説明

インバータ装置のパルス幅変調制御方法。

【課題】 系統連系インバータ装置において、太陽光パネルにて発電された電力を効率良く系統電源に供給させること。
【解決手段】 直流電源の出力側に接続される第1アーム、第2アーム及び第3アームから三相ブリッジのインバータを形成し、三相インバータから出力される高周波パルス電圧の高周波成分を三相フィルタによって除去し三相系統電源と同一周波数の基本波成分のみを抽出して三相交流電圧を出力し、三相インバータの各相のアームを予め定めた高周波のキャリア周波数に基づいてパルス幅変調制御して出力を制御するインバータ装置の出力制御方法において、三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角に応じて高周波のキャリア周波数を可変することを特徴とするインバータ装置のパルス幅変調制御方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統連系インバータ装置において、三相インバータのスイッチング損失を低減させる制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
系統連系インバータ装置では、太陽光パネルにて発電された電力を効率良く三相系統電源に供給するために、出力制御の精度の低下を招いてでもキャリア周波数を低くしてスイッチング損失を低減させる方法を採用していた。
【0003】
図8は、従来技術のインバータ装置の電気接続図である。同図において、DCVは直流電源(例えば 太陽光パネル)である。第1のスイッチング素子TR1乃至第6のスイッチング素子TR6はオン・オフする可制御素子であり、帰還ダイオードD1乃至帰還ダイオードD6は第1のスイッチング素子TR1乃至第6のスイッチング素子TR6に逆並列接続して電流を帰還する。また、第1のスイッチング素子TR1に直列に接続された第2のスイッチング素子TR2からなる第1アームと、第3のスイッチング素子TR3に直列に接続された第4のスイッチング素子TR4からなる第2アームと、第5のスイッチング素子TR5に直列に接続された第6のスイッチング素子TR6からなる第3アームとを、三相ブリッジ接続して三相インバータ回路INVが形成される。
【0004】
三相フィルタ回路ALCは、3つのリアクトルALと3つのコンデンサACとで形成され、三相フィルタ回路ALCは、三相インバータ回路INVから出力される高周波パルス電圧の高周波成分を除去して基本波成分(三相系統電源の電圧と同一周波数、例えば50Hz又は60Hz)のみを抽出する。
【0005】
変圧器TRNは、太陽光パネルの電圧で決まる三相インバータ回路INVの交流出力電圧を、三相系統電源の基準電圧とほぼ同等電圧に昇圧又は降圧する。
【0006】
出力電流検出回路CTは、変圧器TRNから出力されるU相の出力電流を検出して第1出力電流検出信号Iuとして出力し、V相の出力電流を検出して第2出力電流検出信号Ivとして出力し、W相の出力電流を検出して第3出力電流検出信号Iwとして出力する。
【0007】
高周波のキャリア信号発生回路CRは、三角波形で予め定めた高周波(例えば、12KHz)のキャリア信号Crを出力する。
【0008】
第1アームパルス生成回路は、パルス幅変調回路PWM、出力指令設定回路IR及びフイードバック制御回路FBとで形成し、フイードバック制御回路FBは、フイードバック信号である第1出力電流検出信号Iuと、目標値である出力指令設定信号Iruとの誤差を増幅してフイードバック制御信号Fbuとして出力し、パルス幅変調回路PWMは、フイードバック制御信号Fbuとキャリア信号Crとの比較に基づいて第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1及び第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1を出力する。
【0009】
第2アームパルス生成回路は、第1アームパルス生成回路と同一回路を形成し、第1出力電流検出信号Iuに対して120°位相シフトした第2出力電流検出信号Ivと、目標値である出力指令設定信号Irとの誤差を増幅してフイードバック制御信号Fbvとして出力し、フイードバック制御信号Fbvとキャリア信号Crとの比較に基づいて第2アーム上側用パルス幅変調信号Up2及び第2アーム下側用パルス幅変調信号Un2を出力する。
【0010】
第3アームパルス生成回路は、第1アームパルス生成回路と同一回路を形成し、第1出力電流検出信号Iuに対して240°位相シフトした第3出力電流検出信号Iwと、目標値である出力指令設定信号Irとの誤差を増幅してフイードバック制御信号Fbwとして出力し、フイードバック制御信号Fbwとキャリア信号Crとの比較に基づいて第3アーム上側用パルス幅変調信号Up3及び第3アーム下側用パルス幅変調信号Un3を出力する。
【0011】
三相インバータ駆動回路DRは、第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1及び第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1が入力すると第1のスイッチング素子TR1及び第2のスイッチング素子TR2をオン・オフ制御する第1の駆動信号Tr1及び第2の駆動信号Tr2を生成して出力し、第2アーム上側用パルス幅変調信号Up2及び第2アーム下側用パルス幅変調信号Un2が入力すると第3スイッチング素子TR3及び第4スイッチング素子TR4をオン・オフ制御する第3の駆動信号Tr3及び第4の駆動信号Tr4を生成して出力し、第3アーム上側用パルス幅変調信号Up3及び第3アーム下側用パルス幅変調信号Un3が入力すると第5のスイッチング素子TR5及び第6のスイッチング素子TR6をオン・オフ制御する第5の駆動信号Tr5及び第6の駆動信号Tr6を生成して出力する。
【0012】
図9は、図8に示す従来技術のインバータ装置の第1アーム(U相)の動作を説明する波形図であり、第2アーム(V相)は第1アームに対して120°位相シフトした状態で動作し、第3アーム(W相)は第1アームに対して240°位相シフトした状態で同一動作を行うので第1アーム(U相)の動作のみを説明して第2アーム(V相)及び第3アーム(W相)の説明は省略する。
【0013】
図9(A)の波形は、フイードバック制御信号Fbu及びキャリア信号Crを示し、図9(B)の波形は、第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1を示し、図9(C)の波形は、第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1を示す。
【0014】
図8に示すパルス幅変調回路PWMは、図9(A)に示すキャリア信号Crとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図9(B)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなる。駆動回路DRは、第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルの期間中、第2の駆動信号Tr2を出力して三相インバータ回路INVの第2スイッチング素子TR2を導通させる。
【0015】
続いて、パルス幅変調回路PWMは、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図9(C)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。駆動回路DRは、第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルの期間中、第1の駆動信号Tr1を出力して三相インバータ回路INVの第1スイッチング素子TR1を導通させ、三相インバータ回路INVをパルス幅変調して出力制御を行っていた。
【0016】
上述に示すように、従来技術の系統連系インバータ装置では、太陽光パネルにて発電された電力を効率良く変換して三相系統電源に供給するために、三相インバータ回路INVのキャリア周波数を出力電流の低下を招かないところまで低くしてスイッチング損失を低減させていた。(例えば、特許文献1)
【0017】
【特許文献1】特開平11−53042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
系統連系インバータ装置では、太陽光パネル等にて発電された電力を効率良く変換して系統電源に供給することが要求され、この変換効率はインバータ装置のスイッチング損失を減少させることで向上する。よって、従来技術ではスイッチング損失を減少させるために、インバータ装置のキャリア周波数を低くしてスイッチング損失を小さくしていた。しかし、インバータ装置の出力である三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角が30°〜60°近傍、120°〜150°近傍、210°〜240°近傍及び300°〜330°近傍の位相範囲では、インバータ装置の出力電流値の変化量(di/dt)が非常に大きいために、この位相範囲内においてキャリア周波数を予め定めた周波数より低くすると、上記出力電流値の変化量(di/dt)に対してインバータ装置の追従が充分でなくなり、出力電流の安定が悪くなってしまう。よって、キャリア周波数を三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角全域で一律に低くし、スイッチング損失を下げてインバータ装置の変換効率を上げるに制御方法には限界がある。
【0019】
そこで、本発明では、キャリア周波数を低くしても出力電流が安定するインバータ装置のパルス幅変調制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、直流電源の出力側に接続される第1アーム、第2アーム及び第3アームから三相ブリッジのインバータを形成し、前記三相インバータから出力される高周波パルス電圧の高周波成分を三相フィルタによって除去し三相系統電源と同一周波数の基本波成分のみを抽出して三相交流電圧を出力し、前記三相インバータの各相のアームを予め定めた高周波のキャリア周波数に基づいてパルス幅変調制御して出力を制御するインバータ装置の出力制御方法において、前記三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角に応じて前記高周波のキャリア周波数を可変することを特徴とするインバータ装置のパルス幅変調制御方法である。
【0021】
第2の発明は、前記三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角が位相90°及び位相270°を中心値とする予め定めた位相範囲にあるときは、前記高周波のキャリア周波数を減少することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置のパルス幅変調制御方法である。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、インバータ装置の出力電流値が小さくなる位相範囲にあるときに、高周波のキャリア周波数を高めに調整するので、スイッチング損失を大きく増加させることなく出力電流の安定向上が可能となり、続いてインバータ装置の出力電流値の変化量(di/dt)が大きくなる位相範囲にあるときに、出力電流値が安定する予め定めた高周波のキャリア周波数に調整するので、出力電流の安定継続が可能となり、更に出力電流値が大きいが変化量(di/dt)が小さくなる位相範囲にあるときに、高周波のキャリア周波を低めに調整するので、出力電流の安定を下げることなくスイッチング損失の低減が可能となる。上述よりインバータ装置の出力である三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角に応じてキャリア周波数を可変すると、出力電流の安定を下げることなくスイッチング損失のみを減少させてインバータ装置の変換効率を向上させることが可能になる。
【0023】
第2の発明によれば、三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角が位相90°及び位相270°を中心値とする予め定めた位相範囲にあるときには、出力電流値が大きいが変化量(di/dt)が小さくなるので、予め定めた高周波のキャリア周波数を低くに調整しても出力電流の安定を下げることなく、スイッチング損失のみを減少させてインバータ装置の変換効率を向上させることができ、制御回路等の大きな変更を必要とせず、冷却装置の小型化にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るインバータ装置の電気接続図である。同図において、図8に示す従来技術のインバータ装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0025】
出力電圧回路VTは、変圧器TRNから出力される三相交流電圧のU相の電圧を検出して第1出力電圧検出信号Vuとして出力し、V相の電圧を検出して第2出力電圧検出信号Vvとして出力し、W相の電圧を検出して第3出力電圧検出信号Vwとして出力する。
【0026】
キャリア信号発生回路CRは、高周波(例えば、12KHz)のキャリア信号Crを出力し、キャリア信号発生回路CRHは、周波数をさらに高くした(例えば、24KHz)キャリア信号Crhを出力し、キャリア発生回路CRLは、周波数を低くした(例えば、6KHz)キャリア信号Crlを出力する。
【0027】
図1に示す周波数対応第1アームパルス生成回路は、パルス幅変調回路PWM、出力指令設定回路IR、フイードバック制御回路FB、キャリア信号選択回路SE、位相範囲設定回路PUによって形成される。また、周波数対応第2アームパルス生成回路及び周波数対応第3アームパルス生成回路は、上記周波数対応第1アームパルス生成回路と同一構成であるために説明は省略し、周波数対応第1アームパルス生成回路についてのみ説明を行う。
【0028】
図3は位相範囲設定回路PUの詳細図であり、第1ベースカウンタ回路BC1、第1モード選択回路MS1、第1カウンタ設定回路CE1、第2ベースカウンタ回路BC2、第2モード選択回路MS2、第2カウンタ設定回路CE2及びパルス発生回路PGによって形成される。また、図4に示す各波形は、位相範囲設定回路PUの動作を説明するものであり、図4(A)は第1出力電圧検出信号Vuの波形を示し、図4(B)は、パルス発生信号Pgを示し、図4(C)は、第1ベースカウンタ信号Bc1を示し、図4(D)は、第1モード選択信号Puaを示し、図4(E)は、第2ベースカウンタ信号Bc2を示し、図4(F)は、第2モード選択信号Pubを示す。
【0029】
第1ベースカウンタ回路BC1及び第2ベースカウンタ回路BC2に、図4(A)に示す第1出力電圧検出信号Vuが入力され時刻t=t0において、零クロスすると第1ベースカウンタ回路BC1及び第2ベースカウンタ回路BC2はリセットされ、パルス発生回路PGからのパルス発生信号Pgをカウントする。
【0030】
第1カウンタ設定回路CE1は、予め定めた第1カウンタ値を設定し第1カウンタ設定信号Ce1として出力する。第1ベースカウンタ回路BC1はパルス発生信号Pgをカウントし、第1カウンタ設定信号Ce1に基づいて、時刻t=t1において、図4(C)に示す1パルスの第1ベースカウンタ信号Bc1を出力する。第1モード選択回路MS1は、第1ベースカウンタ信号Bc1に応じて、図4(D)に示す第1モード選択信号PuaをHighレベルからLowレベルにする。上述より第1モード選択回路MS1は、三相交流電圧のU相の位相範囲0°〜30°を設定する。
【0031】
第2カウンタ設定回路CE2は、予め定めた第2カウンタ値を設定し第2カウンタ設定信号Ce2として出力する。第2ベースカウンタ回路BC2はパルス発生信号Pgをカウントし第2カウンタ設定信号Ce2に基づいて、時刻t=t2において、、図4(E)に示す1パルスの第2ベースカウンタ信号Bc2を出力する。第2モード選択回路MS2は、第2ベースカウンタ信号Bc2に応じて、図4(F)に示す第2モード選択信号PubをHighレベルにする。続いて、第2ベースカウンタ回路BC2はパルス発生信号Pgのカウントを継続し、第2カウンタ設定信号Ce2に基づいて、時刻t=t3において、1パルスの第2ベースカウンタ信号Bc2を出力する。第2モード選択回路MS2は、第2ベースカウンタ信号Bc2に応じて、図4(F)に示す第2モード選択信号PubをHighレベルからLowレベルにする。上述より第2モード選択回路MS2は、三相交流電圧のU相の位相範囲60°〜120°を設定する。
【0032】
第1ベースカウンタ回路BC1は、パルス発生信号Pgのカウントを継続し、第1カウンタ設定信号Ce1に基づいて、時刻t=t4において、1パルスの第1ベースカウンタ信号Bc1を出力する。第1モード選択回路MS1は、第1ベースカウンタ信号Bc1に応じて、図4(D)に示す第1モード選択信号PuaをHighレベルにする。
【0033】
図4(A)に示す第1出力電圧検出信号Vuが時刻t=t5において、極性を正極性から負極性になる。
【0034】
第1ベースカウンタ回路BC1はパルス発生信号Pgのカウントを継続し、第1カウンタ設定信号Ce1に基づいて、時刻t=t6において、1パルスの第1ベースカウンタ信号Bc1を出力する。第1モード選択回路MS1は、第1ベースカウンタ信号Bc1の出力に応じて、図4(F)に示す第1モード選択信号PuaをHighレベルからLowレベルにする。上述より第1モード選択回路MS1は、三相交流電圧のU相の位相範囲150°〜210°を設定する。以後は、上述と同一動作を行って第2モード選択回路MS2は、三相交流電圧のU相の位相範囲240°〜300°を設定し、第1モード選択回路MS1は、位相範囲330°〜360°を設定する。
【0035】
図2は、図1に示す本発明の実施形態1に係るインバータ装置の第1アームの動作を説明する波形図であり、第2アームは第1アームに対して120°位相シフトした状態で動作し、第3アームは第1アームに対して240°位相シフトした状態で動作で同一動作を行うので第1アームの動作のみを説明して第2アーム及び第3アームの説明は省略する。
【0036】
図2(A)の波形は、高周波(例えば、12KHz)のキャリア信号Crを示し、図2(B)の波形は、周波数を低くした(例えば、6KHz)キャリア信号Crlを示し、図2(C)の波形は、周波数をさらに高くした(例えば、24KHz)キャリア信号Crhを示す。図2(D)の波形は、キャリア信号選択信号Seを示し、図2(E)の波形は、第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1を示し、図2(F)の波形は、第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1を示す。
【0037】
位相範囲設定回路PUは、出力電圧回路VTによって検出するU相の第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、図2に示す時刻t=t1(位相角が30°)のときに第1モード選択信号PuaをHighレベルからLowレベルにする。キャリア信号選択回路SEは、第1モード選択信号PuaがHighレベルの期間中は、接点をa側にして図2(C)に示す、(例えば、24KHz)キャリア信号Crhを選択して出力する。
【0038】
パルス幅変調回路PWMは、図2(D)に示す、キャリア信号Crhとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crhがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図2(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crhがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図2(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。このとき、キャリア周波数を高くしてもスイッチング損失の増加が少なく電力の変換効率を下げずに、インバータ装置の出力電流の制御をを上げることができる。
【0039】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、図2に示す時刻t=t2(位相角が60°)のときに第2モード選択信号PubをHighレベルにする。このとき、時刻t=t1〜t2の期間中は、第1モード選択信号Pua及び第2モード選択信号Pubは共にLowレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第1モード選択信号Pua及び第2モード選択信号Pubが共にLowレベルのとき接点をc側にして、図2(A)に示す、(例えば、12KHz)のキャリア信号Crを選択して出力する。
【0040】
パルス幅変調回路PWMは、時刻t=t1〜t2の期間中、キャリア信号Crとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図2(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図2(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。このとき、インバータ装置の出力電流値の変化量(di/dt)が大きいためにキャリア周波数を高くするとスイッチング損失の増加が大きくなるので、(例えば、12KHz)のキャリア周波数を維持する。
【0041】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、図2に示す時刻t=t3(位相角が120°)のときに第2モード選択信号PubをLowレベルにする。このとき、時刻t=t2〜t3の期間中は、第2モード選択信号PubはHighレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第2モード選択信号PubがHighレベルのときに接点をb側にして、図2(B)に示す、キャリア信号Crlを選択して出力する。
【0042】
パルス幅変調回路PWMは、時刻t=t2〜t3の期間中、キャリア信号Crlとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crlフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図2(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crlがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図2(E)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。このとき、出力電流値が大きいが出力電流値の変化量(di/dt)が小さいために、高周波のキャリア周波数を低くしてもインバータ装置の出力電流の制御を低下させずにスイッチング損失値のみが減少する。
【0043】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、時刻t=t4(位相角が150°)のときに第1モード選択信号Puaを再度Highレベルにする。このとき、時刻t=t3〜t4の期間中は、第1モード選択信号Pua及び第2モード選択信号Pubは共にLowレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第1モード選択信号Pua及び第2モード選択信号Pubが共にLowレベルのとき接点をc側にして、図2(A)に示す、キャリア信号Crを選択して出力する。
【0044】
パルス幅変調回路PWMは、時刻t=t3〜t4の期間中、キャリア信号Crとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図2(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図2(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。
【0045】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、時刻t=t6(位相角が210°)のときに第1モード選択信号Puawレベルにする。このとき、時刻t=t4〜t5の期間中は、第1モード選択信号PuaはHighレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第1モード選択信号PuaがHighレベルの期間中は、接点をa側にして図2(C)に示す、キャリア信号Crhを選択して出力する。
【0046】
第1パルス幅変調回路PWM1は、時刻t=t4〜t6の期間中、キャリア信号Crhとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crhがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図2(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crhがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図2(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。
【0047】
以後、時刻t=t6〜t7は時刻t=t1〜t2と同一動作を行い、時刻t=t7〜t8は時刻t=t2〜t3と同一動作を行い、時刻t=t8〜t9は時刻t=t3〜t4と同一動作を行うので説明は省略する。
【0048】
上述より、三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角に応じて高周波のキャリア周波数を適宜に可変することにより、インバータ装置の電力変換効率を上げることができる。
【0049】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施形態2に係るインバータ装置の電気接続図である。同図において、図1に示す実施形態2に係るインバータ装置の電気接続図と図8に示す従来技術のインバータ装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0050】
図5に示す実施形態2の位相範囲設定回路PUは、図3に示す位相範囲設定回路PUと同一構成であるが、第1ベースカウンタ回路BC1、第1モード選択回路MS1及び第1カウンタ設定回路CE1は使用せず、第2ベースカウンタ回路BC2、第2モード選択回路MS2、第2カウンタ設定回路CE2及びパルス発生回路PGのみを使用する。
【0051】
図7(A)は第1出力電圧検出信号Vuの波形を示し、図7(B)は、パルス発生信号Pgを示し、図7(C)は、第2ベースカウンタ信号Bc2を示し、図7(D)は、第2モード選択信号Pubを示す。
【0052】
図3に示す第2ベースカウンタ回路BC2に、図7(A)に示す第1出力電圧検出信号Vuが入力され、時刻t=t0において、入力信号が零クロスすると第2ベースカウンタ回路BC2はリセットされ、パルス発生回路PGからのパルス発生信号Pgをカウントする。
【0053】
第2カウンタ設定回路CE2は、予め定めたカウンタ値を設定し第2カウンタ設定信号Ce2として出力する。第2ベースカウンタ回路BC2はパルス発生信号Pgをカウントし第2カウンタ設定信号Ce2に基づいて、時刻t=t2において、図7(C)に示す第2ベースカウンタ信号Bc2を出力する。第2モード選択回路MS2は、第2ベースカウンタ信号Bc2に応じて、図7(D)に示す第2モード選択信号PubをHighレベルにする。続いて、第2ベースカウンタ回路BC2はパルス発生信号Pgのカウントを継続し、第2カウンタ設定信号Ce2に基づいて、時刻t=t3において、第2ベースカウンタ信号Bc2を出力する。第2モード選択回路MS2は、第2ベースカウンタ信号Bc2に応じて、図7(D)に示す第2モード選択信号PubをHighレベルからLowレベルにする。以後、時刻t=t7及びt8も上述と同一動作を行うので説明は省略する。
【0054】
図6は、図5に示す本発明の実施形態2に係るインバータ装置の第1アームの動作を説明する波形図であり、第2アームは第1アームに対して120°位相シフトした状態で動作し、第3アームは第1アームに対して240°位相シフトした状態で動作で同一動作を行うので第1アームの動作のみを説明して第2アーム及び第3アームの説明は省略する。
【0055】
図6(A)の波形は、高周波(例えば、12KHz)のキャリア信号Crの波形を示し、図6(B)の波形は、周波数を低くした(例えば、6KHz)キャリア信号Crlを示す。図6(C)の波形は、第1出力電圧検出信号Vuを示し、図6(D)の波形は、キャリア信号選択信号Seを示し、図6(E)の波形は、第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1を示し、図6(F)の波形は、第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1を示す。
【0056】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、図6に示す時刻t=t2(位相角が60°)のときに第2モード選択信号PubをHighレベルにする。このとき、時刻t=t0〜t2の期間中は、第2モード選択信号PubがLowレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第2モード選択信号PubがLowレベルのとき接点をc側にして、図6(A)に示す、(例えば、12KHz)のキャリア信号Crを選択して出力する。
【0057】
パルス幅変調回路PWMは、時刻t=t0〜t2の期間中、キャリア信号Crとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図6(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図6(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。
【0058】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、図6に示す時刻t=t3(位相角が120°)のときに第2モード選択信号PubをLowレベルにする。このとき、時刻t=t2〜t3の期間中は、第2モード選択信号PubはHighレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第2モード選択信号PubがHighレベルのときに接点をb側にして、図6(B)に示す、キャリア信号Crlを選択して出力する。
【0059】
パルス幅変調回路PWM1は、時刻t=t2〜t3の期間中、キャリア信号Crlとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crlがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図6(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crlがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図6(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。
【0060】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、図6に示す時刻t=t7(位相角が240°)のときに第2モード選択信号Pubを再度Highレベルにする。このとき、時刻t=t3〜t7の期間中は、第2モード選択信号PubがLowレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第2モード選択信号PubがLowレベルのとき接点をc側にして、図6(A)に示す、キャリア信号Crを選択して出力する。
【0061】
パルス幅変調回路PWMは、時刻t=t3〜t7の期間中、キャリア信号Crとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図6(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図6(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。
【0062】
位相範囲設定回路PUは、第1出力電圧検出信号Vuの位相角をカウントして、図6に示す時刻t=t8(位相角が300°)のときに第2モード選択信号PubをLowレベルにする。このとき、時刻t=t7〜t8の期間中は、第2モード選択信号PubはHighレベルになる。キャリア信号選択回路SEは、第2モード選択信号PubがHighレベルのときに接点をb側にして、図6(B)に示す、キャリア信号Crlを選択して出力する。
【0063】
パルス幅変調回路PWM1は、時刻t=t7〜t8の期間中、キャリア信号Crlとフイードバック制御信号Fbuとを比較し、キャリア信号Crlフイードバック制御信号Fbuより大きいときに、図6(E)に示す第1アーム下側用パルス幅変調信号Un1がHighレベルなり、キャリア信号Crlがフイードバック制御信号Fbuより小さいときに、図6(F)に示す第1アーム上側用パルス幅変調信号Up1がHighレベルなる。
【0064】
上述より、三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角が位相90°及び位相270°を中心値とする予め定めた位相範囲にあるときに、高周波のキャリア周波数を低くするだけでスイッチング損出を減少させ、インバータ装置の電力変換効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態1に係るインバータ装置の電気接続図である。
【図2】実施形態1に係るインバータ装置の動作を説明する波形図である。
【図3】図1に示す位相範囲設定回路の詳細図である。
【図4】図3に示す位相範囲設定回路の動作を説明する波形図である。
【図5】実施形態2に係るインバータ装置の電気接続図である。
【図6】実施形態2に係るインバータ装置の動作を説明する波形図である。
【図7】実施形態2に使用する位相範囲設定回路の動作を説明する波形図である。
【図8】従来技術のインバータ装置の電気接続図である。
【図9】従来技術のインバータ装置の動作を説明する波形図である。
【符号の説明】
【0066】
AC コンデンサ
AL リアクトル
BC1 第1ベースカウンタ回路
BC2 第2ベースカウンタ回路
Bc1 第1ベースカウンタ信号
Bc2 第2ベースカウンタ信号
CT 出力電流検出回路
CR キャリア信号発生回路
CRH キャリア信号発生回路
CRL キャリア信号発生回路
CE1 第1カウンタ設定回路
Ce1 第1カウンタ設定信号
CE2 第2カウンタ設定回路
Ce2 第2カウンタ設定信号
Cr キャリア信号(例えば、12KHz)
Crh キャリア信号(例えば、24KHz)
Crl キャリア信号(例えば、6KHz)
DR 駆動回路
D1 帰還ダイオード
D2 帰還ダイオード
D3 帰還ダイオード
D4 帰還ダイオード
D5 帰還ダイオード
D6 帰還ダイオード
DCV 直流電源(太陽光パネル)
FB フイードバック制御回路
Fbu フイードバック制御信号
IR 出力指令設定回路
Iru 出力指令設定信号
Iu 第1出力電流検出信号
Iv 第2出力電流検出信号
Iw 第3出力電流検出信号
MS1 第1モード選択回路
PWM 第1パルス幅変調回路
PU 位相範囲設定回路
Pua 第1モード選択信号
Pub 第2モード選択信号
PG パルス発生回路
Pg パルス発生信号
SE キャリア信号選択回路
TR1 第1のスイッチング素子
TR2 第2のスイッチング素子
TR3 第3のスイッチング素子
TR4 第4のスイッチング素子
TR5 第5のスイッチング素子
TR6 第6のスイッチング素子
Tr1 第1の駆動信号
Tr2 第2の駆動信号
Tr3 第3の駆動信号
Tr4 第4の駆動信号
Tr5 第5の駆動信号
Tr6 第6の駆動信号
TRN 変圧器
Un1 第1アーム下側用パルス幅変調信号
Up1 第1アーム上側用パルス幅変調信号
Un2 第2アーム下側用パルス幅変調信号
Up2 第2アーム上側用パルス幅変調信号
Un3 第3アーム下側用パルス幅変調信号
Up3 第3アーム上側用パルス幅変調信号
VT 出力電圧検出回路
Vu 第1出力電圧検出信号
Vv 第2出力電圧検出信号
Vw 第3出力電圧検出信号



【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の出力側に接続される第1アーム、第2アーム及び第3アームから三相ブリッジのインバータを形成し、前記三相インバータから出力される高周波パルス電圧の高周波成分を三相フィルタによって除去し三相系統電源と同一周波数の基本波成分のみを抽出して三相交流電圧を出力し、前記三相インバータの各相のアームを予め定めた高周波のキャリア周波数に基づいてパルス幅変調制御して出力を制御するインバータ装置の出力制御方法において、前記三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角に応じて前記高周波のキャリア周波数を可変することを特徴とするインバータ装置のパルス幅変調制御方法。
【請求項2】
前記三相交流電圧のU相、V相及びW相の各位相角が位相90°及び位相270°を中心値とする予め定めた位相範囲にあるときは、前記高周波のキャリア周波数を減少することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置のパルス幅変調制御方法。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−228745(P2007−228745A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48128(P2006−48128)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】