説明

A/D変換用電圧入力回路およびA/D変換用電圧入力方法

【課題】車載用負荷の駆動状態に応じて、A/D変換回路に出力する負荷側の被測定電圧の電圧レベルを変更可能とするA/D変換用電圧入力回路を提供する。
【解決手段】負荷41に対する駆動回路20のON/OFF駆動に応じてA/D変換回路13に出力する例えば接続点Cの被測定電圧の電圧レベルを変更可能とするために、接続点Cの被測定電圧を分圧する分圧用抵抗R1,R2と切替制御用トランジスタTr2,Tr3とを備え、駆動回路20をOFFにした場合、切替制御用トランジスタTr3をONにして、被測定電圧を分圧用抵抗R1,R2により略分圧した電圧をA/D変換回路13に出力し、一方、駆動回路20をONにした場合、切替制御用トランジスタTr3をOFFにして、被測定電圧をそのままA/D変換回路13に出力し、もって、駆動回路20の駆動状態如何により、電圧レベルを変更し、A/D変換回路13におけるA/D分解能を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換用電圧入力回路およびA/D変換用電圧入力方法に関し、特に、車載用負荷に対する駆動回路の駆動状態に応じて、A/D変換回路へ出力するA/D変換用アナログ電圧の電圧レベルを変更可能とし、もって、A/D変換後の分解能を変更可能とするA/D変換用電圧入力回路およびA/D変換用電圧入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用制御装置ECU(Electronic Control Unit)においては、一般に、車載用の負荷を駆動したり、該負荷の駆動状態を監視したりするために、駆動信号や監視信号に関するアナログ電圧をA/D変換回路においてデジタル信号に変換してCPU(Cetral Processing Unit)に取り込んでいる。このようなA/D変換回路へA/D変換用アナログ電圧を出力するA/D変換用電圧入力回路の従来の構成技術としては、例えば、特許文献1に示す特開2002−203717号公報「ソレノイド駆動回路」がある。
【0003】
該特許文献1に示す技術は、サスペンション制御装置のアクチュエータ側に備えられたソレノイド負荷を駆動する駆動回路に関するものであり、ソレノイド負荷の一端および他端側の被測定電圧値を1つのA/D変換回路でデジタル信号に変換することによって、CPUが該ソレノイド負荷の短絡の有無を検出可能にしようとする技術である。このために、該特許文献1のA/D変換用電圧入力回路においては、電圧の測定箇所に対応して設けた2つの分圧回路と2つのフィルタとを介して、あらかじめ定めた時間差を持って、1つのA/D変換回路に入力するように構成している。
【0004】
すなわち、該特許文献1においては、A/D変換回路の前段に配置したA/D変換用電圧入力回路として、ソレノイド負荷の両端の被測定電圧それぞれを1つのA/D変換回路でデジタル信号に変換可能とするために、異なる時定数を有する2つのフィルタによって、それぞれの被測定電圧を遅延させる一方、A/D変換回路に対する許容入力電圧以下に抑えるために、それぞれの被測定電圧を、2つの分圧回路により、あらかじめ定めた一定の抵抗比の分圧用抵抗で分圧するように構成している。
【特許文献1】特開2002−203717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されたような従来のA/D変換用電圧入力回路においては、前述したように、駆動回路によりソレノイド負荷を駆動するON時および駆動しないOFF時のいずれの場合についても、ソレノイド負荷側の被測定電圧を分圧用抵抗で分圧して、A/D変換回路に出力することにより、A/D変換回路の許容入力電圧範囲を超えないような構成とされていた。
【0006】
すなわち、A/D変換回路に入力されてくる電圧値は、負荷駆動のON/OFFいずれの場合であっても、一律、同じ分圧用抵抗によって分圧された電圧レベルに変更され、もって、A/D変換回路から出力されるデジタル信号は、負荷駆動のON/OFFいずれの場合であっても、分圧された電圧レベルに相当する値に変換されて出力される。したがって、負荷駆動のON時、OFF時のいずれか、被測定電圧の電圧レベルがより大きくなる駆動側の電圧値によって、すなわち、A/D変換回路に対して出力される電圧がより大きくなる駆動側の電圧値によって、デジタル信号の1ビット当たりの電圧値が決定される。
【0007】
ここで、A/D変換回路に入力される電圧値が大きくなればなるほど、A/D変換後のデジタル信号の1ビット当たりの電圧値が大きくなる。したがって、負荷駆動のON時、OFF時のいずれか、電圧レベルがより大きい方の電圧値によって決定されるA/D変換後の精度(識別可能な電圧の細かさ)として、負荷駆動のON時、OFF時における両者の被測定電圧の電圧レベルの差が大きくなればなるほど、すなわち、A/D変換回路に対して出力されるA/D変換用電圧の差が大きくなればなるほど、それに比例して、電圧レベルがより小さくなる駆動側のA/D分解能が粗くなってしまう。
【0008】
例えば、前記特許文献1の場合、ソレノイド負荷を駆動しない場合の負荷駆動OFF時における被測定電圧よりもはるかに小さい電圧レベルとなる負荷駆動ON時における被測定電圧に関するA/D分解能は、細かな電圧レベルの違いを識別することができない、より粗い分解能となり、負荷駆動ON時の動作異常を検出することが困難になってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、駆動回路の車載用負荷に対する駆動状態如何によって、A/D変換回路に対して出力するA/D変換用アナログ電圧の電圧レベルを変更可能とし、もって、A/D変換回路から出力されるA/D変換後のデジタル信号の分解能を変更可能とするA/D変換用電圧入力回路およびA/D変換用電圧入力方法を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題を解決するために、車載用負荷に対する駆動状態に応じて、A/D変換回路に対して出力するA/D変換用電圧の電圧レベルを変更可能とするA/D変換用電圧入力回路およびA/D変換用電圧入力方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のA/D変換用電圧入力回路およびA/D変換用電圧入力方法によれば、車載用負荷に対する駆動状態に応じて、A/D変換回路に対して出力するA/D変換用電圧の電圧レベルを変更可能としているので、負荷駆動のON/OFFの如何に応じて、A/D変換回路におけるA/D分解能を変更したデジタル信号に変換することができ、負荷駆動のON/OFFいずれの駆動状態においても、負荷の動作状態をより正確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明によるA/D変換用電圧入力回路およびA/D変換用電圧入力方法の最良の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明によるA/D変換用電圧入力回路の一構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明によるA/D変換用電圧入力回路の一構成例を示す回路図であり、ECU(Electronic Control Unit)側の制御部10内に配置されているA/D変換回路(A/D)13に対して出力するA/D変換用アナログ電圧の電圧レベルを、駆動回路20の負荷41に対する駆動状態に応じて変更するA/D変換用電圧入力回路30の構成例を示している。
【0014】
図1において、ECU側の制御部10は、制御部11、駆動回路20、A/D変換用電圧入力回路30を少なくとも備えて構成されている。制御部11は、A/D変換回路13から出力されるデジタル信号に基づいて、車載用負荷それぞれの動作状態を把握し、車載用負荷それぞれを適切に制御する制御用信号を送出するCPU11、CPU11からの各種の制御用信号を駆動信号として駆動回路20へ出力するための出力回路(OUT)12、アナログ電圧値をデジタル値(デジタル信号)にA/D変換するA/D変換回路13を、少なくとも備えて構成されている。
【0015】
また、駆動回路20は、駆動用トランジスタTr1を少なくとも備えており、制御部10の出力回路12から出力されてくる駆動信号に基づいて、駆動用トランジスタTr1を制御して、アクチュエータ側の負荷41を駆動する。
【0016】
A/D変換用電圧入力回路30は、駆動回路20により駆動される車載用の負荷41側において任意に選択した測定箇所の被測定電圧を入力して、A/D変換回路13へ出力する際に、駆動回路20の負荷41に対する駆動状態に応じて、前記被測定電圧の電圧レベルを変更して、A/D変換回路13に対して出力するものである。A/D変換用電圧入力回路30は、前記被測定電圧を分圧するための少なくとも2つ以上の分圧用抵抗(図1の場合、2個の分圧用抵抗R1,R2)、該分圧用抵抗と直列接続した切替制御用スイッチとして機能する切替制御用トランジスタTr3、該切替制御用トランジスタTr3のON/OFFを制御するための切替制御用トランジスタTr2を少なくとも含んで構成されている。すなわち、切替制御用トランジスタTr2,Tr3は、駆動回路20の負荷41に対する駆動状態に応じて、分圧用抵抗R1,R2による前記被測定電圧の分圧を実行させるか否かを切替制御し、もって、A/D変換回路13におけるA/D分解能の切替制御を可能ならしめるものである。
【0017】
ここで、切替制御用トランジスタTr2のベース端子には、出力回路12から出力される駆動信号が、接続点Aを介して入力されている。出力回路12から駆動回路20に対して負荷41をON駆動するための駆動信号が出力されていた場合には、切替制御用トランジスタTr2はON状態(導通状態)となり、この結果、接続点Bすなわち切替制御用トランジスタTr3のベース端子にLowレベルの略アース電位が出力される。
【0018】
したがって、切替制御用トランジスタTr3がOFF状態(遮断状態)になるため、分圧用抵抗R1,R2による電圧の分圧は実行されず、負荷41側の測定箇所の一例として選択されている接続点Cにおける被測定電圧そのものが、接続点Cから、A/D変換回路13にそのまま入力されるようになる。なお、本実施形態においては、被測定電圧の測定箇所として、接続点Cすなわち駆動回路20の負荷41への駆動線上の測定点を選択している場合を例示しているが、かかる場合のみに限るものではなく、駆動回路20により駆動される車載用の負荷41側の任意の箇所を測定箇所として選択しても構わない。
【0019】
一方、出力回路12から駆動回路20に対して負荷41を駆動せずにOFFする駆動信号が出力されていた場合には、切替制御用トランジスタTr2はOFF状態(遮断状態)となり、この結果、接続点Bすなわち切替制御用トランジスタTr3のベース端子は電圧VccのHighレベルにプルアップされる。
【0020】
したがって、A/D変換用電圧入力回路30へ入力されてくる接続点Cにおける被測定電圧の電圧レベルが、駆動回路20のON動作時に比して大きくなるOFF動作時においては、A/D変換回路13に対して出力するA/D変換用アナログ電圧の電圧レベルをA/D変換回路13の許容入力電圧範囲内に抑えるために、切替制御用トランジスタTr3がON状態(導通状態)になる。而して、接続点Cの被測定電圧がA/D変換用電圧入力回路30へ入力されてきた際に、分圧用抵抗R1,R2により分圧されて、分圧後の電圧がA/D変換用アナログ電圧としてA/D変換回路13に入力されるようになる。
【0021】
なお、参考のために、前記特許文献1に記載の従来のA/D変換用電圧入力回路の構成を図8に示している。図8に示す従来の回路構成においては、A/D変換回路13へ入力する電圧を分圧するA/D変換用電圧入力回路30Aが、前述したように、分圧用抵抗R1,R2によって構成されており、負荷のソレノイド41Aを駆動する駆動信号のON/OFF如何に関わらず、接続点Cにおける被測定電圧を、分圧用抵抗R1,R2によって一律に分圧して、分圧後の電圧がA/D変換用アナログ電圧としてA/D変換回路13に入力するように構成されている。
【0022】
このため、図8の従来の回路構成においては、接続点Cにおける被測定電圧が大きいOFF駆動時に比して、接続点Cにおける被測定電圧が大幅に小さくなるON駆動時においては、A/D変換後の1ビット当たりの電圧値が、OFF駆動時の電圧レベルによって大きな値に設定されているにも関わらず、分圧用抵抗R1,R2によりさらに分圧されてしまう結果、A/D変換回路13におけるA/D変換時の分解能が低下してしまい、ON駆動時における負荷41側の動作状態を的確に検出することができなくなるという結果を招いている。
【0023】
一方、図1に示すような本発明によるA/D変換用電圧入力回路30においては、前述のように、図8に示す従来のA/D変換用電圧入力回路30Aの場合とは異なった構成となっており、次のように構成されている。
【0024】
(1)負荷41を駆動していない時(図1の駆動用トランジスタTr1:OFF時)は、接続点Cの被測定電圧がA/D変換回路13への許容入力電圧よりも大きい電圧値となっているため、切替制御用トランジスタTr3をONすることにより、接続点Cの被測定電圧が分圧用抵抗RlとR2とによって分圧されて、A/D変換回路13のA/D入力ポートに対して出力される。
【0025】
(2)一方、負荷41を駆動している時(トランジスタTr1:ON時)は、接続点Cの被測定電圧がA/D変換回路13への許容入力電圧よりも小さな電圧値となっているため、トランジスタTr3をOFFすることにより、接続点Cの被測定電圧がそのままA/D変換回路13のA/D入力ポートに対して出力される。
【0026】
而して、図1に示すような本発明によるA/D変換用電圧入力回路30においては、次のような効果を奏することができる。
【0027】
(a)アクチュエータ側の負荷41を駆動していない時(すなわちOFF駆動時)に比べ、負荷41を駆動している時(すなわちON駆動時)には、従来技術よりも細かな分解能で、負荷41を駆動する駆動回路20からの駆動線上の接続点Cにおける被測定電圧を測定/監視することができ、ON駆動時における負荷41側の動作状態をより的確に測定/監視することができる。
【0028】
(b)さらには、負荷41の駆動状態如何に応じて、例えば、負荷41への駆動信号のONおよびOFFの2つの状態に応じて、A/D変換回路13に対して出力すべき被測定電圧の分圧の有無を切り替えることによって、A/D変換回路13におけるA/D分解能を切り替えて設定することができ、もって、いずれの駆動状態においても、被測定電圧の測定箇所における正常/異常状態の識別レベルを同レベルに設定することも可能になる。
【0029】
次に、図1に示す本発明によるA/D変換用電圧入力回路30の動作について、負荷41がソレノイド41Aであった場合を例にとって、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2は、負荷がソレノイドの場合における本発明によるA/D変換用電圧入力回路の一構成例を示す回路図であり、図1における負荷41をソレノイド41Aに置き換えた以外は、図1と全く同様の回路構成である。
【0030】
図2に示す回路構成においても、図1において説明したように、制御部10は、車載用の各負荷を制御するためのマイクロコンピュータからなるCPU11と、CPU11の出力ポートを介して出力されてくる制御用信号に基づいて、各車載用負荷を駆動するための駆動信号を出力する出力回路(OUT)12と、A/D入力ポートに入力されてくるアナログ電圧信号をデジタル信号にA/D変換して、CPU11の入力ポートへ送出するA/D変換回路13とを、少なくとも備えている。
【0031】
出力回路12から出力される駆動信号によって、駆動回路20内の駆動用トランジスタTr1、および、A/D変換用電圧入力回路30内の切替制御用トランジスタTr2が、ON/OFFされる。ここで、駆動回路20内の駆動用トランジスタTr1は、出力回路12から出力される駆動信号によってON/OFFされ、ソレノイド41Aのような誘導性の負荷を駆動することができるトランジスタが用いられる。
【0032】
また、A/D変換用電圧入力回路30内の切替制御用トランジスタTr2は、出力回路12から出力される駆動信号によって、駆動用トランジスタTr1と同相でON/OFFされ(すなわち、駆動用トランジスタTr1がON時に、ONされ、OFF時に、OFFされ)、後段の切替制御用トランジスタTr3のON/OFF動作を制御する。
【0033】
A/D変換用電圧入力回路30内の切替制御用トランジスタTr3は、前述したように、切替制御用トランジスタTr2から出力されるON/OFFによって、逆に、OFF/ONされ、駆動用トランジスタTr1と逆相でON/OFFされる(すなわち、駆動用トランジスタTr1がON時に、OFFされ、OFF時に、ONされる)。
【0034】
また、A/D変換用電圧入力回路30内の分圧用抵抗R1,R2は、アクチュエータ側の負荷であるソレノイド41Aの下流側に直列に接続されていて、被測定電圧として引き込まれる駆動回路20内の駆動線上の接続点Cにおける電圧を、A/D変換回路13に入力可能なアナログ電圧値に分圧するための分圧用抵抗素子である。すなわち、接続点Cの被測定電圧をVとした場合、A/D変換回路13への入力電圧を、{R2/(R1+R2)}×Vに略近似する値に分圧する抵抗素子である。
【0035】
なお、被測定電圧の測定箇所として、前述したように、駆動回路20により駆動されるソレノイド41Aのアクチュエータ側の任意の箇所を測定箇所として選択しても構わないが、図2においては、接続点Cすなわち駆動回路20のソレノイド41Aへの駆動線上の接続点Cを選択している場合を例示している。
【0036】
切替制御用トランジスタTr2,Tr3は、駆動回路20のソレノイド41Aに対する駆動状態如何に応じて、被測定電圧を分圧用抵抗R1,R2による分圧を行って、A/D変換回路13に対して出力するか否かを切り替えるための切替制御用スイッチとして機能している。
【0037】
ここで、切替制御用トランジスタTr3は、分圧用抵抗R2の下流側に直列に接続されており、且つ、ON時におけるコレクタ−エミッタ間飽和電圧(Vce)が十分小さく、ON時の抵抗が分圧用抵抗R2に比して十分小さいことを特徴とするトランジスタである。
【0038】
続いて、図2に示す本回路構成における動作について説明する。
【0039】
まず、負荷となるソレノイド41AをOFFにした場合の動作について説明すると、以下の通りである。
【0040】
(1)CPU11が、負荷のソレノイド41AをOFF状態にするために、出力回路(OUT)12からLowレベルの駆動信号を出力すると、駆動用トランジスタTrlと切替制御用トランジスタTr2とはOFF状態になる。
【0041】
(2)切替制御用トランジスタTr2がOFFすることにより、切替制御用トランジスタTr3のベース端子が接続された接続点Bの電位は、電圧VccのHighレベルに保持されることになり、切替制御用トランジスタTr3は、ON状態になる。
【0042】
以上の動作により、負荷のソレノイド41AがOFF時には、図2に示す本回路構成は、等価的に、図3に示すような回路構成とみなすことができる。図3は、負荷のソレノイド41AがOFF時における図2のA/D変換用電圧入力回路30の等価回路図である。
【0043】
ここで、切替制御用トランジスタTr3のON状態におけるコレクタ−エミッタ間飽和電圧(Vce)は、前述したように、十分に小さく、A/D変換回路13に対して出力するA/D変換用電圧は、接続点Cの被測定電圧を分圧用抵抗R1,R2によって分圧した電圧値に近似された値となる。
【0044】
したがって、A/D変換回路13においては、このような分圧後の電圧値をデジタル信号に変換して、CPU11へ入力することになり、CPU11は、ソレノイド41AがOFFの場合の接続点Cの被測定電圧として、この分圧電圧値に基づくデジタル信号を用いてモニタすることとなる。
【0045】
具体的な数値例を用いてさらに説明する。例えば、図3において、前提条件#1として、VB(バッテリ電圧)=9〜16V、負荷のソレノイド41Aのコイル抵抗が10Ω、駆動用トランジスタTr1のON抵抗が50mΩ、分圧用抵抗R1が4.9kΩ、R2が1kΩとし、さらに、切替制御用トランジスタTr3のVce(ON時のコレクタ−エミッタ間飽和電圧)が0.1Vであると仮定すると、CPU11がモニタする電圧範囲は、図4に示す通りである。図4は、負荷のソレノイド41AがOFF時においてA/D変換回路13に対して出力される電圧範囲を示す概念図である。
【0046】
図4に示すように、前記前提条件#1の数値例においては、CPU11の出力ポートからソレノイド41AをOFFする制御信号が出力される場合に、接続点Cの被測定電圧としてA/D変換用電圧入力回路30から出力されてくる電圧モニタ範囲、すなわち、A/D変換回路13のA/D入力ポートに対して出力されてくる接続点Cの被測定電圧に対応する分圧電圧値は、1.61〜2.79Vの範囲であり、図8に示した従来の回路構成の場合の1.52〜2.70Vと略同様の電圧モニタ範囲となっている。なお、図4のカッコ内に示す数値は、5Vを10ビットのデジタル値(‘1024’D)に変換した場合のA/D変換後のデジタル信号値を参考までに示している。
【0047】
次に、負荷となるソレノイド41AをONにした場合の動作について説明すると、以下の通りである。
【0048】
(1)CPU11が、負荷のソレノイド41AをON状態にするために、出力回路(OUT)12からHighレベルの駆動信号を出力すると、駆動用トランジスタTrlと切替制御用トランジスタTr2とはON状態になる。
【0049】
(2)切替制御用トランジスタTr2がONすることにより、切替制御用トランジスタTr3のベース端子が接続された接続点Bの電位は、Lowレベルに切り替わることになり、切替制御用トランジスタTr3は、OFF状態になる。
【0050】
以上の動作により、負荷のソレノイド41AがON時には、図2に示す本回路構成は、等価的に、図5に示すような回路構成とみなすことができる。図5は、負荷のソレノイド41AがON時における図2のA/D変換用電圧入力回路30の等価回路図である。
【0051】
したがって、A/D変換回路13においては、接続点Cの電圧値すなわち被測定電圧をそのままデジタル信号に変換して、CPU11へ入力することになり、CPU11は、ソレノイド41AがONの場合の接続点Cの被測定電圧として、この接続点Cにおける実際の電圧値に基づくデジタル信号を用いてモニタすることとなる。
【0052】
具体的な数値例を用いてさらに説明する。例えば、図5において、負荷OFF時における前記前提条件#1と全く同様の数値例を適用した場合における、CPU11がモニタする電圧範囲を示すと、図6に示す通りである。図6は、負荷のソレノイド41AがON時においてA/D変換回路13に対して出力される電圧範囲を示す概念図である。
【0053】
図6に示すように、CPU11の出力ポートからソレノイド41AをONする制御信号が出力される場合に、接続点Cの被測定電圧としてA/D変換用電圧入力回路30から出力されてくる電圧モニタ範囲、すなわち、A/D変換回路13のA/D入力ポートに対して出力されてくる接続点Cの被測定電圧の実際の電圧は、0.04〜0.08Vの範囲であり、図8に示した従来の回路構成の場合の0.007〜0.013Vに比してより拡大された電圧モニタ範囲となっている。この結果、駆動用トランジスタTr1がON状態の場合には、従来の回路構成の場合よりも、より高い分解能(細かな電圧の違い)を用いて、接続点Cの電圧変化をモニタすることができる。なお、図6のカッコ内に示す数値も、図4の場合と同様に、5Vを10ビットのデジタル値(‘1024’D)に変換した場合のA/D変換後のデジタル信号値を参考までに示している。
【0054】
次に、図2に示す回路構成例において、負荷のソレノイド41Aを駆動する駆動用トランジスタTr1のON抵抗が上昇する異常が発生した場合について、CPU11が、該異常を検出する動作例について考える。例えば、前述した前提条件#1のような数値例を用いる場合において、駆動用トランジスタTr1のON抵抗が正常な50mΩから10倍の500mΩに上昇するような異常が発生した場合について考える。
【0055】
駆動用トランジスタTr1をONした場合、A/D変換回路13のA/D入力ポートに対して出力されてくる電圧モニタ範囲は、前述したように、接続点Cの被測定電圧そのものであり、駆動用トランジスタTr1のON抵抗の正常時と異常時とを併せて表記すると、図7に示すようになる。ここに、図7は、駆動用トランジスタTr1が正常時/故障時に、負荷のソレノイド41AがON時においてA/D変換回路13に対して出力される電圧範囲を示す概念図であり、駆動用トランジスタTr1のON抵抗が500mΩの異常値まで上昇した場合の数値例を、正常時の50mΩの場合と併せて示している。
【0056】
図7に示すように、CPU11の出力ポートからソレノイド41AをONする制御信号が出力される場合に、接続点Cの被測定電圧としてA/D変換用電圧入力回路30から出力されてくる電圧モニタ範囲、すなわち、A/D変換回路13のA/D入力ポートに対して出力されてくる接続点Cの被測定電圧に相当する電圧は、図8に示すような従来の回路構成の場合であれば、駆動用トランジスタTr1が正常時の場合は、前述のように、0.007〜0.013Vの範囲であるが、駆動用トランジスタTr1のON抵抗値が500mΩと異常になった場合は、0.14〜0.25Vの範囲であり、正常時との電圧差はごく僅かである。
【0057】
これに対して、図2に示すような本発明による回路構成例の場合は、CPU11の出力ポートからソレノイド41AをONする制御信号が出力される場合に、接続点Cの被測定電圧としてA/D変換用電圧入力回路30から出力されてくる電圧モニタ範囲、すなわち、A/D変換回路13のA/D入力ポートに対して出力されてくる接続点Cの被測定電圧に相当する電圧は、実際の被測定電圧そのものである。したがって、図7に示すように、駆動用トランジスタTr1が正常時の場合は、前述のように、0.04〜0.08Vの範囲であるが、駆動用トランジスタTr1のON抵抗値が500mΩと異常になった場合は、0.85〜1.52Vの範囲となり、図8の従来の回路構成の場合に比して、正常時と故障時との電圧差が大幅に拡大され、A/D変換時の分解能が大幅に向上していることが分かる。なお、図6のカッコ内に示す数値も、図4の場合と同様に、5Vを10ビットのデジタル値(‘1024’D)に変換した場合のA/D変換後のデジタル信号値を参考までに示している。
【0058】
したがって、本発明によるA/D変換用電圧入力回路30を用いて、CPU11内のRAM(不揮発性記憶装置)またはROM(読み出し専用記憶装置)に、駆動用トランジスタTr1のON動作の異常を判別する異常診断閾値Vthとして、例えば、0.4V(5Vを10ビットのデジタル値で表現した場合の‘81’D)を設定しておき、負荷のソレノイド41AをONに駆動した場合にA/D変換回路13からCPU11の入力ポートに入力されてくるモニタ電圧が異常診断閾値Vthの0.4V(‘81’D)を超えるか否かを監視することによって、駆動用トランジスタTr1の異常を的確に検出することが可能になる。
【0059】
一方、図8のような従来の回路構成では、駆動用トランジスタTr1のON時における正常時と異常時との電圧差が極めて近接しているために、前記前提条件#1と全く同一の数値(回路定数)によって構成することが困難な実際の駆動回路20それぞれにおいては、駆動用トランジスタTr1の故障を判別するための異常診断閾値(素子中間故障検出閾値)を設定することが極めて困難であり、駆動用トランジスタTr1の故障を容易には検出することができない。
【0060】
かくのごとく、本発明による回路構成においては、従来技術とは異なり、駆動用トランジスタTr1の故障について容易に且つ確実に検出可能な異常診断閾値(素子中間故障検出閾値)をCPU11のRAMやROMにあらかじめ設定することが可能であり、この結果、駆動用トランジスタTr1のON抵抗上昇異常(中間故障)についても、より的確に検出することが可能になるといった追加効果も期待することができる。
【0061】
以上の実施形態においては、負荷をソレノイド41Aという誘導性負荷とした場合について説明したが、モータ、ランプのようなバルブ負荷や、容量性の負荷や、通常の抵抗負荷の場合であっても、さらには、それらの組み合わせの負荷であっても、全く同様に適用することができる。
【0062】
また、駆動用トランジスタTr1、切替制御用トランジスタTr2,Tr3についても、バイポーラトランジスタ、CMOSトランジスタ、あるいは、その組み合わせの如何によらず、同様の回路構成を用いて、同様の効果を得ることが可能である。
【0063】
また、前述の実施形態においては、被測定電圧がより大きい電圧レベルとなるOFF動作時について、2つの分圧用抵抗R1,R2により分圧する場合について説明したが、被測定電圧を分圧する分圧用抵抗を2つ以上で構成しても良いし、あるいは、車載用負荷側の1つの測定箇所のみならず、複数の測定箇所の電圧を被測定電圧として引き込むような回路構成としても良いし、駆動状態に応じて、複数の分圧用抵抗によって複数の電圧レベルに分圧するような構成としても良い。
【0064】
さらには、前述した実施形態の場合とは異なり、駆動回路20をONにした時に、A/D変換用電圧入力回路30に入力されてくる測定箇所の被測定電圧が、OFF時に比してより大きくなる場合、ON時の被測定電圧を分圧してA/D変換回路13に対して出力することとしても良いし、あるいは、被測定電圧の電圧レベルがより小さくなる駆動条件側の被測定電圧を増幅するようにして、A/D変換回路13に対して出力することとしても良く、車載用の負荷41に対する駆動状態に応じて、A/D変換回路13に対して出力されるA/D変換用のアナログ電圧の電圧レベルを変更可能とするA/D変換用電圧入力方法であれば、如何なる回路構成からなるA/D変換用電圧入力方法を用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明によるA/D変換用電圧入力回路の一構成例を示す回路図である。
【図2】負荷がソレノイドの場合における本発明によるA/D変換用電圧入力回路の一構成例を示す回路図である。
【図3】負荷OFF時における図2のA/D変換用電圧入力回路の等価回路図である。
【図4】負荷OFF時においてA/D変換回路に対して出力される電圧範囲を示す概念図である。
【図5】負荷ON時における図2のA/D変換用電圧入力回路の等価回路図である。
【図6】負荷ON時においてA/D変換回路に対して出力される電圧範囲を示す概念図である。
【図7】駆動用トランジスタTr1が正常時/故障時に、負荷ON時においてA/D変換回路に対して出力される電圧範囲を示す概念図である。
【図8】従来のA/D変換用電圧入力回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0066】
10…制御部、11…CPU、12…出力回路(OUT)、13…A/D変換回路(A/D)、20…駆動回路、30,30A…A/D変換用電圧入力回路、41…負荷、41A…ソレノイド、R1,R2…分圧用抵抗、Tr1…駆動用トランジスタ、Tr2,Tr3…切替制御用トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路により駆動される車載用負荷側において任意に選択した測定箇所の被測定電圧を入力して、A/D変換回路へ出力するA/D変換用電圧入力回路において、前記駆動回路の前記車載用負荷に対する駆動状態に応じて前記A/D変換回路に対して出力する前記被測定電圧の電圧レベルを変更するための切替制御用スイッチを備えていることを特徴とするA/D変換用電圧入力回路。
【請求項2】
請求項1に記載のA/D変換用電圧入力回路において、前記切替制御用スイッチを、前記被測定電圧を分圧するための少なくとも2個の分圧用抵抗と直列接続し、前記駆動回路の前記車載用負荷に対するON駆動またはOFF駆動のうちいずれか前記被測定電圧がより大きい電圧値となる駆動を行う際に、前記切替制御用スイッチをONに設定することにより、前記被測定電圧を前記分圧用抵抗によって分圧した電圧を、前記A/D変換回路に対して出力することを特徴とするA/D変換用電圧入力回路。
【請求項3】
請求項1に記載のA/D変換用電圧入力回路において、前記切替制御用スイッチを、前記被測定電圧を分圧するための少なくとも2個の分圧用抵抗と直列接続し、前記駆動回路の前記車載用負荷に対するON駆動またはOFF駆動のうちいずれか前記被測定電圧がより小さい電圧値となる駆動を行う際に、前記切替制御用スイッチをOFFに設定することにより、前記被測定電圧を分圧することなく、そのまま、前記A/D変換回路に対して出力することを特徴とするA/D変換用電圧入力回路。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のA/D変換用電圧入力回路において、前記切替制御用スイッチが、バイポーラトランジスタ、または、CMOSトランジスタ、あるいは、その組み合わせのいずれかから構成されていることを特徴とするA/D変換用電圧入力回路。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のA/D変換用電圧入力回路において、前記測定箇所を含む前記車載用負荷が、誘導性の負荷、または、容量性の負荷、または、バルブ負荷、または、抵抗負荷、あるいは、それらの組み合わせのいずれかであることを特徴とするA/D変換用電圧入力回路。
【請求項6】
駆動回路により駆動される車載用負荷側において任意に選択した測定箇所の被測定電圧を入力として、デジタル信号にA/D変換するA/D変換用電圧入力方法において、前記駆動回路の前記車載用負荷に対する駆動状態に応じて、前記A/D変換回路に対して出力する前記被測定電圧の電圧レベルを変更することを特徴とするA/D変換用電圧入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−214905(P2007−214905A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32742(P2006−32742)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】