説明

アーム接続構造

【課題】一対のアーム部材を回動可能に支持した際に、回動方向に直交する方向の重力や外力による垂れを防止できるアーム接続構造を提供する。
【解決手段】第1のアーム21と第2のアーム22を、シャフト31により回動可能に接続する。このとき、シャフト31を第1のアーム21に固定するとともに、シャフト31の第2のアーム22側にテーパ313を設け、このテーパ313を受ける受けテーパ251を第2シャフト22に設け、さらに、シャフト31のテーパ313を受けテーパ251に常時接触せしめるコイルバネ(付勢部材)32を設けた。これにより、静止時および回動時に、シャフト31のテーパ313が受けテーパ251に押し付けられてシャフト31が直立しようとするので、アーム21、22が重力や外力により下方へ垂れるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームとアームとを回動可能に接続するアーム接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の接続構造には、回動可能に接続する2つの筐体間にがたつきを生じさせないようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
以下、図5により従来の接続構造について説明する。
図5に示すように、接続構造であるヒンジ100は、第1筐体101と第2筐体102とを回動可能に支持するものである。第1筐体101は、第2筐体102側に突出した一対の第1ヒンジ部103を有し、第2筐体102は、第1筐体101側に突出して一対の第1ヒンジ部103、103を外側から挟む一対の第2ヒンジ部104を有する。
【0003】
第1ヒンジ部103は有底の円筒形状をしており、第2ヒンジ部104は円筒形状をしている。第1ヒンジ部103の内部空間には、先端に山形の傾斜面を有する凸部106が設けられた円柱形状の雄ボス105が収容されており、第2ヒンジ部104の内部空間には、先端に凹部108を有する雌ボス107が収容されている。雌ボス107にはガイド溝109が設けられており、ガイド溝109が第2ヒンジ部104の内面に設けられているガイド凸部110に嵌合することにより、相対的回転を規制している。
【0004】
雌ボス107は、第1ヒンジ部103と第2ヒンジ部104との境界を超えて第1ヒンジ部103まで延びており、先端の凹部108が雄ボス105の凸部106に嵌合した状態で、雌ボス107と雄ボス105とはネジ111により結合されている。このとき、一方の雌ボス107の凹部108のみを、対向する雄ボス105の凸部106の位置より所定角度だけずらして形成する。すなわち、他方における雄ボス105と雌ボス107のガタの角度よりも大きい角度ずらすことにより、常に少なくとも一方の雌ボス107の凹部108が雄ボス105の凸部106の傾斜面を押圧して、雄ボス105に回転力を作用させるようにする。
【0005】
これにより、第1筐体101と第2筐体102を開いたときに、ガタのない状態で固定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−98011号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来のヒンジ構造においては、第1筐体101と第2筐体102とを開閉した際に、開閉方向に対するガタは防止できるものの、開閉方向に直交する方向のガタ、すなわち回動軸を鉛直にしたときの重力による垂れの防止は十分ではなかったという問題があった。
【0008】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、一対のアーム部材を回動可能に支持した際に、回動方向に直交する方向の重力や外力による垂れを防止できるアーム接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアーム接続構造は、第1のアームと第2のアームをシャフトにより回動可能に接続するアーム接続構造であって、前記第1のアームに前記シャフトを固定するとともに、前記第2のアームに前記シャフトを回動可能に受けるシャフト受けを設け、前記シャフトにおいて前記シャフト受けにより受けられる部分にテーパを設け、前記シャフト受けに前記シャフトのテーパを受ける受けテーパを設け、前記シャフトのテーパを前記受けテーパに常時接触せしめる付勢部材を前記第2のアームに設けた構成を有している。
【0010】
この構成により、第1のアームと第2のアームを、シャフトにより回動可能に接続する。このとき、シャフトを第1のアームに固定するとともに、シャフトの第2のアーム側にテーパを設け、このテーパを受ける受けテーパを第2シャフトに設け、さらに、シャフトのテーパを受けテーパに常時接触せしめる付勢部材を設けた。これにより、静止時および回動時に、シャフトのテーパが受けテーパに押し付けられてシャフトが直立しようとするので、アームが重力や外力により下方へ垂れるのを防止できる。
【0011】
また、本発明のアーム接続構造は、前記付勢部材の付勢力を調整する調整部材を設けた構成を有している。
【0012】
この構成により、付勢部材の付勢力を調整部材により調整できるので、シャフトのテーパと受けテーパとの間の摩擦力を適切に設定でき、安定した回動動作および回動トルクを得ることができる。
【0013】
さらに、本発明のアーム接続構造は、前記調整部材が、前記シャフトに組み込まれた構成を有している。
【0014】
この構成により、調整部材がシャフトに組み込まれているので、シャフト、付勢部材、調整部材を一つのユニットとして構成でき、組付けや交換が容易になる。また、汎用部品として転用も可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、シャフトを第1のアームに固定するとともに、シャフトの第2のアーム側にテーパを設け、このテーパを受ける受けテーパを第2シャフトに設け、さらに、シャフトのテーパを受けテーパに常時接触せしめる付勢部材を設けた。これにより、静止時および回動時に、シャフトのテーパが受けテーパに押し付けられてシャフトが直立しようとするので、アームが重力や外力により下方へ垂れるのを防止できるという効果を有するアーム接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態のアーム接続構造の使用状態を示す全体斜視図
【図2】アーム接続構造の断面図
【図3】アーム接続構造の分解断面図
【図4】アーム接続ユニットの斜視図
【図5】従来のヒンジの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態のアーム接続構造について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、本発明に係る実施形態のアーム接続構造10は、第1のアーム21の一端と第2のアーム22の一端を回動可能に接続するものである。ここでは、回動軸L1は略鉛直方向に設けられており、第1のアーム21および第2のアーム22は略水平面内を回動する。
【0018】
第1のアーム21および第2のアーム22は、ともに、矩形断面を有する部材であるが、組み立て性のため、断面コ字状の2つの半体を、互いの開口を対向させるように結合して、矩形断面としている。以後の説明において、第1のアーム21および第2のアーム22の内部を説明する際には、断面コ字状の半体も第1のアーム21および第2のアーム22と表示する。
【0019】
図2〜図4に示すように、第1のアーム21の一端と第2のアーム22の一端との間には、シャフトユニット30が設けられている。
シャフトユニット30は、中央に回動軸L1となるシャフト31を、上下方向に有する。シャフト31の中央には、円形断面のシャフト本体315を有し、シャフト本体315の上側は、板状に加工されて平板部311となっている。平板部311には、上下方向に長円形状のネジ穴312が設けられている。
【0020】
シャフト31の下端部には、下向きにテーパ313を有し、シャフト本体315の外径よりも大きな外径の逆円錐台形状をした膨径部314を有する。膨径部314の下面には、軸316が下方に突出して設けられている。膨径部314の上側のシャフト本体315の周囲には、付勢部材であるコイルバネ32が取付けられており、コイルバネ32の上側には、コイルバネ32の付勢力を調整する調整部材としてのバネ押え33がシャフト本体315に沿って上下移動可能に設けられている。
【0021】
バネ押え33は、シャフト本体315外側に嵌る円環状の外嵌部331を有し、外嵌部331の外側には、一対の取付アーム332、332を一直線上に有する。各取付アーム332には、ネジ穴333が上下方向に設けられている。バネ押え33は、シャフト本体315から上方へ脱落しないように、C形止め輪やE形止め輪等の止め輪34が取付けられている。従って、バネ押え33は、コイルバネ32の付勢力により、上方へ付勢されて、止め輪34に押し付けられるが、外力が作用すると、コイルバネ32に抗して下方へ移動可能となっている。
【0022】
図2および図3に示すように、第1のアーム21の半体は断面コ字状の部材であり、一方の半体の長手方向端部の縦壁内面211には、シャフト固定具23が取付けられている。シャフト固定具23は全体コ字状をしており、ベース231と、ベース231の左右に設けられて対向するガイド232、232を有する。ベース231には、ネジ穴233が設けられている。対向するガイド232、232の間隔は、シャフト31の平板部311の幅よりも大き目となっており、シャフト固定具23の下方の第1のアーム21の底板212には、シャフトユニット30が貫通する開口213が設けられている。
【0023】
第2のアーム22の半体は断面コ字状の部材であり、一方の半体の長手方向端部の縦壁内面221には、上下方向に貫通したネジ部241を有する一対のネジ受け24、24が取付けられている。一対のネジ部241、241の間隔は、シャフトユニット30のバネ押え33に設けられている一対のネジ穴333の間隔に対応している。ネジ受け24の下方の第2のアーム22の底板222には、円筒形状のシャフト受け25が取付けられている。
【0024】
シャフト受け25の上部には、シャフト31の膨径部314のテーパ313に対応した受けテーパ251が設けられている。シャフト受け25の下部には、シャフト31の膨径部314に設けられている軸316が嵌合する軸受け部252を有する。従って、軸受け部252によってシャフト31の軸316の移動が規制されるので、シャフト31の傾きを規制することができる。また、第2のアーム22の天板223におけるネジ受け24、24およびシャフト受け25の上方位置には、シャフトユニット30が貫通する開口224が設けられている。
【0025】
次に、第1のアーム21と第2のアーム22の接続について説明する。なお、第1のアーム21および第2のアーム22は、まず半分に分割された状態で、以下のように組み立てる。
【0026】
図3に示すように、まず、シャフトユニット30を第2のアーム22の天板223の開口224から挿入し、シャフト31の膨径部314先端のテーパ313を、第2のアーム22の底板222に設けられているシャフト受け25の受けテーパ251に当接させる(図3中矢印A)。この状態で、ネジ36によりバネ押え33をネジ受け24に取付ける(図3中矢印B)。このとき、ネジ36の締付け量を調整して、コイルバネ32が膨径部314のテーパ313をシャフト受け25の受けテーパ251に押し付ける力を適正に設定する。すなわち、ネジ36の締付け量を大きくすると、コイルバネ32が圧縮されるので、合計部314を下方へ押す付勢力が大きくなり、テーパ313は受けテーパ251に強く押し付けられる。
【0027】
次いで、シャフトユニット30のシャフト31の平板部311を、第1のアーム21の底板212の開口213から挿入し、シャフト固定具23の一対のガイド232、232の間に平板部311を位置決めする(図3中矢印C)。ネジ35を平板部311のネジ穴312に通して、シャフト固定具23のネジ穴233に締結する(図3中矢印D)。これにより、シャフトユニット30のシャフト31は第1のアーム21に固定される。平板部311のネジ穴312は上下方向に長穴となっているので、バネ押え33を調整した際でも対応できる。
最後に、第1のアーム21および第2のアーム22に半体(図示省略)を取付けて、各アーム21、22を矩形状とする。
【0028】
なお、コイルバネ32によるテーパ313と受けテーパ251との押圧力を調整する際には、第1のアーム21および第2のアーム22に半体(図示省略)を取り外し、ネジ35を緩めて平板部311を移動可能とした状態で、ネジ36の締付け量を調整する。その後、ネジ35を締めて、平板部311を再び固定し、半体(図示省略)を取付ける。
【0029】
以上、説明した実施形態に係るアーム接続構造10によれば、第1のアーム21の一端と第2のアーム22の一端を、シャフトユニット30のシャフト31により回動可能に接続する。このとき、シャフト31を第1のアーム21に固定するとともに、シャフト31の第2のアーム22側にテーパ313を設け、このテーパ313を受ける受けテーパ251を有するシャフト受け25を第2シャフト22に設け、さらに、シャフト31のテーパ313を受けテーパ251に常時接触せしめるコイルバネ32を設けた。
【0030】
これにより、静止時および回動時に、コイルバネ32によってシャフト31のテーパ313が受けテーパ251に押し付けられているので、シャフト31はシャフト受け25に対して真っ直ぐに立とうとする。すなわち、シャフト31が傾くのを防止することにより、アーム21、22が重力や外力により下方へ垂れるのを防止できる。
【0031】
また、コイルバネ32の付勢力を調整部材であるバネ押え33により調整できるので、シャフト31のテーパ313と受けテーパ251との間の摩擦力を適切に設定でき、安定した回動動作および回動トルクを得ることができる。
【0032】
さらに、バネ押え33をシャフトユニット30に組み込んだので、シャフト31、コイルバネ32、バネ押え33を一つのユニットとして構成でき、組付けや交換が容易になる。また、汎用部品として転用も可能になる。
【0033】
なお、本発明のアーム接続構造は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態において、付勢部材としてコイルバネ32を用いた場合を例示したが、その他のバネ部材も適用可能である。
また、各アーム21、22が矩形断面の場合について例示したが、アーム21、22の断面形状は、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0034】
10 アーム接続構造
21 第1のアーム
22 第2のアーム
25 シャフト受け
251 受けテーパ
31 シャフト
313 テーパ
32 コイルバネ(付勢部材)
33 バネ押え(調整部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアームと第2のアームをシャフトにより回動可能に接続するアーム接続構造であって、
前記第1のアームに前記シャフトを固定するとともに、前記第2のアームに前記シャフトを回動可能に受けるシャフト受けを設け、
前記シャフトにおいて前記シャフト受けにより受けられる部分にテーパを設け、
前記シャフト受けに前記シャフトのテーパを受ける受けテーパを設け、
前記シャフトのテーパを前記受けテーパに常時接触せしめる付勢部材を前記第2のアームに設けたことを特徴とするアーム接続構造。
【請求項2】
前記付勢部材の付勢力を調整する調整部材を設けたことを特徴とする請求項1記載のアーム接続構造。
【請求項3】
前記調整部材が、前記シャフトに組み込まれていることを特徴とする請求項1または2記載のアーム接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64268(P2011−64268A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215679(P2009−215679)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】