説明

電池支持装置、充電器、電子機器

【課題】電池の取り外しが容易な電池支持装置を低コストで実現する。
【解決手段】本発明に係る充電器10は、電池6の正極61に当接する正極当接部1と、電池6の負極62に当接する負極当接部2と、電池6を背面側から支持する支持部3と、を備え、支持部3は、電池6の背面63に当接する当接部31と、電池6の背面63の負極62側の端部を包含する領域に対応し、電池6の背面63に当接しない非当接部32とを含む。充電器10に取り付けられた電池6の非当接部32に対応する部分を前面側から背面側へ押す操作によって、当接部31と非当接部32との境界部分33を支点として、非当接部32に対応する部分が背面側へ揺動し、当接部31に対応する部分が前面側へ揺動する。それによって電池6は、正極61が正極接点部材4から外れるとともに負極62が負極接点部材5から外れ、取り外された状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次電池(乾電池)又は二次電池(蓄電池)を充放電可能な状態で着脱可能に支持する電池支持装置、該電池支持装置を備えた充電器、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電池を充放電可能な状態で着脱可能に支持する構造の電池支持装置が公知である。このような電池支持装置は、電池の正極に当接する正極当接部と電池の負極に当接する負極当接部とで電池を挟持する構造を含み、正極当接部及び負極当接部を介して電池の充放電を行うことができる。
【0003】
このような構造の電池支持装置においては、正極当接部と負極当接部とで電池を挟持する構造であることから、電池を取り外す際の操作性に課題が生ずる。具体的には、例えば電池の正極と正極当接部との間の僅かな隙間に指先を押し入れ、電池の正極側の端部に指先又は爪を引っかけて電池を引っ張り出す等の操作が必要になる。そのため上記構造の電池支持装置においては、電池を取り外す際に、指先の怪我や爪の損傷等の虞が生ずることになる。また上記構造の電池支持装置から電池を取り外す他の手法としては、例えば電池の両側部を親指と人差し指とで挟持して引っ張り出す操作が考えられるが、特に複数の電池を隣接させて並べた状態で支持する電池支持装置においては、このような操作が物理的に困難となる場合が多い。つまり上記構造の電池支持装置は、装着した電池、特に円筒形電池を取り外しにくいという課題が生ずる。
【0004】
このような課題を解決可能な従来技術の一例としては、電池装着部のカバー体が開閉可能に軸支されており、複数の電池を隣接して並べた状態で保持する電池保持部をカバー体に設けた充電器が公知である。当該従来技術の充電器においては、まずカバー体を開いた状態でカバー体の電池保持部に円筒形二次電池を挿入し、その状態からカバー体を閉じることによって円筒形二次電池を電池装着部に装着することができ、そしてカバー体を開くことによって円筒形二次電池を電池装着部から容易に取り外すことができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−293879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に開示されている従来技術は、電池装着部のカバー体を充電器に開閉可能に軸支する必要があり、さらにカバー体に電池保持部を設ける必要がある。そのため特許文献1に開示されている充電器は、その構造が複雑化して部品点数が大幅に増加することとなり、それによって大幅なコスト増の虞が生ずる。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、電池の取り外しが容易な電池支持装置を低コストで実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、電池の正極に当接する正極当接部と、前記電池の負極に当接する負極当接部と、前記電池を背面側から支持する支持部と、を備え、前記支持部は、前記電池の背面に当接する当接部と、前記電池の背面の正極側の端部又は負極側の端部を包含する領域に対応し、前記電池の背面に当接しない非当接部とを含む、ことを特徴とした電池支持装置である。
【0009】
電池は、正極が正極当接部に当接し、負極が負極当接部に当接し、支持部の当接部に背面が当接した状態で支持される。また支持部には、上記の状態で支持される電池の背面に当接しない非当接部が設けられている。そのため上記の状態で支持される電池は、その電池の背面と非当接部との間に一定の空間が形成されることになる。そして非当接部は、電池の背面の正極側の端部又は負極側の端部を包含する領域に対応して設けられている。したがって上記の状態で支持される電池は、非当接部に対応する部分を前面側から背面側へ押す操作によって、支持部の当接部と非当接部との境界部分を支点として、非当接部に対応する部分が背面側へ揺動し、当接部に対応する部分が前面側へ揺動する。それによって電池は、正極が正極当接部から外れるとともに負極が負極当接部から外れ、その結果、電池支持装置から取り外された状態となる。
【0010】
このように本発明に係る電池支持装置は、正極が正極当接部に当接し、負極が負極当接部に当接した状態で支持される電池に対し、その電池の非当接部に対応する部分を前面側から背面側へ押すという極めて簡単な操作を行うだけで、その電池を容易に取り外すことができる。また本発明に係る電池支持装置は、電池を背面側から支持する支持部に上記の非当接部を設けるだけの極めてシンプルな構成であるため、極めて低コストで実現することができる。
【0011】
これにより本発明の第1の態様によれば、電池の取り外しが容易な電池支持装置を低コストで実現することができるという作用効果が得られる。
【0012】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記非当接部は、前記電池の背面に対向する突き当て部を含む、ことを特徴とした電池支持装置である。
【0013】
前記の状態で支持される電池は、非当接部に対応する部分を前面側から背面側へ押す操作によって、支持部の当接部と非当接部との境界部分を支点として、非当接部に対応する部分が背面側へ揺動し、当接部に対応する部分が前面側へ揺動する。それによって電池は、正極が正極当接部から外れるとともに負極が負極当接部から外れ、さらに背面が非当接部の突き当て部に突き当たった状態となる。つまり電池を取り外す際には、突き当て部によって電池の揺動が一定範囲に規制されることになる。それによって電池を取り外す際に、その電池に不必要な動きが生ずることを防止することができる。したがって本発明の第2の態様によれば、電池を取り外す際の操作性を向上させることができる。
【0014】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、隣接して並べられた複数の電池を支持する、ことを特徴とした電池支持装置である。
本発明の第3の態様によれば、隣接して並べられた複数の電池を支持する電池支持装置において、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様による作用効果を得ることができるとともに、両脇に他の電池が隣接する電池に対し、その電池だけを容易に取り外すことができるという作用効果が得られる。
【0015】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第1〜第3の態様のいずれかの電池支持装置と、前記正極当接部及び前記負極当接部を介して電池を充電する充電回路と、を備える充電器である。
本発明の第4の態様によれば、電池を充電する充電器において、前述した本発明の第1〜第3の態様のいずれかによる作用効果を得ることができる。
【0016】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第3の態様のいずれかの電池支持装置と、前記正極当接部及び前記負極当接部を介して電池が放電する電力で動作する電子回路と、を備える電子機器である。
本発明の第5の態様によれば、電池が放電する電力で動作する電子機器において、前述した本発明の第1〜第3の態様のいずれかによる作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池の取り外しが容易な電池支持装置を低コストで実現することができるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例の充電器の電池を取り付けていない状態を図示した正面図。
【図2】第1実施例の充電器の電池を取り付けた状態を図示した正面図。
【図3】第1実施例の充電器の側面図。
【図4】第2実施例の充電器の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
<第1実施例>
本発明に係る「電池支持装置」を備える充電器の第1実施例について、図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は、第1実施例の充電器10の正面図であり、電池6を取り付けていない状態を図示したものである。図2は、第1実施例の充電器10の正面図であり、電池6を取り付けた状態を図示したものである。図3は、第1実施例の充電器10の側面図であり、図3(a)は電池6を取り付けた状態、図3(b)は電池6を取り外すときの状態をそれぞれ図示したものである。
【0021】
充電器10は、隣接して並べられた四つの電池6を支持可能であり、「電池支持装置」を構成する正極当接部1、負極当接部2及び支持部3を備えている。さらに充電器10は、正極当接部1及び負極当接部2を介して電池6を充電する充電回路(図示せず)を備えている。電池6は、例えば円筒形の二次電池(蓄電池)である。
【0022】
正極当接部1は、四つの電池6を充電器10が支持する状態において、その四つの電池6の正極61に対向する内側面部11を含む。正極当接部1の内側面部11には、その四つの電池6の正極61が各々当接する四つの正極接点部材4が並設されている。
【0023】
負極当接部2は、四つの電池6を充電器10が支持する状態において、その四つの電池6の負極62に対向する内側面部21を含む。負極当接部2の内側面部21には、その四つの電池6の負極62が各々当接する四つの負極接点部材5が並設されている。
【0024】
支持部3は、四つの電池6を充電器10が支持する状態において、その四つの電池6を背面63側から支持する。支持部3は、当接部31及び非当接部32を含む。当接部31は、四つの電池6を充電器10が支持する状態において、その四つの電池6の背面63に沿う支持面を有し、その四つの電池6の背面63に当接して四つの電池6を支持する。非当接部32は、四つの電池6の背面63の負極62側の端部を包含する領域に対応し、四つの電池6を充電器10が支持する状態において、その四つの電池6の背面63に当接しない形状となっている。より具体的には、第1実施例の非当接部32は、当接部31との境界部分33から負極当接部2の内側面部21まで、当接部31に支持された状態の電池6の背面63から離間する方向へ傾斜する斜面部321として形成されている。この斜面部321は、後述する「突き当て部」としても機能する。
尚、上記説明した支持部3は、四つの電池6の背面63の負極62側に当接部31を設け、四つの電池6の背面63の正極61側の端部を包含する領域に対応する部分に非当接部32を設けた構成としてもよい。
【0025】
正極接点部材4及び負極接点部材5は、板ばね構造を有する金属製の部材である。充電器10の充電回路は、公知の一般的な充電回路であり、正極接点部材4及び負極接点部材5を介して四つの電池6と電気的に接続され、正極接点部材4及び負極接点部材5を介して電池6を充電する回路である(図示せず)。
【0026】
上記説明した構成の充電器10に取り付けられた状態の四つの電池6は、正極61に当接する正極接点部材4と負極62に当接する負極接点部材5とで各々挟持され、背面63が支持部3の当接部31に当接した状態で支持される(図3(a))。
【0027】
以下、充電器10に取り付けられた状態の電池6を取り外す操作について説明する。
【0028】
前述したように支持部3には、充電器10に取り付けられた状態の電池6の背面63に当接しない非当接部32が設けられている。この非当接部32は、充電器10が電池6を支持する状態において電池6の背面63に当接しない形状となっている。そのため充電器10が電池6を支持する状態において、電池6の背面63と非当接部32との間には、一定の空間が形成されることになる。そして非当接部32は、電池6の背面63の負極62側の端部を包含する領域に対応して設けられている。したがって充電器10に取り付けられた状態の電池6は、非当接部32に対応する部分を前面側から背面側へ押す操作(図3(b)の符号A)によって、支持部3の当接部31と非当接部32との境界部分33を支点として、非当接部32に対応する部分が背面側へ揺動し(図3(b)の符号B)、当接部31に対応する部分が前面側へ揺動する(図3(b)の符号C)。それによって電池6は、正極61が正極接点部材4から外れるとともに負極62が負極接点部材5から外れ、その結果、充電器10から取り外された状態となる。
【0029】
上記説明した電池6を取り外す操作は、隣接して並べられた状態で支持される四つの電池に対し、個別に行うことが可能である。そのため本発明に係る充電器10は、特に取り外しにくい両脇に他の電池6が隣接する電池6に対しても、その電池6だけを容易に取り外すことができる。
【0030】
以上説明したように本発明に係る充電器10は、正極61が正極接点部材4に当接し、負極62が負極接点部材5に当接した状態で支持される電池6に対し、その電池6の非当接部32に対応する部分を前面側から背面側へ押すという極めて簡単な操作を行うだけで、その電池6を容易に取り外すことができる。また本発明に係る充電器10は、電池6を背面63側から支持する支持部3に非当接部32を設けるだけの極めてシンプルな構成であるため、極めて低コストで実現することができる。
【0031】
このようにして本発明によれば、電池6の取り外しが容易な充電器10を低コストで実現することができる。
【0032】
また本発明に係る充電器10は、本発明に必須の構成要素ではないが、「突き当て部」として、充電器10に取り付けられた状態の電池6の背面63に対向する斜面部321を非当接部32に設けるのが好ましい。このような斜面部321を設けることによって、電池6の非当接部32に対応する部分を前面側から背面側へ押す操作を行うときには、電池6の負極62が負極接点部材5から外れた後、電池6の背面63の一部が斜面部321に突き当たって当接し、その電池6の揺動が規制されることになる。つまり電池6の非当接部32に対応する部分を前面側から背面側へ押す操作により充電器10から電池6を取り外す際には、斜面部321によって、境界部分33を支点とする電池6の揺動が一定範囲に規制されることになる。それによって充電器10から電池6を取り外す際に、その電池6に不必要な動きが生ずることを防止することができる。したがって充電器10から電池6を取り外す際の操作性を向上させることができる。
【0033】
<第2実施例>
本発明に係る「電池支持装置」を備える充電器の第2実施例について、図4を参照しながら説明する。
図4は、第2実施例の充電器10の側面図であり、図4(a)は電池6を取り付けた状態、図4(b)は電池6を取り外すときの状態をそれぞれ図示したものである。
【0034】
第2実施例の充電器10は、支持部3の形状が第1実施例と異なる。それ以外の構成については、第1実施例の充電器10と同じであるため、同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また充電器10に取り付けられた状態の電池6を取り外す操作についても第1実施例と同様であるため説明を省略する。
【0035】
第2実施例の充電器10の支持部3は、複数の凸形状の当接部31を含む。充電器10に取り付けられた状態の電池6は、複数の当接部31が背面63に当接した状態で支持される。また第2実施例の充電器10において支持部3の非当接部32は、図示の如く凹形状をなしており、その底面部322が第1実施例の斜面部321と同様に「突き当て部」として機能する。
【0036】
このような態様でも本発明は実施可能であり、電池6の取り外しが容易な充電器10を低コストで実現することができる。
【0037】
<他の実施例>
本発明は、上記説明した実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であること言うまでもない。
【0038】
例えば、第1実施例又は第2実施例の充電器10の充電回路以外の部分(「電池支持装置」)で構成した電池ホルダとしても本発明は実施可能であり、電池6の取り外しが容易な電池ホルダを低コストで実現することができる。
【0039】
例えば、第1実施例又は第2実施例の充電器10と同じ構成の「電池支持装置」を電池6が放電する電力で動作する電子機器に設けることもできる。より具体的には、正極接点部材4及び負極接点部材5を介して電池6が放電する電力で動作する電子回路(図示せず)を備えた電子機器においても本発明は実施可能であり、電池6の取り外しが容易な電子機器を低コストで実現することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 正極当接部
2 負極当接部
3 支持部
4 正極接点部材
5 負極接点部材
6 電池
10 充電器
31 当接部
32 非当接部
61 電池の正極
62 電池の負極
63 電池の背面
321 非当接部の斜面部
322 非当接部の底面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の正極に当接する正極当接部と、
前記電池の負極に当接する負極当接部と、
前記電池を背面側から支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記電池の背面に当接する当接部と、前記電池の背面の正極側の端部又は負極側の端部を包含する領域に対応し、前記電池の背面に当接しない非当接部とを含む、ことを特徴とした電池支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池支持装置において、前記非当接部は、前記電池の背面に対向する突き当て部を含む、ことを特徴とした電池支持装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池支持装置において、隣接して並べられた複数の電池を支持する、ことを特徴とした電池支持装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電池支持装置と、
前記正極当接部及び前記負極当接部を介して電池を充電する充電回路と、を備える充電器。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の電池支持装置と、
前記正極当接部及び前記負極当接部を介して電池が放電する電力で動作する電子回路と、を備える電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−12348(P2013−12348A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143302(P2011−143302)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】