説明

駆動回路、当該駆動回路を具備する表示装置、及び当該表示装置を具備する電子機器

【課題】チャネルが非晶質半導体によって構成される薄膜トランジスタを単極性の駆動回路に用いる際、しきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正する駆動回路を提供することを課題の一とする。
【解決手段】半導体層の上下に絶縁層を介して配置された第1のゲート及び第2のゲートを有する単極性のトランジスタで構成される駆動回路において、第1のゲートには、トランジスタのスイッチングを制御するための第1の信号が入力され、第2のゲートには、トランジスタのしきい値電圧を制御するための第2の信号が入力され、第2の信号は、トランジスタのソースとドレインとの間を流れる電流を含む、駆動回路の消費電流の値に応じて制御されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路に関する。または、当該駆動回路を具備する表示装置に関する。または、当該表示装置を具備する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、液晶テレビなどの大型表示装置の普及に伴い、より付加価値の高い製品が求められており、開発が進められている。特に、チャネル領域が非晶質半導体、特に酸化物半導体によって構成される薄膜トランジスタ(TFT)を用いて、画素部と同じ基板に走査線駆動回路などの駆動回路を構成する技術は、活発に開発が進められている。
【0003】
チャネル領域が非晶質半導体によって構成される薄膜トランジスタは、単極性の回路構成によって駆動回路を構成することが多く、一例としては、特許文献1に記載の構成が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−251348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャネル領域が非晶質半導体によって構成される薄膜トランジスタを単極性の駆動回路に用いる場合、しきい値電圧の変動を生じる等により、トランジスタがディプレッション型(ノーマリーオンともいう)になることがある。ノーマリーオンの場合には、トランジスタからのリーク電流により、消費電力の増大、及び出力信号の異常といった誤動作の原因になるといった問題がある。
【0006】
上述のしきい値電圧の変動の程度は、基板毎に異なるといったばらつきが生じることもあり、予めノーマリーオンとなる際の対策を講じた回路設計では、そのばらつきにまで対応することは難しくなるといった問題もあり得る。そのため、薄膜トランジスタの特性がノーマリーオンとなるしきい値電圧のシフトの大きさに関わらず、消費電力の増加、誤動作のない駆動回路となる回路設計であることが求められる。
【0007】
しきい値電圧を制御できる薄膜トランジスタの一例としては、第1のゲート端子(第1のゲートという)と、第2のゲート端子(第2のゲートという)と、ドレイン端子(ドレインともいう)と、ソース端子(ソースともいう)とを含む少なくとも四つの端子を有する素子がある。前述の4端子の薄膜トランジスタは、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有しており、チャネル領域を介してドレイン領域とソース領域の間に電流を流すことが出来る。前述の4端子の薄膜トランジスタでは、チャネル領域の上下に第1のゲート、及び第2のゲートが配置され、第1のゲートに薄膜トランジスタの導通または非導通といったスイッチングを制御する信号(第1の信号ともいう)が供給され、第2のゲートに薄膜トランジスタのしきい値電圧を制御する信号(第2の信号ともいう)が供給される。
【0008】
なお前述の4端子の薄膜トランジスタでは、高電源電位Vddを供給するための配線側に接続される端子をドレイン端子、低電源電位Vssを供給するための配線側に接続される端子をソース端子として説明することもあるが、ソース端子とドレイン端子を、第1端子、第2端子と表記するものとする。また、第1のゲートと第2のゲートに供給される信号は、第1の信号を第2のゲートに供給し、第2の信号を第1のゲートに供給するといったように、逆の関係であっても構わない。
【0009】
図8(A)に、前述の4端子の薄膜トランジスタの断面構成の一例を示す。図8(A)に示すように薄膜トランジスタ900は、基板907上に第1のゲート901が設けられ、第1のゲート901上にゲート絶縁膜902が設けられ、ゲート絶縁膜902上に酸化物半導体膜903が設けられ、酸化物半導体膜903上を一部覆って導電膜でなるソース端子904A、ドレイン端子904Bが設けられ、酸化物半導体膜903、ソース端子904A、及びドレイン端子904Bを覆って絶縁層905が設けられ、絶縁層905上に第2のゲート906が設けられるように形成される。
【0010】
図8(A)に示すチャネル領域の上下に第1のゲート901、及び第2のゲート906が配置される薄膜トランジスタ900の回路記号を図8(B)に示す。図8(B)に示すように、薄膜トランジスタ900は、第1のゲート901と、第2のゲート906と、ソース端子904Aと、ドレイン端子904Bの端子を有する。薄膜トランジスタ900は、第1のゲート901にソース端子904Aとドレイン端子904Bとの間の導通または非導通といったスイッチングを制御する第1の信号G1が入力され、第2のゲート906に薄膜トランジスタのしきい値電圧を制御する第2の信号G2を入力するものである。なお、図8(B)に示す薄膜トランジスタ900のシンボルは、4端子によって制御される薄膜トランジスタを意味するものとする。
【0011】
なお第1の信号G1とは、ソース端子904Aとドレイン端子904Bとの間の電気的な制御(スイッチング)を行う信号である。また、第2の信号G2とは、薄膜トランジスタのしきい値電圧を制御する信号であり、nチャネル型トランジスタの場合、負の電圧を印加することにより、ディプレッション型(ノーマリーオン)のトランジスタをエンハンスメント型(ノーマリーオフ)のトランジスタとするための信号である。なお、第2の信号G2のことを、以下バックゲート電圧Vbgともいう。
【0012】
図9で図8(A)、(B)で示したnチャネル型の薄膜トランジスタのドレイン電流Idとゲート電圧Vgの関係についてグラフを示す。ディプレッション型のトランジスタでは、図9中の曲線911のような関係となり、第1の信号G1により第1のゲートに印加する電圧が0であっても、ドレイン電流Idが少なからず流れることとなる。駆動回路のような複数の薄膜トランジスタで構成される回路の場合、第1のゲートに印加する電圧が0、すなわち、駆動回路を動作させない際にも、流れる電流が累積していき、消費電力の増加が無視できなくなる。また一方で、バックゲートに負の電圧を印加することで、図9に示す曲線912のように曲線911からプラス側にシフトし、エンハンスメント型のトランジスタとすることができる。エンハンスメント型のトランジスタでは、第1の信号G1により第1のゲートに印加する電圧が0の場合、ドレイン電流Idが小さく、駆動回路の消費電力を小さくすることができる。ただし、バックゲート電圧Vbgを負の方向へより大きくすることで曲線913のように曲線911から大きくプラス側にシフトした場合、薄膜トランジスタを第1の信号により導通させる際、第1のゲートにより高い電圧を印加することが必要となって結局消費電力が増加し、場合によっては駆動回路が誤動作を引き起こすこともある。
【0013】
図10に、駆動回路を構成する回路の一例として、nチャネル型のトランジスタを複数用いて作製したブートストラップ型のインバータ回路について示す。図10に示すインバータ回路は、薄膜トランジスタ921、薄膜トランジスタ922、薄膜トランジスタ923、薄膜トランジスタ924、容量素子925を有し、配線926より高電源電位Vddが供給され、配線927より低電源電位Vssが供給される。また薄膜トランジスタ921乃至924の第2のゲートは、バックゲート電圧Vbgを供給する配線928に接続されている。また薄膜トランジスタ921及び薄膜トランジスタ923の第1のゲートには第1の信号となる入力信号Inが供給され、薄膜トランジスタ924及び薄膜トランジスタ923が接続されたノードより出力信号Outを出力する。
【0014】
図9で説明したように、図10に示すインバータ回路がディプレッション型のトランジスタを有する場合、配線926と配線927が導通状態となり、大きなリーク電流が流れることとなる。また各薄膜トランジスタにバックゲート電圧を印加することで、エンハンスメント型のトランジスタにし、リーク電流を低減したとしても、入力信号Inの電圧次第では、薄膜トランジスタ921及び薄膜トランジスタ923が導通状態とならず、誤動作をおこしてしまう。また入力信号Inの電圧を高くしても消費電力が増加してしまう。
【0015】
そこで本発明の一態様は、チャネルが非晶質半導体によって構成される薄膜トランジスタを単極性の駆動回路に用いる際、ディプレッション型となるしきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作を低減できるといった駆動回路を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、半導体層の上下に絶縁層を介して配置された第1のゲート及び第2のゲートを有する単極性のトランジスタで構成される駆動回路において、第1のゲートには、トランジスタのスイッチングを制御するための第1の信号が入力され、第2のゲートには、トランジスタのしきい値電圧を制御するための第2の信号が入力され、第2の信号は、トランジスタのソースとドレインとの間を流れる電流を含む、駆動回路の消費電流の値に応じて制御される駆動回路である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、ディプレッション型となる薄膜トランジスタを単極性の駆動回路に用いる際に、しきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作の低減を行うことのできる駆動回路を提供することができる。
【0018】
なお本明細書でいう単極性回路とは、同じ導電型によるトランジスタ素子で構成される回路のことをいう。具体的にはnチャネル型トランジスタで構成される回路、またはpチャネル型トランジスタで構成される回路のことをいう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】表示装置の一例をブロック図で示す図。
【図2】バックゲート電圧の電流値(電圧値)の変化に基づいた設定動作を説明するフローチャートを示す図。
【図3】シフトレジスタ回路を構成する各回路の一例を示す図。
【図4】シフトレジスタのタイミングチャートの一例を示す図。
【図5】表示装置の断面図の一例を示す図。
【図6】信号線駆動(ソースドライバー)回路のブロック図とタイミングチャートの一例を示す図。
【図7】表示装置の一例を示す図。
【図8】薄膜トランジスタの断面図と回路記号の一例を示す図。
【図9】薄膜トランジスタのId−Vg特性とバックゲート電圧Vbgとの関係を説明するための図。
【図10】単極性(nチャネル型)トランジスタを用いたブートストラップ型インバータ回路を示す図。
【図11】バックゲート電圧と消費電流の関係について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って本実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じ物を指し示す符号は異なる図面間において共通とする。
【0021】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0022】
なお本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは自然数)という用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態では、駆動回路周辺の各回路のブロック図について示す。図1では、表示装置の駆動回路を例に挙げて説明を行うものである。
【0024】
本実施の形態で示す駆動回路100は、表示部駆動回路101、制御回路102を有する。
【0025】
表示部駆動回路101は、一例として、ゲート線駆動回路103A、信号線駆動回路103Bを有する。ゲート線駆動回路103A、信号線駆動回路103Bは、複数の画素を有する表示部104を駆動するための駆動回路である。また、ゲート線駆動回路103A、信号線駆動回路103B、及び表示部104は、同じ基板105に形成される薄膜トランジスタにより回路が構成されるものである。
【0026】
なおゲート線駆動回路103A、信号線駆動回路103B、及び表示部104を構成する薄膜トランジスタは、単極性のトランジスタ、特にnチャネル型の薄膜トランジスタである。nチャネル型の薄膜トランジスタとしては、半導体層を酸化物半導体とした薄膜トランジスタを用いることが好ましい。酸化物半導体を薄膜トランジスタの半導体層として用いることにより、アモルファスシリコン等のシリコン系半導体材料と比較して電界効果移動度を高めることが出来る。なお酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)なども用いることができる。また、ZnOにInやGaなどを添加することもできる。
【0027】
酸化物半導体としてInMO(ZnO)(x>0)で表記される薄膜を用いることができる。なお、Mは、ガリウム(Ga)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)から選ばれた一の金属元素又は複数の金属元素を示す。例えばMとして、Gaの場合があることの他、GaとNi又はGaとFeなど、Ga以外の上記金属元素が含まれる場合がある。また、上記酸化物半導体において、Mとして含まれる金属元素の他に、不純物元素としてFe、Niその他の遷移金属元素、又は該遷移金属の酸化物が含まれているものがある。例えば、酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn−O系膜を用いることができる。
【0028】
酸化物半導体(InMO(ZnO)(x>0)膜)としてIn−Ga−Zn−O系膜のかわりに、Mを他の金属元素とするInMO(ZnO)(x>0)膜を用いてもよい。また、酸化物半導体として上記の他にも、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体を適用することができる。
【0029】
なおゲート線駆動回路103A、信号線駆動回路103Bは、図8で説明したように、半導体層の上下に絶縁層を介して配置された第1のゲート、及び第2のゲートを有する単極性のトランジスタによって構成されることとなる。なお第1のゲートと第2のゲートとの位置関係については、逆であってもよい。
【0030】
また、本明細書で説明する駆動回路に用いるトランジスタは、図8で説明したように、第1のゲートと、第2のゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも四つの端子を有する素子であり、ドレインとソースとの間にチャネル領域を介して電流を流すことが出来る。なお第1のゲートに入力される第1の信号は、トランジスタのスイッチングを制御するための信号であり、第2のゲートに入力される第2の信号は、トランジスタのしきい値電圧を制御する信号である。なお、第2の信号のことを、バックゲート電圧Vbgということもある。
【0031】
制御回路102は、表示部104にて表示を行うために駆動する表示部駆動回路101を制御するための信号を供給する回路である。制御回路102は、表示部駆動回路101より表示部104でのパネル表示を行うための各種信号を出力する信号生成回路106、表示部駆動回路を構成する単極性のトランジスタのしきい値電圧を制御するためのバックゲート電圧制御回路107を有する。
【0032】
信号生成回路106は、ゲート線駆動回路103A、及び信号線駆動回路103Bよりパルス信号を表示部104に出力して、表示部104でのパネル表示を行うための各種信号を、配線を介して表示部駆動回路101に出力するための回路である。具体的には、ゲート線駆動回路103A、及び信号線駆動回路103Bに電源電圧である高電源電位Vdd、低電源電位Vssを供給し、ゲート線駆動回路103Aには、ゲート線駆動回路用のスタートパルスSP、クロック信号CK、及び/または、信号線駆動回路103Bには、信号線駆動回路用のスタートパルスSP、クロック信号CKを生成し、出力する回路である。なお他にも画像信号、ラッチ信号等の信号を生成する回路であってもよい。
【0033】
バックゲート電圧制御回路107は、電流値検出回路108、判定回路109、補正電圧記憶回路110、補正電圧出力回路111を有する。
【0034】
なお電流値検出回路108では、任意の期間毎に、電流値を測定して判定回路109に出力する。電流値検出回路108は、電流値の測定に限らず、直列にある一定の抵抗を繋いでその両端に加わる電圧値を検出する構成としてもよい。また、電流値検出回路108は、電源電位(Vdd、Vss)を供給する配線、クロック信号及びスタートパルスを供給する配線に接続される構成について示したが、他の構成でもよい。例えば、電源電位を供給する配線のみに、電流値検出回路108を設ける構成としてもよい。電源電位は、直流の信号であり、リーク電流による電流値の増加を検出しやすいため好適である。
【0035】
なおバックゲート電圧設定処理を開始するタイミング、つまり電流値検出回路108での電流値または電圧値を測定する期間(電流値測定期間ともいう)は、駆動回路100の電源投入後であってもよいし、駆動回路100が動作中の任意の期間毎としてもよい。
【0036】
判定回路109は、電流値検出回路108で検出した電流値または電圧値の強度Xが、あらかじめ設定した基準値の強度Aと比較して小さくなっているかどうかを判定する。強度Xが強度Aよりも大きい場合、当該電流値測定期間でのバックゲート電圧Vbgの値では、駆動回路を構成するトランジスタのソースとドレインとの間を流れる電流が大きく、駆動回路を構成する複数の単極性のトランジスタのId−Vg特性がノーマリーオンとなっており、表示部駆動回路101を構成するトランジスタのソースとドレインとの間を流れる電流を含む消費電流が大きい状態であることが分かる。
【0037】
なお強度について本実施の形態では、電流値または電圧値として説明したが、他の物理量に変換した強度Xとして、基準値の強度Aと比較する構成としてもよい。
【0038】
なお消費電流の低下は、トランジスタがスイッチング動作を行わない場合においても起こりえる。例えば、過度にバックゲート電圧の値を低くして第2のゲートに印加すると、消費電流が低下するとともに、所望のパルス波形が得られない。そのため、バックゲート電圧を設定する場合には、予め充分に高い電圧、例えばトランジスタが確実にディプレッション型となる電圧を、バックゲート電圧設定処理開始時のバックゲート電圧の初期値として印加する構成とすることが好ましい。この様に、nチャネル型トランジスタにおいてバックゲート電圧の初期値を充分に高い値に設定することで、元々過度にしきい値電圧がシフトしたエンハンスメント型となってしまっていて正常動作が困難な場合でも、より安定した動作が実現できるようにバックゲート電圧を設定することもできるようになる。
【0039】
補正電圧記憶回路110は、バックゲート電圧Vbgを設定するための回路であり、判定回路109の判定結果に基づき、バックゲート電圧Vbgとして補正電圧出力回路111より出力する電圧の大きさを設定して記憶する回路である。具体的には、判定回路109の結果が強度X≧強度Aであれば、Vbgの値にあらかじめ設定したVstepを加えた値、つまりVbg−Vstepの値を新たなVbgの値として記憶する。一方、判定回路109の結果が強度X<強度Aであれば、Vbgの値は現設定処理時の値をそのまま記憶して、Vbgの設定処理作業を終了する。
【0040】
そして補正電圧記憶回路110が記憶したバックゲート電圧Vbgの値は、補正電圧出力回路111よりバックゲート電圧Vbgとして出力する。すなわち、バックゲート電圧設定処理期間以外の期間においては、補正電圧記憶回路110が記憶したバックゲート電圧Vbgの値に基づいて、補正電圧出力回路111より一定のバックゲート電圧Vbgを出力し続けることとなる。
【0041】
補正電圧記憶回路110は、不揮発性の記憶装置を有する構成であることが望ましい。電源オフ時には、補正電圧記憶回路110に記憶したバックゲート電圧Vbgが不揮発性の記憶装置に記憶され、電源投入時に再び前の電源切断時と同じバックゲート電圧Vbgを補正電圧出力回路111より出力することができる。すなわち、駆動回路100の電源投入の度にバックゲート電圧設定処理を実行せずに、バックゲート電圧Vbgの出力を速やかに行うこともできる。
【0042】
なお、信号生成回路106、及びバックゲート電圧制御回路107は、ゲート線駆動回路103A、信号線駆動回路103B、及び表示部104とは別の基板に形成されたトランジスタで構成することが好ましい。一例としては、単結晶半導体を用いて作製されるトランジスタで構成することが好ましい。単結晶半導体を用いて作製されるトランジスタは、しきい値電圧のシフトが小さいため、誤動作することがほとんどなく、安定した信号の出力をすることができる。
【0043】
なお高電源電位とは、基準電位より高い電位の信号のことであり、低電源電位とは基準電位以下の電位の信号のことをいう。なお高電源電位及び低電源電位ともに、トランジスタが動作でき、かつ劣化や破壊及び消費電力が問題とはならない程度の電位であることが望ましい。なお基準電位としては、グラウンド電位GND等である。
【0044】
なお、電圧とは、ある電位と、基準の電位(例えばグラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧、電位、電位差を、各々、電位、電圧、電圧差と言い換えることが可能である。
【0045】
次に、図1で示した駆動回路でのバックゲート電圧制御回路107の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。そして本実施の形態における駆動回路によって、ノーマリーオンの程度がばらつく場合にあっても、消費電力が少なく、且つ誤動作の少ない構成となることについて説明する。
【0046】
まず、表示部駆動回路への電源電圧の印加、及び第2のゲートへのバックゲート電圧Vbgの印加を行う(図2、ステップ201)。第2のゲートに印加するバックゲート電圧Vbgの値は、予め初期値を図1に示す補正電圧記憶回路110に強制的に設定しても良いし、前の電源切断時に補正電圧記憶回路110が記憶していたバックゲート電圧Vbgをそのまま出力してもよい。バックゲート電圧Vbgは、図1に示す補正電圧出力回路111から、駆動回路が有するトランジスタの第2のゲートに印加される。
【0047】
次いで、図1に示すバックゲート電圧制御回路107の電流値検出回路108では、信号生成回路106より供給される配線に流れる電流値、または直列に繋がれたある一定の抵抗の両端の電圧値の大きさについて計測を行う(図2、ステップ202)。上述のように、ディプレッション型のトランジスタであれば、エンハンスメント型のトランジスタと比較して電流値検出回路で読み取られる電流値(又は電圧値)が大きくなる。
【0048】
次いで、図1に示す判定回路109にて、電流値、または電圧値の強度Xが基準値の強度A未満か否かの判定を行う(図2、ステップ203)。このときステップ201でのバックゲート電圧Vbgの印加により、トランジスタがエンハンスメント型のトランジスタとなり、電流値、または電圧値の強度Xが基準値強度A未満であれば、トランジスタを介して流れるリーク電流を含む消費電流が小さい状態と判断され、補正電圧記憶回路110に現設定処理時バックゲート電圧Vbgの値が記憶される。
【0049】
一方、判定回路109にて、電流値、または電圧値の強度Xが基準値の強度A以上の場合、表示部駆動回路101を構成する各トランジスタを介して流れるリーク電流を含む消費電流が大きい状態と判断される。この場合、バックゲート電圧Vbgには、さらにあらかじめ設定したVstepを加えた値、つまりVbg−Vstepの値を新たなVbgの値として設定し、第2のゲートに印加する(図2、ステップ204)。
【0050】
なおバックゲート電圧Vbgを設定するVstepは、バックゲート電圧Vbgの設定動作の連続試行回数に応じて設定されるものである。
【0051】
次いで、ステップ202と同様に、図1に示すバックゲート電圧制御回路107の電流値検出回路108では、信号生成回路106より供給される配線に流れる電流値、または電圧値の大きさについて計測を行う。(図2、ステップ205)。
【0052】
次いで、ステップ203と同様に、図1に示す判定回路109にて、電流値、または電圧値が基準値以下か否かの判定を行う(図2、ステップ206)。このときステップ204でのバックゲート電圧Vbgの印加により、トランジスタがエンハンスメント型のトランジスタとなり、電流値、または電圧値の強度Xが基準値強度A未満であれば、トランジスタを介して流れるリーク電流を含む消費電流が小さい状態と判断され、補正電圧記憶回路110に現設定処理時バックゲート電圧Vbgの値が記憶される。
【0053】
なお、より安定した駆動回路の正常動作を実現させる場合には、あらかじめ設定した余分(マージン)の電圧を、消費電流の低下が判定されたバックゲート電圧Vbgの値にさらに加えて補正電圧記憶回路110に記憶することが好ましい。この様にバックゲート電圧Vbgにマージンを持たせることで、バックゲート電圧設定処理間隔が長くてその間にTFT特性が多少変動したとしても、正常動作をより確実に実現することが可能となる。
【0054】
再度、判定回路109にて、電流値、または電圧値の強度Xが基準値の強度A以上の場合、表示部駆動回路101を構成する各トランジスタを介して流れるリーク電流を含む消費電流が大きい状態と判断される。この場合、また図2に示すステップ204へ戻って処理を続けることとなる。
【0055】
上述の動作によって、表示部駆動回路において、ディプレッション型となる薄膜トランジスタを単極性の駆動回路に用いる際に、しきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作の低減を行うことができる。
【0056】
次いで、表示部駆動回路を構成するシフトレジスタの構成について図3に一例を示す。
【0057】
図3(A)に示すシフトレジスタは、第1のパルス出力回路10_1乃至第Nのパルス出力回路10_N(N≧3の自然数)を有している。図3(A)に示すシフトレジスタの第1のパルス出力回路10_1乃至第Nのパルス出力回路10_Nには、第1の配線11より第1のクロック信号CK1、第2の配線12より第2のクロック信号CK2、第3の配線13より第3のクロック信号CK3、第4の配線14より第4のクロック信号CK4が供給される。また第1のパルス出力回路10_1では、第5の配線15からのスタートパルスSP1(第1のスタートパルス)が入力される。また2段目以降の第nのパルス出力回路10_n(nは、2≦n≦Nの自然数)では、一段前段のパルス出力回路からの信号(前段信号OUT(n−1)という)(n≧2の自然数)が入力される。また第1のパルス出力回路10_1では、2段後段の第3のパルス出力回路10_3からの信号が入力される。同様に、2段目以降の第nのパルス出力回路10_nでは、2段後段の第(n+2)のパルス出力回路10_(n+2)からの信号(後段信号OUT(n+2)という)が入力される。従って、各段のパルス出力回路からは、後段及び/または二つ前段のパルス出力回路に入力するための第1の出力信号(OUT(1)(SR)〜OUT(N)(SR))、別の配線等に電気的に接続される第2の出力信号(OUT(1)〜OUT(N))が出力される。また各段のパルス出力回路には、第6の配線16より、バックゲート電圧制御回路107からのバックゲート電圧Vbgが供給される。なお、図3(A)に示すように、シフトレジスタの最終段の2つの段には、後段信号OUT(n+2)が入力されないため、一例としては、別途第7の配線17より第2のスタートパルスSP2、第8の配線18より第3のスタートパルスSP3をそれぞれ入力する構成でもよい。または別途、内部で生成された信号であってもよい。例えば、表示部へのパルス出力に寄与しない第(n+1)のパルス出力回路10_(n+1)、第(n+2)のパルス出力回路10_(n+2)を設け(ダミー段ともいう)、当該ダミー段より第2のスタートパルス(SP2)及び第3のスタートパルス(SP3)に相当する信号を生成する構成としてもよい。
【0058】
なお、第1のクロック信号(CK1)〜第4のクロック信号(CK4)は、一定の間隔でH信号とL信号を繰り返す信号である。また、第1のクロック信号(CK1)〜第4のクロック信号(CK4)は、順に1/4周期分遅延している。本実施の形態では、第1のクロック信号(CK1)〜第4のクロック信号(CK4)を利用して、パルス出力回路の駆動の制御等を行う。なお、クロック信号は、入力される駆動回路に応じて、GCK、SCKということもあるが、ここではCKとして説明を行う。
【0059】
なお、AとBとが接続されている、と明示的に記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合と、AとBとが機能的に接続されている場合と、AとBとが直接接続されている場合とを含むものとする。ここで、A、Bは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも含むものとする。
【0060】
第1のパルス出力回路10_1〜第Nのパルス出力回路10_Nの各々は、第1の入力端子21、第2の入力端子22、第3の入力端子23、第4の入力端子24、第5の入力端子25、第1の出力端子26、第2の出力端子27、第6の入力端子28を有している(図3(B)参照)。
【0061】
第1の入力端子21、第2の入力端子22及び第3の入力端子23は、第1の配線11〜第4の配線14のいずれかと電気的に接続されている。例えば、図3(A)、(B)において、第1のパルス出力回路10_1は、第1の入力端子21が第1の配線11と電気的に接続され、第2の入力端子22が第2の配線12と電気的に接続され、第3の入力端子23が第3の配線13と電気的に接続されている。また、第2のパルス出力回路10_2は、第1の入力端子21が第2の配線12と電気的に接続され、第2の入力端子22が第3の配線13と電気的に接続され、第3の入力端子23が第4の配線14と電気的に接続されている。
【0062】
また図3(A)、(B)において、第1のパルス出力回路10_1は、第4の入力端子24にスタートパルスが入力され、第5の入力端子25に後段信号OUT(3)が入力され、第1の出力端子26より第1の出力信号OUT(1)(SR)が出力され、第2の出力端子27より第2の出力信号OUT(1)が出力され、第6の入力端子28よりバックゲート電圧Vbgが入力されていることとなる。
【0063】
次に、パルス出力回路の具体的な回路構成の一例について、図3(C)で説明する。
【0064】
図3(C)において第1のトランジスタ31は、第1端子が配線51に電気的に接続され、第2端子が第9のトランジスタ39の第1端子に電気的に接続され、ゲート電極が第4の入力端子24に電気的に接続されている。第2のトランジスタ32は、第1端子が電源線53に電気的に接続され、第2端子が第9のトランジスタ39の第1端子に電気的に接続され、ゲート電極が第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続されている。第3のトランジスタ33は、第1端子が第1の入力端子21に電気的に接続され、第2端子が第1の出力端子26に電気的に接続されている。第4のトランジスタ34は、第1端子が電源線53に電気的に接続され、第2端子が第1の出力端子26に電気的に接続されている。第5のトランジスタ35は、第1端子が電源線53に電気的に接続され、第2端子が第2のトランジスタ32のゲート電極及び第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続され、ゲート電極が第4の入力端子24に電気的に接続されている。第6のトランジスタ36は、第1端子が配線51に電気的に接続され、第2端子が第2のトランジスタ32のゲート電極及び第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続され、ゲート電極が第5の入力端子25に電気的に接続されている。第7のトランジスタ37は、第1端子が配線51に電気的に接続され、第2端子が第8のトランジスタ38の第2端子に電気的に接続され、ゲート電極が第3の入力端子23に電気的に接続されている。第8のトランジスタ38は、第1端子が第2のトランジスタ32のゲート電極及び第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続され、ゲート電極が第2の入力端子22に電気的に接続されている。第9のトランジスタ39は、第1端子が第1のトランジスタ31の第2端子及び第2のトランジスタ32の第2端子に電気的に接続され、第2端子が第3のトランジスタ33のゲート電極及び第10のトランジスタ40のゲート電極に電気的に接続され、ゲート電極が配線51に電気的に接続されている。第10のトランジスタ40は、第1端子が第1の入力端子21に電気的に接続され、第2端子が第2の出力端子27に電気的に接続され、ゲート電極が第9のトランジスタ39の第2端子に電気的に接続されている。第11のトランジスタ41は、第1端子が電源線53に電気的に接続され、第2端子が第2の出力端子27に電気的に接続され、ゲート電極が第2のトランジスタ32のゲート電極及び第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続されている。また第1のトランジスタ31乃至第11のトランジスタ41の第2のゲートには、バックゲート電圧Vbgを供給するための配線52に電気的に接続されている。
【0065】
図3(C)において、第3のトランジスタ33のゲート電極、第10のトランジスタ40のゲート電極、及び第9のトランジスタ39の第2端子の接続箇所をノードNAとする。また、第2のトランジスタ32のゲート電極、第4のトランジスタ34のゲート電極、第5のトランジスタ35の第2端子、第6のトランジスタ36の第2端子、第8のトランジスタ38の第1端子、及び第11のトランジスタ41のゲート電極の接続箇所をノードNBとする。
【0066】
図3(C)におけるパルス出力回路が第1のパルス出力回路10_1の場合、第1の入力端子21には第1のクロック信号CK1が入力され、第2の入力端子22には第2のクロック信号CK2が入力され、第3の入力端子23には第3のクロック信号CK3が入力され、第4の入力端子24にはスタートパルスSPが入力され、第5の入力端子25には後段信号OUT(3)が入力され、第1の出力端子26からは第1の出力信号OUT(1)(SR)が出力され、第2の出力端子27からは第2の出力信号OUT(1)が出力され、第6の入力端子28には判定信号JSが入力される。
【0067】
ここで、図3(C)に示したパルス出力回路を複数具備するシフトレジスタのタイミングチャートについて図4に示す。なおシフトレジスタが走査線駆動回路である場合、図4中の期間61は垂直帰線期間であり、期間62はゲート選択期間に相当する。
【0068】
図3、4で、一例として示した、nチャネル型のトランジスタを複数用いて作製した駆動回路においては、バックゲート電圧Vbgを印加することにより、駆動回路を構成するトランジスタでディプレッション型のトランジスタを有する場合、配線51と配線53が導通状態となり、リーク電流が流れることによる消費電力の増加を低減することができる。また過度にしきい値電圧がシフトしたエンハンスメント型のトランジスタにすることなく、駆動回路の動作を妨げない程度に薄膜トランジスタをエンハンスメント型のトランジスタとすることができる。そのため、表示部駆動回路において、ディプレッション型となる薄膜トランジスタを単極性の駆動回路に用いる際に、しきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作の低減を行うことができる。
【0069】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した駆動回路、及び当該駆動回路によって制御される表示部を具備する表示装置の断面図について、図5を用いて説明する。また本実施の形態では、表示装置として液晶表示装置の一例について説明をおこなうが、有機EL等の発光素子を具備する表示装置、または電気泳動素子を具備する電子ペーパーの駆動回路としても適用することが可能である。なお、上記実施の形態で説明した構成は、表示装置の駆動回路に限らず、光センサ用駆動回路等の他の装置にも適用可能である。
【0071】
本発明の一形態である液晶表示装置を図5に示す。図5の液晶表示装置は、薄膜トランジスタ701及び容量702を含む画素部、及び薄膜トランジスタ703を含む駆動回路部、画素電極層704、配向膜として機能する絶縁層705が設けられた基板706と、配向膜として機能する絶縁層707、対向電極層708、カラーフィルタとして機能する着色層709が設けられた対向基板710とが液晶層711を挟持して対向している。また、基板706及び対向基板710の液晶層711と反対側には、それぞれ偏光板(偏光子を有する層、単に偏光子ともいう)712a、712bが設けられ、ゲート配線の端子部には第1の端子713、接続電極714、及び接続用の端子電極715、ソース配線の端子部には第2の端子716及び接続用の端子電極717が設けられている。
【0072】
駆動回路部において、薄膜トランジスタ703はゲート電極層721及びゲート絶縁層722上に半導体層723が設けられ、半導体層723上に酸化物絶縁層724が設けられ、酸化物半導体層724上に導電層718が設けられる。ドレイン電極層719bはゲート電極層と同工程で形成される導電層720と電気的に接続している。また、画素部において、薄膜トランジスタ701のドレイン電極層は画素電極層704と電気的に接続している。
【0073】
酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタで形成することにより、製造コストを低減することができる。また酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタは電界効果移動度が高く表示装置の画素部及び駆動回路を構成するものとして好適である。一方で、酸化物半導体は外因性の不純物が添加されなくても、酸素が抜けた空孔欠陥によりn型化しやすいという性質がある。酸化物半導体層に接して酸化物絶縁膜を形成することによって、安定した電気特性を有する薄膜トランジスタを得ることができるが、仮に酸化物半導体n型化してノーマリーオンの薄膜トランジスタが形成された場合でも、本実施の形態の駆動回路を用いることによってしきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作の低減を行うことができる。
【0074】
なお、本実施の形態では上記実施の形態の薄膜トランジスタにおいて、酸化物半導体を半導体層に用いる例について説明したが、実施の形態1で開示する構成は、駆動回路を構成するディプレッション型となる薄膜トランジスタが第1のゲート及び第2のゲートを有する構成とするものである。従って、例えば、非晶質シリコンで形成される半導体層において、意図的または非意図的にn型の導電性を付与する不純物が含まれることによってノーマリーオンとして動作するトランジスタにも、実施の形態1で開示する構成を用いることができる。
【0075】
表示部駆動回路において、上記実施の形態と同様の駆動回路の構成とすることで、ディプレッション型となる薄膜トランジスタを単極性の駆動回路に用いる際に、しきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作の低減を行うことができる。
【0076】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0077】
(実施の形態3)
本実施の形態では、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置する薄膜トランジスタを作製する例について以下に説明する。なお基板上に配置する薄膜トランジスタは、実施の形態2の断面図に示すよう形成すればよい。
【0078】
信号線駆動回路は、シフトレジスタ5601、及びスイッチング回路5602を有する。スイッチング回路5602は、スイッチング回路5602_1〜5602_N(Nは自然数)という複数の回路を有する。スイッチング回路5602_1〜5602_Nは、各々、薄膜トランジスタ5603_1〜5603_k(kは自然数)という複数のトランジスタを有する。薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kは、Nチャネル型TFTである例を説明する。
【0079】
信号線駆動回路の接続関係について、スイッチング回路5602_1を例にして説明する。薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kの第1端子は、各々、配線5604_1〜5604_kと接続される。薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kの第2端子は、各々、信号線S1〜Skと接続される。薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kのゲートは、配線5605_1と接続される。
【0080】
シフトレジスタ5601は、配線5605_1〜5605_Nに順番にHレベル(H信号、高電源電位レベル、ともいう)の信号を出力し、スイッチング回路5602_1〜5602_Nを順番に選択する機能を有する。
【0081】
スイッチング回路5602_1は、配線5604_1〜5604_kと信号線S1〜Skとの導通状態(第1端子と第2端子との間の導通)に制御する機能、即ち配線5604_1〜5604_kの電位を信号線S1〜Skに供給するか否かを制御する機能を有する。このように、スイッチング回路5602_1は、セレクタとしての機能を有する。また薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kは、各々、配線5604_1〜5604_kと信号線S1〜Skとの導通状態を制御する機能、即ち配線5604_1〜5604_kの電位を信号線S1〜Skに供給する機能を有する。このように、薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kは、各々、スイッチとしての機能を有する。
【0082】
なお、配線5604_1〜5604_kには、各々、ビデオ信号用データ(DATA)が入力される。ビデオ信号用データ(DATA)は、画像情報又は画像信号に応じたアナログ信号である場合が多い。
【0083】
次に、図6(A)の信号線駆動回路の動作について、図6(B)のタイミングチャートを参照して説明する。図6(B)には、信号Sout_1〜Sout_N、及び信号Vdata_1〜Vdata_kの一例を示す。信号Sout_1〜Sout_Nは、各々、シフトレジスタ5601の出力信号の一例であり、信号Vdata_1〜Vdata_kは、各々、配線5604_1〜5604_kに入力される信号の一例である。なお、信号線駆動回路の1動作期間は、表示装置における1ゲート選択期間に対応する。1ゲート選択期間は、一例として、期間T1〜期間TNに分割される。期間T1〜TNは、各々、選択された行に属する画素にビデオ信号用データ(DATA)を書き込むための期間である。
【0084】
期間T1〜期間TNにおいて、シフトレジスタ5601は、Hレベルの信号を配線5605_1〜5605_Nに順番に出力する。例えば、期間T1において、シフトレジスタ5601は、ハイレベルの信号を配線5605_1に出力する。すると、薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kはオンになるので、配線5604_1〜5604_kと、信号線S1〜Skとが導通状態になる。このとき、配線5604_1〜5604_kには、Data(S1)〜Data(Sk)が入力される。Data(S1)〜Data(Sk)は、各々、薄膜トランジスタ5603_1〜5603_kを介して、選択される行に属する画素のうち、1列目〜k列目の画素に書き込まれる。こうして、期間T1〜TNにおいて、選択された行に属する画素に、k列ずつ順番にビデオ信号用データ(DATA)が書き込まれる。
【0085】
以上のように、ビデオ信号用データ(DATA)が複数の列ずつ画素に書き込まれることによって、ビデオ信号用データ(DATA)の数、又は配線の数を減らすことができる。よって、外部回路との接続数を減らすことができる。また、ビデオ信号が複数の列ずつ画素に書き込まれることによって、書き込み時間を長くすることができ、ビデオ信号の書き込み不足を防止することができる。
【0086】
なお、走査線駆動回路の構成について説明する。走査線駆動回路は、シフトレジスタやバッファ等を有していてもよい。また場合によってはレベルシフタを有していても良い。走査線駆動回路において、シフトレジスタにクロック信号(CLK)及びスタートパルス信号(SP)が入力されることによって、選択信号が生成される。生成された選択信号はバッファにおいて緩衝増幅され、対応する走査線に供給される。走査線には、1ライン分の画素のトランジスタのゲート電極が接続されている。そして、1ライン分の画素のトランジスタを一斉にONにしなくてはならないので、バッファは大きな電流を流すことが可能なものが用いられる。
【0087】
本実施形態の駆動回路に、上記実施の形態で説明した制御回路を用いることで、しきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作の低減を行うことができる。
【0088】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0089】
(実施の形態4)
本実施形態においては、上記実施の形態で説明した表示装置を表示部に具備する電子機器の例について説明する。
【0090】
上記実施の形態の各々の図で述べた内容(一部でもよい)を様々な電子機器に適用することができる。具体的には、電子機器の表示部に適用することができる。そのような電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機又は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。
【0091】
図7(A)はディスプレイであり、筐体1011、支持台1012、表示部1013を含む。図7(A)に示すディスプレイは、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能を有する。なお、図7(A)に示すディスプレイが有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0092】
図7(B)はカメラであり、本体1031、表示部1032、受像部1033、操作キー1034、外部接続ポート1035、シャッターボタン1036を含む。図7(B)に示すカメラは、静止画を撮影する機能を有する。また動画を撮影する機能を有していてもよい。なお、図7(B)に示すカメラが有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0093】
図7(C)はコンピュータであり、本体1051、筐体1052、表示部1053、キーボード1054、外部接続ポート1055、ポインティングデバイス1056を含む。図7(C)に示すコンピュータは、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能を有する。なお、図7(C)に示すコンピュータが有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0094】
本実施形態の表示部に上記実施の形態で説明した表示装置を用いる構成とすることで、しきい値電圧の変動の程度に応じてしきい値電圧を補正し、消費電力の増大、誤動作の低減を行うことができ、低消費電力化及び表示品質の向上した電子機器とすることができる。
【0095】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0096】
図11は、駆動回路に接続する配線において、第2のゲートに印加するバックゲート電圧Vbgを横軸、高電源電位Vddを入力する配線、及び低電源電位Vssを入力する配線における消費電流を縦軸とした際のグラフである。なお図11中、菱形印が高電源電位を供給する配線での消費電流(以下、Isvddという)について示したグラフに相当し、三角印が低電源電位を供給する配線での消費電流(以下、Isvssという)について示したグラフに相当する。なお、図11のグラフにおける高電源電位Vdd及び低電源電位Vssを供給する駆動回路は、図3で示した駆動回路の構成についてである。
【0097】
図11に示すようにバックゲート電圧Vbgを0Vよりマイナス側にシフトさせていくにしたがって、消費電流は減少していく。図11中、−2.0Vから−3.5VにかけてIsvdd及びIsvss共に大きく減少することがわかる。当該消費電流の減少は、駆動回路を構成するトランジスタの閾値電圧がシフトすることによってディプレッション型からエンハンスメント型のトランジスタとなったことによるものである。エンハンスメント型のトランジスタとなったことでリーク電流の減少が見られ、実際に駆動回路のパルス出力の波形と照らし合わせても、−3.5Vから−7.0Vの範囲(より好ましくは−4.0Vから−6.0の範囲:図11中、矢印1101の範囲)にかけて駆動回路が正常動作していくことがわかった。つまりこの場合には、上記実施の形態1の図1、図2を用いて説明したバックゲート電圧設定処理の中で、基準値強度AをIsvddであれば1.5mA、Isvssであれば4.0mAとあらかじめ設定することで、バックゲート電圧Vbgが−3.5Vとなった時点で電流値の強度Xが基準値強度Aを下回ることになり、バックゲート電圧Vbgを−3.5Vに設定することが可能となる。
【0098】
なお本実施例では、上記実施の形態1の図1、図2を用いて説明したバックゲート電圧設定処理において、消費電流の減少の度合いを判定する構成について示したが、図11を見てもわかるように、より確実に駆動回路の正常な動作を実現する場合には、消費電流の低下が判定されたバックゲート電圧Vbgからさらに−1.5V程度の余分(マージン)を予め設定しておくことで、バックゲート電圧Vbgの設定が−5.0Vになるようにすることが好ましい。
【0099】
また図11からもわかるように、バックゲート電圧の印加が−7.0V以下になると、さらに消費電流が低下することになるが、当該消費電流の低下は、トランジスタのスイッチングに動作が行えなくなることによるものである。実際に駆動回路のパルス出力の波形をみても、バックゲート電圧の印加が−7.0V以下になると所望のパルス波形が得られていなかった。そのため、バックゲート電圧を設定する場合には、予め高い電圧、例えばこの図11のケースであれば0Vをバックゲート電圧の初期値として印加する構成とすることが好ましい。
【0100】
なお本実施例は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
10 パルス出力回路
11 配線
12 配線
13 配線
14 配線
15 配線
16 配線
17 配線
18 配線
21 入力端子
22 入力端子
23 入力端子
24 入力端子
25 入力端子
26 出力端子
27 出力端子
28 入力端子
31 トランジスタ
32 トランジスタ
33 トランジスタ
34 トランジスタ
35 トランジスタ
36 トランジスタ
37 トランジスタ
38 トランジスタ
39 トランジスタ
40 トランジスタ
41 トランジスタ
51 配線
52 配線
53 配線
61 期間
62 期間
100 駆動回路
101 表示部駆動回路
102 制御回路
104 表示部
105 基板
106 信号生成回路
107 バックゲート電圧制御回路
108 電流値検出回路
109 判定回路
110 補正電圧記憶回路
111 補正電圧出力回路
201 ステップ
202 ステップ
203 ステップ
204 ステップ
205 ステップ
206 ステップ
701 薄膜トランジスタ
702 容量
703 薄膜トランジスタ
704 画素電極層
705 絶縁層
706 基板
707 絶縁層
708 対向電極層
709 着色層
710 対向基板
711 液晶層
713 端子
714 接続電極
715 端子電極
716 端子
717 端子電極
718 導電層
720 導電層
721 ゲート電極層
722 ゲート絶縁層
723 半導体層
724 酸化物絶縁層
900 薄膜トランジスタ
901 ゲート
902 ゲート絶縁膜
903 酸化物半導体膜
905 絶縁層
906 ゲート
907 基板
911 曲線
912 曲線
913 曲線
921 薄膜トランジスタ
922 薄膜トランジスタ
923 薄膜トランジスタ
924 薄膜トランジスタ
925 容量素子
926 配線
927 配線
928 配線
1011 筐体
1012 支持台
1013 表示部
1031 本体
1032 表示部
1033 受像部
1034 操作キー
1035 外部接続ポート
1036 シャッターボタン
103A ゲート線駆動回路
103B 信号線駆動回路
1051 本体
1052 筐体
1053 表示部
1054 キーボード
1055 外部接続ポート
1056 ポインティングデバイス
1101 矢印
204A ソース端子
204B ドレイン端子
5601 シフトレジスタ
5602 スイッチング回路
5603 薄膜トランジスタ
5604 配線
5605 配線
719b ドレイン電極層
904A ソース端子
904B ドレイン端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層の上下に絶縁層を介して配置された第1のゲート及び第2のゲートを有する単極性のトランジスタで構成される駆動回路において、
前記第1のゲートには、前記トランジスタのスイッチングを制御するための第1の信号が入力され、
前記第2のゲートには、前記トランジスタのしきい値電圧を制御するための第2の信号が入力され、
前記第2の信号は、前記トランジスタのソースとドレインとの間を流れる電流を含む、前記駆動回路の消費電流の値に応じて制御されることを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
請求項1において、前記第2の信号は、前記消費電流の値の増減に応じて、前記第2のゲートに印加する電圧レベルを変更するよう補正するバックゲート電圧制御回路により供給される信号であることを特徴とする駆動回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記バックゲート電圧制御回路は、前記消費電流の値を検出する電流値検出回路、前記消費電流の値に応じて補正のための電圧を記憶する補正電圧記憶回路、及び前記補正のための電圧を第2のゲートに出力する補正電圧出力回路を有することを特徴とする駆動回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記半導体層は、酸化物半導体であることを特徴とする駆動回路。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の前記駆動回路を具備する表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置を具備する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−120221(P2011−120221A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236342(P2010−236342)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】