コンバイン
【課題】 コンバイン全体としての左右幅を極力小さくする。
【解決手段】 脱穀装置6に、扱胴41が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部39と、脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部40とを、脱穀部39の下方に前記選別回収部40が位置するように装備し、選別回収部40により選別回収した穀粒を、脱穀装置6の横側方に隣接配備した穀粒貯留部7に、脱穀装置6と穀粒貯留部7との間に立設した揚送コンベヤ68を介して供給し、選別回収部40を、その左右中心Cが扱胴41の回転中心a1の真下または真下近くに位置するように配置してある。
【解決手段】 脱穀装置6に、扱胴41が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部39と、脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部40とを、脱穀部39の下方に前記選別回収部40が位置するように装備し、選別回収部40により選別回収した穀粒を、脱穀装置6の横側方に隣接配備した穀粒貯留部7に、脱穀装置6と穀粒貯留部7との間に立設した揚送コンベヤ68を介して供給し、選別回収部40を、その左右中心Cが扱胴41の回転中心a1の真下または真下近くに位置するように配置してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部と、前記脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部とを、前記脱穀部の下方に前記選別回収部が位置するように装備し、前記選別回収部により選別回収した穀粒を、前記脱穀装置の横側方に隣接配備した穀粒貯留部に、前記脱穀装置と前記穀粒貯留部との間に立設した揚送コンベヤを介して供給するように構成してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、上記のようなコンバインにおいて、脱穀部は、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施すように構成されている。そのため、その脱穀処理で得られた処理物は、脱穀部における扱胴の回転方向下手側となる機体の左右一側方に向かいながら下方の選別回収部に供給されることになる。
【0003】
そこで、従来では、脱穀部に対して選別回収部を、扱胴の回転方向下手側となる機体の左右一側方に片寄せて配備することにより、脱穀部からの処理物を、極力、選別回収部に対して左右均等に供給することが考えられていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−274675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンバインにおいては、選別回収部から穀粒貯留部にわたる穀粒の搬送径路を極力短くするなどの点から、穀粒貯留部を、脱穀装置の横側方として、脱穀部に対して選別回収部を片寄せた左右一側方側の横側方に隣接配備することが一般的である。そのため、脱穀部に対して選別回収部を機体の左右一側方に片寄せて配備すると、それに伴って、揚送コンベヤおよび穀粒貯留部も機体の左右一側方に片寄せて配備する必要が生じることになる。その結果、コンバイン全体としての左右幅が大きくなる不都合を招くことになる。
【0005】
上記の不都合を回避する手段として、穀粒貯留部の左右幅を狭くすることが考えられるが、この場合には、穀粒貯留部の容量を低下させることになる。
【0006】
本発明の目的は、穀粒貯留部の容量を低下させることなくコンバイン全体としての左右幅を極力小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
脱穀装置に、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部と、前記脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部とを、前記脱穀部の下方に前記選別回収部が位置するように装備し、
前記選別回収部により選別回収した穀粒を、前記脱穀装置の横側方に隣接配備した穀粒貯留部に、前記脱穀装置と前記穀粒貯留部との間に立設した揚送コンベヤを介して供給し、
前記選別回収部を、その左右中心が前記扱胴の回転中心の真下または真下近くに位置するように配置してあることを特徴とする。
【0008】
この特徴構成によると、選別回収部を、その左右中心が扱胴の回転中心の真下位置から扱胴の回転方向下手側(左右一側方)に離れるように、脱穀部に対して機体の左右一側方に片寄せて配備する場合に比較して、揚送コンベヤおよび穀粒貯留部を、脱穀装置に近づけた状態で配備することができる。
【0009】
従って、穀粒貯留部の容量を低下させることなくコンバイン全体としての左右幅を小さくすることができる。
【0010】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記穀粒貯留部における前記脱穀装置との隣接面に、揚送コンベヤが係入される凹部を形成してあることを特徴とする。
【0011】
この特徴構成によると、穀粒貯留部を脱穀装置にさらに近づけることができ、その分、コンバイン全体の左右幅をさらに小さくすることができる。また、凹部の形成によって低下する穀粒貯留部の容量を、例えば、穀粒貯留部における脱穀装置との隣接面とは反対側の面の全域を拡張して補うようにすれば、コンバイン全体としての左右幅を極力小さくしながら、穀粒貯留部の容量の低下を回避することができる。
【0012】
従って、穀粒貯留部の容量の低下を抑制または回避しながら、コンバイン全体としての左右幅をさらに小さくすることができる。
【0013】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の発明において、
前記刈取搬送装置を、通常2条で最大3条の刈り取り搬送が可能となるように構成し、
前記刈取搬送装置の左右両端部に備えたデバイダの先端が、左右の対応するクローラ式走行装置の機体外側端位置と略一致あるいは一致するように、左右の前記クローラ式走行装置を配備してあることを特徴とする。
【0014】
この特徴構成によると、機体の左右両側方に収穫対象外の植立穀稈が存在する中割り作業や、機体の左右一側方に収穫対象外の植立穀稈が存在する回り刈り作業などにかかわらず、左右のクローラ式走行装置により収穫対象外の植立穀稈を踏み倒す不都合を招くことなく、左右両端のデバイダの間に存在する最大3条の植立穀稈を刈取搬送装置により適切に刈り取って脱穀装置に向けて搬送することができる。
【0015】
そして、左右のクローラ式走行装置のトレッドを、左右のクローラ式走行装置による収穫対象外の植立穀稈の踏み倒しを招くことなく、刈取搬送装置による最大3条の植立穀稈の刈り取り搬送を可能にするのに適した比較的短い長さに設定しながらも、前述したように、コンバイン全体としての左右幅を小さくすることにより、左右のクローラ式走行装置のトレッドとコンバイン全体の左右幅との差を小さくすることができる。その結果、コンバイン全体の左右幅が、左右のクローラ式走行装置のトレッドに対して大きくなることに起因して、機体の転倒角が小さくなる不都合を効果的に抑制することができ、機体の安定性を向上させることができる。
【0016】
なお、ここでいう機体の転倒角とは、機体を左右方向に傾斜させた際に機体が転倒する虞のある角度であり、その角度が大きいほど機体の安定性が高くなる。
【0017】
従って、最大3条の植立穀稈を収穫する小型機種でありながら、左右のクローラ式走行装置による植立穀稈の踏み倒しを招くことなく、また、機体の安定性を損なうことなく、収穫作業を良好に行うことができる作業性に優れた自脱型コンバインを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明を、通常2条で最大3条の植立穀稈の収穫が可能に構成された全面2条刈り仕様の自脱型コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には全面2条刈り仕様に構成した自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が、図3にはその全体正面が、それぞれ示されている。これらの図に示すように、本実施形態で例示する自脱型コンバインは、角パイプなどの複数の部材により形成した機体フレーム1に、搭乗運転部2、エンジン3、左右一対のクローラ式走行装置4、刈取搬送装置5、脱穀装置6、および、穀粒貯留部としての穀粒タンク7、などを備えて構成されている。
【0020】
搭乗運転部2は、機体フレーム1の右前半部に、フロントパネル8、サイドパネル9、フロアパネル10、および座席台11、などを配備して形成されている。フロントパネル8には、十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー12などが装備されている。サイドパネル9には、揺動式で位置保持型の変速レバー13などが装備されている。座席台11には運転座席14が装備されている。
【0021】
エンジン3は、運転座席14の下方に、その出力軸3Aが左右向きになる姿勢で配備されている。エンジン3の前部および上部は、エンジンカバーに兼用される座席台11により覆われている。エンジン3の右側部は、除塵網(図示せず)を備えたサイドカバー15により覆われている。
【0022】
図4〜7に示すように、左右のクローラ式走行装置4には、エンジン3からの動力が、ベルト伝動式の伝動機構16、静油圧式の無段変速装置(以下、HSTと略称する)17、および、ミッションケース18の内部に備えた左右の対応するサイドクラッチ19、などを介して伝達される。左右のクローラ式走行装置4は、ミッションケース18の内部に備えた左右の対応するサイドブレーキ20により制動される。HST17は、変速レバー13の揺動操作に基づいて変速作動するように、その変速操作軸(図示せず)が連係機構(図示せず)を介して変速レバー13に連係されている。左右のサイドクラッチ19および左右のサイドブレーキ20は、油圧式で、操縦レバー12の左右方向への揺動操作に基づく油圧制御により、それらの作動が制御されるように、操縦レバー12に油圧制御回路(図示せず)などを介して連係されている。
【0023】
この構成から、変速レバー13を揺動操作することにより、左右の両クローラ式走行装置4の駆動状態を、駆動停止状態と前進駆動状態と後進駆動状態とに無段階に切り換えることができるとともに、前進駆動状態と後進駆動状態とのそれぞれにおける左右の両クローラ式走行装置4の駆動速度を無段階に変更することができる。また、前進駆動状態または後進駆動状態において、操縦レバー12を左右方向に揺動操作することにより、左右のクローラ式走行装置4による走行状態を、左右のクローラ式走行装置4を等速駆動させた直進状態と、左右一方のクローラ式走行装置4を駆動し、かつ、他方のクローラ式走行装置4への伝動を遮断した緩旋回状態と、この緩旋回状態において他方のクローラ式走行装置4を制動した急旋回状態とに切り換えることができる。
【0024】
図1〜3に示すように、刈取搬送装置5は、刈取フレーム21に、3つのデバイダ22、左右一対の引起機構23、バリカン型の刈取機構24、補助搬送機構25、および穀稈搬送機構26、などを備えて、搭乗運転部2の左側方箇所から機体フレーム1の前方に向けて延出するように構成されている。
【0025】
図4〜7に示すように、刈取フレーム21は、機体フレーム1の左前端部に立設した支持フレーム27の上端部に昇降揺動可能に支持されている。刈取フレーム21の内部には、エンジン3からの動力を、左右の引起機構23、刈取機構24、補助搬送機構25、および穀稈搬送機構26、に伝達する軸伝動式の伝動機構28が備えられている。伝動機構28は、左右向きの入力軸28A、および、刈取フレーム21の内部に備えた複数の伝動軸(図示せず)やベベルギヤ(図示せず)、などにより構成されている。伝動機構28の入力軸28Aには、エンジン3からの動力が、HST17の入力軸17Aやベルトテンション式の刈取クラッチ29、などを介して伝達される。
【0026】
図1〜3に示すように、各デバイダ22は、機体の前進走行に伴って、収穫対象の植立穀稈を収穫対象外の植立穀稈と梳き分けて梳き起こす。左右の引起機構23は、梳き起こされた収穫対象の植立穀稈を所定の刈取姿勢に引き起こす。刈取機構24は、引き起こされた収穫対象の植立穀稈の株元側を切断する。補助搬送機構25は、切断後の植立穀稈である刈取穀稈を穀稈搬送機構26の搬送始端位置に向けて寄せ集める。穀稈搬送機構26は、寄せ集めされた刈取穀稈を刈り取り用の起立姿勢から脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置6に向けて搬送する。
【0027】
刈取搬送装置5は、機体フレーム1と刈取フレーム21とにわたって架設した昇降シリンダ30が作動することにより昇降揺動する。昇降シリンダ30には、作動油の供給による伸長作動により刈取搬送装置5を上昇させ、作動油の排出による収縮作動により刈取搬送装置5を下降させる単動型の油圧シリンダが採用されている。昇降シリンダ30は、操縦レバー12の前後方向への揺動操作に基づく油圧制御により、その作動が制御されるように、操縦レバー12に油圧制御回路(図示せず)などを介して連係されている。
【0028】
この構成から、操縦レバー12を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置5を、下限側の作業領域と上限側の非作業位置とにわたって昇降させることができ、作業領域においては、植立穀稈に対する刈り高さ位置を任意の高さ位置に調節することができる。
【0029】
図3に示すように、刈取搬送装置5の左端部に配備したデバイダ22は、機体の左右方向において、その先端が左側のクローラ式走行装置4の左端位置(機体外側端位置)と一致するように配置設定されている。刈取搬送装置5の右端部に配備したデバイダ22は、機体の左右方向において、その先端が右側のクローラ式走行装置4の右端位置(機体外側端位置)と略一致するように配置設定されている。これにより、機体の左右両側方に未刈り穀稈(収穫対象外の植立穀稈)が存在する中割り作業や、機体の左側方に未刈り穀稈が存在する回り刈り作業などにかかわらず、左右のクローラ式走行装置4による未刈り穀稈の踏み倒しを招くことなく、左右両端のデバイダ22の間に存在する最大3条の植立穀稈を刈取搬送装置5により適切に刈り取って脱穀装置6に向けて搬送することができる。
【0030】
なお、刈取搬送装置5においては、刈取搬送装置5の左端部に配備したデバイダ22を、その先端が左側のクローラ式走行装置4の左端位置と略一致するように配置設定してもよい。また、刈取搬送装置5の右端部に配備したデバイダ22を、その先端が右側のクローラ式走行装置4の右端位置と一致するように配置設定してもよい。
【0031】
図1〜3および図8〜11に示すように、脱穀装置6には下部ケース31と上部ケース32とが備えられている。下部ケース31は、機体フレーム1の左半部に載置されており、その右上部には前後向きの支軸33が配備されている。上部ケース32は、前後向きの支軸33を支点にした開閉揺動操作が可能となるように、その支軸33を介して下部ケース31に連結されている。脱穀装置6の左端部には、刈取搬送装置5により搬送された刈取穀稈の株元側を挟持して後方に向けて搬送する挟持搬送機構34が備えられている。挟持搬送機構34は、下部ケース31に備えたフィードチェーン35、および、上部ケース32に備えた挟持杆36と挟持レール37、などにより構成されている。挟持搬送機構34により搬送される刈取穀稈は、その穂先側が、下部ケース31と上部ケース32との間に形成した供給口38から脱穀装置6の内部に供給される。
【0032】
図8〜11に示すように、脱穀装置6の内部には、供給口38から供給された刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す脱穀部39、および、その脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して単粒化穀粒を回収する選別回収部40、が備えられている。脱穀部39は、上部ケース32に備えた扱胴41や、下部ケース31に備えた受網42などにより構成されている。選別回収部40は、下部ケース31に備えた揺動選別機構43や唐箕44、および、下部ケース31に形成した1番回収領域45や2番回収領域46、などにより構成されている。
【0033】
図4〜6および図8〜13に示すように、脱穀部39において、扱胴41は、前後向きの軸心a1を中心にした回転駆動が可能となるように上部ケース32に支持されている。受網42は、扱胴41の下部側を下方から所定間隔を隔てて覆うように下部ケース31に敷設されている。扱胴41には、エンジン3からの動力が、ベルトテンション式の脱穀クラッチ47、伝動ケース48の内部に備えた第1伝動機構49、および、ベルト伝動式の第2伝動機構50、を介して伝達される。扱胴41は、エンジン3からの動力により正面視右回りに回転駆動される。この回転駆動により、扱胴41は、受網42との間に供給された刈取穀稈の穂先側や、受網42との間に滞留した処理物などに脱穀処理を施す。受網42は、この脱穀処理で得られた単粒化穀粒などを揺動選別機構43の前半部に向けて漏下させる。受網42から漏下しなかった枝梗付き穀粒や二股粒などは、脱穀部39の後下部に形成した送塵口51から揺動選別機構43の後半部に向けて排出される。
【0034】
選別回収部40において、揺動選別機構43は、平面視矩形状に形成した選別ケース52の上部側に、粗選別用のグレンパン53、粗選別用の第1チャフシーブ54、粗選別用の第1ストローラック55、粗選別用の第2チャフシーブ56、および、粗選別用の第2ストローラック57を備え、選別ケース52の下部側に、精選別用のグレンパン58、および、精選別用のグレンシーブ59を備えて構成されている。選別ケース52は、その前端部が左右一対の揺動アーム60を介して下部ケース31に支持されている。選別ケース52の後端部は、偏心カム式の駆動機構61を介して下部ケース31に支持されている。唐箕44は、左右向きの軸心a2を中心にした回転駆動が可能となるように、下部ケース31の前下部に備えた唐箕ケース62に支持されている。唐箕ケース62は、唐箕44を前方側から覆う形状で、下部ケース31の前下部から前方に向けて膨出するように形成されている。
【0035】
唐箕44には、エンジン3からの動力が、脱穀クラッチ47とベルト伝動式の伝動機構63とを介して伝達される。駆動機構61には、唐箕44に伝達した動力が、脱穀装置6の左側部に配備したベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。この動力により、駆動機構61は揺動選別機構43を前後方向に揺動駆動する。この揺動駆動により、揺動選別機構43は脱穀部39からの処理物に篩い選別処理を施す。唐箕44は、エンジン3からの動力で回転することにより、揺動選別機構43の前下方から揺動選別機構43の後上方に向けて流れる選別風を生起して、脱穀部39からの処理物や篩い選別処理中の処理物などに風力選別処理を施す。
【0036】
図8および図9に示すように、1番回収領域45は、揺動選別機構43の前半部から漏下した単粒化穀粒を1番物として回収する。2番回収領域46は、揺動選別機構43の後半部から漏下した枝梗付き穀粒や二股粒などを2番物として回収する。1番回収領域45には、回収した単粒化穀粒を右側方の穀粒タンク7に向けて搬出する1番スクリュー64が配備されている。2番回収領域46には、回収した単粒化穀粒を右側方に向けて搬送する2番スクリュー65が配備されている。1番スクリュー64および2番スクリュー65には、駆動機構61と同様に、唐箕44に伝達した動力がベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。
【0037】
1番スクリュー64は、その右端部が選別回収部40から穀粒タンク7に向けて延出するように形成されている。1番スクリュー64の右端部には、ベベルギヤ式の伝動機構66を内部に備えた連通ケース67を介して、スクリュー搬送式の揚送コンベヤ68が接続されている。揚送コンベヤ68は、伝動機構66を介して伝達される1番スクリュー64からの動力により、1番スクリュー64により連通ケース67に搬送された単粒化穀粒を穀粒タンク7に供給する。
【0038】
図示は省略するが、2番スクリュー65の右端部には、再処理機構を介してスクリュー搬送式の2番還元コンベヤが接続されている。再処理機構は、2番スクリュー65により搬送された枝梗付き穀粒や二股粒などの処理物に再び脱穀処理を施す。2番還元コンベヤは、再脱穀処理後の処理物を揺動選別機構43に戻す。
【0039】
図8に示すように、選別回収部40において、揺動選別機構43から漏下しなかった切れワラなどは、揺動選別機構43の搬送作用により、揺動選別機構43の後方に形成した排塵口69から機外に排出される。唐箕44からの選別風により、揺動選別機構43の後上方に向けて吹き上げられたワラ屑などは、下部ケース31の後上部に配備した排塵ファン70の作用により機外に排出される。図示は省略するが、排塵ファン70には、駆動機構61などと同様に、唐箕44に伝達した動力がベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。
【0040】
図1〜4、図9および図10に示すように、穀粒タンク6は、機体フレーム1の右後半部に搭載され、揚送コンベヤ68により供給された単粒化穀粒を貯留する。穀粒タンク6には、貯留した単粒化穀粒の機外への排出を可能にするスクリュー搬送式の穀粒排出装置71が装備されている。穀粒排出装置71は、穀粒タンク6に貯留した単粒化穀粒をトラックの荷台などの任意の位置に排出する。穀粒排出装置71には、唐箕44に伝達した動力がベルトテンション式の排出クラッチ94などを介して伝達される。
【0041】
図1および図8に示すように、脱穀装置6の後上部には、脱穀処理後の穀稈である排ワラを挟持搬送機構34から受け取って機体の後端部に向けて搬送する排ワラ搬送装置72が装備されている。図示は省略するが、排ワラ搬送装置72には、扱胴41に伝達した動力が軸伝動式の伝動機構を介して伝達される。
【0042】
図1および図2に示すように、脱穀装置6の後部には、排ワラ搬送装置72により搬送された排ワラを、長ワラのまま機外に放出する長ワラ放出状態と、細断して機外に放出する細断放出状態とに切り換え可能に構成された排ワラ処理装置73が装備されている。排ワラ処理装置73には、駆動機構61などと同様に、唐箕44に伝達した動力がベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。
【0043】
図9に示すように、選別回収部40は、その左右中心Cが扱胴41の回転中心(前後向きの軸心)a1の真下近くに位置するように配置されている。これにより、選別回収部40に備えた揺動選別機構43および唐箕44の左右中心が扱胴41の回転中心a1の真下近くに位置することになる。
【0044】
その結果、選別回収部40を、その左右中心Cが扱胴41の回転中心a1の真下位置から扱胴41の回転方向下手側(機体右側)に離れるように、扱胴41に対して機体右側に片寄せて配備する場合に比較して、選別回収部40に備えた揺動選別機構43、唐箕44、および1番スクリュー64、などとともに、1番スクリュー64に連通ケース67を介して接続される揚送コンベヤ68を、機体の左側に寄せた状態で配備することができる。
【0045】
そして、揚送コンベヤ68を機体の左側に寄せて配備することにより、揚送コンベヤ68とともに穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部に接近させることができ、その分、穀粒タンク7の容量を低下させることなくコンバイン全体としての左右幅Wa(図3参照)を小さくすることができる。
【0046】
これにより、左側のクローラ式走行装置4のトレッドWbを、未刈り穀稈(収穫対象外の植立穀稈)を踏み倒すことなく最大3条の植立穀稈を収穫する全面2条刈り仕様に適した比較的短い長さに設定しながらも、コンバイン全体の左右幅Waとの差を小さくすることができる。その結果、コンバイン全体の左右幅Waが、左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbに対して大きくなることに起因して、機体の転倒角が小さくなる不都合を効果的に抑制することができ、機体の安定性を向上させることができる(図3参照)。
【0047】
なお、ここでいう機体の転倒角とは、機体を左右方向に傾斜させた際に機体が転倒する虞のある角度であり、その角度が大きいほど機体の安定性が高くなる。
【0048】
図2、図8、図10および図11に示すように、下部ケース31の前部には、刈取搬送装置5により搬送された刈取穀稈の穂先側を受け止めるとともに、その刈取穀稈が挟持搬送機構34により挾持搬送されるのに伴って、その刈取穀稈の穂先側を、下部ケース31と上部ケース32との間の供給口38から扱胴41と受網42との間に案内する穂先案内板74が備えられている。穂先案内板74は、供給口38の下縁に沿うように形成されている。
【0049】
図10および図11に示すように、伝動ケース48は、機体フレーム1におけるエンジン3の左方箇所に立設した支柱75により支持されている。伝動ケース48の配置は、脱穀装置6の下部ケース31に備えた穂先案内板74と唐箕ケース62との間に形成された空間Sを利用して、伝動ケース48が脱穀装置6の右前方箇所における脱穀装置6の左右中心寄りで穂先案内板74の下側に位置するように設定されている。
【0050】
これにより、内部に第1伝動機構49を備えた伝動ケース48を、脱穀装置6と穀粒タンク7との間から外れた位置で、かつ、搭乗運転部2の形成やエンジン3の配置などに支障を来すことなくエンジン3からの伝動を簡単に行える好適な位置に配備することができる。その結果、伝動ケース48を脱穀装置6と穀粒タンク7との間に配備する場合に比較して、穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部に接近させることができる。
【0051】
そして、穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部に接近させることにより、穀粒タンク7の容量を低下させることなくコンバイン全体の左右幅Waをさらに小さくすることができ、コンバイン全体の左右幅Waと左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbとの差をより小さくすることができ、結果、機体の安定性をさらに向上させることができる(図3参照)。
【0052】
しかも、伝動ケース48を、穂先案内板74の下側となる脱穀装置6における下部側の位置に配置することにより、伝動ケース48を、脱穀装置6における扱胴41の回転中心上や上方などの上部側の位置に配備する場合に比較して、コンバイン全体としての重心位置を下げることができる。その結果、左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbを、全面2条刈りに適した比較的短い長さに設定しながらも、低重心化により機体の安定性をさらに向上させることができる(図3参照)。
【0053】
図9および図10に示すように、脱穀装置6と隣接する穀粒タンク7の左側面には、揚送コンベヤ68の中間部が係入される凹部7Aと、揚送コンベヤ68の上端部が挿通される開口7Bとが形成されている。揚送コンベヤ68の上端部には、揚送した単粒化穀粒を穀粒タンク7の内部に供給する排出口68Aが形成され、かつ、穀粒タンク7の開口7Bを塞ぐ蓋体68Bが装備されている。
【0054】
この構成から、穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部にさらに接近させることができ、その分、コンバイン全体の左右幅Waをさらに小さくすることができる。これにより、コンバイン全体の左右幅Waと左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbとの差をさらに小さくすることができ、結果、機体の安定性をより効果的に向上させることができる(図3参照)。
【0055】
図12および図13に示すように、伝動ケース48の内部に備えた第1伝動機構49は、第1減速部76と第2減速部77とを備える二段減速式に構成されている。第1減速部76は、伝動ケース48の前上部に備えた左右向きの入力軸78と一体回転する小径の第1ベベルギヤ79と、第1ベベルギヤ79に噛合する大径の第2ベベルギヤ80とを備えて、左右向きの軸心周りに回転する動力を、前後向きの軸心周りに回転する動力に変換しながら、第2減速部77に減速伝達するように構成されている。第2減速部77は、中継軸81を介して第2ベベルギヤ80と一体回転する小径の第1平ギヤ82と、第1平ギヤ82に噛合する大径の第2平ギヤ83とを備えて、前後向きの軸心周りに回転する動力を、第2伝動機構50に減速伝達するように構成されている。第2平ギヤ83は、伝動ケース48の後下部に備えた前後向きの出力軸84と一体回転する。
【0056】
つまり、第1伝動機構49において、エンジン3からの動力を扱胴41の駆動速度まで減速するように構成されている。これにより、ベルト伝動式の第2伝動機構50によりエンジン3からの動力を扱胴41の駆動速度まで減速する場合に比較して、機体の低重心化を図ることができる。
【0057】
図10〜13に示すように、第2伝動機構50は、第1伝動機構49の出力軸84と一体回転する第1プーリ85、上部ケース32の支軸33に相対回転可能に支持された第2プーリ86、扱胴41と一体回転する第3プーリ87、上部ケース32に備えた第4プーリ88、それらのプーリ85〜88に渡し掛けた伝動ベルト89、および、テンションプーリ90などにより、供給口38を迂回するとともに、上部ケース32の開閉揺動を許容するように構成されている。
【0058】
図1に示すように、刈取フレーム21における左右両端のデバイダ22の後方には、平面視舟形状に形成された板金製の接地体91が配備されている。機体フレーム1の前部には、刈取搬送装置5を作業領域まで下降させた場合に、刈取フレーム21を受け止めて、刈取搬送装置5の接地状態では各接地体90が予め設定した小さい接地圧で接地するように、刈取搬送装置5を上昇方向に付勢するバネ式の付勢機構92が装備されている。
【0059】
これにより、各接地体91が接地するように刈取搬送装置5を下降させた接地刈り状態では、圃場の起伏に応じて変動する各接地体91などに対する接地反力により、刈取搬送装置5が圃場の起伏に沿って自動的に昇降するようになる。その結果、刈取搬送装置5の高さ位置が圃場面に対して低くなり過ぎることに起因して各デバイダ22が圃場に突っ込む不都合や、刈取搬送装置5の高さ位置が圃場面に対して高くなり過ぎることに起因して高刈りになる不都合などを招く虞のない良好な刈り取り収穫作業を容易に行える。
【0060】
特に、圃場内に向けて降坂しながら接地刈りを行う作業開始時には、付勢機構92の作用により各デバイダ22が圃場に突っ込む不都合を回避できるだけでなく、前述した機体の低重心化により、機体をより安定した状態で圃場内に向けて降坂させることができる。
【0061】
要するに、圃場内に向けて降坂する作業開始の段階から良好な刈り取り収穫作業を容易に行うことができる。
【0062】
そして、この構成を全面刈りと組み合わせたことにより、例えば、機体の左右両側方に未刈り穀稈が存在する中割り作業や、植立穀稈の倒伏が激しい状態での作業のように、作業地の状態や植立穀稈の条間などが視認し難い場合であっても、各デバイダ22が圃場に突っ込む不都合や、左右のクローラ式走行装置4により未刈り穀稈を踏み倒す不都合などを招くことなく、良好な刈り取り収穫作業を容易に行うことができる。
【0063】
ちなみに、接地反力による刈取搬送装置5の昇降時には、作動油に常時溶解している空気の析出や溶解などによって昇降シリンダ30が伸縮することになる。
【0064】
〔別実施形態〕
【0065】
〔1〕コンバインとしては、全面2条刈り仕様に限定されるものではない。例えば、コンバインとしては、3条以上の全面刈り仕様に構成したものであってもよく、また、刈取搬送装置5の左右両端部に備えたデバイダ22の先端が、左右の対応するクローラ式走行装置4の機体外側端位置と全く一致しないように構成された一般仕様の2条以上のものであってもよい。さらに、刈取穀稈の全体を脱穀部39に供給する全稈投入型であってもよい。
【0066】
〔2〕選別回収部40を、その左右中心Cが扱胴41の回転中心a1の真下に位置するように配置してもよい。
【0067】
〔3〕穀粒貯留部7として、穀粒タンク7の代わりに、脱穀装置6からの単粒化穀粒を貯留するホッパー、ホッパーから籾袋への単粒化穀粒の供給を可能にする筒状の供給口、供給口を開閉するシャッター、などを備えて構成された袋詰め装置を装備してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】自脱型コンバインの全体平面図
【図3】自脱型コンバインの正面図
【図4】伝動構造を示す概略図
【図5】伝動構造を示す要部の縦断側面図
【図6】伝動構造を示す要部の縦断背面図
【図7】ミッションケースの縦断正面図
【図8】脱穀装置の縦断側面図
【図9】脱穀装置の縦断正面図
【図10】脱穀装置の構成および伝動ケースの配置を示す要部の縦断正面図
【図11】脱穀装置の構成および伝動ケースの配置を示す要部の縦断側面図
【図12】伝動ケース内の伝動構造を示す要部の縦断側面図
【図13】伝動ケース内の伝動構造を示す要部の横断平面図
【符号の説明】
【0069】
4 クローラ式走行装置
6 脱穀装置
7 穀粒貯留部
7A 凹部
22 デバイダ
39 脱穀部
40 選別回収部
41 扱胴
68 揚送コンベヤ
a1 回転中心(扱胴)
C 左右中心(選別回収部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部と、前記脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部とを、前記脱穀部の下方に前記選別回収部が位置するように装備し、前記選別回収部により選別回収した穀粒を、前記脱穀装置の横側方に隣接配備した穀粒貯留部に、前記脱穀装置と前記穀粒貯留部との間に立設した揚送コンベヤを介して供給するように構成してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、上記のようなコンバインにおいて、脱穀部は、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施すように構成されている。そのため、その脱穀処理で得られた処理物は、脱穀部における扱胴の回転方向下手側となる機体の左右一側方に向かいながら下方の選別回収部に供給されることになる。
【0003】
そこで、従来では、脱穀部に対して選別回収部を、扱胴の回転方向下手側となる機体の左右一側方に片寄せて配備することにより、脱穀部からの処理物を、極力、選別回収部に対して左右均等に供給することが考えられていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−274675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンバインにおいては、選別回収部から穀粒貯留部にわたる穀粒の搬送径路を極力短くするなどの点から、穀粒貯留部を、脱穀装置の横側方として、脱穀部に対して選別回収部を片寄せた左右一側方側の横側方に隣接配備することが一般的である。そのため、脱穀部に対して選別回収部を機体の左右一側方に片寄せて配備すると、それに伴って、揚送コンベヤおよび穀粒貯留部も機体の左右一側方に片寄せて配備する必要が生じることになる。その結果、コンバイン全体としての左右幅が大きくなる不都合を招くことになる。
【0005】
上記の不都合を回避する手段として、穀粒貯留部の左右幅を狭くすることが考えられるが、この場合には、穀粒貯留部の容量を低下させることになる。
【0006】
本発明の目的は、穀粒貯留部の容量を低下させることなくコンバイン全体としての左右幅を極力小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
脱穀装置に、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部と、前記脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部とを、前記脱穀部の下方に前記選別回収部が位置するように装備し、
前記選別回収部により選別回収した穀粒を、前記脱穀装置の横側方に隣接配備した穀粒貯留部に、前記脱穀装置と前記穀粒貯留部との間に立設した揚送コンベヤを介して供給し、
前記選別回収部を、その左右中心が前記扱胴の回転中心の真下または真下近くに位置するように配置してあることを特徴とする。
【0008】
この特徴構成によると、選別回収部を、その左右中心が扱胴の回転中心の真下位置から扱胴の回転方向下手側(左右一側方)に離れるように、脱穀部に対して機体の左右一側方に片寄せて配備する場合に比較して、揚送コンベヤおよび穀粒貯留部を、脱穀装置に近づけた状態で配備することができる。
【0009】
従って、穀粒貯留部の容量を低下させることなくコンバイン全体としての左右幅を小さくすることができる。
【0010】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記穀粒貯留部における前記脱穀装置との隣接面に、揚送コンベヤが係入される凹部を形成してあることを特徴とする。
【0011】
この特徴構成によると、穀粒貯留部を脱穀装置にさらに近づけることができ、その分、コンバイン全体の左右幅をさらに小さくすることができる。また、凹部の形成によって低下する穀粒貯留部の容量を、例えば、穀粒貯留部における脱穀装置との隣接面とは反対側の面の全域を拡張して補うようにすれば、コンバイン全体としての左右幅を極力小さくしながら、穀粒貯留部の容量の低下を回避することができる。
【0012】
従って、穀粒貯留部の容量の低下を抑制または回避しながら、コンバイン全体としての左右幅をさらに小さくすることができる。
【0013】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の発明において、
前記刈取搬送装置を、通常2条で最大3条の刈り取り搬送が可能となるように構成し、
前記刈取搬送装置の左右両端部に備えたデバイダの先端が、左右の対応するクローラ式走行装置の機体外側端位置と略一致あるいは一致するように、左右の前記クローラ式走行装置を配備してあることを特徴とする。
【0014】
この特徴構成によると、機体の左右両側方に収穫対象外の植立穀稈が存在する中割り作業や、機体の左右一側方に収穫対象外の植立穀稈が存在する回り刈り作業などにかかわらず、左右のクローラ式走行装置により収穫対象外の植立穀稈を踏み倒す不都合を招くことなく、左右両端のデバイダの間に存在する最大3条の植立穀稈を刈取搬送装置により適切に刈り取って脱穀装置に向けて搬送することができる。
【0015】
そして、左右のクローラ式走行装置のトレッドを、左右のクローラ式走行装置による収穫対象外の植立穀稈の踏み倒しを招くことなく、刈取搬送装置による最大3条の植立穀稈の刈り取り搬送を可能にするのに適した比較的短い長さに設定しながらも、前述したように、コンバイン全体としての左右幅を小さくすることにより、左右のクローラ式走行装置のトレッドとコンバイン全体の左右幅との差を小さくすることができる。その結果、コンバイン全体の左右幅が、左右のクローラ式走行装置のトレッドに対して大きくなることに起因して、機体の転倒角が小さくなる不都合を効果的に抑制することができ、機体の安定性を向上させることができる。
【0016】
なお、ここでいう機体の転倒角とは、機体を左右方向に傾斜させた際に機体が転倒する虞のある角度であり、その角度が大きいほど機体の安定性が高くなる。
【0017】
従って、最大3条の植立穀稈を収穫する小型機種でありながら、左右のクローラ式走行装置による植立穀稈の踏み倒しを招くことなく、また、機体の安定性を損なうことなく、収穫作業を良好に行うことができる作業性に優れた自脱型コンバインを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明を、通常2条で最大3条の植立穀稈の収穫が可能に構成された全面2条刈り仕様の自脱型コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には全面2条刈り仕様に構成した自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が、図3にはその全体正面が、それぞれ示されている。これらの図に示すように、本実施形態で例示する自脱型コンバインは、角パイプなどの複数の部材により形成した機体フレーム1に、搭乗運転部2、エンジン3、左右一対のクローラ式走行装置4、刈取搬送装置5、脱穀装置6、および、穀粒貯留部としての穀粒タンク7、などを備えて構成されている。
【0020】
搭乗運転部2は、機体フレーム1の右前半部に、フロントパネル8、サイドパネル9、フロアパネル10、および座席台11、などを配備して形成されている。フロントパネル8には、十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー12などが装備されている。サイドパネル9には、揺動式で位置保持型の変速レバー13などが装備されている。座席台11には運転座席14が装備されている。
【0021】
エンジン3は、運転座席14の下方に、その出力軸3Aが左右向きになる姿勢で配備されている。エンジン3の前部および上部は、エンジンカバーに兼用される座席台11により覆われている。エンジン3の右側部は、除塵網(図示せず)を備えたサイドカバー15により覆われている。
【0022】
図4〜7に示すように、左右のクローラ式走行装置4には、エンジン3からの動力が、ベルト伝動式の伝動機構16、静油圧式の無段変速装置(以下、HSTと略称する)17、および、ミッションケース18の内部に備えた左右の対応するサイドクラッチ19、などを介して伝達される。左右のクローラ式走行装置4は、ミッションケース18の内部に備えた左右の対応するサイドブレーキ20により制動される。HST17は、変速レバー13の揺動操作に基づいて変速作動するように、その変速操作軸(図示せず)が連係機構(図示せず)を介して変速レバー13に連係されている。左右のサイドクラッチ19および左右のサイドブレーキ20は、油圧式で、操縦レバー12の左右方向への揺動操作に基づく油圧制御により、それらの作動が制御されるように、操縦レバー12に油圧制御回路(図示せず)などを介して連係されている。
【0023】
この構成から、変速レバー13を揺動操作することにより、左右の両クローラ式走行装置4の駆動状態を、駆動停止状態と前進駆動状態と後進駆動状態とに無段階に切り換えることができるとともに、前進駆動状態と後進駆動状態とのそれぞれにおける左右の両クローラ式走行装置4の駆動速度を無段階に変更することができる。また、前進駆動状態または後進駆動状態において、操縦レバー12を左右方向に揺動操作することにより、左右のクローラ式走行装置4による走行状態を、左右のクローラ式走行装置4を等速駆動させた直進状態と、左右一方のクローラ式走行装置4を駆動し、かつ、他方のクローラ式走行装置4への伝動を遮断した緩旋回状態と、この緩旋回状態において他方のクローラ式走行装置4を制動した急旋回状態とに切り換えることができる。
【0024】
図1〜3に示すように、刈取搬送装置5は、刈取フレーム21に、3つのデバイダ22、左右一対の引起機構23、バリカン型の刈取機構24、補助搬送機構25、および穀稈搬送機構26、などを備えて、搭乗運転部2の左側方箇所から機体フレーム1の前方に向けて延出するように構成されている。
【0025】
図4〜7に示すように、刈取フレーム21は、機体フレーム1の左前端部に立設した支持フレーム27の上端部に昇降揺動可能に支持されている。刈取フレーム21の内部には、エンジン3からの動力を、左右の引起機構23、刈取機構24、補助搬送機構25、および穀稈搬送機構26、に伝達する軸伝動式の伝動機構28が備えられている。伝動機構28は、左右向きの入力軸28A、および、刈取フレーム21の内部に備えた複数の伝動軸(図示せず)やベベルギヤ(図示せず)、などにより構成されている。伝動機構28の入力軸28Aには、エンジン3からの動力が、HST17の入力軸17Aやベルトテンション式の刈取クラッチ29、などを介して伝達される。
【0026】
図1〜3に示すように、各デバイダ22は、機体の前進走行に伴って、収穫対象の植立穀稈を収穫対象外の植立穀稈と梳き分けて梳き起こす。左右の引起機構23は、梳き起こされた収穫対象の植立穀稈を所定の刈取姿勢に引き起こす。刈取機構24は、引き起こされた収穫対象の植立穀稈の株元側を切断する。補助搬送機構25は、切断後の植立穀稈である刈取穀稈を穀稈搬送機構26の搬送始端位置に向けて寄せ集める。穀稈搬送機構26は、寄せ集めされた刈取穀稈を刈り取り用の起立姿勢から脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置6に向けて搬送する。
【0027】
刈取搬送装置5は、機体フレーム1と刈取フレーム21とにわたって架設した昇降シリンダ30が作動することにより昇降揺動する。昇降シリンダ30には、作動油の供給による伸長作動により刈取搬送装置5を上昇させ、作動油の排出による収縮作動により刈取搬送装置5を下降させる単動型の油圧シリンダが採用されている。昇降シリンダ30は、操縦レバー12の前後方向への揺動操作に基づく油圧制御により、その作動が制御されるように、操縦レバー12に油圧制御回路(図示せず)などを介して連係されている。
【0028】
この構成から、操縦レバー12を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置5を、下限側の作業領域と上限側の非作業位置とにわたって昇降させることができ、作業領域においては、植立穀稈に対する刈り高さ位置を任意の高さ位置に調節することができる。
【0029】
図3に示すように、刈取搬送装置5の左端部に配備したデバイダ22は、機体の左右方向において、その先端が左側のクローラ式走行装置4の左端位置(機体外側端位置)と一致するように配置設定されている。刈取搬送装置5の右端部に配備したデバイダ22は、機体の左右方向において、その先端が右側のクローラ式走行装置4の右端位置(機体外側端位置)と略一致するように配置設定されている。これにより、機体の左右両側方に未刈り穀稈(収穫対象外の植立穀稈)が存在する中割り作業や、機体の左側方に未刈り穀稈が存在する回り刈り作業などにかかわらず、左右のクローラ式走行装置4による未刈り穀稈の踏み倒しを招くことなく、左右両端のデバイダ22の間に存在する最大3条の植立穀稈を刈取搬送装置5により適切に刈り取って脱穀装置6に向けて搬送することができる。
【0030】
なお、刈取搬送装置5においては、刈取搬送装置5の左端部に配備したデバイダ22を、その先端が左側のクローラ式走行装置4の左端位置と略一致するように配置設定してもよい。また、刈取搬送装置5の右端部に配備したデバイダ22を、その先端が右側のクローラ式走行装置4の右端位置と一致するように配置設定してもよい。
【0031】
図1〜3および図8〜11に示すように、脱穀装置6には下部ケース31と上部ケース32とが備えられている。下部ケース31は、機体フレーム1の左半部に載置されており、その右上部には前後向きの支軸33が配備されている。上部ケース32は、前後向きの支軸33を支点にした開閉揺動操作が可能となるように、その支軸33を介して下部ケース31に連結されている。脱穀装置6の左端部には、刈取搬送装置5により搬送された刈取穀稈の株元側を挟持して後方に向けて搬送する挟持搬送機構34が備えられている。挟持搬送機構34は、下部ケース31に備えたフィードチェーン35、および、上部ケース32に備えた挟持杆36と挟持レール37、などにより構成されている。挟持搬送機構34により搬送される刈取穀稈は、その穂先側が、下部ケース31と上部ケース32との間に形成した供給口38から脱穀装置6の内部に供給される。
【0032】
図8〜11に示すように、脱穀装置6の内部には、供給口38から供給された刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す脱穀部39、および、その脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して単粒化穀粒を回収する選別回収部40、が備えられている。脱穀部39は、上部ケース32に備えた扱胴41や、下部ケース31に備えた受網42などにより構成されている。選別回収部40は、下部ケース31に備えた揺動選別機構43や唐箕44、および、下部ケース31に形成した1番回収領域45や2番回収領域46、などにより構成されている。
【0033】
図4〜6および図8〜13に示すように、脱穀部39において、扱胴41は、前後向きの軸心a1を中心にした回転駆動が可能となるように上部ケース32に支持されている。受網42は、扱胴41の下部側を下方から所定間隔を隔てて覆うように下部ケース31に敷設されている。扱胴41には、エンジン3からの動力が、ベルトテンション式の脱穀クラッチ47、伝動ケース48の内部に備えた第1伝動機構49、および、ベルト伝動式の第2伝動機構50、を介して伝達される。扱胴41は、エンジン3からの動力により正面視右回りに回転駆動される。この回転駆動により、扱胴41は、受網42との間に供給された刈取穀稈の穂先側や、受網42との間に滞留した処理物などに脱穀処理を施す。受網42は、この脱穀処理で得られた単粒化穀粒などを揺動選別機構43の前半部に向けて漏下させる。受網42から漏下しなかった枝梗付き穀粒や二股粒などは、脱穀部39の後下部に形成した送塵口51から揺動選別機構43の後半部に向けて排出される。
【0034】
選別回収部40において、揺動選別機構43は、平面視矩形状に形成した選別ケース52の上部側に、粗選別用のグレンパン53、粗選別用の第1チャフシーブ54、粗選別用の第1ストローラック55、粗選別用の第2チャフシーブ56、および、粗選別用の第2ストローラック57を備え、選別ケース52の下部側に、精選別用のグレンパン58、および、精選別用のグレンシーブ59を備えて構成されている。選別ケース52は、その前端部が左右一対の揺動アーム60を介して下部ケース31に支持されている。選別ケース52の後端部は、偏心カム式の駆動機構61を介して下部ケース31に支持されている。唐箕44は、左右向きの軸心a2を中心にした回転駆動が可能となるように、下部ケース31の前下部に備えた唐箕ケース62に支持されている。唐箕ケース62は、唐箕44を前方側から覆う形状で、下部ケース31の前下部から前方に向けて膨出するように形成されている。
【0035】
唐箕44には、エンジン3からの動力が、脱穀クラッチ47とベルト伝動式の伝動機構63とを介して伝達される。駆動機構61には、唐箕44に伝達した動力が、脱穀装置6の左側部に配備したベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。この動力により、駆動機構61は揺動選別機構43を前後方向に揺動駆動する。この揺動駆動により、揺動選別機構43は脱穀部39からの処理物に篩い選別処理を施す。唐箕44は、エンジン3からの動力で回転することにより、揺動選別機構43の前下方から揺動選別機構43の後上方に向けて流れる選別風を生起して、脱穀部39からの処理物や篩い選別処理中の処理物などに風力選別処理を施す。
【0036】
図8および図9に示すように、1番回収領域45は、揺動選別機構43の前半部から漏下した単粒化穀粒を1番物として回収する。2番回収領域46は、揺動選別機構43の後半部から漏下した枝梗付き穀粒や二股粒などを2番物として回収する。1番回収領域45には、回収した単粒化穀粒を右側方の穀粒タンク7に向けて搬出する1番スクリュー64が配備されている。2番回収領域46には、回収した単粒化穀粒を右側方に向けて搬送する2番スクリュー65が配備されている。1番スクリュー64および2番スクリュー65には、駆動機構61と同様に、唐箕44に伝達した動力がベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。
【0037】
1番スクリュー64は、その右端部が選別回収部40から穀粒タンク7に向けて延出するように形成されている。1番スクリュー64の右端部には、ベベルギヤ式の伝動機構66を内部に備えた連通ケース67を介して、スクリュー搬送式の揚送コンベヤ68が接続されている。揚送コンベヤ68は、伝動機構66を介して伝達される1番スクリュー64からの動力により、1番スクリュー64により連通ケース67に搬送された単粒化穀粒を穀粒タンク7に供給する。
【0038】
図示は省略するが、2番スクリュー65の右端部には、再処理機構を介してスクリュー搬送式の2番還元コンベヤが接続されている。再処理機構は、2番スクリュー65により搬送された枝梗付き穀粒や二股粒などの処理物に再び脱穀処理を施す。2番還元コンベヤは、再脱穀処理後の処理物を揺動選別機構43に戻す。
【0039】
図8に示すように、選別回収部40において、揺動選別機構43から漏下しなかった切れワラなどは、揺動選別機構43の搬送作用により、揺動選別機構43の後方に形成した排塵口69から機外に排出される。唐箕44からの選別風により、揺動選別機構43の後上方に向けて吹き上げられたワラ屑などは、下部ケース31の後上部に配備した排塵ファン70の作用により機外に排出される。図示は省略するが、排塵ファン70には、駆動機構61などと同様に、唐箕44に伝達した動力がベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。
【0040】
図1〜4、図9および図10に示すように、穀粒タンク6は、機体フレーム1の右後半部に搭載され、揚送コンベヤ68により供給された単粒化穀粒を貯留する。穀粒タンク6には、貯留した単粒化穀粒の機外への排出を可能にするスクリュー搬送式の穀粒排出装置71が装備されている。穀粒排出装置71は、穀粒タンク6に貯留した単粒化穀粒をトラックの荷台などの任意の位置に排出する。穀粒排出装置71には、唐箕44に伝達した動力がベルトテンション式の排出クラッチ94などを介して伝達される。
【0041】
図1および図8に示すように、脱穀装置6の後上部には、脱穀処理後の穀稈である排ワラを挟持搬送機構34から受け取って機体の後端部に向けて搬送する排ワラ搬送装置72が装備されている。図示は省略するが、排ワラ搬送装置72には、扱胴41に伝達した動力が軸伝動式の伝動機構を介して伝達される。
【0042】
図1および図2に示すように、脱穀装置6の後部には、排ワラ搬送装置72により搬送された排ワラを、長ワラのまま機外に放出する長ワラ放出状態と、細断して機外に放出する細断放出状態とに切り換え可能に構成された排ワラ処理装置73が装備されている。排ワラ処理装置73には、駆動機構61などと同様に、唐箕44に伝達した動力がベルト伝動式の伝動機構93を介して伝達される。
【0043】
図9に示すように、選別回収部40は、その左右中心Cが扱胴41の回転中心(前後向きの軸心)a1の真下近くに位置するように配置されている。これにより、選別回収部40に備えた揺動選別機構43および唐箕44の左右中心が扱胴41の回転中心a1の真下近くに位置することになる。
【0044】
その結果、選別回収部40を、その左右中心Cが扱胴41の回転中心a1の真下位置から扱胴41の回転方向下手側(機体右側)に離れるように、扱胴41に対して機体右側に片寄せて配備する場合に比較して、選別回収部40に備えた揺動選別機構43、唐箕44、および1番スクリュー64、などとともに、1番スクリュー64に連通ケース67を介して接続される揚送コンベヤ68を、機体の左側に寄せた状態で配備することができる。
【0045】
そして、揚送コンベヤ68を機体の左側に寄せて配備することにより、揚送コンベヤ68とともに穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部に接近させることができ、その分、穀粒タンク7の容量を低下させることなくコンバイン全体としての左右幅Wa(図3参照)を小さくすることができる。
【0046】
これにより、左側のクローラ式走行装置4のトレッドWbを、未刈り穀稈(収穫対象外の植立穀稈)を踏み倒すことなく最大3条の植立穀稈を収穫する全面2条刈り仕様に適した比較的短い長さに設定しながらも、コンバイン全体の左右幅Waとの差を小さくすることができる。その結果、コンバイン全体の左右幅Waが、左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbに対して大きくなることに起因して、機体の転倒角が小さくなる不都合を効果的に抑制することができ、機体の安定性を向上させることができる(図3参照)。
【0047】
なお、ここでいう機体の転倒角とは、機体を左右方向に傾斜させた際に機体が転倒する虞のある角度であり、その角度が大きいほど機体の安定性が高くなる。
【0048】
図2、図8、図10および図11に示すように、下部ケース31の前部には、刈取搬送装置5により搬送された刈取穀稈の穂先側を受け止めるとともに、その刈取穀稈が挟持搬送機構34により挾持搬送されるのに伴って、その刈取穀稈の穂先側を、下部ケース31と上部ケース32との間の供給口38から扱胴41と受網42との間に案内する穂先案内板74が備えられている。穂先案内板74は、供給口38の下縁に沿うように形成されている。
【0049】
図10および図11に示すように、伝動ケース48は、機体フレーム1におけるエンジン3の左方箇所に立設した支柱75により支持されている。伝動ケース48の配置は、脱穀装置6の下部ケース31に備えた穂先案内板74と唐箕ケース62との間に形成された空間Sを利用して、伝動ケース48が脱穀装置6の右前方箇所における脱穀装置6の左右中心寄りで穂先案内板74の下側に位置するように設定されている。
【0050】
これにより、内部に第1伝動機構49を備えた伝動ケース48を、脱穀装置6と穀粒タンク7との間から外れた位置で、かつ、搭乗運転部2の形成やエンジン3の配置などに支障を来すことなくエンジン3からの伝動を簡単に行える好適な位置に配備することができる。その結果、伝動ケース48を脱穀装置6と穀粒タンク7との間に配備する場合に比較して、穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部に接近させることができる。
【0051】
そして、穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部に接近させることにより、穀粒タンク7の容量を低下させることなくコンバイン全体の左右幅Waをさらに小さくすることができ、コンバイン全体の左右幅Waと左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbとの差をより小さくすることができ、結果、機体の安定性をさらに向上させることができる(図3参照)。
【0052】
しかも、伝動ケース48を、穂先案内板74の下側となる脱穀装置6における下部側の位置に配置することにより、伝動ケース48を、脱穀装置6における扱胴41の回転中心上や上方などの上部側の位置に配備する場合に比較して、コンバイン全体としての重心位置を下げることができる。その結果、左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbを、全面2条刈りに適した比較的短い長さに設定しながらも、低重心化により機体の安定性をさらに向上させることができる(図3参照)。
【0053】
図9および図10に示すように、脱穀装置6と隣接する穀粒タンク7の左側面には、揚送コンベヤ68の中間部が係入される凹部7Aと、揚送コンベヤ68の上端部が挿通される開口7Bとが形成されている。揚送コンベヤ68の上端部には、揚送した単粒化穀粒を穀粒タンク7の内部に供給する排出口68Aが形成され、かつ、穀粒タンク7の開口7Bを塞ぐ蓋体68Bが装備されている。
【0054】
この構成から、穀粒タンク7を脱穀装置6の右側部にさらに接近させることができ、その分、コンバイン全体の左右幅Waをさらに小さくすることができる。これにより、コンバイン全体の左右幅Waと左右のクローラ式走行装置4のトレッドWbとの差をさらに小さくすることができ、結果、機体の安定性をより効果的に向上させることができる(図3参照)。
【0055】
図12および図13に示すように、伝動ケース48の内部に備えた第1伝動機構49は、第1減速部76と第2減速部77とを備える二段減速式に構成されている。第1減速部76は、伝動ケース48の前上部に備えた左右向きの入力軸78と一体回転する小径の第1ベベルギヤ79と、第1ベベルギヤ79に噛合する大径の第2ベベルギヤ80とを備えて、左右向きの軸心周りに回転する動力を、前後向きの軸心周りに回転する動力に変換しながら、第2減速部77に減速伝達するように構成されている。第2減速部77は、中継軸81を介して第2ベベルギヤ80と一体回転する小径の第1平ギヤ82と、第1平ギヤ82に噛合する大径の第2平ギヤ83とを備えて、前後向きの軸心周りに回転する動力を、第2伝動機構50に減速伝達するように構成されている。第2平ギヤ83は、伝動ケース48の後下部に備えた前後向きの出力軸84と一体回転する。
【0056】
つまり、第1伝動機構49において、エンジン3からの動力を扱胴41の駆動速度まで減速するように構成されている。これにより、ベルト伝動式の第2伝動機構50によりエンジン3からの動力を扱胴41の駆動速度まで減速する場合に比較して、機体の低重心化を図ることができる。
【0057】
図10〜13に示すように、第2伝動機構50は、第1伝動機構49の出力軸84と一体回転する第1プーリ85、上部ケース32の支軸33に相対回転可能に支持された第2プーリ86、扱胴41と一体回転する第3プーリ87、上部ケース32に備えた第4プーリ88、それらのプーリ85〜88に渡し掛けた伝動ベルト89、および、テンションプーリ90などにより、供給口38を迂回するとともに、上部ケース32の開閉揺動を許容するように構成されている。
【0058】
図1に示すように、刈取フレーム21における左右両端のデバイダ22の後方には、平面視舟形状に形成された板金製の接地体91が配備されている。機体フレーム1の前部には、刈取搬送装置5を作業領域まで下降させた場合に、刈取フレーム21を受け止めて、刈取搬送装置5の接地状態では各接地体90が予め設定した小さい接地圧で接地するように、刈取搬送装置5を上昇方向に付勢するバネ式の付勢機構92が装備されている。
【0059】
これにより、各接地体91が接地するように刈取搬送装置5を下降させた接地刈り状態では、圃場の起伏に応じて変動する各接地体91などに対する接地反力により、刈取搬送装置5が圃場の起伏に沿って自動的に昇降するようになる。その結果、刈取搬送装置5の高さ位置が圃場面に対して低くなり過ぎることに起因して各デバイダ22が圃場に突っ込む不都合や、刈取搬送装置5の高さ位置が圃場面に対して高くなり過ぎることに起因して高刈りになる不都合などを招く虞のない良好な刈り取り収穫作業を容易に行える。
【0060】
特に、圃場内に向けて降坂しながら接地刈りを行う作業開始時には、付勢機構92の作用により各デバイダ22が圃場に突っ込む不都合を回避できるだけでなく、前述した機体の低重心化により、機体をより安定した状態で圃場内に向けて降坂させることができる。
【0061】
要するに、圃場内に向けて降坂する作業開始の段階から良好な刈り取り収穫作業を容易に行うことができる。
【0062】
そして、この構成を全面刈りと組み合わせたことにより、例えば、機体の左右両側方に未刈り穀稈が存在する中割り作業や、植立穀稈の倒伏が激しい状態での作業のように、作業地の状態や植立穀稈の条間などが視認し難い場合であっても、各デバイダ22が圃場に突っ込む不都合や、左右のクローラ式走行装置4により未刈り穀稈を踏み倒す不都合などを招くことなく、良好な刈り取り収穫作業を容易に行うことができる。
【0063】
ちなみに、接地反力による刈取搬送装置5の昇降時には、作動油に常時溶解している空気の析出や溶解などによって昇降シリンダ30が伸縮することになる。
【0064】
〔別実施形態〕
【0065】
〔1〕コンバインとしては、全面2条刈り仕様に限定されるものではない。例えば、コンバインとしては、3条以上の全面刈り仕様に構成したものであってもよく、また、刈取搬送装置5の左右両端部に備えたデバイダ22の先端が、左右の対応するクローラ式走行装置4の機体外側端位置と全く一致しないように構成された一般仕様の2条以上のものであってもよい。さらに、刈取穀稈の全体を脱穀部39に供給する全稈投入型であってもよい。
【0066】
〔2〕選別回収部40を、その左右中心Cが扱胴41の回転中心a1の真下に位置するように配置してもよい。
【0067】
〔3〕穀粒貯留部7として、穀粒タンク7の代わりに、脱穀装置6からの単粒化穀粒を貯留するホッパー、ホッパーから籾袋への単粒化穀粒の供給を可能にする筒状の供給口、供給口を開閉するシャッター、などを備えて構成された袋詰め装置を装備してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】自脱型コンバインの全体平面図
【図3】自脱型コンバインの正面図
【図4】伝動構造を示す概略図
【図5】伝動構造を示す要部の縦断側面図
【図6】伝動構造を示す要部の縦断背面図
【図7】ミッションケースの縦断正面図
【図8】脱穀装置の縦断側面図
【図9】脱穀装置の縦断正面図
【図10】脱穀装置の構成および伝動ケースの配置を示す要部の縦断正面図
【図11】脱穀装置の構成および伝動ケースの配置を示す要部の縦断側面図
【図12】伝動ケース内の伝動構造を示す要部の縦断側面図
【図13】伝動ケース内の伝動構造を示す要部の横断平面図
【符号の説明】
【0069】
4 クローラ式走行装置
6 脱穀装置
7 穀粒貯留部
7A 凹部
22 デバイダ
39 脱穀部
40 選別回収部
41 扱胴
68 揚送コンベヤ
a1 回転中心(扱胴)
C 左右中心(選別回収部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置に、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部と、前記脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部とを、前記脱穀部の下方に前記選別回収部が位置するように装備し、
前記選別回収部により選別回収した穀粒を、前記脱穀装置の横側方に隣接配備した穀粒貯留部に、前記脱穀装置と前記穀粒貯留部との間に立設した揚送コンベヤを介して供給し、
前記選別回収部を、その左右中心が前記扱胴の回転中心の真下または真下近くに位置するように配置してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記穀粒貯留部における前記脱穀装置との隣接面に、前記揚送コンベヤが係入される凹部を形成してあることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取搬送装置を、通常2条で最大3条の刈り取り搬送が可能となるように構成し、
前記刈取搬送装置の左右両端部に備えたデバイダの先端が、左右の対応するクローラ式走行装置の機体外側端位置と略一致あるいは一致するように、左右の前記クローラ式走行装置を配備してあることを特徴とする請求項1または2に記載のコンバイン。
【請求項1】
脱穀装置に、扱胴が回転駆動されることにより刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部と、前記脱穀処理で得られた処理物に選別処理を施して穀粒を回収する選別回収部とを、前記脱穀部の下方に前記選別回収部が位置するように装備し、
前記選別回収部により選別回収した穀粒を、前記脱穀装置の横側方に隣接配備した穀粒貯留部に、前記脱穀装置と前記穀粒貯留部との間に立設した揚送コンベヤを介して供給し、
前記選別回収部を、その左右中心が前記扱胴の回転中心の真下または真下近くに位置するように配置してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記穀粒貯留部における前記脱穀装置との隣接面に、前記揚送コンベヤが係入される凹部を形成してあることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取搬送装置を、通常2条で最大3条の刈り取り搬送が可能となるように構成し、
前記刈取搬送装置の左右両端部に備えたデバイダの先端が、左右の対応するクローラ式走行装置の機体外側端位置と略一致あるいは一致するように、左右の前記クローラ式走行装置を配備してあることを特徴とする請求項1または2に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−5611(P2009−5611A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169198(P2007−169198)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]