説明

コンバイン

【課題】コンバイン等のコンバインの場合において、作業部が実際に作業をした時間や作業量が、前記アワーメータが表示するエンジンの稼働時間は比例しないため、エンジンや走行装置と違い作業部に関しては、整備時期の判断の精度が良くなかった。
【解決手段】収穫した穀物重量を累計して全体収穫量の計算をする制御手段と、該計算された全体収穫量を記憶する記憶装置と、該計算された全体収穫量を表示する表示装置と、を具備し、前記制御手段に、前記記憶装置に記憶された累計値をリセットするリセット機能を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関し、より詳しくは、収穫量を測定し、測定した収穫量を累計し、作業者にメンテナンスを行うべき時期を知らせるコンバインの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
農業機械のような作業機では、複数の装置から構成されたものがあり、これら複数の装置が単一または複数の制御系によって制御される。例えば、農地内を走行して作物を刈り取って収穫するコンバインでは、刈取部の昇降装置、刈取部の刈刃、車両の進行方向を制御する操向装置、作物の穀稈から穀粒を離脱する脱穀部、およびこれら各装置に動力を供給する駆動装置などが備えられている。これら各装置は単一の制御手段によりそれぞれの制御系に分割して制御される。また各制御系は互いに連関して制御する必要もある。このように、複数の装置からなる作業機では、必要なメンテナンスを実行すべき時期および内容が多数設定されており、これらのメンテナンス時期の目安として、操縦席に作業時間を表示するアワーメータが設けられている。このアワーメータは、駆動装置を構成するエンジンの回転数および稼働時間から作業機全体の作業負担を算出し、これに基づいて各装置のメンテナンスを実行すべきタイミングを知るようにしている。
【0003】
そして、作業中の作業者に稼動量に応じて実行すべきメンテナンスの内容を所定のタイミングで表示する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、操縦席に設けられた表示パネルに回転計によりエンジンの回転数を表示し、アワーメータにより作業機の稼動量を表示するとともに、LCDにおいて、稼動量に応じて実行すべきメンテナンスの内容を表示するものである。
【特許文献1】特開平5−319139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記技術では、コンバイン等の場合において、刈取部の昇降装置、刈取部の刈刃、車両の進行方向を制御する操向装置、作物の穀稈から穀粒を離脱する脱穀部、そして脱穀された穀粒と排藁を選別する選別部(1番コンベア、2番コンベア、揚穀コンベア、排出コンベア、排出オーガ、スクリュー、ベルト、ベアリング、シール)等の作業部が実際に作業をした時間や作業量が、前記アワーメータが表示するエンジンの稼働時間に比例しないため、エンジンや走行装置と違い作業部に関しては、整備時期の判断の精度が良くなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、穀物タンク内の穀物重量を測定する測定装置を備えるコンバインであって、
収穫した穀物重量を累計して全体収穫量の計算をする制御手段と、
該計算された全体収穫量を記憶する記憶装置と、
該計算された全体収穫量を表示する表示装置と、を具備したものである。
【0007】
請求項2においては、前記制御手段に、前記記憶装置に記憶された累計値をリセットするリセット機能を設けたものである。
【0008】
請求項3においては、前記累計値が予め設定したメンテナンス値に達したときに、前記表示装置にメンテナンス内容を表示するものである。
【0009】
請求項4においては、前記累計値が予め設定したメンテナンス値に達したときに、警報を発するように構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、エンジンや走行装置と独立して、刈取部の昇降装置、刈取部の刈刃、作物の穀稈から穀粒を離脱する脱穀部、そして脱穀された穀粒と排藁を選別する選別部(1番コンベア、2番コンベア、揚穀コンベア、排出コンベア、排出オーガ、スクリュー、ベルト、ベアリング、シール)等の作業部が実際に作業をした作業量が把握でき、その結果、作業部の整備時期の判断の精度が改善され、収穫効率の向上につながる。また、作業者が帳面等に毎回収穫量を書きとめ、それらの収穫量を加算する必要がない。
【0012】
請求項2においては、メンテナンスを行った後に、部品や装置毎にリセットすることで、整備を正確に行うことができ、前回整備した後の収穫量の累計値を知ることができ、予想も可能となる。また、委託者毎の収穫作業後にリセットすることで、委託者ごとの収穫量累計が容易に計測できるので、作業者による記録の手間が大幅に省ける。
【0013】
請求項3においては、刈取部の昇降装置、刈取部の刈刃、作物の穀稈から穀粒を離脱する脱穀部、そして脱穀された穀粒と排藁を選別する選別部(1番コンベア、2番コンベア、揚穀コンベア、排出コンベア、排出オーガ、スクリュー、ベルト、ベアリング、シール)等の作業部のどの整備が必要かが容易に認識することができ、その後の処置を迅速に行うことができる。
【0014】
請求項4においては、メンテナンスの必要性を喚起し、整備忘れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の一形態であるコンバイン201の左側面図、図2は本発明の実施の一形態であるコンバイン201の平面図、図3は本発明の実施の一形態であるコンバイン201の右側面図、図4は本発明の実施の一形態であるコンバイン201の正面図、図5は穀物タンク13の側面図、図6はエンジン101から穀物排出装置15までの動力伝達経路を示す模式図、図7は「全体収穫量」の測定方法を示すフローチャート、図8は表示装置42を示す正面図、図9は表示装置42の第二の実施例を示す正面図、図10は穀物排出装置15の収納位置および作業位置とコンバイン201の機体との位置関係を示す平面図、図11は制御装置周辺を示すブロック図、図12は穀物重量算出制御フローチャート、図13はメンテナンス情報を表示、警告する方法を示すフローチャート、図14はメンテナンス情報を表示、警告した状態の表示装置42を示す図である。
【0016】
まず、図1から図4を用いて本発明の一実施例に係るコンバイン201の全体構成について説明する。ここで、収穫機械をコンバインとして米の収穫について説明しているが、麦やそばや大豆などの穀物や野菜などにおいても適用可能である。
【0017】
クローラ式走行装置1上に機台2が載置され、該機台2前方に引起し・刈取部3が昇降可能に配設されている。該引起し・刈取部3において、穀稈は前方に突出した分草板4により分草されて、該分草板4の後方に立設された引起しケース5から突出されたタイン6により引き起され、該引起しケース5の後方に配設された刈刃7にて株元側から刈り取られる。
【0018】
引起し・刈取部3の後方には扱胴や処理胴を備える脱穀部12が配置され、該引起し・刈取部3と脱穀部12との間に穀稈の搬送装置8が配設されている。さらに、該搬送装置8の後方であって、脱穀部12の側方にはフィードチェーン9が後方に延設されている。前記引起し・刈取部3で刈り取られた穀稈は搬送装置8からフィードチェーン9に受け継がれ、該フィードチェーン9によって株元側が後方に搬送される。これにより、穀稈の穂先側が脱穀部12内に搬送されて、該脱穀部12にて穀稈の脱穀が行われる。
【0019】
そして、前記フィードチェーン9後端に排藁チェーン18が配設され、該排藁チェーン18後部下方に排藁カッター装置、拡散コンベアなどを備えた排藁処理部19が配設されている。前記脱穀部12で脱穀された後の穀稈(排藁)は、フィードチェーン9から排藁チェーンに搬送されて、そのまま圃場に放出、あるいは排藁処理部19にて藁片に切断された後に拡散されながら放出される。
【0020】
また、前記脱穀部12下方には選別部17が配設され、該選別部17にて脱穀部12から流下した穀粒や藁屑などから穀粒が選別される。そして、穀粒や藁屑などのうち、選別後の穀粒が穀物タンク13に搬送され、藁屑などが機外に排出される。
【0021】
前記穀物タンク13は脱穀部12の側方に配設されており、該穀物タンク13の前方に運転室14が配設される一方、穀物タンク13後方及び上方に穀物排出装置15が配設されている。穀物排出装置15は縦排出オーガ15aと横排出オーガ15bとを備えて構成されており、縦排出オーガ15aと横排出オーガ15bのうち、縦排出オーガ15aが穀物タンク13後方で機台2上に立設され、横排出オーガ15bが穀物タンク13上方に配置されている。こうして、穀物タンク13は縦排出オーガ15aを中心にして側方へ回動可能に構成されるとともに、その後部に備えられた回動支点により上下方向に回動可能に構成されている。
【0022】
図5に示すように、前記穀物タンク13の前部下方には、穀物タンク13の重量を測定する測定装置30が配置されている。該測定装置30は、主に油圧シリンダであるタンク昇降シリンダ31と該タンク昇降シリンダ31と接触可能に配置された重量センサ32とで構成されている。
【0023】
タンク昇降シリンダ31は、穀物タンク13前部を機台2に対して昇降可能とするものであり、穀物タンク13の前下部に上下方向に伸縮可能に取り付けられている。一方、重量センサ32はロードセル型のセンサであり、タンク昇降シリンダ31に対向して、即ちタンク昇降シリンダ31のピストンロッドの延長線上に位置して、機台2上に固定されている。これにより、タンク昇降シリンダ31が伸長した場合には、該タンク昇降シリンダ31と重量センサ32とが接触し、穀物タンク13の前部が持ち上げられるようになっている。
【0024】
前記タンク昇降シリンダ31は、図11に示すように、油圧制御バルブ33と接続され、該油圧制御バルブ33のソレノイドが後述する制御手段53に接続されている。こうして、制御手段53からの制御信号により油圧制御バルブ33が切り換えられて、タンク昇降シリンダ31の伸縮が制御されるように構成されている。さらに、該制御手段53には前記重量センサ32が接続され、該重量センサ32により検出された穀物タンク重量に関する信号(情報)が制御手段53に送信されるようになっている。
【0025】
このように構成することにより、穀物タンク重量を測定するときのみ、タンク昇降シリンダ31が伸長して重量センサ32と接触し、穀物タンク13の前部が持ち上げられて、重量センサ32により穀物タンク重量が測定されることになる。なお、穀物タンク重量の測定時を除いては、タンク昇降シリンダ31は縮短して重量センサ32と接触しない状態となる。つまり、穀物タンク13が機台2に固定され、重量センサ32に荷重がかからないようになっている。
【0026】
さらに、図5に示すように、前記穀物タンク13の内側上部には、穀物水分を測定する水分センサ35が配置され、穀物タンク13内に貯溜された穀物の水分量を測定できるようになっている。水分センサ35は、図11に示すように、前記制御手段53と接続されており、該水分センサ35により検出された穀物水分に関する信号(情報)が制御手段53に送信されるようになっている。
【0027】
また、前記穀物タンク13の内側下部にスクリュー式の横送りコンベア16が前後方向に配設され、該横送りコンベア16の一端が穀物排出装置15に連設されている。こうして、穀物タンク13内の穀物横送りコンベア16により穀物タンク13から穀物排出装置15に搬送された後、縦排出オーガ15aを経て横排出オーガ15bの先端部から外部に排出されるようになっている。
【0028】
次に、図6を用いてエンジンから穀物タンク及び穀物排出装置への駆動力伝達経路について説明する。
エンジン101の前方出力軸101bには、クローラ式走行装置1を駆動するための走行用ミッションケース47の入力軸が連結され、クローラ式走行装置1に駆動力が伝達されるようになっている。一方、後方出力軸101aには、脱穀部12や選別部17へ駆動力を伝達するためのプーリ102・102・102と、穀物タンク13および穀物排出装置15へ駆動力を伝達するためのプーリ103とが嵌設されている。
【0029】
また、前記エンジン101の略後方で、穀物タンク13の下部前面に駆動ケース104が配設され、該駆動ケース104から駆動ケース入力軸105が機体前方へ突出されている。そして、駆動ケース入力軸105の前端にプーリ106が嵌設され、該プーリ106と前記後方出力軸101a後端に嵌設されたプーリ103とにVベルト107が巻回されて、エンジン101の駆動力の一部が駆動ケース104の入力軸105に伝達されるように構成されている。Vベルト107には、該Vベルト107のテンションプーリを兼ねるオーガクラッチ118が設けられ、該オーガクラッチ118により駆動力を駆動ケース104より下流側へ伝達又は遮断できるようになっている。
【0030】
前記駆動ケース104内には互いに噛合するギア108a・108bが収納されており、二つのギア108a・108bのうち、一方のギア108aは駆動ケース104に軸支された前記入力軸105の後端に外嵌固定され、他方のギア108bは横送りコンベア16の前端に嵌設された回転軸であるコンベア駆動軸56に外嵌固定されている。
【0031】
横送りコンベア16の後端にはベベルギア109が嵌設され、該ベベルギア109に縦排出オーガ15a内のスクリュー式の縦送りコンベア110下端に嵌設されたベベルギア111が噛合されている。一方、縦送りコンベア110上端にはベベルギア112が嵌設され、該ベベルギア112にベベルギア113が噛合されている。そして、該ベベルギア113とベベルギア115とがチェーンやスプロケットを内設する中間ケース114に連動連結され、該ベベルギア115に横排出オーガ15b内のスクリュー式の横送りコンベア117の一端に嵌設されたベベルギア116が噛合されている。
【0032】
このように構成することにより、横送りコンベア16から穀物排出装置15の縦送りコンベア110と横送りコンベア117に駆動力が伝達される。つまり、穀物タンク13内の穀物は横送りコンベア16により後方に搬送され、穀物タンク13後方に位置する縦排出オーガ15aを経て、横排出オーガ15b先端から強制的に排出されることになる。
【0033】
次に、前述の測定装置30や制御手段53等によって、収穫し脱穀した穀粒の重量を測定し、表示する方法について詳しく説明する。
前述のように、引起し・刈取部3によって刈取られた穀稈は、脱穀部12で脱穀されて、選別部17で穀粒と排藁に選別される。そして、穀粒は穀物搬出装置15によって穀物タンク13に搬送され、排藁はフィードチェーン9から排藁チェーンに搬送されて、そのまま圃場に放出、あるいは排藁処理部19にて藁片に切断された後に拡散されながら放出される。
【0034】
穀物タンク13に貯められた穀粒は、一定時間ごとに、前記測定装置30により重量を測定され、測定された収穫量は後述するように、運転室14内の表示装置42に表示される。ここで、測定間隔を一定時間ごととしているが、常時測定を行い測定された値を表示装置42に反映させても良い。また、表示装置42周辺に測定ボタンを配設しておき、測定ボタンを押したときのみ測定を行い、得られた測定値を表示装置42に表示しても良い。
前述のように、測定装置30で測定することができるのは穀物タンク13の重量であり、コンバイン201がこれまでに収穫した全体収穫量や、任意の開始時点からの収穫量ではない。ここでは、「全体収穫量」や任意の開始時点からの収穫量を測定する方法について説明する。
【0035】
まず、「全体(総)収穫量」の測定方法について説明する。
「全体(総)収穫量」の値は、「今回測定値」と、記憶装置44に記憶されている「最新全体(総)収穫量」と「排出後測定値」から演算されて、表示装置に表示される。
ここで、「今回測定値」とは、今回「全体収穫量」を得ようとしたときに、測定装置30によって測定された穀物タンク13全体の重量である。一定時間ごとに測定を行う場合は、測定装置30が測定した穀物タンク13の重量のうち、もっとも新しいものである。前記「今回測定値」は、測定値が得られた直後に重量センサ32から制御手段53を介して、記憶装置44に記憶される。
「最新全体収穫量」とは、今回測定され演算される「全体収穫量」が表示される直前に表示されている全体収穫量の値であり、同じく記憶装置44に記憶されており、制御手段53を介して、表示装置42に表示されているものである。つまり、新しく今回の「全体収穫量」が演算されて表示された時点で、記憶装置44の「最新全体収穫量」は今回表示されるべき「全体収穫量」の値に書き換えられるものである。
「排出後測定値」とは、穀物排出装置15を起動して、穀物タンク13から穀粒を排出したのち、横排出オーガ15bが後述する「収納位置」に戻った時点での、穀物タンク13の全重量である。つまり、横排出オーガ15bが「収納位置」に戻るたびに、測定装置30により、最新の「排出後測定値」が測定されるのである。該「排出後測定値」も測定直後に、重量センサ32から制御手段53を介して、記憶装置44に記憶されるものである。
【0036】
このように、記憶装置44には常時、「今回測定値」と「最新全体収穫量」と「排出後測定値」が記憶されている。
そして、制御手段53の中央処理装置54によって、これら「今回測定値」、「排出後測定値」、「最新全体収穫量」から、「全体収穫量」が演算され、表示装置42に表示される。具体的には、「今回測定値」から「排出後測定値」を差し引き、「最新全体収穫量」を足すことによって、「全体収穫量」が求められる。これらは表示装置42において切換えることにより、選択して任意に表示可能としている。
【0037】
図7のフローチャートと図8を参照しながら、上述の表示装置42に表示される「全体収穫量」の測定方法をまとめる。
まず、コンバイン201を起動すると、表示装置42に最新の「全体収穫量」が表示される(S1)。作業者は必要に応じて、コンバイン201を移動させたり、収穫や脱穀の作業を行う(S2)。そして、表示装置42に前記最新の「全体収穫量」が表示されてから、一定時間が経過する(S3)と、測定装置30により、穀物タンク13の重量が測定される(S4)。
【0038】
測定装置30により穀物タンク13の測定が完了すると、重量センサ32より制御手段53を介して、記憶装置44の「今回測定値」が測定された値に書き換えられる(S5)。書換が終了すると、前記制御手段53の中央処理装置54は、記憶装置44から「今回測定値」と「最新全体収穫量」と「排出後測定値」を引き出し、「全体収穫量」を演算する(S6)。ここで「全体収穫量」は、
「全体収穫量」=「今回測定値」+「最新全体収穫量」−「排出後測定値」
の計算式によって求められる。
そして、演算して得られた「全体収穫量」を制御手段53は表示装置42に送信し、表示装置42では「全体収穫量」が新しいものに更新され表示される(S7)。この演算して得られた「全体収穫量」は、同じく制御手段53によって、記憶装置44に送信され、記憶装置では、「最新全体収穫量」が該「全体収穫量」に書き換えられる。
【0039】
穀物タンク13がいっぱいになったり、コンバイン201を他の収穫エリア移動させて他の委託者や圃場の穀稈を収穫する等して穀粒を一旦排出する場合(S9)、穀物搬出装置15によって、穀物タンク13の穀粒を排出する(S10)。穀粒を排出した場合は、排出作業終了後、横排出オーガ15bが後述する「収納位置」に戻った時点で測定装置30により、穀物タンク13の重量を自動で測定する(S11)。そして、制御手段53により、記憶装置44の「排出後測定値」をこの排出後に得られた測定値に書き換える(S12)。
このように、測定装置30によって、穀物タンク13の重量を測る都度、収穫された穀粒の重量を累計していき、コンバイン201の購買時からの「全体収穫量」を表示装置42に表示させるのである。
【0040】
以上のように、穀物タンク内の穀物重量を測定する測定装置を備えるコンバインであって、
収穫した穀物重量を累計して全体収穫量の計算をする制御手段と、
該計算された全体収穫量を記憶する記憶装置と、
該計算された全体収穫量を表示する表示装置と、を具備したので、
エンジンや走行装置と独立して、刈取部3の昇降装置、刈取部3の刈刃、作物の穀稈から穀粒を離脱する脱穀部、そして脱穀された穀粒と排藁を選別する選別部(1番コンベア、2番コンベア、揚穀コンベア、排出コンベア、排出オーガ、スクリュー、ベルト、ベアリング、シール)等の作業部が実際に作業をした作業量が把握でき、その結果、作業部の整備時期の判断の精度が改善され、収穫効率の向上につながる。また、作業者が帳面等に毎回収穫量を書きとめ、それらの収穫量を加算する必要がない。
【0041】
次に、任意の開始時点からの収穫量(以後、「収穫量累計」と呼ぶ。)を測定する方法について説明する。前記「全体収穫量」は、開始時点をコンバイン201の購入時とした場合の「収穫量累計」と同じことであるから、開始時点としたい任意の時点に、前記「全体収穫量」を0にリセットできれば良い。つまり、任意の開始時点からの収穫量、すなわち「収穫量累計」は、該開始時点に「全体収穫量」を0にリセットした「全体収穫量」と同じことである。
【0042】
収穫量累計の測定及び表示方法について説明する。
記憶装置44に「前回リセット時最新全体収穫量」及び「収穫量累計」を記憶させる。そして、作業者が押しやすい位置、例えば運転室14内部の表示装置42近傍等にリセットボタン(図示せず)を配設する。
ここで、「前回リセット時最新全体収穫量」とは、リセットボタンを押した時点の「最新全体収穫量」のうち、最も新しいものである。つまり、リセットボタンを押すと押した時点において、記憶装置44に記憶されている「最新全体収穫量」が「前回リセット時最新全体収穫量」として、記憶装置44に記憶されるのである。
【0043】
そして、測定装置30により穀物タンク13の重量が測定され、「全体収穫量」が更新される度に、制御手段53により、更新されたばかりの「全体収穫量」と「前回リセット時最新全体収穫量」が引き出され、「収穫量累計」が演算されて、図8に示すように、表示装置42に表示された「収穫量累計」が更新されるのである。
具体的には、制御手段53は「全体収穫量」から「前回リセット時最新全体収穫量」を差し引いて「収穫量累計」を求めている。つまり、
「収穫量累計」=「全体収穫量」−「前回リセット時最新全体収穫量」
となる。これによって、リセットボタンを押した後に穀物タンク13に搬送された穀粒の重量の累計値を得ることができる。但し、演算方法は限定するものではなく、「全体収穫量」と別にリセット後に収穫量を累計して「収穫量累計」とすることもできる。
【0044】
このように、前記制御手段に、前記記憶装置に記憶された累計値をリセットするリセット機能を設けたので、
メンテナンスを行った後に、部品や装置毎にリセットすることで、整備を正確に行うことができ、前回整備した後の収穫量の累計値を知ることができ、予想も可能となる。また、委託者毎の収穫作業後にリセットすることで、委託者ごとの収穫量累計が容易に計測できるので、作業者による記録の手間が大幅に省ける。
【0045】
また、記憶装置44に、メンテナンス用の「設定収穫量」を記憶させておき、前記「収穫量累計」が更新される度に、制御手段53が「設定収穫量」と「収穫量累計」を記憶装置44から呼び出し、比較して、「収穫量累計」が「設定収穫量」を超えた場合に、表示装置42にメンテナンス内容を表示するものとし、警報装置となるアラーム部42aにより警報音を発したり、警報ランプを点滅させたりするようにする。
アラーム部42aは図8に示すように、きめ細かいメッセージを表示しても良いし、運転室14内にスピーカを設けて、音声によって作業者にメンテナンスを促す構成としても良い。また、本実施例では、図8のように、表示装置42には「設定収穫量」を1つしか表示していないが、2つ以上の「設定収穫量」を表示し、記憶装置44に記憶させても良い。例えば、ベアリングとシールの交換時期は異なるので、表示装置42には各部品毎に「収穫量累計」を演算して記憶させ、交換累計に達すると、取り付けられている位置とその部品名称を表示して、交換時期であることを表示するようにするのである。この交換部品は収穫量に関わるものであり、走行装置やミッション等は稼働時間に関わるので、アワーメーターから得られる時間を基に交換時期を設定する。収穫量に関わる部品として、例えば、刈取部3や脱穀部12や選別部17や穀物排出装置15に使用されるベアリングやシールやベルトやチェーンやバネやセンサ等、その他、刈取部3の刈刃やタイン、脱穀部12の受網や扱歯、選別部17の選別網や搬送用のスクリュー、穀物排出装置15のスクリュー等がある。
【0046】
また、「収穫量累計」は圃場や委託者ごとの収穫量測定などに用い、メンテナンス時期は「全体収穫量」により判断して、予め設定した「設定収穫量」に達する毎に表示して警報を発するように構成しても良い。この場合は、多数の種類の「設定収穫量」を記憶装置44に記憶しておくことでよい。
また、図9に示すように、作業部と駆動制御系のメンテナンス時期の判断を両方行えるように、エンジンの回転数42bやアワーメータ42cを一緒に表示しても良い。
【0047】
このように、前記累計値が予め設定したメンテナンス値に達したときに、前記表示装置にメンテナンス内容を表示するように構成したので、
刈取部3の昇降装置、刈取部3の刈刃、作物の穀稈から穀粒を離脱する脱穀部、そして脱穀された穀粒と排藁を選別する選別部(1番コンベア、2番コンベア、揚穀コンベア、排出コンベア、排出オーガ、スクリュー、ベルト、ベアリング、シール)等の作業部のどの整備が必要かが容易に認識することができ、その後の処置を迅速に行うことができる。
【0048】
また、前記累計値が予め設定したメンテナンス値に達したときに、警報を発するように構成したので、
メンテナンスの必要性を喚起し、整備忘れを防止することができる。
【0049】
次に、図2、図5、図6を用いて、穀物排出装置15の各部の構造とその操作手段について説明する。
【0050】
図5に示すように、穀物排出装置15において、横排出オーガ15bの根元側は縦排出オーガ15aの上端に上下回動可能に枢着されている。コンバイン201における昇降用アクチュエータであるオーガ昇降シリンダ130は油圧制御バルブ139の切換により伸縮されるように構成されており、一端が縦排出オーガ15a側面より突設されたブラケット131に回動可能に枢着され、他端が横排出オーガ15b側面より突設されたブラケット132に回動可能に枢着されている。こうして、オーガ昇降シリンダ130を伸縮させることによって、横排出オーガ15bが上下方向に回動されるようになっている。なお、コンバイン201における昇降用アクチュエータであるオーガ昇降シリンダ130は油圧式のシリンダであるが、その他の電気式または油圧式のモータでも良く、限定されない。
【0051】
前記縦排出オーガ15aの中途部にはギア133aが外嵌固定され、該ギア133aに旋回用アクチュエータであるオーガ旋回モータ134の回転軸134aに嵌設されたギア133bが噛合されている。こうして、該オーガ旋回モータ134を作動させることにより、縦排出オーガ15aと横排出オーガ15bとが一体的に旋回されるようになっている。さらに、ギア133bと同軸にオーガ旋回角センサ135が設けられている。なお、コンバイン201における旋回用アクチュエータであるオーガ旋回モータ134は電気式のモータであるが、油圧式のモータでも、その他の油圧シリンダでも良く、限定されない。また、オーガ旋回角センサ135はレゾルバ、回転式ポテンショメータ、ロータリーエンコーダなどであり、該オーガ旋回角センサ135により、横排出オーガ15bの旋回角度が検出される。
【0052】
また、横排出オーガ15bの先端に排出ケース136が設けられている。該排出ケース136内には、横送りコンベア117を軸支するためにボールベアリングなどからなる軸受け部が形成されている。図1、図4に示すように、排出ケース136の下面は開口されており、該開口部の縁に沿って筒形状のスリーブ137が取り付けられている。スリーブ137は可撓性の樹脂などで構成され、スリーブ137の下端が穀物排出口138とされている。これにより、排出ケース136の下面から落下した穀物を周囲に飛散させず、穀物排出口138の直下近傍に集中して排出することができるようになっている。
【0053】
ここで、コンバイン201におけるオーガレストについて、図1及び図2、図4を用いて説明する。
オーガレスト52は、穀物排出装置15を使用しないときに該穀物排出装置15の横排出オーガ15bを支持する部材である。以下では、穀物排出装置15の旋回方向に関して「収納位置にある」とは、基本的には平面視で横排出オーガ15bがオーガレスト52上に位置する状態を指す。
【0054】
オーガレスト52は、レスト部52aと支柱部52bとで構成されている。レスト部52aは正面視略U字型に形成され、不使用時の横排出オーガ15bはオーガレスト52に載置固定される。該レスト部52aの上面(U字型に形成された内面)にはゴムや樹脂などの弾性部材が取り付けられ、走行中に横排出オーガ15bが載置されていても横排出オーガ下辺に傷がつかないように、また振動音が発生しないようになっている。
【0055】
支柱部52bは正面視で上半分がコンバインの左側方にやや屈曲した形状をした角パイプであり、その下端部が運転室14の筐体であるキャビンを支持するフレームに固設されている。また、支柱部52bの中途部と、前記キャビンを支持するフレームにおいて支柱部52bの下端部が固設された位置とは別の箇所との間には補強パイプ(図示せず)が固設され、オーガレスト52の強度の向上が図られている。
【0056】
次に、図10を用いて、コンバイン201における穀物排出装置15の横排出オーガ15bの収納位置および作業位置について説明する。
「収納位置」とは、走行中など穀物排出装置15を使用しない時に横排出オーガ15bが停止している位置である。コンバイン201においては、平面視で穀物排出装置15の横排出オーガ15bがオーガレスト52上に位置する状態を指す。実際には、平面視で横排出オーガ15bがオーガレスト52上に位置する状態からオーガ昇降シリンダ130が短縮して横排出オーガ15bが下方に回動し、横排出オーガ15bがオーガレスト52上に載置された状態である。
【0057】
「作業位置」とは、コンバイン201の穀物タンク13に貯溜された穀物をトラックなどの搬送車の荷台に移載するなどのために穀物排出装置15を使用する時に横排出オーガ15bが停止している位置である。コンバイン201においては、平面視で横排出オーガ15bの先端部(排出ケース136)がコンバイン201の機体右側方に突出した「右側方作業位置」、横排出オーガ15bの先端部がコンバイン201の機体左側方に突出した「左側方作業位置」、横排出オーガ15bの先端部がコンバイン201の機体後方に突出した「後方作業位置」の計三箇所の作業位置が設定されている。
【0058】
なお、コンバイン201においては作業位置が三箇所設定されているが、一箇所でも、二箇所でも、四箇所以上でも設定可能であり作業位置の設定箇所の数は限定されない。また、作業位置の収納位置からの旋回角度についても、例えば右側方作業位置を右側方やや後方寄りとしたり、後方作業位置を後方やや右側方寄りとしたりしても良く、限定されない。
【0059】
続いて、制御手段について、図11を用いて説明する。
制御手段53は、旋回指令手段からの指令に基づいてオートリターン作業(リターンスイッチ152を押して横排出オーガ15bを収納位置に自動旋回させる作業)やオートセット作業(セットスイッチ153を押して横排出オーガ15bを作業位置に自動旋回させる作業)などの横排出オーガ15bの自動旋回・上昇や、その他手動による横排出オーガ15bの旋回・上昇、横排出オーガ15bの駆動、穀物タンク重量の検出などを行うものであり、主に中央処理装置54や記憶部55などから構成されている。
ここで、旋回指令手段とは、有線若しくは無線で制御手段53に様々な作業命令を送信するものであり、リターンスイッチ152、セットスイッチ153、表示ランプ154、オーガクラッチスイッチ155、オーガ手動操作スイッチ156等が設けられている。
【0060】
中央処理装置54は各種入力信号及び記憶部55に記憶された各種情報を基にオートリターン及びオートセットに関する演算処理や穀物重量に関する演算処理を行い、各種出力信号を出力する。記憶部55は、横排出オーガ15bのオートセット及びオートリターンに関する情報や穀物タンク重量、穀物タンク重量に基づいて算出された穀物重量などの種々の情報を記憶する。
【0061】
中央処理装置54へ入力される信号(情報)としては、リターンスイッチ152が押されたことを示す信号、セットスイッチ153が押されたことを示す信号、オーガクラッチスイッチ155が押されたことを示す信号、オーガ手動操作スイッチ156を構成する四個のスイッチであるオーガ上昇スイッチ、オーガ下降スイッチ、オーガ右旋回スイッチ、オーガ左旋回スイッチのいずれか一つ、またはオーガ上昇スイッチとオーガ下降スイッチのいずれか一方とオーガ右旋回スイッチとオーガ左旋回スイッチのいずれか一方との組み合わせが押されていることを示す信号、オーガ昇降角センサ130aからの機体に対する横排出オーガ15bの昇降角度(回動角度)に関する信号、オーガ旋回角センサ135からの機体に対する横排出オーガ15bの旋回角度に関する信号、重量センサ32からの穀物タンク重量に関する信号、水分センサ35からの穀物タンク13内の穀物水分に関する信号、計測スイッチ36が押されたことを示す信号、出力スイッチ38が押されたことを示す信号、コンバイン201の現在位置に関する信号、入力装置41が操作されたことを示す信号などがある。
【0062】
一方、中央処理装置54から出力される信号(情報)としては、オーガ昇降シリンダ130を作動させるための信号、オーガ旋回モータ134を作動させるための信号、オーガクラッチ118を作動させるための信号、表示ランプ154の発光色および点灯または点滅により穀物排出装置15の状態を示すための信号、タンク昇降シリンダ31を作動させるための信号、印刷装置39を作動させるための信号、表示装置42に表示させるための信号、通信装置43を作動させるための信号などがある。
【0063】
続いて、制御手段53を用いた自動旋回作業(オートリターン作業およびオートセット作業)及び穀粒の排出作業ついて、図10及び図11を用いて説明する。
図10に示す如く、横排出オーガ15bの旋回位置としてコンバイン201の機体前方やや左寄りとなる方向に収納位置が設定される。また、機体右側方となる方向に右側方作業位置、機体後方となる方向には後方作業位置、機体左側方となる方向には左側方作業位置がそれぞれ設定される。そして、これら収納位置や右側方作業位置、後方作業位置、左側方作業位置に横排出オーガ15bが位置するときのオーガ旋回角センサ135の信号(電流値または電圧値)に関する情報が記憶部55に予め記憶されている。
【0064】
本実施例の自動旋回作業においては、旋回指令手段上のリターンスイッチ152を押したときの横排出オーガ15bの旋回方向は平面視で左回り(反時計回り)である。また、同じく旋回指令手段上のセットスイッチ153を押したときの横排出オーガ15bの旋回方向は平面視で右回り(時計回り)である。
【0065】
図10に示す如く、収納位置に横排出オーガ15bが位置しているときにセットスイッチ153を一回押すと、横排出オーガ15bは旋回時にオーガレスト52と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、収納位置から最も近い作業位置である右側方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
【0066】
次に、右側方作業位置に横排出オーガ15bが位置しているときにセットスイッチ153を一回押すと、横排出オーガ15bは旋回時にコンバイン201の他の部材と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、旋回方向において右側方作業位置から最も近い作業位置である後方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
【0067】
続いて、後方作業位置に横排出オーガ15bが位置しているときにセットスイッチ153を一回押すと、横排出オーガ15bは旋回時にコンバイン201の他の部材と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、旋回方向において後方作業位置から最も近い作業位置である左側方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
【0068】
いずれかの作業位置に横排出オーガ15bが停止しているときにリターンスイッチ152を押すと、横排出オーガ15bは収納位置に向かって旋回し、収納位置にて停止する。また、横排出オーガ15bが旋回中にリターンスイッチ152を押した場合、その操作は受け付けられない。このように構成することにより、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
【0069】
以上のよう構成することにより、収穫した穀物を穀物タンク13から搬送車の荷台などに移載するとき、図12に示すように、セットスイッチ153が押されてONになると(S101)、オーガ昇降シリンダ130及びオーガ旋回モータ134が作動して、横排出オーガ15bが前述のごとくセットスイッチ153を押した回数に応じて作業位置に向かって旋回し、作業位置にて停止する(S102)。
【0070】
そして、オーガクラッチスイッチ155が押されてONになると(S103)、タンク昇降シリンダ31が伸長して穀物タンクが上昇し(S104)、制御バルブ33が中立に戻った後に重量センサにより穀物タンク重量が測定される。測定された穀物タンク重量に関する信号が制御手段53の中央処理装置54に入力され、記憶部55に排出直前の穀物タンク重量が記憶される(S105)。
【0071】
一定時間経過すると(S106)、タンク昇降シリンダ31が短縮して穀物タンクが下降する(S107)。そして、制御バルブ33が中立に戻ると、オーガクラッチ118が「入」となり、穀物タンク13の横送りコンベア16と穀物排出装置15の縦送りコンベア110及び横送りコンベア117とが駆動されて、排出作業が開始し(S108)、横排出オーガ15b先端の穀物排出口138から穀物が排出される。
【0072】
オーガクラッチスイッチ155が押されてOFFになると(S109)、オーガクラッチ118が「切」となり、横送りコンベア16と穀物排出装置15の縦送りコンベア110及び横送りコンベア117とが停止して、排出作業が終了する(S110)。
【0073】
その後、タンク昇降シリンダ31が伸長して穀物タンク13が上昇し(S111)、制御バルブ33が中立に戻った後に重量センサ32により穀物タンク重量が測定される。そして、測定された穀物タンク重量に関する信号が制御手段53の中央処理装置54に入力されて、記憶部55に排出直後の穀物タンク重量が記憶され(S112)、排出直前の穀物タンク重量から排出直後の穀物タンク重量が差し引かれて穀物タンク13の穀物重量が算出される(S113)。さらに、一定時間経過すると(S114)、タンク昇降シリンダ31が短縮して穀物タンクが下降する(S115)。なお、排出位置を変更するために、横排出オーガ15bを若干旋回させて、または昇降させて、再びオーガクラッチ118を作動させることがあり、この場合には、再度穀物重量を測定して前記穀物重量に加算する。
【0074】
そして、リターンスイッチ152が押されてOFFになると(S116)、オーガ旋回モータ134が作動して横排出オーガ15bが収納位置に向かって旋回し、収納位置にて停止する(S117)。続いて、オーガ昇降シリンダ130が作動して、横排出オーガ15bがオーガレスト52に戴置される。
【0075】
最後に、収穫量の積算値によって、メンテナンス内容を表示する構成についてより詳細に説明する。具体的には、前記「今回測定値」と「排出後測定値」を用いて、若しくは前記「収穫量累計」を用いて、コンバイン201が行った作業量の、任意の時点を基準とした積算値に応じて、様々な装置や部品のメンテナンス時期や取替え時期を前記表示装置42に表示する構成について説明する。
まず、記憶装置44には、前記「今回測定値」と「最新全体収穫量」と「排出後測定値」等の他に、エンジン、走行装置、刈取部3の昇降装置、刈取部3の刈刃、作物の穀稈から穀粒を離脱する脱穀部、そして脱穀された穀粒と排藁を選別する選別部(1番コンベア、2番コンベア、揚穀コンベア、排出コンベア、排出オーガ、スクリュー、ベルト、ベアリング、シール)等の作業部、内の様々な装置に関するメンテナンス項目別に、作業量が記憶されている。例えば、「最新刈刃作業量」や「最新抜き胴駆動ベルト作業量」等である。そして、メンテナンス項目別若しくは表示装置44に表示する表示項目別に、「積算設定値」が記憶されている。例えば、刈刃に関しては「積算設定値」が600トン、抜き胴駆動ベルトに関しては「積算設定値」が300トン、等である。
【0076】
そして、前述のように「全体収穫量」若しくは「排出後測定値」を更新すると同時に、前記「今回測定値」と「排出後測定値」をもとに、それぞれ項目別に記憶している「最新刈刃作業量」等を更新していく。具体的には、「最新刈刃作業量」の場合、前述のように「全体収穫量」若しくは「排出後測定値」を求めると同時に、それぞれの項目別に記憶装置44に記憶された「今回測定値」と「最新刈刃作業量」と「排出後測定値」とを引き出して、中央処理装置54にて「刈刃作業量」を演算するのである。ここで、「刈刃作業量」は、
「刈刃作業量」=「今回測定値」+「最新刈刃測定値」−「排出後測定値」
の計算式によって求められるものである。
【0077】
次に、このようにして求められた「刈刃作業量」が予めそれぞれの項目ごとに記憶装置44に記憶された「積算設定値」以上であるか否かを中央処理装置54にて判断する。そして、中央処理装置54で「刈刃作業量」の値が「積算設定値」の値以上であると判断されると、図14に示すように、表示装置42のアラーム部42aにてその旨が表示、警告される。
ここで、前記「刈刃作業量」等のそれぞれのメンテナンス項目に応じた「作業量」は穀物タンク13下部の測定装置30にて求められた収穫量の重量のデータを利用して求めたが、そのような手段に限定するものではない。つまり、該作業量は、実際にそれぞれの装置が可動した可動量を測定して項目別に記憶しても良いものとする。
【0078】
図13のフローチャートと図14を参照しながら、表示装置42のアラーム部42aにメンテナンス時期を表示する方法についてまとめる。ここでは、前述した様々なメンテナンス項目から刈取部3の刈刃についてのメンテナンス時期を表示、警告する場合を例に挙げて説明する。
まず、作業者は必要に応じて、コンバイン201を移動させたり、収穫や脱穀の作業を行う(S21)。そして、一定時間の作業後に、測定装置30によって穀物タンク13の重量の測定が行われ、「全体収穫量」が求められるときに、若しくは穀物タンク13の穀粒を排出し「排出後測定値」を更新した際に、更新された前記「今回測定値」及び「排出後測定値」を記憶装置44から引き出す(S22)。
【0079】
次に、中央処理装置54において、記憶装置44から引き出した「今回測定値」及び「排出後測定値」と「最新刈刃作業量」から「刈刃作業量」を演算する(S23)。前述のように、「刈刃作業量」は、
「刈刃作業量」=「今回測定値」+「最新刈刃作業量」−「排出後測定値」
の計算式によって求められるものである。そして、「刈刃作業量」が求められると、「最新刈刃作業量」を該「刈刃作業量」に更新する。中央処理装置54では、「刈刃作業量」を求めた後、該「刈刃作業量」が、記憶装置44にメンテナンス項別若しくは表示項目別に記憶された「積算設定値」以上であるか否かを判断し(S24)、「積算設定値」以上であれば(Yes)、上記メンテナンス項目に関するメンテナンス情報を図14に示すようにアラーム部42aに表示、警告する(S25)。一方、「積算設定値」以下であれば(No)、アラーム部42aには、何も表示されないので、作業者はそのまま次の収穫を行うことになる(S21)。
【0080】
作業者が、前述のアラーム部42aに表示、警告されたメンテナンス情報を見て、該メンテナンスに関する点検、部品の交換を行った場合は、アラーム部42bの「点検終了スイッチ」を押す(S26)(Yes)。「点検終了スイッチ」が押されると、記憶装置44に記憶されえている「最新刈刃作業量」は0にリセットされる。一方、アラーム部bに表示されたメンテナンス情報の点検や部品の交換を行わなかった場合でも(No)、アラーム部42bの「了解スイッチ」を押すことができる(S27)。「了解スイッチ」を押した場合は(Yes)、前記メンテナンス情報の表示、警告は消えて、「最新刈刃作業量」が0にリセットされて、中央処理装置54において他の「積算設定値」に到達した項目があるか否かが判断される(S24)。そして、了解スイッチを押さなければ(No)、メンテナンス情報の表示、警告は表示されたままになる。
ただし、「了解スイッチ」を押さなくても(No)一定時間が経過すれば、前記メンテナンス情報の表示、警告が消えて、「最新刈刃作業量」が0にリセットされて、中央処理装置54において他の「積算設定値」に到達した項目があるか否かが判断される(S24)、ような構成としても良い。
【0081】
また、それぞれの項目に関する「積算設定値」は、「一次設定値」と「二次設定値」の二種類の設定値が記憶装置44に記憶されるようにしても良い。例えば、刈刃に関しては「一次設定値」が600トン、「二次設定値」が700トン、抜き胴ベルトに関しては「一次設定値」が300トン、「二次設定値」が350トン、等である。
このように、二種類の設定値を記憶させたことにより、「一次設定値」に達したことによって、メンテナンス情報が表示、警告されたときは、前記「了解スイッチ」を押した場合(S27)(Yes)や、「了解スイッチ」押さずにメンテナンスを表示、警告したまま一定時間が過ぎて表示、警告が消えた場合においては、「最新刈刃作業量」が0にリセットされずに、その後の作業によって、「二次設定値」に達したときに同じメンテナンス項目に関して、再度メンテナンス情報を表示、警告することが出来る。再度の表示、警告の場合は、「作業量」が「二次設定値」以上に達した旨を表示するとより好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は本発明の実施の一形態であるコンバイン201の左側面図。
【図2】本発明の実施の一形態であるコンバイン201の平面図。
【図3】本発明の実施の一形態であるコンバイン201の右側面図。
【図4】本発明の実施の一形態であるコンバイン201の正面図。
【図5】穀物タンク13の側面図。
【図6】エンジン101から穀物排出装置15までの動力伝達経路を示す模式図。
【図7】「全体収穫量」の測定方法を示すフローチャート。
【図8】表示装置42を示す正面図。
【図9】表示装置42の第二の実施例を示す正面図。
【図10】穀物排出装置15の収納位置および作業位置とコンバイン201の機体との位置関係を示す平面図。
【図11】制御装置53周辺を示すブロック図。
【図12】穀物重量算出制御フローチャート。
【図13】メンテナンス情報を表示、警告する方法を示すフローチャート。
【図14】メンテナンス情報を表示、警告した状態の表示装置42を示す図。
【符号の説明】
【0083】
13 穀物タンク
30 測定装置
42 表示装置
42a アラーム部
44 記憶装置
53 制御手段
201 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物タンク内の穀物重量を測定する測定装置を備えるコンバインであって、
収穫した穀物重量を累計して全体収穫量の計算をする制御手段と、
該計算された全体収穫量を記憶する記憶装置と、
該計算された全体収穫量を表示する表示装置と、を具備したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御手段に、前記記憶装置に記憶された累計値をリセットするリセット機能を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記累計値が予め設定したメンテナンス値に達したときに、前記表示装置にメンテナンス内容を表示することを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記累計値が予め設定したメンテナンス値に達したときに、警報を発するように構成したことを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−141250(P2006−141250A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333670(P2004−333670)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 (827)
【Fターム(参考)】