説明

インホイールモータのブレーキ装置

【課題】インホイール式駆動機構を小型・軽量化でき、ホイールシャフトの軸受に作用する負荷を軽減できるインホイールモータのブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ装置21を構成するインナーハウジング12の内部に軸受13を介してホイールシャフト14を支持する。該ホイールシャフト14にハブ15を嵌合固定し、該ハブ15に駆動輪16を連結する。インナーハウジング12の外周面にインナーステータ18を設ける。ハブ15の外周面にアウターハウジング19を介して永久磁石20を取り付ける。インナーハウジング12のハブ15と反対側の開口部にブレーキドラム12aを一体に形成する。ホイールシャフト14の内端部にブレーキ機構46を装着する。ブレーキ機構46の第1及び第2ブレーキシユー25,26をブレーキドラム12aの内周面12bに押圧することによって、ホイールシャフト14の回転を制動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型・軽量化して、インホイールモータの周辺の空スペースを大きくすることができるインホイールモータのブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータのブレーキ装置として、従来、特許文献1に開示されたものが提案されている。このブレーキ装置においては、図11に示すように、車体フレームに装着されたケース61の内部にインホイールモータ62が収容され、該インホイールモータ62のモータ軸63に減速機構64を介してドライブシャフト65が連結されている。該ドライブシャフト65にはハブ66が連結され、該ハブ66にホイール67がボルトによって連結されている。前記ハブ66にはディスクロータ68を介してブレーキ装置69が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006‐1373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のブレーキ装置は、ホイール67の内部にブレーキ装置69が収容されているので、インホイールモータ62のモータ軸63の軸受70の軸線方向に関する軸受中心O70と、ホイール67の軸線方向に関するホイール中心O67との間の離隔距離Lが大きくなり、次のような問題があった。即ち、軸受中心O70とホイール中心O67とが大きくオフセットされているため、ホイール67からケース61及びインホイールモータ62が大きくはみ出し、インホイール式駆動機構を小型・軽量化することができない。
【0005】
又、前記減速機構64を省略し、モータ軸63とドライブシャフト65を一体とした場合、つまり、モータ62のモータ軸63をホイールシャフトとした場合には、前記離隔距離Lが減速機構64が無い分短くはなる。しかし、まだ相当の離隔距離Lが存在するため、梃子の原理によりモータ軸(ホイールシャフト)63の軸受70に大きな負荷が作用し、軸受として剛性の高い大型のものを使用しなければならない。
【0006】
本発明は、インホイール式駆動機構を小型・軽量化することができるとともに、ホイールシャフトの軸受に作用する負荷を軽減することができるインホイールモータのブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、駆動輪の内側に電動モータを収容してなるインホイールモータ式車両において、車両の懸架装置に前記電動モータを構成する筒状のインナーハウジングを装着し、該インナーハウジングの中心孔に軸受を介してホイールシャフトを支持し、該ホイールシャフトの外端部にハブを介して駆動輪を連結し、インナーハウジングの車両側の開口部にブレーキドラムを設け、ホイールシャフトの内端部にブレーキ機構を連結し、該ブレーキ機構を前記ブレーキドラムの内部に収容したことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ブレーキ機構は、前記ホイールシャフトの内端部に連結されたブレーキベースと、該ブレーキベースの外周側の二箇所に立設された第1及び第2支持ピンと、両支持ピンにそれぞれ回動可能に接合された第1及び第2ブレーキシユーと、前記第1支持ピンに形成された平面部と、前記第2ブレーキシユーの先端部に形成された平面部との間に介在された第1カムレバーと、前記第2支持ピンに形成された平面部と、第1ブレーキシユーの先端部に形成された平面部との間に介在された第2カムレバーと、前記第1及び第2ブレーキシユーを常には接近する非制動方向に付勢する付勢手段と、前記第1及び第2カムレバーを制動方向に回動操作する回動操作機構とによって構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記回動操作機構は、前記ブレーキドラムの開口端部に取り付けられた遮蔽カバーと、該遮蔽カバーに往復動可能に支持された作動ロッドと、該作動ロッドの内端部に前記第1及び第2カムレバーの先端部と対応するように連結された円錐状のカム部材と、作動ロッドを牽引するワイヤーとにより構成され、前記カム部材が非制動位置から制動位置に移動されると、第1及び第2カムレバーが制動方向に回動されて、第1及び第2ブレーキシユーがブレーキドラムの内周面に押圧されるように構成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記ブレーキ機構は、ホイールシャフトの内端部に弾性変形可能に設けられた円筒状の可撓ブレーキドラムと、前記ブレーキドラムの開口部を遮蔽する遮蔽カバーに取り付けられた支持ピンと、該支持ピンに回動可能に接合された第1及び第2ブレーキシユーと、前記遮蔽カバーに取り付けられ、かつ第1及び第2ブレーキシユーの先端部間に介在されたカム部材と、第1及び第2ブレーキシユーを互いに接近する非制動方向に付勢する付勢手段と、前記カム部材を制動方向に回動して、両ブレーキシユーを制動方向に移動させる回動操作機構とによって構成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記ホイールシャフトの軸受の軸線方向に関する軸受中心は、駆動輪の回転軸線の軸線方向に関する駆動輪中心と一致するように設定されていることを要旨とする。
【0012】
(作用)
この発明は、電動モータを構成する筒状のインナーハウジングの車両側の端部にブレーキドラムを設け、該ブレーキドラムの内側にホイールシャフトに連結されたブレーキ機構を収容した。このため、ホイールシャフトの軸受を駆動輪の内側の中心部に収容することができ、前記軸受の軸線方向に関する軸受中心と、駆動輪の回転軸線の軸線方向に関する駆動輪中心との離隔距離を低減することができる。従って、駆動輪からの電動モータ及びブレーキ装置のはみ出しが抑制され、インホイール式駆動機構が小型・軽量化される。又、ホイールシャフトの軸受に作用する負荷が軽減される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インホイール式駆動機構を小型・軽量化することができるとともに、ホイールシャフトの軸受に作用する負荷を軽減することができ、軸受を小型・軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明のインホイールモータのブレーキ装置を具体化した第1実施形態を示す中央部断面図。
【図2】ブレーキ装置の非制動状態の斜視図。
【図3】ブレーキ装置の非制動状態の中央部拡大断面図。
【図4】ブレーキ装置の制動状態の中央部拡大断面図。
【図5】ブレーキ装置の非制動状態の正面図。
【図6】プレート装置の制動状態の正面図。
【図7】この発明のインホイールモータのブレーキ装置を具体化した第2実施形態を示す中央部断面図。
【図8】ブレーキ装置の非制動状態の正面図。
【図9】ブレーキ装置の制動状態の正面図。
【図10】この発明の別の実施形態を示すブレーキ装置の断面図。
【図11】従来のインホイールモータのブレーキ装置を示す中央部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化したインホイールモータのブレーキ装置の第1の実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0016】
図1に示すように、インホイールモータ11を構成する円筒状のインナーハウジング12は、車両の図示しない懸架装置のダブルウィッシュボーン型サスペンションのアッパーアームとロアアームに連結されている。インナーハウジング12の中心孔には、内外一対のラジアルボール軸受13を介してホイールシャフト14が回転可能に支持されている。該ホイールシャフト14の先端部寄りには、ハブ15が嵌合固定され、該ハブ15には駆動輪16が複数のハブスタンドボルト17によって連結されている。前記インナーハウジング12の外周面には、ティース18aとコイル18bとにより構成されたインナーステータ18が嵌合固定されている。前記ハブ15の外周縁部には、インホイールモータ11のアウターハウジングの一部を形成する断面L字状のハウジング形成部15aが一体に成形されている。該ハウジング形成部15aの外周面には、前記インナーステータ18を覆うように円筒状のアウターハウジング19が嵌合固定されている。該アウターハウジング19の内周面には、前記インナーステータ18のティース18aと所定の間隔をおいて対向するように複数の永久磁石20が接合固定されている。各永久磁石20は、前記インナーステータ18と対向する面のN極とS極がアウターハウジング19の周方向に交互に変化するように配列されている。
【0017】
前記インナーハウジング12と前記ホイールシャフト14の内端部との間には、ブレーキ装置21が装着されている。このブレーキ装置21を以下に説明する。
図1に示すように、前記インナーハウジング12のハブ15と反対側の開口端部には、円筒状のブレーキドラム12aが一体に成形されている。このブレーキドラム12aは、前記インナーステータ18を支持する筒部の直径寸法よりも大径寸法に形成されている。
【0018】
図1に示すように、前記ホイールシャフト14の車両側の内端部(図示右端)には、円盤状をなす金属製のブレーキベース22がボルトによって該シャフト14と同期回転可能に連結されている。図2に示すように、前記ブレーキベース22の外周寄りの側面には、半円柱状の第1及び第2支持ピン23,24が互いに180度の間隔をおいて平行に溶接によって立設固定されている。前記第1支持ピン23の半円柱部23aには、第1ブレーキシユー25の基端部に形成された半円筒状の係合凹部25aが回動可能に係合されている。第1ブレーキシユー25の先端部に形成された平面部25bは、前記第2支持ピン24に形成された平面部24bに対向配置されている。第2支持ピン24の半円柱部24aには、第2ブレーキシユー26の基端部に形成された半円筒状の係合凹部26aが回動可能に係合され、該第2ブレーキシユー26の先端部に形成された平面部26bは、前記第1支持ピン23に形成された平面部23bに対向配置されている。
【0019】
前記第1及び第2ブレーキシユー25,26の円弧状の外周面には、ブレーキライニング27が接着されている。該ブレーキライニング27と前記ブレーキドラム12aの内周面12bとの間には、図5に示すように、常には所定の隙間が形成されている。そして、図6に示すように、第1及び第2ブレーキシユー25,26のブレーキライニング27がブレーキドラム12aの内周面12bに押圧接触されることによって、前記ホイールシャフト14の回転が制動されるようになっている。
【0020】
前記第1支持ピン23の平面部23bと、前記第2ブレーキシユー26の先端の平面部26bとの間には、第1平板部28aと第2平板部28bとによってアングル状に形成された第1カムレバー28の前記第2平板部28bの基端部に形成されたカム板28cが介在されている。同様に、前記第2支持ピン24の平面部24bと、第1ブレーキシユー25の平面部25bとの間には、第1平板部29aと第2平板部29bとによってアングル状に形成された第2カムレバー29の前記第2平板部29bの基端部に形成されたカム板29cが介在されている。
【0021】
図2の部分拡大図に示すように、前記第1支持ピン23の先端面には、ネジ孔23cが形成され、該ネジ孔23cと対応するように前記第1カムレバー28の第1平板部28aの基端部には、透孔28dが貫通形成されている。そして、雄ネジ部30a、軸部30b及び鍔部30cよりなる支持ピン30の前記雄ネジ部30aを前記ネジ孔23cに螺合するとともに、前記透孔28dに軸部30bを進入し、鍔部30cを第1平板部28aの上面に接触させることによって、第1支持ピン23に第1カムレバー28が回動可能に連結されている。前記第2カムレバー29の支持ピン30も前記第1カムレバー28側の支持ピン30と同様に構成されているので、説明を省略する。
【0022】
前記第1及び第2ブレーキシユー25,26には、付勢手段としての第1及び第2引張ばね31,32の両端が係止ピンによって連結され、第1及び第2引張ばね31,32によって、前記第1及び第2ブレーキシユー25,26が常には互いに接近する非制動方向に付勢されている。又、前記第1及び第2引張ばね31,32によって、第1及び第2ブレーキシユー25,26の係合凹部25a,26aが第1及び第2支持ピン23,24の半円柱部23a,24aに押し付けられるとともに、第1及び第2ブレーキシユー25,26の平面部25b,26bが第1,第2カムレバー28,29のカム板28c,29cに押し付けられている。
【0023】
図1に示すように、前記インナーハウジング12のブレーキドラム12aの開口端面には、前記第1及び第2ブレーキシユー25,26及び第1及び第2カムレバー28,29等を覆うための遮蔽カバー41がボルトによって取り付けられている。該遮蔽カバー41の中心には、透孔41aが貫通形成され、該透孔41aに連通するように遮蔽カバー41には案内筒42が溶接によって連結されている。前記案内筒42には、作動ロッド43が前記ホイールシャフト14の軸線と同方向への往復動可能に貫通支持され、該作動ロッド43の内端部には、円錐形状のカム部材44が連結されている。前記カム部材44の先端部は、第1,第2カムレバー28,29の先端部に接触されている。前記作動ロッド43の外端部には、車両の運転席に設けられた図示しないブレーキペダルに連係されたワイヤー45が連結されている。
【0024】
この実施形態では、前記ブレーキベース22、第1及び第2支持ピン23,24、第1及び第2ブレーキシユー25,26、第1及び第2カムレバー28,29、第1及び第2引張ばね31,32、作動ロッド43、カム部材44等によって、ブレーキ機構46が構成されている。又、前記作動ロッド43、カム部材44及びワイヤー45等によって前記第1及び第2カムレバー28,29の回動操作機構47が構成されている。
【0025】
次に、前記のように構成されたインホイールモータ11のブレーキ装置21の作用について説明する。
図1において、図示しないバッテリー等の電源から前記インホイールモータ11のインナーステータ18のコイル18bに交流電流が供給されると、該モータ11が駆動されて、アウターハウジング19及び永久磁石20がホイールシャフト14を中心に回転され、車両が走行される。この車両の走行中において、車両を停止させる場合には、インホイールモータ11のコイル18bの電流の供給が停止されるとともに、運転席の図示しないブレーキペダルが運転者によって踏み込まれると、ワイヤー45が図1及び図3において右方向に牽引され、作動ロッド43を介してカム部材44が同方向に移動される。このため、第1及び第2カムレバー28,29の先端部間にカム部材44の傾斜面44aが押し込まれて、第1及び第2カムレバー28,29が図5において支持ピン30を中心に矢印P方向に回動される。この第1及び第2カムレバー28,29の回動によって、カム板28c,29cが平面部23b(26b)及び平面部24b(25b)の間で回動され、第1及び第2ブレーキシユー25,26が第1及び第2支持ピン23,24を中心に図5の矢印Q方向に回動され、ブレーキドラム12aの内周面12bに第1及び第2ブレーキシユー25,26のブレーキライニング27が押し付けられる。この結果、ホイールシャフト14、ブレーキベース22、第1及び第2ブレーキシユー25,26等の回転が制動され、駆動輪16が制動される。
【0026】
上記実施形態のインホイールモータのブレーキ装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記第1の実施形態では、前記インナーハウジング12の車体フレーム側の端部にブレーキドラム12aを一体に成形するとともに、前記ホイールシャフト14の内端部にブレーキベース22を連結し、該ブレーキベース22に前記ブレーキドラム12aと協働して、ホイールシャフト14の回転を制動するブレーキ機構46を設けた。このため、図1に示すように駆動輪16の軸線方向の中心O16と、インホイールモータ11の一対の軸受13のホイールシャフト14の中心軸線方向に関する軸受中心O13とを一致させることができる。従って、駆動輪16が回転されて、車両が走行する際に、軸受13に作用する負荷を軽減することができる。又、駆動輪16の内部にインホイールモータ11を収容することができるとともに、ブレーキ装置21の駆動輪16からのはみ出し量を抑制して、インホイール式駆動機構を小型・軽量化することができる。
【0027】
(2)第1の実施形態では、インナーハウジング12の内側開口部をブレーキドラム12aとして利用するので、専用で大重量のブレーキドラム12aが不要となり、ブレーキ装置21の小型・軽量化が実現でき、この点からもインホイール式駆動機構を小型・軽量化することができる。
【0028】
(3)第1の実施形態では、第1支持ピン23の平面部23bと、第2ブレーキシユー26の平面部26bの間に第1カムレバー28のカム板28cを介在し、第2支持ピン24の平面部24bと、第1ブレーキシユー25の平面部25bの間に第2カムレバー29のカム板29cを介在した。又、第1,第2カムレバー28,29を回動することによりブレーキライニング27をブレーキドラム12aの内周面12bに梃子の原理によって押し付けるようにした。このため、内周面12bに対するブレーキライニング27の押し付け力を確保し、ホイールシャフト14の制動を適正に行うことができる。
【0029】
(4)第1の実施形態では、前記第1及び第2ブレーキシユー25,26が第1及び第2支持ピン23,24を中心に外側方向に回動されるようにした。このため、前記第1及び第2ブレーキシユー25,26がホイールシャフト14の回転によって遠心力により前記第1及び第2引張ばね31,32の付勢力に抗して外側方向に付勢される。従って、第1及び第2ブレーキシユー25,26のブレーキドラム12aに対する押し付け動作を、ブレーキワイヤー45の小さい操作力で適正に行うことができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化したインホイールモータのブレーキ装置の第2の実施形態を図7〜図9に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態のインホイールモータ11のブレーキ装置21のブレーキ機構46を変更した構成であるため、同様の構成については説明を省略する。
【0031】
図7に示すように、前記ホイールシャフト14の内端部には、取付リング40を介して弾性変形可能な可撓ブレーキドラム48が一体に成形されている。この可撓ブレーキドラム48は、前記取付リング40にボルトにより連結された円板状部48aと、該円板状部48aの外周縁に一体に直交するように形成された円筒状部48bと、前記円板状部48aに円周方向に形成された屈曲部48cとにより構成されている。前記インナーハウジング12のブレーキドラム12aの内周面12bには、ブレーキシユー49が接着されている。前記可撓ブレーキドラム48の円筒状部48bは、前記第1及び第2ブレーキシユー25,26のブレーキライニング27と、ブレーキシユー49との間に常には非接触状態で進入されている。前記第1及び第2ブレーキシユー25,26は、前記遮蔽カバー41に装着されている。
【0032】
第2の実施形態においては、図8に示すように、前記遮蔽カバー41に前記第1支持ピン23に代えて、円柱状の支持ピン51が溶接等により立設され、該支持ピン51に第1及び第2ブレーキシユー25,26の係合凹部25a,26aがそれぞれ回動可能に接合されている。又、前記支持ピン51の反対側の遮蔽カバー41には、前記第2支持ピン24に代えて、長四角板状のカム部材52が所定位置において回動可能に装着されている。該カム部材52は前記第1及び第2ブレーキシユー25,26の対向する平面部25b,26bの間に介在されている。前記カム部材52には作動レバー53が連結され、該作動レバー53はブレーキワイヤー45によって回動操作されるようになっている。なお、ワイヤー45は前記遮蔽カバー41に形成された孔(図示略)からブレーキドラム12aの内部に導入されている。
【0033】
第2の実施形態においては、前記ブレーキワイヤー45が牽引されると、作動レバー53が図8において、反時計回り方向に回動される。この動作によって前記カム部材52が図9に示すように前記第1及び第2ブレーキシユー25,26の平面部25b,26bの間において傾動され、第1及び第2ブレーキシユー25,26が第1及び第2引張ばね31,32の付勢力に抗して支持ピン51を中心に互いに離隔する制動方向に回動される。この結果、ブレーキライニング27が可撓ブレーキドラム48の内周面に押し付けられるとともに、該可撓ブレーキドラム48の円筒状部48bが弾性変形されて、その外周面がブレーキドラム12aの内周のブレーキシユー49に押し付けられる。従って、ホイールシャフト14の回転が制動される。
【0034】
上記第2の実施形態のインホイールモータのブレーキ装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第2の実施形態では、可撓ブレーキドラム48をブレーキドラム12a側のブレーキシユー49と、第1及び第2ブレーキシユー25,26側のブレーキライニング27とによって挟着するようにした。このため、制動部品間の摺動摩擦を向上でき、ホイールシャフト14の制動機能を向上することができる。
【0035】
(2)第2の実施形態では、ブレーキドラム12aに固定された遮蔽カバー41にブレーキ機構46の主要部品が装着されているので、ホイールシャフト14の回転負荷を軽減することができる。
【0036】
(3)第2の実施形態では、カム部材52を一箇所のみとしたので、部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行い、コストを低減することができる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
【0037】
・図10に示すように、ブレーキドラム12aの内周面12bと直交する内側面12cにブレーキライニング27を接着する。このブレーキライニング27と所定の隙間をもって対向するように弾性変形可能な可撓ブレーキディスク56を配設する。一方、前記遮蔽カバー41の内側面にバネ57を介してブレーキシュー58をホイールシャフト14の軸線方向のみ往復動可能に装着する。ブレーキシュー58と遮蔽カバー41との間に該ブレーキシュー58を前記バネ57の付勢力に抗して前記可撓ブレーキディスク56に押し付けるカム部材59を備えたカム機構60を設ける。
【0038】
この実施形態においては、前記カム機構60によって前記ブレーキシュー58の外周縁が前記可撓ブレーキディスク56の側面に押し付けられると、可撓ブレーキディスク56がブレーキライニング27に押し付けられてホイールシャフト14の回転が制動される。
【0039】
・前記ブレーキ装置21のブレーキ機構46として、例えば遠心ブレーキ装置等の各種のブレーキ機構を採用するようにしてもよい。
・前記各実施形態では図1に示すように駆動輪16の中心O16と、インホイールモータ11の軸受13,13の軸受中心O13とを一致させるようにしたが、ラジアルボール軸受13,13の負荷が大きくならない程度に中心O16、軸受中心O13をある程度離隔してもよい。
【符号の説明】
【0040】
O13…軸受中心、11…インホイールモータ、12…インナーハウジング、12a…ブレーキドラム、12b…内周面、13…軸受、14…ホイールシャフト、15…ハブ、16…駆動輪、22…ブレーキベース、23…第1支持ピン、23b,24b,25b,26b…平面部、24…第2支持ピン、25…第1ブレーキシユー、26…第2ブレーキシユー、28…第1カムレバー、29…第2カムレバー、30,51…支持ピン、41…遮蔽カバー、43…作動ロッド、44,52,59…カム部材、45…ワイヤー、46…ブレーキ機構、47…回動操作機構、48…可撓ブレーキドラム、49…ブレーキシユー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪の内側に電動モータを収容してなるインホイールモータ式車両において、
車両の懸架装置に前記電動モータを構成する筒状のインナーハウジングを装着し、該インナーハウジングの中心孔に軸受を介してホイールシャフトを支持し、該ホイールシャフトの外端部にハブを介して駆動輪を連結し、インナーハウジングの車両側の開口部にブレーキドラムを設け、ホイールシャフトの内端部にブレーキ機構を連結し、該ブレーキ機構を前記ブレーキドラムの内部に収容したことを特徴とするインホイールモータのブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ブレーキ機構は、前記ホイールシャフトの内端部に連結されたブレーキベースと、該ブレーキベースの外周側の二箇所に立設された第1及び第2支持ピンと、両支持ピンにそれぞれ回動可能に接合された第1及び第2ブレーキシユーと、前記第1支持ピンに形成された平面部と、前記第2ブレーキシユーの先端部に形成された平面部との間に介在された第1カムレバーと、前記第2支持ピンに形成された平面部と、第1ブレーキシユーの先端部に形成された平面部との間に介在された第2カムレバーと、前記第1及び第2ブレーキシユーを常には接近する非制動方向に付勢する付勢手段と、前記第1及び第2カムレバーを制動方向に回動操作する回動操作機構とによって構成されていることを特徴とするインホイールモータのブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2において、前記回動操作機構は、前記ブレーキドラムの開口端部に取り付けられた遮蔽カバーと、該遮蔽カバーに往復動可能に支持された作動ロッドと、該作動ロッドの内端部に前記第1及び第2カムレバーの先端部と対応するように連結された円錐状のカム部材と、作動ロッドを牽引するワイヤーとにより構成され、前記カム部材が非制動位置から制動位置に移動されると、第1及び第2カムレバーが制動方向に回動されて、第1及び第2ブレーキシユーがブレーキドラムの内周面に押圧されるように構成されていることを特徴とするインホイールモータのブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1において、前記ブレーキ機構は、ホイールシャフトの内端部に弾性変形可能に設けられた円筒状の可撓ブレーキドラムと、前記ブレーキドラムの開口部を遮蔽する遮蔽カバーに取り付けられた支持ピンと、該支持ピンに回動可能に接合された第1及び第2ブレーキシユーと、前記遮蔽カバーに取り付けられ、かつ第1及び第2ブレーキシユーの先端部間に介在されたカム部材と、第1及び第2ブレーキシユーを互いに接近する非制動方向に付勢する付勢手段と、前記カム部材を制動方向に回動して、両ブレーキシユーを制動方向に移動させる回動操作機構とによって構成されていることを特徴とするインホイールモータのブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記ホイールシャフトの軸受の軸線方向に関する軸受中心は、駆動輪の回転軸線の軸線方向に関する駆動輪中心と一致するように設定されていることを特徴とするインホイールモータのブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−183985(P2011−183985A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53375(P2010−53375)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】