説明

なぞり式回路基板検査装置

【課題】電極の片減りを防止できるなぞり式回路基板検査装置を提供する。
【解決手段】接点Iおよび接点Nをオンとし、他の接点をオフとすれば、定電流源31からの電流が接点I、ニードル11、回路パターン51、ニードル13、接点Nと流れ、ニードル11の極性はプラス、ニードル13の極性はマイナスである。電圧測定器36は、ニードル11とニードル13間の電圧を測定し、判定装置4は異常/正常の判定を行う。接点Mおよび接点Jをオンとし、他の接点をオフとすれば、定電流源31からの電流が接点M、ニードル13、回路パターン51、ニードル11、接点Jと流れ、ニードル13の極性をプラス、ニードル11の極性をマイナスとすることができる。スイッチマトリクス2への極性切替は制御装置5からの指令により行われ、操作者の指示或いは他の指令などに対応して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、なぞり式回路基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶基板等の基板の回路パターンのショートやオープン等を検査する装置として、なぞり式と呼ばれる検査装置が例えば特許第2670655号などにより本願出願人により提案されている。
このなぞり式検査装置は、複数の針状の電極(ニードルと呼ばれる)を、回路パターンに順次接触させながら(なぞり)、多数の回路パターンのショートやオープン等を検査する構成になっている。
【0003】
検査対象である基板のうち、液晶パネルや有機ELパネルやSTNパネルなどの中小型液晶表示器用の基板は、小型化、高精細化がさらに進んでおり、パターン間隔の狭ピッチ化が進んでいる。また、一枚の大型のガラス基板などに多数の回路パターンを形成する多面付けと呼ばれる手法も普及しており、精細化した多量のパターンを一度に検査するために、多数の電極と電源及び検出装置を備える構成になってきている。
【0004】
【特許文献1】特許第2670655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した多面付けやパターン本数の増加により、なぞり用電極であるニードルの摩耗も大きくなる問題があり、また、プラス側のニードルの摩耗が大きい所謂「片減り」といわれる現象が問題になってきている。このようなニードルの摩耗、片減りが増加すると、ニードルの交換頻度が高くなる上、生産ロットの途中でニードルの交換が必要になる等、生産効率の悪化をもたらす問題がある。
【0006】
また、なぞり式検査装置においては、被測定対象である基板配線の形状によってニードルの配線を変える必要があるが、前記したように多面付け、パターン本数の増加により、検査装置のニードルの本数も多くなり、多数の配線や配線確認の作業が大変であり、検査の段取りに時間がかかるという問題がある。
本発明はこれらの従来の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のなぞり式回路基板検査装置は、被検査対象に摺動接触する複数の電極と、該電極に電源を供給する電源と、該電極間の導通と非導通を判定する測定装置と、前記電極と前記電源との間に設けられ、該電極に供給される電源の極性を切り替える極性切替装置と、を有することを特徴とする。
また請求項2の発明においては、被検査対象に摺動接触する複数の電極と、該電極に電源を供給する電源と、該電極間の導通と非導通を判定する測定装置と、を備え、前記複数の電極は並列に前記電源に接続し、前記電極と前記電源との間に設けられたスイッチマトリクスを、更に備えたことを特徴とする。
更に請求項3の発明においては、前記電極を上下方向に移動させて、電極を被検査対象に接触或いは非接触とする昇降装置と、前記スイッチマトリクスにより、前記電源と接続されない電極を該昇降装置を制御して被検査対象と非接触とさせる制御装置と、を更に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のなぞり式回路基板検査装置によれば、電極の極性を簡単に切り替えることが可能であり、これにより電極の摩耗バランスを維持でき、電極の片減りを防止でき、生産ロット途中での電極交換などをする必要がなくなる効果がある。
また請求項2の発明においては、上記効果に加えて、スイッチマトリクスにより電極と電源の接続を自在に切り替えられるため、基板サイズや電極パターンの異なるロットでも人手配線換えせずにすみ、段取り時間が短縮できる効果がある。
更に請求項3の発明においては、スイッチマトリクスによる切り替えにより使用しない電極については非接触とすることができるから、電極の摩耗を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は検査装置Aの全体の構成を示す正面図であり、検査対象である被検査基板50をスライドテーブル9上に載置し、ニードル装置1により被検査基板50の回路パターン51、52に接触して、ショート及びオープンの検査を行うように構成されている。スライドテーブル9は図面上左右方向に移動可能であり、左方向に移動する時にニードル装置1は回路パターン51、52に「なぞり」接触して、検査を行うように構成されている。従って、図面上右方向がなぞり方向である。
検査装置Aは更に極性切替装置であり、またスイッチ装置であるスイッチマトリクス2、測定装置3及び判定装置4を備えている。
【0010】
ニードル装置1は図2に示すように、複数のニードル11を有しており、これらがスイッチマトリクス2に接続している。
各ニードル11は、図3に示すように各ニードルホルダ15に保持されている。ニードルホルダ15はエアシリンダ17によりガイド16上を昇降し、各ニードル11を被検査基板50に対して接触又は非接触とするように構成されている。なお19は微調整用の上下ねじである。
また、ニードル11は前後移動ねじ18により前後方向(なぞり方向)に移動させることが可能になっており、図4に示すようになぞり方向に位置をずらして被検査基板50に接触することができるようになっている。
ニードル装置1は、この実施形態では4本のニードル11が一組になっており、この4本のニードル11により、1の検査を行うようになっている。
図1に示す実施形態においては、複数のニードル11により同時に複数の被検査基板50を検査するように構成されているが、以下では、4本のニードル11により、1の被検査基板50の検査を行う実施例を説明する。
【0011】
図4にブロック図を示す。
この実施形態のニードル装置1は、前記したように4本のニードル11〜14が1セットになっており、複数のセットを有しているが、以下では1セットの構成のみを説明する。ニードル11〜14はスイッチマトリクス2を介して、測定装置3に接続している。なお、1セットのニードル数は4本に限定されることなく、必要に応じて増減が可能である。
ニードル11〜13は、同一直線上に並んでおり、回路パターン51のオープンを検査し、ニードル14は回路パターン51とは異なる回路パターン52に接触するようになぞり方向にずらして配置され、回路パターン51と回路パターン52の間のショート部53を検出するように構成されている。
【0012】
スイッチマトリクス2は、接点A〜接点Pの接点を有し、接点A〜接点Hが測定装置3の定電流源30及び電圧測定器35に接続し、接点I〜接点Pが定電流源31と電圧測定器36に接続するように構成されている。
電圧測定器35と電圧測定器36は2つのニードル11〜14間の電圧を測定し、該電圧信号は判定装置4に送られ、該ニードル11〜14間の導通/非導通を検出するようになっている。
なお、スイッチマトリクス2としてはフォトMOSリレーなどの半導体スイッチを用いることが望ましい。
【0013】
判定装置4における判定結果は、制御装置5に送られ、ここで表示、告知或いは他のデータ処理が行われるように構成されている。制御装置5はまた、操作者の指示などに基づいてスイッチマトリクス2の切替指示信号を出力し、接点制御装置6を介して切替を実行させるようになっている。
【0014】
ニードル11〜13は、回路パターン51の長さに応じて3本の中の2本を使用して、回路パターン51のオープンを検査する。
いま、ニードル11とニードル13により回路パターン51のオープンの検査を行う場合について説明する。
スイッチマトリクス2において接点Iおよび接点Nをオンとし、他の接点をオフとすれば、定電流源31からの電流が接点I、ニードル11、回路パターン51、ニードル13、接点Nと流れる。このときニードル11の極性はプラス、ニードル13の極性はマイナスである。電圧測定器36は、この時のニードル11とニードル13間の電圧を測定する。回路パターン51に欠損箇所や切断箇所がない場合には、回路の通常の抵抗値に対応した電圧となり、欠損などがあれば、検出電圧は高くなるから、判定装置4はこれを検出して、異常/正常の判定を行う。
【0015】
ニードル11をプラスの極性のまま「なぞり」検査を継続すると、ニードル11と回路パターン51の擦れ合いに加えて、プラス側では電子イオンによる酸化が起こり、マイナス側より摩耗が増進する。これによりプラス側の電極の摩耗が大きい所謂「片減り」が生ずる。
本発明の実施形態では、スイッチマトリクス2により簡単に極性を切り替えることができるため、この片減りを防止することが可能である。即ち、スイッチマトリクス2において接点Mおよび接点Jをオンとし、他の接点をオフとすれば、定電流源31からの電流が接点M、ニードル13、回路パターン51、ニードル11、接点Jと流れ、ニードル13の極性をプラス、ニードル11の極性をマイナスとすることができる。
極性切替は制御装置5からの指令により接点制御装置6により行われ、操作者の指示或いは他の指令などに対応して行われる。
なお、上記ではニードル11とニードル13を使用する場合について説明したが、ニードル11とニードル12或いはニードル12とニードル13を使用する場合も、スイッチマトリクス2のスイッチの切替を適宜行うことにより極性の切替を行う。
【0016】
前記したように、ニードル11〜ニードル13は回路パターン51の長さに応じて選択的に使用することが可能である。例えば図4において、上記ではニードル11とニードル13を用いたが、回路パターン51が短い場合には、ニードル11とニードル12を使用することにより対応することが可能になっている。極性の切替だけでなく、このような使用するニードル11〜13の切替もスイッチマトリクス2により簡単に行うことができる。
この切替は、スイッチマトリクス2において、接点Iと接点Lをオンし、他の接点をオフとすれば、定電流源31からの電流は接点Iからニードル11、回路パターン51、ニードル12、接点Lと流れて、ニードル11とニードル12の間の回路パターン51のオープンを検査することができる。
また、この場合も接点Kと接点Jをオンとすれば極性の切替が可能である。
なお、この実施形態では、制御装置5はスイッチマトリクス2の切り替えに対応して、使用しないニードルをエアシリンダ17により上昇させて、基板50に接触させないようになっている。例えば図3において、上記設定ではニードル12は使用しないため、制御装置5はエアシリンダ17に指令を出して、ニードル12を上昇させて基板50に接触しないようにする。この構成により、ニードルの無駄な摩耗を排除することが可能になる。
【0017】
図4の実施形態では、更にニードル14を用いてショート部53の有無の検査も可能になっている。このニードル14を用いる設定もスイッチマトリクス2を用いて簡単に行うことが可能である。
ニードル11とニードル13により回路パターン51のオープンの検査を行い、同時にニードル13とニードル14によりショート部53の検査を行う場合について説明する。
上記と同様にスイッチマトリクス2において接点Iおよび接点Nをオンとし、定電流源31からの電流を接点I、ニードル11、回路パターン51、ニードル13、接点Nと流して回路パターン51のオープンを検査する。同時に、接点Eと接点Hをオンとし、ショート部53の有無を検査する。ショート部53が存在すれば、定電流源30からの電流は接点E、ニードル13、ショート部53、ニードル14、接点Hと流れ、所定の電圧が電圧測定器35により検出されるから、ショート部53の存在をチェックできる。
【0018】
上記のようなニードル群と測定装置3の切替は、従来は配線の切り換えによって行っており、ニードルの多数化や基板サイズの多様化によりその作業負担が増大しているが、上記構成により人手による配線換えをせずにすみ、大幅な効率化が可能である。
また、上記実施形態においては、4本のニードルを1組として用いているが、これに限定されるものではなく、ニードルの本数、配線の接続関係など検査の内容に応じて多様な形態が可能であり、前記した特許第2670655号に開示されているような検査方法も全て可能である。このような多様な検査についても、スイッチマトリクス2により、配線換えなどを行うことなく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略正面図。
【図2】本発明の一実施形態のニードル装置1を示す説明図。
【図3】本発明の一実施形態のニードル装置1を示す概略側面図。
【図4】本発明の一実施形態のブロック図。
【符号の説明】
【0020】
1:ニードル装置、2:スイッチマトリクス、3:測定装置、4:判定装置、5:制御装置、6:接点制御装置、9:スライドテーブル、11:ニードル、12:ニードル、13:ニードル、14:ニードル、15:ニードルホルダ、16:ガイド、17:エアシリンダ、18:前後移動ねじ、19:上下ねじ、30:定電流源、31:定電流源、35:電圧測定器、36:電圧測定器、50:被検査基板、51:回路パターン、52:回路パターン、53:ショート部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象に摺動接触する複数の電極と、
該電極に電源を供給する電源と、
該電極間の導通と非導通を判定する測定装置と、
前記電極と前記電源との間に設けられ、該電極に供給される電源の極性を切り替える極性切替装置と、
を有することを特徴とするなぞり式回路基板検査装置。
【請求項2】
被検査対象に摺動接触する複数の電極と、
該電極に電源を供給する電源と、
該電極間の導通と非導通を判定する測定装置と、を備え、
前記複数の電極は並列に前記電源に接続し、
前記電極と前記電源との間に設けられたスイッチマトリクスを、更に備えた、
なぞり式回路基板検査装置。
【請求項3】
前記電極を上下方向に移動させて、電極を被検査対象に接触或いは非接触とする昇降装置と、
前記スイッチマトリクスにより、前記電源と接続されない電極を該昇降装置を制御して被検査対象と非接触とさせる制御装置と、
を更に備えた請求項2のなぞり式回路基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−51727(P2008−51727A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230020(P2006−230020)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(300091670)株式会社アドテックエンジニアリング (23)
【Fターム(参考)】