電子機器用カバー部材および電池蓋
【課題】
電子機器をその落下や衝突から保護し、かつカバーにて電子機器を覆った状態で光電変換による発電を実現可能な電子機器用カバー部材および電池蓋を提供する。
【解決手段】
本発明は、電子機器90の操作面93側を開口して当該電子機器90の外側を覆う電子機器用カバー部材1および電池蓋1’であって、少なくとも操作面93の方向に開口するトレイ2と、トレイ2よりも低硬度であると共にトレイ2の開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材3と、を備え、弾性部材3の内側に、色素増感太陽電池素子30を備える電子機器用カバー部材1および電池蓋1’に関する。
電子機器をその落下や衝突から保護し、かつカバーにて電子機器を覆った状態で光電変換による発電を実現可能な電子機器用カバー部材および電池蓋を提供する。
【解決手段】
本発明は、電子機器90の操作面93側を開口して当該電子機器90の外側を覆う電子機器用カバー部材1および電池蓋1’であって、少なくとも操作面93の方向に開口するトレイ2と、トレイ2よりも低硬度であると共にトレイ2の開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材3と、を備え、弾性部材3の内側に、色素増感太陽電池素子30を備える電子機器用カバー部材1および電池蓋1’に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用カバー部材および電池蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、化石燃料を利用した火力発電に伴う二酸化炭素の発生、核燃料を利用した原子力発電に伴う放射線問題が深刻化する中、自然エネルギーを利用した発電方式が脚光を浴びている。アモルファス、単結晶若しくは多結晶シリコンは、従来から、太陽エネルギーを利用して発電を行うための発電素子として実用化されている。しかし、シリコン材料から成る発電素子は、その製造コストが高く、かつ1000ルクス程度の室内照明では発電効率が著しく低い。このため、特に室内用途において、低コストでも製造可能な色素増感太陽電池を用いる例が増えてきている。色素増感太陽電池は、その厚さ方向外側両面を透明な樹脂フィルムにて構成できることから、曲面に配置するのが容易であり、かつそれを配置した際に外観上の美観を維持できる。かかる特性を利用し、小型の電子機器の表示部に色素増感太陽電池を備えたものが知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、最近では、携帯電話、携帯型のゲーム機器、電子ブック等の小型の電子機器を持ち運ぶ機会が益々増えてきており、それに伴い、電子機器を落下させあるいは移動中に何かに接触させて破損する機会も増えている。電子機器を落下あるいは何かに接触させた際にその破損から防護する方法の一つに、電子機器をクッション性の高いカバーあるいはケースにて覆う方法が考えられる。例えば、電子機器の操作面のみを開口し、側面から裏面までを覆う形状であって、開口部分の伸縮性を高めて、電子機器の着脱容易にした電子機器用カバーが知られている(特許文献2を参照)。また、携帯電話に代表される小型の電子機器の操作面側を開口した比較的硬質の材料(プラスチックあるいは金属)から構成される容器および保持具も知られている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−222225号公報
【特許文献2】特開2002−027076号公報
【特許文献3】特開2000−201210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、小型の電子機器を覆う従来のカバーやケースは、電子機器の防護性能や持ちやすさを兼ね備えたものとはいえず、カバーやケースにて外側を覆った状態の電子機器を落下した際に、電子機器が破損したり、カバーやケース自身が破損したり、あるいはカバーやケースを用いることによりかえって電子機器が持ちにくくなり、落下の頻度が高くなるという問題がある。また、電子機器に太陽電池を取り付けた場合、その上からカバーやケースを取り付けると、太陽電池が表面に露出できずに発電ができなくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電子機器をその落下や衝突から保護し、かつカバーにて電子機器を覆った状態で光電変換による発電を実現可能な電子機器用カバー部材および電池蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、電子機器の操作面側を開口して電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、少なくとも操作面の方向に開口するトレイと、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材と、
を備え、弾性部材の内側に色素増感太陽電池素子を備える電子機器用カバー部材である。
【0008】
本発明の別の形態は、さらに、トレイに、それより外側を覆う弾性部材の方向に向かって窪む開口部を備え、色素増感太陽電池素子を開口部内に配置する電子機器用カバー部材である。
【0009】
本発明の別の形態は、さらに、トレイの内側に、開口部内に配置される色素増感太陽電池素子を覆うフィルムを備える電子機器用カバー部材である。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、色素増感太陽電池素子から給電を受けて蓄電する蓄電手段と、その蓄電手段から電子機器に給電する給電部とをさらに備える電子機器用カバー部材である。
【0011】
本発明の一形態は、上述のいずれかの電子機器用カバー部材が電子機器に取り付けられる二次電池を覆う蓋を兼ねる電池蓋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子機器をその落下や衝突から保護し、かつカバーにて電子機器を覆った状態で光電変換による発電を実現可能な電子機器用カバー部材および電池蓋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材をその開口面側から見た斜視図を示す。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用カバー部材をその開口面と反対側から見た斜視図を示す。
【図3】図3は、図1に示す電子機器用カバー部材を電子機器に取り付けた状態の斜視図を示す。
【図4】図4は、図1に示す電子機器用カバー部材の構成部材の一つであるトレイを一部分解した平面図を示す。
【図5】図5は、図1に示す電子機器用カバー部材のA−A線断面図を示す。
【図6】図6は、図5の領域Bの拡大図を示す。
【図7】図7は、図6中の色素増感太陽電池素子の概略断面図を示す。
【図8】図8は、図1に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【図9】図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材における図5と同視の断面図を示す。
【図10】図10は、図9に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【図11】図11は、図10に示す給電構成の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る電子機器用カバー部材および電池蓋の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
<1.第一の実施の形態>
【0016】
(1)電子機器用カバー部材の構成
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材をその開口面側から見た斜視図を示す。図2は、図1に示す電子機器用カバー部材をその開口面と反対側から見た斜視図を示す。図3は、図1に示す電子機器用カバー部材を電子機器に取り付けた状態の斜視図を示す。図4は、図1に示す電子機器用カバー部材の構成部材の一つであるトレイを一部分解した平面図を示す。図5は、図1に示す電子機器用カバー部材のA−A線断面図を示す。図6は、図5の領域Bの拡大図を示す。
【0017】
第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、単に、「カバー部材」と称する)1は、電子機器4の操作面5側を開口して当該電子機器4の外側を覆うと共に、少なくとも操作面5の方向に開口するトレイ2と、トレイ2よりも低硬度であると共にトレイ2の開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材3とを備える。
【0018】
トレイ2は、図1および図2に示すように、電子機器4の背面側に位置する底板10と、底板10から電子機器4の外側面に向かって延出する側壁11とを連接して構成される部材である。側壁11は、電子機器4の一対の側面、この実施の形態では短辺側の両側面を十分に覆う一方、他方の一対の側面、この実施の形態では長辺側の両側面を大きく切り欠いた形状を有する。トレイ2は、電子機器4の側面および底面に備えられる外部アクセス部の一例であるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板10および側壁11に貫通孔12,13,14,15を備える。ここで、「外部アクセス部」は、カバー部材1の外側と電子機器4との間にていずれか一方からアクセス可能な部分をいう。アクセスの手法は、直接的な接触のみならず、光、音等の入出も含まれる。
【0019】
トレイ2は、好適には樹脂から成り、より好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から成り、その中でも特に好適には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはポリアミド系樹脂から成る。トレイ2の底板10および側壁11の厚さは、電子機器4の大きさ、重量等によって適正な厚さに設計可能である。例えば、電子機器4の厚さが8〜20mm、短辺が50〜200mm、長辺が80〜300mmの範囲にある場合、樹脂製のトレイ2の底板10および側壁11は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。
【0020】
トレイ2は、電子機器4の長辺側の切り欠いた部分を有する2つの側壁11に、電子機器4側に向かって立設される規制板17を1つずつ備える。規制板17は、カバー部材1の内側にあるトレイ2と電子機器4の外面との固定を確実にし、電子機器4がカバー部材1から容易に脱落しないようにするための部分である。なお、規制板17は、トレイ2の長辺側の側壁11ではなく、短辺側に形成されていても良い。
【0021】
弾性部材3は、電子機器4の背面側に位置する底板20と、底板20から電子機器4の外側面を覆う側壁21と、側壁21から電子機器4の操作面5の外縁を覆う操作面側外縁部27とを連接して構成されるボート形状を有する部材である。弾性部材3は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーなどから好適に構成され、例えば、ウレタン系あるいはシリコン系エラストマーから特に好適に構成される。トレイ2の底板10および側壁11の最も厚い部分が0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲の場合、上記エラストマー製の弾性部材3の底板20および側壁21は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。弾性部材3は、電子機器4の側面および底面に備えられるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板20および側壁21に、凸状被覆部28、貫通孔22,23,24,25,26を備える。凸状被覆部28は、カバー部材1から電子機器4にタッチして操作できるように、好適には他の部分よりも薄肉状に形成されている。貫通孔22,23,24,25,26は、そこを通して電子機器4に接触し、あるいは光を通過可能に形成される部分である。凸状被覆部28および貫通孔22,23,24,25,26の大きさ、形状、位置および個数は、電子機器4の形態に応じて変動する。
【0022】
弾性部材3の側壁21は、トレイ2の側壁11の高さ以上に形成されている。トレイ2の側壁11は、最も高い位置でも、弾性部材3の操作面側外縁部27の内側に接する位置である。これによって、少なくとも、操作面側外縁部27は、トレイ2と接しない部分となり、電子機器4との脱着の際に自由に変形できる。弾性部材3の貫通孔22,23,24,25は、トレイ2の貫通孔12,13,14,15と同じ位置に、ほぼ同じ形状と大きさにて形成される。弾性部材3は、トレイ2の底板10および側壁11の各外側を完全に覆う一方、それらの内側を完全に覆うことなく、当該内側の一部を露出させる。なお、弾性部材3は、好適には、トレイ2の貫通孔12,13,14,15の少なくともいずれか1つの内周面の一部または全部を覆う。ただし、貫通孔12,13,14,15の内周面は、弾性部材3によって覆われていなくても良い。
【0023】
図1〜図3に示すように、弾性部材3は、その内側に、色素増感太陽電池素子30を配置する。より具体的には、トレイ2に、それより外側を覆う弾性部材3の方向に向かって窪む開口部18を備え、色素増感太陽電池素子30を、そこに配置している。色素増感太陽電池素子30の外側の面は、少なくとも弾性部材3にて被覆されるので、カバー部材1を落下等させても壊れにくい。この実施の形態では、開口部18は、その平面形状が角形であって、トレイ2の厚さ方向に貫通する貫通口である。色素増感太陽電池素子30の外側の面を覆う弾性部材3は、その少なくとも開口部18の開口面と対向する側を透光領域とする。色素増感太陽電池素子30に光を当てることができるようにするためである。この実施の形態では、弾性部材30の外側の面は、開口部18の開口面と対向する面を除き、加飾層60にて被覆されている。ただし、カバー部材1は、弾性部材3の外側全面を加飾層60にて覆うことなく、トレイ2が完全に透けて見えるように透光性のままとしても良い。また、開口部18は、トレイ2の内側の面から外側の面に貫通しない凹部であっても良い。その場合、色素増感太陽電池素子30の外側に存在するトレイ2の少なくとも薄肉部を透光性にする必要がある。ここで、透光性を有する弾性部材3は、全波長域の光の透過性を確保するものであることが好ましいが、少なくとも色素増感太陽電池素子30に使用される増感色素の吸収波長領域の光を透過させることができれば足りる。
【0024】
また、トレイ2は、その内側に、開口部18内に配置される色素増感太陽電池素子30を覆うフィルム40を備えるのが好ましい。フィルム40は、開口部18を塞ぎ、かつ接着層等を介してトレイ2に着脱自在あるいは着脱不能に固定するのが好ましい。フィルム40を用いると、色素増感太陽電池素子30を開口部18から容易に抜け落ちるのを防止できる。フィルム40の材料としては、トレイ2あるいは弾性部材3と同じ材料を好適に用いることができる。
【0025】
トレイ2は、その底板10の内側の面に、電子機器4と電気的に接続可能な接続部50と、当該接続部50と色素増感太陽電池素子30との間を電気的につなぐ導線51,52と、を備える。接続部50は、底板10の内面に立設されており、カバー部材1に電子機器4を取り付けたときに、電子機器4側の接続凹部(不図示)と容易に接続できる構成である。接続部50は、好適には、例えば、同軸型の接続プラグの形態を有し、電子機器4側の接続凹部の一例であるプラグ接続口にプラグ・イン可能なものであるが、その形態に限定されない。また、接続部50は、トレイ2の底板10に限定されず、側壁11に配置されても良い。導線51,52は、銅製の細線の外周を樹脂にて覆うリード線の他、導電性に優れる金属をトレイ2にコートして形成される薄膜でも良い。導線51,52の金属部分が表面に露出している場合には、フィルム40にて導線51,52を覆うのが好ましい。漏電防止と、導線51,52に傷が付いて断線するのを防止する必要からである。フィルム40は、カバー部材1への電子機器4の取り付けに支障がないように、できるだけ薄く、トレイ2の内側の面からの突出を少なくする方が、好ましい。加えて、色素増感太陽電池素子30が開口部18内から突出しないように、トレイ2の厚さを色素増感太陽電池素子30の厚さより大きくする方が好ましい。
【0026】
この実施の形態に係るカバー部材1は、電子機器4に二次電池を入れた状態にて電子機器4に取り付けることにより、電池蓋1’としても機能するものである。このため、電子機器4に、カバー部材1以外に、二次電池の脱落を防止するための別の蓋を必要としない。ただし、カバー部材1が電池蓋1’を兼ねることは、必須ではない。電子機器4に専用の電池蓋を備え、その上からカバー部材1を取り付けても良い。カバー部材1が電池蓋1’を兼ねることが可能な点は、以後の実施の形態でも同様である。
【0027】
図7は、図6中の色素増感太陽電池素子の概略断面図を示す。
【0028】
色素増感太陽電池素子30は、如何なる集積構造を持つものでも良いが、一例として、図7に示す、いわゆるW型集積構造のものを挙げることができる。図7に示す色素増感太陽電池素子30は、透明な樹脂基板70と透明な樹脂基板71との間に、断面視にてW形状の直列接続を実現する構造を有する。樹脂基板70,71は、それぞれの裏面に、ITO等から成る複数の透明導電膜75を備える。樹脂基板70側の透明導電膜75と、樹脂基板71側の透明導電膜75とは、各隙間を互い違いになるように配置される。透明導電膜75より内側には、電解質から成る電解質層80と、色素を吸着した多孔質酸化チタンの層(「色素吸着・多孔質酸化チタン層」という)81とを積層して備える。樹脂基板70,71の間には、図7中の左側から右側に向かって、色素吸着・多孔質酸化チタン層81の上に電解質層80を積層した積層体、電解質層80の上に色素吸着・多孔質酸化チタン層81を積層した逆層形態の積層体が順に配置される。色素増感太陽電池素子30は、その側面外周に封止層85を備え、電解質層80からの電解質の漏洩を防止している。ただし、電解質層80として、固体電解質を用いる場合には、封止層85を設けなくても良い。色素吸着・多孔質酸化チタン層81は、酸化チタン微粒子の表面にRu金属錯体色素等の色素を吸着し、色素のカルボキシル基と酸化チタンの脱水反応によって化学結合させた層である。一方、電解質層80は、例えば、ヨウ素系電解質からなる層である。光が樹脂基板70または樹脂基板71を通して色素吸着・多孔質酸化チタン層81中の色素に吸収されると、色素中の電子が励起され、その電子は、酸化チタンの伝導体に入り、透明導電膜75を経由して外部に移動する。酸化後の色素は、電解質層80から電子を受け取り、基底状態に戻る。色素によって酸化された電解質層80は、これと接する透明導電膜75から電子を受け取り、元に戻る。このような酸化・還元反応により、導線51と導線52との間に負荷回路を接続したときに、電子が図7中の点線の経路を移動する。なお、色素増感太陽電池素子30の集積構造は、上記のW型集積構造以外に、Z型集積構造あるいはモノリシック型集積構造としても良い。
【0029】
図8は、図1に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【0030】
電子機器4は、二次電池91と、これと電気的に接続される電子機器側負荷回路92とを備える。カバー部材1を電子機器4に取り付け、接続部50を介して電子機器4と、カバー部材1の色素増感太陽電池素子30とを電気的に接続すると、色素増感太陽電池素子30から導線51,52を介して二次電池91に給電できる。この結果、電子機器4は、二次電池91から電子機器側負荷回路92に給電できる。
【0031】
(2)電子機器用カバー部材の製造方法
トレイ2は、例えば、金型内に溶融樹脂を射出して成形する射出成形法、軟化させた板状の樹脂を金型内で型締めする成形法にて好適に製造できる。また、後者の成形法の場合には、一方の金型側から減圧する方法、一方の金型側から高圧気体を送気する方法、当該減圧と送気とを組み合わせる方法を用いても良い。弾性部材3は、例えば、成形後のトレイ2を金型内にセットして、金型とトレイ2との隙間に弾性部材3を構成可能な組成物を供給して、当該組成物を架橋させる方法などにより成形できる。かかる成形法を用いると、トレイ2と弾性部材3とを容易に一体化することができる。なお、トレイ2と弾性部材3との密着性を高めるため、成形後のトレイ2における弾性部材3との密着領域に、プライマーを塗布してから金型にセットして、弾性部材3を構成する組成物を金型内に供給しても良い。トレイ2と弾性部材3とを一体化した後、トレイ2の底板10の内面に形成された開口部18からトレイ2の内側の面に、導線51,52を形成し、それと電気的に接続される接続部50をトレイ2の内側の面に取り付ける。次に、開口部18内に色素増感太陽電池素子30を入れ、その上からフィルム40を貼る。
【0032】
トレイ2に着色または加飾を施す必要がある場合には、トレイ2と弾性部材3との一体成形に先立ち、トレイ2を塗料中にディッピングし、塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。なお、溶融状態の樹脂中に顔料を予め練り込んでからトレイ2を成形しても良い。また、弾性部材3の外面であって開口部18の真上の領域以外の面に加飾する必要がある場合には、トレイ2との一体成形後に、当該面に塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。
【0033】
<2.第二の実施の形態>
次に、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材および/または電池蓋について説明する。第一の実施の形態と共通する構成には、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0034】
(1)電子機器用カバー部材の構成
図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材における図5と同視の断面図を示す。
【0035】
第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、単に、「カバー部材」と称する)1は、カバー部材1側に蓄電手段の一例である二次電池100を備える点で、第一の実施の形態に係るカバー部材1と異なる。第二の実施の形態において、カバー部材1は、色素増感太陽電池素子30から二次電池100に給電するための導線101,102を備える。導線101,102は、好ましくは、トレイ2の内側の面よりもトレイ2の厚さ方向内側に配置される。ただし、トレイ2の内側の面上に導線101,102を配置しても良く、その場合には、漏電防止や導線101,102の保護の観点から、フィルム40を延長し、導線101,102上の大部分を覆うのが好ましい。トレイ2は、その内側の面に電子機器4側と電気的に接続可能な接続部105,106を露出して備えると共に、当該接続部105,106と二次電池100との間を電気的に接続する導線103,104を備える。導線103,104および接続部105,106は、二次電池100から電子機器4に給電する給電部を構成する。二次電池100がトレイ2の内側に露出していない場合には、導線103,104は、トレイ2の内部を通るように配置される。蓄電手段は、二次電池100に限定されず、例えば、蓄電手段として電気二重層コンデンサを用いることもできる。
【0036】
図10は、図9に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【0037】
電子機器4は、電子機器側負荷回路92を備える。カバー部材1を電子機器4に取り付け、接続部105,106を介して、電子機器4とカバー部材1の色素増感太陽電池素子30とを電気的に接続すると、色素増感太陽電池素子30から導線101,102を介して二次電池100に給電し、二次電池100から電子機器側負荷回路92に給電できる。カバー部材1に二次電池100を備えているため、電子機器4をカバー部材1に取り付けていない状態でも、カバー部材1の色素増感太陽電池素子30に光を当てるだけで、二次電池100への給電が可能となる。なお、図10に示すカバー部材1は、二次電池を搭載しない電子機器4に取り付けるものであるため、電池蓋1’としての機能を有さない。
【0038】
図11は、図10に示す給電構成の変形例を示す。
【0039】
図10に示す構成に代え、図11に示すように、カバー部材1の二次電池100から電子機器4側の二次電池91に給電できる構成を採用しても良い。カバー部材1は、電子機器4の取り付け有無を問わず、二次電池100に充電可能である点は、図10に示す例と同様である。電子機器4を使用する際には、カバー部材1側の二次電池100から電子機器4側の二次電池91に向けて給電し、電子機器側負荷回路92は、二次電池91からの給電を受けて駆動する。図11に示すカバー部材1は、二次電池91を搭載する電子機器4に取り付けるものであるため、電池蓋1’としての機能も併せ持つ。なお、カバー部材1あるいは電子機器4側に切り替えスイッチを別途設け、電子機器4をカバー部材1に取り付けている状態において、色素増感太陽電池素子30から二次電池100に対して充電を行うパターンと、二次電池91に対して充電を行うパターンとを切り替えるようにしても良い。また、電子機器4をカバー部材1に取り付けている状態において、色素増感太陽電池素子30から二次電池100に対して充電を行った後に、二次電池91に対して充電を行うようにしても良い。
【0040】
(2)電子機器用カバー部材の製造方法
第二実施の形態に係るカバー部材1は、前述の第一の実施の形態に係るカバー部材1と同様の製造方法と同様の方法にて製造可能である。
【0041】
<3.その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形実施可能である。
【0042】
例えば、電子機器4のボタン、スピーカ、カメラのレンズ等の位置によっては、トレイ2に、貫通孔12等を設けず、切り欠き部を設けても良い。弾性部材3は、その側壁21を、必ずしもトレイ2の側壁11の高さ以上に形成しなくても良い。また、弾性部材3は、必ずしも、その側壁21から連接して、電子機器4の操作面5の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部27を備えていなくても良い。弾性部材3は、トレイ2の開口側内面よりもその反対側の面を広く覆っていなくとも良い。また、トレイ2と弾性部材3とは、互いに密着しているのが好ましいが、密着していない領域があっても良い。トレイ2は、電子機器4の操作面5側のみならず、側壁11の一方を開口しても良い。その場合、当該開口側と反対側の側壁11の内面に、接続部50あるいは接続部105,106を備えると、当該開口部から電子機器4を挿入してカバー部材1に電子機器4を取り付けると同時に、接続部50や接続部105,106を電子機器4に接続できる。
【0043】
上述の第一の実施の形態と第二の実施の形態にて説明した構成は、その組み合わせが不可能な場合を除き、任意に組み合わせることができる。例えば、第二の実施の形態に係るカバー部材1において、接続部105,106のように独立した2つの給電部を設けず、第一の実施の形態にて説明した接続部50のように1個の形態に2箇所の給電部を有するものを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電子機器の光電変換による充電を可能とする保護カバーとして利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 カバー部材(電子機器用カバー部材)
1’ 電池蓋
2 トレイ
3 弾性部材
4 電子機器
5 操作面
18 開口部
30 色素増感太陽電池素子
40 フィルム
91 二次電池
100 二次電池(蓄電手段の一例)
103,104 導線(給電部の一部)
105,106 接続部(給電部の一部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用カバー部材および電池蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、化石燃料を利用した火力発電に伴う二酸化炭素の発生、核燃料を利用した原子力発電に伴う放射線問題が深刻化する中、自然エネルギーを利用した発電方式が脚光を浴びている。アモルファス、単結晶若しくは多結晶シリコンは、従来から、太陽エネルギーを利用して発電を行うための発電素子として実用化されている。しかし、シリコン材料から成る発電素子は、その製造コストが高く、かつ1000ルクス程度の室内照明では発電効率が著しく低い。このため、特に室内用途において、低コストでも製造可能な色素増感太陽電池を用いる例が増えてきている。色素増感太陽電池は、その厚さ方向外側両面を透明な樹脂フィルムにて構成できることから、曲面に配置するのが容易であり、かつそれを配置した際に外観上の美観を維持できる。かかる特性を利用し、小型の電子機器の表示部に色素増感太陽電池を備えたものが知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、最近では、携帯電話、携帯型のゲーム機器、電子ブック等の小型の電子機器を持ち運ぶ機会が益々増えてきており、それに伴い、電子機器を落下させあるいは移動中に何かに接触させて破損する機会も増えている。電子機器を落下あるいは何かに接触させた際にその破損から防護する方法の一つに、電子機器をクッション性の高いカバーあるいはケースにて覆う方法が考えられる。例えば、電子機器の操作面のみを開口し、側面から裏面までを覆う形状であって、開口部分の伸縮性を高めて、電子機器の着脱容易にした電子機器用カバーが知られている(特許文献2を参照)。また、携帯電話に代表される小型の電子機器の操作面側を開口した比較的硬質の材料(プラスチックあるいは金属)から構成される容器および保持具も知られている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−222225号公報
【特許文献2】特開2002−027076号公報
【特許文献3】特開2000−201210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、小型の電子機器を覆う従来のカバーやケースは、電子機器の防護性能や持ちやすさを兼ね備えたものとはいえず、カバーやケースにて外側を覆った状態の電子機器を落下した際に、電子機器が破損したり、カバーやケース自身が破損したり、あるいはカバーやケースを用いることによりかえって電子機器が持ちにくくなり、落下の頻度が高くなるという問題がある。また、電子機器に太陽電池を取り付けた場合、その上からカバーやケースを取り付けると、太陽電池が表面に露出できずに発電ができなくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電子機器をその落下や衝突から保護し、かつカバーにて電子機器を覆った状態で光電変換による発電を実現可能な電子機器用カバー部材および電池蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、電子機器の操作面側を開口して電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、少なくとも操作面の方向に開口するトレイと、トレイよりも低硬度であると共にトレイの開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材と、
を備え、弾性部材の内側に色素増感太陽電池素子を備える電子機器用カバー部材である。
【0008】
本発明の別の形態は、さらに、トレイに、それより外側を覆う弾性部材の方向に向かって窪む開口部を備え、色素増感太陽電池素子を開口部内に配置する電子機器用カバー部材である。
【0009】
本発明の別の形態は、さらに、トレイの内側に、開口部内に配置される色素増感太陽電池素子を覆うフィルムを備える電子機器用カバー部材である。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、色素増感太陽電池素子から給電を受けて蓄電する蓄電手段と、その蓄電手段から電子機器に給電する給電部とをさらに備える電子機器用カバー部材である。
【0011】
本発明の一形態は、上述のいずれかの電子機器用カバー部材が電子機器に取り付けられる二次電池を覆う蓋を兼ねる電池蓋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子機器をその落下や衝突から保護し、かつカバーにて電子機器を覆った状態で光電変換による発電を実現可能な電子機器用カバー部材および電池蓋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材をその開口面側から見た斜視図を示す。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用カバー部材をその開口面と反対側から見た斜視図を示す。
【図3】図3は、図1に示す電子機器用カバー部材を電子機器に取り付けた状態の斜視図を示す。
【図4】図4は、図1に示す電子機器用カバー部材の構成部材の一つであるトレイを一部分解した平面図を示す。
【図5】図5は、図1に示す電子機器用カバー部材のA−A線断面図を示す。
【図6】図6は、図5の領域Bの拡大図を示す。
【図7】図7は、図6中の色素増感太陽電池素子の概略断面図を示す。
【図8】図8は、図1に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【図9】図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材における図5と同視の断面図を示す。
【図10】図10は、図9に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【図11】図11は、図10に示す給電構成の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る電子機器用カバー部材および電池蓋の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
<1.第一の実施の形態>
【0016】
(1)電子機器用カバー部材の構成
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材をその開口面側から見た斜視図を示す。図2は、図1に示す電子機器用カバー部材をその開口面と反対側から見た斜視図を示す。図3は、図1に示す電子機器用カバー部材を電子機器に取り付けた状態の斜視図を示す。図4は、図1に示す電子機器用カバー部材の構成部材の一つであるトレイを一部分解した平面図を示す。図5は、図1に示す電子機器用カバー部材のA−A線断面図を示す。図6は、図5の領域Bの拡大図を示す。
【0017】
第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、単に、「カバー部材」と称する)1は、電子機器4の操作面5側を開口して当該電子機器4の外側を覆うと共に、少なくとも操作面5の方向に開口するトレイ2と、トレイ2よりも低硬度であると共にトレイ2の開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材3とを備える。
【0018】
トレイ2は、図1および図2に示すように、電子機器4の背面側に位置する底板10と、底板10から電子機器4の外側面に向かって延出する側壁11とを連接して構成される部材である。側壁11は、電子機器4の一対の側面、この実施の形態では短辺側の両側面を十分に覆う一方、他方の一対の側面、この実施の形態では長辺側の両側面を大きく切り欠いた形状を有する。トレイ2は、電子機器4の側面および底面に備えられる外部アクセス部の一例であるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板10および側壁11に貫通孔12,13,14,15を備える。ここで、「外部アクセス部」は、カバー部材1の外側と電子機器4との間にていずれか一方からアクセス可能な部分をいう。アクセスの手法は、直接的な接触のみならず、光、音等の入出も含まれる。
【0019】
トレイ2は、好適には樹脂から成り、より好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から成り、その中でも特に好適には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはポリアミド系樹脂から成る。トレイ2の底板10および側壁11の厚さは、電子機器4の大きさ、重量等によって適正な厚さに設計可能である。例えば、電子機器4の厚さが8〜20mm、短辺が50〜200mm、長辺が80〜300mmの範囲にある場合、樹脂製のトレイ2の底板10および側壁11は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。
【0020】
トレイ2は、電子機器4の長辺側の切り欠いた部分を有する2つの側壁11に、電子機器4側に向かって立設される規制板17を1つずつ備える。規制板17は、カバー部材1の内側にあるトレイ2と電子機器4の外面との固定を確実にし、電子機器4がカバー部材1から容易に脱落しないようにするための部分である。なお、規制板17は、トレイ2の長辺側の側壁11ではなく、短辺側に形成されていても良い。
【0021】
弾性部材3は、電子機器4の背面側に位置する底板20と、底板20から電子機器4の外側面を覆う側壁21と、側壁21から電子機器4の操作面5の外縁を覆う操作面側外縁部27とを連接して構成されるボート形状を有する部材である。弾性部材3は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーなどから好適に構成され、例えば、ウレタン系あるいはシリコン系エラストマーから特に好適に構成される。トレイ2の底板10および側壁11の最も厚い部分が0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲の場合、上記エラストマー製の弾性部材3の底板20および側壁21は、最も厚い部分にて0.4〜1.4mm、より好適には0.4〜1.0mmの範囲に設計可能である。弾性部材3は、電子機器4の側面および底面に備えられるスイッチ、接続口、カメラのレンズ等の位置に合わせて、底板20および側壁21に、凸状被覆部28、貫通孔22,23,24,25,26を備える。凸状被覆部28は、カバー部材1から電子機器4にタッチして操作できるように、好適には他の部分よりも薄肉状に形成されている。貫通孔22,23,24,25,26は、そこを通して電子機器4に接触し、あるいは光を通過可能に形成される部分である。凸状被覆部28および貫通孔22,23,24,25,26の大きさ、形状、位置および個数は、電子機器4の形態に応じて変動する。
【0022】
弾性部材3の側壁21は、トレイ2の側壁11の高さ以上に形成されている。トレイ2の側壁11は、最も高い位置でも、弾性部材3の操作面側外縁部27の内側に接する位置である。これによって、少なくとも、操作面側外縁部27は、トレイ2と接しない部分となり、電子機器4との脱着の際に自由に変形できる。弾性部材3の貫通孔22,23,24,25は、トレイ2の貫通孔12,13,14,15と同じ位置に、ほぼ同じ形状と大きさにて形成される。弾性部材3は、トレイ2の底板10および側壁11の各外側を完全に覆う一方、それらの内側を完全に覆うことなく、当該内側の一部を露出させる。なお、弾性部材3は、好適には、トレイ2の貫通孔12,13,14,15の少なくともいずれか1つの内周面の一部または全部を覆う。ただし、貫通孔12,13,14,15の内周面は、弾性部材3によって覆われていなくても良い。
【0023】
図1〜図3に示すように、弾性部材3は、その内側に、色素増感太陽電池素子30を配置する。より具体的には、トレイ2に、それより外側を覆う弾性部材3の方向に向かって窪む開口部18を備え、色素増感太陽電池素子30を、そこに配置している。色素増感太陽電池素子30の外側の面は、少なくとも弾性部材3にて被覆されるので、カバー部材1を落下等させても壊れにくい。この実施の形態では、開口部18は、その平面形状が角形であって、トレイ2の厚さ方向に貫通する貫通口である。色素増感太陽電池素子30の外側の面を覆う弾性部材3は、その少なくとも開口部18の開口面と対向する側を透光領域とする。色素増感太陽電池素子30に光を当てることができるようにするためである。この実施の形態では、弾性部材30の外側の面は、開口部18の開口面と対向する面を除き、加飾層60にて被覆されている。ただし、カバー部材1は、弾性部材3の外側全面を加飾層60にて覆うことなく、トレイ2が完全に透けて見えるように透光性のままとしても良い。また、開口部18は、トレイ2の内側の面から外側の面に貫通しない凹部であっても良い。その場合、色素増感太陽電池素子30の外側に存在するトレイ2の少なくとも薄肉部を透光性にする必要がある。ここで、透光性を有する弾性部材3は、全波長域の光の透過性を確保するものであることが好ましいが、少なくとも色素増感太陽電池素子30に使用される増感色素の吸収波長領域の光を透過させることができれば足りる。
【0024】
また、トレイ2は、その内側に、開口部18内に配置される色素増感太陽電池素子30を覆うフィルム40を備えるのが好ましい。フィルム40は、開口部18を塞ぎ、かつ接着層等を介してトレイ2に着脱自在あるいは着脱不能に固定するのが好ましい。フィルム40を用いると、色素増感太陽電池素子30を開口部18から容易に抜け落ちるのを防止できる。フィルム40の材料としては、トレイ2あるいは弾性部材3と同じ材料を好適に用いることができる。
【0025】
トレイ2は、その底板10の内側の面に、電子機器4と電気的に接続可能な接続部50と、当該接続部50と色素増感太陽電池素子30との間を電気的につなぐ導線51,52と、を備える。接続部50は、底板10の内面に立設されており、カバー部材1に電子機器4を取り付けたときに、電子機器4側の接続凹部(不図示)と容易に接続できる構成である。接続部50は、好適には、例えば、同軸型の接続プラグの形態を有し、電子機器4側の接続凹部の一例であるプラグ接続口にプラグ・イン可能なものであるが、その形態に限定されない。また、接続部50は、トレイ2の底板10に限定されず、側壁11に配置されても良い。導線51,52は、銅製の細線の外周を樹脂にて覆うリード線の他、導電性に優れる金属をトレイ2にコートして形成される薄膜でも良い。導線51,52の金属部分が表面に露出している場合には、フィルム40にて導線51,52を覆うのが好ましい。漏電防止と、導線51,52に傷が付いて断線するのを防止する必要からである。フィルム40は、カバー部材1への電子機器4の取り付けに支障がないように、できるだけ薄く、トレイ2の内側の面からの突出を少なくする方が、好ましい。加えて、色素増感太陽電池素子30が開口部18内から突出しないように、トレイ2の厚さを色素増感太陽電池素子30の厚さより大きくする方が好ましい。
【0026】
この実施の形態に係るカバー部材1は、電子機器4に二次電池を入れた状態にて電子機器4に取り付けることにより、電池蓋1’としても機能するものである。このため、電子機器4に、カバー部材1以外に、二次電池の脱落を防止するための別の蓋を必要としない。ただし、カバー部材1が電池蓋1’を兼ねることは、必須ではない。電子機器4に専用の電池蓋を備え、その上からカバー部材1を取り付けても良い。カバー部材1が電池蓋1’を兼ねることが可能な点は、以後の実施の形態でも同様である。
【0027】
図7は、図6中の色素増感太陽電池素子の概略断面図を示す。
【0028】
色素増感太陽電池素子30は、如何なる集積構造を持つものでも良いが、一例として、図7に示す、いわゆるW型集積構造のものを挙げることができる。図7に示す色素増感太陽電池素子30は、透明な樹脂基板70と透明な樹脂基板71との間に、断面視にてW形状の直列接続を実現する構造を有する。樹脂基板70,71は、それぞれの裏面に、ITO等から成る複数の透明導電膜75を備える。樹脂基板70側の透明導電膜75と、樹脂基板71側の透明導電膜75とは、各隙間を互い違いになるように配置される。透明導電膜75より内側には、電解質から成る電解質層80と、色素を吸着した多孔質酸化チタンの層(「色素吸着・多孔質酸化チタン層」という)81とを積層して備える。樹脂基板70,71の間には、図7中の左側から右側に向かって、色素吸着・多孔質酸化チタン層81の上に電解質層80を積層した積層体、電解質層80の上に色素吸着・多孔質酸化チタン層81を積層した逆層形態の積層体が順に配置される。色素増感太陽電池素子30は、その側面外周に封止層85を備え、電解質層80からの電解質の漏洩を防止している。ただし、電解質層80として、固体電解質を用いる場合には、封止層85を設けなくても良い。色素吸着・多孔質酸化チタン層81は、酸化チタン微粒子の表面にRu金属錯体色素等の色素を吸着し、色素のカルボキシル基と酸化チタンの脱水反応によって化学結合させた層である。一方、電解質層80は、例えば、ヨウ素系電解質からなる層である。光が樹脂基板70または樹脂基板71を通して色素吸着・多孔質酸化チタン層81中の色素に吸収されると、色素中の電子が励起され、その電子は、酸化チタンの伝導体に入り、透明導電膜75を経由して外部に移動する。酸化後の色素は、電解質層80から電子を受け取り、基底状態に戻る。色素によって酸化された電解質層80は、これと接する透明導電膜75から電子を受け取り、元に戻る。このような酸化・還元反応により、導線51と導線52との間に負荷回路を接続したときに、電子が図7中の点線の経路を移動する。なお、色素増感太陽電池素子30の集積構造は、上記のW型集積構造以外に、Z型集積構造あるいはモノリシック型集積構造としても良い。
【0029】
図8は、図1に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【0030】
電子機器4は、二次電池91と、これと電気的に接続される電子機器側負荷回路92とを備える。カバー部材1を電子機器4に取り付け、接続部50を介して電子機器4と、カバー部材1の色素増感太陽電池素子30とを電気的に接続すると、色素増感太陽電池素子30から導線51,52を介して二次電池91に給電できる。この結果、電子機器4は、二次電池91から電子機器側負荷回路92に給電できる。
【0031】
(2)電子機器用カバー部材の製造方法
トレイ2は、例えば、金型内に溶融樹脂を射出して成形する射出成形法、軟化させた板状の樹脂を金型内で型締めする成形法にて好適に製造できる。また、後者の成形法の場合には、一方の金型側から減圧する方法、一方の金型側から高圧気体を送気する方法、当該減圧と送気とを組み合わせる方法を用いても良い。弾性部材3は、例えば、成形後のトレイ2を金型内にセットして、金型とトレイ2との隙間に弾性部材3を構成可能な組成物を供給して、当該組成物を架橋させる方法などにより成形できる。かかる成形法を用いると、トレイ2と弾性部材3とを容易に一体化することができる。なお、トレイ2と弾性部材3との密着性を高めるため、成形後のトレイ2における弾性部材3との密着領域に、プライマーを塗布してから金型にセットして、弾性部材3を構成する組成物を金型内に供給しても良い。トレイ2と弾性部材3とを一体化した後、トレイ2の底板10の内面に形成された開口部18からトレイ2の内側の面に、導線51,52を形成し、それと電気的に接続される接続部50をトレイ2の内側の面に取り付ける。次に、開口部18内に色素増感太陽電池素子30を入れ、その上からフィルム40を貼る。
【0032】
トレイ2に着色または加飾を施す必要がある場合には、トレイ2と弾性部材3との一体成形に先立ち、トレイ2を塗料中にディッピングし、塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。なお、溶融状態の樹脂中に顔料を予め練り込んでからトレイ2を成形しても良い。また、弾性部材3の外面であって開口部18の真上の領域以外の面に加飾する必要がある場合には、トレイ2との一体成形後に、当該面に塗料をスプレーにて塗布し、印刷し、あるいは加飾シートを貼付しても良い。
【0033】
<2.第二の実施の形態>
次に、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材および/または電池蓋について説明する。第一の実施の形態と共通する構成には、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0034】
(1)電子機器用カバー部材の構成
図9は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材における図5と同視の断面図を示す。
【0035】
第二の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、単に、「カバー部材」と称する)1は、カバー部材1側に蓄電手段の一例である二次電池100を備える点で、第一の実施の形態に係るカバー部材1と異なる。第二の実施の形態において、カバー部材1は、色素増感太陽電池素子30から二次電池100に給電するための導線101,102を備える。導線101,102は、好ましくは、トレイ2の内側の面よりもトレイ2の厚さ方向内側に配置される。ただし、トレイ2の内側の面上に導線101,102を配置しても良く、その場合には、漏電防止や導線101,102の保護の観点から、フィルム40を延長し、導線101,102上の大部分を覆うのが好ましい。トレイ2は、その内側の面に電子機器4側と電気的に接続可能な接続部105,106を露出して備えると共に、当該接続部105,106と二次電池100との間を電気的に接続する導線103,104を備える。導線103,104および接続部105,106は、二次電池100から電子機器4に給電する給電部を構成する。二次電池100がトレイ2の内側に露出していない場合には、導線103,104は、トレイ2の内部を通るように配置される。蓄電手段は、二次電池100に限定されず、例えば、蓄電手段として電気二重層コンデンサを用いることもできる。
【0036】
図10は、図9に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。
【0037】
電子機器4は、電子機器側負荷回路92を備える。カバー部材1を電子機器4に取り付け、接続部105,106を介して、電子機器4とカバー部材1の色素増感太陽電池素子30とを電気的に接続すると、色素増感太陽電池素子30から導線101,102を介して二次電池100に給電し、二次電池100から電子機器側負荷回路92に給電できる。カバー部材1に二次電池100を備えているため、電子機器4をカバー部材1に取り付けていない状態でも、カバー部材1の色素増感太陽電池素子30に光を当てるだけで、二次電池100への給電が可能となる。なお、図10に示すカバー部材1は、二次電池を搭載しない電子機器4に取り付けるものであるため、電池蓋1’としての機能を有さない。
【0038】
図11は、図10に示す給電構成の変形例を示す。
【0039】
図10に示す構成に代え、図11に示すように、カバー部材1の二次電池100から電子機器4側の二次電池91に給電できる構成を採用しても良い。カバー部材1は、電子機器4の取り付け有無を問わず、二次電池100に充電可能である点は、図10に示す例と同様である。電子機器4を使用する際には、カバー部材1側の二次電池100から電子機器4側の二次電池91に向けて給電し、電子機器側負荷回路92は、二次電池91からの給電を受けて駆動する。図11に示すカバー部材1は、二次電池91を搭載する電子機器4に取り付けるものであるため、電池蓋1’としての機能も併せ持つ。なお、カバー部材1あるいは電子機器4側に切り替えスイッチを別途設け、電子機器4をカバー部材1に取り付けている状態において、色素増感太陽電池素子30から二次電池100に対して充電を行うパターンと、二次電池91に対して充電を行うパターンとを切り替えるようにしても良い。また、電子機器4をカバー部材1に取り付けている状態において、色素増感太陽電池素子30から二次電池100に対して充電を行った後に、二次電池91に対して充電を行うようにしても良い。
【0040】
(2)電子機器用カバー部材の製造方法
第二実施の形態に係るカバー部材1は、前述の第一の実施の形態に係るカバー部材1と同様の製造方法と同様の方法にて製造可能である。
【0041】
<3.その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形実施可能である。
【0042】
例えば、電子機器4のボタン、スピーカ、カメラのレンズ等の位置によっては、トレイ2に、貫通孔12等を設けず、切り欠き部を設けても良い。弾性部材3は、その側壁21を、必ずしもトレイ2の側壁11の高さ以上に形成しなくても良い。また、弾性部材3は、必ずしも、その側壁21から連接して、電子機器4の操作面5の外縁の一部または全部を覆う操作面側外縁部27を備えていなくても良い。弾性部材3は、トレイ2の開口側内面よりもその反対側の面を広く覆っていなくとも良い。また、トレイ2と弾性部材3とは、互いに密着しているのが好ましいが、密着していない領域があっても良い。トレイ2は、電子機器4の操作面5側のみならず、側壁11の一方を開口しても良い。その場合、当該開口側と反対側の側壁11の内面に、接続部50あるいは接続部105,106を備えると、当該開口部から電子機器4を挿入してカバー部材1に電子機器4を取り付けると同時に、接続部50や接続部105,106を電子機器4に接続できる。
【0043】
上述の第一の実施の形態と第二の実施の形態にて説明した構成は、その組み合わせが不可能な場合を除き、任意に組み合わせることができる。例えば、第二の実施の形態に係るカバー部材1において、接続部105,106のように独立した2つの給電部を設けず、第一の実施の形態にて説明した接続部50のように1個の形態に2箇所の給電部を有するものを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電子機器の光電変換による充電を可能とする保護カバーとして利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 カバー部材(電子機器用カバー部材)
1’ 電池蓋
2 トレイ
3 弾性部材
4 電子機器
5 操作面
18 開口部
30 色素増感太陽電池素子
40 フィルム
91 二次電池
100 二次電池(蓄電手段の一例)
103,104 導線(給電部の一部)
105,106 接続部(給電部の一部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、
少なくとも上記操作面の方向に開口するトレイと、
当該トレイよりも低硬度であると共に上記トレイの開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材と、
を備え、
上記弾性部材の内側に、色素増感太陽電池素子を備えることを特徴とする電子機器用カバー部材。
【請求項2】
前記トレイに、それより外側を覆う前記弾性部材の方向に向かって窪む開口部を備え、
前記色素増感太陽電池素子を、上記開口部内に配置することを特徴とする請求項1に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項3】
前記トレイの内側に、前記開口部内に配置される前記色素増感太陽電池素子を覆うフィルムを備えることを特徴とする請求項2に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項4】
前記色素増感太陽電池素子から給電を受けて蓄電する蓄電手段と、
当該蓄電手段から前記電子機器に給電する給電部と、
を、さらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材が前記電子機器に取り付けられる二次電池を覆う蓋を兼ねることを特徴とする電池蓋。
【請求項1】
電子機器の操作面側を開口して当該電子機器の外側を覆う電子機器用カバー部材であって、
少なくとも上記操作面の方向に開口するトレイと、
当該トレイよりも低硬度であると共に上記トレイの開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材と、
を備え、
上記弾性部材の内側に、色素増感太陽電池素子を備えることを特徴とする電子機器用カバー部材。
【請求項2】
前記トレイに、それより外側を覆う前記弾性部材の方向に向かって窪む開口部を備え、
前記色素増感太陽電池素子を、上記開口部内に配置することを特徴とする請求項1に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項3】
前記トレイの内側に、前記開口部内に配置される前記色素増感太陽電池素子を覆うフィルムを備えることを特徴とする請求項2に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項4】
前記色素増感太陽電池素子から給電を受けて蓄電する蓄電手段と、
当該蓄電手段から前記電子機器に給電する給電部と、
を、さらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器用カバー部材が前記電子機器に取り付けられる二次電池を覆う蓋を兼ねることを特徴とする電池蓋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−65426(P2013−65426A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202754(P2011−202754)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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