説明

コンバイン

【課題】2つの原動機を機体全体の重心位置に対して左右方向に振り分けて配置することにより、機体の左右方向の重量バランスを崩れにくいものとして、機体の直進走行性能を高める。
【解決手段】走行装置(1)の上側にフィードチェン(25)を備えた脱穀装置(4)と穀粒排出装置(23)を備えた穀粒貯留装置(3)とを設け、脱穀装置(4)の前側に刈取装置(5)を設けたコンバインにおいて、走行装置(1)と脱穀装置(4)と穀粒排出装置(23)とを駆動する第1原動機(6)を設けると共に、第1原動機(6)とは独立して刈取装置(5)とフィードチェン(25)とを駆動する第2原動機(68)を設ける。そして、第1原動機(6)と第2原動機(68)とを、機体全体の重心位置に対して左右方向に振り分けて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインは、走行装置の上側にフィードチェンを備えた脱穀装置と穀粒排出装置を備えた穀粒貯留装置とを搭載し、脱穀装置の前側に刈取装置を設けて構成している。そして、単一のエンジンによってこれら全ての装置を分岐伝動する構成である。
【0003】
また、特許文献1に例示するように、走行装置を駆動する第1エンジンと、この第1エンジンとは独立して作業機を駆動する第2エンジンとを設けた作業車輌が知られている。
このように構成することにより、総負荷を分担して各エンジンを小型化し、単一の高出力の大型エンジンを搭載する場合に比較して、安価に提供しようとするものである。
【特許文献1】実用新案登録第2520997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、走行装置を駆動する第1エンジンと、この第1エンジンとは独立して作業機を駆動する第2エンジンとを搭載する場合、単一の高出力のエンジンを搭載する場合に比較してエンジンの総重量が大きくなる。
【0005】
このため、第1エンジンと第2エンジンとを機体全体の重心位置に対して左右一側に集中して配置した場合、単一の高出力のエンジンを搭載する場合に比較して機体の左右方向の重量バランスが崩れてしまう。
【0006】
この結果、湿田等において、左右一側の走行装置に左右他側の走行装置よりも大きな加重が掛かって沈下しやすくなり、機体の直進走行性能が低下する支障が生じる。
また、上述の特許文献1に記載された作業車輌においては、第1エンジンと第2エンジンとの左右方向での位置関係が記載されておらず、この第1エンジンと第2エンジンとが機体の左右方向の重量バランスを改善する位置に配置されるものか不明である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、走行装置(1)の上側にフィードチェン(25)を備えた脱穀装置(4)と穀粒排出装置(23)を備えた穀粒貯留装置(3)とを設け、前記脱穀装置(4)の前側に刈取装置(5)を設けたコンバインにおいて、前記走行装置(1)と脱穀装置(4)と穀粒排出装置(23)とを駆動する第1原動機(6)を設けると共に、該第1原動機(6)とは独立して前記刈取装置(5)とフィードチェン(25)とを駆動する第2原動機(68)を設け、該第1原動機(6)と第2原動機(68)とを、機体全体の重心位置に対して左右方向に振り分けて配置したことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0008】
これにより、第1原動機6と第2原動機68とが、機体全体の重心位置に対して左右方向に振り分けて配置されることにより、機体の左右方向の重量バランスが崩れにくく、走行装置1に掛かる荷重が左右一側に偏倚しにくくなる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記第1原動機(6)の出力を第2原動機(68)の出力よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
これにより、駆動負荷の大きい走行装置1と脱穀装置4と穀粒排出装置23とが出力の大きい第1原動機6によって駆動され、駆動負荷の小さな刈取装置5とフィードチェン25とは出力の小さい第2原動機68によって駆動される。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、単一の始動操作手段(108)の始動操作に基づいて前記第1原動機(6)と第2原動機(68)とを共に始動させる連繋手段(103)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0011】
これにより、単一の始動操作手段108を始動操作すると、第1原動機6と第2原動機68とが連繋手段103によって共に始動する。
また、請求項4記載の発明は、単一の停止操作手段(107)の停止操作または機体各部に設けた異常検出手段(104)による異常検出結果に基づいて前記第1原動機(6)と第2原動機(68)とを共に停止させる連繋手段(103)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0012】
これにより、単一の停止操作手段107の停止操作または機体各部に設けた異常検出手段104による異常検出結果に基づいて、第1原動機6と第2原動機68とが共に停止する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によると、第1原動機6と第2原動機68とが、機体全体の重心位置に対して左右方向に振り分けて配置されることにより、機体の左右方向の重量バランスが崩れにくく、走行装置1に掛かる荷重が左右一側に偏倚しにくくなって機体の直進走行性能を高めることができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、駆動負荷の大きい走行装置1と脱穀装置4と穀粒排出装置23とを出力の大きい第1原動機6によって駆動し、駆動負荷の小さい刈取装置5とフィードチェン25とを出力の小さい第2原動機68によって駆動することにより、駆動負荷に応じた出力のエンジンに設定することによって機体重量の増加を少なくして、機体の直進走行性能および湿田走破性能を向上させることができる。
【0015】
また、請求項3記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、単一の始動操作手段108によって第1原動機6と第2原動機68とを共に始動できるので、第1原動機6と第2原動機68とを別々に始動操作する構成に比較して原動機の始動操作が容易に行え、コンバインの操作性を向上させることができる。
【0016】
また、請求項4記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、単一の停止操作手段107の停止操作に基づいて、第1原動機6と第2原動機68とを共に停止させることができるので、第1原動機6と第2原動機68とを別々に停止操作する構成に比較して原動機の停止操作が容易に行え、コンバインの操作性を向上させることができる。また、機体各部に設けた異常検出手段104による異常検出結果に基づいて、第1原動機6と第2原動機68とを共に停止させることができるので、異常発生箇所の破損を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明における走行装置の実施の形態を、自脱型のコンバインを例示して説明する。
図1〜図3に示すように、コンバインの機体は、走行装置1上側の前部一側に操縦部2を搭載し、該操縦部2の後側に穀粒貯留装置3を搭載し、該穀粒貯留装置3の側方に脱穀装置4を搭載し、該脱穀装置4の前側に刈取装置5を昇降自在に支持して構成する。
【0018】
前記走行装置1は、第1エンジン(第1原動機)6によって駆動される走行ミッションケース7を設け、該走行ミッションケース7によって駆動される左右の駆動スプロケット8,8と、左右の転輪フレーム9,9の中間部に軸支された転輪10,10群と、転輪フレーム9,9の後端部に軸支された左右の緊張輪11,11とにわたってクローラ12,12を巻き掛けて構成する。
【0019】
前記操縦部2は、前記第1エンジン6を包囲するエンジンカバー13の上側に座席14を設け、該座席14の前方に立設したフロント操作ポスト15の右側上部に操向操作具16と手首載せ台17とを前後に配置して設け、前記座席14の左側方に設けたサイド操作パネル18に主変速レバー(変速操作具)19と副変速レバー20とスロットルレバー21を配置して構成する。
【0020】
前記穀粒貯留装置3は、合成樹脂製のグレンタンク22と、該グレンタンク22の底部に設けた底部搬送螺旋65及びグレンタンク22の後側に縦軸回動自在に立設した揚穀筒23a及び該揚穀筒23aの上端部に上下回動自在に連通した排出筒(図示省略)とからなる穀粒排出装置23とから構成する。尚、前記排出筒は、伸縮駆動装置の駆動によって伸縮自在に構成する。
【0021】
前記脱穀装置4は、扱胴24を内装すると共に側部にフィードチェン25を備えた上側の扱室と、該扱室の後端部に連通して排塵処理胴26を内装した排塵処理室と、該排塵処理胴26の前側において同軸に設けた二番処理胴27を内装する二番処理室と、揺動棚28、唐箕29a、一番移送螺旋30、二番移送螺旋31、排塵ファン32等を備えた下側の選別室とから構成する。前記選別室の前壁の前側から選別風を吹き込む第2唐箕29bを設け、該第2唐箕29bの吹き出し風が、揺動棚28の移送棚28aと選別網28bとの間から後方へ吹き出すように構成する。尚、図1、図3において、41は、排塵処理室の下側に配置した還元螺旋であり、この還元螺旋41によって、排塵処理室から漏下した被処理物を前方へ移送してから揺動棚28上へ放出して再選別する。
【0022】
前記刈取装置5は、機体に対して上下回動自在に支持した主フレーム33と、該主フレーム33の前端部に連結した左右方向のギヤケース34と、該ギヤケース34から前方へ延設した分草パイプ35と、該分草パイプ35の中間部に取り付けた刈刃36と、前記分草パイプ35の先端部に取り付けた分草体37と、前記分草パイプ35の前部と前記ギヤケース34から立ち上げた伝動パイプの上端部とによって支持される引起装置38と、株元側搬送装置39と、該株元側搬送装置39から刈取穀稈を引き継いで前記フィードチェン25へ引き渡す供給搬送装置40とから構成する。
【0023】
しかして、このコンバインの伝動構造について説明する。
まず、第1エンジン6による伝動機構について説明する。
図1に示すように、水冷式の第1エンジン6は、右側のクローラ12の上方に配置され、機体全体の重心位置に対して右側に偏倚して搭載される。該第1エンジン6の外側部に冷却ファン42を設け、該冷却ファン42の外側にはラジエータ43を配置する。そして、該第1エンジン6の内側部から突出する出力軸44に3つの出力プーリ45を設けると共に、該出力軸44の先端部に第2冷却ファン46を取り付ける。
【0024】
そして、前記出力プーリ45と、走行ミッションケース7の上部に取り付けた静油圧式無段変速装置47の油圧ポンプ47aの入力軸47bとの間に伝動ベルト48を巻き掛ける。Aは前記入力軸47bの先端部に取り付けた冷却ファンである。該静油圧式無段変速装置47の油圧モータ47cの出力軸を側部伝動ケース49内の伝動ギヤ機構に入力連動させ、該側部伝動ケース49の出力軸を走行ミッションケース7の副変速軸51にスプライン連結する。該副変速軸51から変速ギヤ機構52を介してセンターギヤ53を連動し、該センターギヤ53の左右両側に設けたサイドクラッチ機構54,54を介して左右のホイルギヤ55,55及び左右の車軸56,56を連動するように構成する。尚、前記静油圧式無段変速装置47の油圧ポンプ47aの斜盤角度を、前記主変速レバー19の前後傾動操作によって調節することにより、左右の車軸56,56の駆動速度が変化し、車速が変速される構成である。また、前記変速ギヤ機構52は、副変速レバー20の前後傾動操作によって操作される。
【0025】
また、前記第1エンジン6の出力プーリ45と、脱穀カウンタケース57から機体内側に突出した入力軸の端部に取り付けた入力プーリ58との間に伝動ベルト59を巻き掛ける。そして、該脱穀カウンタケース57を介して、前記二番処理胴27及び排塵処理胴26と、扱胴24と、揺動棚28と、唐箕29aと、一番移送螺旋30と、二番移送螺旋31と、排塵ファン32と、脱穀装置4の後部に取り付けて脱穀後の排藁を裁断する排藁カッター60とを連動して駆動するように構成する。
【0026】
また、前記第1エンジン6の出力プーリ45と、ベベルギヤ伝動ケース61から機体内側に突出した入力軸の先端の入力プーリ62との間に伝動ベルト63を巻き掛ける。そして、該ベベルギヤ伝動ケース61から後方に突出した出力軸の先端の出力プーリ64と、前記穀粒貯留装置3の底部搬送螺旋65の前方突出端部に設けた入力プーリ66との間に、伝動ベルト67を巻き掛けてテンションクラッチを構成する。
【0027】
次に、第2エンジン(第2原動機)68による伝動機構について説明する。
該空冷式の第2エンジン68は、前記脱穀装置4と刈取装置5との間に配置することにより、左側のクローラ12の上方に配置され、機体全体の重心位置に対して左側に偏倚して搭載される。該第2エンジン68の出力軸69は、該第2エンジン68の外側に突出して設けられ、該突出端部に出力プーリ70を設ける。これにより、第2エンジン68の伝動系のメンテナンスを機体の左側面から容易に行うことができる。そして、該出力プーリ70と、刈取装置5駆動用の静油圧式無段変速装置71の入力軸に設けた入力プーリ72との間に伝動ベルト73を巻き掛ける。前記刈取装置5駆動用の静油圧式無段変速装置71の出力軸に2つの出力プーリ74,74を設け、該一方の出力プーリ74と刈取装置5の入力軸に設けた入力プーリ75との間に伝動ベルト76を巻き掛ける。また、前記他方の出力プーリ74とフィードチェン駆動軸77の内側端部に設けた入力プーリ78との間に伝動ベルト79を巻き掛ける。前記フィードチェン駆動軸77の外側端部にはフィードチェン駆動スプロケット80を取り付けてフィードチェン25の前端部を巻き掛ける。また、前記フィードチェン駆動軸77の中間部に設けた出力プーリ81と、前記第2唐箕29bの回転軸端部に設けた入力プーリ82との間に伝動ベルト83を巻き掛ける。尚、前記第2唐箕29bの回転軸端部と入力プーリ82との間には、逆転を防止するワンウェイクラッチ84を設ける。また、前記第1エンジン6の出力軸44の先端部に設けた第2冷却ファン46からの送風によって、第2エンジン68を冷却できるように構成する。これにより、第1エンジン6の駆動力を利用して第2エンジン68を冷却でき、また、この冷却風が操縦部2とは反対の側に排風されるため、操縦部2の熱気も連れ出され、操縦部2を冷却することができる。
【0028】
そして、前記第1エンジン6のスロットル操作ワイヤ85と、第2エンジン68のスロットル操作ワイヤ86とを、前記スロットルレバー21に連繋して、該スロットルレバー21の操作によって前記第1エンジン6及び第2エンジン68のスロットルが操作されるように構成する。
【0029】
また、前記穀粒貯留装置3におけるグレンタンク22の底部の傾斜面の下側空間に、燃料タンク87を搭載し、該燃料タンク87から、第1燃料管路88と第2燃料管路89とを介して、前記第1エンジン6と第2エンジン68との双方に同じ燃料を供給するように構成する。これにより、燃料管路を短くできる。
【0030】
また、前記前記穀粒貯留装置3におけるグレンタンク22の底部の傾斜面の下側空間には、燃料タンク87の前側に位置して、バッテリー90を搭載する。そして、該バッテリー90から、第1電源供給ライン91と第2電源供給ライン92とを介して、前記第1エンジン6の始動用セルモータと第2エンジン68の始動用セルモータとの双方にエンジン始動用の電力を供給できるように構成する。
【0031】
更に、前記脱穀装置4と穀粒貯留装置3との間の空間部下方に単一のマフラー93を配置し、前記第1エンジン6と第2エンジン68とから、夫々、第1排気管94と第2排気管95とを介してマフラー93に排気を送るように構成する。尚、前記マフラー93の後端部にはフィニッシャとしての排気管96を接続し、該排気管96を機体後方へ向けて設ける。これにより、排気管を短く構成できる。
【0032】
尚、前記第1エンジン6の出力馬力は、第2エンジン68の出力馬力よりも大きく設定し、それぞれの駆動負荷に応じた出力に設定している。即ち、出力の大きい第1エンジン6によって駆動負荷の大きい走行駆動用の静油圧式無段変速装置47と脱穀装置4と穀粒排出装置(底部搬送螺旋65)とを駆動し、出力の小さい第2エンジン68によって、駆動負荷の小さい刈取装置5、フィードチェン25、第2唐箕29b駆動用の静油圧式無段変速装置71を駆動することにより、バランスの良い伝動構成とすることができる。
【0033】
大型コンバインのように高出力のエンジンを操作席下部に搭載する場合には、この単一のエンジンを機体全体の動力源とするために、このエンジンが大型化し、それに付随してラジエータ、エアクリーナ、マフラー、エンジンカバー等も大型化する。又、このエンジンの搭載位置の重量が大きくなるために機体の重量バランスも崩れてしまう。更に、操作席が高温、高騒音、高振動にさらされ、操縦環境が悪化する。また、単一のエンジンを搭載する場合、走行、刈取、脱穀の同時作業におけるトータル作業馬力を出力する必要があるため、例えば走行装置、刈取装置、脱穀装置のうちの一部が詰まると、その部分にエンジン馬力が集中的に投入され、詰まり部分の伝動系等が破損してしまう。これに対して、上記のように構成することで、各エンジンの出力を小さいものにでき、上述のような問題を解消することができる。
【0034】
また、図4に示すように、第2エンジン68と静油圧式無段変速装置71とを一体的に構成してもよい。この場合、ギヤ伝動機構97aを内装した伝動ケース97の一側面に第2エンジン68を取り付ける一方、伝動ケース97の他側面に静油圧式無段変速装置71を取り付ける。そして、第2エンジン68の出力軸69に伝動軸69bを接続し、該伝動軸69bを伝動ケース97に貫通させ、該伝動軸69bの突出端部から静油圧式無段変速装置71の油圧ポンプ98を駆動するように構成する。また、前記静油圧式無段変速装置71の油圧モータ99の出力軸を伝動ケース97内のギヤ伝動機構97aに連動させ、該ギヤ伝動機構97aの出力軸97bの突出端部に刈取出力プーリ100とフィードチェン出力プーリ101とを設ける。この構成により、第2エンジン68と静油圧式無段変速装置71との間の伝動機構を簡略化して安価に製造できると共に故障を少なくすることができる。
【0035】
また、図3に示すように、揺動棚28におけるシーブ28cの上側に、該シーブ28c上の被選別物の層厚を検出することのできる層厚センサ(異常検出手段)102を設けると共に、図5に示すような連繋手段を構成してもよい。
【0036】
即ち、図5に示すように、連繋手段としてのコントローラ103に対して、その入力側に、詰まりセンサー(異常検出手段)104と、第1エンジン停止スイッチ105と、第2エンジン停止スイッチ106と、第1エンジン6と第2エンジン68とを同時に停止させることのできるエンジン停止スイッチ(単一の停止操作手段)107と、第1エンジン6と第2エンジン68とを同時に始動させることのできるエンジン始動スイッチ(単一の始動操作手段)108と、第1エンジン6の停止状態を検出する第1エンジン停止検出センサー109と、第2エンジン68の停止状態を検出する第2エンジン停止検出センサー110とを接続する。そして、前記コントローラ103に対して、その出力側に、第1エンジン6を停止させる第1エンジン停止アクチュエータ111と、第2エンジン68を停止させる第2エンジン停止アクチュエータ112と、第1エンジン6を始動させる第1エンジンスタータ113と、第2エンジン68を始動させる第2エンジンスタータ114とを接続する。
【0037】
この構成により、単一のエンジン始動スイッチ108を操作すると、コントローラ103から第1エンジンスタータ113と第2エンジンスタータ114とに出力がなされ、第1エンジン6と第2エンジン68とが略同時に始動する。また、単一のエンジン停止スイッチ107を操作すると、コントローラ103から第1エンジン停止アクチュエータ111と第2エンジン停止アクチュエータ112とに出力がなされ、第1エンジン6と第2エンジン68とが略同時に停止する。このように、単一のスイッチの操作によって第1エンジン6と第2エンジン68との両方を始動および停止操作できるため、操作性が向上する。
【0038】
また、前記層厚センサ102が所定厚さ以上の被選別物の層厚を検出した場合に、コントローラ103から第1エンジン停止アクチュエータ111と第2エンジン停止アクチュエータ112とに出力がなされ、第1エンジン6と第2エンジン68とを略同時に自動停止させる。これにより、選別棚28上の被選別物が過大な量となって詰まりが発生するような状態になった場合に、第1エンジン6と第2エンジン68とを自動的に停止させることにより、この揺動棚28上の被選別物の詰まりを除去する作業や修理作業を安全に行なうことができる
また、前記詰まりセンサー104及び第1エンジン停止検出センサー109又は第2エンジン停止検出センサー110によって、第1エンジン6又は第2エンジン68のいずれかが過負荷によって停止したことが検出されると、コントローラ103から第2エンジン停止アクチュエータ112又は第1エンジン停止アクチュエータ111に出力がなされ、駆動していた側のエンジンが自動停止するように構成してもよい。即ち、一方のエンジンが過負荷で停止した場合には、刈取脱穀作業が行なえなくなるため、他方のエンジンも停止させることによって、トラブルを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施例におけるコンバインの説明用平面図である。
【図2】第2実施例におけるコンバインの説明用平面図である。
【図3】第3実施例におけるコンバインの説明用側面図である。
【図4】第2エンジンと静油圧式無段変速装置との一体化構造を示す説明図である。
【図5】実施例におけるブロック回路図である。
【符号の説明】
【0040】
1 走行装置
3 穀粒貯留装置
4 脱穀装置
5 刈取装置
6 第1エンジン(第1原動機)
23 穀粒排出装置
25 フィードチェン
68 第2エンジン(第2原動機)
103 連繋手段
104 異常検出手段
107 停止操作手段
108 始動操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(1)の上側にフィードチェン(25)を備えた脱穀装置(4)と穀粒排出装置(23)を備えた穀粒貯留装置(3)とを設け、前記脱穀装置(4)の前側に刈取装置(5)を設けたコンバインにおいて、前記走行装置(1)と脱穀装置(4)と穀粒排出装置(23)とを駆動する第1原動機(6)を設けると共に、該第1原動機(6)とは独立して前記刈取装置(5)とフィードチェン(25)とを駆動する第2原動機(68)を設け、該第1原動機(6)と第2原動機(68)とを、機体全体の重心位置に対して左右方向に振り分けて配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第1原動機(6)の出力を第2原動機(68)の出力よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
単一の始動操作手段(108)の始動操作に基づいて前記第1原動機(6)と第2原動機(68)とを共に始動させる連繋手段(103)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
単一の停止操作手段(107)の停止操作または機体各部に設けた異常検出手段(104)による異常検出結果に基づいて前記第1原動機(6)と第2原動機(68)とを共に停止させる連繋手段(103)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161067(P2008−161067A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350993(P2006−350993)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】