説明

【課題】動作に伴う靴底の滑りを効果的に抑制しうる靴の提供。
【解決手段】ミッドソール10と、アウトソールと、複数のスパイクピンとを備える靴である。アウトソール10には、スパイクピンを取り付ける為の台座部材が設けらている。ミッドソール10は、高硬度部20と低硬度部18とを有する。台座部材の上方に存在するミッドソール10の一部であって台座部材の外輪郭線により区画される部分が台座上ミッド部である。この台座上ミッド部のうちミッドソールの外縁に近い側が近接側ミッド部である。この台座上ミッド部のうちミッドソールの外縁から遠い側が離間側ミッド部である。本発明の靴は、少なくとも1つの台座部材に関し、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnが、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfよりも小さくされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ、テニス、スカッシュ、フィールドホッケー、バスケットボール、エアロビクス体操等に適した靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴は、アウトソール、ミッドソール、インソール、アッパー等から構成されている。ミッドソールは、気泡を含むポリマー成形体からなる。通常のミッドソールには、基材ポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられている。ミッドソールは、衝撃吸収性に寄与する。特開平6−141904号公報は、ミッドソールに衝撃減衰部材が装着された靴を開示する。
【0003】
一方、グリップ性や安定性を確保するため、鋲を有する靴が知られている。鋲の材質として、金属、セラミック、合成樹脂等が知られている。特開2000−189211公報には、摩耗状態の確認が容易なゴルフシューズ用鋲及びこれを備えたゴルフシューズが開示されている。
【特許文献1】特開平6−141904号公報
【特許文献2】特開2000−189211公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルファーがゴルフボールを打撃する際は、左右の足先を結ぶ線が目標方向とほぼ平行となるようにアドレスする。アドレスでは、ゴルフクラブのヘッドはゴルフボールの近くに位置する。右利きゴルファーの場合、ゴルファーは、アドレスの状態からテイクバックを開始し、ヘッドを右へ、次いで上へと振り上げる。最もヘッドが振り上げられた位置は、トップ位置と称される。トップ位置からダウンスイングが開始されてヘッドが振り下ろされ、ヘッドがゴルフボールと衝突する。衝突後、ゴルファーはゴルフクラブを左へ、次いで上へと振り抜き、フィニッシュを迎える。
【0005】
トップ位置からフィニッシュにかけて、ゴルファーはボディターンを行う。ボディターンに伴い、足も体と共に回転しようとする。ボディターンにより、足を滑らせうる力が働く。ゴルファーは、自己の腕及びゴルフクラブを振る。スイング中、腕及びゴルフクラブには遠心力が作用する。この遠心力により、足を滑らせうる力が働く。右利きのゴルファーは、左足を軸足として使い、右足を蹴足として使う。左利きゴルファーの場合は、右足を軸足として使い、左足を蹴足として使う。軸足及び蹴足が滑ると、スイングが乱れる。滑りにくい靴は、スイングを安定させる。スイングに適した靴が望まれている。
【0006】
他のスポーツにおいても、靴底を滑らせうる力が働く。テニス及びスカッシュでは、ラケットをスイングするときに、靴底の滑りが生じやすい。フィールドホッケーでは、スティックをスイングするときに、靴底の滑りが生じやすい。バスケットボール及びエアロビクス体操では、左右反転動作のとき等に、靴底の滑りが生じやすい。これらのスポーツにおいても、動作に適した靴が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、動作に伴う靴底の滑りを効果的に抑制しうる靴の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る靴は、ミッドソールと、アウトソールと、複数のスパイクピンとを備える。上記アウトソールには、上記スパイクピンを取り付ける為の台座部材が設けられている。上記ミッドソールは、高硬度部と低硬度部とを有する。上記台座部材の上方に存在する上記ミッドソールの一部であって上記台座部材の外輪郭線により区画される部分が台座上ミッド部とされ、この台座上ミッド部のうちミッドソールの外縁に近い側が近接側ミッド部とされ、この台座上ミッド部のうちミッドソールの外縁から遠い側が離間側ミッド部とされたとき、少なくとも1つの台座部材に関し、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnは、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfよりも小さい。
【0009】
好ましくは、複数の台座部材のうちの50%以上の台座部材に関し、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnが、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfよりも小さい。
【0010】
好ましくは、上記ミッドソールの輪郭内に画かれうる最長の線分が長さ線とされ、この長さ線方向において6等分されたミッドソールの各領域が、つま先側から踵側に向かって順に第一領域、第二領域、・・・、第五領域及び第六領域とされたとき、取り付けられるスパイクピンの面積重心が第二領域に位置する台座部材に関し、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnは、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfよりも小さい。
【0011】
好ましくは、上記低硬度部の硬度HLの高硬度部の硬度HHに対する比(HL/HH)は、0.20以上0.90以下である請求項1から3に記載の靴。
【発明の効果】
【0012】
低硬度体積率Vnが低硬度体積率Vfよりも小さくされることにより、スパイクピンが倒れにくくなり、靴の滑りが効果的に抑制されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、以下の説明において、下側とは接地面側を意味し、上側とはアッパー側を意味する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフ靴2が示された一部切り欠き側面図である。このゴルフ靴2は、アッパー4及び底部6を備えている。底部6は、インソール8、ミッドソール10及びアウトソール12からなる。インソール8は、ミッドソール10と積層されている。ミッドソール10は、アウトソール12と積層されている。アウトソール12は、その下面に、下方に向けて突出する多数の突起14を備えている。アッパー4の材質及び構造は、既知のアッパーのそれと同等である。インソール8の材質及び構造は、既知のインソールのそれと同等である。アウトソール12の材質及び構造は、既知のアウトソールのそれと同等である。アウトソール12は、単層構造である。
【0015】
なお、アウトソール12は、多層構造でもよい。例えば、下層及び上層の2層構造よりなるアウトソールでもよい。この場合、例えば、下層から延びる突起と、上層から延びる突起とを有し、上層から延びる突起は、下層に設けられた貫通孔を通って下側に露出しているアウトソールでもよい。このアウトソールにおいて、下層及びそこから延びる突起が加硫ゴムよりなり、上層及びそこから延びる突起が樹脂よりなっていてもよい。この樹脂として、熱可塑性ウレタンが例示される。
【0016】
ミッドソール10は、気泡を含むポリマー成形体からなる。ミッドソール10の典型的な基材ポリマーは、EVAである。EVAにおける酢酸ビニル含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。EVAにおける酢酸ビニル含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。ミッドソールの基材ポリマーとして、EVAとポリオレフィンとが併用されることが好ましい。ポリオレフィンは、衝撃吸収性及び反発性に寄与しうる。この観点から、基材ポリマーの全量に対するポリオレフィンの量は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。コスト及び接着性の観点から、ポリオレフィンの量は80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。好ましいポリオレフィンとしては、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン及びポリエチレンが例示される。
【0017】
ミッドソール10が、独立気泡を含んでもよく、連続気泡を含んでもよい。形状復元力及び非吸水性の観点から、独立気泡が好ましい。気泡は、通常は熱分解型発泡剤の発泡によって形成される。用いられる熱分解型発泡剤としては、アゾ化合物(例えばアゾジカルボンアミド)、ニトロソ化合物(例えばジニトロソペンタメチレンテトラミン)及びトリアゾール化合物が例示される。ミッドソール10の発泡倍率(気泡が存在する場合の密度に対する気泡が存在しない場合の密度の比)は、2倍以上が好ましく3倍以上がより好ましい。発泡倍率は、30倍以下が好ましく、15倍以下がより好ましく、10倍以下が特に好ましい。
【0018】
図2は、ゴルフ靴2の底部6を接地面側から見た平面図である。図2は、アウトソール12を接地面側から見た平面図でもある。アウトソール12の下面は、接地面である。図2では、突起14の記載が省略されている。このゴルフ靴2は、左足用である。右足用の底部6の形状は、図2に示された形状が左右反転した形状である。
【0019】
図2が示すように、アウトソール12には、スパイクピンを取り付ける為の台座部材16が設けられている。台座部材16は、複数である。具体的には、台座部材16は、8個である。台座部材16に、スパイクピン17が取り付けられる。図2及び本願の各図は、スパイクピン17が取り外された状態を示している。スパイクピン17は、全ての台座部材16に取り付けられる。スパイクピン17は、台座部材16に締結される。スパイクピン17は、例えば合成樹脂等からなる。ゴルフ靴2を使用する際には、スパイクピンが取り付けられる。図2では、1つの台座部材16に関してのみ、取り付けられたスパイクピン17を仮想線で示している。1つの台座部材16に、1つのスパイクピンが取り付けられる。
【0020】
以下の説明を容易とするため、8つの台座部材16が配置された位置のそれぞれが、第一位置N1、第二位置N2、第三位置N3、・・・、第七位置N7及び第八位置N8とされる(図2参照)。1つの台座部材16に、1つのスパイクピン17が取り付けられる。スパイクピン17の数は、台座部材16の数と同じである。台座部材16及びスパイクピン17は、複数の位置に配置されている。なお、スパイクピンの数は、通常、5個以上10個以下程度とされる。
【0021】
図3は、アウトソール12の上面を示す平面図である。図4は、ミッドソール10の下面を示す平面図である。図5は、ミッドソール10の上面を示す平面図である。ミッドソール10及びアウトソール12は、左足用である。右足用のミッドソール10及びアウトソール12の形状は、図3から図5に示された形状が左右反転した形状である。図6は、図2のVI−VI線に沿った拡大断面図である。図6では、ミッドソール10、アウトソール12及び台座部材16が示されており、他の部分の記載が省略されている。図6では、突起14の記載が省略されている。図6において、左側がインサイドであり、右側がアウトサイドである。
【0022】
ミッドソール10は、低硬度部18と高硬度部20とを有する。低硬度部18の硬度は、高硬度部20の硬度よりも小さい。低硬度部18の弾性率は、高硬度部20の弾性率よりも小さい。ミッドソール10に圧縮荷重が加わったとき、低硬度部18は高硬度部20よりも変形しやすい。低硬度部18が、互いの硬度が異なる2以上の部位からなってもよい。高硬度部20が、互いの硬度が異なる2以上の部位からなってもよい。
【0023】
本実施形態のミッドソール10は、低硬度部18と高硬度部20とからなる。ミッドソール10において、低硬度部18以外の部分が、高硬度部20である。
【0024】
図3が示すように、アウトソール12の上面には、突出部21が設けられている。突出部21の輪郭は、円形である。図6が示すように、突出部21の内部には、台座部材16が埋設されている。図3及び図6が示すように、アウトソール12は、貫通孔23を有している。この貫通孔23は、突出部21の中央に位置する。図6が示すように、この貫通孔23は、台座部材16により下方から塞がれている。突出部21により、アウトソール12の重量を抑えつつ、台座部材16がアウトソール12に確実に取り付けられる。
【0025】
図4が示すように、ミッドソール10の下面には、凹部25が設けられている。この凹部25は、前述したアウトソール12の突出部21に対応して設けられている。凹部25は、突出部21と同数設けられている。図6が示すように、凹部25の内部に突出部21が挿入されている。凹部25により、アウトソール12とミッドソール10との合計厚みが抑制され、ゴルフ靴2が軽量化されうる。
【0026】
図4及び図5が示すように、低硬度部18は、矩形である。低硬度部18は、台座部材16と同数設けられている。1つの台座部材16の上方に、1つの低硬度部18が設けられている。低硬度部18の形状及び個数は、特に限定されない。1つの低硬度部18が、複数の台座部材16の上方に延在していてもよい。
【0027】
図5が示すように、低硬度部18は、ミッドソール10の上面側に露出している。図4が示すように、低硬度部18は、ミッドソール10の下面側には露出していない。低硬度部18が、ミッドソール10を貫通していてもよい。
【0028】
図6が示すように、低硬度部18の厚みは、一定である。低硬度部18の下面と高硬度部20の上面との境界k1は、接地面に対して略水平である。なお、低硬度部18の厚みが変化していてもよい。境界k1が水平方向に対して傾斜した傾斜面であってもよい。例えば、境界k1は、インサイドからアウトサイドに向かって上向きに傾斜していてもよい。高硬度部20の厚みは、境界k1に沿ってインサイドからアウトサイドに向かって徐々に大きくなっていてもよい。低硬度部18の厚みは、境界k1に沿ってインサイドからアウトサイドに向かって徐々に小さくなっていてもよい。
【0029】
図6が示すように、台座部材16は、ネジ穴22と、外縁24とを有する。ネジ穴22は、雌ネジである。ネジ穴22は、ネジ山26を有する。ネジ山26は、螺旋状である。図示されないスパイクピンの雄ネジをネジ穴22にねじ込むことにより、スパイクピンが台座部材16に取り付けられる。スパイクピンは、着脱可能である。外縁24は、アウトソール12の内部に埋め込まれている。
【0030】
本発明では、台座上ミッド部28が定義される。台座上ミッド部28は、ミッドソール10の一部である。台座上ミッド部28は、ミッドソール10のうち、台座部材16の上方に存在する部分である。台座上ミッド部28は、台座部材16の外輪郭線30(図6参照)により区画される。より詳細には、靴を接地面を下にして水平面h上に静置した基準状態において、上記水平面hに対して垂直な方向に外輪郭線30を投影したとき、この投影像の集合である区画面31の内側部分が、台座上ミッド部28である。区画面31は、図6及び図7において一点鎖線で示される。図7は、図6の断面図のうちの台座上ミッド部28のみを抽出して記載した断面図である。
【0031】
台座部材16の外輪郭線30は、外縁24により形成される。本実施形態では、外輪郭線30は、円形である。本実施形態において、台座上ミッド部28は、円盤状である。外輪郭線30の形状は、特に限定されない。
【0032】
本発明では、近接側ミッド部32及び離間側ミッド部34が定義される。台座上ミッド部28は、近接側ミッド部32と離間側ミッド部34とに区画される。近接側ミッド部32は、台座上ミッド部28の一部である。離間側ミッド部34は、台座上ミッド部28の一部である。
【0033】
近接側ミッド部32と離間側ミッド部34とを区画する区画面pの定義は、次の通りである。図8は、図4と同様に、ミッドソール10を下面から見た図である。ただし、見やすい図とするため、図8では、凹部25を示す線の記載が省略されている。図8においてAで示されるのは、長さ線である。長さ線Aは、ミッドソール10の輪郭内に画かれうる最長の線分である。図8において長さ線Aは、二点鎖線で示されている。図8においてc1で示されるのは、スパイクピンの面積重心である。上記基準状態において、スパイクピンの外輪郭線(図示されない)を水平面hに投影した投影像の面積重心が、面積重心c1である。上記基準状態において、面積重心c1を通り、長さ線Aに対して平行で、且つ水平面hに対して垂直な平面が、区画面pである。本実施形態では、8つの区画面pが定まる。図8では、8つの区画面pのうち、2つの区画面pが示されている。
【0034】
台座上ミッド部28は、区画面pにより、近接側ミッド部32と離間側ミッド部34とに区画される。図8では、8つの台座上ミッド部28のうち、2つの台座上ミッド部28が、ハッチングで示されている。図8において、近接側ミッド部32と離間側ミッド部34とは、互いに異なるハッチングで示されている。図8においてzで示されるのは、補助線である。補助線zは、長さ線Aに垂直で且つ面積重心c1を通る直線である。図8の平面視において、ミッドソール10の輪郭線と補助線zとの交点が、t1及びt2である。面積重心c1からの距離が近い方の交点が近接交点t1であり、面積重心c1からの距離が遠い方の交点が離間交点t2である。区画面pにより区画された2つの部分のうち、近接交点t1側の部分が、近接側ミッド部32である。区画面pにより区画された2つの部分のうち、離間交点t2側の部分が、離間側ミッド部34である。
【0035】
ミッドソール10では、すべての台座部材16に関し、近接側ミッド部32における低硬度体積率Vnは、離間側ミッド部34における低硬度体積率Vfよりも小さい。換言すれば、全ての台座部材16に関し、Vf>Vnである。低硬度体積率Vfは、離間側ミッド部34の全体積のうち、低硬度部18の体積が占める割合(%)である。低硬度体積率Vnは、近接側ミッド部32の全体積のうち、低硬度部18の体積が占める割合(%)である。
【0036】
Vf>Vnとされることにより、スパイクピン(スパイクピンの鉛直方向の軸線)が、靴底の外縁側に向かって倒れにくくなる。これにより、使用者の動作に起因する靴底の滑りが効果的に抑制される。滑りが抑制されることにより、踏ん張り力が向上し、ゴルフスイング等の動作が安定化しうる。滑りが抑制さえることにより、ゴルファーは力を地面に伝えやすい。このゴルフ靴2は、大きなヘッドスピードに寄与する。大きなヘッドスピードは、大きな飛距離を生む。
【0037】
Vf>Vnとされたスパイクピンが異なる位置に複数設けられることにより、複数方向における滑りが効果的に抑制される。例えば、図2の実施形態において、インサイドへの滑りを抑制することについて寄与度が高いスパイクピンは、比較的アウトサイドに位置するスパイクピン(例えば位置N3、位置N5及び位置N7のスパイクピン)である。アウトサイドへの滑りを抑制することについて寄与度が高いスパイクピンは、比較的インサイドに位置するスパイクピン(例えば位置N2、位置N4および位置N6のスパイクピン)である。
【0038】
滑りを抑制する上記効果を高める観点から、差(Vf−Vn)は、10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。
【0039】
図6が示すように、高硬度部20は、台座部材16の上方に存在している。台座部材16の上方に存在する高硬度部20により、スパイクピンの突き上げが抑制され、履き心地が良好となる。台座部材16の上方に存在する高硬度部20により、台座部材16の安定性が高まり、スパイクピンの安定性が高まる。図6が示すように、高硬度部20は、台座上ミッド部28の全域に設けられている。高硬度部20は、台座上ミッド部28の下面全体を覆っている。これにより、ベース16の安定性が高まり、スパイクピンの安定性が高まる。
【0040】
本実施形態では、全ての台座部材16に関し、Vf>Vnとされている。本発明では、少なくとも1つの台座部材16に関し、Vf>Vnとされていればよい。好ましくは、台座部材16の全個数をXとし、その上方の台座上ミッド部28においてVf>Vnとされている台座部材16の個数をYとしたとき、X個中におけるY個の割合α(%)は、10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。上記実施形態では、Xが8個であり、Yも8個であり、割合αは100%である。
【0041】
図9は、図4と同様に、ミッドソール10を下面から見た図である。ただし、見やすい図とするため、図9では、凹部25を示す線の記載が省略されている。図9が示すように、長さ線A方向において6等分されたミッドソールの各領域が、つま先側から踵側に向かって順に第一領域R1、第二領域R2、・・・、第五領域R5及び第六領域R6とされる。本発明の好ましい形態は、取り付けられるスパイクピンの面積重心c1が第二領域R2に位置する台座部材16に関し、Vf>Vnとされる。即ち、本実施形態のミッドソール10で言えば、位置N2及び位置N3に位置する台座部材16に関し、Vf>Vnとされているのが好ましい。面積重心c1が第二領域R2に位置するスパイクピンは、横方向(インサイド又はアウトサイド)における滑りを効果的に抑制しうる。特に、面積重心c1が第二領域R2に位置するスパイクピンは、ゴルフスイングの安定化に対する寄与度が大きい。
【0042】
低硬度部18の硬度HLの、高硬度部20の硬度HHに対する比(HL/HH)は、0.20以上0.90以下が好ましい。比(HL/HH)が0.20以上に設定されることにより、硬度の急激な変化が抑制される。この観点から、比(HL/HH)は0.30以上がより好ましく、0.40以上が特に好ましい。比(HL/HH)が0.90以下に設定されることにより、前述した滑り抑制効果が向上しうる。この観点から、比(HL/HH)は0.85以下がより好ましく、0.80以下が特に好ましい。低硬度部18の硬度HLは、20以上70以下が好ましい。高硬度部20の硬度HHは、40以上85以下が好ましい。硬度は、日本ゴム協会標準規格に準拠して、高分子計器株式会社のアスカーC型硬度計にて測定される。
【0043】
高硬度部20の発泡倍率よりも大きな発泡倍率が低硬度部18に適用されることにより、硬度の相違が達成されうる。高硬度部20の基材ポリマーとは異なる基材ポリマーが低硬度部18に用いられることにより、硬度の相違が達成されうる。高硬度部20における添加剤の量とは異なる量の添加剤が低硬度部18に添加されることにより、硬度の相違が達成されうる。高硬度部20の添加剤とは異なる添加剤が低硬度部18に配合されることにより、硬度の相違が達成されうる。
【0044】
図6において両矢印T1で示されているのは、台座上ミッド部28におけるミッドソール10の厚みである。ミッドソール10の強度を高めるとともに、台座部材16を安定化する観点から、厚みT1は、2mm以上、さらには5mm以上が好ましい。ミッドソール10の重量を抑える観点から、厚みT1は、25mm以下、さらには20mm以下、さらには15mm以下が好ましい。
【0045】
ミッドソール10の下面36(図7参照)に低硬度部18と高硬度部20との境界線が存在すると、この境界線が亀裂等の損傷の原因となることがある。ミッドソール10の耐久性の観点から、境界線が下面36に存在しないことが好ましい。換言すれば、低硬度部18が下面36に露出しないことが好ましい。
【0046】
ゴルフ靴2は、公知の方法により製造されうる。ミッドソール10は、別々に成形された低硬度部18と高硬度部20とを接着剤等により接合して製造されうる。
【0047】
図10は、本発明の他の実施形態に係るゴルフ靴のミッドソール40が示された平面図である。図10は、ミッドソール40の上面を示す。前述したミッドソール10と同様に、ミッドソール40は、左足用である。ミッドソール40は、低硬度部42と、高硬度部44とを有する。
【0048】
低硬度部の輪郭形状を除き、ミッドソール40の構造は、ミッドソール10と同じである。ミッドソール40の低硬度部42は、2個である。1つの低硬度部42が、複数の台座上ミッド部に属している。前述したゴルフ靴2におけるミッドソール10を、このミッドソール40と置換して得られるゴルフ靴においても、全ての台座部材16に関し、Vf>Vnとなっている。このように、低硬度部の形状は、特に限定されない。低硬度部の個数は、台座部材の個数と関係なく決定されうる。
【0049】
靴を安定させるには、スパイクピンが靴底の外縁に近い方が有利である。滑りにくさ及び安定性を向上させる観点から、面積重心c1から靴底外縁までの距離Dは、25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、18mm以下が更に好ましい。スパイクピンが靴底の外縁に近すぎると、靴底の外縁部に過度の力が作用し、接着不良が起こりやすくなる。靴の耐久性を向上させる観点から、面積重心c1から靴底外縁までの距離Dは、12mm以上が好ましく、13mm以上が好ましく、14mm以上が好ましい。複数のスパイクピンの全てにおいて、上記距離Dが好ましい範囲となるのがより好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0051】
以下の説明を容易とするため、前述した第一実施形態における8つの低硬度部18のそれぞれに、次の符合を付する。第一位置N1に係る低硬度部18が低硬度部n1とされ、第二位置N2に係る低硬度部18が低硬度部n2とされ、以下同様に、低硬度部n3、低硬度部n4、・・・、低硬度部n8とされる(図4及び図5参照)。
【0052】
[実施例1]
低硬度部n3以外の低硬度部が設けられない他は上記ミッドソール10と同様にして、図4及び図5に示されたミッドソールを作成した。換言すれば、低硬度部n1、低硬度部n2、低硬度部n4、低硬度部n5、低硬度部n6、低硬度部n7及び低硬度部n8が高硬度部に置換された他は、上記ミッドソール10と同様にして、図4及び図5に示された形状のミッドソールを作成した。低硬度部の硬度HLは40とされ、高硬度部の硬度HHは70とされた。このミッドソールに、前述したアウトソール12と同様のアウトソールを取り付け、更にインソール及びアッパーを取り付けて、実施例1のゴルフ靴を得た。実施例1では、上記割合αは、約13%である。この割合αは、(1/8)×100で計算される。低硬度部が設けられた箇所において、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfは50%であり、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnは0%である。実施例1の仕様と評価結果が、下記の表1で示される。
【0053】
[実施例2]
低硬度部n2及び低硬度部n3以外の低硬度部が設けられない他は上記ミッドソール10と同様にして、図4及び図5に示されたミッドソールを作成した。換言すれば、低硬度部n1、低硬度部n4、低硬度部n5、低硬度部n6、低硬度部n7及び低硬度部n8が高硬度部に置換された他は、上記ミッドソール10と同様にして、図4及び図5に示された形状のミッドソールを作成した。低硬度部の硬度HLは40とされ、高硬度部の硬度HHは70とされた。このミッドソールに、前述したアウトソール12と同様のアウトソールを取り付け、更にインソール及びアッパーを取り付けて、実施例2のゴルフ靴を得た。実施例2では、上記割合αは、25%である。この割合αは、(2/8)×100で計算される。低硬度部が設けられた箇所において、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfは50%であり、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnは0%である。実施例2の仕様と評価結果が、下記の表1で示される。
【0054】
[実施例3]
低硬度部n2、低硬度部n3、低硬度部n6及び低硬度部n7以外の低硬度部が設けられない他は上記ミッドソール10と同様にして、図4及び図5に示された形状のミッドソールを作成した。換言すれば、低硬度部n1、低硬度部n4、低硬度部n5及び低硬度部n8が高硬度部に置換された他は、上記ミッドソール10と同様にして、図4及び図5に示された形状のミッドソールを作成した。低硬度部の硬度HLは40とされ、高硬度部の硬度HHは70とされた。このミッドソールに、前述したアウトソール12と同様のアウトソールを取り付け、更にインソール及びアッパーを取り付けて、実施例3のゴルフ靴を得た。実施例3では、上記割合αは、50%である。この割合αは、(4/8)×100で計算される。低硬度部が設けられた箇所において、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfは50%であり、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnは0%である。実施例3の仕様と評価結果が、下記の表1で示される。
【0055】
[実施例4]
上記ミッドソール10と同様にして、図4及び図5に示されたミッドソールを作成した。このミッドソールは、ミッドソール10と同様、低硬度部n1、低硬度部n2、低硬度部n3、低硬度部n4、低硬度部n5、低硬度部n6、低硬度部n7及び低硬度部n8を備えている。低硬度部の硬度HLは40とされ、高硬度部の硬度HHは70とされた。このミッドソールに、前述したアウトソール12と同様のアウトソールを取り付け、更にインソール及びアッパーを取り付けて、実施例2のゴルフ靴を得た。実施例2では、上記割合αは、100%である。この割合αは、(8/8)×100で計算される。低硬度部が設けられた箇所において、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfは50%であり、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnは0%である。実施例4の仕様と評価結果が、下記の表1で示される。
【0056】
[実施例5から7]
低硬度体積率Vfが表1で示される値とされた以外は実施例4と同様にして、実施例5から7のゴルフ靴を得た。低硬度体積率Vfの調整は、低硬度部の厚みを変化させることにより達成された。低硬度部の配設位置、低硬度部の硬度及び高硬度部の硬度は、実施例4と同様とされた。実施例5から7の仕様と評価結果が、下記の表1で示される。
【0057】
[比較例]
全ての低硬度部が高硬度部に置換された他は実施例4と同様にして、比較例のゴルフ靴を得た。比較例のミッドソールは、低硬度部を有さない。比較例のミッドソールは、高硬度部のみからなる。比較例の仕様と評価結果が、下記の表1で示される。
【0058】
[打撃テスト]
ゴルフ靴をゴルファーに着用させ、ドライバーでゴルフボールを10回打撃させた。そして、飛距離、飛距離ばらつき及び打球方向ばらつきを測定した。10名のゴルファーによりテストを行った。飛距離は、10名のテスターによる合計100回の打撃の平均値である。飛距離ばらつきは、1人のテスターの10回の打撃のうちの最小値と最大値との差をこのテスターのデータとし、10名分のデータを平均した値である。打球方向ばらつきは、1人のテスターの10回の打撃のうち最も左側の打球と最も右側の打球との左右方向距離をこのテスターのデータとし、10名分のデータを平均した値である。これらの結果が、下記の表1に示されている。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、実施例のゴルフ靴により、大きな飛距離が得られる。実施例のゴルフ靴は、飛距離及び打球方向の安定に寄与する。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る靴は、ゴルフ以外の種々のスポーツにも適している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフ靴が示された一部切り欠き側面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフ靴の接地面が示された平面図である。
【図3】図3は、図1のゴルフ靴のアウトソールの上面が示された平面図である。
【図4】図4は、図1のゴルフ靴のミッドソールの下面が示された平面図である。
【図5】図5は、図1のゴルフ靴のミッドソールの上面が示された平面図である。
【図6】図6は、図2のVI−VI線に沿った拡大断面図である。
【図7】図7は、図6から台座上ミッド部のみを抽出した断面図である。
【図8】図8は、近接側ミッド部及び離間側ミッド部を説明するための図である。
【図9】図9は、第一領域から第六領域を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態に係るゴルフ靴のミッドソールが示された平面図である。
【符号の説明】
【0063】
2・・・ゴルフ靴
4・・・アッパー
6・・・底部
8・・・インソール
10・・・ミッドソール
12・・・アウトソール
14・・・突起
16・・・台座部材
17・・・スパイクピン
18・・・低硬度部
20・・・高硬度部
28・・・台座上ミッド部
32・・・近接側ミッド部
34・・・離間側ミッド部
p・・・区画面
A・・・長さ線
c1・・・スパイクピンの面積重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッドソールと、アウトソールと、複数のスパイクピンとを備え、
上記アウトソールには、上記スパイクピンを取り付ける為の台座部材が設けられ、
上記ミッドソールは、高硬度部と低硬度部とを有し、
上記台座部材の上方に存在する上記ミッドソールの一部であって上記台座部材の外輪郭線により区画される部分が台座上ミッド部とされ、この台座上ミッド部のうちミッドソールの外縁に近い側が近接側ミッド部とされ、この台座上ミッド部のうちミッドソールの外縁から遠い側が離間側ミッド部とされたとき、
少なくとも1つの台座部材に関し、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnは、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfよりも小さい靴。
【請求項2】
複数の台座部材のうちの50%以上の台座部材に関し、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnが、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfよりも小さい請求項1に記載の靴。
【請求項3】
上記ミッドソールの輪郭内に画かれうる最長の線分が長さ線とされ、この長さ線方向において6等分されたミッドソールの各領域が、つま先側から踵側に向かって順に第一領域、第二領域、・・・、第五領域及び第六領域とされたとき、
取り付けられるスパイクピンの面積重心が第二領域に位置する台座部材に関し、近接側ミッド部における低硬度体積率Vnが、離間側ミッド部における低硬度体積率Vfよりも小さい請求項1に記載の靴。
【請求項4】
上記低硬度部の硬度HLの高硬度部の硬度HHに対する比(HL/HH)が、0.20以上0.90以下である請求項1から3に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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