説明

非水電解質電池

【課題】SOCが低い時の大電流出力特性が改善された非水電解質電池を提供する。
【解決手段】リチウムマンガン複合酸化物を含む正極活物質を含有する正極活物質含有層と、前記正極活物質含有層が形成される正極集電体とを含む正極3と、リチウムに対して1V以上の電位で充放電反応を行う負極活物質を含む負極4と、ジエチルカーボネートを含む溶媒と、前記溶媒に溶解されるLiPF6およびLiBF4とを含有する非水電解質とを具備することを特徴とする非水電解質電池。LiPF6のモル濃度は、LiBF4のモル濃度に比して大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
正極活物質にリチウムマンガン複合酸化物とそれ以外のリチウム含有複合酸化物を含む正極を用いた非水電解質電池が知られている(特許文献1)。ここで、リチウムマンガン複合酸化物は充電状態(SOC:State of charge)に対するリチウムイオンの固体内拡散抵抗の違いが少ないという特長を有するため、SOCの低い状態で25C以上の大電流放電を行うような場合、正極にリチウムマンガン複合酸化物を含むことで放電特性が向上することが期待できる。しかしながら、リチウムマンガン複合酸化物はSOCが低い状態では、活物質中のマンガンが溶出しやすいという性質を有する。さらにその溶け出したマンガンが負極に析出すると負極抵抗が大きくなるため、SOCが低い状態での大電流特性は改善されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−197180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、SOCが低い時の大電流出力特性が改善された非水電解質電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る非水電解質電池は、リチウムマンガン複合酸化物を含む正極活物質を含有する正極活物質含有層と、前記正極活物質含有層が形成される正極集電体とを含む正極と、
リチウムに対して1V以上の電位で充放電反応を行う負極活物質を含む負極と、
ジエチルカーボネートを含む溶媒と、前記溶媒に溶解されるLiPF6およびLiBF4とを含有し、前記LiPF6のモル濃度が前記LiBF4のモル濃度に比して大きい非水電解質と
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、SOCが低い時の大電流出力特性が改善された非水電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係わる角形非水電解質二次電池を示す部分切欠断面図。
【図2】図1の二次電池のA−A線に沿う断面図。
【図3】図2の二次電池の要部についての拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によればSOCが低い時の25C以上の大電流出力特性を改善できる。前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、リチウムマンガン複合酸化物を含む正極と、リチウムに対して1V以上の電位で充放電反応を行う負極活物質を含む負極とを備えることでSOCが低い時の大電流放電特性が改善されることを見いだした。はじめにSOCが低い状態での大電流放電特性の支配要因は正極の固体内リチウムイオン拡散抵抗にあることが推測された。ここで、リチウムイオンを吸蔵放出するリチウム含有複合酸化物の固体内リチウムイオン拡散抵抗にはSOC依存性があることが知られており、SOCが低くなると固体内リチウムイオン拡散抵抗が大きく増加するものが一般的である。ここで、リチウムマンガン複合酸化物はリチウムイオンの固体内拡散抵抗のSOC依存性が、他のリチウムイオンを吸蔵放出するリチウム含有複合酸化物よりも小さいという特長を有する。しかしながら、このリチウムマンガン複合酸化物はSOCが低い状態で保持すると活物質中のマンガンが電解液中に溶出してしまう。これまで本来SOCが低い状態でのリチウムイオンの固体内拡散抵抗の小さいリチウムマンガン複合化合物を用いてもSOCが低い状態での放電特性が改善されないのは、このマンガン溶出によるものだと考えられてきた。しかしながら、低SOCにおける性能改善が実現されないのは溶出したマンガンが負極に析出し負極抵抗を増加させていることが原因であることが明らかとなった。そこで、負極活物質にリチウムに対して1V以上の電位で充放電反応を行うものを用いることでSOCが低い時の大電流放電特性が改善されることがわかった。さらに、リチウムマンガン複合酸化物とそれ以外のリチウム酸化物を含むときには、リチウムマンガン複合酸化物の量が集電体側よりもセパレータに近い電極表面側の方が多くなるようにすることで充電状態が低い時の大電流放電特性の改善効果が大きいことが確認された。これは大電流放電時には、活物質内および非水電解質中のリチウムイオン拡散が律速段階となるため活物質内のリチウムイオン拡散が速いものを非水電解質バルクに近くに配置することで非水電解質内のリチウムイオン拡散を速くできるためであると考えられる。
【0009】
ここで、マンガンをより溶出しやすい構成の電池であるほど本発明の効果は得られやすい。したがって、非水電解質に、より遊離酸を生じやすい組成のものを選択したとき、遊離酸はマンガン溶出のトリガーとなるので効果が得られやすい構成となる。遊離酸をより生じやすい非水電解質としてリチウム塩にLiPF6とLiBF4の両方を含みかつ溶媒中にジエチルカーボネートを含む構成のものが挙げられる。この構成の非水電解質が遊離酸を生じやすいメカニズムは定かではないが、この構成とすることで非水電解質中における以下の(A)に示すPF6-の分解反応がより進みやすいためであると考えている。このため、非水電解質中のLiPF6モル濃度が、LiBF4モル濃度に比して大きい場合の方が、出力特性の大幅な改善が期待できる。
【0010】
PF6- → PF5 + F- (A)
また、大電流とは電極構成によって異なってくるが例えば25C以上の電流値を想定している。これより大きな電流値では正極固体内のリチウムイオン拡散抵抗が放電特性に影響を及ぼす。それ以下の放電電流では活物質表面へのリチウムイオンの供給速度が律速工程となっているものと考えられる。このような大電流を使用する場合、電池容量をすべて使い切るのではなく、電池容量の数%から10数%を使用するというような使い方が主である。したがって、本発明で説明するような充電状態が低い状態でも高出力が達成できる構成の電池では、大電流放電で使用可能な充電状態範囲が広いということになり、電池を並列につなぎ大電流放電時の出力特性を維持しているような電池パックにおいては、並列の電池の数を減らすことができ、その結果、軽量かつ低コストを兼ね備えた電池パックとすることができる。
【0011】
以下、本発明に係わる非水電解質電池について部材ごとに詳細に説明する。
【0012】
1)正極
この正極は、正極集電体と、前記集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質、導電剤および結着剤を含む正極活物質含有層とを有する。
【0013】
この正極は、例えば、正極活物質に導電剤および結着剤を添加し、これらを適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布、乾燥、プレスして帯状電極にすることにより作製される。
【0014】
正極活物質は、リチウムを吸蔵・放出するリチウム含有複合酸化物を複数含み、かつリチウムマンガン複合酸化物を活物質として含むことが望ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物は、リチウムを吸蔵・放出するリチウム含有複合酸化物の一種である。
【0015】
リチウムマンガン複合酸化物としては、例えば、層状構造を有するLiMnO2、スピネル構造を有するLi1+aMn2-a-bbM’4-d(MはCo,Ni,Mg,Cr,Zn,Cu,Y,Al,TiおよびFeよりなる群より選択される少なくとも1種類または2種類以上の元素で、M’はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の中から選ばれるハロゲン元素、ホウ素、イオウ、ナトリウムおよびカルシウムよりなる群より選択される少なくとも1種類または2種類以上の元素、a,b,c及びdは0≦a≦0.33、0≦b≦0.2、0≦c≦0.2、0≦d≦0.5を満たす)を挙げることができる。特にスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物が好ましい。
【0016】
リチウムを吸蔵・放出するリチウム含有複合酸化物(リチウムマンガン複合酸化物を除く)としては、例えば、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物{例えばLiNi1―y―zCoyz2(TはAl,CrおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1)}、リチウムマンガンコバルト複合酸化物{例えばLiMn1―y―zCoyz2(TはAl,CrおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1)}、リチウムマンガンニッケル複合化合物{例えばLiMnxNix1―2x2(RはCo,Cr,AlおよびFeよりなる群より選択される少なくとも1種類の元素、1/3≦x≦1/2、例えば、LiMn1/3Ni1/3Co1/32、LiMn1/2Ni1/22}、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiMn2―yNiy4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、LiFePO4、LiFe1―yMnyPO4、LiCoPO4など)を挙げることができる。
【0017】
なお、前記リチウム含有酸化物のリチウム量をxとしたとき、xは充放電反応により、0≦x≦1.2の範囲で変化する。
【0018】
リチウムマンガン複合酸化物と混合されるリチウム含有複合酸化物のうち好ましいのは、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のうちの少なくとも1種類からなるものである。これらによると、正極のエネルギー密度を向上することができる。特に好ましいのはリチウムコバルト複合酸化物であり、エネルギー密度が高く、かつSOCが低い時の大電流出力特性に優れる正極が得られる。なお、上記に好ましい範囲の記載がないy、zについては0以上1以下の範囲であることが好ましい。
【0019】
正極活物質には、種々の酸化物、硫化物などが含まれていても良い。例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、硫酸鉄(Fe2(SO43)、バナジウム酸化物(例えばV25)などが挙げられる。また、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)、フッ化カーボンなどの有機材料および無機材料も挙げられる。
【0020】
リチウムマンガン複合酸化物の比表面積は、他の正極活物質の比表面積よりも小さいことが望ましい。これにより、リチウムマンガン複合酸化物からのMn溶出を抑制することができるため、高温放置や過充電等のアブユース時に非水電解質中のMnが負極に析出するのを抑えることができ、アブユース時の負極抵抗の上昇を抑制することができる。
【0021】
リチウムマンガン複合酸化物の正極活物質の重量に対する比率が75〜99%の範囲内であることが望ましい。これにより、エネルギー密度の高い正極が得られる。
【0022】
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック(商標)、黒鉛、コークス等を挙げることができる。
【0023】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0024】
前記正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質73〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0025】
正極集電体は、アルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔から形成されることが望ましい。アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔の平均結晶粒径は50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、30μm以下である。更に好ましくは5μm以下である。前記平均結晶粒径が50μm以下であることにより、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の強度を飛躍的に増大させることができ、正極を高いプレス圧で高密度化することが可能になり、電池容量を増大させることができる。
【0026】
平均結晶粒径は次のようにして求められる。集電体表面の組織を光学顕微鏡で組織観察し、1mm×1mm内に存在する結晶粒の数nを求める。このnを用いてS=1x106/n(μm2)から平均結晶粒子面積Sを求める。得られたSの値から下記(B)式により平均結晶粒子径d(μm)を算出する。
【0027】
d=2(S/π)1/2 (B)
アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔の平均結晶粒径は、材料組織、不純物、加工条件、熱処理履歴、ならびに焼鈍条件など複数の因子から複雑な影響を受けて変化する。結晶粒径は、集電体の製造工程の中で、前記諸因子を組合せて調製することが可能である。
【0028】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。
【0029】
2)負極
この負極は、負極集電体と、前記集電体の片面もしくは両面に担持され、負極活物質、結着剤および必要により導電剤を含む負極活物質含有層とを有する。この負極は、例えば、粉末状の負極活物質に結着剤を添加し、これらを適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物をアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属箔の集電体に塗布、乾燥、プレスして帯状電極にすることにより作製される。
【0030】
前記負極活物質にはリチウムに対し1V以上(好ましくは1.1V以上、3V以下)の電位で充放電反応が起こるものを用いる。ここで反応電位の測定法について説明する。負極活物質を作用極、金属リチウムを対極および参照極とした3電極式セルを作製する。この3電極式セルを作用極の電気容量の1/10の電流値つまり0.1Cレートでリチウムの挿入脱離反応を行う。ここで電極の電気容量を1時間で放電させるだけの電流値を1Cレートといい、その電流値の何倍かをCレートで表す。このときのリチウム脱離反応における平均作動電位を負極活物質の反応電位とした。そのような負極活物質としてスピネル型リチウムチタン複合酸化物が挙げられる。スピネル型リチウムチタン複合酸化物としては、Li4+xTi512(xは充放電反応により−1≦x≦3の範囲で変化する)などを挙げることができる。スピネル型リチウムチタン複合酸化物を単独で用いてもいいし、ほかの活物質を複数混合しても良い。混合される活物質としては、リチウムを吸蔵・放出するリチウム化合物が挙げられる。
【0031】
前記リチウム化合物として、リチウム酸化物、リチウム硫化物、リチウム窒化物などが挙げられる。これらの中には、未充電状態ではリチウムを含まない金属化合物であるが、充電によりリチウムを含むようになる化合物も含まれる。
【0032】
このような酸化物としては、例えば、チタン含有金属複合酸化物、例えばSnB0.40.63.1などのアモルファススズ酸化物、例えばSnSiO3などのスズ珪素酸化物、例えばSiOなどの酸化珪素、例えばWO3などのタングステン酸化物などが挙げられる。中でも、チタン含有金属複合酸化物が好ましい。
【0033】
チタン含有金属複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン酸化物、酸化物合成時はリチウムを含まないチタン系酸化物などを挙げることができる。スピネル型リチウムチタン複合酸化物以外のリチウムチタン酸化物としては、例えば、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウムなどを挙げることができる。ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウムとしては、Li2+yTi37(yは充放電反応により−1≦y≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。チタン系酸化物としては、TiO2、TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiO2はアナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO2-P25、TiO2-V25、TiO2-P25-SnO2、TiO2-P25-MeO(MeはCu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。この金属複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能を大幅に向上させることができる。中でも、リチウムチタン酸化物、TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物が好ましい。
【0034】
硫化物としては、例えば、例えばTiS2などの硫化チタン、例えばMoS2などの硫化モリブデン、例えば、FeS、FeS2、LixFeS2などの硫化鉄などが挙げられる。
【0035】
窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物(例えば、LixCoyN、0<x<4,0<y<0.5)などが挙げられる。
【0036】
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等、金属粉末を挙げることができる。
【0037】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0038】
前記負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質73〜98重量%、導電剤0〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0039】
負極集電体は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔から形成されることが好ましい。負極集電体は、平均結晶粒径が50μm以下であることが好ましい。これにより、集電体の強度を飛躍的に増大させることができるため、負極を高いプレス圧で高密度化することが可能となり、電池容量を増大させることができる。また、高温環境下(40℃以上)における過放電サイクルでの負極集電体の溶解・腐食劣化を防ぐことができるため、負極インピーダンスの上昇を抑制することができる。さらに、出力特性、急速充電、充放電サイクル特性も向上させることができる。平均結晶粒径のより好ましい範囲は30μm以下であり、更に好ましい範囲は5μm以下である。硬質は、H材であることが好ましい。
【0040】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。
【0041】
3)非水電解質
この非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解される電解質塩を含む。また、非水溶媒中にはポリマーを含んでもよい。
【0042】
電解質塩としては、LiPF6、LiBF4、Li(CF3SO22N(ビストリフルオロメタンスルホニルアミドリチウム;通称LiTFSI)、LiCF3SO3(通称LiTFS)、Li(C25SO22N(ビスペンタフルオロエタンスルホニルアミドリチウム;通称LiBETI)、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiB(C242(通称LiBOB))、ジフルオロ(トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロ−メチルプロピオナト(2−)−0,0)ホウ酸リチウム{LiBF2OCOOC(CF32、通称LiBF2(HHIB)}等のリチウム塩が挙げられる。これらの電解質塩は一種類で使用してもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。特にLiPF6、LiBF4が好ましい。
【0043】
ここで、電解質塩濃度は、1M以上、3M以下の範囲内とすることが好ましい。この範囲内にすることによって、高負荷電流を流した場合に優れた性能を得ることができる。
【0044】
非水溶媒としては、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、γ−ブチロラクトン(GBL)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeHF)、1,3−ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル(AN)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネイト(DMC)、メチルエチルカーボネイト(MEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等が挙げられる。これらの溶媒は一種類で使用してもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】
また、この非水電解質に添加剤を添加してもよい。添加剤としては、特に限定されるものではないが、ビニレンカーボネイト(VC)、ビニレンアセテート(VA)、ビニレンブチレート、ビニレンヘキサネート、ビニレンクロトネート、カテコールカーボネート等が挙げられる。添加剤の濃度は、非水電解質100wt%に対して0.1wt%以上、3wt%以下の範囲が好ましい。さらに好ましい範囲は、0.5wt%以上、1wt%以下である。
【0046】
4)セパレータ
正極と負極の間にある絶縁性のセパレータには、ポリオレフィン、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン等のポリマーから得られる多孔質フィルムまたは不織布が用いられる。ここでセパレータの材料は1種類もしくは2種類以上の組み合わせから選ばれる。
【0047】
本発明は、円筒形、薄型、角形、コイン形等の種々の形態の非水電解質電池に適用することができる。非水電解質電池の一実施形態を図1〜図3に示す。図1に示すように、電極群1は、矩形筒状の金属製容器2内に収納されている。電極群1は、正極3(正極活物質含有層3b、正極集電体3a)及び負極4(負極活物質含有層4b、負極集電体4a)をその間にセパレータ5を介在させて偏平形状となるように渦巻き状に捲回した構造を有する。図3に示すように、正極3は、正極集電体3aの片面もしくは両面に正極活物質含有層3bが形成された構造を有する。一方、負極4は、負極集電体4aの片面もしくは両面に負極活物質含有層4bが形成された構造を有する。非水電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。図2に示すように、電極群1の端面から帯状の正極リード6が複数引き出されている。正極リード6は、図1に示すように、正極3の端部に電気的に接続されている。同じく図1に示すように、帯状の負極リード7は、負極4の端部に電気的に接続されている。ここでは図示しないが、負極リード7も、電極群1の同じ端面から複数引き出されている。複数ある正極リード6は、一つに束ねられた状態で正極導電タブ8と電気的に接続されている。正極リード6と正極導電タブ8から正極端子が構成されている。また、負極リード7は、一つに束ねられた状態で負極導電タブ9と接続されている。負極リード7と負極導電タブ9から負極端子が構成されている。金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極導電タブ8及び負極導電タブ9は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極導電タブ8及び負極導電タブ9との接触による短絡を回避するために、絶縁部材11で被覆されている。
【0048】
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質にLiCoO2(比表面積0.9m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥させた。
【0050】
これの両方の上面に、正極活物質にLiMn24(比表面積0.6m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製したものを塗布し、乾燥させた。ひきつづき、プレス工程を経て、電極密度が3.1g/cm3の正極を作製した。得られた正極では、集電体側(図3では正極集電体3a側)にLiCoO2が分布し、正極集電体側よりも負極に近い電極表面側(図3では正極活物質含有層3bのセパレータ5側表面)にLiMn24が分布し、LiCoO2とLiMn24の重量比率は1:4であった。
【0051】
<負極の作製>
負極活物質にLi4Ti512(リチウムに対して約1.5Vの電位で充放電反応を行う)を用い、導電剤としてグラファイトを負極全体に対して7重量%、結着剤としてPVdFを負極全体に対して2重量%となるように、N−メチルピロリドン(NMP)溶液中で混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥し、プレスすることにより電極密度2.1g/cm3の負極を作製した。
【0052】
<非水電解質の調製>
PC:DEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした。
【0053】
<電池の組み立て>
正極と負極をポリプロピレンからなるセパレータを介して捲回し、偏平状の電極群を作製した。この電極群をアルミニウムからなる金属缶に挿入し金属缶開口部分を注液孔を有するキャップで封止したのちに乾燥、前記非水電解質を注液、注液孔を封止することで容量1Ahの非水電解質電池を完成させた。
【0054】
(実施例1−2)
LiMn24の比表面積を1.2m2/gにすること以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0055】
(実施例2〜5)
LiCoO2とLiMn24の重量比率が下記表1に示す値となるようにすること以外は、実施例1で説明したのと同様な構成の電池を作製した。
【0056】
(実施例6)
正極活物質にLiCoO2(比表面積0.9m2/g)とLiMn24(比表面積0.6m2/g)を重量比率が1:4の混合粉を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布、乾燥したものを作製した。乾燥した正極をプレス工程により経て電極密度3.1g/cm3の正極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0057】
(実施例7〜10)
LiCoO2とLiMn24の重量比率が下記表1に示す値となるようにすること以外は、実施例6で説明したのと同様な構成の電池を作製した。
【0058】
(実施例11)
正極活物質にLiCoO2(比表面積0.9m2/g)とLiMn24(比表面積0.6m2/g)を重量比率が1:1の混合粉を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥することにより、アルミニウム箔の両面に第1層を形成した。
【0059】
正極活物質にLiCoO2(比表面積0.9m2/g)とLiMn24(比表面積0.6m2/g)を重量比率が1:4の混合粉を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを両方の第1層の表面に塗布し、乾燥させた。次いで、プレス工程を経て電極密度3.1g/cm3の正極を作製した以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0060】
(実施例12)
正極活物質にLi(Ni,Co,Mn)O2{比表面積が0.4m2/gで、Ni:Co:Mn=1:1:1(原子比)}を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥することにより、アルミニウム箔の両面に第1層を形成した。
【0061】
正極活物質にLiMn24(比表面積0.6m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを両方の第1層の表面に塗布し、乾燥させた。次いで、プレス工程を経て電極密度2.9g/cm3の正極を作製した以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0062】
得られた正極では、集電体側にLi(Ni,Co,Mn)O2が分布し、電極表面側(セパレータ側)にLiMn24が分布し、Li(Ni,Co,Mn)O2とLiMn24の重量比率は1:4であった。
【0063】
(実施例13,14)
Li(Ni,Co,Mn)O2とLiMn24の重量比率が下記表2に示す値となるようにすること以外は、実施例12で説明したのと同様な構成の電池を作製した。
【0064】
(実施例15)
正極活物質にLi(Ni,Co,Mn)O2{比表面積0.4m2/g、Ni:Co:Mn=1:1:1(原子比)}とLiMn24(比表面積0.6m2/g)を重量比率が1:4の混合粉を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布、乾燥したものを作製した。乾燥した正極をプレス工程により経て電極密度2.9g/cm3の正極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0065】
(実施例16,17)
Li(Ni,Co,Mn)O2とLiMn24の重量比率が下記表2に示す値となるようにすること以外は、実施例15で説明したのと同様な構成の電池を作製した。
【0066】
(実施例18)
正極活物質にLiNiO2(比表面積0.4m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布、乾燥することにより、アルミニウム箔の両面に第1層を形成した。
【0067】
正極活物質にLiMn24(比表面積0.6m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを両方の第1層の表面に塗布し、乾燥させた。次いで、プレス工程を経て電極密度3.0g/cm3の正極を作製した以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0068】
得られた正極では、集電体側にLiNiO2が分布し、電極表面側(セパレータ側)にLiMn24が分布し、LiNiO2とLiMn24の重量比率は1:4であった。
【0069】
(実施例19,20)
LiNiO2とLiMn24の重量比率が下記表3に示す値となるようにすること以外は、実施例18で説明したのと同様な構成の電池を作製した。
【0070】
(実施例21)
正極活物質にLiNiO2(比表面積0.4m2/g)とLiMn24(比表面積0.6m2/g)を重量比率が1:4の混合粉を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布、乾燥したものを作製した。乾燥した正極をプレス工程により経て電極密度3.0g/cm3の正極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0071】
(実施例22,23)
LiNiO2とLiMn24の重量比率が下記表3に示す値となるようにすること以外は、実施例21で説明したのと同様な構成の電池を作製した。
【0072】
(実施例24)
負極活物質にTiO2(リチウムに対して約1.7Vの電位で充放電反応を行う)を用い、導電剤としてグラファイトを負極全体に対して7重量%、結着剤としてPVdFを負極全体に対して2重量%となるように、N−メチルピロリドン(NMP)溶液中で混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥し、プレスすることにより電極密度1.9g/cm3の負極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0073】
(実施例25)
負極活物質にLi2Ti3O7(リチウムに対して約1.4Vの電位で充放電反応を行う)を用い、導電剤としてグラファイトを負極全体に対して7重量%、結着剤としてPVdFを負極全体に対して2重量%となるように、N−メチルピロリドン(NMP)溶液中で混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥し、プレスすることにより電極密度2.0g/cm3の負極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0074】
(実施例26)
PC:DEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1.5MのLiPF6を混合し、非水電解質とした以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0075】
(実施例27)
EC:GBL=1:2(体積比)の混合溶媒に2MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0076】
(実施例28)
EC:PC:GBL=1:1:4(体積比)の混合溶媒に2MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0077】
(実施例29)
PC:MEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0078】
(実施例30)
EC:MEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0079】
(実施例31)
EC:DEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0080】
(実施例A)
リチウムマンガン複合酸化物としてLi1.1Mn1.8Al0.05Co0.054を用いた以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0081】
(実施例B)
リチウムマンガン複合酸化物としてLi1.1Mn1.8Al0.04Co0.04Mg0.024を用いた以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0082】
(実施例C)
リチウムマンガン複合酸化物としてLi1.1Mn1.8Al0.14を用いた以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0083】
(実施例D)
リチウムマンガン複合酸化物としてLi1.09Mn1.9Mg0.010.050.0054を用いた以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0084】
(実施例E)
リチウムマンガン複合酸化物としてLi1.05Mn1.85Al0.10.050.024を用いた以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0085】
(実施例F)
リチウムマンガン複合酸化物としてLi1.09Mn1.9Mg0.010.0054を用いた以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0086】
(実施例G)
リチウムマンガン複合酸化物としてLi1.05Mn1.85Al0.10.0054を用いた以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0087】
(比較例1)
正極活物質にLiCoO2(比表面積0.9m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した後、厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布、乾燥したものをプレス工程により経て電極密度3.1g/cm3の正極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0088】
(比較例2)
正極活物質にLi(Ni,Co,Mn)O2{比表面積0.4m2/g、Ni:Co:Mn=1:1:1(原子比)}を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した後、厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布、乾燥したものをプレス工程により経て電極密度3.1g/cm3の正極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0089】
(比較例3)
正極活物質にLiNiO2(比表面積0.4m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した後、厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布、乾燥したものをプレス工程により経て電極密度3.1g/cm3の正極を作製した以外は実施例1と同様の電池を作製した。
【0090】
(比較例4)
正極活物質にLiCoO2(比表面積0.9m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した後、厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布、乾燥したものをプレス工程により経て電極密度3.1g/cm3の正極を作製した以外は実施例24と同様の電池を作製した。
【0091】
(比較例5)
正極活物質にLiCoO2(比表面積0.9m2/g)を用い、これに導電剤として正極全体に対して3重量%の割合になるように黒鉛粉末と正極全体に対して3重量%の割合になるようにアセチレンブラックを、結着剤として正極全体に対して5重量%となるようにPVdFをそれぞれ配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した後、厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布、乾燥したものをプレス工程により経て電極密度3.1g/cm3の正極を作製した以外は実施例25と同様の電池を作製した。
【0092】
(比較例6)
PC:DEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1.5MのLiPF6を混合し非水電解質とした以外は比較例1と同様の電池を作製した。
【0093】
(比較例7)
EC:GBL=1:2(体積比)の混合溶媒に2MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例1と同様の電池を作製した。
【0094】
(比較例8)
EC:PC:GBL=1:1:4(体積比)の混合溶媒に2MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例1と同様の電池を作製した。
【0095】
(比較例9)
PC:MEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例1と同様の電池を作製した。
【0096】
(比較例10)
EC:MEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例1と同様の電池を作製した。
【0097】
(比較例11)
EC:DEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例1と同様の電池を作製した。
【0098】
(比較例12)
負極活物質に炭素材料(黒鉛)(リチウムに対して約0.1Vの電位で充放電反応を行う)を用い、結着剤としてPVdFを負極全体に対して5重量%となるように、N−メチルピロリドン(NMP)溶液中で混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥し、プレスすることにより電極密度1.6g/cm3の負極を作製した以外は比較例1と同様の電池を作製した。
【0099】
(比較例13)
PC:DEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1.5MのLiPF6を混合し非水電解質とした以外は比較例12と同様の電池を作製した。
【0100】
(比較例14)
EC:GBL=1:2(体積比)の混合溶媒に2MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例12と同様の電池を作製した。
【0101】
(比較例15)
EC:PC:GBL=1:1:4(体積比)の混合溶媒に2MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例12と同様の電池を作製した。
【0102】
(比較例16)
PC:MEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例12と同様の電池を作製した。
【0103】
(比較例17)
EC:MEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例12と同様の電池を作製した。
【0104】
(比較例18)
EC:DEC=1:2(体積比)の混合溶媒に1MのLiPF6と0.5MのLiBF4を混合し非水電解質とした以外は比較例12と同様の電池を作製した。
【0105】
<電池評価>
出来上がった電池を充放電した後、電池のSOC20%の状態とし60℃環境下にて12時間放置した後、室温にて放電レート50Cで10秒間の放電を行い10秒後の電池電圧から出力値を算出した(放電電流[A]×放電10秒後の電池電圧[V]=出力値[W])。
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
【表7】

【0112】
表1において、実施例1〜11と比較例1を比較することで、LiCoO2にLiMn24を混合した実施例1〜11が、正極活物質としてLiCoO2のみを用いた比較例1に比して、低SOCにおける出力特性が優れていることがわかる。また、実施例1〜5を比較することにより、集電体側よりも表面側にリチウムマンガン複合酸化物が多く分布している実施例1,2,4,5が、低SOCにおける出力特性に優れていることがわかる。さらに、実施例1と実施例1−2とを比較することにより、LiMn24の比表面積がLiCoO2に比して小さい実施例1の方が、出力特性に優れていることがわかる。
【0113】
表2において、実施例12〜17と比較例2を比較することで、Li(Ni,Co,Mn)O2にLiMn24を混合した実施例12〜17が、正極活物質としてLi(Ni,Co,Mn)O2のみを用いた比較例2に比して、低SOCにおける出力特性が向上することがわかる。実施例12〜17の比較により、集電体側よりも表面側にリチウムマンガン複合酸化物が多く分布している実施例12,13が、低SOCにおける出力特性に優れていることがわかる。
【0114】
表3において、実施例18〜23と比較例3を比較することで、LiNiO2にLiMn24を混合した実施例18〜23が、正極活物質としてLiNiO2のみを用いた比較例3に比して、低SOCにおける出力特性が向上することがわかる。実施例18〜23の比較により、集電体側よりも表面側にリチウムマンガン複合酸化物が多く分布している実施例18,19が、低SOCにおける出力特性に優れている。
【0115】
表4において、実施例24と比較例4を比較することで、TiO2負極においてもLiCoO2にLiMn24を混合することでLiCoO2単独より低SOCにおける出力特性が向上することがわかる。
【0116】
表5において、実施例25と比較例5を比較することで、Li2Ti37負極においてもLiCoO2にLiMn24を混合することでLiCoO2単独より低SOCにおける出力特性が向上することがわかる。
【0117】
表6において、実施例26〜31と比較例6〜11を比較することで、非水電解質の組成が変化しても本発明の効果が得られることがわかる。比較例12〜18より負極炭素材料を用いるとマンガンの析出によるインピーダンス上昇が大きいこと、LiPF6とLiBF4およびDECを含む非水電解質を用いた比較例12,18においては特にマンガン溶出が大きいことがわかる。
【0118】
表7の結果から、実施例A〜Gのようにリチウムマンガン複合酸化物としてスピネル構造を有するLi1+aMn2-a-bbM’4-dを用いた際に、低SOCにおける出力特性改善の効果が得られることを確認することができた。
【0119】
上記実施例で用いた正極活物質の比表面積は、日本ベル製ガス吸着装置を用いて吸着等温線を作製しBET法より算出した。
【0120】
また、上記実施例で用いた正極におけるLiMn24の分布は、断面における原子比率を測定することにより得た。すなわち、電池から正極を取り出し、メチルエチルカーボネート溶媒で洗浄することで正極に付着する非水電解質を除去し試料とした。試料の深さ方向におけるMnと他の遷移金属元素との比率(例えば、Mn/Co比率)はリガク製グロー放電発光分析装置を用いて測定した。
【0121】
上記実施例で用いた正極における活物質の重量比率は、以下に説明する方法で測定される。電池から正極を取り出し、メチルエチルカーボネート溶媒で洗浄することで正極に付着する非水電解質を除去した。洗浄後の正極中の活物質を塩酸に溶かすことで試料を作製した。試料中のMnと他の遷移金属元素との比率(例えばMn/Co比率)は島津製作所製ICP発光分析装置を用いて測定した。
【0122】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0123】
以下に、原出願の発明の実施態様を付記する。
【0124】
[1]リチウムマンガン複合酸化物を含む正極活物質を含有する正極活物質含有層と、前記正極活物質含有層が形成される正極集電体とを含む正極と、リチウムに対して1V以上の電位で充放電反応を行う負極活物質を含む負極と、非水電解質とを具備することを特徴とする非水電解質電池。
【0125】
[2]前記正極は、前記正極活物質としてリチウムを吸蔵放出するリチウム含有複合酸化物を少なくとも2種類以上有し、前記正極活物質としてリチウムマンガン複合酸化物を含み、前記正極集電体側よりも前記負極に近い表面側に前記リチウムマンガン複合酸化物が多く分布していることを特徴とする[1]の非水電解質電池。
【0126】
[3]前記リチウムマンガン複合酸化物はスピネル型マンガン酸リチウムであることを特徴とする[1]〜[2]記載の非水電解質電池。
【0127】
[4]前記負極活物質はスピネル型リチウムチタン複合酸化物であることを特徴とする[1]〜[3]記載の非水電解質電池。
【0128】
[5]前記正極活物質に、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のうちの少なくともいずれか1つの他の複合酸化物をさらに含むことを特徴とする[1]〜[4]記載の非水電解質電池。
【0129】
[6]前記リチウムマンガン複合酸化物の比表面積は、前記他の複合酸化物の比表面積よりも小さいことを特徴とする[5]記載の非水電解質電池。
【0130】
[7]前記リチウムマンガン複合酸化物の前記正極活物質の重量に対する比率が75〜99%の範囲内であることを特徴とする[1]〜[6]記載の非水電解質電池。
【0131】
[8]前記非水電解質は、LiPF6と、LiBF4と、ジエチルカーボネートを含む溶媒とを含有することを特徴とする[1]〜[7]記載の非水電解質電池。
【0132】
[9]前記非水電解質中のLiPF6のモル濃度が、LiBF4のモル濃度に比して大きいことを特徴とする[8]記載の非水電解質電池。
【符号の説明】
【0133】
1…電極群、2…容器、3…正極、3a…正極集電体、3b…正極活物質含有層、4…負極、4a…負極集電体、4b…負極活物質含有層、5…セパレータ、6…正極リード、7…負極リード、8…正極導電タブ、9…負極導電タブ、10…封口板、11…絶縁部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムマンガン複合酸化物を含む正極活物質を含有する正極活物質含有層と、前記正極活物質含有層が形成される正極集電体とを含む正極と、
リチウムに対して1V以上の電位で充放電反応を行う負極活物質を含む負極と、
ジエチルカーボネートを含む溶媒と、前記溶媒に溶解されるLiPF6およびLiBF4とを含有し、前記LiPF6のモル濃度が前記LiBF4のモル濃度に比して大きい非水電解質と
を具備することを特徴とする非水電解質電池。
【請求項2】
前記リチウムマンガン複合酸化物はスピネル型マンガン酸リチウムであることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記負極活物質はスピネル型リチウムチタン複合酸化物であることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記正極活物質に、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のうちの少なくともいずれか1つの他の複合酸化物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記リチウムマンガン複合酸化物の比表面積は、前記他の複合酸化物の比表面積よりも小さいことを特徴とする請求項4記載の非水電解質電池。
【請求項6】
前記リチウムマンガン複合酸化物の前記正極活物質の重量に対する比率が75〜99%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の非水電解質電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110134(P2013−110134A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−51634(P2013−51634)
【出願日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【分割の表示】特願2008−331341(P2008−331341)の分割
【原出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】