説明

インプリント用テンプレート、インプリント用テンプレートの製造方法、およびインプリント方法

【課題】 本発明は、高屈折率材料の形成技術や加工技術を要することなく、凹凸構造のアライメントマークを光学的に識別することを可能とし、高いアライメント精度で位置合わせすることができるインプリント用テンプレート、インプリント用テンプレートの製造方法、およびインプリント方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 テンプレート基板に銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板を用い、アライメントマークの凸部における可視光域の光に対する光学濃度を、前記アライメントマークの凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高くすることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸パターンを、被転写基板上に形成された被転写樹脂に転写するインプリントリソグラフィに用いられるテンプレート、その製造方法、およびインプリント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特に半導体デバイスについては、微細化の一層の進展により高速動作、低消費電力動作が求められ、また、システムLSIという名で呼ばれる機能の統合化などの高い技術が求められている。このような中、半導体デバイスのパターンを作製する要となるリソグラフィ技術は、パターンの微細化が進むにつれ、露光装置などが極めて高価になってきており、また、それに用いるマスク価格も高価になっている。
【0003】
これに対して、1995年Princeton大学のChouらによって提案されたナノインプリント法(インプリント法とも呼ばれる)は、装置価格や使用材料などが安価でありながら、10nm程度の高解像度を有する微細パターン形成技術として注目されている(特許文献1)。
【0004】
インプリント法は、予め表面にナノメートルサイズの微細な凹凸パターンを形成したテンプレート(モールド、スタンパ、金型とも呼ばれる)を、半導体ウエハなどの被転写基板表面に形成された被転写樹脂に接触させて、前記被転写樹脂を力学的に変形させて前記凹凸パターンを転写し、このパターン転写された被転写樹脂をマスクとして被転写基板を加工する技術である。一度テンプレートを作製すれば、ナノ構造が簡単に繰り返して成型できるため高いスループットが得られて経済的であるとともに、有害な廃棄物が少ない加工技術であるため、近年、半導体デバイスに限らず、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0005】
このようなインプリント法には、熱可塑性樹脂を用いて熱により凹凸パターンを転写する熱インプリント法や、紫外線硬化性樹脂を用いて紫外線により凹凸パターンを転写する光インプリント法などが知られている(特許文献2)。
光インプリント法は、室温で、かつ、低い印加圧力で、パターン転写することができ、熱インプリント法のような加熱・冷却サイクルが不要であることから、テンプレートや樹脂が熱によって寸法変化を生じるリスクを低減でき、解像性、アライメント精度、生産性などの点で優れている。
【0006】
ここで、上述のようなインプリント法を用いて凹凸パターンを被転写基板に転写する際には、テンプレートと被転写基板との位置合わせを精密に行う必要がある。
一般的には、テンプレートに設けられているアライメントマークと、被転写基板に設けられているアライメントマークとを、テンプレート側から光学的に検出することにより位置合わせを行う。
【0007】
図9は、従来のインプリント用テンプレートの例を示す説明図であり、(a)はテンプレート全体の模式的断面図を示し、(b)は(a)におけるアライメントマークの拡大図を示す。
図9(a)に示すように、一般に、インプリント用テンプレート101は、石英等の透明なテンプレート基板102からなるメサ構造をしており、このメサ構造のトップ面に転写パターン103とアライメントマーク104を有している。
そして、図9(b)に示すように、アライメントマーク104は、通常、テンプレート基板102を凹凸状に加工した段差構造のマークであり、凸部104aと凹部104bを有する。
このアライメントマークの平面形状は、例えば、矩形状、十字型状の形状が1個以上配設されたものや、モアレ縞等の周期構造のもの等がある。
【0008】
次に、従来のインプリント用テンプレートにおけるアライメントマークの検出方法について説明する。図10は、従来のインプリント用テンプレートにおけるアライメントマークの検出方法を示す説明図である。ここで、図10(a)はアライメントマーク検出時のインプリント用テンプレート、被転写樹脂層、および被転写基板の状態を示し、図10(b)はアライメントマークにおける凸部と凹部の関係を示す。
【0009】
図10(a)に示すように、インプリント用テンプレート101の転写パターンを転写する際には、まず、被転写基板111上に形成された硬化前の被転写樹脂層121に、インプリント用テンプレート101の転写パターン103を形成した側の面を接触させ、インプリント用テンプレート101の転写パターン103を形成した側とは反対側の面(裏面)から、検出器131により、テンプレート側のアライメントマーク104と、基板側のアライメントマーク領域114のアライメントマーク115とを光学的に検出し、その位置ズレを補正するように、テンプレート101と被転写基板111を相対的に移動させて両者の位置を合わせる。
そして、位置合わせした状態で被転写樹脂層121を硬化させることにより、前記テンプレート101の転写パターン103を被転写樹脂層121に転写する。
なお、基板側のアライメントマーク115は層状に基板中に形成され、銅、アルミなどからなり光学的に検出可能となっている。
【0010】
上述のように、テンプレート101を被転写基板111上の被転写樹脂層121に接触させた状態で位置合わせを行う理由は、テンプレート101が被転写樹脂層121から離れた状態でアライメントを行った後にテンプレート101を被転写樹脂層121に接触させる方法では、テンプレート101を被転写樹脂層121に接触させる過程で位置ズレ(いわゆるロックズレ)が生じてしまうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2004−504718号公報
【特許文献2】特開2002−93748号公報
【特許文献3】特開2007−103915号公報
【特許文献4】特表昭60−501950号公報
【特許文献5】特開平6−59437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、アライメントのためにテンプレート101を被転写樹脂層121に接触させると、図10(b)に示すように、テンプレート101のアライメントマークの凹部が、被転写樹脂層121を構成する樹脂によって充満された状態になる。
そして、このような状態になると、テンプレート101のアライメントマークを構成する材料(一般的には、石英)の屈折率と、被転写樹脂層121を構成する樹脂の屈折率とがほとんど同じ値であることから、テンプレート101のアライメントマークを光学的に識別することが困難になってしまうという問題がある。
【0013】
一般に、透明な物質からなる構造物において、屈折率が大きく異なる物質が接触している場合には、その界面における光の屈折や散乱、若しくは反射によって前記構造物の形状を認識することができる。しかしながら、上述のように屈折率の差が小さい場合は、前記構造物の形状を認識することは困難になる。
【0014】
例えば、図10(b)に示すように、テンプレート101のアライメントマークの凸部と凹部に、テンプレート101の裏面側(図10(b)において上側)から入射し、被転写樹脂層121を通過して被転写基板111表面で反射する検出光132a、132bの光路長の差は、テンプレート101を構成する材料の屈折率をn1、被転写樹脂層121を構成する樹脂の屈折率をn2、テンプレート101のアライメントマークの凸部と凹部の段差をtとすると、2×t×|n2−n1|になる。
【0015】
ここで、検出光132a、132bには、被転写樹脂層121が硬化しない波長域の光が用いられ、一般的には可視光域の波長(380nm〜750nm)が用いられる。
そして、一般的なテンプレートの材料である石英(SiO2)の波長633nmの光における屈折率は1.45であり、インプリント法に用いられる被転写樹脂の屈折率は一般的には1.5程度である。
【0016】
そこで、例えば、検出光の光源として、633nmの単波長の光源を用いる場合を仮定し、テンプレート101のアライメントマークの凸部と凹部の段差tを150nm、テンプレート101を構成する材料の屈折率n1を1.45、被転写樹脂層121を構成する樹脂の屈折率n2を1.50として、上式を計算すると、得られる光路長の差は15nmになり、この値は波長633nmの1/40程の違いしかないため、凹凸構造のアライメントマークを良好に識別することは困難になってしまう。
【0017】
この課題に対して、例えば、チタン酸化物(屈折率2.4)等の高屈折率材料でアライメントマークを構成し、アライメントマークの凹部に被転写樹脂が充填された状態でも、前記高屈折率材料の屈折率と、被転写樹脂の屈折率との間で差が出るようにして、凹凸構造のアライメントマークを光学的に識別する方法が提案されている(特許文献3)。
【0018】
しかしながら、上述のような方法では、従来のテンプレート製造技術に加えて、チタン酸化物等の高屈折率材料をテンプレート上に形成する技術や、アライメントマークの凹凸構造への加工技術が必要となり、製造工程が複雑化するため好ましくない。
【0019】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、前記高屈折率材料の形成技術や加工技術を要することなく、凹凸構造のアライメントマークを光学的に識別することを可能とし、高いアライメント精度で位置合わせすることができるインプリント用テンプレート、インプリント用テンプレートの製造方法、およびインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、種々研究した結果、テンプレート基板に銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板を用い、アライメントマークの凸部における可視光域の光に対する光学濃度を、前記アライメントマークの凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高くすることにより、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成したものである。
【0021】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、凹凸構造の転写パターンと凹凸構造のアライメントマークを有するインプリント用テンプレートであって、前記インプリント用テンプレートは、銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板からなり、前記アライメントマークの凸部における可視光域の光に対する光学濃度が、前記アライメントマークの凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高いことを特徴とするインプリント用テンプレートである。
【0022】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記アライメントマークの凹部の深さが、前記イオン交換表面層の厚み以上の大きさであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用テンプレートである。
【0023】
また、本発明の請求項3に係る発明は、銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板をエッチングして、凹凸構造のアライメントマークを形成する工程と、前記凹凸構造のアライメントマークに高エネルギービームを照射する工程と、を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法である。
【0024】
また、本発明の請求項4に係る発明は、銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板の所定の部位に高エネルギービームを照射する工程と、前記高エネルギービームを照射した所定の部位をエッチングして、凹凸構造のアライメントマークを形成する工程と、を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法である。
【0025】
また、本発明の請求項5に係る発明は、銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板の上に、被転写樹脂層を形成する工程と、前記被転写樹脂層に、マスター・テンプレートに形成された凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のアライメントマークを接触させる工程と、前記被転写樹脂層を硬化させる工程と、前記硬化した被転写樹脂層と前記マスター・テンプレートとを離型する工程と、前記硬化した被転写樹脂層をマスクに用いたエッチング加工により、前記マスター・テンプレートに形成された転写パターンとは凹凸が反転した転写パターンと、前記マスター・テンプレートに形成されたアライメントマークとは凹凸が反転したアライメントマークを、前記高エネルギービーム感受性ガラス基板に形成する工程と、 前記高エネルギービーム感受性ガラス基板に形成されたアライメントマークに高エネルギービームを照射する工程と、を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法である。
【0026】
また、本発明の請求項6に係る発明は、銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板の所定の部位に高エネルギービームを照射する工程と、前記高エネルギービーム感受性ガラス基板の上に、被転写樹脂層を形成する工程と、前記被転写樹脂層に、マスター・テンプレートに形成された凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のアライメントマークを接触させる工程と、前記被転写樹脂層を硬化させる工程と、前記硬化した被転写樹脂層と前記マスター・テンプレートとを離型する工程と、前記硬化した被転写樹脂層をマスクに用いたエッチング加工により、前記マスター・テンプレートに形成された転写パターンとは凹凸が反転した転写パターンと、前記マスター・テンプレートに形成されたアライメントマークとは凹凸が反転したアライメントマークを、前記高エネルギービーム感受性ガラス基板に形成する工程と、を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法である。
【0027】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記被転写樹脂層を構成する樹脂が紫外線硬化性樹脂であり、前記被転写樹脂層を硬化させる工程が、紫外線を照射して前記被転写樹脂層を硬化させる工程であることを特徴とする請求項5〜6のいずれかに記載のインプリント用テンプレートの製造方法である。
【0028】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記凹凸のアライメントマークを形成する工程において、形成される前記アライメントマークの凹部の深さが、前記イオン交換表面層の厚み以上の大きさになるように前記銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板をエッチングすることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のインプリント用テンプレートの製造方法である。
【0029】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項1〜2のいずれかに記載のインプリント用テンプレートを用い、被転写基板上に形成された被転写樹脂層に、前記テンプレートの凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のアライメントマークを接触させ、前記アライメントマークの凹部と凸部の光学濃度の差により、前記アライメントマークを光学的に検出して、前記テンプレートと被転写基板とを位置合わせした後に、前記被転写樹脂層を硬化させ、前記硬化した被転写樹脂層と前記テンプレートとを離型して、前記テンプレートの有する凹凸構造の転写パターンとは凹凸が反転したパターンを前記被転写樹脂層に形成することを特徴とするインプリント方法である。
【0030】
また、本発明の請求項10に係る発明は、前記被転写樹脂層を構成する樹脂が紫外線硬化性樹脂であり、前記被転写樹脂層を硬化させる工程が、紫外線を照射して前記被転写樹脂層を硬化させる工程であることを特徴とする請求項9に記載のインプリント方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、凹凸構造のアライメントマークの凸部と凹部の光学濃度の差により、アライメントマークを光学的に識別することができる。それゆえ、テンプレートと被転写基板とを高いアライメント精度で位置合わせすることができ、テンプレートの転写パターンを高い位置精度で被転写基板にインプリントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るインプリント用テンプレートの例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明に係るインプリント用テンプレートのアライメントマークの凹部の深さとイオン交換表面層の厚みの関係を説明する図である。
【図3】本発明に係るインプリント用テンプレートにおけるアライメントマークの検出方法を示す説明図である。
【図4】本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法の一例を示す模式的工程図である。
【図5】図4に示す本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法における製版工程の例を示す模式的工程図である。
【図6】本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法の他の例を示す模式的工程図である。
【図7】図6に示す本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法における製版工程の例を示す模式的工程図である。
【図8】本発明に係るインプリント方法の例を示す模式的工程図である。
【図9】従来のインプリント用テンプレートの例を示す説明図であり、(a)はテンプレート全体の模式的断面図を示し、(b)は(a)におけるアライメントマークの拡大図を示す。
【図10】従来のインプリント用テンプレートにおけるアライメントマークの検出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[インプリント用テンプレート]
まず、本発明に係るインプリント用テンプレートについて説明する。
図1は、本発明に係るインプリント用テンプレートの例を示す模式的断面図である。
図1に示すように、本発明に係るインプリント用テンプレート1は、メサ構造のテンプレート基板2からなり、このメサ構造のトップ面に凹凸構造の転写パターン3と、凹凸構造のアライメントマーク4とを有している。
そして、アライメントマーク4の凸部4aは、凹部4bよりも暗色化しているために、凸部4aにおける可視光域の光に対する光学濃度は、凹部4bにおける可視光域の光に対する光学濃度よりも高くなっている。
【0034】
本発明に係るインプリント用テンプレートは、このアライメントマークの凸部と凹部の光学濃度の差により、凹凸構造のアライメントマークを光学的に識別することができるものである。そして、本発明に係るインプリント用テンプレートを用いることにより、高いアライメント精度で位置合わせすることを可能とし、高い位置精度でテンプレートの転写パターンを被転写基板にインプリントすることができる。
【0035】
ここで、本発明に係るテンプレート基板2は、銀イオンを含有するイオン交換表面層5を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板(HEBSガラス基板)からなり、このイオン交換表面層に高エネルギービームを照射することにより、前記インプリント用テンプレート1のアライメントマークを暗色化させている。
【0036】
上述の銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板(HEBSガラス基板)とは、表面層のアルカリ金属イオンを銀イオンに置換したガラス基板であって、特表昭60−501950号公報(特許文献4)に示される高エネルギービーム感受性ガラス物品(HEBSガラス物品)からなるガラス基板に相当するものである。
【0037】
前記HEBSガラス基板のガラス本体部分は、モル%で表わして、5%〜25%の一種以上のアルカリ金属酸化物、0.5%〜35%の感光性阻止剤(PI剤)、自然赤方シフト抑制剤(RS−抑制剤)およびその混合物、0%〜6%のCl並びに50%〜89%のSiO2 を包含するベースガラス組成を有している。
【0038】
一方、前記HEBSガラス基板のイオン交換表面層は、前記ガラス本体部分のベースガラス組成におけるアルカリ金属イオンが銀イオンに置換された組成を有するものである。
前記イオン交換表面層は、例えば、次のようにして形成される。
【0039】
前記ベースガラス組成を有するイオン交換前のHEBSガラス基板を、銀イオンを含有する酸性水溶液に浸漬し、オートクレープ中に密閉し、水溶液中の銀イオンとガラス基板表面層中のアルカリ金属イオンとの間のイオン交換反応をもたらすのに充分な温度で保持し(通常、200℃以上で1分間以上)、その後、前記ガラス基板をオートクレーブから取り出して、蒸留水で洗浄する。
【0040】
前記イオン交換後のガラス基板の表面層(すなわち、イオン交換表面層)は、例えば、銀イオンおよび/あるいは銀塩並びに約0.01重量%H2O を越える濃度におけるシラノール及び/あるいは水を含み、イオン交換表面層のアルカリ金属酸化物の濃度は、ガラス本体部分のガラス組成における濃度より低い。
【0041】
前記イオン交換表面層の厚さは、前記イオン交換反応の温度や時間を制御することにより調整できる。
本発明においては、前記イオン交換表面層の厚さは、前記凹凸構造のアライメントマークの凸部と凹部の光学濃度の差により、アライメントマークを光学的に識別することができる厚さであれば良い。
ただし、前記光学濃度の差をより大きくするためには、前記イオン交換表面層の厚みを、前記アライメントマークの凹部の深さと同じ大きさにするか、若しくは、前記アライメントマークの凹部の深さよりも小さく(浅く)することが好ましい。言い換えれば、前記アライメントマークの凹部の深さは、前記イオン交換表面層の厚み以上の大きさであることが好ましい。
その理由について、図2を用いて説明する。
【0042】
図2は、本発明に係るインプリント用テンプレートのアライメントマークの凹部の深さとイオン交換表面層の厚みの関係を説明する図である。ここで、図2(a)は、アライメントマークの凹部4bの深さ(D1)が、イオン交換表面層の厚み(D2)よりも小さい形態を示し、図2(b)は、アライメントマークの凹部4bの深さ(D1)が、イオン交換表面層の厚み(D2)以上の大きさである形態を示している。
なお、本発明においては、転写パターンの凸部3aや凹部3bは、いずれも暗色化されておらず、インプリント法を用いて紫外線硬化性樹脂を硬化させる際に照射される紫外線に対して、十分な透過性を有している。
【0043】
例えば、図2(a)に示すように、アライメントマークの凹部4bの深さ(D1)が、イオン交換表面層の厚み(D2)よりも小さい形態では、アライメントマークの凸部4aと凹部4bの光学濃度の差は、D1/D2に相当する光学濃度となり、D1に比べてD2が大きくなるにつれ、その識別は困難になる。また、光学濃度を高くするために、イオン交換表面層の暗色化を促進すると、アライメントマークの凸部4aのみならず、凹部4bも暗色化が進行するため、両者を識別することが困難になる。
【0044】
一方、図2(b)に示すように、アライメントマークの凹部4bの深さ(D1)が、イオン交換表面層の厚み(D2)以上の大きさである形態であれば、アライメントマークの凸部4aと凹部4bの光学濃度の差は、D2の厚みに相当する光学濃度に依存し、D1には影響されないため、アライメントマークの加工自由度が増す。また、このような形態であれば、イオン交換表面層の暗色化を促進することによって、凸部4aと凹部4bとの光学濃度の差を大きくすることも容易である。
前記暗色化の促進は、例えば、高エネルギービームをより長い時間照射することにより達成できる。ここで、上述の高エネルギービームとは、例えば、電子ビームであり、市販の電子線顕微鏡や電子線マスク描画装置を用いることができる。
【0045】
次に、本発明に係るインプリント用テンプレートにおけるアライメントマークの検出方法について説明する。図3は、本発明に係るインプリント用テンプレートにおけるアライメントマークの検出方法を示す説明図である。ここで、図3(a)はアライメントマーク検出時のインプリント用テンプレート、被転写樹脂層、および被転写基板の状態を示し、図3(b)はアライメントマークにおける凸部と凹部の関係を示す。
【0046】
図3(a)に示すように、インプリント用テンプレート1の転写パターン3を転写する際には、まず、被転写基板11上に形成された硬化前の被転写樹脂層21に、インプリント用テンプレート1の転写パターン3を形成した側の面を接触させ、次いで、インプリント用テンプレート1の転写パターン3を形成した側とは反対側の面(裏面)から、検出器31により、テンプレート側のアライメントマーク4と、基板側のアライメントマーク領域14のアライメントマーク15とを光学的に検出し、その位置ズレを補正するようにテンプレート1と被転写基板11を相対的に移動させて両者の位置を合わせる。
【0047】
ここで、アライメントのためにテンプレート1を被転写樹脂層21に接触させると、図3(b)に示すように、テンプレート1のアライメントマークの凹部が、被転写樹脂層21を構成する樹脂によって充満された状態になる。このような状態になると、従来のインプリント用テンプレートにおいては、アライメントマークの凸部を構成する材料も、被転写樹脂21を構成する樹脂も、ともに可視光域の検出光(例えば波長633nm)に対して透明であり、かつ、両者の屈折率がほとんど同じ値であることから、テンプレート側のアライメントマークを光学的に識別することが困難であった。
【0048】
一方、本発明に係るインプリント用テンプレート1においては、アライメントマーク4の凸部における可視光域の光に対する光学濃度は、凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高くなっている。
それゆえ、図3(b)に示すように、アライメントマーク4の凸部に入射し、被転写樹脂層21を通過して被転写基板11表面で反射し、検出器31によって検出される検出光32aの強度は、アライメントマーク4の凹部に入射し、被転写樹脂層21を通過して被転写基板11表面で反射し、検出器31によって検出される検出光32bの強度に比べて小さくなる。
この検出光の強度差を検出することにより、本発明に係るインプリント用テンプレート1においては、アライメントマークの凹部と凸部とを、良好に識別することができる。
【0049】
そして、上述のように検出したテンプレート側のアライメントマーク4からの位置情報と、被転写基板側のアライメントマーク15からの位置情報から、本発明に係るインプリント用テンプレート1と被転写基板11とは、高いアライメント精度で位置合わせされることになる。
さらに、前記位置合わせされた状態で、被転写樹脂層21を硬化させることにより、テンプレート1の転写パターン3を、高い位置精度で、被転写基板11上に形成された被転写樹脂層21に転写することができる。
【0050】
[インプリント用テンプレートの製造方法]
次に、本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法について説明する。
(第1の実施形態)
図4は、本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法の一例を示す模式的工程図である。
本実施形態における本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法においては、まず、図4(a)に示すように、上述の銀イオンを含有するイオン交換表面層5を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板からなるテンプレート基板2を準備し、次いで、図4(b)に示すように、所定の領域を上面に有するメサ構造を形成する。
【0051】
次に、図4(c)に示すように、レジスト製版工程やエッチング工程を施すことにより、前記メサ構造のトップ面に、凹凸構造の転写パターン3、および、凹凸構造のアライメントマーク4を形成し、その後、図4(d)に示すように、凹凸構造のアライメントマーク4に高エネルギービーム41を照射して、凹凸構造のアライメントマーク4を構成するイオン交換表面層5を暗色化させ、アライメントマーク4の凸部における可視光域の光に対する光学濃度を、アライメントマーク4の凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高くして本発明に係るインプリント用テンプレート1を得る(図4(e))。
【0052】
ここで、前記アライメントマークの凹部の深さは、前記イオン交換表面層5の厚み以上の大きさになるようにエッチングすることが好ましい。
上述のように形成されたアライメントマークであれば、アライメントマーク全体に高エネルギービームを照射することで、アライメントマークの凸部のみを暗色化させることができ、上述したように、アライメントマークの凸部と凹部との識別を容易にすることができるからである
【0053】
また、本発明において、上述の転写パターンおよびアライメントマークの形成は、インプリント法により形成することが好ましい。すなわち、本発明に係るインプリント用テンプレートは、テンプレート原版(マスター・テンプレート)から複製されるレプリカ・テンプレートであることが好ましい。1枚のマスター・テンプレートから複数のインプリント用テンプレート(レプリカ・テンプレート)を、高いスループットで製造することができ、経済的に有益だからである。
【0054】
本実施形態における本発明に係るインプリント用テンプレートの転写パターンおよびアライメントマークを、上述のインプリント法により製造する方法としては、例えば、以下のような方法がある。
図5は、図4に示す本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法における製版工程の例を示す模式的工程図である。すなわち、図5は、図4(b)から図4(c)に至る製造工程の例を示すものである。
まず、図5(a)に示すように、メサ構造に形成された前記テンプレート基板2を準備し、次に、図5(b)に示すように、別途準備したマスター・テンプレート6と前記テンプレート基板2を対向配置し、前記テンプレート基板2のイオン交換表面層5上に被転写樹脂層7を形成する。
次いで、図5(c)に示すように、被転写樹脂層7に、マスター・テンプレート6に形成された凹凸構造の転写パターン、および凹凸構造のアライメントマークを接触させ、次に、紫外線9を照射する方法等により被転写樹脂層7を硬化させる。
その後、図5(d)に示すように、前記被転写樹脂層7が硬化して形成された被転写樹脂パターン8とマスター・テンプレート6とを離型し、次に、図5(e)に示すように、前記被転写樹脂パターン8をマスクに用いて、イオン交換表面層5を有するテンプレート基板2をエッチングすることにより、前記凹凸構造の転写パターン3および前記凹凸構造のアライメントマーク4を形成することができる(図5(f))。
【0055】
光インプリント法を用いて前記転写パターンおよびアライメントマークを形成する場合は、前記被転写樹脂層を構成する樹脂に紫外線硬化性樹脂を用い、前記被転写樹脂層を硬化させる工程において、紫外線を照射することにより前記被転写樹脂層を硬化させればよい。
光インプリント法は、熱インプリント法のような加熱・冷却サイクルが不要であることから、テンプレートや樹脂が熱によって寸法変化を生じるリスクを低減でき、解像性、アライメント精度、生産性などの点で優れている。
【0056】
なお、図示しないが、上述の工程において、テンプレート基板2のイオン交換表面層5上に、予めクロム(Cr)等を含む材料からなるハードマスク層を形成しておき、その上に被転写樹脂層7を形成し、上述のようにして形成した被転写樹脂パターン8をマスクに用いて、まず、前記ハードマスク層をエッチングし、次いで、前記エッチングにより得られたハードマスク・パターンをマスクに用いて、イオン交換表面層5を有するテンプレート基板2をエッチングすることにより、前記凹凸構造の転写パターン3および前記凹凸構造のアライメントマーク4を形成してもよい。
【0057】
前記マスター・テンプレートは、従来のインプリント用テンプレートの製造方法により製造することができる。例えば、テンプレート基板に石英基板を用い、この石英基板の一主面上に、電子線レジストを塗布し、電子線描画により転写パターンおよびアライメントマークの各レジストパターンを形成し、現像後、フッ素系のガスを用いてドライエッチングし、その後、残存するレジストパターンを除去することにより、凹凸構造の転写パターンおよびアライメントマークを有するマスター・テンプレートを得ることができる。
【0058】
なお、上述のインプリント法により製造される本発明に係るインプリント用テンプレートの転写パターンは、前記マスター・テンプレートに形成された転写パターンとは凹凸が反転した転写パターンであり、同様に、上述のインプリント法により製造されるインプリント用テンプレートのアライメントマークは、前記マスター・テンプレートに形成されたアライメントマークとは凹凸が反転したアライメントマークになる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法の他の例について説明する。
本実施形態における本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法は、上述の銀イオンを含有するイオン交換表面層5を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板からなるテンプレート基板2をメサ構造に加工した後に、まず、高エネルギービーム41を照射して、所定の部位(後にアライメントマーク4を形成する部位)のイオン交換表面層5を暗色化させ、その後、前記所定の部位をエッチングして、凹凸構造のアライメントマーク4を形成することを特徴とする。
【0060】
以下、図6を用いて、本実施形態の製造方法について具体的に説明する。
図6は、本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法の他の例を示す模式的工程図である。
まず、図6(a)に示すように、上述の銀イオンを含有するイオン交換表面層5を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板からなるテンプレート基板2を準備し、次いで、図6(b)に示すように、所定の領域を上面に有するメサ構造を形成する。
次に、図6(c)に示すように、後にアライメントマーク4を形成する部位となる所定の部位に高エネルギービーム41を照射して、前記所定の部位のイオン交換表面層5を暗色化させる(図6(d))。
その後、レジスト製版工程やエッチング工程を施すことにより、前記メサ構造のトップ面に、凹凸構造の転写パターン3、および、凹凸構造のアライメントマーク4を形成し、凸部における可視光域の光に対する光学濃度が、凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高い凹凸構造のアライメントマーク4を有する本発明に係るインプリント用テンプレート1を得る(図6(e))。
【0061】
ここで、前記アライメントマークの凹部の深さは、前記イオン交換表面層5の厚み以上の大きさになるようにエッチングすることが好ましい。
上述のように形成されたアライメントマークであれば、アライメントマーク全体に高エネルギービームを照射することで、アライメントマークの凸部のみを暗色化させることができ、上述したように、アライメントマークの凸部と凹部との識別を容易にすることができるからである
【0062】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、上述の転写パターンおよびアライメントマークの形成は、インプリント法により形成することが好ましい。1枚のマスター・テンプレートから複数のインプリント用テンプレート(レプリカ・テンプレート)を、高いスループットで製造することができ、経済的に有益だからである。
【0063】
本実施形態における本発明に係るインプリント用テンプレートの転写パターンおよびアライメントマークを、インプリント法により製造する方法としては、例えば、以下のような方法がある。
図7は、図6に示す本発明に係るインプリント用テンプレートの製造方法における製版工程の例を示す模式的工程図である。すなわち、図7は、図6(d)から図6(e)に至る製造工程の例を示すものである。
【0064】
まず、図7(a)に示すように、メサ構造に形成され、後にアライメントマーク4が形成される部位となる所定の部位のイオン交換表面層5が暗色化された前記テンプレート基板2を準備し、次に、図7(b)に示すように、別途準備したマスター・テンプレート6と前記テンプレート基板2を対向配置し、前記テンプレート基板2のイオン交換表面層5上に被転写樹脂層7を形成する。
次いで、図7(c)に示すように、被転写樹脂層7に、マスター・テンプレート6に形成された凹凸構造の転写パターン、および凹凸構造のアライメントマークを接触させ、次に、紫外線9を照射する方法等により被転写樹脂層7を硬化させる。
その後、図7(d)に示すように、前記被転写樹脂層7が硬化して形成された被転写樹脂パターン8とマスター・テンプレート6とを離型し、次に、図7(e)に示すように、前記被転写樹脂パターン8をマスクに用いて、イオン交換表面層5を有するテンプレート基板2をエッチングすることにより、前記凹凸構造の転写パターン3および前記凹凸構造のアライメントマーク4を形成することができる(図7(f))。
【0065】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、光インプリント法を用いて前記転写パターンおよびアライメントマークを形成する場合は、前記被転写樹脂層を構成する樹脂に紫外線硬化性樹脂を用い、前記被転写樹脂層を硬化させる工程において、紫外線を照射することにより前記被転写樹脂層を硬化させればよい。
【0066】
なお、図示しないが、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、上述の工程において、テンプレート基板2のイオン交換表面層5上に、予めクロム(Cr)等を含む材料からなるハードマスク層を形成しておき、その上に被転写樹脂層7を形成し、上述のようにして形成した被転写樹脂パターン8をマスクに用いて、まず、前記ハードマスク層をエッチングし、次いで、前記エッチングにより得られたハードマスク・パターンをマスクに用いて、イオン交換表面層5を有するテンプレート基板2をエッチングすることにより、前記凹凸構造の転写パターン3および前記凹凸構造のアライメントマーク4を形成してもよい。
【0067】
[インプリント方法]
次に、本発明に係るインプリント方法について説明する。
本発明に係るインプリント方法は、上述のような構成を有する本発明に係るインプリント用テンプレートを用い、被転写基板上に形成された被転写樹脂層に、前記テンプレートの凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のアライメントマークを接触させ、前記アライメントマークの凹部と凸部の光学濃度の差により、前記アライメントマークを光学的に検出して、前記テンプレートと被転写基板とを位置合わせした後に、前記被転写樹脂層を硬化させ、前記硬化した被転写樹脂層と前記テンプレートとを離型して、前記テンプレートの有する凹凸構造の転写パターンとは凹凸が反転したパターンを前記被転写樹脂層に形成するものである。
【0068】
なお、上述のように、インプリント法には、光インプリント法と熱インプリント法があるが、本発明に係るインプリント方法においては、特に、光インプリント法を用いることが好ましい。
本発明に係るインプリント用テンプレートにおけるイオン交換表面層は、上述のように、高エネルギービームの照射により暗色化されるが、この暗色化部分は熱により復元される(透明化される)性質を有している(特許文献5)。
それゆえ、熱インプリント法を用いた場合、その加熱条件によっては、前記暗色化部分が透明化してしまい、以降、アライメントマークを検出することができなくなってしまうという恐れ、すなわち、インプリント用テンプレートとして繰り返し使用することができなくなるという恐れがあるからである。
【0069】
図8は、本発明に係るインプリント方法の例を示す模式的工程図である。
本発明に係るインプリント方法においては、まず、図8(a)に示すように、本発明に係るインプリント用テンプレート1を準備し、被転写基板11上に未硬化の被転写樹脂層21を形成する。なお、この例においては、被転写樹脂層21を構成する樹脂は紫外線硬化性樹脂である。
【0070】
次に、図8(b)に示すように、テンプレート1と被転写樹脂層21とを接触させ、テンプレート側アライメントマークと相対する基板側アライメントマークの位置情報を、検出光32を用いて検出器31で検出することにより、テンプレート1と被転写基板11との位置合わせを行う。
【0071】
ここで、本発明に係るインプリント用テンプレート1の前記アライメントマークの凸部における可視光域の光に対する光学濃度は、前記アライメントマークの凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高いため、この光学濃度の差により、テンプレート1のアライメントマークを良好に識別することができる。
それゆえ、本発明に係るインプリント方法においては、高いアライメント精度でテンプレートと被転写基板とを位置合わせすることが可能であり、テンプレートの転写パターンを高い位置精度で被転写基板に転写することができる。
【0072】
次に、図8(c)に示すように、紫外線51を所定量照射することにより、被転写樹脂21を硬化させ、その後、図8(d)に示すように、テンプレート1を離型して、硬化した被転写樹脂パターン22を得る。
【0073】
以上、本発明に係るインプリント用テンプレート、インプリント用テンプレートの製造方法、およびインプリント方法について、それぞれの実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
1・・・テンプレート
2・・・テンプレート基板
3・・・転写パターン
3a・・・凸部
3b・・・凹部
4・・・アライメントマーク
4a・・・凸部
4b・・・凹部
5・・・イオン交換表面層
5a・・・暗色部
6・・・マスター・テンプレート
7・・・被転写樹脂層
8・・・被転写樹脂パターン
9・・・紫外線
11・・・被転写基板
13・・・被転写パターン領域
14・・・基板側アライメントマーク領域
15・・・基板側アライメントマーク
21・・・被転写樹脂層
22・・・被転写樹脂パターン
31・・・検出器
32、32a、32b・・・検出光
41・・・高エネルギービーム
51・・・紫外線
101・・・テンプレート
102・・・テンプレート基板
103・・・転写パターン
104・・・アライメントマーク
104a・・・凸部
104b・・・凹部
111・・・被転写基板
113・・・被転写パターン領域
114・・・基板側アライメントマーク領域
115・・・基板側アライメントマーク
121・・・被転写樹脂層
131・・・検出器
132、132a、132b・・・検出光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸構造の転写パターンと凹凸構造のアライメントマークを有するインプリント用テンプレートであって、
前記インプリント用テンプレートは、銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板からなり、
前記アライメントマークの凸部における可視光域の光に対する光学濃度が、前記アライメントマークの凹部における可視光域の光に対する光学濃度よりも高いことを特徴とするインプリント用テンプレート。
【請求項2】
前記アライメントマークの凹部の深さが、前記イオン交換表面層の厚み以上の大きさであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用テンプレート。
【請求項3】
銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板をエッチングして、凹凸構造のアライメントマークを形成する工程と、
前記凹凸構造のアライメントマークに高エネルギービームを照射する工程と、
を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項4】
銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板の所定の部位に高エネルギービームを照射する工程と、
前記高エネルギービームを照射した所定の部位をエッチングして、凹凸構造のアライメントマークを形成する工程と、
を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項5】
銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板の上に、被転写樹脂層を形成する工程と、
前記被転写樹脂層に、マスター・テンプレートに形成された凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のアライメントマークを接触させる工程と、
前記被転写樹脂層を硬化させる工程と、
前記硬化した被転写樹脂層と前記マスター・テンプレートとを離型する工程と、
前記硬化した被転写樹脂層をマスクに用いたエッチング加工により、前記マスター・テンプレートに形成された転写パターンとは凹凸が反転した転写パターンと、前記マスター・テンプレートに形成されたアライメントマークとは凹凸が反転したアライメントマークを、前記高エネルギービーム感受性ガラス基板に形成する工程と、
前記高エネルギービーム感受性ガラス基板に形成されたアライメントマークに高エネルギービームを照射する工程と、
を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項6】
銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板の所定の部位に高エネルギービームを照射する工程と、
前記高エネルギービーム感受性ガラス基板の上に、被転写樹脂層を形成する工程と、
前記被転写樹脂層に、マスター・テンプレートに形成された凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のアライメントマークを接触させる工程と、
前記被転写樹脂層を硬化させる工程と、
前記硬化した被転写樹脂層と前記マスター・テンプレートとを離型する工程と、
前記硬化した被転写樹脂層をマスクに用いたエッチング加工により、前記マスター・テンプレートに形成された転写パターンとは凹凸が反転した転写パターンと、前記マスター・テンプレートに形成されたアライメントマークとは凹凸が反転したアライメントマークを、前記高エネルギービーム感受性ガラス基板に形成する工程と、
を備えることを特徴とするインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項7】
前記被転写樹脂層を構成する樹脂が紫外線硬化性樹脂であり、前記被転写樹脂層を硬化させる工程が、紫外線を照射して前記被転写樹脂層を硬化させる工程であることを特徴とする請求項5〜6のいずれかに記載のインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項8】
前記凹凸のアライメントマークを形成する工程において、形成される前記アライメントマークの凹部の深さが、前記イオン交換表面層の厚み以上の大きさになるように前記銀イオンを含有するイオン交換表面層を備えた高エネルギービーム感受性ガラス基板をエッチングすることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜2のいずれかに記載のインプリント用テンプレートを用い、
被転写基板上に形成された被転写樹脂層に、前記テンプレートの凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のアライメントマークを接触させ、
前記アライメントマークの凹部と凸部の光学濃度の差により、
前記アライメントマークを光学的に検出して、前記テンプレートと被転写基板とを位置合わせした後に、
前記被転写樹脂層を硬化させ、
前記硬化した被転写樹脂層と前記テンプレートとを離型して、
前記テンプレートの有する凹凸構造の転写パターンとは凹凸が反転したパターンを前記被転写樹脂層に形成することを特徴とするインプリント方法。
【請求項10】
前記被転写樹脂層を構成する樹脂が紫外線硬化性樹脂であり、前記被転写樹脂層を硬化させる工程が、紫外線を照射して前記被転写樹脂層を硬化させる工程であることを特徴とする請求項9に記載のインプリント方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−89939(P2013−89939A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232530(P2011−232530)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】