説明

面材支持構造および建具

【課題】枠や框の見付け寸法の拡大を防止し、開口面積や採光面積を有効に確保することができる面材支持構造および建具を提供すること。
【解決手段】吊下支持装置20における支持装置本体21に被固定部24と被係止部25とが形成され、被固定部24が上框11の固定片部11Cに固定されるとともに、被係止部25が係止片部11Dに係止されることで、吊下支持装置20の取付強度が確保できる。さらに、固定片部11Cおよび被固定部24と係止片部11Dおよび被係止部25とが見込み方向室内側と室外側とに分けて設けられ、これらが上下に重ならないので、上框11の高さ寸法を小さくすることができる。また、レール受入れ部20Aに室外側から上レール部64が挿入されることで、上レール部64に支持される戸車22の上框11に対する高さ位置が低くでき、上枠6の見付け寸法を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材支持構造および建具に関し、詳しくは、上レールに沿って移動自在に面材を吊り下げ支持する面材支持構造、それを備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上枠に設けられた上レールに吊り下げ支持されて左右にスライド開閉自在に設けられる面材を有した建具が知られている。このような建具において、面材である障子や吊り戸を吊り下げ支持する吊下支持装置として、障子の上框に固定される台座と、この台座から上方に延びる吊りボルトと、この吊りボルトに固定される吊り金物と、この吊り金物に取り付けた戸車とを有したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された吊下支持装置では、上方に開口して形成された上框の凹溝部の内部に台座が固定され、凹溝部から上方に突出して吊りボルトが設けられ、この吊りボルトの上部に吊り金物の基部がナットで固定されている。そして、吊り金物は、その基部から上方に延びた延出片部を備え、この延出片部の上端側に戸車が回転可能に取り付けられ、この戸車を上レールに載置することで障子が吊り下げ支持されるようになっている。
【0003】
一方、他の吊下支持装置として、引戸の上辺を構成する骨組に吊り金物が直接固定されたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載された吊下支持装置では、上方に開口してコ字形に形成された骨組の一方の立上片がビスで引戸に固定され、他方の立上片に形成した係合部(または、一方および他方の立上片の基端部に形成した係合部)に吊り金物の下端部が係合されるとともに、他方側から引戸および立上片を貫通するボルトで吊り金物がスライド不能に固定されるようになっている。そして、吊り金物は、骨組の開口から上方に突出して延びた延出片部を備え、この延出片部の上端側に戸車が回転可能に取り付けられ、この戸車を上レールに載置することで引戸が吊り下げ支持されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2560821号公報
【特許文献2】特開昭62−253888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吊下支持装置では、いずれも面材の上框や骨組が凹溝状(断面コ字形)に形成され、この凹溝の開口から上方に突出して吊りボルトや吊り金物が設けられているため、面材の上端縁から戸車の支持位置までの高さ寸法が大きくなり、すなわち、面材から上方に離隔した位置にて戸車が上レールに支持されることとなってしまう。このため、上レールが形成される上枠の高さ寸法(見付け寸法)が大きくなって有効な開口面積が小さくなったり、上枠の見付け寸法の拡大により面材(障子)におけるガラスパネルの高さ寸法が小さくなったりなどの不都合が生じる。これに加えて、上框の凹溝内部に台座を固定したり、吊り金物の下端部を係合したりすると、上框の見付け寸法が大きくなることから、有効な開口面積がさらに小さくなるとともに採光面積が縮小されるという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、枠や框の見付け寸法の拡大を防止し、開口面積や採光面積を有効に確保することができる面材支持構造および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の面材支持構造は、上レールに沿って移動自在に面材を吊り下げ支持する面材支持構造であって、前記面材の上辺を構成する上辺部材と、この上辺部材に取り付けられて前記上レールに支持される吊下支持装置とを備え、前記上辺部材は、見込み方向に沿った上面部と、この上面部の見込み方向一方側にて当該上面部よりも上方に立ち上がる固定片部と、前記上面部の見込み方向他方側でかつ前記固定片部上端よりも低い高さ位置に設けられる係止片部とを有して形成され、前記吊下支持装置は、前記上辺部材に固定される支持装置本体と、この支持装置本体に回転自在に取り付けられて前記上レールの上面に沿って転動可能な転動部材とを有して構成され、前記吊下支持装置の支持装置本体は、前記固定片部に沿って設けられて見込み方向一方側からの固着具で当該固定片部に固定される被固定部と、前記上面部に沿って見込み方向他方側に延びた先端側が前記係止片部に係止される被係止部と、前記被固定部よりも上方に延びて前記転動部材を支持する転動部材支持部とを有して形成され、前記被固定部よりも見込み方向他方側かつ前記被係止部よりも上方位置に前記転動部材が支持されるとともに、これらの被係止部と転動部材との間に見込み方向他方側から前記上レールを受け入れ可能なレール受入れ部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
以上の本発明によれば、面材の上辺部材において上面部の一方側に固定片部を設け、他方側に係止片部を設け、支持装置本体の被固定部を固定片部に固定し、被係止部を係止片部に係止させた、つまり固定片部および被固定部と係止片部および被係止部とを見込み方向に分けたことで、これらが上下に重ならずに上辺部材の高さ寸法(見付け寸法)を小さくすることができる。また、支持装置本体の被固定部が見込み方向一方側からの固着具で固定片部に固定されることで、面材を組み立てた後に上辺部材に吊下支持装置を取り付けることができ、面材の建て込み作業の効率化を図ることができる。
そして、係止片部を固定片部上端よりも低い高さ位置に設け、この係止片部に係止される被係止部と転動部材との間にレール受入れ部を形成したことで、上レールに支持される転動部材を上辺部材の上面部に近づける、すなわち転動部材の高さ位置を低くすることができる。これにより、上辺部材の上面部から上方への支持装置本体および転動部材の突出寸法を小さくして、この転動部材を支持する上レールの建物開口に対する高さ位置を上げ、上レールが形成される上枠等の見付け寸法を小さくすることができる。従って、枠や上辺部材(框)の見付け寸法を必要最小限のサイズに抑えることができ、枠の有効な開口面積や面材の採光面積を拡大することができる。
【0009】
この際、本発明の面材支持構造では、前記上辺部材の係止片部は、前記上面部から上方に立ち上がるとともに前記固定片部側に折れ曲がった鉤形状に形成され、前記吊下支持装置の被係止部は、前記上辺部材の上面部に沿った平板状に形成されるとともに、その見込み方向他方側端縁が前記係止片部と前記上面部との間に挿入されて係止されることが好ましい。
このような構成によれば、被係止部を平板状に形成したことで、その厚さ寸法を小さくすることができるとともに、この被係止部の端縁を係止する係止片部を鉤形状に形成したことで、上面部から係止片部上端までの高さ寸法を抑えることができる。従って、係止片部および被係止部がレール受入れ部の空間を圧迫することなく、上レールおよび転動部材の上面部からの距離が拡大することが防止でき、支持装置本体および転動部材の突出寸法を小さく維持できる。そして、上辺部材の上面部に沿った被係止部と固定片部に沿った被固定部とから、支持装置本体がL字形に形成され、このL字形の開放された側方にレール受入れ部が形成されるので、各部をコンパクトに配置して吊下支持装置の外形寸法を最小化することができる。
【0010】
さらに、本発明の面材支持構造では、前記固定片部の上端縁と前記転動部材の下端縁とが略同一高さ位置に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、転動部材の下端縁であり上レールの上面に載置される部分が固定片部の上端縁と略同一高さ位置に設けられる、すなわち転動部材の下側に所定の高さ寸法を有して位置する上レールが、固定片部の見込み方向他方側に重なって設けられることとなる。このように、上レールが固定片部と重なる位置に受け入れられることで、上辺部材の上面部と上レールとの間隔寸法を最小化することができ、枠や上辺部材の見付け寸法がさらにコンパクト化できる。
【0011】
また、本発明の面材支持構造では、前記吊下支持装置は、前記固定片部よりも見込み方向他方側かつ前記転動部材の下方に延びるとともに前記上レールの下側に近接可能な脱輪防止部と、この脱輪防止部を上下に位置調節するための位置調節部とを有し、前記位置調節部が前記固定片部よりも見込み方向一方側から操作可能に設けられ、前記上辺部材の固定片部には、前記位置調節部を挿通させる切欠きが設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、前述のように上辺部材の高さ寸法がコンパクト化されて上面部と上レールとの間隔寸法が小さい状態で、上レールの下側に位置する脱輪防止部を設けた場合に、固定片部に切欠きを設け、この切欠きを介して位置調節部を見込み方向一方側から操作可能に設けることで、上辺部材の見付け寸法の拡大を防止することができる。
【0012】
一方、本発明の建具は、上レールを有する上枠体と、前記上レールに沿って移動自在に吊り下げ支持される面材と、この面材に取り付けられて前記上レールに支持される吊下支持装置とを備えた建具であって、前記面材の上辺を構成する上辺部材は、見込み方向に沿った上面部と、この上面部の見込み方向一方側にて当該上面部よりも上方に立ち上がる固定片部と、前記上面部の見込み方向他方側でかつ前記固定片部上端よりも低い高さ位置に設けられる係止片部とを有して形成され、前記吊下支持装置は、前記上辺部材に固定される支持装置本体と、この支持装置本体に回転自在に取り付けられて前記上レールの上面に沿って転動可能な転動部材とを有して構成され、前記吊下支持装置の支持装置本体は、前記固定片部に沿って設けられて見込み方向一方側からの固着具で当該固定片部に固定される被固定部と、前記上面部に沿って見込み方向他方側に延びた先端側が前記係止片部に係止される被係止部と、前記被固定部よりも上方に延びて前記転動部材を支持する転動部材支持部とを有して形成され、前記被固定部よりも見込み方向他方側かつ前記被係止部よりも上方位置に前記転動部材が支持されるとともに、これらの被係止部と転動部材との間に見込み方向他方側から延びて前記上レールが位置することを特徴とする。
【0013】
以上の建具によれば、前述の面材支持構造と同様に、上枠体の見付け寸法を小さくでき、かつ上辺部材(框)も必要最小限の見付け寸法に抑えることができ、枠の有効な開口面積や面材の採光面積を拡大することができる。そして、枠や框の見付け寸法が小さくできることで、建具の外観意匠性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建具であるスライドタイプの自動ドア1を示す室内側から見た正面図である。図2は、自動ドア1を示す縦断面図である。
図1および図2において、自動ドア1は、建物の出入り口に設けられ、建物開口部に固定される枠体である建具枠(ドア枠)2と、この建具枠2内部の略半分の領域に嵌め込まれるガラスパネル(固定面材)3と、建具枠2内部でガラスパネル3の室内側に沿ってスライド開閉自在に支持される面材(可動面材)としての障子4と、障子4を開閉駆動する電動式の駆動装置5とを備えて構成されている。
建具枠2は、上枠(上枠体)6、下枠7および左右の縦枠8,9と、上枠6と下枠7との間に架設されて障子4との召合せ部を構成する図示しない縦骨とを有して構成されている。障子4は、それぞれアルミ形材製の上框11、下框12および左右の縦框13と、これらの上下左右の框材11,12,13を四周框組みした内部に嵌め込まれたガラスパネル14とを有して構成されている。駆動装置5は、上枠6の内部に設置された電動モータ5A、プーリ5Bおよびベルト5C等を有して構成され、ベルト5Cが障子4上部の吊下支持装置20(後述)に接続され、吊下支持装置20を介して駆動力を伝達して障子4を開閉駆動できるようになっている。
【0015】
建具枠2の上枠6は、図2に示すように、それぞれアルミ押出形材製の上枠本体6Aと、上枠本体6Aの室内側に取り付けられる室内パネル6Bとで下方に開口した全体箱状に形成され、その内部における上枠本体6Aに障子支持部材6Cが固定されている。上枠本体6Aの室外側下端部には、下方に開口した溝状のパネル保持部61が形成され、このパネル保持部61にガラスパネル3の上端縁がシールを介して保持されている。障子支持部材6Cは、上枠本体6Aの室外側側面部の内面に沿った鉛直片部62と、上枠本体6Aのパネル保持部61上面に沿って室内側に延びる中空部63と、この中空部63の室内側側面からさらに室内側に延びる上レール部64とを有して形成されている。そして、障子支持部材6Cの鉛直片部62に駆動装置5の電動モータ5Aおよびプーリ5Bが支持され、上レール部64の上側に吊下支持装置20が転動可能に載置されて障子4が吊り下げ支持されるようになっている。
【0016】
一方、建具枠2の下枠7は、障子4の可動範囲である左右の縦枠8,9間に渡って床材に埋設された下レール部材7Aと、ガラスパネル3の下方位置である縦骨と縦枠9との間に設けられる下枠パネル支持部材7Bと、これらの下レール部材7Aと下枠パネル支持部材7Bとを連結する下枠連結部材7Cとを有して構成されている。下レール部材7Aは、凹溝状の下レール71を有して形成されており、この下レール71には、障子4の下框12から下方に突設されたガイド片12Aが挿入され、これにより障子4の下端部が見込み方向にずれることなく開閉案内されるようになっている。また、下枠パネル支持部材7Bの上部には、上方に開口した溝状のパネル保持部72が形成され、このパネル保持部72に設けられたセッティングブロックにガラスパネル3が載置されるとともに、パネル保持部72にガラスパネル3の下端縁がシールを介して保持されている。そして、図示を省略するが、ガラスパネル3の両側端縁は、縦骨および縦枠9に形成されたパネル保持部に保持されている。
【0017】
次に、障子4上部の構造および吊下支持装置20について、図3〜図6も参照して説明する。
図3は、障子4上部を拡大して示す縦断面図である。図4は、障子4上部の吊下支持装置20を示す斜視図である。図5および図6は、それぞれ吊下支持装置20を示す平面図および側面図である。
障子4の上辺部材としての上框11は、図3および図4に示すように、見込み方向に沿った上面部11Aと、この上面部11Aの下側に形成されたパネル保持部11Bと、上面部11Aの見込み方向一方側である室内側にて上面部11Aよりも上方に立ち上がる固定片部11Cと、上面部11Aの見込み方向他方側である室外側に設けられる係止片部11Dとを有した断面形状に形成されている。パネル保持部11Bは、下方に開口した溝状に形成され、このパネル保持部11Bにガラスパネル14の上端縁がシールを介して保持されている。係止片部11Dは、上面部11Aから上方に立ち上がるとともに固定片部11C側に折れ曲がった鉤形状に形成され、この係止片部11Dの上面位置は、固定片部11Cの上端である上框11の上端縁よりも低い高さ位置に設けられている。このような上框11において、その長手方向の両端部近傍に各1つずつ計2つの吊下支持装置20が取り付けられている。
【0018】
吊下支持装置20は、図5および図6にも示すように、上框11に固定される支持装置本体21と、この支持装置本体21に回転自在に取り付けられて上レール部64の上面に沿って転動可能な転動部材である戸車22と、上レール部64の下側に近接可能な脱輪防止部23とを有して構成されている。そして、支持装置本体21は、折り曲げ加工した金属板材から構成され、上框11の固定片部11Cの室外側に沿って上下に延びて設けられ、かつ固定片部11Cの室外側に対向する一対の被固定部24と、上框11の上面部11Aに沿って見込み方向に延びる被係止部25と、被固定部24よりも上方に延びて戸車22を支持する転動部材支持部としての戸車支持部26とを有して形成されている。この戸車支持部26の室外側に、戸車位置調節部材27および回転軸22Aを介して戸車22が支持されるようになっている。また、戸車支持部26の室内側には、図2および図3に示すような連結部材28が固定され、この連結部材28を介して駆動装置5のベルト5Cと吊下支持装置20とが連結されるようになっている。
【0019】
支持装置本体21の被固定部24は、上框11の長手方向に沿って離隔した2箇所に形成され、固定片部11Cとの間に防振用のライナー24Aが介挿された状態で、固定片部11Cの見込み方向一方側(室内側)からの固着具であるビス(六角ネジ)24Bが螺合されることで固定片部11Cに固定されている。ここで、ライナー24Aは、上框11の固定片部11Cに対する支持装置本体21の見込み方向の位置調節機能も有しており、すなわちライナー24Aの厚さや枚数を適宜に設定することで、支持装置本体21の見込み位置が調節できるようになっている。また、被係止部25は、室外側に延びる平板状に形成されるとともに、その室外側端縁が係止片部11Dと上面部11Aとの間に挿入されて係止され、上下方向の移動が規制されるようになっている。このように被固定部24が固定片部11Cに固定され、被係止部25が係止片部11Dに係止されることで、支持装置本体21が上框11に対して上下左右に移動不能に固定されるようになっている。以上のような支持装置本体21は、上框11のパネル保持部11Bよりも上側かつ上面部11Aよりも上側に位置するとともに、上框11の見込み寸法からはみ出ないように設けられている。すなわち、支持装置本体21が上框11の上面部11Aやパネル保持部11Bよりも下側に延びて形成され、この下側に延びた位置で上框11固定された場合には、上框11の見付け寸法が拡大してしまい、支持装置本体21が上框11の見込み寸法からはみ出る大きさで形成された場合には、建具枠2の見込み寸法が拡大してしまう等の不都合が生じるが、本実施形態の支持装置本体21によれば、このような不都合が生じないようにできる。
【0020】
戸車支持部26は、上框11の固定片部11Cよりも上方に延びるとともに、上框11の長手方向に沿った長辺部26Aと、この長辺部26Aの両端部が室外側に折り曲げられた折曲片部26Bとを有し、平面コ字形に形成されている。そして、戸車支持部26の長辺部26Aには、斜め方向に延びるとともに回転軸22Aを挿通させる長孔26Cが設けられ、一方の折曲片部26Bには、戸車位置調節部材27に螺合する位置調節ボルト27Aが進退不能に貫通されている。この位置調節ボルト27Aを回転操作することで、戸車位置調節部材27が進退移動して回転軸22Aが長孔26Cに沿って上下移動し、これにより戸車22の上下位置が調節できるように構成されている。このような戸車位置調節部材27を介して戸車支持部26に支持された戸車22は、戸車支持部26および被固定部24よりも見込み方向他方側(室外側)で、かつ被係止部25よりも上方位置に支持されており、これらの戸車22と被係止部25との間には、図3に示すように、見込み方向他方側(室外側)から上レール部64を受け入れ可能なレール受入れ部20Aが形成されている。そして、レール受入れ部20Aに位置して戸車22を支持する上レール部64の上面(支持面)と、上框11の固定片部11Cの上端縁とは、略同一高さ位置にあり、固定片部11Cの室外側に重なって上レール部64が位置するように、上框11および吊下支持装置20が構成されている。
【0021】
また、戸車支持部26の長辺部26Aの下側でかつ一対の被固定部24間には、脱輪防止部23を挿通させる開口が形成されており、戸車支持部26の室内側に脱輪防止部23を上下に位置調節するための一対の位置調節部23Aが設けられている。そして、上框11の固定片部11Cには、図4および図6に示すように、位置調節部23Aを挿通させる切欠き11Eが設けられている。これらの位置調節部23Aは、脱輪防止部23の立上り片に形成されて上下に延びる長孔23Bと、この長孔23Bに室内側から挿通されて支持装置本体21に螺合されるビス23Cとを有して構成され、ビス23Cを緩めることで脱輪防止部23が上下に移動できるように構成されている。そして、脱輪防止部23の上面には、上レール部64の下面に摺接した際の摩擦抵抗を小さくするための低摩擦部材23Dが設けられている。この低摩擦部材23Dの上面は、位置調節部23Aにより脱輪防止部23を下げた状態では、上框11の係止片部11D上面と略同一高さに位置し、脱輪防止部23を上げた状態では、上レール部64の下面に近接した高さに位置するようになっている。
【0022】
以上のような障子4を上枠6に建て込む手順としては、先ず、上下左右の框材11,12,13を四周框組みした内部にガラスパネル14を嵌め込んで障子4を組み立ててから、この障子4の上框11に2つの吊下支持装置20を取り付ける。この際、上框11の長手方向の適宜な位置において、係止片部11Dを切り欠いておき、この切り欠いた部分に支持装置本体21の被係止部25を挿通してからスライドさせ、被係止部25を上面部11Aと係止片部11Dとの間に挿入し、さらに吊下支持装置20をスライドさせて上框11の取付位置に移動させる。そして、吊下支持装置20を取付位置に配置したら、上框11の固定片部11Cと被固定部24との間にライナー24Aが介挿してから、室内側から固定片部11Cを貫通させたビス24Bを被固定部24に螺合し、これにより吊下支持装置20の上框11への取り付けが完了する。また、下框12にガイド片12Aを取り付けておく。なお、支持装置本体21の上框11への設置方法としては、係止片部11Dの切り欠いた部分に被係止部25を挿通してからスライドさせるものに限らず、係止片部11Dの上面部11Aからの高さ寸法に余裕を持たせておき、支持装置本体21を斜めにして被係止部25の先端を係止片部11Dの下側に挿入してから、支持装置本体21を回転させる方法でもよい。さらに、上框11の長手方向左右の端部から支持装置本体21を挿入してもよい。
【0023】
次に、室内パネル6Bを取り外した状態の上枠6に対して室内側から障子4を建て込む。この際、吊下支持装置20の脱輪防止部23を下方に移動させてレール受入れ部20Aに空間を形成しておき、上レール部64に対して上方から戸車22を載置できるようにしておく。そして、戸車22を上レール部64に載置して支持させるとともに、下框12のガイド片12Aを下レール71に挿入してから、位置調節部23Aにより脱輪防止部23を上方に移動させて、低摩擦部材23Dが上レール部64の下面に近接した位置でビス23Cを締めて脱輪防止部23を位置決めする。これにより、障子4(つまり戸車22)の上方への移動が規制され、戸車22の脱輪が防止でき、建具枠2から障子4が外れないようにできる。このように吊下支持装置20を介して障子4を上枠6(上レール部64)に吊り下げ支持させたら、戸車支持部26に連結部材28を固定して駆動装置5のベルト5Cと吊下支持装置20とを連結してから、上枠6の室内パネル6Bを上枠本体6Aに取り付けて障子4の建て込みが完了する。
【0024】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、吊下支持装置20における支持装置本体21に被固定部24と被係止部25とが形成され、被固定部24が上框11の固定片部11Cに固定されるとともに、被係止部25が係止片部11Dに係止されることで、吊下支持装置20の取付強度が確保できる。すなわち、被固定部24が室内側にて上下に延びて形成され、その室内側からのビス24Bで固定片部11Cに固定され、被係止部25が室外側に延びて形成され、その室外側端縁が係止片部11Dに係止されることで、上下方向の荷重のみならず見込み方向に作用する力に対しても、これらの力を吊下支持装置20と障子4との間で確実に伝達することができる。
【0025】
(2)さらに、固定片部11Cおよび被固定部24と係止片部11Dおよび被係止部25とが見込み方向室内側と室外側とに分けて設けられ、これらが上下に重ならずに設けられているので、上框11の高さ寸法(見付け寸法)を小さくすることができる。また、被固定部24が見込み方向室内側からのビス24Bで固定片部11Cに固定されることで、障子4を組み立ててから上框11に吊下支持装置20を取り付けることができ、障子4の建て込み作業の効率化を図ることができる。
【0026】
(3)さらに、固定片部11Cの上端縁よりも係止片部11Dが低く形成され、この係止片部11Dに係止される被係止部25と戸車22との間にレール受入れ部20Aが形成されている。すなわち、固定片部11Cおよび被固定部24の室外側にレール受入れ部20Aが形成され、このレール受入れ部20Aに室外側から上レール部64が挿入されることで、上レール部64に支持される戸車22の上框11に対する高さ位置を低くすることができる。従って、上框11から上方への支持装置本体21および戸車22の突出寸法が小さくでき、上枠6や上框11の見付け寸法が抑えられ、建具枠2の有効な開口面積や障子4のガラスパネル14の採光面積を拡大することができる。
【0027】
(4)また、吊下支持装置20に設けた脱輪防止部23の位置調節部23Aが固定片部11Cの切欠き11Eを介して室内側から操作可能に設けられているので、障子4の建て込み時に脱輪防止部23を上框11の上面部11Aに向かって十分に低い位置、つまり低摩擦部材23Dの上面と係止片部11D上面とが略同一高さ位置になるまで下げることができ、脱輪防止部23がレール受入れ部20Aの空間を狭くしてしまうことがない。従って、脱輪防止部23を設けたとしても、戸車22を上框11に対して高くする必要がなく、支持装置本体21および戸車22の突出寸法の拡大を防止して、上枠6の見付け寸法を抑えることができる。
【0028】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、自動ドア1を例示して説明したが、本発明の建具は、このような自動ドア1に限らず、障子や引戸等の面材を手動で開閉するタイプの建具であってもよい。さらに、前記実施形態では、1枚の可動面材(障子4)を有した片引き形式の建具について説明したが、本発明の建具は、複数枚の可動面材を有した引違い形式や引き分け形式、三枚(あるいは四枚)建て形式の引き戸であってもよい。
また、本発明の建具は、出入り口として利用されるものに限らず、窓であってもよく、さらには建物内部に設けられる部屋の出入り口や収納の開口部に設けられる建具や、内部空間の間仕切り用として利用される建具であってもよい。
【0029】
また、前記実施形態では、障子4の上框11における見込み方向室内側に固定片部11Cが設けられ、室外側に係止片部11Dが設けられ、吊下支持装置20における見込み方向室内側に被固定部24が設けられ、室外側に被係止部25が設けられていたが、これら各部の室内外位置が逆であってもよい。すなわち、固定片部11Cおよび被固定部24が見込み方向室外側に設けられ、係止片部11Dおよび被係止部25が見込み方向室内側に設けられていてもよい。この場合には、レール受入れ部20Aが室内側に向かって開口し、このレール受入れ部20Aに対して室内側から上レールが挿入されるように構成されていればよい。
また、前記実施形態では、ガラスパネル3の端縁が上枠6や下枠7、縦枠9、縦骨のパネル保持部61,72にシールを介して保持され、障子4におけるガラスパネル14の端縁が上下左右の框材11,12,13のパネル保持部(例えば、上框11のパネル保持部11B)にシールを介して保持されていたが、ガラスパネル3,14の支持構造としては、シールを用いたものに限らず、適宜なガスケットやビードを用いた構造でもよい。さらに、ガラスパネル3,14の支持構造は、その片面が枠や框に対して接着され、他の片面側にシールやビードが圧入された構造であってもよい。
【0030】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す正面図である。
【図2】前記建具を示す縦断面図である。
【図3】前記建具における面材の上部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】前記面材上部の吊下支持装置を示す斜視図である。
【図5】前記吊下支持装置を示す平面図である。
【図6】前記吊下支持装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…建具である自動ドア、4…面材である障子、6…上枠体である上枠、11…上辺部材である上框、11A…上面部、11C…固定片部、11D…係止片部、11E…切欠き、20…吊下支持装置、20A…レール受入れ部、21…支持装置本体、22…転動部材である戸車、23…脱輪防止部、23A…位置調節部、24…被固定部、24B…固着具であるビス、25…被係止部、26…戸車支持部(転動部材支持部)、64…上レール部(上レール)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上レールに沿って移動自在に面材を吊り下げ支持する面材支持構造であって、
前記面材の上辺を構成する上辺部材と、この上辺部材に取り付けられて前記上レールに支持される吊下支持装置とを備え、
前記上辺部材は、見込み方向に沿った上面部と、この上面部の見込み方向一方側にて当該上面部よりも上方に立ち上がる固定片部と、前記上面部の見込み方向他方側でかつ前記固定片部上端よりも低い高さ位置に設けられる係止片部とを有して形成され、
前記吊下支持装置は、前記上辺部材に固定される支持装置本体と、この支持装置本体に回転自在に取り付けられて前記上レールの上面に沿って転動可能な転動部材とを有して構成され、
前記吊下支持装置の支持装置本体は、前記固定片部に沿って設けられて見込み方向一方側からの固着具で当該固定片部に固定される被固定部と、前記上面部に沿って見込み方向他方側に延びた先端側が前記係止片部に係止される被係止部と、前記被固定部よりも上方に延びて前記転動部材を支持する転動部材支持部とを有して形成され、
前記被固定部よりも見込み方向他方側かつ前記被係止部よりも上方位置に前記転動部材が支持されるとともに、これらの被係止部と転動部材との間に見込み方向他方側から前記上レールを受け入れ可能なレール受入れ部が形成されている面材支持構造。
【請求項2】
前記上辺部材の係止片部は、前記上面部から上方に立ち上がるとともに前記固定片部側に折れ曲がった鉤形状に形成され、
前記吊下支持装置の被係止部は、前記上辺部材の上面部に沿った平板状に形成されるとともに、その見込み方向他方側端縁が前記係止片部と前記上面部との間に挿入されて係止される請求項1に記載の面材支持構造。
【請求項3】
前記固定片部の上端縁と前記転動部材の下端縁とが略同一高さ位置に設けられている請求項1または請求項2に記載の面材支持構造。
【請求項4】
前記吊下支持装置は、前記固定片部よりも見込み方向他方側かつ前記転動部材の下方に延びるとともに前記上レールの下側に近接可能な脱輪防止部と、この脱輪防止部を上下に位置調節するための位置調節部とを有し、前記位置調節部が前記固定片部よりも見込み方向一方側から操作可能に設けられ、
前記上辺部材の固定片部には、前記位置調節部を挿通させる切欠きが設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の面材支持構造。
【請求項5】
上レールを有する上枠体と、前記上レールに沿って移動自在に吊り下げ支持される面材と、この面材に取り付けられて前記上レールに支持される吊下支持装置とを備えた建具であって、
前記面材の上辺を構成する上辺部材は、見込み方向に沿った上面部と、この上面部の見込み方向一方側にて当該上面部よりも上方に立ち上がる固定片部と、前記上面部の見込み方向他方側でかつ前記固定片部上端よりも低い高さ位置に設けられる係止片部とを有して形成され、
前記吊下支持装置は、前記上辺部材に固定される支持装置本体と、この支持装置本体に回転自在に取り付けられて前記上レールの上面に沿って転動可能な転動部材とを有して構成され、
前記吊下支持装置の支持装置本体は、前記固定片部に沿って設けられて見込み方向一方側からの固着具で当該固定片部に固定される被固定部と、前記上面部に沿って見込み方向他方側に延びた先端側が前記係止片部に係止される被係止部と、前記被固定部よりも上方に延びて前記転動部材を支持する転動部材支持部とを有して形成され、
前記被固定部よりも見込み方向他方側かつ前記被係止部よりも上方位置に前記転動部材が支持されるとともに、これらの被係止部と転動部材との間に見込み方向他方側から延びて前記上レールが位置する建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−308845(P2008−308845A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156268(P2007−156268)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】