説明

電源保護装置、それを備えた冷凍空調装置、洗濯機及び電気掃除機、並びに、電源保護方法

【課題】現行のシステムに対して必要最小限な装置を付加するだけで、装置の信頼性を低下させることなくコンデンサの劣化検出や運転保護を行える装置を提供する。
【解決手段】交流電源1は、整流部2に接続されており、その出力端には、平滑部3が、並列に接続されている。整流部2と平滑部3の間には、電流検出部11が設けられている。平滑部3の一方の端から、負荷13、電源検出部14の順で接続されている。制御部9は、コンデンサ3a又は3bのコンデンサ容量を推定するコンデンサ容量推定手段101を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧の脈流を平滑するコンデンサの容量抜けによる劣化を検出し、電源保護機能を付加した電源保護装置、それを備えた冷凍空調装置、洗濯機及び電気掃除機、並びに、電源保護方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電機器等の電動機駆動等に利用される電源保護装置に関して、製品安全上及び信頼性向上の観点から、平滑コンデンサの劣化検出が高精度に行われる手法が求められてきている。
従来、直流電圧の脈流を平滑する平滑コンデンサの劣化検出は、簡易な劣化検出回路を付加することで行われていた。例えば、脈流を含む直流電圧が印加された平滑コンデンサに接続された負荷の負荷電流と、平滑コンデンサの両端の直流電圧のリップル(MIN値及びMAX値)を検出し、平滑コンデンサの劣化を検出する回路等がある(例えば、特許文献1参照)。また、充電時間の上限値及び下限値を予め記憶しておき、実際に充電部の充電時間を測定し記憶値と比較することで、駆動電源の故障を検出する故障検出装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−240450号公報(第5、6頁、図1)
【特許文献2】WO2005/115901号公報(第7頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の直流電圧の脈流を平滑する平滑コンデンサの劣化検出方法は、上記のような構成で実現されるので、外来ノイズに対する信頼性の確保が難しいという問題があった。
また、電圧や電流の瞬時値を利用することが多いため、高精度な検出が要求される装置においては、その性能確保が困難であるという問題もあった。
そして、負荷変動や電源変動に対して、検出ばらつきの発生を抑制するのが難しいという問題もあった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、現行のシステムに対して必要最小限な装置を付加するだけで、装置の信頼性を低下させることなくコンデンサの劣化検出や電源保護を可能とする装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電源保護装置は、交流電源を全波整流する整流部と、コンデンサを有し、前記整流部によって整流された電圧を平滑する平滑部と、前記平滑部に接続される負荷と、前記平滑部に流れる電流を検出する電流検出部と、前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部と、前記検出された電流及び電圧を取得する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電圧検出部で検出される電圧及び前記電流検出部で検出される電流に基づいて、前記コンデンサのコンデンサ容量を推定するコンデンサ容量推定手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電源保護装置は、製品出荷時又は使用初期におけるコンデンサのコンデンサ容量を記憶させておくことにより、使用環境に左右されずに、信頼性高く平滑コンデンサの経年劣化の異常判定が可能となる。また、コンデンサに充電される電荷を、電流検出部によって検出される検出電流の積分によって求めることにより、瞬時値を扱う方法に比べて外乱やノイズに強くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る電源保護装置及び電源保護方法について図面を参照にしながら説明する。
図1は、実施の形態1に係る電源保護装置の構成図の一例である。交流電源1は、その交流電圧を全波整流する整流部2に接続されている。その整流部2は、整流ダイオード2a〜2dで構成されており、その出力端には、直列に接続された2つのコンデンサ3a及び3bで構成される平滑部3が、並列に接続されている。整流部2の一部を構成する整流ダイオード2cと2dの接続点と、コンデンサ3aと3bの接続点の間には、電流検出部11が設けられている。また、電圧検出部12は、電圧検出手段12a及び12bで構成されている。その電圧検出手段12aは、コンデンサ3aと3bの接続点に接続されており、電圧検出手段12bは、コンデンサ3aが接続されている直流母線41aに接続されている。平滑部3の一方の端から、負荷13、電流検出部14の順で接続され、電流検出部14から直流母線41bを介して平滑部3の他端に接続されている。また、交流電源1の両端から、並列にゼロクロス検出手段16が接続されており、そのゼロクロス検出手段16は、制御部9に接続されている。その他、電流検出部11及び14、並びに、電圧検出手段12a及び12bも、制御部9に接続されており、その制御部9は負荷13に接続されている。また、制御部9は、コンデンサ3a又は3bのコンデンサ容量を推定するコンデンサ容量推定手段101、その異常の有無を判定する異常判定手段102、そのコンデンサ容量の時間変化を予測するコンデンサ容量予測手段103、及び、その交換時期を予測するコンデンサ交換時期予測手段104を有する。これらの動作については、図2で示される異常判定の動作フローにおいて後述する。また、記憶部15は、データの送受信を行うため制御部9に接続されている。なお、記憶部15は、制御部9内に内蔵される場合もある。ここで、電流検出部11及び14は、電流検出素子及びその両端電圧出力をCPU等に取り込み電流換算できるようにするA/D変換器及び増幅器等で構成されている。また、電圧検出部12を構成する電圧検出手段12a及び12bは、直流母線41a及びコンデンサ3bの電圧をCPU等に取り込み電圧換算出来るようにする抵抗、コンデンサ等から形成される分圧回路、A/D変換器及び増幅器等で構成される。そして、記憶部15は、EEPROM等の記憶手段で構成される。
制御部9は、電流検出部14によって検出される負荷電流をモニタし、負荷13に定電流が流れるようにフィードバック制御を実施する。この際、制御部9は、電流検出部11によって検出される電流値、及び、電圧検出手段12a及び12bによって検出される電圧値に基づいて、コンデンサ3aまたは3bのコンデンサ容量を推定して、その結果に基づいて電源回路の保護を行う。このコンデンサ容量の推定に関しては後述する。
【0009】
図2は、実施の形態1に係る電源保護装置において、その異常を判定するための動作フローの一例である。この動作フローは、負荷13への定電流の印加を開始するステップS101と、コンデンサ容量を推定する対象となるコンデンサを特定するステップS102と、電流検出部11に流れる電流を積分し前記の特定されたコンデンサに蓄えられる電荷を求めるステップS103と、そのコンデンサの両端電圧を検出するステップS111と、そのコンデンサのコンデンサ容量を推定するステップS104と、そのコンデンサの容量抜け具合を把握し異常判定するステップS105と、負荷13への定電流の印加を終了するステップS106から構成され、実施の形態1に係る電源保護装置における異常判定が行われる。
【0010】
以下に、図2において上記で示した各ステップの動作の詳細について、図3〜図7を参照しながら説明する。
【0011】
まず、ステップS101において、制御部9によって発せられる信号SIGがONであるとき、負荷13へ定電流が供給される。具体的には、制御部9は、信号SIGをONにした後に、所定時間が経過した後、フィードバック制御等によって負荷13に定電流が流れるように制御する。負荷13としてモータ31及びインバータ24(後述の図8参照)を用いて定電流を流す具体的な実施例については、実施の形態2で述べる。
【0012】
ステップS102において、制御部9は、電流検出部11によって検出される検出電流Iaをモニタして、平滑部3を構成するコンデンサ3a及び3bの中からコンデンサ容量を推定する対象となるコンデンサを特定する。
図3(a)は、交流電源1の電源電圧の波形図であり、図3(b)は、電流検出部11の検出電流Iaの波形図の一例であり、そして、図3(c)は、コンデンサ3a及び3bの推定コンデンサ容量C1及びC2の波形図の一例である。図3(a)で示されるような交流電源1による交流電圧が印加され、負荷13に対して定電流が印加されている状態に、図3(b)で示されるような検出電流Iaが検出される。ここで、区間1で観測される電流方向を正方向としている。
図4(a)は、図3(a)で示される交流電源1の電源電圧の区間1におけるコンデンサ3aへの充電経路を示した図であり、図4(b)は、その電源電圧の区間2におけるコンデンサ3bへの充電経路を示した図である。図4(a)において、交流電源1が正(図4(a)中では電流方向上向き)のとき、交流電源1、整流ダイオード2a、コンデンサ3a、電流検出部11、交流電源1の順で電流が流れ、区間1における電流経路51が形成される。また、図4(b)において、交流電源1が負(図4(b)中では電流方向下向き)のとき、交流電源1、電流検出部11、コンデンサ3b、整流ダイオード2b、交流電源1の順で電流が流れ、区間2における電流経路52が形成される。すなわち、区間1と2において、電流経路が異なるため、電流検出部11によって検出される検出電流Iaも異なる。従って、制御部9は、電流検出部11によって検出される検出電流Iaをモニタすることにより、各区間においての電流経路に含まれるコンデンサを特定することが可能となる。つまり、電流検出部11によって、図4(a)で示される経路における検出電流Iaが検出されれば、コンデンサ3aに電流が流れていると特定できる。また、電流検出部11によって、図4(b)で示される経路における検出電流Iaが検出されれば、コンデンサ3bに電流が流れていると特定できる。
このようにして、ステップS102において、コンデンサ容量を推定する対象となるコンデンサを特定することができる。
なお、上記のように、検出される検出電流Iaの方向又は極性によりコンデンサの特定を行うこともできるが、ゼロクロス検出手段16が交流電源1の電源電圧のゼロクロスを検出(電源電圧の立ち上がり又は立ち下がりを検出)することによって、コンデンサの特定を行っても良い。
また、制御部9が、コンデンサの特定を、上記のゼロクロス検出手段16によって検出される電源電圧のゼロクロスが検出されることによって実施するのではなく、電流検出部11によって検出される検出電流Iaによって実施するのであれば、ゼロクロス検出手段16は設けなくてもよいのは言うまでもない。
また、コンデンサの特定を、上記のような電流検出部11を用いて実施する方法と、ゼロクロス検出手段16を用いて実施する方法とを併用すると、ノイズに強いシステムを構築することが可能である。
【0013】
上記のようにステップS102においてコンデンサを特定した後、ステップS111において、電圧検出部12は、その特定されたコンデンサの両端電圧を検出する。例えば、図3(a)の区間1の状態にあるとすると、コンデンサ3aの電圧検出を行う場合、電圧検出手段12bによって求められる直流母線41aの母線電圧Vdc(t)及び電圧検出手段12aによって求められるコンデンサ3bの両端電圧V2(t)から、式(1)のようにコンデンサ3aの両端電圧V1(t)が求められる。また、図3(a)の区間2の状態にあるとすると、電圧検出手段12aによって、コンデンサ3bの両端電圧V2(t)が検出される。以下では、検出電流Iaの積算値を利用して各コンデンサ容量を求める。
【0014】
【数1】

【0015】
その際、各コンデンサの両端電圧の瞬時値を利用しても良いが、通常はフィルタを通過した値を利用する。図5は、実施の形態1に係る電源保護装置における電圧検出部12の出力に対してフィルターを通過させるブロックの一例を示した図である。上記で求めたV1(t)及びV2(t)が、デジタルフィルタ等であるローパスフィルタ21a及び21bに通されることによってフィルタ出力V1及びV2が求められる。フィルタを用いることで、外乱ノイズを受けにくく、電圧検出の信頼性を高くできる。
なお、コンデンサ3a及び3bの両端電圧V1(t)及びV2(t)は、図1で示されるような構成によって検出されるものに限られるものではなく、他の構成によって検出されるものとしてもよい。
【0016】
ステップS102においてコンデンサを特定した後、ステップS111が実施されるのと同じタイミングでステップS103が実施される。ステップS103では、ステップS102において特定されたコンデンサに流れ込む電荷を求める。ここで、負荷13に定電流が印加されて安定を保っている場合を考える。図3(a)における区間1のスタート時点を0[s]とすると、そこから任意の時間t[s]経過時のコンデンサ3aの電荷、コンデンサ容量、両端電圧を各々q1(t)、C1、V1(t)とおく。ここで時間tにおける各関係式は式(2)で示される。同様に、コンデンサ3bの電荷、コンデンサ容量、両端電圧を各々q2(t)、C2、V2(t)とする。ここで時間tにおける各関係式は式(3)で示される。
【0017】
【数2】

【数3】

【0018】
また、区間1において電流検出部11に流れる検出電流Ia(t)とコンデンサ3aの電荷q1(t)の関係は式(4)で示される。そして、区間2において電流検出部11に流れる検出電流Ia(t)とコンデンサ3bの電荷q2(t)の関係は式(5)で示される。
【0019】
【数4】

【数5】

【0020】
交流電源1の電源周期をT[s]とし、式(4)の両辺を積分すると、式(6)で表される。同様に、式(5)の両辺を積分すると、式(7)で表される。
【0021】
【数6】

【数7】

【0022】
実際上は、式(6)や式(7)で表される積分を、離散値を用いて実現しても良い。電流検出部11で検出された検出電流Iaは、図1で示される制御部9によって、離散値として取得される。連続値の離散化は、サンプルホールド回路等を用いて実現される。
図6は、電流検出部11の検出電流Iaのサンプルホールド回路の一例を示した図である。図6で示されるサンプルホールド回路は、アナログスイッチ61とホールド用コンデンサ62により構成され、アナログスイッチ61がONにされて入力信号をホールド用コンデンサ62に充電した後、アナログスイッチ61がOFFにされて充電電圧が保持される。
図7は、電流検出部11の検出電流Iaの積算値(連続値及び離散値)の一例を示した図である。図7(a)に連続値の場合の例を、図7(b)に離散値の場合の例が示されている。図7(b)において、サンプリング周期をtc[s]としている。
図3(a)における区間1及び区間2について、制御部9は、上記の検出電流Iaの離散値にサンプリング周期tcが乗じられた値を積算することにより、各区間の電流波形で囲まれる面積を算出することにより各コンデンサに充電された電荷を求める。従って、検出電流Iaの離散値が用いられた場合でも、各コンデンサに充電された電荷量の算出が可能となる。
以上のように、交流電源1の電源電圧の半波区間において、ステップS102で特定されたコンデンサに充電される電荷を、電流検出部11によって検出される検出電流Iaの積分によって求めることにより、瞬時値を扱う方法に比べて外乱やノイズに強くなる。
【0023】
ステップS104においては、制御部9におけるコンデンサ容量推定手段101によって、ステップS102で特定されたコンデンサのコンデンサ容量が推定される。式(2)〜式(7)をまとめると、式(8)及び(9)が得られる。これらの式によって、各コンデンサの容量の算出が可能である。従って、各コンデンサの両端電圧が検出できれば、各コンデンサのコンデンサ容量の推定が可能である。
【0024】
【数8】

【数9】

【0025】
次に、ステップS105において、制御部9における異常判定手段102によって、ステップS104において推定されたコンデンサ容量から、各コンデンサの容量抜けについての異常判定が実施される。このとき、上記までのコンデンサ容量の推定方法又は製品出荷時の実測等によって、製品出荷時又はユーザによる使用初期の各コンデンサ容量C1’及びC2’を求め、記憶部15に書き込んでおく。使用開始から、所定期間経過後、必要に応じて前述した方法によってコンデンサ容量を推定する。制御部9は、推定された各コンデンサ容量C1及びC2と、製品出荷時又はユーザによる使用初期の各コンデンサ容量C1’及びC2’との差分が所定値α以上である時、そのコンデンサは劣化していると判断し、異常を出力する。判定式の一例を式(10)及び(11)に示す。
なお、これらの式では上記の差分が判定に用いられているが、各コンデンサ容量C1及びC2と、製品出荷時又はユーザによる使用初期の各コンデンサ容量C1’及びC2’との比率等が判定に用いられるものとしてもよい。
【0026】
【数10】

【数11】

【0027】
最後に、ステップS106において、制御部9によって出力される信号SIGをOFFとし、負荷13への電流供給を停止する。
以上のステップS101〜S106及びS111で構成される動作フローを、必要に応じて実施する。
【0028】
図8は、実施の形態1に係る電源保護装置の使用開始からの経過時間とコンデンサ容量の一例を示した図である。制御部9は、上記の動作フローを任意の時間間隔で実施し、各実施のタイミングで推定したコンデンサ容量及び使用開始からの経過時間を、記憶部15に記憶する。このとき、制御部9におけるコンデンサ容量予測手段103は、記憶部15に記憶されたコンデンサ容量及び使用開始からの経過時間から、図8で示されるような直線補間等を用いることによって、そのコンデンサ容量の時間変化を予測する。また、制御部9におけるコンデンサ交換時期予測手段104は、予測されたそのコンデンサの時間変化に基づいて、ステップS102で特定されたコンデンサの交換時期を予測する。
【0029】
以上のような構成と動作フローによって、実施の形態1に係る電源保護装置の製造段階でコンデンサ容量の推定を実施することで、初期不良を検出することができ、良品・不良品の判別が容易になる。
また、制御部9が負荷13に対して定電流が流れるように制御することによって、外乱や負荷変動の影響が少なくなるので、電流検出部11や電圧検出部12による検出の精度が高くなり、さらにはコンデンサ容量の推定の精度も高まる。
また、任意の時間間隔に上記の動作フローが実施されることで、外部からの調査等によらずに、電源保護装置側で、コンデンサのコンデンサ容量の時間変化を予測し、コンデンサの寿命を予測することができ、その交換時期の予測をすることができる。
また、コンデンサ容量の推定は、実施の形態1に係る電源保護装置が組み込まれたシステムへの影響が最小となるような使用時間帯に実施されるようにすれば、ユーザ側にストレスをかけずにコンデンサの容量抜け検出が可能となる。
また、1つの電流検出部11によって、複数のコンデンサに流れる電流を検出して、そのコンデンサ容量の推定及びその異常判定が可能なので、コスト低減が図られる。
また、製品出荷時又は使用初期におけるコンデンサのコンデンサ容量を記憶部15に記憶させておくことにより、使用環境に左右されずに、信頼性高くコンデンサの経年劣化の異常判定が可能となる。
また、複数のコンデンサに対して、個別に容量抜けによる劣化が検出可能であり、その劣化したコンデンサのみ交換を行うことができるので、部品交換を最小限に抑制することができる。
そして、所定のコンデンサの雰囲気温度が高いシステム環境においては、そのシステム内に空冷ファン等が設けられている場合、容量抜けの顕著なコンデンサの周囲を冷却するように空冷ファン等の送風角度を調整することで、その寿命を延ばすことができる。
【0030】
なお、図1で示される回路では、制御部9は、電流検出部14によって検出される負荷電流をモニタし、負荷13に定電流が流れるようにフィードバック制御を実施しているが、このフィードバック制御を実施しなくても、図2〜図7で示された動作フローの実施、及び、図8で示されるコンデンサ容量の時間変化及びコンデンサの交換時期の予測は可能である。この場合、電流検出部14は特に設けなくてもよいことは言うまでもない。
また、図2で示される動作フローにおいて、特定されたコンデンサに蓄えられる電荷を求めるステップS103と、そのコンデンサの両端電圧を検出するステップS111が同じタイミングで動作するものと記載しているが、これに限られるものではなく、ステップS103の実施後、ステップS111が実施されるものでもよく、あるいは、その逆の順序でもよい。
【0031】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2に係る電源保護装置及び電源保護方法について図面を参照にしながら説明する。
図9は、実施の形態2に係る電源保護装置の構成図の一例である。図9で示される電源保護装置は、負荷13をインバータ24及びモータ31で置き換えたものである。インバータ装置111は、交流電源1から電源供給される実施の形態1に係る電源保護装置と、インバータ24によって構成されている。それ以外の回路構成は、実施の形態1における図1の回路構成と同様である。
【0032】
図10は、負荷13としてインバータ24及びモータ31に置き換えた場合の構成図の一例である。インバータ24は、スイッチング素子22a〜22f及びダイオード23a〜23fで構成される。また、インバータ24は直流母線41a及び41bに接続され、制御信号を受信するため制御部9にも接続されており(図9参照)、そして、その出力側はモータ31に接続されている。
インバータ24は、制御部9から出力される6つのPWM信号を受信し、そのPWM信号に基づいて、モータ31に対して駆動電流を出力し、それを受けたモータ31は回転を行う。図10で示されるインバータ24及びモータ31以外についての動作については、実施の形態1と同様である。
【0033】
以下、インバータ24に対する定電流印加時の動作について説明する。
制御部9は、電流検出部14が検出したモータ31に流れる電流情報及び電圧検出手段12bが検出した直流母線41aの電圧情報に基づいて、インバータ24を介してモータ31の制御を行う。インバータ24は、制御部9からの指令によって、通電角を固定して励磁すれば、モータ31の特定相に定電流を印加することが可能である。はじめに電流検出について説明する。インバータ24のスイッチング素子22a〜22fは、上下アームについていずれか一方がONされるものであるので、スイッチング素子22a〜22fによるスイッチング状態は2×2×2=8通り存在する。ここでは、スイッチング素子22a〜22cを上アームと称し、スイッチング素子22d〜22fを下アームと称するものとし、モータ31の各相の上アームを基準としたスイッチング状態の表記として、各スイッチング素子のON状態を1、そして、そのOFF状態を0とし、各スイッチング状態の基本電圧ベクトルを次のように定義する。すなわち、(U相上アーム状態Up、V相上アーム状態Vp、W相上アーム状態Wp)=(0,0,1)の場合をV1、(0,1,0)の場合をV2、(0,1,1)の場合をV3、(1,0,0)の場合をV4、(1,0,1)の場合をV5、(1,1,0)の場合をV6と称することにする。また、ベクトル長を持たないゼロベクトルを次のように称する。(U相上アーム状態Up、V相上アーム状態Vp、W相上アーム状態Wp)=(0,0,0)の場合をV0、(1,1,1)の場合をV7と称する。ここで、V1〜V6の6モードの基本電圧ベクトルについては、モータ31の巻線に流れる電流は直流母線41b経路に挿入された電流検出部14により、直流母線電流Idcとして検出される。V0及びV7のゼロベクトルについては、電流検出部14による直流母線電流Idcの検出は不可である。
【0034】
図11は、電圧ベクトルの概念図を示した図である。図11においては、V4方向を基準(初期位相)とし、インバータ回転角θと電圧指令ベクトルV*の関係が示されている。各基本電圧ベクトルV1〜V6はπ/3の位相差を持つ。各基本電圧ベクトルの発生期間において、電流検出部14によりモータ電流が検出されることにより、制御部9は、各相電流Iu〜Iwの情報を、制御部9内で処理できる数値として取得することができる。実施の形態2では、モータ制御に用いる電流検出手段として直流母線41b経路に挿入される電流検出部14を利用する方法が示されているが、モータ31とインバータ24の接続線等にカレントトランスを挿入してモータ電流検出が行われることで、制御部9は各相電流情報を取得するものとしても良い。
【0035】
図12は、通電角固定時のPWM信号の一例を示した図である。図12(a)は、周知の空間ベクトルを用いた3相変調アルゴリズムを用いてUV相に通電する時の上アーム論理を示し、図12(b)は、電圧ベクトルの様子の一例を示し、U相方向をV4、V相方向をV2、そして、W相方向をV1とした場合で、上アームが全てONであるゼロベクトルをV7、そして、全てOFFであるゼロベクトルをV0と定義した場合を示す。この場合、U(+)相とV(−)相に出力すれば良いことが図12(b)から分かる。すなわち、基本電圧ベクトルV4及びV5の中間である330[deg]近傍に出力ベクトルE*を構成して通電角を固定して通電が行われれば、UV相に通電が可能である。
【0036】
図13は、図12で示されるPWM信号を発生した際の相電流Iu、Iv及びIwの様子を示した図である。図2で示される動作フローにおいて、ステップS101でSIGがONとなった時、制御部9は、定電流の印加開始によりPWM信号を出力し、所定時間経過後、PWM信号のデューティを固定(通電角固定)し、図13のような一定電流が流れるようにする。ここで、電流検出部14で検出される電流値が制御部9にフィードバックされ、制御部9は、予定している定電流が流れるようにPWM信号のデューティを調整する。このようにして、制御部9は、一定時間経過後、負荷13(インバータ24及びモータ31)に定電流を流すことが可能である。
【0037】
以上の構成により、制御部9が負荷13(インバータ24及びモータ31)に対して定電流が流れるように制御することによって、外乱や負荷変動の影響が少なくなるので、コンデンサ容量の推定の精度を高めることが可能となる。
【0038】
図14は、実施の形態2に係る電源保護装置を冷凍空調装置に搭載した構成図の例である。インバータ装置111は、交流電源1が接続されており、その出力側にはモータ31が接続されており、そのモータ31には、圧縮要素124に連結されている。圧縮機123は、モータ31と圧縮要素124から構成されている。冷凍空調装置内を循環する冷媒の流路は、圧縮要素124から、四方弁125、室外熱交換機126、室外膨張装置127、室内膨張装置128、室内熱交換機129を経由し、再び四方弁125を経由して、圧縮要素124へ戻る態様で構成されている。室外熱交換機126近傍には、室外送風装置130が設置され、室内熱交換機129近傍には、室内送風装置131が設置されている。なお、インバータ装置111、圧縮機123、四方弁125、室外熱交換機126、室外膨張装置127及び室外送風装置130から、室外機121が構成されている。また、室内膨張装置128、室内熱交換機129及び室内送風装置131から室内機122が構成されている。
インバータ装置111は、交流電源1から交流電圧の供給を受け、モータ31を回転させる。圧縮要素124は、モータ31が回転することによって、冷媒の圧縮動作を実行し、冷媒を冷凍空調装置内で循環させる。
【0039】
図15は、実施の形態2に係る電源保護装置を洗濯機に搭載した構成図の例である。水槽142は、洗濯機141内に設置され、その内部に洗濯槽143が回転自在に設置されている。その洗濯槽143の底部には、攪拌翼144が回転自在に設置されている。水槽142の底部に設置されたモータ31の回転軸は、洗濯槽143及び攪拌翼144に連結されている。図示はしていないが、インバータ装置111が、洗濯機141の内部に搭載されており、モータ31に接続されている。
インバータ装置111が、モータ31を回転制御することによって、洗濯槽143及び攪拌翼144が回転し、洗濯動作が実施される。
【0040】
図16は、実施の形態2に係る電源保護装置を電気掃除機に搭載した図の例である。電気掃除機本体151の前面側(図16の左側)にホース152が接続されており、そのホース152の他端には、手元ハンドル156が設けられている。そして、手元ハンドル156には、伸縮自在の延長管153の一端が着脱可能に接続され、その他端には吸い込み具154が着脱可能に接続されている。また、電気掃除機本体151内部の前部には、塵埃が収集される集塵室155が設置されており、その集塵室155の後部側に、モータ31が設置され、さらに、そのモータ31の下部には、インバータ装置111が設置されており、そのインバータ装置111は、モータ31に接続されている。
ユーザが手元ハンドル156に設けられている電源スイッチをONすることによって、インバータ装置111に電源が供給され、そのインバータ装置111はモータ31を回転させる。その回転に伴う吸い込み力によって、吸い込み具154から塵埃が吸い込まれる。吸い込まれた塵埃は、延長管153及びホース152を経由して、電気掃除機本体151に到達し、その内部に設置されている集塵室155に収集される。
【0041】
以上の構成により、使用環境に左右されずに、信頼性の高いコンデンサの経年劣化の異常判定が可能な電源保護機能を備えた冷凍空調装置、洗濯機及び電気掃除機を得ることができる。
【0042】
なお、図14〜図16で示したものは、あくまで、実施の形態2に係る電源保護装置が、冷凍空調装置、洗濯機及び電気掃除機に搭載される場合の構成の例であり、他の構成によって搭載されるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態1に係る電源保護装置の構成図の一例である。
【図2】実施の形態1に係る電源保護装置において、その異常を判定するための動作フローの一例である。
【図3】実施の形態1に係る電源保護装置における交流電源の電源電圧、図1の電流検出部11の検出電流及びコンデンサの推定コンデンサ容量の波形の一例を示した図である。
【図4】実施の形態1における図3(a)で示される電源電圧の区間1及び区間2におけるコンデンサへの充電経路を示した図である。
【図5】実施の形態1に係る電源保護装置における電圧検出部の出力に対してフィルターを通過させるブロックの一例を示した図である。
【図6】実施の形態1に係る電源保護装置の電流検出部の検出電流のサンプルホールド回路の一例を示した図である。
【図7】実施の形態1に係る電源保護装置の電流検出部の検出電流の積算値(連続値及び離散値)の一例を示した図である。
【図8】実施の形態1に係る電源保護装置の使用開始からの経過時間とコンデンサ容量の一例を示した図である。
【図9】実施の形態2に係る電源保護装置の構成図の一例である。
【図10】実施の形態2に係る電源保護装置の負荷としてインバータ及びモータに置き換えた場合の構成図の一例である。
【図11】実施の形態2による電圧ベクトルの概念図を示した図である。
【図12】実施の形態2による通電角固定時のPWM信号の一例を示した図である。
【図13】実施の形態2による図12のPWM信号を発生した際の相電流の様子を示した図である。
【図14】実施の形態2に係る電源保護装置を冷凍空調装置に搭載した構成図の例である。
【図15】実施の形態2に係る電源保護装置を洗濯機に搭載した構成図の例である。
【図16】実施の形態2に係る電源保護装置を電気掃除機に搭載した構成図の例である。
【符号の説明】
【0044】
1 交流電源、2 整流部、2a〜2d 整流ダイオード、3 平滑部、3a、3b コンデンサ、6 変換部、9 制御部、11、14 電流検出部、12 電圧検出部、12a、12b 電圧検出手段、13 負荷、15 記憶部、16 ゼロクロス検出手段、21a、21b ローパスフィルタ、22a〜22f スイッチング素子、23a〜23f ダイオード、24 インバータ、31 モータ、41a、41b 直流母線、51 区間1における電流経路、52 区間2における電流経路、61 アナログスイッチ、62 ホールド用コンデンサ、101 コンデンサ容量推定手段、102 異常判定手段、103 コンデンサ容量予測手段、104 コンデンサ交換時期予測手段、111 インバータ装置、121 室外機、122 室内機、123 圧縮機、124 圧縮要素、125 四方弁、126 室外熱交換機、127 室外膨張装置、128 室内膨張装置、129 室内熱交換機、130 室外送風装置、131 室内送風装置、141 洗濯機、142 水槽、143 洗濯槽、144 攪拌翼、151 電気掃除機本体、152 ホース、153 延長管、154 吸い込み具、155 集塵室、156 手元ハンドル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を全波整流する整流部と、
コンデンサを有し、前記整流部によって整流された電圧を平滑する平滑部と、
前記平滑部に接続される負荷と、
前記平滑部に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部と、
前記検出された電流及び電圧を入力する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電圧検出部で検出される電圧及び前記電流検出部で検出される電流に基づいて、前記コンデンサのコンデンサ容量を推定するコンデンサ容量推定手段を備える
ことを特徴とする電源保護装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記負荷に定電流が流れるように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の電源保護装置。
【請求項3】
前記平滑部は、複数の前記コンデンサにより構成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電源保護装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流検出部によって検出される電流の方向に基づいて、前記コンデンサ容量推定手段によるコンデンサ容量の推定対象となる前記コンデンサを特定する
ことを特徴とする請求項3記載の電源保護装置。
【請求項5】
前記交流電源のゼロクロスを検出して電圧の極性を検出するゼロクロス検出手段を備え、
前記制御部は、前記電圧の極性に基づいて、前記コンデンサ容量推定手段によるコンデンサ容量の推定対象となる前記コンデンサを特定する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の電源保護装置。
【請求項6】
前記コンデンサ容量推定手段は、前記電流検出部によって検出される電流の値を積分することによって前記コンデンサ容量を推定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電源保護装置。
【請求項7】
前記コンデンサの使用初期のコンデンサ容量を記憶する初期コンデンサ容量記憶手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電源保護装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記推定されたコンデンサ容量と、前記記憶された使用初期のコンデンサ容量に基づいて、前記コンデンサが異常か否かを判定する異常判定手段を備える
ことを特徴とする請求項7記載の電源保護装置。
【請求項9】
所定期間ごとに、前記推定されたコンデンサ容量及び製品出荷時からの経過時間を記憶するコンデンサ容量・経過時間記憶手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の電源保護装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記記憶されたコンデンサ容量及び経過時間に基づいて、前記コンデンサ容量の時間変化を予測するコンデンサ容量予測手段を備える
ことを特徴とする請求項9記載の電源保護装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記予測されたコンデンサ容量の時間変化に基づいて、前記コンデンサの交換時期を予測するコンデンサ交換時期予測手段を備える
ことを特徴とする請求項10記載の電源保護装置。
【請求項12】
前記負荷として、モータと、前記モータを駆動するインバータを備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載の電源保護装置。
【請求項13】
請求項12記載の電源保護装置を搭載したことを特徴とする冷凍空調装置。
【請求項14】
請求項12記載の電源保護装置を搭載したことを特徴とする洗濯機。
【請求項15】
請求項12記載の電源保護装置を搭載したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項16】
交流電源を全波整流する工程と、
前記整流された電圧を平滑する工程と、
平滑部に流れる電流を検出する工程と、
前記平滑部を構成するコンデンサの電圧を検出する工程と、
前記検出された電圧及び前記検出された電流に基づいて、前記コンデンサのコンデンサ容量を推定する工程と、
を有する
ことを特徴とする電源保護方法。
【請求項17】
前記検出された電流の方向に基づいて、前記平滑部を構成する複数の前記コンデンサのうち、前記コンデンサ容量を推定する対象となる前記コンデンサを特定する工程を有する
ことを特徴とする請求項16記載の電源保護方法。
【請求項18】
前記交流電源のゼロクロスを検出して電圧の極性を検出する工程と、
前記検出された電圧の極性に基づいて、前記平滑部を構成する複数の前記コンデンサのうち、前記コンデンサ容量を推定する対象となる前記コンデンサを特定する工程と、
を有する
ことを特徴とする請求項16又は請求項17記載の電源保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−43959(P2010−43959A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208319(P2008−208319)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】