説明

電源システム

【課題】車載負荷28等に供給可能な電流の最大値を増大させつつ、信頼性を向上させることのできる電源システムを提供する。
【解決手段】マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの並列接続体によって車載負荷28等に電力を供給する電源システムがある。ここでは、マスタDCDC12aの目標電圧は、スレーブDCDC12bの目標電圧よりも高い。また、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bは定電流垂下特性を有する。こうした構成において、スレーブDCDC12bの出力電流がその規定値を超える場合、マスタDCDC12aの出力電流の制限値を増大させる処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数並列接続されたDCDCコンバータによって所定の電力供給対象に電力を供給すべく前記DCDCコンバータを操作する操作手段を備える電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数並列接続されたスイッチング電源(DCDCコンバータ)によって所定の電力供給対象に電力を供給する電源システムが知られている。このシステムは、電力供給対象に供給可能な電流の最大値を大きくすること等を目的として採用される。ここで、上記システムにおいては、複数のスイッチング電源のうち出力電圧の高いものから優先的に電力供給対象に電流が出力される。このため、特定のスイッチング電源が動作される頻度が高くなる等、一部のスイッチング電源の信頼性の低下度合いがそれ以外のスイッチング電源と比較して大きくなるおそれがある。
【0003】
こうした問題を解決すべく、下記特許文献1に見られるように、複数並列接続されたスイッチング電源のそれぞれに負荷に供給すべき電流を均等に負担させる技術が知られている。詳しくは、この技術では、複数のスイッチング電源の合計出力電流の平均値等で定義される基準電流よりも出力電流の大きいスイッチング電源の出力電流を低下させている。こうした構成によれば、各スイッチング電源の出力電流を基準電流に制御することができる。
【0004】
また、下記特許文献2に見られるように、スイッチング電源の定格出力電流の範囲内において、スイッチング電源の出力電流が大きいほどスイッチング電源の出力電圧を低下させる技術も知られている。これら技術によれば、電源システムの信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0005】
なお、複数並列接続されたスイッチング電源を有する電源システムの信頼性の向上を図る技術としては、例えば下記特許文献3に記載される技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−225126号公報
【特許文献2】特開平10−248253号公報
【特許文献3】特開平10−108362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した技術では、信頼性の向上を図ることはできるものの、種々の不都合が生じることが懸念される。詳しくは、上記特許文献1に記載された技術では、各スイッチング電源間で基準電流に関する信号を共有すべく各スイッチング電源と接続される信号線が要求されることとなる。このため、電源システムのコスト及び体格が増大する懸念がある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載された技術では、負荷に供給すべき電流が大きくなると、スイッチング電源の出力電圧が低くなる傾向にある。このため、例えば、スイッチング電源によるバッテリの充電時においてバッテリを適切に充電することができなくなる懸念がある。
【0009】
このように、複数並列接続されたスイッチング電源を備える電源システムの信頼性の向上を図る技術は、未だ改善の余地を残すものとなっている。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自身の信頼性を向上させることのできる新たな電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0012】
請求項1記載の発明は、複数並列接続されたDCDCコンバータによって所定の電力供給対象に電力を供給すべく前記DCDCコンバータを操作する操作手段を備える電源システムにおいて、前記操作手段は、前記DCDCコンバータの出力電圧を目標電圧に制御すべく前記DCDCコンバータを操作する電圧制御手段と、前記DCDCコンバータの出力電流が規定値を超える場合、前記出力電流を前記規定値で制限すべく前記DCDCコンバータを操作する電流制限手段とを備え、複数の前記DCDCコンバータのうち少なくとも1つの出力電流が前記規定値を超える場合、複数の前記DCDCコンバータのうち少なくとも1つに対応する前記規定値を増大させる増大手段を備えることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、増大手段によって上記態様にて規定値を増大させる。こうした構成によれば、電力供給対象に供給すべき電流が小さい場合には、複数のDCDCコンバータのそれぞれの出力電流を規定値以下に抑制し、DCDCコンバータのそれぞれの信頼性の向上を図る一方、電力供給対象に供給すべき電流が大きい場合には、上記態様にて規定値を増大させることで、電力供給対象に供給可能な電流を増大させることができる。すなわち、上記発明によれば、電力供給対象に供給可能な電流の最大値を増大させつつ、電源システムの信頼性を向上させることができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記目標電圧は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれで互いに相違し、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も高いものをマスタとし、残余をスレーブとし、前記増大手段は、前記スレーブのうち前記目標電圧が最も低いスレーブの出力電流が該目標電圧の最も低いスレーブに対応する前記規定値を超える場合、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つに対応する前記規定値を増大させることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、まず、目標電圧の最も高いDCDCコンバータから電力供給対象に電流が出力される。そして、目標電圧の最も高いDCDCコンバータの出力電流がこのDCDCコンバータに対応する規定値を超える場合、目標電圧の最も高いDCDCコンバータの出力電流が上記規定値によって制限されることで、DCDCコンバータの出力電圧が低下される。その後、目標電圧の最も高いDCDCコンバータ以外のDCDCコンバータのうち目標電圧の高いものから順に電力供給対象に電流が出力されることとなる。すなわち、上記発明では、電力供給対象に供給すべき電流に応じてDCDCコンバータの動作状態の把握が可能となる。
【0016】
なお、上記発明において、電源システムに備えられるDCDCコンバータが2つの場合、スレーブのうち目標電圧が最も低いスレーブとは、2つのDCDCコンバータのうちマスタ以外のDCDCコンバータのことをいう。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記目標電圧は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれで互いに相違し、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も高いものをマスタとし、残余をスレーブとし、前記増大手段は、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つの出力電圧が前記目標電圧の最も低いスレーブの出力電圧よりも低くなる場合、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つに対応する前記規定値を増大させることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、まず、目標電圧の最も高いDCDCコンバータから電力供給対象に電流が出力される。そして、目標電圧の最も高いDCDCコンバータの出力電流がこのDCDCコンバータに対応する規定値を超える場合、目標電圧の最も高いDCDCコンバータの出力電流が上記規定値によって制限されることで、DCDCコンバータの出力電圧が低下される。その後、目標電圧の最も高いDCDCコンバータ以外のDCDCコンバータのうち目標電圧の高いものから順に電力供給対象に電流が出力されることとなる。すなわち、上記発明では、電力供給対象に供給すべき電流に応じてDCDCコンバータの動作状態の把握が可能となる。
【0019】
ところで、マスタ及びスレーブ間で情報を伝達するための信号線の異常(例えば断線)等、何らかの異常によって複数のDCDCコンバータ間において適切に情報伝達できなく事態が生じ得る。この場合、例えば、複数のDCDCコンバータのうち少なくともいずれかのDCDCコンバータの出力電流が規定値で制限される状況を他のDCDCコンバータにおいて把握することができず、上記増大手段によって規定値を適切なタイミングで増大できなくなることが懸念される。そしてこの場合、DCDCコンバータの出力電圧が大きく低下することが懸念される。
【0020】
ここで、上記発明では、複数のDCDCコンバータのうち目標電圧の最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つの出力電圧が上記最も低いスレーブの出力電圧よりも低くなる場合、複数のDCDCコンバータのうち上記最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つに対応する規定値を増大させる。こうした上記発明によれば、DCDCコンバータの出力電圧が大きく低下することを好適に回避することができる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記マスタに対応する前記規定値は、前記目標電圧の最も低いスレーブに対応する前記規定値よりも小さく設定されることを特徴とする。
【0022】
電源システムに備えられるDCDCコンバータのうちマスタの目標電圧が最も高いため、マスタの動作頻度が高くなる傾向にある。ここで、上記発明では、上記態様にてマスタと上記目標電圧の最も低いスレーブとに対応する規定値を設定するため、電力供給対象に供給すべき電流が大きくなる状況において、電力供給対象に供給すべき電流を極力早期に上記目標電圧の最も低いスレーブにも負担させることができる。このため、マスタに流れる電流が大きくなることを極力回避することができ、ひいては電源システムの信頼性を好適に向上させることができる。
【0023】
なお、上記発明において、マスタの積算動作時間が規定時間となるまでマスタの信頼性を保証可能な電流値(平均電流)をマスタに対応する規定値としてもよい。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記操作手段は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれに備えられて且つ、自身の備えられる前記DCDCコンバータを操作し、前記増大手段は、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧が最も低いDCDCコンバータ以外のDCDCコンバータに備えられ、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれには、インターフェースが備えられ、前記目標電圧が最も低いDCDCコンバータの出力電流が該最も低いDCDCコンバータに対応する前記規定値を超える場合、その旨の情報を前記最も低いDCDCコンバータに対応する前記インターフェースを介して外部に出力する手段を更に備え、前記増大手段は、自身の備えられる前記DCDCコンバータに対応する前記インターフェースを介して前記その旨の情報が入力されることに基づき、自身の備えられる前記DCDCコンバータに対応する前記規定値を増大させることを特徴とする。
【0025】
なお、インターフェースとしては、例えばピン端子を用いることができる。
【0026】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記操作手段は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれに備えられて且つ、自身の備えられる前記DCDCコンバータを操作し、前記電源システム及び前記電力供給対象は、車両に搭載され、前記車両には、前記操作手段よりも上位であって且つ前記車両の制御を統括する手段が備えられ、前記DCDCコンバータの出力電流が前記規定値を超える場合、その旨を前記統括する手段に通知する通知手段を更に備えることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、通知手段を備えることで、車両の制御を統括する手段に上記その旨を通知した後、例えば、電力供給対象に供給すべき電流を制限する処理を上記統括する手段に行わせることなどができる。なお、上記発明において、上位とは、例えば、ユーザインターフェースから入力されるユーザの要求を最上流とした場合、操作手段よりも上流側のことである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】一実施形態にかかるDCDCコンバータの制御態様を示す図。
【図3】一実施形態にかかるDCDCコンバータの制御態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかる電源システムを車載主機として回転機及びエンジンを備える大型ハイブリッド車両(バス)に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。
【0031】
図示される高圧バッテリ10は、車載主機としての図示しない回転機(モータジェネレータ)の電力供給源であり、例えば数百V以上の所定の高電圧を有する蓄電池である。ちなみに、高圧バッテリ10としては、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を採用することができる。
【0032】
高圧バッテリ10は、複数(2つ)並列接続されたDCDCコンバータ12a,12bのそれぞれに接続可能とされている。なお、本実施形態では、以降、これらDCDCコンバータ12a,12bのうち12aをマスタDCDCと称し、12bをスレーブDCDCと称すこととする。
【0033】
マスタDCDC12aは、一対のスイッチング素子SW1,SW3の直列接続体及び一対のスイッチング素子SW2,SW4の直列接続体の並列接続体(フルブリッジ回路)と、トランス14とを備えて構成され、高圧バッテリ10の電圧を降圧して出力する絶縁型コンバータである。ここで、本実施形態では、上記スイッチング素子SW1〜SW4として、NチャネルMOSトランジスタを想定している。
【0034】
高電位側のスイッチング素子SW1,SW2の入力端子(ドレイン)は、高圧バッテリ10の正極側に接続され、低電位側のスイッチング素子SW3,SW4の出力端子(ソース)は、高圧バッテリ10の負極側に接続されている。なお、スイッチング素子SW1〜SW4の入出力端子間のそれぞれには、図示しないフリーホイールダイオードが接続されている。
【0035】
一対のスイッチング素子SW1,SW3の接続点、及び一対のスイッチング素子SW2,SW4の接続点のそれぞれには、トランス14の1次側コイル14aの両端のそれぞれが接続されている。
【0036】
トランス14の2次側コイル14bの両端のそれぞれは、ダイオードRD1,RD2のアノード側に接続され、これらダイオードRD1,RD2のカソード側は短絡されている。そして、ダイオードRD1,RD2は、リアクトル16a及びコンデンサ16bからなる平滑回路16(LCフィルタ)に接続されている。
【0037】
上記高圧バッテリ10やマスタDCDC12aの1次側は、車載高圧システムを構成し、マスタDCDC12aの図示しないケースに接続されたグランドラインGLから絶縁されている。これに対し、マスタDCDC12aの2次側は、グランドラインGLを基準として動作する車載低圧システムを構成する。
【0038】
このため、本実施形態では、トランス14の2次側コイル14bの中点タップmtがグランドラインGLに接続されている。こうした構成によれば、ダイオードRD1,RD2は、高電位側のスイッチング素子SW1及び低電位側のスイッチング素子SW4がオン状態とされるか、高電位側のスイッチング素子SW2及び低電位側のスイッチング素子SW3がオン状態とされるかに応じて、2次側コイル14bの両端の電圧の「1/2」の電圧を交互に出力することとなる。なお、中点タップmtとは、トランス14の2次側コイル14bの中央(両端子から等距離にある点である中点)に接続された端子のことである。
【0039】
マスタDCDC12aの1次側には、上記フルブリッジ回路の入力電圧を検出する入力側電圧センサ18、及びトランス14の1次側コイル14aを流れる電流を検出する入力側電流センサ20が備えられている。また、マスタDCDC12aの2次側には、マスタDCDC12aの出力電圧(平滑回路16からの出力電圧)を検出する出力側電圧センサ22が備えられている。
【0040】
なお、本実施形態では、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bは、構造や性能に関して互いに同一であるものとする。このため、図1では、スレーブDCDC12bの内部構造の図示を省略している。
【0041】
また、本実施形態において、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bを並列接続する構成を採用するのは、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流の最大値を大きくするためである。つまり、本実施形態にかかる電源システムの適用対象が大型車両であり、後述する車載負荷28に供給すべき電流が大きくなる傾向にある。
【0042】
マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの並列接続体の一対の出力側は、低圧バッテリ24、車両ECU26、及び車載負荷28(車両ECU26を除く)の並列接続体に接続されている。低圧バッテリ24は、低圧システムの一部を構成し、所定の低電圧(例えば24V)を出力する蓄電池である。本実施形態では、低圧バッテリ24として、鉛蓄電池を用いており、より具体的には、12Vの端子電圧を有する一対の鉛蓄電池の直列接続体を用いている。
【0043】
上記車載負荷28は、車室内空調用の空調装置(より詳しくは、空調装置に備えられる送風用ファンや暖房用のヒータ等)や、ヘッドライト、車室内の照明、更にはエンジン駆動用のアクチュエータ(燃料噴射弁等)を含むものである。
【0044】
車両ECU26は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに備えられる制御回路30よりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求を最上流とした場合の上流側)の制御回路を備える制御装置であり、低圧バッテリ24を電力供給源としつつ、車両の制御を統括する機能を有する。
【0045】
制御回路30は、低圧バッテリ24を電力供給源としつつ、同バッテリや、車両ECU26、車載負荷28に電力を供給すべくスイッチング回路34を介してスイッチング素子SW1〜SW4を操作する。
【0046】
詳しくは、制御回路30は、出力側電圧センサ22によって検出されるマスタDCDC12aの出力電圧を目標電圧にフィードバック制御(電圧フィードバック制御)するための操作量(Duty)を算出するとともに、入力側電流センサ20の出力値から算出されるマスタDCDC12aの出力電流がその規定値(マスタ制限値)に達した際に、定電流制御を行うための操作量、及び入力側電圧センサ18によって検出される電圧を上記目標電圧とするための操作量等を算出する。そして、算出されたこれら操作量のうちの小さい方に基づき、スイッチング素子SW1〜SW4を操作する。ここで、マスタ制限値Iaは、DCDCコンバータの信頼性を維持する観点から設定され、具体的には例えば、DCDCコンバータの積算動作時間が規定時間(車両稼動時間)となるまでDCDCコンバータの信頼性を維持可能な電流値(平均電流)に設定すればよい。
【0047】
こうした構成によれば、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを超えるまでは電圧フィードバック制御が行われる。一方、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを超える場合には、定電流制御によってマスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaに制御されるため、マスタDCDC12aの出力電圧が低下される。すなわち、マスタDCDC12aは、定電流垂下特性を有する。
【0048】
ちなみに、スレーブDCDC12bの制御回路30は、マスタDCDC12aの制御回路30の上述した処理と同様の処理を行う。また、上記処理において、出力側電圧センサ22の検出値に代えて、低圧バッテリ24や車載負荷28の両端の電圧を検出するセンサを備え、このセンサの検出値を用いてもよい。
【0049】
さらに、高圧システムと、低圧システムとは、図示しない絶縁素子36(例えば、光絶縁素子としてのフォトカプラや、磁気絶縁素子としてのパルストランス)によって絶縁されており、スイッチング素子SW1〜SW4の操作信号は、絶縁素子36を介して高圧システムのスイッチング回路34に入力される。また、入力側電圧センサ18や入力側電流センサ20の検出値は、絶縁素子36を介して低圧システムの制御回路30に入力される。
【0050】
次に、本実施形態にかかるDCDCコンバータの制御のうち目標電圧等の設定について説明する。
【0051】
本実施形態では、マスタDCDC12aの目標電圧Va(例えば28V)をスレーブDCDC12bの目標電圧Vb(例えば27V)よりも高く設定する。ここで、スレーブDCDC12bの目標電圧Vbは、例えば、低圧バッテリ24の使用電圧範囲の上限値よりもやや高い値とすればよい。
【0052】
ここで、マスタDCDC12aの目標電圧VaとスレーブDCDC12bの目標電圧Vbとを相違させるのは、DCDCコンバータの体格及びコストの増大を回避するためである。つまり、DCDCコンバータの信頼性を向上させる上では、例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれで、車載負荷28や、車両ECU26、更には低圧バッテリ24に供給すべき電流(以下、車両側の要求電流)を均等に負担させるようにこれらDCDCコンバータを動作させることが望ましい。こうした観点から、例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの目標電圧を等しく設定することも考えられる。
【0053】
しかしながら、この場合、スイッチング回路34からスイッチング素子SW1〜SW4のそれぞれへの信号伝達速度の相違等に起因するDCDCコンバータの個体差によって出力電圧にばらつきが生じること、及び並列接続された一対のDCDCコンバータのうち出力電圧の高いDCDCコンバータから優先的に車載負荷28等に電流が出力されることに起因して、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうちいずれかの動作頻度が高くなったり、いずれが動作するのかを把握できなかったりすることが懸念される。この場合、DCDCコンバータを設計する上でDCDCコンバータの信頼性を保証する電流値(例えば定格電流)を大きくすることとなる。そして、この場合、DCDCコンバータ内のトランス14やスイッチング素子SW1〜SW4等を大電流に対応したものとする要求が生じ、素子を新規開発することとなり、ひいてはDCDCコンバータのコスト及び体格が増大するおそれがある。
【0054】
こうした問題を回避すべく、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの目標電圧を互いに相違させることで、車両側の要求電流に応じていずれが車両側に電流を出力するかを明確にし、これにより体格及びコストの増大を回避する。
【0055】
ここで、本実施形態では、スレーブDCDC12bに対応する上記規定値(以下、スレーブ制限値Ib)をスレーブDCDC12bの出力可能な最大電流(例えば80A)に設定し、マスタ制限値Iaをスレーブ制限値Ibよりも小さい値(例えば35A)に設定している。この設定は、電源システムの信頼性の向上を図るための設定である。つまり、車両側の要求電流が大きくなる場合には、マスタDCDC12aとともに早期にスレーブDCDC12bにも上記要求電流の一部を負担させることで、車両側の要求電流をマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに極力均等に負担させる。
【0056】
ちなみに、スレーブ制限値Ibに対してマスタ制限値Iaが小さいほど、マスタDCDC12aに流れる電流が小さくなること、及び車両側の要求電流が大きくなる場合に早期にスレーブDCDC12bに上記要求電流の一部を負担させることができることから、マスタDCDC12aの寿命の短縮を回避することが可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態では、スレーブDCDC12bの制御回路30においてスレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超えると判断された場合、車両ECU26を介してマスタDCDC12aの制御回路30に過電流制限信号を出力する。そして、マスタDCDC12aの制御回路30において、過電流制限信号が入力されたと判断された場合、マスタ制限値Iaを増大させる処理を行う。本実施形態では、マスタ制限値IaをマスタDCDC12aの出力可能な最大電流(例えば80A)Icとする処理を行う。これは、車両側の要求電流が大きくなる場合に、電源システムによって車載負荷28等に供給可能な電流の最大値を増大させるための処理である。
【0058】
なお、本実施形態では、マスタDCDC12a,スレーブDCDC12bの備える送受信可能なインターフェース(ピン端子Ta,Tb)を介して過電流制限信号を伝達させる。ここで、本実施形態にかかる電源システムは、従来のDCDCコンバータを流用しており、DCDCコンバータの備える全てのピン端子よりも過電流制限信号の伝達用以外の用途に用いられるピン端子のほうが少ない。このため、全てのピン端子のうち未使用のピン端子Ta,Tbを過電流制限信号の伝達に用いている。
【0059】
続いて、図2を用いて、制御回路30の上述した処理態様についてさらに詳しく説明する。
【0060】
図中(a)にて示すように、マスタDCDC12aの出力電流(車両側の要求電流)がマスタ制限値Iaを超えるまでは、定電流制御によってマスタDCDC12aのみから電流が出力される。そして、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを超えると、定電流制御によってマスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaに固定されるため、マスタDCDC12aの出力電圧が低下される。
【0061】
その後、図中(b)にて示すように、マスタDCDC12aの出力電圧がスレーブDCDC12bの目標電圧Vbまで低下されてからマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流(車両側の要求電流)がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの合計値(115A)を超えるまで、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaで固定されて且つ、車両側の要求電流のうちマスタDCDC12aの負担分以外の電流がスレーブDCDC12bによって負担される。なお、この間、スレーブDCDC12bの電圧フィードバック制御がなされる。
【0062】
そして、スレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超える(上記合計出力電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの合計値を超える)場合、定電流制御によってスレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibに固定されるため、スレーブDCDC12bの出力電圧が低下される。これと同時に、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aに対して過電流制限信号が出力される。
【0063】
マスタDCDC12aに過電流制限信号が入力されると、マスタDCDC12aは、マスタ制限値IaをIc(80A)に増大させる。これにより、マスタDCDC12aについて定電流制御から電圧フィードバック制御に短時間切り替えられることに起因して、車両側の要求電流のうちマスタ制限値IcがマスタDCDC12aによって負担され、残りがスレーブDCDC12bによって負担される。すなわち、マスタDCDC12aの出力電流とスレーブDCDC12bの出力電流とが反転される。
【0064】
なお、その後、車両側の要求電流が漸増して合計出力電流がマスタ制限値Ic及びスレーブ制限値Ibの合計値(160A)を超える場合、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流が上記合計値で固定される。このため、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの定電流制御によってこれらDCDCコンバータ12a,12bの出力電圧が低下される。
【0065】
また、本実施形態では、車両ECU26において上記合計出力電流がマスタ制限値Ic及びスレーブ制限値Ibの合計値を超えると判断された場合、車両側の要求電流を制限したり、車両側の要求電流が大きい旨をドライバに通知したりする処理を車両ECU26によって行う。上記要求電流を制限する処理について説明すると、具体的には、この処理は、例えば、動作の優先順位が低い車載負荷28の消費電力を低下させたり、その消費電力の増大を禁止したりする処理とすればよい。
【0066】
さらに、本実施形態では、車両側の要求電流が増大前のマスタ制限値Iaよりも小さい閾値(例えば25A)を下回ると判断された場合、マスタ制限値をIaからIcに戻す処理が行われる。ここで、上記閾値をIaよりも小さい値に設定するのは、車両側の要求電流がIa近傍で変動することに起因して、マスタ制限値の切替が頻繁になされるのを回避するためである。
【0067】
続いて、図3を用いて、制御回路30の上述した処理態様の一例を示す。詳しくは、図3(a)は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの並列接続体の出力電圧の推移を示し、図3(b)は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流の推移を示し、図3(c)は、マスタDCDC12a単独の出力電流の推移を示し、図3(d)は、スレーブDCDC12b単独の出力電流の推移を示し、図3(e)は、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aへの過電流制限信号の出力状態の推移を示す。なお、図3では、時間経過とともに車両側の要求電流が漸増する状況を示している。
【0068】
図示されるように、合計出力電流がマスタ制限値Iaに到達する時刻t1までは、マスタDCDC12aのみから車両側の要求電流に応じた電流が出力される。そして、時刻t1において、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを超えることで、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaで固定されるため、マスタDCDC12aの出力電圧が低下される。
【0069】
その後、マスタDCDC12aの出力電圧が目標電圧Vbまで低下される時刻t2において、スレーブDCDC12bから電流の出力が開始される。そして、スレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超える(合計出力電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの合計値を超える)時刻t3において、スレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibで固定されるため、スレーブDCDC12bの出力電圧が低下される。これとともに、スレーブDCDC12bから過電流制限信号が出力される。
【0070】
過電流制限信号がマスタDCDC12a側に入力されると、マスタ制限値IaをIcに増大させる処理が行われる。これにより、その後時刻t4において、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Icとなる。なお、その後、車両側の要求電流が漸増し、合計出力電流がマスタ制限値Ic及びスレーブ制限値Ibの合計値(160A)を超える場合、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの出力電流が固定されるため、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの出力電圧が低下される。
【0071】
なお、過電流制限信号を伝達するための信号線に異常(例えば、断線やショート)が生じたり、スレーブDCDC12b側の出力断線に起因してスレーブDCDC12bが過電流制限信号を出力できなかったりする等、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aに過電流制限信号を伝達できなくなる異常が生じ得る。この場合、マスタ制限値がIaのままとされることから、車両側の要求電流の増大によって、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの出力電圧はスレーブDCDC12bの目標電圧Vbよりも低くなる。すなわち、これらDCDCコンバータ12a,12bの出力電圧が大きく低下するおそれがある。
【0072】
ここで、本実施形態では、マスタDCDC12aの出力電圧が、スレーブDCDC12bの目標電圧Vbよりも低い所定の電圧Vcとなる場合、マスタDCDC12a自身においてマスタ制限値をIaからIcに増大させる処理(電圧低下抑制処理)を行う。これにより、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの出力電圧を上記所定の電圧Vcに維持することができる。すなわち、これらDCDCコンバータ12a,12bの出力電圧が大きく低下することを好適に回避することができる。
【0073】
なお、上記態様にてマスタ制限値が増大された後、マスタDCDC12aの出力電圧がスレーブDCDC12bの目標電圧Vbとなる場合、増大されたマスタ制限値をIcからIaに復帰させればよい。
【0074】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0075】
(1)マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの並列接続体によって車載負荷28等に電力を供給する電源システムにおいて、スレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超える場合、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aに対して過電流制限信号を出力した。そして、マスタDCDC12aにおいて過電流制限信号が入力された場合、マスタ制限値をIaからIcに増大させる処理を行った。これにより、車載負荷28等に供給可能な電流の最大値を増大させつつ、電源システムの信頼性を好適に向上させることができる。
【0076】
さらに、マスタ制限値の増大等に関する制御ロジックの変更と、ピン端子Ta,Tbを用いた簡素な情報伝達手段の設置とによって電源システムを設計することで、車載負荷28等への電流供給能力が高くて且つ信頼性の高い電源システムを従来のDCDCコンバータを流用して適切に実現することもできる。
【0077】
(2)マスタ制限値IaをマスタDCDC12aの上記平均電流に設定して且つ、マスタ制限値Iaをスレーブ制限値Ibよりも小さく設定した。このため、極力早期にスレーブDCDC12bに車両側の要求電流の一部を負担させることができ、車両側の要求電流が過度に大きくならない期間においてマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに車両側の要求電流を極力均等に負担させることができる。これにより、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれを上記平均電流以下で極力動作させることができ、ひいては電源システムの信頼性をより好適に向上させることができる。
【0078】
(3)マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流がマスタ制限値Ic及びスレーブ制限値Ibの合計値を超えると車両ECU26によって判断された場合、車両ECU26によって車両側の要求電流を制限する処理等を行った。これにより、例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの出力電流が過度に大きくなる状況が継続されることを回避したり、ドライバにその後の対応を適切にとらせたりすることができる。
【0079】
(4)マスタDCDC12aの出力電圧が上記所定の電圧Vcとなる場合、マスタDCDC12a自身においてマスタ制限値をIaからIcに増大させる電圧低下抑制処理を行った。これにより、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの出力電圧が大きく低下することを好適に回避することができる。
【0080】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、マスタ制限値Iaをスレーブ制限値Ibよりも小さく設定したがこれに限らず、例えば、スレーブ制限値Ibよりも大きく設定してもよい。これは、例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bが互いに相違するDCDCコンバータを備える電源システムにおいて、マスタDCDC12aの上記平均電流がスレーブDCDC12bの上記平均電流よりも大きい場合に採用され得る構成である。
【0082】
また、例えば、マスタ制限値Iaとスレーブ制限値Ibとを同一の値に設定してもよい。ここでは、上記制限値をマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの双方を上記平均電流(例えば35A)に設定すればよい。この場合、マスタ制限値Iaを増大させる手法としては、例えば、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを一旦超えた後、スレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超える場合にマスタ制限値IaをIc(例えば80A)に増大させ、その後、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Icを超える場合、スレーブ制限値Ibを増大させる(例えば80Aにする)処理を行えばよい。
【0083】
・並列接続されるDCDCコンバータは、2台に限らず、3台以上であってもよい。この場合、複数のDCDCコンバータのうち1つをマスタDCDCとし、それ以外をスレーブDCDCとすればよい。
【0084】
ここで、上記構成における上記規定値の増大手法について説明すると、例えば、スレーブDCDCのうち目標電圧が最も低いスレーブDCDCの出力電流がこのスレーブDCDCに対応する規定値を超える場合、全てのスレーブDCDCのうち目標電圧が最も低いスレーブDCDC以外のスレーブDCDCの規定値を順次増大させた後、マスタDCDCに対応する規定値を増大させてもよい。
【0085】
より具体的には、例えば、スレーブDCDCのうち目標電圧が最も低いスレーブDCDCの出力電流がこのスレーブDCDCに対応する規定値を超える場合、その後、目標電圧が最も低いスレーブDCDC以外のスレーブDCDCについて目標電圧の低い方から順に、出力電流が規定値を超えるときに規定値を増大させる。そして、目標電圧が最も低いスレーブDCDC以外のスレーブDCDCに対応する規定値を全て増大させた後、マスタDCDCに対応する規定値を増大させる。なお、上記構成において、DCDCコンバータの出力電流がこのDCDCコンバータに対応する規定値を超える場合、このDCDCコンバータの目標電圧よりも次に目標電圧の高いDCDCコンバータに対して過電流制限信号が出力されることとなる。
【0086】
・上記実施形態では、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの目標電圧を相違させたがこれに限らず、これら目標電圧同士を同一としてもよい。この場合におけるマスタ制限値Iaやスレーブ制限値Ibの増大手法の一例について、以下説明する。
【0087】
ここでは、まず、マスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ib同士を同一の平均電流(例えば35A)に設定し、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに、これらDCDCコンバータ間で双方向通信可能な機能を持たせる。
【0088】
ここで、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの目標電圧同士が同一とされることから、上述したように、これらDCDCコンバータの出力電圧のばらつき等によってこれらDCDCコンバータのいずれが先に動作されるか把握できない。このため、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうちいずれかにおいて、自身の出力電流が自身に対応する制限値を超える場合、出力電流が制限値を超えるDCDCコンバータから他方のDCDCコンバータに対して過電流制限信号を出力する。そして、過電流制限信号が入力されたDCDCコンバータにおいて自身に対応する制限値を増大させる(35A→80A)。
【0089】
その後、制限値が増大されたDCDCコンバータからの電流の出力が開始される。そして、その後、要求電流の更なる増大により、制限値が増大されたDCDCコンバータの出力電流が制限値(80A)を超える場合、他方のDCDCコンバータに対して過電流制限信号を出力する。過電流制限信号が入力されたDCDCコンバータにおいて、自身に対応する制限値を増大させる(35A→80A)。
【0090】
こうした構成によれば、要求電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値(70A)を超えない限り、これらDCDCコンバータの出力電流を平均電流以下とする一方、要求電流が上記加算値を超える場合には、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうち少なくとも1つに対応する制限値を増大させる。これにより、要求電流の増大に適切に対応しつつ、電源システムの信頼性の向上を図ることができる。
【0091】
・並列接続されるDCDCコンバータが3台以上の電源システムにおいて、過電流制限信号を伝達する信号線の断線やショート等、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aに過電流制限信号を伝達できなくなる異常時の上記電圧低下抑制処理手法について説明する。ここでは、複数のDCDCコンバータのうち1つをマスタDCDCとし、それ以外をスレーブDCDCとする。そして、スレーブDCDCのうち目標電圧の最も低いものを最終スレーブとし、残余を中間スレーブとする。この場合、マスタDCDC及び中間スレーブのうち少なくとも1つにおいて自身の出力電圧が規定電圧(最終スレーブの目標電圧よりも低い電圧)を下回ることが把握される場合、マスタDCDC及び中間スレーブのうち自身の出力電圧が上記規定電圧を下回ることを把握したDCDCコンバータにおいて、自身に対応する制限値を増大させればよい。
【0092】
・過電流制限信号の伝達手法としては、上記実施形態に例示した手法に限らない。例えば、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aにピン端子Ta,Tbを介して過電流制限信号を直接伝達する手法を採用してもよい。この場合、過電流制限信号が入力された旨をマスタDCDC12aから車両ECU26に出力するのが望ましい。
【0093】
・DCDCコンバータに備えられるスイッチング素子としては、MOSトランジスタに限らず、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタであってもよい。
【0094】
・DCDCコンバータとしては、降圧コンバータに限らず、昇圧コンバータであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…高圧バッテリ、12a…マスタDCDC、12b…スレーブDCDC、20…入力側電流センサ、22…出力側電圧センサ、24…低圧バッテリ、26…車両ECU、28…車載負荷、30…制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数並列接続されたDCDCコンバータによって所定の電力供給対象に電力を供給すべく前記DCDCコンバータを操作する操作手段を備える電源システムにおいて、
前記操作手段は、前記DCDCコンバータの出力電圧を目標電圧に制御すべく前記DCDCコンバータを操作する電圧制御手段と、
前記DCDCコンバータの出力電流が規定値を超える場合、前記出力電流を前記規定値で制限すべく前記DCDCコンバータを操作する電流制限手段とを備え、
複数の前記DCDCコンバータのうち少なくとも1つの出力電流が前記規定値を超える場合、複数の前記DCDCコンバータのうち少なくとも1つに対応する前記規定値を増大させる増大手段を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記目標電圧は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれで互いに相違し、
複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も高いものをマスタとし、残余をスレーブとし、
前記増大手段は、前記スレーブのうち前記目標電圧が最も低いスレーブの出力電流が該目標電圧の最も低いスレーブに対応する前記規定値を超える場合、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つに対応する前記規定値を増大させることを特徴とする請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記目標電圧は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれで互いに相違し、
複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も高いものをマスタとし、残余をスレーブとし、
前記増大手段は、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つの出力電圧が前記目標電圧の最も低いスレーブの出力電圧よりも低くなる場合、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧の最も低いスレーブ以外のDCDCコンバータの少なくとも1つに対応する前記規定値を増大させることを特徴とする請求項1又は2記載の電源システム。
【請求項4】
前記マスタに対応する前記規定値は、前記目標電圧の最も低いスレーブに対応する前記規定値よりも小さく設定されることを特徴とする請求項2又は3記載の電源システム。
【請求項5】
前記操作手段は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれに備えられて且つ、自身の備えられる前記DCDCコンバータを操作し、
前記増大手段は、複数の前記DCDCコンバータのうち前記目標電圧が最も低いDCDCコンバータ以外のDCDCコンバータに備えられ、
複数の前記DCDCコンバータのそれぞれには、インターフェースが備えられ、
前記目標電圧が最も低いDCDCコンバータの出力電流が該最も低いDCDCコンバータに対応する前記規定値を超える場合、その旨の情報を前記最も低いDCDCコンバータに対応する前記インターフェースを介して外部に出力する手段を更に備え、
前記増大手段は、自身の備えられる前記DCDCコンバータに対応する前記インターフェースを介して前記その旨の情報が入力されることに基づき、自身の備えられる前記DCDCコンバータに対応する前記規定値を増大させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項6】
前記操作手段は、複数の前記DCDCコンバータのそれぞれに備えられて且つ、自身の備えられる前記DCDCコンバータを操作し、
前記電源システム及び前記電力供給対象は、車両に搭載され、
前記車両には、前記操作手段よりも上位であって且つ前記車両の制御を統括する手段が備えられ、
前記DCDCコンバータの出力電流が前記規定値を超える場合、その旨を前記統括する手段に通知する通知手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−90517(P2013−90517A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231322(P2011−231322)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】