説明

電子部品実装用基板

【課題】周辺貫通孔からの熱が放散されにくく、周辺貫通孔からの熱が充分に貫通孔に伝導し易い電子部品実装用基板を得ること。
【解決手段】
電子部品実装用基板は、貫通孔10の近傍位置にて基板を貫通するように配置され、貫通孔10への加熱溶融された半田50の侵入時に自らの内部空間に加熱溶融された半田50の侵入を可能とし、第2の周壁20aを有する周辺貫通孔20と、第1の周壁10aと第2の周壁20aとの間で熱を伝導すると共に、基板3の内部に設けられたべたパターン30とを備え、周辺貫通孔20の内部空間に加熱溶融された半田50が侵入すると、周辺貫通孔20における第2の周壁20aから貫通孔10における第1の周壁10aにべたパターン30を介して熱供給する、ものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品実装用基板は下記特許文献1に示すように、電子部品のリード部が基板に設けた貫通孔に挿入されたのちにリード部の先端側より加熱溶融された接合材が供給され、該接合材が貫通孔の内部に侵入し冷却凝固することで電子部品が基板に装着される電子部品実装用基板において、貫通孔の近傍位置にて基板を貫通するように配置され、かつ貫通孔への加熱溶融された接合材の侵入時に自らの内部空間に加熱溶融された接合材の侵入を可能とさせる周辺貫通孔を備え、周辺貫通孔の内部空間に加熱溶融された接合材が侵入すると、貫通孔を形成する周壁に対し熱供給する。
かかる電子部品実装用基板によれば、貫通孔の近傍位置に配置され、かつ貫通孔への加熱溶融された接合材の侵入時に自らの内部空間に加熱溶融された接合材を侵入させる周辺貫通孔を備えるので、周辺貫通孔の内部空間に加熱溶融された接合材を侵入させた際の接合材の熱量は、効率的に貫通孔を形成する周壁に対し熱供給する。これにより、周壁と接する半田の冷えを抑制して半田上がり性を向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−69202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者は、上記電子部品実装用基板における周辺貫通孔からの熱を貫通孔に伝導する際に、部品面上のべたパターンを介して伝導している。このため、部品面側のべたパターンは、外気と直接触れるので、周辺貫通孔からの熱が放散され易く、周辺貫通孔からの熱が充分に貫通孔に伝導されにくいとう課題を見出した。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、周辺貫通孔からの熱が放散されにくく、周辺貫通孔からの熱が充分に貫通孔に伝導し易い電子部品実装用基板を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子部品実装用基板は、電子部品のリード部が基板に設けた第1の周壁を有する貫通孔に挿入されたのちにリード部の先端側より加熱溶融された接合材が供給され、該接合材が貫通孔の内部に侵入し冷却凝固することで電子部品が基板に装着される電子部品実装用基板において、前記貫通孔の近傍位置にて基板を貫通するように配置され、かつ前記貫通孔への加熱溶融された接合材の侵入時に自らの内部空間に加熱溶融された接合材の侵入を可能すると共に、第2の周壁を有する周辺貫通孔と、前記第1の周壁と前記第2の周壁との間で熱を伝導すると共に、前記基板の内部に設けられた熱伝導部材とを備え、前記周辺貫通孔の内部空間に加熱溶融された接合材が侵入すると、前記第2の周壁から前記第1の周壁に前記熱伝導部材を介して熱供給する、ことを特徴とするものである。
かかる電子部品実装用基板によれば、周辺貫通孔の内部空間に加熱溶融された接合材が侵入すると、周辺貫通孔の第2の周壁から貫通孔における第1の周壁に熱伝導部材を介して熱供給する。これにより、貫通孔の上部における半田の温度が冷えにくくなり、貫通孔における半田付け場所の半田上がり性を良好とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子部品実装用基板によれば、周辺貫通孔からの熱が放散されにくく、周辺貫通孔からの熱が充分に貫通孔に伝導し易い電子部品実装用基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を示す電子部品実装用基板の側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す電子部品実装用基板の断面図である。
【図3】図1に示す電子部品実装用基板の周辺貫通孔径と貫通孔における半田温度との関係を示す温度曲線図である。
【図4】図1に示す電子部品実装用基板の周辺貫通孔径と貫通孔との距離と、貫通孔における半田温度との関係を示す温度曲線図である。
【図5】本発明の一実施の形態を示す電子部品実装用基板に電子部品を半田する際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明の一実施形態である電子部品実装用基板を図1から図4を参照して詳細に説明する。以下に説明する電子部品実装用基板は、フロー半田付け法を適用する半田付けに用いられ、半田付け箇所の半田上がり性を悪化させることなく半田付けが行える技術に関する。
なお、電子部品実装用基板は、基板となるプリント基板、あるいはセラミック基板に電子部品が搭載されて電子制御回路部品を構成する。本実施形態では、基板としてプリント基板を用いた例を説明する。
【0010】
図1及び図2において、プリント基板3はガラスエポキシ樹脂からなり、このプリント基板3の上面3Aと下面3Bとを貫通し電子部品5のリード部5aが挿入される貫通孔(スルーホールとも呼ばれる)10を有する。この貫通孔10の円筒状に形成された第1の周壁10aが銅箔から成っている。貫通孔10の近傍位置にてプリント基板3の上面3Aと下面3Bとを貫通するように周辺貫通孔20を備え、この周辺貫通孔20の円筒状に形成された第2の周壁20aが銅箔から成っている。
そして、周辺貫通孔20の第2の周壁20aと貫通孔10の第1の周壁10aとがプリント基板3の内部において、上面側3Aに近い方に熱伝導部材としてのべたパターン(平面銅箔)30により熱伝導的・電気的に接続されている。すなわち、べたパターン30は熱が伝導しやすく形成されている。
【0011】
ここで、周辺貫通孔20の孔径Φが大きくなると、半田が多く侵入して周辺貫通孔20の熱容量が大きくなり、周辺貫通孔20の第2の周壁20aから多くの熱をべたパターン30を介して貫通孔10の第1の周壁10に伝導できる。このことを、半田の温度を270℃として熱解析シュミレーション(ANSYS社製Icepack)により確認した結果を図3に示す。図3によれば、周辺貫通孔20の径を0.5mm以上とすることが好ましい。なお、一点鎖線は、周辺貫通孔20を設けていない場合の貫通孔10の半田温度である。
【0012】
さらに、周辺貫通孔20の第2の周壁20aと貫通孔10の第1の周壁10aとの距離Lが短くなると、周辺貫通孔20の第2の周壁20aから熱が放熱しにくくしながら、べたパターンを介して貫通孔10の第1の周壁10に伝導できる。このことを、半田の温度を270℃として上記熱解析シュミレーション(ANSYS社製Icepack)により確認した結果を図4に示す。図4によれば、貫通孔10の縁から周辺貫通孔20の縁の距離Lを3mm以下とすることが好ましい。なお、一点鎖線は、周辺貫通孔20を設けていない場合の貫通孔10の半田温度である。
【0013】
次に、上記した貫通孔10と周辺貫通孔20とを備えるプリント基板1を用いて、フロー半田付け法による半田付けについて図5を参照して説明する。このフロー半田付け法は、貫通孔10に電子部品5のリード部5aを挿入配置させ、この状態からペースト塗布、予熱行程ののち加熱溶融された接合材としての半田50がリード部5aの先端側(下面3B側)より吹き付けられ、貫通孔10内部に半田50を侵入させる。また、この貫通孔3内部への半田50の吹き付けと同時に周辺貫通孔20へも加熱溶融された半田50が下面3B側より吹き付けられ、周辺貫通孔20の内部空間に半田50が侵入する。
【0014】
周辺貫通孔20の加熱溶融された半田50の熱がべたパターン30を介して矢印のように貫通孔10の周壁に熱を伝導する。これにより、貫通孔10の上部における半田50の温度が冷えにくくなり、貫通孔10における半田付け場所の半田上がり性を良好とする。
【0015】
上記実施形態の電子部品実装用基板は、電子部品5のリード部5aがプリント基板3に設けた第1の周壁を有する貫通孔10に挿入されたのちにリード部5aの先端側より加熱溶融された半田50が供給され、半田50が貫通孔10の内部に侵入し冷却凝固することで電子部品5がプリント基板3に装着される電子部品実装用基板において、貫通孔10の近傍位置にて基板を貫通するように配置され、かつ貫通孔10への加熱溶融された半田50の侵入時に自らの内部空間に加熱溶融された半田50の侵入を可能すると共に、第2の周壁20aを有する周辺貫通孔20と、第1の周壁10aと第2の周壁20aとの間で熱を伝導すると共に、基板3の内部に設けられたべたパターン30とを備え、周辺貫通孔20の内部空間に加熱溶融された半田50が侵入すると、周辺貫通孔20における第2の周壁20aから貫通孔10における第1の周壁10aにべたパターン30を介して熱供給する、するものである。
【0016】
かかる電子部品実装用基板によれば、周辺貫通孔20の内部空間に加熱溶融された半田50が侵入すると、第2の周壁20aから第1の周壁10aにべたパターン30を介して熱供給する。これにより、これにより、貫通孔10の上部における半田の温度が冷えにくくなり、貫通孔10における半田付け場所の半田上がり性を良好とする。
【符号の説明】
【0017】
3 プリント基板、5 電子部品、10 貫通孔、10a 第1の周壁、20 周辺貫通孔、20a 第2の周壁、30 べたパターン、50 半田。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品のリード部が基板に設けた第1の周壁を有する貫通孔に挿入されたのちに前記リード部の先端側より加熱溶融された接合材が供給され、該接合材が前記貫通孔の内部に侵入し冷却凝固することで前記電子部品が前記基板に装着される電子部品実装用基板において、
前記貫通孔の近傍位置にて前記基板を貫通するように配置され、かつ前記貫通孔への加熱溶融された前記接合材の侵入時に自らの内部空間に加熱溶融された前記接合材の侵入を可能すると共に、第2の周壁を有する周辺貫通孔と、
前記第1の周壁と前記第2の周壁との間で熱を伝導すると共に、前記基板の内部に設けられた熱伝導部材とを備え、
前記周辺貫通孔の内部空間に加熱溶融された前記接合材が侵入すると、前記第2の周壁から前記第1の周壁に前記熱伝導部材を介して熱供給する、
ことを特徴とする電子部品実装用基板。
【請求項2】
前記貫通孔の縁から前記周辺貫通孔の縁の距離を3mm以下とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装用基板。
【請求項3】
前記周辺貫通孔の径を0.5mm以上とする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品実装用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−171645(P2011−171645A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36005(P2010−36005)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】