説明

コンバイン

【課題】走行部や作業部等の各部をエンジン及び電動モータにより駆動するハイブリッド式のコンバインに関し、電動モータの破損等の緊急時であっても作業を中断することなく運転が可能なコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】走行部(20L,20R)と、作業部(3)と、各部を駆動させるエンジン(24)とを備えたコンバインにおいて、電動モータ(56)と、該電動モータ(56)に電力を供給する蓄電装置(53)及び発電装置(51)を設け、前記作業部(3)の少なくとも一部を電動モータ(56)によって駆動せしめ、エンジン(24)からの動力によって蓄電装置(53)又は電動モータ(56)側への供給電力を発電するように発電装置(51)を構成すると共に、前記電動モータ(56)によって駆動される作業部(4,5)を、エンジン(24)の動力によって切換駆動可能とする駆動手段(K)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行部や作業部等の各部をエンジン及び電動モータにより駆動するハイブリッド式のコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
機体を走行させる走行部と、穀稈の刈取を行う刈取部、刈取穀稈の脱穀処理を行う脱穀部及び脱穀処理された処理物の選別処理を行う選別部等を備え、走行部と脱穀部及び選別部等をエンジン動力によって駆動し、刈取部及びフィードチェーン装置を電動モータによって駆動させる特許文献1に示すコンバインが公知になっている。
【特許文献1】特開2007−244329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記文献のコンバインは、電動モータ等にトラブルが発生した時に運転不能となる為、作業が出来なくなるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、電動モータの破損等の緊急時であっても作業を中断することなく運転が可能なコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明のコンバインは、第1に、機体を走行させる走行部と、穀稈の刈取りを行う刈取部、刈取り穀稈の脱穀処理を行う脱穀部、脱穀処理された処理物の選別処理を行う選別部及び脱穀処理後の排藁の処理を行う後処理部等を有する作業部と、各部を駆動させるエンジンとを備えたコンバインにおいて、電動モータと、該電動モータに電力を供給する蓄電装置及び発電装置を設け、前記作業部の少なくとも一部を電動モータによって駆動せしめ、エンジンからの動力によって蓄電装置又は電動モータ側への供給電力を発電するように発電装置を構成すると共に、前記電動モータによって駆動される作業部を、エンジンの動力によって切換駆動可能とする駆動手段を設けたことを特徴としている。
第2に、前記駆動手段は、電動モータのモータ軸にエンジン動力を断続可能に伝動する構成であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
以上のように構成される本発明のコンバインによれば、電動モータによって駆動される作業部を、エンジン動力によっても切換駆動できる構成としたから、例えば電動モータが破損しても作業部が駆動できるので作業を中断すること無く運転が可能となり信頼性が向上した。
また、作業部をエンジン動力で駆動する時に、エンジン動力を直接電動モータのモータ軸に伝動する構成であるから、作業部を電動モータとエンジンにより切換駆動可能でありながら、その構成を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1及び2は、本発明を適用したコンバインの側面図及び平面図であり、図3は、本コンバインの動力伝動系統図である。コンバインは、走行機体15が左右のクローラ式の走行部20L,20Rに支持され、機体前方に前処理部5(刈取部)が昇降自在に連結され、上記機体の左部に脱穀部1と選別部2とが設置されており、上記前処理部5、脱穀部1及び選別部2、後処理部7,10等により作業装置3(作業部)が構成されている。
【0007】
機体前進走行時に前処理部5の刈取刃で刈り取られた穀稈は、前処理部5の搬送体によって後方搬送されて、搬送体後方のフィードチェーン4に渡される。フィードチェーン4に渡された穀稈は脱穀部1を通過する過程で脱穀処理されて排藁となり、排藁チェーン6によって機体の後端部のカッター部7に搬送される。
【0008】
カッター部7に搬送された排藁は、そのまま又は切断処理されて機体後方から機外に排出される。この際、切断処理された切断物は、カッター部7下方の拡散ラセン10によって拡散搬送されて機外に排出される。すなわち、上記カッター部7と拡散ラセン10が脱穀処理後の排藁の処理を行う後処理部になる。
【0009】
一方、脱穀部1の扱胴8及び処理胴9(第2扱胴)の回転によって脱穀処理された処理物は、脱穀部1下方に配置された選別部2内に漏下する。選別部2内に漏下してきた上記処理物は揺動選別体11によって揺動選別されながら、唐箕ファン12、排塵ファン13及び副送風ファン14によって起風される後方斜め上方の選別風によって風選され、一番物は穀粒として一番ラセン16及び揚穀ラセン17を介して機体右部のグレンタンク25内に収容され、二番物は二番ラセン18及び還元ラセン19を介して再度選別室内に還元され、藁屑は機体後方から機外に排出される。グレンタンク25内の穀粒は、横ラセン21、縦ラセン22及び排出ラセン23を介して排出オーガ35先端部から機外に排出される。
【0010】
次に、図3に基づき、本コンバインの動力伝動機構について説明する。
エンジン24で発生させた回転動力は出力軸S1に伝動される。出力軸S1には、出力軸S1と一体回転する第1プーリ27、第2プーリ28、第3プーリ29、第4プーリ30及び第5プーリ65が一体的に固定されている。
【0011】
上記第1プーリ27の動力は横ラセン21に伝動され、横ラセン21の動力は縦ラセン22に伝動され、縦ラセン22の動力は排出ラセン23に伝動される。
【0012】
上記第2プーリ28の動力は、油圧式無段階変速機であるHST31及びトランスミッション32を介して、左走行部駆動用の左ドライブシャフト33Lと、右走行部駆動用の右ドライブシャフト33Rとにそれぞれ伝動される。
【0013】
上記第3プーリ29の動力は、伝動プーリ34と、該伝動プーリ34及び第3プーリ29とに掛け回される伝動ベルト36を介して伝動プーリ34と一体回転する伝動軸S2に伝動される。伝動ベルト36には、テンションプーリ等から構成される作業機クラッチ37が設けられ、該作業機クラッチ37により出力軸S1から伝動軸S2への動力伝動の入切(断続)を行う。
【0014】
伝動軸S2の動力は、該伝動軸S2と一体回転する伝動プーリ38及び伝動プーリ39に伝動される。なお、駆動軸S2は、唐箕ファン12の回転軸も兼ねている。
【0015】
伝動プーリ38の回転動力によって、脱穀部1を構成する扱胴8及び処理胴9と、排藁チェーン6とが駆動される。具体的には、伝動プーリ38の動力が伝動ベルト41及びベベルギヤ42等を介して伝動軸S3に伝動される。この伝動軸S3の動力によって扱胴8と処理胴9を回転駆動させる。くわえて、扱胴8の動力は伝動ベルト43等を介して排藁チェーン6に伝動される。
【0016】
伝動プーリ39の回転動力によって、選別部2を構成する揺動選別体11、排塵ファン13、副送風ファン14、一番ラセン16、揚穀ラセン17、二番ラセン18、還元ラセ
ン19、カッター部7及び拡散ラセン10が駆動される。具体的には、上記伝動プーリ39と、2つの伝動軸S4,S5にそれぞれ取付固定される伝動プーリ44,46とに掛け回される伝動ベルト47によって、伝動プーリ39の動力が上記2つの伝動軸S4,S5に伝動される。そして、伝動軸S4の動力によって揺動選別体11、副送風ファン14、一番ラセン16、揚穀ラセン17、二番ラセン18、還元ラセン19、カッター部7及び拡散ラセン10が駆動されるとともに、伝動軸S5の動力によって排塵ファン13が駆動される。
【0017】
上記第4プーリ30の動力は、発電機51(発電装置)の入力軸S6と、入力軸S6と一体回転する入力プーリ48と、第4プーリ30及び入力プーリ48に掛け回される入力ベルト49とを介して、発電機51に入力される。
【0018】
上記発電機51は、ハイブリッドコントローラ52(コントローラ)を介して、バッテリ53(蓄電装置,ハイブリッド用バッテリ)及びモータ56(電動モータ)に電気的に接続されている。なお、上記蓄電装置53はバッテリの他、キャパシタ等によって構成してもよい。
【0019】
入力軸S6に動力を伝動することにより、発電機51は発電を行う。発電機51からの電力は、ハイブリッドコントローラ52を介して、上記バッテリ53及びモータ56に供給される。すなわち、発電機51は、エンジン24からの動力によってバッテリ53及びモータ56への供給電力を発電するように構成されている。
【0020】
なお、バッテリ53で蓄えた電力もハイブリッドコントローラ52を介してモータ56に供給可能であるため、上記モータ56は発電機51側からの電力(電流)供給又はバッテリ53側からの電力(電流)供給によって駆動され、モータ56(刈取搬送モータ)の動力が上記フィードチェーン4及び前処理部5に伝動される。
【0021】
刈取搬送モータ56からフィードチェーン4及び前処理部5への動力伝動について、具体的に説明すると、刈取搬送モータ56の出力軸S7(モータ軸)がギヤケース57(刈取搬送ギヤケース)に入力される。上記ギヤケース57は、2つの伝動軸S8,S9に異なる変速比で、出力軸S7の動力を変速伝動するように構成されている。
【0022】
一方の伝動軸S8はフィードチェーン4を駆動させる。他方の伝動軸S9の動力は、この伝動軸S9と一体回転する伝動プーリ58と、前処理部5を駆動させる駆動軸S10(前処理部駆動軸)と、駆動軸S10と一体回転する駆動プーリ59と、伝動プーリ58及び駆動プーリ59に掛け回される駆動ベルト61とにより、前処理部5に伝動され、前処理部5の刈取刃や搬送体を駆動する。なお、駆動ベルト61には、テンションプーリ等から構成される刈取クラッチ62が設けられ、この刈取クラッチ62によりギヤケース57から前処理部5への動力伝動の入切(断続)を行う。
【0023】
上記出力軸S7のギヤケース57に入力される側と反対側の軸端部は、刈取搬送モータ56本体から突出して延設され、その軸端部に出力軸S7と一体回転する駆動プーリ66が設けられる。上記第5プーリ65の動力は、刈取搬送モータ56の出力軸S7と、駆動プーリ66と、第5プーリ65及び駆動プーリ66に掛け回される駆動ベルト67とを介して、上記フィードチェーン4及び前処理部5に伝動される。尚、駆動ベルト67には、テンションプーリ等から構成される駆動クラッチ68が設けられ、この駆動クラッチ68によりエンジン24からフィードチェーン4及び前処理部5への動力伝動の入切(断続)を行う。即ち、第5プーリ65、駆動プーリ66、駆動ベルト67及び駆動クラッチ68によって、フィードチェーン4及び前処理部5をエンジン24動力によって切換駆動する駆動手段Kを構成しており、駆動手段Kは刈取搬送モータ56の出力軸S7にエンジン2
4動力を断続可能に伝動できる。
【0024】
以上のように、走行部20L,20Rと、作業装置3における脱穀部1、選別部2、後処理部7,10がエンジン24動力によって駆動される一方で、作業装置3のフィードチェーン4及び前処理部5が刈取搬送モータ56の動力によって駆動される。この時、上記駆動手段Kの駆動クラッチ68は切り状態となっており、刈取搬送モータ56の出力軸S7へのエンジン24動力の伝達は断たれている。また、本コンバインは、トランスミッション32側に設けられて車速(機体の走行速度)を検出する車速検出手段71(回転センサ)と、伝動軸S9に設けられて刈取穀稈のフィードチェーン4や前処理部5による搬送速度を検出する搬送速度検出手段72(回転センサ)とを備え、この車速検出手段71及び搬送速度検出手段72の検出に基づいて上記コントローラ52により刈取搬送モータ56の駆動制御を行うことで、フィードチェーン4及び前処理部5の搬送速度の駆動制御を行っている。具体的には、走行速度が速くなると搬送速度を速くする一方で走行速度が遅くなると搬送速度も遅くなるように、フィードチェーン4及び前処理部5の駆動を制御している。
【0025】
また、本コンバインは、エンジン24の回転数を検出することによりエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段73(回転センサ)を備えると共に、エンジン24の動力によって発電機51により発電を行う発電モードと、発電機51による発電を停止させる発電停止モードとの2つのモードを有している。即ち、エンジン負荷検出手段73で検出したエンジン負荷が大きい時には発電停止モードに移行し、バッテリ53に蓄えた電力によってフィードチェーン4及び前処理部5を駆動させることにより、発電機51を動かすエンジン24負荷を低減させて、エンジン24回転数が低下して作業装置3に作動不良が発生するのを防止できる。
【0026】
上記構成により、本コンバインは、エンジン24の動力によって発電機51による発電を行い、この発電力によって刈取搬送モータ56を駆動してフィードチェーン4及び前処理部5の駆動を行う。そして、刈取搬送モータ56の故障やバッテリ切れ等のトラブルが発生して刈取搬送モータ56が動かなくなった場合には、前記駆動手段Kの駆動クラッチ68を入り状態とし、第5プーリ65、駆動プーリ66及び駆動ベルト67を介してエンジン24動力を刈取搬送モータ56の出力軸S7へ伝動し、出力軸S7を介してエンジン24動力によってフィードチェーン4及び前処理部5を定速駆動できる。前記駆動手段Kの駆動切換(駆動クラッチ68の入切切換)は、コンバイン操縦部に駆動クラッチ68を入切操作可能なクラッチ操作手段を設け、刈取搬送モータ56の故障やバッテリ切れが発生する等で刈取搬送モータ56が動かなくなった場合に、手動操作により行う構成とする。また、上記手動操作に代えて、刈取搬送モータ56の故障を電流値によって検出し、アクチュエータを介して駆動手段Kを切換制御することで、駆動手段Kの駆動切換(駆動クラッチ68の入切切換)を行う構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用したコンバインの側面図である。
【図2】本発明を適用したコンバインの平面図である。
【図3】本コンバインの動力伝動系統図である。
【符号の説明】
【0028】
1 脱穀部
2 選別部
3 作業装置(作業部)
5 前処理部(刈取部)
7 カッター部(後処理部)
10 拡散ラセン(後処理部)
20L 走行部
20R 走行部
24 エンジン
51 発電機(発電装置)
53 バッテリ(蓄電装置,ハイブリット用バッテリ)
56 モータ(電動モータ,刈取搬送モータ)
S7 出力軸(モータ軸)
K 駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を走行させる走行部(20L),(20R)と、穀稈の刈取りを行う刈取部(5)、刈取り穀稈の脱穀処理を行う脱穀部(1)、脱穀処理された処理物の選別処理を行う選別部(2)及び脱穀処理後の排藁の処理を行う後処理部(7),(10)等を有する作業部(3)と、各部を駆動させるエンジン(24)とを備えたコンバインにおいて、電動モータ(56)と、該電動モータ(56)に電力を供給する蓄電装置(53)及び発電装置(51)を設け、前記作業部(3)の少なくとも一部を電動モータ(56)によって駆動せしめ、エンジン(24)からの動力によって蓄電装置(53)又は電動モータ(56)側への供給電力を発電するように発電装置(51)を構成すると共に、前記電動モータ(56)によって駆動される作業部(4),(5)を、エンジン(24)の動力によって切換駆動可能とする駆動手段(K)を設けたコンバイン。
【請求項2】
前記駆動手段(K)は、電動モータ(56)のモータ軸(S7)にエンジン(24)動力を断続可能に伝動する構成である請求項1のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−240263(P2009−240263A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92666(P2008−92666)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】