説明

電子機器及びヒンジ装置

【課題】開閉部材の着脱を容易に行うことができるとともに、ヒンジ装置の組立工数を削減して低コスト化を実現することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、機器本体に設けられる軸支持部材109に軸方向に移動可能に支持される回動軸104と、軸支持部材109から軸方向外側に突出する回動軸104の両端部にそれぞれ着脱可能に嵌め込まれる軸穴106c,106dを有し、軸穴106c,106dを回動軸104の両端部に嵌め込むことにより、回動軸104に対して開閉方向に回動可能に支持される開閉部材106と、軸支持部材109に支持された回動軸104を軸方向に付勢するばね部材107とを備える。回動軸104は、ばね部材107の付勢力の作用方向と逆方向の端部104dにおける軸穴106cが嵌め込まれる部分の軸方向内側に、軸方向内側に向けて縮径するテーパ部104gが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の電子機器及び該電子機器の機器本体に着脱可能に取り付けられるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器として、例えば機器本体に対して開閉方向に回動可能に支持される表示部と、機器本体に対して着脱可能とされ、装着時に表示部の機器本体からの離脱を阻止する阻止部材とを備えるものが提案されている(特許文献1)。この提案では、阻止部材を機器本体から離脱させた状態で、表示部を所定の回動角度位置に配置することで、表示部が着脱可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−130036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、表示部の回動動作を行う際には、阻止部材を機器本体に装着し、表示部を着脱する際には、阻止部材を機器本体から取り外し、表示部の回動角度を着脱可能な位置に合わせる必要がある。このため、表示部の着脱に手間がかかり、また、組立時には阻止部材を機器本体に装着する必要があるため、組立工数が増えてコスト高になる。
【0005】
そこで、本発明は、開閉部材の着脱を容易に行うことができるとともに、ヒンジ装置の組立工数を削減して低コスト化を実現することができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、機器本体に設けられる軸支持部材と、前記軸支持部材に軸方向に移動可能に支持される回動軸と、前記軸支持部材から軸方向外側に突出する前記回動軸の軸方向の両端部にそれぞれ着脱可能に嵌め込まれる一対の軸穴を有し、一対の前記軸穴を前記回動軸の軸方向の両端部に嵌め込むことにより、前記回動軸に対して開閉方向に回動可能に支持される開閉部材と、前記軸支持部材に支持された前記回動軸を軸方向に付勢するばね部材と、を備え、前記回動軸は、前記ばね部材の付勢力が作用する方向と逆の方向の端部における前記開閉部材の前記軸穴が嵌め込まれる部分の軸方向内側に、軸方向内側に向けて縮径するテーパ部が設けられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、開閉部材の着脱を容易に行うことができるとともに、ヒンジ装置の組立工数を削減して低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態の電子機器の一例であるデジタルビデオカメラを後部のバッテリカバー側から見た斜視図である。
【図2】図1に示すデジタルビデオカメラのバッテリカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】ヒンジ装置を説明するための斜視図である。
【図4】図3のa−a線に沿う断面図である。
【図5】図4のA部拡大図である。
【図6】回動軸から開閉部材を取り外す方法を説明するための断面図である。
【図7】図6のB部拡大図である。
【図8】回動軸から開閉部材を取り外す方法を説明するための断面図である。
【図9】図8のC部拡大図である。
【図10】軸支持部材に回動軸を取り付ける方法について説明するための斜視図である。
【図11】軸支持部材に回動軸を取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【図12】開閉部材に設けられるクリック機構について説明するための平面図である。
【図13】図12の下側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の電子機器の実施形態の一例である備えるデジタルビデオカメラを後部のバッテリカバー側から見た斜視図、図2は図1に示すデジタルビデオカメラのバッテリカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、デジタルビデオカメラの機器本体101の後部には、バッテリ収納部に収納されたバッテリ103を開閉可能に覆うバッテリカバー102がヒンジ装置100を介して開閉方向に例えば略90°の範囲で回動可能に支持されている。
【0012】
図3はヒンジ装置100を説明するための斜視図、図4は図3のa−a線に沿う断面図、図5は図4のA部拡大図である。
【0013】
図3に示すように、ヒンジ装置100は、軸支持部材109、回動軸104及び開閉部材106を備える。
【0014】
軸支持部材109は、機器本体101のバッテリ収納部の底部に設けられた取付ベース105に下面側に着脱可能に取り付けられる。図4に示すように、軸支持部材109の幅方向の両側にそれぞれ配置された側板109a,109bのうち、側板109aには、長穴状の軸穴109dが形成され、側板109bには、丸穴状の軸穴109fが形成されている。側板109aは、取付ベース105の幅方向の一方側に設けられた側板105aの内側に配置される。
【0015】
軸支持部材109の幅方向中央部から側板109a側に離れた位置には、下方に向けて台形状に突出するフランジ支持部109cが設けられている。また、軸支持部材109の幅方向中央部から側板109b側に離れた位置には、取付ベース105に設けられた当接片105cが貫通する穴109eが形成されている。
【0016】
回動軸104は、図4の左端から右端に向けて、小径端部104e、中径部104b1、大径部104a、中径部104b2、小径部104h、テーパ部104g及び中径端部104dが順番に配置されている。
【0017】
小径端部104e及び小径部104hは、略同一径とされている。中径部104b1,104b2及び中径端部104dは、略同一径とされて、小径端部104e及び小径部104hより大径とされている。大径部104aは、中径部104b1,104b2及び中径端部104dより大径とされ、テーパ部104gは、中径端部104dから軸方向内側、即ち小径部104h側に向けて次第に縮径して形成されている。
【0018】
また、大径部104aと中径部104b2との境部には、フランジ104cが設けられ、大径部104aの軸方向中央部から中径部104b1側に離れた位置には、フランジ104iが設けられている。
【0019】
そして、回動軸104は、中径部104b1が軸穴109fに嵌め込まれ、また、回動軸104に開閉部材106が取り付けられた状態(図4参照)においては、中径部104b2の小径部104h側の端部が長穴状の軸穴109dの下側の内周面に支持される。
【0020】
かかる支持状態においては、回動軸104のフランジ104cは、軸支持部材109のフランジ支持部109cに当接するようになっている。これにより、長穴状の軸穴109dでの回動軸104の移動が規制され、回動軸104が軸支持部材109に対してがたつくことなく回動可能、かつ軸方向に移動可能に支持される。また、回動軸104のフランジ104iは、当接片105cと側板109bとの間に配置される。
【0021】
また、回動軸104のフランジ104cと軸支持部材109の側板109aとの間には、回動軸104を中径部104b1側に付勢する圧縮コイルばね107が中径部104b2に外挿された状態で配置されている。圧縮コイルばね107は、本発明のばね部材の一例に相当する。
【0022】
開閉部材106は、バッテリカバー102を着脱可能に保持して、バッテリカバー102と一体となって開閉方向に例えば略90°の範囲で回動可能に軸支持部材109から軸方向外側に突出する回動軸104の両端部に取り付けられる。開閉部材106の幅方向の両側には、それぞれ側板106a,106bが設けられている。
【0023】
側板106aは、取付ベース105の側板105aの外側に配置されており、該側板106aには、回動軸104の中径端部104dが嵌め込まれる軸穴106cが形成されている。また、側板106aには、図5に示すように、軸穴106cから取付ベース105の側板105aに向けて次第に拡径するテーパ穴106eが形成されている。
【0024】
側板106bは、軸支持部材109の側板109bの外側に配置されており、該側板106bには、回動軸104の小径端部104eが嵌め込まれる軸穴106dが形成されている。
【0025】
そして、開閉部材106の軸穴106c及び軸穴106dにそれぞれ回動軸104の中径端部104d及び小径端部104eを嵌め込んだ状態においては、開閉部材106の側板106aが取付ベース105の側板105aに設けた突起105bに押し付けられる。
【0026】
これにより、回動軸104を中径部104b1側に付勢する圧縮コイルばね107の付勢力が受け止められて、回動軸104に対する開閉部材106の軸方向の位置決めがなされ、ヒンジ装置100の組立が完了する。
【0027】
次に、図6〜図9を参照して、回動軸104から開閉部材106を取り外す方法について説明する。図6及び図8は回動軸104から開閉部材106を取り外す方法を説明するための断面図、図7は図6のB部拡大図、図9は図8のC部拡大図である。
【0028】
回動軸104から開閉部材106を取り外すには、まず、図6及び図7に示すように、回動軸104を圧縮コイルばね107の付勢力に抗して軸支持部材109の側板109a側に軸方向に移動させる。このとき、回動軸104のフランジ104cは軸支持部材109のフランジ支持部109cに沿って摺動する。また、回動軸104のフランジ104iが取付ベース105の当接片105cに突き当たることで、回動軸104の軸方向の移動量が所定の移動量となるように規制される。
【0029】
かかる規制状態においては、回動軸104の中径部104b1,104b2がそれぞれ軸穴109f,109dに支持された状態で小径端部104eが開閉部材106の軸穴106dから抜け、小径端部104eと側板106bとの間に軸方向のすき間が生じる。また、図7に示すように、回動軸104のテーパ部104gの小径部104h側が開閉部材106の軸穴106cの内周面に対して径方向に対向し、両者の間に径方向のすき間が生じる。
【0030】
次に、図8及び図9に示すように、テーパ部104gの小径部104h側の部位と開閉部材106の軸穴106cの内周面との間に生じる径方向のすき間の範囲で開閉部材106の側板106aを傾ける。このとき、側板106aの反対側の側板106bも傾いて回動軸104の径方向外側に退避する。
【0031】
そして、この状態で圧縮コイルばね107の付勢力を開放して回動軸104を初期位置に戻すことで、回動軸104が側板106aの軸穴106cから抜けて、回動軸104から開閉部材106を取り外すことが可能となる。なお、開閉部材106を回動軸104に取り付ける場合は、上記と逆の工程を行う。
【0032】
次に、図10及び図11を参照して、軸支持部材109に回動軸104を取り付ける方法について説明する。図10は軸支持部材109に回動軸104を取り付ける方法について説明するための斜視図、図11は軸支持部材109に回動軸104を取り付けた後の状態を示す斜視図である。なお、本実施形態では、軸支持部材109を機器本体101の取付ベース105から取り外した状態で軸支持部材109に対して回動軸104の着脱を行う。
【0033】
軸支持部材109に回動軸104を取り付けるには、まず、図10に示すように、回動軸104の中径端部104d側の端部を軸支持部材109の側板109aに設けた長穴状の軸穴109dに挿入する。
【0034】
次に、長穴状の軸穴109dを利用して回動軸104を傾けた状態で圧縮コイルばね107の付勢力に抗して該回動軸104を小径端部104eが軸支持部材109の側板109bの内側に位置するまで押し込む。
【0035】
次に、圧縮コイルばね107の付勢力に抗した押し込み力を解除しつつ回動軸104の傾きを元に戻して回動軸104の小径端部104eを軸支持部材109の側板109bに設けた軸穴109fに嵌め込む。これにより、図11に示すように、回動軸104が軸支持部材109に取り付けられる。なお、回動軸104を軸支持部材109から取り外す場合は、上記と逆の工程を行う。
【0036】
このように、長穴状の軸穴109fを利用して回動軸104を傾けることで、両側板109a,109b間の距離より長い軸長で、軸穴109b,109dより大径の外径を有する回動軸104を軸支持部材109に対して容易に着脱することが可能となる。
【0037】
次に、図12及び図13を参照して、開閉部材106に設けられるクリック機構について説明する。図12は開閉部材106を開いた状態を示す平面図、図13は図12の下側から見た側面図である。
【0038】
図12及び図13に示すように、回動軸104の圧縮コイルばね107の付勢力が作用する方向の端部側に配置される開閉部材106の側板106bには、クリックプレート121が板厚を挟むように取り付けられている。クリックプレート121は、側板106bの外側に配置される部分がビス123により該側板106bに固定され、側板106bの内側に配置される部分にはクリック凸部121aが設けられている。
【0039】
開閉部材106を回動軸104を支点にして閉方向(図13の矢印D方向)に回動させると、クリック凸部121aが軸支持部材109の側板109bに設けられたクリック板ばね122を通過する際に図12の−X方向に荷重が作用し、クリック感を発生させる。その際、クリック板バネ122は、±Y方向に広がりながら+X方向に変形する。このクリック動作時に開閉部材106に作用する荷重の方向(−X方向)は、圧縮コイルばね107により回動軸104を軸方向に付勢する方向と一致している。このため、開閉部材106における回動軸104の軸方向位置が変化することがない。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、開閉部材106の軸穴106c及び軸穴106dにそれぞれ回動軸104の中径端部104d及び小径端部104eを嵌め込むことで、開閉部材106の回動動作を行うことが可能となる。また、回動軸104を圧縮コイルばね107の付勢力に抗して軸方向に移動させ、テーパ部104gと軸穴106cの内周面との間に生じる径方向すき間の範囲で開閉部材106を傾けることで、回動軸104に対して開閉部材106を簡単に着脱することができる。
【0041】
従って、従来のように、開閉部材106の回動動作を行う際に阻止部材を機器本体に装着する必要はなく、また、開閉部材106を着脱する際に、阻止部材を機器本体から取り外し、開閉部材106の回動角度を着脱可能な位置に合わせる必要もなくなる。これにより、開閉部材106の着脱を容易に行うことができるとともに、ヒンジ装置100の組立工数を削減して低コスト化を実現することができる。
【0042】
なお、本発明の構成は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、電子機器としてデジタルビデオカメラを例示したが、これに限定されず、デジタルスチルカメラや電話装置、FAX装置等の電子機器であってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、軸支持部材109に設けた一対の軸穴109d,109fのうち、軸穴109dのみを長穴状としたが、一対の軸穴109d,109fの少なくとも一方を長穴状とすればよい。従って、一対の軸穴109d,109fの両方を長穴状としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
100 ヒンジ装置
101 機器本体
102 バッテリカバー
104 回動軸
104g テーパ部
105 取付ベース
106 開閉部材
107 圧縮コイルばね
109 軸支持部材
109d 長穴状の軸穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に設けられる軸支持部材と、
前記軸支持部材に軸方向に移動可能に支持される回動軸と、
前記軸支持部材から軸方向外側に突出する前記回動軸の軸方向の両端部にそれぞれ着脱可能に嵌め込まれる一対の軸穴を有し、一対の前記軸穴を前記回動軸の軸方向の両端部に嵌め込むことにより、前記回動軸に対して開閉方向に回動可能に支持される開閉部材と、
前記軸支持部材に支持された前記回動軸を軸方向に付勢するばね部材と、を備え、
前記回動軸は、前記ばね部材の付勢力が作用する方向と逆の方向の端部における前記開閉部材の前記軸穴が嵌め込まれる部分の軸方向内側に、軸方向内側に向けて縮径するテーパ部が設けられる、ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記軸支持部材は、前記回動軸の軸方向の少なくとも一方の端部を支持する軸穴が長穴状に形成され、
前記回動軸と前記軸支持部材との間に、前記回動軸の前記長穴状の軸穴での移動を規制する規制手段が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記回動軸の前記ばね部材の付勢力が作用する方向の端部側に配置される前記軸支持部材と前記開閉部材との間にクリック機構を設け、
前記クリック機構のクリック動作時に前記開閉部材に作用する荷重の方向と前記ばね部材の付勢力が作用する方向とを一致させた、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
機器本体に着脱可能に取り付けられる軸支持部材と、該軸支持部材に軸方向に移動可能に支持される回動軸と、前記軸支持部材から軸方向外側に突出する前記回動軸の軸方向の両端部にそれぞれ着脱可能に嵌め込まれる一対の軸穴を有し、一対の前記軸穴を前記回動軸の軸方向の両端部に嵌め込むことにより、前記回動軸に対して開閉方向に回動可能に支持される開閉部材と、前記軸支持部材に支持された前記回動軸を軸方向に付勢するばね部材と、を備え、
前記回動軸は、前記ばね部材の付勢力が作用する方向と逆の方向の端部における前記開閉部材の前記軸穴が嵌め込まれる部分の軸方向内側に、軸方向内側に向けて縮径するテーパ部が設けられる、ことを特徴とするヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−208747(P2011−208747A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78020(P2010−78020)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】