キーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法
【課題】低コストでかつ携帯機の電池寿命を長くすることができるキーレスエントリ装置を得ること。
【解決手段】車載機20と携帯機30とで構成されるキーレスエントリシステムであって、車載機20は、UHFアンテナ5A,5Bと、UHFアンテナ5A,5Bからそれぞれ受信電力測定用の電力測定用信号を送信するマイコン1、UHF変復調部、UHF高周波部3を備え、携帯機30は、UHFアンテナ6A,6Bと、受信した電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定部11と、を備え、マイコン1は、携帯機30から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を選択または合成して車載機20と携帯機30との間の距離を求める。
【解決手段】車載機20と携帯機30とで構成されるキーレスエントリシステムであって、車載機20は、UHFアンテナ5A,5Bと、UHFアンテナ5A,5Bからそれぞれ受信電力測定用の電力測定用信号を送信するマイコン1、UHF変復調部、UHF高周波部3を備え、携帯機30は、UHFアンテナ6A,6Bと、受信した電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定部11と、を備え、マイコン1は、携帯機30から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を選択または合成して車載機20と携帯機30との間の距離を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号によりユーザの携帯するキーの認証を行い、車両に手を触れる(あるいはユーザの意思を示す何らかの行為)により、キーを取りだすことなく車両ドアのロック/アンロック,エンジンスタートなどを行うキーレスエントリ装置の普及が進んでいる。
【0003】
キーレスエントリ装置は、一般に車両とユーザの距離に応じてドアのアンロックを許可するか否かの判断をするため、車両からキー(以下、携帯機という)までの距離を測定する機能を有する。従来のキーレスエントリ装置では、距離とともに電磁界強度が急激(距離の3乗に比例)に減衰する近傍界通信(あるいは電磁誘導,磁界結合,誘導電波による通信などと表記される)を用いて、強度測定,距離算出を行っていた。例えば、下記特許文献1に記載のシステムでは、車載機から125kHzの長波帯(LF(Low Frequency)帯)信号を送信し、携帯機が、この信号を受信して受信電力を計測し、312MHzの極超短波帯(UHF(Ultra High Frequency)帯)の信号を用いて車載機へ受信電力情報を返信する。そして、車載機が、携帯機から受信した受信電力情報に基づいて携帯機までの距離を算出する。
【0004】
また、複数の送信アンテナを用いてフェージングやマルチパスによる電力強度変動を抑圧し、距離測定精度の改善を行う方法が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。この文献には、キーレスエントリ装置を想定したものではないが、携帯電話の意図しない動作を抑制することを目的として、携帯電話本体とペアになったワイヤレスキー装置とが近くにない場合に本体側装置の機能を制限する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−319846号公報
【特許文献2】特許第4079196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示された従来のキーレスエントリ装置は、車載機から携帯機への通信と携帯機から車載機への通信とで異なる周波数を用いる。このため、アンテナや高周波回路が2種類必要となるという問題点があった。特に、LF帯は周波数が低いため、アンテナが大型化・複雑化し、生産コストが高くなるという問題があった。なお、従来のキーレスエントリ装置においてLF帯を用いている理由は、波長が短いとフェージング/マルチパスの影響により携帯機の位置測定(距離算出)が高精度にできないためである。
【0007】
上記特許文献2で示されたダイバーシチ技術はフェージングの影響抑圧に有効である。しかしながら、上記特許文献2で示された方法をキーレスエントリ装置に適用した場合、携帯機側から送信アンテナを切り替えながら信号を定期送信し、本体側で受信および距離算出の処理を行う。このため、携帯機の電池寿命が短くなる、という問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストでかつ携帯機の電池寿命を長くすることができるキーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、車両に搭載される車載機と、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と、で構成されるキーレスエントリシステムであって、前記車載機は、2本以上の第1のアンテナと、前記2本以上の第1のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する第1の送信部と、を備え、前記携帯機は、1本以上の第2のアンテナと、受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定部と、前記受信電力を前記車載機へ送信する第2の送信部と、を備え、前記車載機は、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストでかつ携帯機の電池寿命を長くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1のキーレスエントリシステムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、本実施の形態1の送受信および動作の手順の一例を示す図である。
【図3】図3は、情報#1の構成例を示す図である。
【図4】図4は、情報#2の構成例を示す図である。
【図5】図5は、情報#3の構成例を示す図である。
【図6】図6は、情報#4の構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態2のキーレスエントリシステムの送受信動作例を示す図である。
【図8】図8は、情報#5の構成例を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態3のキーレスエントリシステムの構成例を示す図である。
【図10】図10は、実施の形態3の送受信動作例を示す図である。
【図11】図11は、実施の形態4のキーレスエントリシステムの送受信動作例を示す図である。
【図12】図12は、車載機側でも受信電力を測定する場合にデータを重複送信する場合の送受信動作の一例を示す図である。
【図13】図13は、実施の形態5のキーレスエントリシステムの送受信動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるキーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態1の構成例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムは、車載機(キーレスエントリ装置)20と携帯機30とで構成される。車載機20は、自動車等の車両等に搭載され、携帯機30は、例えば車両のキー等であり、キーレスエントリシステムの利用者が車両から離れる場合に利用者により携帯される。そして、車載機20が携帯機30を認証すると、携帯機30と車載機20との距離に応じて車両のドアのロック/アンロック、エンジンスタート等の操作を行う。
【0014】
図1に示すように、車載機20は、車載機20側で信号処理を行うマイコン(信号処理部)1と、マイコン1により生成された送信情報を変調して送信信号を生成し、また、受信信号を復調して受信情報を生成するUHF変復調部2と、送信信号を高周波信号に変換(アップコンバート)し、また、受信した高周波信号を受信信号に変換(ダウンコンバート)するUHF高周波部3と、UHFアンテナ(第1のアンテナ)5A,5Bと、マイコン1からの制御信号に基づいて送受信を行うUHFアンテナ(第2のアンテナ)5A,5Bを切り替えるRF(Radio Frequency)スイッチ(SW)4と、を備える。マイコン1、UHF変復調部2およびUHF高周波部3は、送信処理を行う送信回路(第1の送信部)としての機能と、受信処理を行う受信回路(第1の受信部)としての機能と、を有する。
【0015】
携帯機30は、携帯機30側で信号処理を行うマイコン(信号処理部)10と、マイコン10により生成された送信情報を変調して送信信号を生成し、また、受信信号を復調して受信情報を生成するUHF変復調部9と、送信信号を高周波信号に変換し、また、受信した高周波信号を受信信号に変換するUHF高周波部8と、UHFアンテナ6A,6Bと、マイコン10からの制御信号に基づいて送受信を行うUHFアンテナ6A,6Bを切り替えるRFスイッチ(SW)7と、受信信号の電力値を測定し電力情報を生成する受信電力測定部11と、を備える。マイコン10、UHF変復調部9およびUHF高周波部8は、送信処理を行う送信回路(第2の送信部)としての機能と、受信処理を行う受信回路(第2の受信部)としての機能と、を有する。また、UHFアンテナ6A,6Bを偏波アンテナとしてもよい。偏波アンテナとする場合には、携帯機の向き(偏波面との関係)による受信電力変動が抑圧できるため、より高精度な距離測定が実現できる。
【0016】
図2は、本実施の形態の車載機20,携帯機30における、送受信および動作の手順の一例を示す図である。図1、図2を用いて、本実施の形態の動作について説明する。初期状態では、車載機20のSW4は、送受信に用いるアンテナとしてUHFアンテナ5Aを選択し、携帯機30のSW7は、送受信に用いるアンテナとしてUHFアンテナ6Aを選択しているとする。初期状態でSW4、SW7がそれぞれ選択しているアンテナはこれに限定されない。
【0017】
図2に示すように、車載機20は、携帯機30との距離の算出を行う場合、まずマイコン1がWakeUP信号および情報#1を含む送信情報を生成する。この送信情報は、UHF変復調部2、UHF高周波部3、SW4およびUHFアンテナ5A経由で送信される。WakeUP信号は、送信を開始することを示す信号であり、宛先を示す情報が含まれている。車載機20は、あらかじめ登録されている自機との接続が許可されている携帯機30を宛先としてWakeUP信号を送信する。
【0018】
携帯機30では、図示しないWakeUP信号を処理する処理部が、アンテナ6A経由で受信した受信信号に含まれるWakeUP信号に基づき、当該信号が自局あて信号であることを確認する(車載機20との間の既知信号である)と、受信回路(UHF高周波部8、UHF変復調部9およびマイコン10)を起動する。受信回路の起動後、UHF高周波部8は、車載機20からの受信信号を低周波数帯へダウンコンバートし、UHF変復調部9がこの受信信号を復調して受信情報をマイコン10に入力する。なお、ここでは、WakeUP信号に基づいて自局宛の信号であるか否か判断する例を説明したが、自局宛の信号であるか否かを判断せずWakeUP信号の電力を検知する(例えば、WakeUP信号の周波数帯で受信した電力が所定値以上になると)ことにより受信回路を起動するようにしてもよい。
【0019】
情報#1には車載機20からの呼び出し命令(呼び出し対象を指定する情報も含む)が含まれている。図3は、情報#1の構成例を示す図である。図3に示すように、情報#1は、WakeUP信号と、宛先(呼び出し対象)を示すID(Identifier)などと、呼び出し命令を含む制御情報と、で構成される。なお、情報#1に含まれるWakeUP信号と図2で説明したWakeUP信号は同じでもよいし異なっていてもよい。また、図2で説明したWakeUP信号は送信せずに情報#1内のWakeUP信号を用いるようにしてもよい。宛先を示すIDとしては、例えば携帯機30またはキーレスエントリシステムを識別するID等を用いることができる。情報#1には、さらにCRC(Cyclic Redundancy Check)などの情報伝達の確認情報も付加されることがある。
【0020】
携帯機30のマイコン10は、UHF変復調部9から入力される受信情報である情報#1に基づいて、自局が呼び出し対象である場合に当該呼び出し命令に対する応答信号を含む情報#2を送信情報として生成する。そして、情報#2は、UHF変復調部9、UHF高周波部8、SW7、アンテナ6A経由で車載機20に向けて送信される。図4は、情報#2の構成例を示す図である。情報#2は、同期信号と、応答信号と、で構成される。応答信号には、どの呼び出し命令に対する応答かを示すID等を含むようにしてもよい。また、携帯機が複数存在するキーレスエントリシステムの場合には、応答信号に送信元の携帯機の番号などを含める、または携帯機ごとに応答信号を送信するタイミングを変更する等により、車載機20に対してどのキー(携帯機)が応答しているかを伝えるようにしてもよい。
【0021】
車載機20では、UHFアンテナ5A、SW4、UHF高周波部3およびUHF変復調部2により、情報#2を受信,復調し、マイコン1は情報#2に含まれる応答信号に基づいて、携帯機30の存在を確認できる。マイコン1は、携帯機30の存在を確認すると、引き続き携帯機30の認証に用いる情報である情報#3および電力測定に用いる電力測定用信号#1,#2を送信する。図5は、情報#3の構成例を示す図である。情報#3は。WakeUP信号と認証情報の送信を促す制御情報とを含み、一般的にチャレンジデータと表現される特定の情報が付加される。なお、この情報#3に宛先を示すIDも含めて送信してもよい。
【0022】
図2に示すように、電力測定用信号#1と電力測定用信号#2はあらかじめ定められた順序で異なるUHFアンテナから送信される。図2の例では、はじめにUHFアンテナ5Aから電力測定用信号#1を送信し、次にUHFアンテナ5Bから電力測定用信号#2を送信している。電力測定用信号の送信順は、これに限定されず、UHFアンテナ5B、UHFアンテナ5Aの順に送信するようにしてもよい。マイコン1は、図2に示すように、時分割で電力測定用信号#1,電力測定用信号#2がそれぞれUHFアンテナ5A,UHFアンテナ5Bから送信されるようSW4に制御信号を入力する。ここでは、アンテナ数が2の例を示すが、3以上のアンテナ数の場合同様に各アンテナから時分割でそれぞれ異なるタイミングで電力測定用信号を送信する。
【0023】
携帯機30では、UHFアンテナ6A、SW7、UHF高周波部8およびUHF変復調部9経由で、マイコン10が情報#3を受信する。マイコン10は、情報#3に基づいて認証の開始を行うと判断し、UHFアンテナ6A,6Bを所定の時間ごとに切り替えるようSW7を制御する。所定の時間は、電力測定用信号#1の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ6A,6Bでそれぞれ受信し、電力測定用信号#2の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ6A,6Bでそれぞれ受信できるように設定する。図2の例では、電力測定用信号#1,#2の受信時間帯でそれぞれ1回ずつUHFアンテナ6A,6Bで受信するようにしているが、2回ずつ等としてもよいし受信するアンテナの順番もこれに限定されない。また、マイコン10が、電力測定用信号#1、#2の受信時間帯を検知するには、例えば、電力測定用信号#1の送信開始時刻および終了時刻(情報#3の送信開始時刻を基準にした)と電力測定用信号#2の送信開始時刻および終了時刻とをあらかじめ定めておくようにしてもよいし、情報#3のなかに電力測定用信号#1、#2の送信開始時刻および終了時刻を含めるようにしてもよい。
【0024】
携帯機30では、受信電力測定部11が、送信アンテナ(UHFアンテナ5A,5B)と受信アンテナ(UHFアンテナ6A,6B)の組み合わせごとに、UHF高周波部8経由で入力される受信信号の受信電力の測定を行い、測定結果を受信電力値としてマイコン10に入力する。図2の例では、2(送信アンテナ数)×2(受信アンテナ数)=4通りの組み合わせがある。マイコン10は、各送受信アンテナの組合せごとの受信電力値と認証情報とを含む送信情報を情報#4として生成する。情報#4は、UHF変復調部9、UHF高周波部8、SW7、アンテナ6A経由で車載機20に向けて送信される。
【0025】
図6は、情報#4の構成例を示す図である。情報#4は、同期信号と、認証情報と、受信電力値情報と、で構成される。なお、認証情報は、一般的にはチャレンジデータを携帯機固有の秘密キーで暗号化したデータ列であるが、これに限定されない。
【0026】
車載機20では、UHFアンテナ5A、SW4、UHF高周波部3およびUHF変復調部2経由で、マイコン1が情報#4を受信する。マイコン1は、情報#4に含まれる認証情報に基づいて送信元の携帯機30が正しいもの(車載機20を経由した操作が許可された携帯機であるか)であることを確認する。また、マイコン1は、携帯機30が正しいものである場合、情報#4に含まれる受信電力値情報に基づいて、送受信アンテナごとの受信電力値の平均値、または最大値等を用いて選択または合成処理を行い車載機−携帯機間の距離を算出し、算出した距離が一定距離以内であれば各種の操作(ドアのアンロック、主電源投入・エンジンスタート(主として2輪車)など)を許可する。操作の種別により、許可を判定する一定距離を変更してもよい。マイコン1は、このように、距離に応じた機能制限状態の変更を行う。車載機−携帯機間の距離の算出方法は、例えば、複数の送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力に基づいて電波状況の優れたアンテナの信号を優先的に用いたり、受信した信号を合成してノイズを除去したりする等の方法があり、フェージングやマルチパスによる影響を低減できる方法であればどのような方法を用いてもよい。
【0027】
なお、本実施の形態の認証方法に制約はなく、どのような認証方法を用いてもよい。このため、認証の手順と認証に用いる情報は、上述した例に限定されない。また、本実施の形態では、情報#4として認証情報とともに受信電力値情報を送信するようにしたが、認証情報と受信電力値情報を別の情報として送信するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施の形態ではUHFアンテナをそれぞれ二重化し、RFスイッチで切り替える形態としたが、UHF高周波部とUHF変復調部のうち1つ以上を含めて二重化して、UHF高周波部とUHF変復調部のうち1つ以上を含めて切り替える構成としても良い。また、車載機20側のUHFアンテナ数が2本以上であればよく、車載機20と携帯機30で異なる本数であってもよい。
【0029】
また、低消費電力化のためのポーリングなどを実施する場合には、図3,5に示したフレームフォーマットにおけるWakeUp信号の前後にキャリアなどが付加される場合がある。また、図3〜6に記載した各情報のフレームフォーマットは一例であり、内部のデータの順序などは前後してもよく、また図3〜6に記載した以外の情報を含んでいてもよい。
【0030】
なお、UHFアンテナおよび送受信のための各構成部(SW、UHF高周波部、UHF変復調部)が共用できれば、必ずしも送受信で完全に同一の周波数を用いる必要はない。たとえば、車載機20から携帯機30への通信と、携帯機30から車載機20への通信と、に同一の周波数帯で近傍の(周波数の差が所定の範囲内)異なるチャネルを割り当てても良い。また、ここでは、UHF帯を用いた通信を例に説明したが、通信に用いる周波数帯はUHF帯に限定されない。
【0031】
以上のように、本実施の形態では、複数の送受信アンテナを用いて携帯機30が、車載機20−携帯機30間の受信電力測定を実施し、車載機20がこの受信電力測定結果を用いて携帯機30との距離を算出するようにした。このため、磁界結合(LF通信)を用いること無く単一周波数帯の送受信機構成で、フェージングやマルチパスによる電力変動を抑圧することができ高精度な携帯機30の位置検知を実現することができる。また、携帯機側から送信アンテナを切り替えながら信号を定期送信する必要がないため、携帯機30の電池寿命を長くすることができる。
【0032】
実施の形態2.
図7は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態2の送受信動作例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムの構成は、実施の形態1と同様である。
【0033】
実施の形態1では、車載機20は、携帯機30の存在確認のための信号(情報#1)と、認証用の情報(情報#3)および電力測定用信号と、の計2回の送信を行う。一方、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses) STD−T93に代表される非ライセンスバンドを用いる通信方式では、送信の最小時間間隔が指定されている規格が多い。たとえば、ARIB STD−T93では送信間隔は10秒以上とすることが規定されている。このような通信方式を用いる場合、実施の形態1の情報#1の送信から、情報#3および電力測定用信号#1,電力測定用信号#2の送信までには10秒以上の時間がかかることになり、スマートエントリシステムの反応時間が長くなるという問題が生じる。本実施の形態では、送信回数を減らすことにより、特定小電力無線局の規格を利用する場合に反応時間を低減する。
【0034】
図7に示すように、本実施の形態では、車載機20は、WakeUP信号に続き、情報#5と電力測定用信号#1,電力測定用信号#2を携帯機30へ送信する。図8は、本実施の形態の情報#5の構成例を示す図である。情報#5は、呼び出し命令、宛先を示すIDおよびチャレンジデータ(認証処理に用いる情報)を含む。このように、本実施の形態では、WakeUP信号、情報#5および電力測定用信号#1,#2を1回の送信により送信する。1回の送信とは、通信に使用する規格(例えばARIB STD−T93)で一連の通信と規定される単位であり、必ずしも送信時間内全てにおいて送信電力を有する必要はなく、無信号区間を含んでも良い。
【0035】
携帯機30では、WakeUP信号に基づいて受信回路を起動した後、WakeUP信号に連続して受信される情報#5に基づいて自局宛呼び出しであることを確認し、実施の形態1と同様に電力測定用信号区間を用いて各送受信アンテナの組合せにおける受信信号の受信電力を測定する。その後、携帯機30は測定結果である送受信アンテナの組合せごとの受信電力情報および認証情報を含む情報#6を車載機20に返信する。情報#6は、図6に示した情報#4と同様でよい。車載機20は、情報#6を受信することにより携帯機30の存在を確認することができるとともに認証情報および受信電力値情報を得ることができる。このように、認証情報を1回の返信で認証まで済ませることができるため、反応時間の短縮や携帯機30の消費電力の低減の効果も期待できる。
【0036】
そして、車載機20のマイコン1が、実施の形態1と同様に情報#6に含まれる受信電力値情報に基づいて車載機−携帯機間の距離を算出し、一定距離以内であれば各種の操作(ドアのアンロック、主電源投入・エンジンスタート(主として2輪車)など)を許可する。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。
【0037】
以上のように、本実施の形態では、車載機20が、呼び出し命令の送信時に、呼び出し命令とともに認証処理に用いる情報および電力測定用信号を1回の送信で送信するようにした。このため、送信間隔に制限がある通信規格を用いる場合でも、反応時間を増大させることなく実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0038】
実施の形態3.
図9は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態3の構成例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムは、車載機20aと実施の形態1と同様の構成の携帯機30とで構成される。車載機20aは、実施の形態1の車載機20に受信電力測定部12を追加する以外は、実施の形態1の車載機20と同様である。受信電力測定部12は、UHF高周波部3から入力される受信信号の受信電力を測定する。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0039】
実施の形態1および2では、車載機20の複数のUHFアンテナから携帯機30へ送信される信号を用いて電力測定を行い、測定結果を合成して距離を算出した。本実施の形態では、さらに、携帯機30から車載機20aへの信号の受信電力を活用して電力測定精度を向上させる。
【0040】
図10は、本実施の形態の送受信動作例を示す図である。車載機20aからのWakeUP信号送信から、携帯機30が電力測定用信号#1,#2を受信して受信電力を測定して、情報#6を送信するまでの動作は実施の形態2と同様である。なお、ここまでの動作を、実施の形態1と同様の動作としてもよい。
【0041】
次に、本実施の形態では携帯20aでの電力測定に加え、車載機20での電力測定を行う。具体的には、携帯機30のマイコン10は、情報#6の生成に続いて電力測定に用いる電力測定用信号#3,#4を送信情報として生成し、UHF変復調部9、UHF高周波部8、SW7およびUHFアンテナ6A,6Bを経由で車載機20へ送信する。マイコン10は、電力測定用信号#3,#4は、異なるアンテナで送信するようSW7を制御する。ここでは、電力測定用信号#3をUHFアンテナ6Aから送信し、電力測定用信号#4をUHFアンテナ6Bから送信するとする。
【0042】
車載機20では、マイコン1が、UHFアンテナ5A、SW4、UHF高周波部3およびUHF変復調部2経由で情報#6を受信すると、情報#6に含まれる認証情報に基づいて送信元の携帯機30が正しいもの(車載機20を経由した操作が許可された携帯機であるか)であることを確認する。また、マイコン1は、携帯機30が正しいものである場合、マイコン1は、UHFアンテナ5A,5Bを所定の時間ごとに切り替えるようSW4を制御する。所定の時間は、電力測定用信号#3の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ5A,5Bでそれぞれ受信し、電力測定用信号#4の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ5A,5Bでそれぞれ受信できるように設定する。受信電力測定部12は、送受信アンテナの組み合わせごとの受信信号の受信電力を測定する。
【0043】
そして、マイコン1は、情報#6に含まれる受信電力値情報と、受信電力測定部12が測定した送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力と、に基づいて、選択または合成処理を行い、車載機20−携帯機30間の距離を算出し、一定距離以内であれば各種の操作(ドアのアンロック、主電源投入・エンジンスタート(主として2輪車)など)を許可する。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1または2と同様である。
【0044】
なお、携帯機20からの電力測定用信号の送信は、必ずしもすべてのUHFアンテナから行う必要はなく、例えば携帯機20における受信電力値の大きいUHFアンテナだけから送信するなど、一部のUHFアンテナから送信するようにしてもよい。
【0045】
このように、本実施の形態では、携帯機30における受信電力に加えて車載機20における受信電力を用いて車載機20−携帯機30間の距離を算出するようにした。このため、実施の形態1,2に比べフェージングによる電力変動の抑圧効果が大きくなり,距離測定精度が向上する。
【0046】
実施の形態4.
図11は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態4の送受信動作例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムの構成は、実施の形態1と同様である。
【0047】
実施の形態2および3では、送信頻度に制限のある通信規格の使用も考慮し、送信回数を抑えるようにしている。送信頻度に制限がある場合、通信に失敗したときの再送も制限される。そこで、本実施の形態では1回の送信で同じデータを重複して送信することにより通信性能を向上させる。
【0048】
図11に示すように、受信電力を測定するまでの動作は、実施の形態2と同様であるが、車載機20は、情報#5を送信する際に、情報#5をUHFアンテナ5AとUHFアンテナ5Bから1回ずつ連続して送信する。携帯機30は、情報#5を2回受信する。この際、1回目の情報#5の受信と2回目の情報#5の受信とで受信に用いるUHFアンテナを変えていいし、変えなくてもよい。図11は、受信に用いるUHFアンテナを変える例を示している。携帯機30はCRCなどを用いて正しく受信できたと判定された信号を使用することができる。
【0049】
また、受信電力の測定の後、携帯機30は、情報#6を送信するが、本実施の形態では、情報#6をUHFアンテナ6AとUHFアンテナ6Bから1回ずつ連続して送信する。すなわち同じ情報をアンテナを変えて複数回送信する。なお、ここでは、UHFアンテナ5AとUHFアンテナ5B(またはUHFアンテナ6AとUHFアンテナ6B)から1回ずつ連続して送信しているが、連続して各アンテナから2回以上送信してもよい。車載機20は、CRCなどを用いて正しく受信できたと判定された信号を使用することができる。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態2と同様である。
【0050】
なお、このとき、通信路の状態などによって情報#6の複数回送信はしないという選択もできる。この場合は、情報#5の制御情報にそれを伝える信号を入れるようにしてもよい。また、複数回送信を情報#5と情報#6のうちのいずれか一方みとするとシステムで定めておくようにすることも可能である。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、同じ情報を1回の送信で重複して送信するようにした。これにより、実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、再送なしに通信性能を向上させることができる。
【0052】
なお、ここではアンテナ数の回数だけ送信する例を説明したが、アンテナ数が多い場合には、送信回数が2回以上となるように一部のアンテナからのみ同じデータを送信することもできる。
【0053】
また、ここでは実施の形態2の例を基本としてデータを重複して送信する例を説明したが、実施の形態3で述べた車載機20側でも受信電力を測定する場合に上記と同様にデータを重複して送信するようにしてもよい。図12は、車載機20側でも受信電力を測定する場合にデータを重複送信する場合の送受信動作の一例を示す図である。
【0054】
実施の形態5.
図13は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態5の送受信動作例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムの構成は、実施の形態3と同様である。
【0055】
実施の形態2から4では、送信すべき情報(情報#5、情報#6)と電力測定のための信号(電力測定用信号)を別に送信していたが、変調方式などによっては、情報を送信する信号を用いても電力測定が可能である。本実施の形態では、情報を送信する信号を用いて受信電力の測定を行う。
【0056】
図13に示すように、車載機20aは、実施の形態2と同様の情報#5を送信する。本実施の形態では、情報#5を、UHFアンテナ5A,5Bのそれぞれから連続して送信するが、この際、同じ情報#5を1つのアンテナからそれぞれ2回以上送信する。携帯機30は、情報#5の受信処理と情報#5を含む受信信号の受信電力の測定を並行して実施する。情報#5の受信処理の際は、CRCなどを用いて正しく受信できたと判定された信号を使用する。この際、携帯機30は、1回目と2回目の情報#5の受信の間ではアンテナを切り替えず、2回目と3回目の情報#5の受信の間でUHFアンテナ6AをUHFアンテナ6Bへ切り替え、3回目と4回目の情報#5の受信の間ではアンテナを切り替えないようにしてもよい。このようにすると、送受信アンテナの全ての組み合わせで受信電力を測定できる。
【0057】
また、携帯機30から送信する情報#6もUHFアンテナ6A,6Bから同じデータを送信し、車載機20aで受信処理と信号の電力測定を並行して実施する。なお、図13では、情報#6は、UHFアンテナ6A,6Bから1回ずつ送信しているが2回以上ずつ送信するようにしてもよい。マイコン1は、第3の実施の形態と同様に、携帯機30における受信電力に加えて車載機20における受信電力を用いて車載機20−携帯機30間の距離を算出する。
【0058】
なお、車載機20aで受信電力を測定しない場合に、本実施の形態と同様に、情報#5を送信する信号を用いて携帯機30が受信電力を測定してもよいし、実施の形態1の動作を行う場合に、情報#1または情報#3を送信する信号を用いて携帯機30が受信電力を測定してもよい。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、送信アンテナを変えて、同じ情報を重複して送信し、情報を受信した携帯機30,車載機20aは、情報を含む受信信号を用いて受信電力を測定するようにした。このため、同じ情報を複数回送信することにより再送なしに通信性能を向上させることができ、かつ同時に電力測定も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかるキーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法は、車両のドアのアンロック等の操作を行うキーレスエントリシステムに有用であり、特に、低コスト化を図るキーレスエントリシステムに適している。
【符号の説明】
【0061】
1,10 マイコン
2,9 UHF変復調部
3,8 UHF高周波部
4,7 SW
11,12 受信電力測定部
5A,5B,6A,6B UHFアンテナ
20 車載機
30 携帯機
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号によりユーザの携帯するキーの認証を行い、車両に手を触れる(あるいはユーザの意思を示す何らかの行為)により、キーを取りだすことなく車両ドアのロック/アンロック,エンジンスタートなどを行うキーレスエントリ装置の普及が進んでいる。
【0003】
キーレスエントリ装置は、一般に車両とユーザの距離に応じてドアのアンロックを許可するか否かの判断をするため、車両からキー(以下、携帯機という)までの距離を測定する機能を有する。従来のキーレスエントリ装置では、距離とともに電磁界強度が急激(距離の3乗に比例)に減衰する近傍界通信(あるいは電磁誘導,磁界結合,誘導電波による通信などと表記される)を用いて、強度測定,距離算出を行っていた。例えば、下記特許文献1に記載のシステムでは、車載機から125kHzの長波帯(LF(Low Frequency)帯)信号を送信し、携帯機が、この信号を受信して受信電力を計測し、312MHzの極超短波帯(UHF(Ultra High Frequency)帯)の信号を用いて車載機へ受信電力情報を返信する。そして、車載機が、携帯機から受信した受信電力情報に基づいて携帯機までの距離を算出する。
【0004】
また、複数の送信アンテナを用いてフェージングやマルチパスによる電力強度変動を抑圧し、距離測定精度の改善を行う方法が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。この文献には、キーレスエントリ装置を想定したものではないが、携帯電話の意図しない動作を抑制することを目的として、携帯電話本体とペアになったワイヤレスキー装置とが近くにない場合に本体側装置の機能を制限する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−319846号公報
【特許文献2】特許第4079196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示された従来のキーレスエントリ装置は、車載機から携帯機への通信と携帯機から車載機への通信とで異なる周波数を用いる。このため、アンテナや高周波回路が2種類必要となるという問題点があった。特に、LF帯は周波数が低いため、アンテナが大型化・複雑化し、生産コストが高くなるという問題があった。なお、従来のキーレスエントリ装置においてLF帯を用いている理由は、波長が短いとフェージング/マルチパスの影響により携帯機の位置測定(距離算出)が高精度にできないためである。
【0007】
上記特許文献2で示されたダイバーシチ技術はフェージングの影響抑圧に有効である。しかしながら、上記特許文献2で示された方法をキーレスエントリ装置に適用した場合、携帯機側から送信アンテナを切り替えながら信号を定期送信し、本体側で受信および距離算出の処理を行う。このため、携帯機の電池寿命が短くなる、という問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストでかつ携帯機の電池寿命を長くすることができるキーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、車両に搭載される車載機と、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と、で構成されるキーレスエントリシステムであって、前記車載機は、2本以上の第1のアンテナと、前記2本以上の第1のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する第1の送信部と、を備え、前記携帯機は、1本以上の第2のアンテナと、受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定部と、前記受信電力を前記車載機へ送信する第2の送信部と、を備え、前記車載機は、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストでかつ携帯機の電池寿命を長くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1のキーレスエントリシステムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、本実施の形態1の送受信および動作の手順の一例を示す図である。
【図3】図3は、情報#1の構成例を示す図である。
【図4】図4は、情報#2の構成例を示す図である。
【図5】図5は、情報#3の構成例を示す図である。
【図6】図6は、情報#4の構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態2のキーレスエントリシステムの送受信動作例を示す図である。
【図8】図8は、情報#5の構成例を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態3のキーレスエントリシステムの構成例を示す図である。
【図10】図10は、実施の形態3の送受信動作例を示す図である。
【図11】図11は、実施の形態4のキーレスエントリシステムの送受信動作例を示す図である。
【図12】図12は、車載機側でも受信電力を測定する場合にデータを重複送信する場合の送受信動作の一例を示す図である。
【図13】図13は、実施の形態5のキーレスエントリシステムの送受信動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるキーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態1の構成例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムは、車載機(キーレスエントリ装置)20と携帯機30とで構成される。車載機20は、自動車等の車両等に搭載され、携帯機30は、例えば車両のキー等であり、キーレスエントリシステムの利用者が車両から離れる場合に利用者により携帯される。そして、車載機20が携帯機30を認証すると、携帯機30と車載機20との距離に応じて車両のドアのロック/アンロック、エンジンスタート等の操作を行う。
【0014】
図1に示すように、車載機20は、車載機20側で信号処理を行うマイコン(信号処理部)1と、マイコン1により生成された送信情報を変調して送信信号を生成し、また、受信信号を復調して受信情報を生成するUHF変復調部2と、送信信号を高周波信号に変換(アップコンバート)し、また、受信した高周波信号を受信信号に変換(ダウンコンバート)するUHF高周波部3と、UHFアンテナ(第1のアンテナ)5A,5Bと、マイコン1からの制御信号に基づいて送受信を行うUHFアンテナ(第2のアンテナ)5A,5Bを切り替えるRF(Radio Frequency)スイッチ(SW)4と、を備える。マイコン1、UHF変復調部2およびUHF高周波部3は、送信処理を行う送信回路(第1の送信部)としての機能と、受信処理を行う受信回路(第1の受信部)としての機能と、を有する。
【0015】
携帯機30は、携帯機30側で信号処理を行うマイコン(信号処理部)10と、マイコン10により生成された送信情報を変調して送信信号を生成し、また、受信信号を復調して受信情報を生成するUHF変復調部9と、送信信号を高周波信号に変換し、また、受信した高周波信号を受信信号に変換するUHF高周波部8と、UHFアンテナ6A,6Bと、マイコン10からの制御信号に基づいて送受信を行うUHFアンテナ6A,6Bを切り替えるRFスイッチ(SW)7と、受信信号の電力値を測定し電力情報を生成する受信電力測定部11と、を備える。マイコン10、UHF変復調部9およびUHF高周波部8は、送信処理を行う送信回路(第2の送信部)としての機能と、受信処理を行う受信回路(第2の受信部)としての機能と、を有する。また、UHFアンテナ6A,6Bを偏波アンテナとしてもよい。偏波アンテナとする場合には、携帯機の向き(偏波面との関係)による受信電力変動が抑圧できるため、より高精度な距離測定が実現できる。
【0016】
図2は、本実施の形態の車載機20,携帯機30における、送受信および動作の手順の一例を示す図である。図1、図2を用いて、本実施の形態の動作について説明する。初期状態では、車載機20のSW4は、送受信に用いるアンテナとしてUHFアンテナ5Aを選択し、携帯機30のSW7は、送受信に用いるアンテナとしてUHFアンテナ6Aを選択しているとする。初期状態でSW4、SW7がそれぞれ選択しているアンテナはこれに限定されない。
【0017】
図2に示すように、車載機20は、携帯機30との距離の算出を行う場合、まずマイコン1がWakeUP信号および情報#1を含む送信情報を生成する。この送信情報は、UHF変復調部2、UHF高周波部3、SW4およびUHFアンテナ5A経由で送信される。WakeUP信号は、送信を開始することを示す信号であり、宛先を示す情報が含まれている。車載機20は、あらかじめ登録されている自機との接続が許可されている携帯機30を宛先としてWakeUP信号を送信する。
【0018】
携帯機30では、図示しないWakeUP信号を処理する処理部が、アンテナ6A経由で受信した受信信号に含まれるWakeUP信号に基づき、当該信号が自局あて信号であることを確認する(車載機20との間の既知信号である)と、受信回路(UHF高周波部8、UHF変復調部9およびマイコン10)を起動する。受信回路の起動後、UHF高周波部8は、車載機20からの受信信号を低周波数帯へダウンコンバートし、UHF変復調部9がこの受信信号を復調して受信情報をマイコン10に入力する。なお、ここでは、WakeUP信号に基づいて自局宛の信号であるか否か判断する例を説明したが、自局宛の信号であるか否かを判断せずWakeUP信号の電力を検知する(例えば、WakeUP信号の周波数帯で受信した電力が所定値以上になると)ことにより受信回路を起動するようにしてもよい。
【0019】
情報#1には車載機20からの呼び出し命令(呼び出し対象を指定する情報も含む)が含まれている。図3は、情報#1の構成例を示す図である。図3に示すように、情報#1は、WakeUP信号と、宛先(呼び出し対象)を示すID(Identifier)などと、呼び出し命令を含む制御情報と、で構成される。なお、情報#1に含まれるWakeUP信号と図2で説明したWakeUP信号は同じでもよいし異なっていてもよい。また、図2で説明したWakeUP信号は送信せずに情報#1内のWakeUP信号を用いるようにしてもよい。宛先を示すIDとしては、例えば携帯機30またはキーレスエントリシステムを識別するID等を用いることができる。情報#1には、さらにCRC(Cyclic Redundancy Check)などの情報伝達の確認情報も付加されることがある。
【0020】
携帯機30のマイコン10は、UHF変復調部9から入力される受信情報である情報#1に基づいて、自局が呼び出し対象である場合に当該呼び出し命令に対する応答信号を含む情報#2を送信情報として生成する。そして、情報#2は、UHF変復調部9、UHF高周波部8、SW7、アンテナ6A経由で車載機20に向けて送信される。図4は、情報#2の構成例を示す図である。情報#2は、同期信号と、応答信号と、で構成される。応答信号には、どの呼び出し命令に対する応答かを示すID等を含むようにしてもよい。また、携帯機が複数存在するキーレスエントリシステムの場合には、応答信号に送信元の携帯機の番号などを含める、または携帯機ごとに応答信号を送信するタイミングを変更する等により、車載機20に対してどのキー(携帯機)が応答しているかを伝えるようにしてもよい。
【0021】
車載機20では、UHFアンテナ5A、SW4、UHF高周波部3およびUHF変復調部2により、情報#2を受信,復調し、マイコン1は情報#2に含まれる応答信号に基づいて、携帯機30の存在を確認できる。マイコン1は、携帯機30の存在を確認すると、引き続き携帯機30の認証に用いる情報である情報#3および電力測定に用いる電力測定用信号#1,#2を送信する。図5は、情報#3の構成例を示す図である。情報#3は。WakeUP信号と認証情報の送信を促す制御情報とを含み、一般的にチャレンジデータと表現される特定の情報が付加される。なお、この情報#3に宛先を示すIDも含めて送信してもよい。
【0022】
図2に示すように、電力測定用信号#1と電力測定用信号#2はあらかじめ定められた順序で異なるUHFアンテナから送信される。図2の例では、はじめにUHFアンテナ5Aから電力測定用信号#1を送信し、次にUHFアンテナ5Bから電力測定用信号#2を送信している。電力測定用信号の送信順は、これに限定されず、UHFアンテナ5B、UHFアンテナ5Aの順に送信するようにしてもよい。マイコン1は、図2に示すように、時分割で電力測定用信号#1,電力測定用信号#2がそれぞれUHFアンテナ5A,UHFアンテナ5Bから送信されるようSW4に制御信号を入力する。ここでは、アンテナ数が2の例を示すが、3以上のアンテナ数の場合同様に各アンテナから時分割でそれぞれ異なるタイミングで電力測定用信号を送信する。
【0023】
携帯機30では、UHFアンテナ6A、SW7、UHF高周波部8およびUHF変復調部9経由で、マイコン10が情報#3を受信する。マイコン10は、情報#3に基づいて認証の開始を行うと判断し、UHFアンテナ6A,6Bを所定の時間ごとに切り替えるようSW7を制御する。所定の時間は、電力測定用信号#1の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ6A,6Bでそれぞれ受信し、電力測定用信号#2の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ6A,6Bでそれぞれ受信できるように設定する。図2の例では、電力測定用信号#1,#2の受信時間帯でそれぞれ1回ずつUHFアンテナ6A,6Bで受信するようにしているが、2回ずつ等としてもよいし受信するアンテナの順番もこれに限定されない。また、マイコン10が、電力測定用信号#1、#2の受信時間帯を検知するには、例えば、電力測定用信号#1の送信開始時刻および終了時刻(情報#3の送信開始時刻を基準にした)と電力測定用信号#2の送信開始時刻および終了時刻とをあらかじめ定めておくようにしてもよいし、情報#3のなかに電力測定用信号#1、#2の送信開始時刻および終了時刻を含めるようにしてもよい。
【0024】
携帯機30では、受信電力測定部11が、送信アンテナ(UHFアンテナ5A,5B)と受信アンテナ(UHFアンテナ6A,6B)の組み合わせごとに、UHF高周波部8経由で入力される受信信号の受信電力の測定を行い、測定結果を受信電力値としてマイコン10に入力する。図2の例では、2(送信アンテナ数)×2(受信アンテナ数)=4通りの組み合わせがある。マイコン10は、各送受信アンテナの組合せごとの受信電力値と認証情報とを含む送信情報を情報#4として生成する。情報#4は、UHF変復調部9、UHF高周波部8、SW7、アンテナ6A経由で車載機20に向けて送信される。
【0025】
図6は、情報#4の構成例を示す図である。情報#4は、同期信号と、認証情報と、受信電力値情報と、で構成される。なお、認証情報は、一般的にはチャレンジデータを携帯機固有の秘密キーで暗号化したデータ列であるが、これに限定されない。
【0026】
車載機20では、UHFアンテナ5A、SW4、UHF高周波部3およびUHF変復調部2経由で、マイコン1が情報#4を受信する。マイコン1は、情報#4に含まれる認証情報に基づいて送信元の携帯機30が正しいもの(車載機20を経由した操作が許可された携帯機であるか)であることを確認する。また、マイコン1は、携帯機30が正しいものである場合、情報#4に含まれる受信電力値情報に基づいて、送受信アンテナごとの受信電力値の平均値、または最大値等を用いて選択または合成処理を行い車載機−携帯機間の距離を算出し、算出した距離が一定距離以内であれば各種の操作(ドアのアンロック、主電源投入・エンジンスタート(主として2輪車)など)を許可する。操作の種別により、許可を判定する一定距離を変更してもよい。マイコン1は、このように、距離に応じた機能制限状態の変更を行う。車載機−携帯機間の距離の算出方法は、例えば、複数の送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力に基づいて電波状況の優れたアンテナの信号を優先的に用いたり、受信した信号を合成してノイズを除去したりする等の方法があり、フェージングやマルチパスによる影響を低減できる方法であればどのような方法を用いてもよい。
【0027】
なお、本実施の形態の認証方法に制約はなく、どのような認証方法を用いてもよい。このため、認証の手順と認証に用いる情報は、上述した例に限定されない。また、本実施の形態では、情報#4として認証情報とともに受信電力値情報を送信するようにしたが、認証情報と受信電力値情報を別の情報として送信するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施の形態ではUHFアンテナをそれぞれ二重化し、RFスイッチで切り替える形態としたが、UHF高周波部とUHF変復調部のうち1つ以上を含めて二重化して、UHF高周波部とUHF変復調部のうち1つ以上を含めて切り替える構成としても良い。また、車載機20側のUHFアンテナ数が2本以上であればよく、車載機20と携帯機30で異なる本数であってもよい。
【0029】
また、低消費電力化のためのポーリングなどを実施する場合には、図3,5に示したフレームフォーマットにおけるWakeUp信号の前後にキャリアなどが付加される場合がある。また、図3〜6に記載した各情報のフレームフォーマットは一例であり、内部のデータの順序などは前後してもよく、また図3〜6に記載した以外の情報を含んでいてもよい。
【0030】
なお、UHFアンテナおよび送受信のための各構成部(SW、UHF高周波部、UHF変復調部)が共用できれば、必ずしも送受信で完全に同一の周波数を用いる必要はない。たとえば、車載機20から携帯機30への通信と、携帯機30から車載機20への通信と、に同一の周波数帯で近傍の(周波数の差が所定の範囲内)異なるチャネルを割り当てても良い。また、ここでは、UHF帯を用いた通信を例に説明したが、通信に用いる周波数帯はUHF帯に限定されない。
【0031】
以上のように、本実施の形態では、複数の送受信アンテナを用いて携帯機30が、車載機20−携帯機30間の受信電力測定を実施し、車載機20がこの受信電力測定結果を用いて携帯機30との距離を算出するようにした。このため、磁界結合(LF通信)を用いること無く単一周波数帯の送受信機構成で、フェージングやマルチパスによる電力変動を抑圧することができ高精度な携帯機30の位置検知を実現することができる。また、携帯機側から送信アンテナを切り替えながら信号を定期送信する必要がないため、携帯機30の電池寿命を長くすることができる。
【0032】
実施の形態2.
図7は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態2の送受信動作例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムの構成は、実施の形態1と同様である。
【0033】
実施の形態1では、車載機20は、携帯機30の存在確認のための信号(情報#1)と、認証用の情報(情報#3)および電力測定用信号と、の計2回の送信を行う。一方、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses) STD−T93に代表される非ライセンスバンドを用いる通信方式では、送信の最小時間間隔が指定されている規格が多い。たとえば、ARIB STD−T93では送信間隔は10秒以上とすることが規定されている。このような通信方式を用いる場合、実施の形態1の情報#1の送信から、情報#3および電力測定用信号#1,電力測定用信号#2の送信までには10秒以上の時間がかかることになり、スマートエントリシステムの反応時間が長くなるという問題が生じる。本実施の形態では、送信回数を減らすことにより、特定小電力無線局の規格を利用する場合に反応時間を低減する。
【0034】
図7に示すように、本実施の形態では、車載機20は、WakeUP信号に続き、情報#5と電力測定用信号#1,電力測定用信号#2を携帯機30へ送信する。図8は、本実施の形態の情報#5の構成例を示す図である。情報#5は、呼び出し命令、宛先を示すIDおよびチャレンジデータ(認証処理に用いる情報)を含む。このように、本実施の形態では、WakeUP信号、情報#5および電力測定用信号#1,#2を1回の送信により送信する。1回の送信とは、通信に使用する規格(例えばARIB STD−T93)で一連の通信と規定される単位であり、必ずしも送信時間内全てにおいて送信電力を有する必要はなく、無信号区間を含んでも良い。
【0035】
携帯機30では、WakeUP信号に基づいて受信回路を起動した後、WakeUP信号に連続して受信される情報#5に基づいて自局宛呼び出しであることを確認し、実施の形態1と同様に電力測定用信号区間を用いて各送受信アンテナの組合せにおける受信信号の受信電力を測定する。その後、携帯機30は測定結果である送受信アンテナの組合せごとの受信電力情報および認証情報を含む情報#6を車載機20に返信する。情報#6は、図6に示した情報#4と同様でよい。車載機20は、情報#6を受信することにより携帯機30の存在を確認することができるとともに認証情報および受信電力値情報を得ることができる。このように、認証情報を1回の返信で認証まで済ませることができるため、反応時間の短縮や携帯機30の消費電力の低減の効果も期待できる。
【0036】
そして、車載機20のマイコン1が、実施の形態1と同様に情報#6に含まれる受信電力値情報に基づいて車載機−携帯機間の距離を算出し、一定距離以内であれば各種の操作(ドアのアンロック、主電源投入・エンジンスタート(主として2輪車)など)を許可する。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。
【0037】
以上のように、本実施の形態では、車載機20が、呼び出し命令の送信時に、呼び出し命令とともに認証処理に用いる情報および電力測定用信号を1回の送信で送信するようにした。このため、送信間隔に制限がある通信規格を用いる場合でも、反応時間を増大させることなく実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0038】
実施の形態3.
図9は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態3の構成例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムは、車載機20aと実施の形態1と同様の構成の携帯機30とで構成される。車載機20aは、実施の形態1の車載機20に受信電力測定部12を追加する以外は、実施の形態1の車載機20と同様である。受信電力測定部12は、UHF高周波部3から入力される受信信号の受信電力を測定する。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0039】
実施の形態1および2では、車載機20の複数のUHFアンテナから携帯機30へ送信される信号を用いて電力測定を行い、測定結果を合成して距離を算出した。本実施の形態では、さらに、携帯機30から車載機20aへの信号の受信電力を活用して電力測定精度を向上させる。
【0040】
図10は、本実施の形態の送受信動作例を示す図である。車載機20aからのWakeUP信号送信から、携帯機30が電力測定用信号#1,#2を受信して受信電力を測定して、情報#6を送信するまでの動作は実施の形態2と同様である。なお、ここまでの動作を、実施の形態1と同様の動作としてもよい。
【0041】
次に、本実施の形態では携帯20aでの電力測定に加え、車載機20での電力測定を行う。具体的には、携帯機30のマイコン10は、情報#6の生成に続いて電力測定に用いる電力測定用信号#3,#4を送信情報として生成し、UHF変復調部9、UHF高周波部8、SW7およびUHFアンテナ6A,6Bを経由で車載機20へ送信する。マイコン10は、電力測定用信号#3,#4は、異なるアンテナで送信するようSW7を制御する。ここでは、電力測定用信号#3をUHFアンテナ6Aから送信し、電力測定用信号#4をUHFアンテナ6Bから送信するとする。
【0042】
車載機20では、マイコン1が、UHFアンテナ5A、SW4、UHF高周波部3およびUHF変復調部2経由で情報#6を受信すると、情報#6に含まれる認証情報に基づいて送信元の携帯機30が正しいもの(車載機20を経由した操作が許可された携帯機であるか)であることを確認する。また、マイコン1は、携帯機30が正しいものである場合、マイコン1は、UHFアンテナ5A,5Bを所定の時間ごとに切り替えるようSW4を制御する。所定の時間は、電力測定用信号#3の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ5A,5Bでそれぞれ受信し、電力測定用信号#4の受信時間帯で少なくとも1回ずつUHFアンテナ5A,5Bでそれぞれ受信できるように設定する。受信電力測定部12は、送受信アンテナの組み合わせごとの受信信号の受信電力を測定する。
【0043】
そして、マイコン1は、情報#6に含まれる受信電力値情報と、受信電力測定部12が測定した送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力と、に基づいて、選択または合成処理を行い、車載機20−携帯機30間の距離を算出し、一定距離以内であれば各種の操作(ドアのアンロック、主電源投入・エンジンスタート(主として2輪車)など)を許可する。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1または2と同様である。
【0044】
なお、携帯機20からの電力測定用信号の送信は、必ずしもすべてのUHFアンテナから行う必要はなく、例えば携帯機20における受信電力値の大きいUHFアンテナだけから送信するなど、一部のUHFアンテナから送信するようにしてもよい。
【0045】
このように、本実施の形態では、携帯機30における受信電力に加えて車載機20における受信電力を用いて車載機20−携帯機30間の距離を算出するようにした。このため、実施の形態1,2に比べフェージングによる電力変動の抑圧効果が大きくなり,距離測定精度が向上する。
【0046】
実施の形態4.
図11は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態4の送受信動作例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムの構成は、実施の形態1と同様である。
【0047】
実施の形態2および3では、送信頻度に制限のある通信規格の使用も考慮し、送信回数を抑えるようにしている。送信頻度に制限がある場合、通信に失敗したときの再送も制限される。そこで、本実施の形態では1回の送信で同じデータを重複して送信することにより通信性能を向上させる。
【0048】
図11に示すように、受信電力を測定するまでの動作は、実施の形態2と同様であるが、車載機20は、情報#5を送信する際に、情報#5をUHFアンテナ5AとUHFアンテナ5Bから1回ずつ連続して送信する。携帯機30は、情報#5を2回受信する。この際、1回目の情報#5の受信と2回目の情報#5の受信とで受信に用いるUHFアンテナを変えていいし、変えなくてもよい。図11は、受信に用いるUHFアンテナを変える例を示している。携帯機30はCRCなどを用いて正しく受信できたと判定された信号を使用することができる。
【0049】
また、受信電力の測定の後、携帯機30は、情報#6を送信するが、本実施の形態では、情報#6をUHFアンテナ6AとUHFアンテナ6Bから1回ずつ連続して送信する。すなわち同じ情報をアンテナを変えて複数回送信する。なお、ここでは、UHFアンテナ5AとUHFアンテナ5B(またはUHFアンテナ6AとUHFアンテナ6B)から1回ずつ連続して送信しているが、連続して各アンテナから2回以上送信してもよい。車載機20は、CRCなどを用いて正しく受信できたと判定された信号を使用することができる。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態2と同様である。
【0050】
なお、このとき、通信路の状態などによって情報#6の複数回送信はしないという選択もできる。この場合は、情報#5の制御情報にそれを伝える信号を入れるようにしてもよい。また、複数回送信を情報#5と情報#6のうちのいずれか一方みとするとシステムで定めておくようにすることも可能である。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、同じ情報を1回の送信で重複して送信するようにした。これにより、実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、再送なしに通信性能を向上させることができる。
【0052】
なお、ここではアンテナ数の回数だけ送信する例を説明したが、アンテナ数が多い場合には、送信回数が2回以上となるように一部のアンテナからのみ同じデータを送信することもできる。
【0053】
また、ここでは実施の形態2の例を基本としてデータを重複して送信する例を説明したが、実施の形態3で述べた車載機20側でも受信電力を測定する場合に上記と同様にデータを重複して送信するようにしてもよい。図12は、車載機20側でも受信電力を測定する場合にデータを重複送信する場合の送受信動作の一例を示す図である。
【0054】
実施の形態5.
図13は、本発明にかかるキーレスエントリシステムの実施の形態5の送受信動作例を示す図である。本実施の形態のキーレスエントリシステムの構成は、実施の形態3と同様である。
【0055】
実施の形態2から4では、送信すべき情報(情報#5、情報#6)と電力測定のための信号(電力測定用信号)を別に送信していたが、変調方式などによっては、情報を送信する信号を用いても電力測定が可能である。本実施の形態では、情報を送信する信号を用いて受信電力の測定を行う。
【0056】
図13に示すように、車載機20aは、実施の形態2と同様の情報#5を送信する。本実施の形態では、情報#5を、UHFアンテナ5A,5Bのそれぞれから連続して送信するが、この際、同じ情報#5を1つのアンテナからそれぞれ2回以上送信する。携帯機30は、情報#5の受信処理と情報#5を含む受信信号の受信電力の測定を並行して実施する。情報#5の受信処理の際は、CRCなどを用いて正しく受信できたと判定された信号を使用する。この際、携帯機30は、1回目と2回目の情報#5の受信の間ではアンテナを切り替えず、2回目と3回目の情報#5の受信の間でUHFアンテナ6AをUHFアンテナ6Bへ切り替え、3回目と4回目の情報#5の受信の間ではアンテナを切り替えないようにしてもよい。このようにすると、送受信アンテナの全ての組み合わせで受信電力を測定できる。
【0057】
また、携帯機30から送信する情報#6もUHFアンテナ6A,6Bから同じデータを送信し、車載機20aで受信処理と信号の電力測定を並行して実施する。なお、図13では、情報#6は、UHFアンテナ6A,6Bから1回ずつ送信しているが2回以上ずつ送信するようにしてもよい。マイコン1は、第3の実施の形態と同様に、携帯機30における受信電力に加えて車載機20における受信電力を用いて車載機20−携帯機30間の距離を算出する。
【0058】
なお、車載機20aで受信電力を測定しない場合に、本実施の形態と同様に、情報#5を送信する信号を用いて携帯機30が受信電力を測定してもよいし、実施の形態1の動作を行う場合に、情報#1または情報#3を送信する信号を用いて携帯機30が受信電力を測定してもよい。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、送信アンテナを変えて、同じ情報を重複して送信し、情報を受信した携帯機30,車載機20aは、情報を含む受信信号を用いて受信電力を測定するようにした。このため、同じ情報を複数回送信することにより再送なしに通信性能を向上させることができ、かつ同時に電力測定も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかるキーレスエントリ装置、キーレスエントリシステムおよび無線通信方法は、車両のドアのアンロック等の操作を行うキーレスエントリシステムに有用であり、特に、低コスト化を図るキーレスエントリシステムに適している。
【符号の説明】
【0061】
1,10 マイコン
2,9 UHF変復調部
3,8 UHF高周波部
4,7 SW
11,12 受信電力測定部
5A,5B,6A,6B UHFアンテナ
20 車載機
30 携帯機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載機と、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と、で構成されるキーレスエントリシステムであって、
前記車載機は、
2本以上の第1のアンテナと、
前記2本以上の第1のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する第1の送信部と、
を備え、
前記携帯機は、
1本以上の第2のアンテナと、
受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定部と、
前記受信電力を前記車載機へ送信する第2の送信部と、
を備え、
前記車載機は、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とするキーレスエントリシステム。
【請求項2】
前記車載機から前記携帯機への送信と、前記携帯機から前記車載機への送信と、で同一周波数帯を用いる、ことを特徴とする請求項1に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項3】
前記車載機から前記携帯機への送信と前記携帯機から前記車載機への送信とで、前記同一周波数帯内において周波数の差が所定の範囲内となる異なるチャネルを用いる、ことを特徴とする請求項2に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項4】
前記同一周波数帯をUHF帯とする、ことを特徴とする請求項2または3に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項5】
前記携帯機は、前記第2のアンテナを2本以上備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項6】
前記携帯機は、1つの前記第1のアンテナから送信された前記電力測定用信号を受信している間に、前記第2のアンテナを切り替えることにより送受信アンテナの組み合わせを変えて前記受信電力を測定する、ことを特徴とする請求項5に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項7】
前記第2の送信部は、
前記2本以上の第2のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信し、
前記車載機は、
前記携帯機から受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する車載側受信電力測定部、
をさらに備え、
前記車載機は、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力と前記車載側受信電力測定部が測定した前記受信電力とを選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とする請求項5または6に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項8】
前記第1の送信部は、1回の送信で前記携帯機に対する呼び出し情報と認証に用いる情報と前記電力測定用信号とを送信する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項9】
前記車載機から前記携帯機へ情報を送信する際に、1回の送信で同一のデータを重複して送信する、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項10】
前記携帯機から前記車載機へ情報を送信する際に、1回の送信で同一のデータを重複して送信する、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項11】
重複して送信する前記同一のデータをそれぞれ異なる前記第1のアンテナから送信する、ことを特徴とする請求項10に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項12】
前記車載機から前記携帯機へ送信する情報を格納した信号を前記電力測定用信号として用い、
前記携帯機は、前記電力測定用信号に格納された情報の信号処理の処理と当該電力測定用信号の受信電力の測定を並行して実施する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項13】
車両に搭載され、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と通信を行うキーレスエントリ装置であって、
2本以上のアンテナと、
前記2本以上のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する送信部と、
前記携帯機において前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとに測定された受信電力を、前記携帯機から受信する受信部と、
を備え、
前記車載機は、送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して自装置と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とするキーレスエントリ装置。
【請求項14】
車両に搭載される車載機と、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と、で構成されるキーレスエントリシステムにおける無線通信方法であって、
前記車載機は、2本以上の第1のアンテナを備え、
前記携帯機は、1本以上の第2のアンテナを備え、
前記車載機が、前記2本以上の第1のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する第1の送信ステップと、
前記携帯機が、受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定ステップと、
前記携帯機が、前記受信電力を前記車載機へ送信する第2の送信ステップと、
前記車載機が、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める距離算出ステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
車両に搭載される車載機と、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と、で構成されるキーレスエントリシステムであって、
前記車載機は、
2本以上の第1のアンテナと、
前記2本以上の第1のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する第1の送信部と、
を備え、
前記携帯機は、
1本以上の第2のアンテナと、
受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定部と、
前記受信電力を前記車載機へ送信する第2の送信部と、
を備え、
前記車載機は、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とするキーレスエントリシステム。
【請求項2】
前記車載機から前記携帯機への送信と、前記携帯機から前記車載機への送信と、で同一周波数帯を用いる、ことを特徴とする請求項1に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項3】
前記車載機から前記携帯機への送信と前記携帯機から前記車載機への送信とで、前記同一周波数帯内において周波数の差が所定の範囲内となる異なるチャネルを用いる、ことを特徴とする請求項2に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項4】
前記同一周波数帯をUHF帯とする、ことを特徴とする請求項2または3に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項5】
前記携帯機は、前記第2のアンテナを2本以上備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項6】
前記携帯機は、1つの前記第1のアンテナから送信された前記電力測定用信号を受信している間に、前記第2のアンテナを切り替えることにより送受信アンテナの組み合わせを変えて前記受信電力を測定する、ことを特徴とする請求項5に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項7】
前記第2の送信部は、
前記2本以上の第2のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信し、
前記車載機は、
前記携帯機から受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する車載側受信電力測定部、
をさらに備え、
前記車載機は、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力と前記車載側受信電力測定部が測定した前記受信電力とを選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とする請求項5または6に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項8】
前記第1の送信部は、1回の送信で前記携帯機に対する呼び出し情報と認証に用いる情報と前記電力測定用信号とを送信する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項9】
前記車載機から前記携帯機へ情報を送信する際に、1回の送信で同一のデータを重複して送信する、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項10】
前記携帯機から前記車載機へ情報を送信する際に、1回の送信で同一のデータを重複して送信する、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項11】
重複して送信する前記同一のデータをそれぞれ異なる前記第1のアンテナから送信する、ことを特徴とする請求項10に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項12】
前記車載機から前記携帯機へ送信する情報を格納した信号を前記電力測定用信号として用い、
前記携帯機は、前記電力測定用信号に格納された情報の信号処理の処理と当該電力測定用信号の受信電力の測定を並行して実施する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のキーレスエントリシステム。
【請求項13】
車両に搭載され、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と通信を行うキーレスエントリ装置であって、
2本以上のアンテナと、
前記2本以上のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する送信部と、
前記携帯機において前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとに測定された受信電力を、前記携帯機から受信する受信部と、
を備え、
前記車載機は、送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して自装置と前記携帯機との間の距離を求める、ことを特徴とするキーレスエントリ装置。
【請求項14】
車両に搭載される車載機と、前記車両外に持ち出し可能な携帯機と、で構成されるキーレスエントリシステムにおける無線通信方法であって、
前記車載機は、2本以上の第1のアンテナを備え、
前記携帯機は、1本以上の第2のアンテナを備え、
前記車載機が、前記2本以上の第1のアンテナのうちの少なくとも2本から受信電力測定用の電力測定用信号を送信する第1の送信ステップと、
前記携帯機が、受信した前記電力測定用信号に基づいて送受信アンテナの組み合わせごとの受信電力を測定する受信電力測定ステップと、
前記携帯機が、前記受信電力を前記車載機へ送信する第2の送信ステップと、
前記車載機が、前記携帯機から受信した送受信アンテナの組み合わせごとの前記受信電力を選択または合成して前記車載機と前記携帯機との間の距離を求める距離算出ステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−83096(P2013−83096A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223813(P2011−223813)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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