少なくとも一部から出力される信号に基づいて前記撮像素子の温度を測定することが好ましい。
【0014】
前記第2画素群は、遮光部材で遮光されているオプティカルブラックであることが好ましい。
【0015】
前記温度測定手段は、前記撮像信号に含まれる前記第2画素群から出力される前記暗時出力値の平均値に基づいて前記撮像素子の温度を測定することが好ましい。
【0016】
前記温度測定手段は、前記撮像信号に含まれる前記第2画素群から出力される前記暗時出力値を複数のフレーム間で平均した平均値に基づいて前記撮像素子の温度を測定することが好ましい。
【0017】
前記温度測定手段は、前記撮像素子について前記第2画素群から出力される前記暗時出力値と前記撮像素子の温度との対応関係が予め記録されたデータテーブルを用いて、前記第2画素群から出力された信号を前記撮像素子の温度に換算することが好ましい。
【0018】
前記温度測定手段は、取得した前記第2画素群から出力される前記暗時出力値に対応するデータが前記データテーブルにない場合に、前記データテーブルのデータを補間することにより、前記第2画素群から出力される信号を前記撮像素子の温度に換算することが好ましい。
【0019】
前記光量調節手段は、前記撮像素子の温度に応じて、前記被検体内に照射可能な前記照明光の光量の上限を制限し、前記上限以下の範囲内で前記照明光の光量を調節することが好ましい。
【0020】
前記光量調節手段は、前記撮像素子の温度が高温の第1温度を超えて上昇するときに、前記照明光の光量の上限を低温の第2上限に制限し、前記撮像素子の温度が低温の第2温度を下回って下降するときに、前記照明光の光量の上限を高温の第1上限に開放することが好ましい。
【0021】
前記温度測定手段は、所定フレーム毎に前記撮像素子の温度を測定することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、温度センサを設けて挿入部を太経化することなく、先端部の温度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電子内視鏡システムの構成を示す外観図である。
【図2】電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図3】CMOSセンサの表面構成を示す説明図である。
【図4】CMOSセンサの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】出力回路の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】電子内視鏡システムの動作様態を示すフローチャートである。
【図7】CMOSセンサの温度と照明光の光量上限の関係を示すグラフである。
【図8】CMOSセンサの温度変化に応じて照明光の光量上限が調節される様態を示すグラフである。
【図9】CMOSセンサの温度と照明光の光量上限の関係を示すグラフである。
【図10】CMOSセンサの温度と照明光の光量上限の関係を示すグラフである。
【図11】CMOSセンサに対するイメージサークルの例を示す説明図である。
【図12】光源装置に絞り機構を設ける例を示すブロック図である。
【図13】絞り機構の様態を示す説明図である。
【図14】CCDを用いる構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、電子内視鏡システム11は、電子内視鏡12、プロセッサ装置13、及び光源装置14からなる。電子内視鏡12は、被検者の体内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部分に連設された操作部17と、プロセッサ装置13及び光源装置14に接続されるコネクタ18と、操作部17‐コネクタ18間を繋ぐユニバーサルコード19とを有する。挿入部16の先端(以下、先端部という)20には、被検体内撮影用のCMOS型のイメージセンサ(図2参照。以下、CMOSセンサという)21が設けられている。
【0025】
操作部17には、先端部20を上下左右方向に湾曲させるためのアングルノブや、挿入部16の先端からエアー,水を噴出させるための送気/送水ボタン、観察画像を静止画記録するためのレリーズボタン、モニタ22に表示された観察画像の拡大/縮小を指示するズームボタンといった操作部材が設けられている。また、操作部17の先端側には、電気メス等の処置具が挿通される鉗子口が設けられている。鉗子口は、挿入部16内の鉗子チャンネルを通して、先端部20に設けられた鉗子出口に連通している。
【0026】
プロセッサ装置13は、光源装置14と電気的に接続され、電子内視鏡システム11の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置13は、ユニバーサルコード19や挿入部16内に挿通された伝送ケーブルを介して電子内視鏡12に給電を行い、CMOSセンサ21の駆動を制御する。また、プロセッサ装置13は、伝送ケーブルを介して、CMOSセンサ21から出力された撮像信号を取得し、各種処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置13で生成された画像データは、プロセッサ装置13にケーブル接続されたモニタ22に観察画像として表示される。
【0027】
図2に示すように、先端部20には、観察窓23、照明窓24、タイミングジェネレータ(以下、TGという)26、CPU27等が設けられている。観察窓23の奥には、レンズ群及びプリズムからなる対物光学系25によって被検体内の像が撮像領域51(図3参照)に結像されるようにCMOSセンサ21が配されている。照明窓24からは照明光が被検体内に照射される。照明光は、光源装置14から電子内視鏡12に供給され、ユニバーサルコード19及び挿入部16に挿通されたライトガイド28によって導光され、出射端に配置された照明レンズ29によって照明窓24を介して被検体内に照射される。
【0028】
CMOSセンサ21は、対物光学系25によって撮像領域51に結像される被検体内の像を光電変換する。CMOSセンサ21は、複数の画素からなり、各画素は、入射光量に応じた画素値である撮像信号を出力する。CMOSセンサ21が出力する撮像信号には、開口された受光部52(図3参照)に属する画素の撮像信号(以下、受光部データという)とともに、遮光されたオプティカルブラック部(図3参照。以下、OB部という)53に属する画素の撮像信号(暗時出力値。以下、OB部データという)を平均した平均OB部データが含まれる。後述するように、撮像信号に含まれる受光部52のデータは観察画像の生成に用いられ、平均OB部データはCMOSセンサ21の温度に換算される。また、平均OB部データは暗電流補正にも用いられる。
【0029】
TG26には、CMOSセンサ21にクロック信号を与える。CMOSセンサ21は、TG26から入力されるクロック信号に応じて撮像動作を行ない、撮像信号を出力する。なお、TG26は、CMOSセンサ21内に設けられていても良い。CPU27は、電子内視鏡12とプロセッサ装置13とが接続された後、プロセッサ装置13のCPU31からの動作開始時に基づいてTG26を駆動させる。
【0030】
CMOSセンサ21から出力される撮像信号は、ユニバーサルコード19及びコネクタ18を介してプロセッサ装置13に入力され、デジタル信号処理回路(以下、DSPという)32の作業メモリ(図示しない)に一旦格納される。
【0031】
プロセッサ装置13は、CPU31、DSP32、デジタル画像処理回路(以下、DIPという)33、表示制御回路34、操作部35等を有する。
【0032】
CPU31は、図示しないデータバスやアドレスバス、制御線を介して各部と接続されており、プロセッサ装置全体の動作を統括的に制御する。ROM36には、プロセッサ装置13の動作を制御するための各種プログラム(OS,アプリケーションプログラム等)やデータ(グラフィックデータ等)が記憶されている。CPU31は、ROM36から必要なプログラムやデータを読み出して、作業用メモリであるRAM37に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。また、CPU31は、検査日時、被検体や術者の情報等の文字情報といった検査ごとに変わる情報を、後述する操作部35やLAN等のネットワークより取得し、RAM37に記憶する。
【0033】
DSP32は、CMOSセンサ21から入力される撮像信号のうち、受光部データに対して、色分離、色補間、ゲイン補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正等の各種信号処理を施し、画像データを生成する。DSP32で生成された画像データは、DIP33の作業メモリに入力される。また、DSP32は、例えば、生成した画像データの各画素の輝度を平均した平均輝度値等、ALC制御(後述)に必要なALC制御用データを生成し、CPU31に入力する。
【0034】
さらに、DSP32は、CMOSセンサ21の温度を測定する温度換算部38を備える。温度換算部38は、CMOSセンサ21から入力される撮像信号のうち、平均OB部データを取得し、温度換算テーブル39のデータと比較することにより、平均OB部データをCMOSセンサ21の温度に換算する。温度換算テーブル39は、CMOSセンサ21の温度と平均OB部データとの対応関係について予め実測されたデータテーブルであり、ROM36に記録されている。CMOSセンサ21の温度と平均OB部データとの対応関係は、ほぼCMOSセンサ21の個体差等によらず、CMOSセンサ21の温度上昇に応じて指数関数的に平均OB部データが増大する傾向にあり、例えば、CMOSセンサ21の温度が8℃上昇すると平均OB部データは約2倍になる。温度換算部38によって平均OB部データから換算されたCMOSセンサ21の温度は、後述するように照明光の光量の調節に用いられる。なお、ここでは、CMOSセンサ21の個体差を無視するが、より正確には、製造時に温度換算テーブル39をCMOSセンサ21の固体毎に作成しても良く、さらに、使用状態等で生じたCMOSセンサ21の個体差を反映するように、定期メンテナンス等で温度換算テーブル39に順次更新しても良い。
【0035】
DIP33は、DSP32で生成された画像データに対して、電子変倍、色強調処理、エッジ強調処理等の各種画像処理を施す。DIP33で各種画像処理を施された画像データは、観察画像として表示制御回路34に入力される。
【0036】
表示制御回路34は、DIP33から入力される観察画像を格納するVRAMを有する。また、表示制御回路34は、CPU31からROM36及びRAM37のグラフィクデータ等を受け取る。グラフィックデータ等には、受光部52のうち被写体が写された有効画素領域のみを表示させる表示用マスク、検査日時、あるいは被検体や術者の情報等の文字情報、GUIといったものがある。表示制御回路34は、VRAMに格納した観察画像に対して、表示用マスク、文字情報、GUIの重畳処理を行うとともに、モニタ22の表示形式に応じたビデオ信号(コンポーネント信号、コンポジット信号等)に変換してモニタ22に出力する。これにより、モニタ22に観察画像が表示される。
【0037】
操作部35は、プロセッサ装置13の筐体に設けられる操作パネル、マウスやキーボード等の周知の入力デバイスであり、電子内視鏡12の操作部17にあるボタン等も含む。CPU31は、操作部35からの操作信号に応じて、電子内視鏡システム11の各部を動作させる。
【0038】
プロセッサ装置13には、上記の他にも、画像データに所定の圧縮形式(例えばJPEG形式)で画像圧縮を施す圧縮処理回路や、レリーズボタンの操作に連動して、圧縮された画像をリムーバブルメディアに記録するメディアI/F、LAN等のネットワークとの間で各種データの伝送制御を行うネットワークI/F等が設けられている。これらは、データバス等を介してCPU31と接続されている。
【0039】
光源装置14は、光源41、波長選択フィルタ42、CPU43を有する。光源41は、赤色から青色までのブロードな波長の光(例えば、主に400nm以上800nm以下の波長帯の光、以下、通常光という)を発生する。光源41は、発生する照明光の光量を調節可能であり、例えば、LEDやLD等からなり、光源ドライバ44によって駆動される。光源41から発せられた照明光は、集光レンズ46で集光されてライトガイド28の入射端に導光される。
【0040】
波長選択フィルタ42は、光源41から発せられた光を特定の狭い波長帯の光(以下、特殊光という)に制限するフィルタである。波長選択フィルタ42は、円盤の半分が切り欠かれた半円状の形状を有し、光源41と集光レンズ46の間を横切るようにモータ回転される。また、波長選択フィルタ42には、その回転位置を検出するセンサが設けられている。波長選択フィルタ42が光源と集光レンズの間を横切っている間は特殊光が照射され、波長選択フィルタ42の切り欠き部分が光源41と集光レンズ46の間を横切っている間は通常光が照射される。特殊光としては、例えば、450nm、500nm、550nm、600nm、780nm近傍の波長の光が挙げられる。
【0041】
450nm近傍の特殊光による撮影は、表層の血管やピットパターン等の被観察部位表面の微細構造の観察に適している。500nm近傍の照明光では、被観察部位の陥凹や隆起等のマクロな凹凸構造を観察することができる。550nm近傍の照明光は、ヘモグロビンによる吸収率が高く、微細血管や発赤の観察に適し、600nm近傍の照明光は、肥厚の観察に適している。深層血管の観察には、インドシアニングリーン(ICG)等の蛍光物質を静脈注射し、780nm近傍の照明光を用いることで明瞭に観察することができる。
【0042】
なお、ここでは波長選択フィルタ42を用いるが、波長選択フィルタ42に代えて、あるいは波長選択フィルタ42に加えて、41として波長帯が異なる光を発するLEDやLD等を複数備えておき、これらの点灯と消灯を制御することにより通常光と特殊光を切り替えても良い。また、青色レーザー光源、及び青色レーザー光の照射により緑色〜赤色の励起光を発する蛍光体を用いて通常光を発生させ、さらに波長選択フィルタで特殊光を発生させても良い。
【0043】
CPU43は、プロセッサ装置13のCPU31と通信し、波長選択フィルタ42の動作制御を行う。また、CPU43は、光源ドライバ44を制御して、撮影の様態等に応じて自動的に照明光の光量を調節するALC(Auto Light Control)制御手段として機能する。CPU43の行うALC制御は、DSP32で生成されたALC制御用データに基づいて行われる。
【0044】
また、CPU43は、ALC制御を行う際に、プロセッサ装置13のCPU31を介して、所定のタイミングでCMOSセンサ21の温度を取得する。そして、CPU43は、CMOSセンサ21の温度に応じて光源41から出力する照明光の光量の上限を所定値に制限し、この上限以下の光量となるようにALC制御を行う。
【0045】
例えば、CMOSセンサ21の温度に対して2種の閾値Ta,Tb(Ta>Tb)と、これに対応する照明光の光量上限La,Lb(La>Lb)が予め設定される。CMOSセンサ21の温度が高温閾値Ta(例えば60℃)を超えた場合、CPU43は光量上限を低光量上限Lbに制限し、照明光の光量が常に低光量上限Lb以下の範囲内となるようにALC制御を行う。CMOSセンサ21の温度が低温閾値Tb(例えば50℃)を下回った場合、CPU43は光量上限を高光量上限Laに開放し、照明光の光量が常に高光量上限La以下の範囲内となるようにALC制御を行う。
【0046】
CMOSセンサ21の温度に対する閾値Ta,Tbは、CMOSセンサ21の正常動作がほぼ保証される範囲(白傷が目立たない温度範囲)内で予め定められる。照明光の光量上限La,Lbは、電子内視鏡12の型毎に予め設定される。ライトガイド28における伝達損失、挿入部16内の構造に応じたCMOSセンサ21への熱の伝わり方等が電子内視鏡12の型毎に異なるからである。これらの閾値は、例えばROM36に記憶される。
【0047】
ライトガイド28は、例えば、複数の石英製光ファイバーを巻回テープ等で集束してバンドル化したものである。ライトガイド28の出射端に導かれた照明光は、照明レンズ29によって拡散されて被検体内に照射される。
【0048】
図3に示すように、CMOSセンサ21には、対物光学系25によって被検体の像が結像される前面(撮像面)に、マトリクス状に配列された複数の画素からなる撮像領域51を有する。撮像領域51は、中央の受光部52と、受光部52を囲むように設けられたOB部53とからなる。受光部52は、被検体内の撮像に用いられる開口された画素が配列された領域であり、受光部52内の各画素に複数の色セグメントからなるカラーフィルタ、例えばベイヤー配列の原色(RGB)あるいは補色(CMYまたはCMYG)カラーフィルタが形成されている。OB部53は、遮光膜で遮光された画素からなる領域であり、暗電流ノイズに応じたデータ(画素値)を出力する。CMOSセンサ21は、画素の行毎に画素のデータが読み出されるため、OB部53のデータは受光部データの前端及び後端に出力される。後述するように、CMOSセンサ21はこれら前後のOB部53のデータを平均した平均OB部データを算出し、受光部データの最前端に付加して出力する。
【0049】
図4に示すように、CMOSセンサ21は、垂直走査回路56、相関二重サンプリング(CDS)回路57、列選択トランジスタ58、水平走査回路59、及び出力回路61から構成される。
【0050】
撮像領域51には、画素62がマトリクス状に配列されている。画素62は、フォトダイオードD1、増幅用トランジスタM1、画素選択用トランジスタM2、およびリセット用トランジスタM3を有する。フォトダイオードD1は、光電変換によって、入射光量に応じた信号電荷を生成するとともに、これを蓄積する。フォトダイオードD1に蓄積された信号電荷は、増幅用トランジスタM1によって撮像信号として増幅され、画素選択用トランジスタM2によって、所定のタイミングで画素62外に出力される。また、フォトダイオードD1に蓄積された信号電荷は、所定のタイミングでリセット用トランジスタM3を介してドレインに排出される。画素選択用トランジスタM2、およびリセット用トランジスタM3はNチャンネルトランジスタであり、ゲートにHighレベル“1”が印加されるとオン、Lowレベル“0”が印加されるとオフとなる。
【0051】
撮像領域51には、垂直走査回路56からから水平方向(X方向)に行選択線L1および行リセット線L2が配線されているとともに、CDS回路57から垂直方向(Y方向)に列信号線L3が配線されている。行選択線L1は、画素選択用トランジスタM2のゲートに接続されており、行リセット線L2は、リセット用トランジスタM3のゲートに接続されている。また、列信号線L3は、画素選択用トランジスタM2のソースに接続され、CDS回路57を介して、対応する列の列選択トランジスタ58に接続されている。
【0052】
CDS回路57は、垂直走査回路56によって選択された行選択線L1に接続された画素62の撮像信号を、TG26から入力されるクロック信号に基づいて保持し、ノイズ除去を行う。水平走査回路59は、TG26から入力されるクロック信号に基づいて水平走査信号を発生し、列選択トランジスタ58のオン、オフ制御を行う。
【0053】
列選択トランジスタ58は、出力回路61に接続された出力バスライン63とCDS回路57との間に設けられており、水平走査信号に応じて、出力バスライン63に撮像信号を転送させる画素を選択する。
【0054】
出力回路61は、CDS回路57から出力バスライン63に順に転送される撮像信号を増幅し、A/D変換して出力する。出力回路61による撮像信号の増幅率は、CPU27から出力回路61にゲイン調節信号を入力することにより調節される。また、後述するように、出力回路61は、画素62の列毎にOB部53に属する画素62の撮像信号(OB部データ)を平均して平均OB部データを算出し、これを受光部52に属する画素62の撮像信号(受光部データ)から減算することにより、受光部データに暗電流補正を施す。その後、出力回路61は、暗電流補正が施された受光部データと平均OB部データをA/D変換し、平均OB部データ、各画素62の受光部データの順に整列したデジタル撮像信号を出力する。
【0055】
図5に示すように、出力回路61は、平均OB部データ算出部71、平均OB部データ格納部72、LVDS回路73を有する。
【0056】
CDS回路57から出力される各画素62の撮像信号は、平均OB部データ算出部71に入力される。平均OB部データ算出部71は、列毎に順に入力される各画素62の撮像信号のうちOB部データを平均し、平均OB部データを算出する。平均OB部データは、A/D変換器74によってデジタルデータに変換され、平均OB部データ格納部72に一時的に記憶される。
【0057】
CDS回路57から平均OB部データ算出部71に入力される撮像信号のうち、受光部データは、アンプ75に入力される。平均OB部データは、D/A変換器78によって再びアナログデータに変換されてアンプ75に入力される。アンプ75は、受光部データから平均OB部データを減算して暗電流補正を施した後、所定の増幅率で信号を増幅する。アンプ75から出力されるデータは、A/D変換器76によってデジタルデータに変換され、パラレル‐シリアルコンバータ(PSC)77に入力される。
【0058】
PSC77には、暗電流補正が施された受光部データとともに、平均OB部データ格納部72から平均OB部データが入力されると、平均OB部データの後ろに受光部データが続くように整列されたシリアル信号に変換してLVDS回路73に入力される。
【0059】
LVDS回路73は、2本の伝送線を用いて小振幅の信号を伝送する差動インターフェイスであり、PSC77を介して入力される撮像信号をDSP32に伝送する。DSP32では、LVDS回路73から入力される撮像信号を、シリアル‐パラレルコンバータ(図示しない)によってパラレル信号に変換して受信する。
【0060】
次に、上述のように構成される電子内視鏡システム11の作用について説明する。電子内視鏡12で被検体内を観察する際、術者は、電子内視鏡12とプロセッサ装置13及び光源装置14を接続し、プロセッサ装置13及び光源装置14の電源をオンにする。そして、操作部35を操作して、被検体に関する情報等を入力するとともに、挿入部16を被検体内に挿入して、検査を開始する。検査開始が指示されると、電子内視鏡システム11は、先端部20の照明窓24から照明光(例えば通常光)を照射しながら、CMOSセンサ21によって被検体内を撮像し、CMOSセンサ21から出力される撮像信号に基づいて生成される観察画像をモニタ22に表示する。
【0061】
図6に示すように、電子内視鏡12によって被検体内を所定光量の照明光で照明しながら撮影すると(ステップS11)、CMOSセンサ21は撮像信号を出力する(ステップS12)。このとき、CMOSセンサ21は、各画素62から列毎に出力する信号のうち、OB部53に属する画素62のOB部データを平均化した平均OB部データを算出するとともに、受光部52に属する画素62の受光部データから平均OB部データを減算して暗電流補正を施す。そして、CMOSセンサ21は、平均OB部データと暗電流補正が施された受光部データを撮像信号としてDSP32に出力する。
【0062】
DSP32は、CMOSセンサ21から入力される撮像信号のうち、受光部データに対して色分離、色補間、ゲイン補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正等の各種信号処理を施すことにより画像データを生成し、DIP33に入力する。そして、DSP32は生成した画像データについて平均輝度値等のALC制御用データを算出し、CPU31を介して光源装置14のCPU43に入力する。その後、DIP33は、入力された画像データに対して電子変倍、色強調処理、エッジ強調処理等の各種画像処理を施し、観察画像を生成する。こうして生成された観察画像は、表示制御回路34を経てモニタ22に表示される。
【0063】
一方、DSP32は、温度換算部38に平均OB部データを入力し、平均OB部データと、温度換算テーブル39に記録された平均OB部データとCMOSセンサ21の温度の対応関係とを比較し、平均OB部データをCMOSセンサ21の温度に換算する(ステップS17)。CMOSセンサ21の温度のデータは、CPU31を介して光源41のALC制御を行う光源装置14のCPU43に入力される。
【0064】
光源装置14のCPU43は、CMOSセンサ21の温度に応じて、予め2種類用意された照明光の光量上限La,Lbのいずれかに、ALC制御における照明光の光量の上限を設定する(ステップS18)。そして、CPU43は、設定した光量上限La,Lb以下の範囲内で、光源41から出力される照明光の光量を自動調節する(ステップS19)。
【0065】
電子内視鏡システム11の上述の動作は、検査が終了し、被検体内の撮影が中止されるまで繰り返し行われる。
【0066】
図7に示すように、CMOSセンサ21の温度とALC制御における照明光の光量上限の関係は、CMOSセンサ21の温度が上昇する場合と、下降する場合とで異なる。検査開始直後等でCMOSセンサ21の温度が上昇する場合、CPU43は、光量上限は高光量上限Laに設定し、CMOSセンサ21の温度がCMOSセンサ21の温度がTa(高温閾値)までこの光量上限が維持する。そして、CMOSセンサ21の温度がTaを超えると、光量上限を低光量上限Lbに制限する。一方、光量上限が一旦低光量上限Lbに制限された後、CMOSセンサ21の温度が下降する場合、CMOSセンサ21の温度が十分に下がってTb(低温閾値)になるまで、光量上限は低光量上限Lbに制限される。そして、CMOSセンサ21の温度がTbを下回ったときに、光量上限が高光量上限Laに開放される。
【0067】
図8に示すように、電子内視鏡システム11によって検査を行うと、例えば、検査開始直後から時刻Aまでの間は、例えば、ALC制御における照明光の光量上限は、高光量上限Laに設定される。したがって、光源装置14のCPU43は、高光量上限La以下の範囲内で、ALC制御用データに基づいて、診断に適した観察画像がモニタ22に表示されるように照明光の光量を自動調節する。
【0068】
その後、被検体内の撮影を続け、時刻AにCMOSセンサ21が温度Taを超えると、光源装置14のCPU43は、ALC制御における照明光の光量上限を低光量上限Lbに引き下げ、低光量上限Lb以下の範囲内で、ALC制御用データに基づいて照明光の光量を自動調節する。このため、ALC制御用データから判断される、診断に最適な観察画像を得るために必要な照明光の光量が、低光量上限Lbを超える光量である場合には、照明光の光量は低光量上限Lbに制限される。したがって、検査開始直後から時刻Aまでの期間に比べて、照明光の光量が抑えられ、ライトガイド28の伝達損失によって先端部20に生じる熱が低減される。
【0069】
このように、照明光の光量上限が低光量上限Lbに制限されたALC制御下での撮影を続けることにより、時刻BにCMOSセンサ21が温度Tbを下回ると、光源装置14のCPU43は照明光の光量上限を高光量上限Laに設定する。したがって、時刻B以降(時刻Aまで)は、ALC制御によって、高光量上限La以下の範囲内で、時刻Aから時刻Bまでの間よりも高輝度の照明光を照射し得る。
【0070】
その後も、光源装置14のCPU43は、上述と同様にCMOSセンサ21の温度に応じて照明光の光量上限を変化させながら、ALC制御を行う。このため、常に光量上限La,Lbの照明光を照射しながら被検体内を撮影した場合でも、CMOSセンサ21の温度は、温度Tb(低温閾値)から温度Ta(高温閾値)の間におさまる。
【0071】
上述のように、電子内視鏡システム11は、先端部20の温度、特にCMOSセンサ21の温度を測定するために温度センサを設けず、CMOSセンサ21自身を温度センサとして用いる。したがって、CMOSセンサ21の温度を測定することができると同時に、温度センサや温度センサから信号を伝送するための配線を設けるスペースが必要ないので、挿入部16を細径化を妨げない。
【0072】
また、CMOSセンサ21自身が出力する撮像信号(平均OB部データ)に基づいてCMOSセンサ21の温度を測定するので、CMOSセンサ21の温度を正確に測定することができる。
【0073】
さらに、電子内視鏡システム11は、正確に測定されるCMOSセンサ21の温度に応じてALC制御における照明光の光量の上限を切り替えるので、CMOSセンサ21の温度に対する閾値Ta,Tbや光量上限La,Lbの値を設定可能な範囲が広い。CMOSセンサ21から離れた位置に温度センサを設けている場合等は、CMOSセンサ21の温度を測定しても、測定した温度とCMOSセンサ21の温度が確実に一致しているとは言えないので、CMOSセンサ21の温度を確実に所定以下に抑えるためには、より狭い範囲内で閾値Ta,Tbや光量上限La,Lbを設定する必要があるからである。
【0074】
また、電子内視鏡システム11は、CMOSセンサ21の温度の昇降に対してヒステリシスを持つようにALC制御における光量上限を制限するので(図7参照)、頻繁に照明光の光量上限が切り替わることが抑止され、照明光及び観察画像の輝度がハンチングすることによる違和感を低減することができる。ヒステリシスがなく、CMOSセンサ21の温度が上昇するときと、下降するときとで同じ条件で光量上限を変化させる場合、例えば、光量上限が開放された途端にCMOSセンサ21の温度が上昇し、再び光量上限が制限されるといったことが頻繁に繰り返されることがある。
【0075】
なお、上述の実施形態では、照明光として通常光を照射して撮影する場合を例に挙げたが、特殊光を照明光として用いる場合、あるいは通常光と特殊光を切り替えながら被検体内を撮影する場合も上述の実施形態と同様である。
【0076】
なお、上述の実施形態では、受光部52にカラーフィルタが設けられ、カラーの撮像信号を得る方式(いわゆる同時式)を用いる例を説明したが、受光部52の画素62にカラーフィルタを設けず、照明光の色をRGBに順に切り替えてフレーム毎に各色の撮像信号を得る方式(いわゆる面順次式)を採用しても良い。
【0077】
なお、上述の実施形態では、撮影する度に平均OBデータを算出してCMOSセンサ21の温度に換算する例を説明したが、これに限らない。電子内視鏡12で用いられるCMOSセンサ21のフレームレートは60fpsや30fpsであり、CMOSセンサ21の温度変動速度よりも十分に速いので、例えば5fps毎等、一定の間隔をあけてCMOSセンサ21の温度を測るようにしても良い。この場合、平均OB部データを算出及び出力する回数やタイミングも、CMOSセンサ21の温度測定の間隔に合わせて良い。
【0078】
なお、上述の実施形態では、OB部データを平均化した平均OB部データをCMOSセンサ21の温度に換算する例を説明したが、平均化していないOB部データをCMOSセンサ21の温度に換算しても良い。但し、平均OB部データを用いることで、時間変動するランダムノイズの影響を低減し、より正確にCMOSセンサ21の温度を測定することができる。
【0079】
また、上述の実施形態では、画素62の読み出し列毎に平均OB部データを算出する例を説明したが、OB部53全体の平均値を算出し、これを平均OB部データとしても良い。さらに、画素62の読み出し列毎に平均OB部データを算出するとともに、次の画素列の読み出し時には、前の画素列の読み出し時に算出した平均OB部データと、新たに読み出した画素列のOB部データとを平均化して、新たな平均OB部データを算出し、例えば1フレーム内で画素62の読み出しに応じて平均OB部データを累積的に更新しても良い。こうして平均OB部データを累積的に更新することで、時間変動するランダムノイズをさらに低減し、正確にCMOSセンサ21の温度を測定することができる。
【0080】
さらに、平均OB部データは、数フレーム分(例えば2〜60フレーム分)のOB部データを平均する等、時間平均して算出することが好ましい。平均OB部データを時間平均して算出すると、ランダムノイズの影響をさらに低減し、正確にCMOSセンサ21の温度を測定することができる。
【0081】
なお、上述の実施形態では、平均OB部データを温度換算テーブル39に記録されたデータと比較してCMOSセンサ21の温度に換算する例を説明したが、温度換算テーブル39に予め記録されたデータは離散的なもので良い。そして、実測した平均OB部データに合致する値がない場合には、温度換算テーブル39に記録されたデータを用いて実測した平均OB部データに対応するデータを補間により算出して、CMOSセンサ21の温度に換算することが好ましい。こうして、温度換算テーブル39に記録されたデータを補間して実測した平均OB部データに対応するデータを算出するようにすることで、温度換算テーブル39のデータ容量を抑えることができる。また、温度換算テーブル39を作成するために予め行う平均OB部データとCMOSセンサ21の温度の対応関係を測定作業を容易に行うことができる。
【0082】
また、上述の実施形態では、温度換算テーブル39を用いてCMOSセンサ21の温度を測定する例を説明したが、温度換算テーブル39のかわりに、平均OB部データに対するCMOSセンサ21の温度を関数し、この関数を用いて平均OB部データからCMOSセンサ21の温度を算出するようにしても良い。
【0083】
なお、上述の実施形態では、平均OB部データをCMOSセンサ21の温度に換算する例を説明したが、平均OB部データとCMOSセンサ21の温度は一定の関係にあって、ほぼ変化しないので、平均OB部データをCMOSセンサ21の温度に変換するステップを省き、平均OB部データの値にしたがってALC制御における照明光の光量上限を設定しても良い。上述の実施形態では、CMOSセンサ21の温度に対して閾値Ta,Tbを設定する例を説明したが、平均OB部データをCMOSセンサ21の温度に換算せずに直接、ALC制御のパラメータとするときには、平均OB部データの値に対して閾値を設定すれば良い。
【0084】
なお、上述の実施形態では、CMOSセンサ21の温度に対して2つの閾値Ta,Tbを設け、照明光の光量に対して2つの光量上限La,Lbを設ける例を説明したが、これらの境界条件の数は任意に定めることができる。
【0085】
CMOSセンサ21の温度や照明光の光量上限に対して3以上の閾値及び光量上限を設定することがより好ましい。例えば、図9に示すように、CMOSセンサ21の温度に対して3段階の閾値Ta,Tb,Tc(Ta>Tb>Tc)を設定し、これに応じて照明光の光量に対して3段階の光量上限La,Lb,Lc(La>Lb>Lc)を設定する。そして、CMOSセンサ21の温度Tが上昇する場合、T<Tcの間は光量上限を最大のLaまで開放し、Tb≦T(<Ta)となったときに光量上限を中間のLbに制限し、Ta≦Tとなったときに光量上限を最小のLcに制限する。CMOSセンサ21の温度が下降する場合は、Tb<Tの間は光量上限をLcに制限し続け、(Tc<)T≦Tbとなったときに光量上限を中間のLbに開放する。その後、T≦Tcとなったときに、光量上限を最大のLaに開放する。こうしてより多くの閾値を用いることにより、より滑らかに照明光の光量が調節されるようになり、照明光及び観察画像の輝度がハンチングすることによる違和感を低減することができる。
【0086】
また、上述の実施形態では、CMOSセンサ21の温度に対する閾値(Ta,Tb)の個数と、ALC制御に対して設定される光量上限の種類(La,Lb)は同数であるが、CMOSセンサ21の温度に対する閾値の個数と、ALC制御における光量上限の個数は一致していなくても良い。例えば、図10に示すように、CMOSセンサ21の温度に対して2つの閾値Ta,Tbを設け、照明光の光量に対しては光量上限Lsを設ける。そして、CMOSセンサ21の温度が上昇する場合、CMOSセンサ21の温度TがT<Taの間、光量上限を光源41の出力限界まで無制限に開放し、Ta≦Tとなったときに、光量上限をLsに制限する。一方、CMOSセンサ21の温度が下降する場合には、T<Tbの間、光量上限をLsに制限し、T≦Tbとなったときに光量上限を光源41の出力限界まで無制限に開放する。
【0087】
なお、上述の実施形態では、CMOSセンサ21の温度を平均OB部データから換算する例を説明したが、OB部53を設けていないイメージセンサを用いる場合や、OB部53のデータを出力しないイメージセンサを用いる場合には、OB部53以外を用いてCMOSセンサ21を温度センサとして利用することができる。例えば、図11に示すCMOSセンサ81のように、OB部53が設けられておらず、撮像領域83全体が受光部83である場合、対物光学系25のイメージサークル82にかからないエリア84a〜84dを代用すれば良い。また、こうしたイメージセンサを用いる場合には、所定の周期で照明光を照射しないで撮影するフレームを設け、このフレームで得られた暗画像のデータを上述の実施形態のOB部53の代用としても良い。
【0088】
なお、上述の実施形態では、CMOSセンサ21の温度を測定するために平均OB部データを用いたが、簡易的に、受光部データから得られる画像データを用いてCMOSセンサ21の温度を測定しても良い。例えば、画像データの画素値を平均した値をCMOSセンサ21の温度の目安としても良い。
【0089】
なお、光源41に光量調節可能なLEDやLDを用い、ALC制御において光源41から出力する照明光の光量を調節する例を説明したが、これに限らない。例えば、光源41としてキセノンランプを用いても良い。キセノンランプは自然な白色光を発生するが、電源を投入してから安定して発光するまでに時間を要すために、観察中にオンオフの制御や発光量自体を直接的に調節することが難しい。キセノンランプのように出力する光量を調節することが難しい光源を、照明光の光源とする場合には、図12に示すように、光源装置14に絞り機構86を設ければ良い。絞り機構86は、CPU43によって制御され、光源41からライトガイド28に入射する照明光の光量を調節する。
【0090】
図13に示すように、絞り機構86は、絞り開口87を開閉する絞り羽根88と、絞り開口87を閉じる位置に絞り羽根88を付勢するスプリング89とを備えている。絞り羽根88は、モータ90から与えられるトルクによって、スプリング89の付勢力にこうして絞り開口87の開口量が大きくなる方向(時計方向)に回転し、トルクの大きさとスプリング89の付勢力が釣り合う位置で停止する。トルクが大きいとスプリング89の付勢力に抗する力も大きくなるので、絞り開口87の開口量も大きくなる。トルクが小さいとスプリング89の付勢力に抗する力が小さくなるので絞り開口87の開口量が小さくなる。モータ90のトルクは、PWM値(後述)の増加とともに大きくなり、PWM値が下がると減少する。
【0091】
光源装置14のCPU43は、DSP32によって算出されたALC制御用データに基づいて、絞り羽根88とスプリング89からなる絞り調節機構91を制御する。CPU43は、ALC制御用データに応じて、モータ90のトルクを決定するPWM(パルス幅変調)値を算出し、モータドライバ(図示しない)によってPWM値に応じた駆動パルスを発生させてモータ90を駆動する。PWM値は、モータ50の駆動パルスのデューティ比(パルス幅をパルス周期で割った値)を決定するもので、モータ90のトルクを決定する。CPU43は、ALC制御用データが増加を要求する信号である場合には、増加分に応じてPWM値を上げ、減少を要求する信号である場合には、減少分に応じてPWM値を変更する。
【0092】
なお、上述の実施形態において、光源41として用いる光量調節可能なLEDやLDは、例えば、RGB3色のチップを同時に発行させるものや、青色光を発光するLD(LED)と青色光を照射されることによって黄色光を発生する蛍光板との組み合わせによって全体として白色光を発光するもの等、周知の光源を好適に用いることができる。
【0093】
なお、上述の実施形態では、CMOSセンサ21の温度に応じて、照明光の光量を直接的に調節する例を説明したが、CMOSセンサ21の温度に応じて出力回路61による撮像信号の増幅率を調節することにより、ALC制御によって要求される照明光量を間接的に低減させるようにしても良い。
【0094】
なお、上述の実施形態では、電子内視鏡12に用いる撮像素子の一例としてCMOSセンサ21を用いる例を説明したが、他の周知のイメージセンサ、例えばCCD型のイメージセンサ(以下、CCDという)を用いても良い。図14に示すように、撮像素子としてCCD96を用いる場合、CCD96から撮像信号を取得するためのアナログフロントエンド(AFE)97に、CMOSセンサ21の出力回路61に対応した回路等を設ければ良い。
【0095】
なお、上述の実施形態では、画素62を三個のトランジスタM1〜M3で構成しているが、画素を四個のトランジスタで構成してもよい。また、画素選択用トランジスタM2を複数の画素62で共有するもの、またフォトダイオードD1の信号をトランジスタでフローティング・ディフュージョン部に転送した後段にトランジスタM1、M2をもつもの、複数の画素62のフォトダイオードD1から転送されるフローティング・ディフュージョン部を共通にするもの等の構成もあるが、本発明はそのいずれの構成に対しても適用することが可能である。
【0096】
なお、上述の実施形態では説明を省略したが、CMOSセンサ21の各画素62は、製造時に生じる構造上のばらつきを反映して暗時出力値に一定のばらつきがあるが、画素62毎に暗時出力値がほぼ一定の値になるように撮像信号の読み出し時に一定のオフセット補正が施される。本発明は、CMOSセンサ21からの撮像信号に対してオフセット補正が行われる場合であっても好適に用いることができる。CMOSセンサ21の代わりにCCD型のイメージセンサを用いる場合も同様である。
【符号の説明】
【0097】
11 電子内視鏡システム
12 電子内視鏡
13 プロセッサ装置
14 光源装置
16 挿入部
17 操作部
18 コネクタ
19 ユニバーサルコード
20 先端部
21 CMOSセンサ
22 モニタ
23 観察窓
24 照明窓
25 対物光学系
26 TG
27 CPU
28 ライトガイド
29 照明レンズ
31 CPU
32 DSP
33 DIP
34 表示制御回路
35 操作部
36 ROM
37 RAM
38 温度換算部
39 温度換算テーブル
41 光源
42 波長選択フィルタ
43 CPU
44 光源ドライバ
46 集光レンズ
51 撮像領域
52 受光部
53 OB部
56 垂直走査回路
57 CDS回路
58 列選択トランジスタ
59 水平走査回路
61 出力回路
62 画素
63 出力バスライン
71 平均OB部データ算出部
72 平均OB部データ格納部
73 LVDS回路
74 A/D変換器
75 アンプ
76 A/D変換器
77 PSC
78 D/A変換器
81 CMOSセンサ
82 イメージサークル
83 撮像領域(受光部)
84 エリア
86 絞り機構
87 絞り開口
88 絞り羽根
89 スプリング
90 モータ
91 絞り機構
96 CCD
97 AFE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入する挿入部の先端に前記被検体内を撮像する撮像素子を有する電子内視鏡と、
前記挿入部の先端から前記被検体内に照明光を照射する照明手段と、
前記撮像素子において、光を受光しない画素で発生する暗時出力値と、前記撮像素子の温度との対応関係を記憶する記憶手段と、
前記暗時出力値に基づいて前記撮像素子の温度を測定する温度測定手段と、
を備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記温度測定手段によって測定された前記撮像素子の温度に応じて前記照明光の光量を調節する光量調節手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記撮像素子は、前記被検体内からの光を受光して光電変換する第1画素群と、前記被検体内からの光を受光しない第2画素群とを有し、
前記温度測定手段は、前記被検体内の撮影時に前記第2画素群の少なくとも一部から出力される前記暗時出力値に基づいて前記撮像素子の温度を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記第2画素群は、遮光部材で遮光されているオプティカルブラックであることを特徴とする請求項3に記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記温度測定手段は、前記撮像信号に含まれる前記第2画素群から出力される前記暗時出力値の平均値に基づいて前記撮像素子の温度を測定することを特徴とする請求項3または4に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記温度測定手段は、前記撮像信号に含まれる前記第2画素群から出力される前記暗時出力値を複数のフレーム間で平均した平均値に基づいて前記撮像素子の温度を測定することを特徴とする請求項3〜5いずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記温度測定手段は、前記撮像素子について前記第2画素群から出力される前記暗時出力値と前記撮像素子の温度との対応関係が予め記録されたデータテーブルを用いて、前記第2画素群から出力された信号を前記撮像素子の温度に換算することを特徴とする請求項3〜6いずれか1項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記温度測定手段は、取得した前記第2画素群から出力される信号に対応するデータが前記データテーブルにない場合に、前記データテーブルのデータを補間することにより、前記第2画素群から出力される信号を前記撮像素子の温度に換算することを特徴とする請求項7記載の電子内視鏡システム。
【請求項9】
前記光量調節手段は、前記撮像素子の温度に応じて、前記被検体内に照射可能な前記照明光の光量の上限を制限し、前記上限以下の範囲内で前記照明光の光量を調節することを特徴とする請求項2〜8いずれか1項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項10】
前記光量調節手段は、前記撮像素子の温度が高温の第1温度を超えて上昇するときに、前記照明光の光量の上限を低温の第2上限に制限し、前記撮像素子の温度が低温の第2温度を下回って下降するときに、前記照明光の光量の上限を高温の第1上限に開放することを特徴とする請求項9記載の電子内視鏡システム。
【請求項11】
前記温度測定手段は、所定フレーム毎に前記撮像素子の温度を測定することを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−30004(P2012−30004A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174179(P2010−174179)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】