説明

コンバイン

【課題】刈取部で切断装置による穀稈の切断を行わない場合の安全性の向上を図ることができるコンバインを提供する。
【解決手段】刈取部を走行機体に対して昇降可能に構成するコンバインにおいて、穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃と、これらの複数の切断刃を回転駆動させるアクチュエータとを、前記刈取部の切断装置に備えるとともに、前記刈取部の刈高さ位置を検出する刈高さ位置検出手段172と、前記切断装置の駆動アクチュエータ233の駆動を制御する制御手段8とを備えて、制御手段8は、刈取部の昇降時に、刈高さ位置検出手段にて検出された前記刈取部の刈高さ位置が、予め設定された設定刈高さ位置に到達した場合、複数の切断刃の回転駆動を停止させるように、駆動アクチュエータ233の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の円盤形状の切断刃を刈取部の切断装置に備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀稈を引き起こす引起装置と、引起装置により引き起こされた穀稈を切断する切断装置と、引起装置により引き起こされた穀稈および切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを有する刈取部を備え、この刈取部を走行機体に対して昇降可能に構成するコンバインは公知となっている。このようなコンバインの刈取部において、切断装置は、穀稈の株元側を切断するための切断刃として、左右方向に延設した固定刃および可動刃を備え、固定刃と可動刃を上下に重ねた状態で、可動刃を固定刃に対して可動刃を往復摺動させることによって、穀稈を切断するように構成されていた。
【0003】
しかし、このような切断装置は、固定刃および可動刃による穀稈の切断時に大きな振動および騒音を発生させるという問題があった。そこで、この問題を解消するために、穀稈を切断するための切断刃として、円盤形状の切断刃を用いたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。この切断装置は、複数の円盤形状の切断刃(回転刃)を左右方向に略同一直線上に並べて配置して、各々を回転駆動させることで、穀稈を切断するようになっている。
【特許文献1】実開平5−95243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のようなコンバインにおいて、刈取部では、切断装置は引起装置および搬送装置と同一の駆動源であるエンジンから供給される動力を得て同調駆動されていた。そのため、刈取部で切断装置による穀稈の切断が完了した後、または走行機体の走行が停止した後で、刈取部で切断装置による穀稈の切断を行わない場合であっても、搬送装置が駆動されているときには、切断装置も継続的に駆動されていた。したがって、この場合に補助作業者などがコンバイン付近で手刈りを行ったり、または手扱きを行うためにコンバインに近づいたりするとき、切断装置の回転駆動する複数の切断刃により小石などが補助作業者などに向かって跳ね飛ばされたりするおそれがあり、安全性に問題があった。
【0005】
そこで本発明は、刈取部で切断装置による穀稈の切断を行わない場合の安全性の向上を図ることができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、分草具により分草された複数条の穀稈を引き起こす引起装置と、前記引起装置により引き起こされた複数条の穀稈を切断する切断装置と、前記切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを有する刈取部を備え、前記刈取部を走行機体に対して昇降可能に構成するコンバインであって、穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃と、これらの切断刃を回転駆動させる駆動アクチュエータとを、前記刈取部の切断装置に備えるとともに、前記刈取部の刈高さ位置を検出する刈高さ位置検出手段と、前記切断装置の駆動アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えて、前記制御手段は、前記刈取部の昇降時に、前記刈高さ位置検出手段にて検出された刈取部の刈高さ位置が、予め設定された設定刈高さ位置に到達した場合、複数の切断刃の回転駆動を停止させるように、前記駆動アクチュエータの駆動を制御するものである。
【0008】
請求項2においては、分草具により分草された複数条の穀稈を引き起こす引起装置と、前記引起装置により引き起こされた複数条の穀稈を切断する切断装置と、前記切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを有する刈取部を備え、前記刈取部を走行機体に対して昇降可能に構成するコンバインであって、穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃と、これらの切断刃を回転駆動させる駆動アクチュエータとを、前記刈取部の切断装置に備えるとともに、前記走行機体の車速を検出する車速検出手段と、前記切断装置の駆動アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えて、前記制御手段は、前記複数の切断刃の回転駆動時に、前記車速検出手段にて検出された車速がゼロになった場合、前記複数の切断刃の回転駆動を停止させるように、前記駆動アクチュエータの駆動を制御するものである。
【0009】
請求項3においては、前記制御手段は、前記複数の切断刃の回転駆動時に、前記車速検出手段にて検出された車速が予め設定された設定車速よりも低くなった後、更にゼロに向かって低くなるに従って、前記複数の切断刃の回転数を減少させるように、前記駆動アクチュエータの駆動を制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、刈取部を設定刈高さ位置まで上昇させた場合、即ち刈取部で切断装置による穀稈の切断を行わなくなった場合に、この刈取部の搬送装置を駆動させたまま、切断装置を自動的に停止させることが可能となる。したがって、この場合に補助作業者などがコンバイン付近で手刈りを行ったり、または手扱きを行うためにコンバインに近づいたりしても、切断装置の回転駆動する複数の切断刃により小石などが補助作業者などに向かって跳ね飛ばされることがなくなり、安全性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2においては、走行機体を停止させた場合、即ち刈取部で切断装置による穀稈の切断を行わなくなった場合に、この刈取部の搬送装置を駆動させたまま、切断装置を自動的に停止させることが可能となる。したがって、この場合に補助作業者などがコンバイン付近で手刈りを行ったり、または手扱きを行うためにコンバインに近づいたりしても、切断装置の回転駆動する複数の切断刃により小石などが補助作業者などに向かって跳ね飛ばされることがなくなり、安全性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項3においては、走行機体を停止させるときに、走行機体の減速にあわせて複数の切断刃の回転速度も徐々に減速させることが可能となる。したがって、切断装置の回転駆動する複数の切断刃により小石などが周辺の補助作業者などに向かって跳ね飛ばされにくくすることができ、安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る刈取部20を有する四条刈りのコンバイン1の全体構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、コンバイン1には、走行機体の機体フレーム2に対して、走行部10と、刈取部20と、脱穀部30と、選別部40と、穀粒貯溜部50と、排藁処理部60と、エンジン部70と、ミッション部80と、操縦部90とが備えられる。
【0017】
走行部10は、機体フレーム2の下部に設けられる。走行部10は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11などを有して、クローラ式走行装置11により機体を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0018】
刈取部20は、機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部20は、分草具21や、引起装置22や、切断装置23や、搬送装置24などを有して、分草具21により圃場の穀稈を分草し、引起装置22により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置23により引起後の穀稈を切断し、搬送装置24により切断後の穀稈を脱穀部30側へ搬送することができるように構成される。
【0019】
脱穀部30は、機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部20の後方に配置される。脱穀部30は、搬送装置31や、扱胴や、受網などを有して、搬送装置31により刈取部20から搬送されてくる穀稈を受け継いで排藁処理部60側へ搬送し、扱胴および受網により搬送中の穀稈を脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0020】
選別部40は、機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部30の下方に配置される。選別部40は、揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置や、藁屑排出装置などを有して、揺動選別装置により脱穀部30から落下する脱穀物を穀粒と藁屑や塵埃などとに揺動選別し、風選別装置により揺動選別後のものを更に穀粒と藁屑や塵埃などとに風選別し、穀粒搬送装置により選別後の穀粒を穀粒貯溜部50側へ搬送する一方、藁屑排出装置により藁屑や塵埃などを外部へ排出することができるように構成される。
【0021】
穀粒貯溜部50は、機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部30および選別部40の右側方に配置される。穀粒貯溜部50は、穀粒タンク51や、穀粒排出装置52などを有して、穀粒タンク51により選別部40から搬送されてくる穀粒を貯溜し、穀粒排出装置52により貯溜中の穀粒を任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0022】
排藁処理部60は、機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部30の後方に配置される。排藁処理部60は、排藁搬送装置や、排藁切断装置などを有して、排藁搬送装置により脱穀部30から搬送されてくる脱穀済みの穀稈を受け継いでこれを排藁として外部へ排出する、もしくは排藁切断装置へ搬送し、排藁切断装置により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0023】
エンジン部70は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部50の前方に配置される。エンジン部70は、エンジン71などを有して、動力をエンジン71からこれを駆動源とする各部の装置に適宜の動力伝達機構を介して供給し、エンジン71により各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0024】
ミッション部80は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部70の前方に配置される。ミッション部80は、トランスミッション81などを有して、エンジン部70のエンジンの動力が走行部10や刈取部20などの各装置へ供給される前に、トランスミッション81により当該動力を変速することができるように構成される。
【0025】
操縦部90は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部70およびミッション部80の上方に配置される。操縦部90は、ステアリングハンドル91を含む各種のレバーやスイッチ等の操作手段94や、操縦席92や、キャビン93などを有して、操作手段94により各部の装置などを操作し、操縦席92に操縦者を着座させ、キャビン93により操作具や操縦席92を覆うことができるように構成される。
【0026】
このようにして、コンバイン1は、操縦部90での操作具の操作によって、エンジン部70からエンジンの動力を各部の装置に供給するなどして、走行部10にて機体を走行させながら、刈取部20で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部30で刈取部20からの穀稈を脱穀し、選別部40で脱穀部30からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部50で選別部40からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部60で脱穀部30からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0027】
次に、コンバイン1の動力伝達機構の構成について説明する。
【0028】
動力伝達機構は、動力をエンジン部70のエンジン71から刈取部20の切断装置23を除く各部の装置に伝達することができるように構成される。
【0029】
具体的には、図2に示すように、エンジン71の出力軸151がミッション部80のトランスミッション81の入力軸152とプーリ及びベルトにより連動連結されて、動力がエンジン71からトランスミッション81に伝達可能とされる。そして、動力がトランスミッション81からその出力軸153を介して走行部10のクローラ式走行装置11に伝達可能とされる。
【0030】
トランスミッション81の別の出力軸153が刈取入力軸155と一方向クラッチ161および刈取クラッチ162を介して連動連結されて、動力がトランスミッション81から刈取部20の引起装置22および搬送装置24に伝達可能とされるとともに、脱穀部30の搬送装置31に伝達可能とされる。この動力の伝達は刈取クラッチ162の入切状態に応じて変更される。
【0031】
さらに、エンジン71の出力軸151が脱穀入力軸156と脱穀クラッチ163を介して連動連結されて、動力がエンジン71から脱穀部30の扱胴32に伝達可能とされる。この脱穀入力軸156が選別入力軸と連動連結されて、動力がエンジン71から選別部40の揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置や、藁屑排出装置にも伝達可能とされる。これらの動力の伝達は脱穀クラッチ163の入切状態に応じて変更される。
【0032】
脱穀入力軸156が、また、刈取入力軸155とも流込クラッチ164を介して連動連結されて、動力がエンジン71から刈取部20の引起装置22および搬送装置24に伝達可能とされる。つまり、動力がエンジン71からトランスミッション81を経ずに引起装置22および搬送装置24に伝達可能とされる。この動力の伝達は流込クラッチ164の入切状態に応じて変更される。
【0033】
さらに、エンジン71の出力軸151が排出入力軸157と排出クラッチ165を介して連動連結されて、動力がエンジン71から穀粒貯溜部50の穀粒タンク51内の排出コンベア52aを含む穀粒排出装置52に伝達可能とされる。この動力の伝達は排出クラッチ165の入切状態に応じて変更される。
【0034】
ここで、刈取クラッチ162と、脱穀クラッチ163と、流込クラッチ164と、排出クラッチ165とは、それぞれ後述の制御手段8による駆動制御にてソレノイド等のクラッチアクチュエータが駆動されることで、入状態または切状態に切り替えられるように構成される。
【0035】
こうして、動力がエンジン71から各部の装置に伝達されるとき、走行部10では、クローラ式走行装置11が駆動可能とされる。このクローラ式走行装置11が駆動される場合に、走行機体、即ちコンバイン1が任意の車速で走行される。
【0036】
刈取部20では、引起装置22および搬送装置24が、走行機体の前進時に、刈取クラッチ162が入状態とされた場合に、駆動速度を車速と同調させて駆動され、刈取クラッチ162が切状態とされた場合に停止される。同様に、脱穀部30では、搬送装置31が、走行機体の前進時に、刈取クラッチ162が入状態とされた場合に駆動され、刈取クラッチ162が切状態とされた場合に停止される。
【0037】
ただし、刈取部20では、引起装置22および搬送装置24が、脱穀部30では、搬送装置31が、走行機体の後進時または停止時に、刈取クラッチ162が切状態とされても、流込クラッチ164が入状態とされた場合には車速とは関係なく駆動され、その後に流込クラッチ164が切状態とされた場合に停止される。
【0038】
また、脱穀部30では、扱胴32が、脱穀クラッチ163が入状態とされた場合に駆動され、脱穀クラッチ163が切状態とされた場合に停止される。同様に、選別部では、揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置や、藁屑排出装置が、脱穀クラッチ163が入状態とされた場合に駆動され、脱穀クラッチ163が切状態とされた場合に停止される。
【0039】
穀粒貯溜部50では、穀粒排出装置52が、排出クラッチ165が入状態とされた場合に駆動され、排出クラッチ165が切状態とされた場合に停止される。
【0040】
次に、刈取部20の構成について説明する。
【0041】
図3に示すように、刈取部20は、前述の分草具21と、引起装置22と、切断装置23と、搬送装置24とに加えて、刈取フレーム110を有して構成される。刈取部20は、刈取フレーム110で走行機体の機体フレーム2の左側前端部に支持され、機体フレーム2の前方に配置される。
【0042】
刈取部20の走行機体に対する支持部付近において、走行機体の機体フレーム2側では、機体フレーム2の左側前端部に左右一対の支持台3が左右方向に所定間隔をとって平行に立設される。左右の各支持台3上にはパイプ受部材4が設けられる。
【0043】
刈取部20側では、刈取フレーム110に刈取入力パイプ111が備えられる。そして、刈取入力パイプ111が、機体フレーム2の左側前端部の上方であって、左右の支持台3上のパイプ受部材4の間に左右方向に水平に横設され、その左右の端部でそれぞれ支持台3上のパイプ受部材4に回動自在に支持される。
【0044】
また、刈取フレーム110には、刈取入力パイプ111とともに、縦伝動パイプ112と、横伝動パイプ113と、複数の分草フレーム114と、駆動パイプ115と、左右の引起縦伝動パイプ116と、引起横伝動パイプ117と、複数の引起駆動パイプ118と、連結フレーム119とが備えられる。
【0045】
この刈取フレーム110において、縦伝動パイプ112は、刈取入力パイプ111の前方に配置され、刈取入力パイプ111の左右中途部から前斜下方へ向けて延設される。横伝動パイプ113は、縦伝動パイプ112の前方に配置され、縦伝動パイプ112の先端部から左右方向へ延設される。
【0046】
複数の分草フレーム114は、横伝動パイプ113の前方に配置され、左右方向に適宜の間隔をとって互いに平行に並設される。これらの分草フレーム114のうち、最外側に位置する左右の外側分草フレーム114Aは、横伝動パイプ113の左右の端部からそれぞれ前方へ向けて延設される。
【0047】
複数の分草フレーム114のうち、残りの左右の外側分草フレーム114Aよりも内側に位置する内側分草フレーム114Bは、駆動パイプ115の左右中途部から左右方向に所定間隔ごとに前方へ向けて延設される。
【0048】
これらの内側分草フレーム114Bは、左右の外側分草フレーム114Aの間において、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの左右幅が、内側分草フレーム114B同士の左右幅、および内側分草フレーム114Bと左外側分草フレーム114Aとの左右幅よりも大きくなるように配置される。
【0049】
駆動パイプ115は、横伝動パイプ113の前斜下方に配置され、左右の外側分草フレーム114Aの後部の間に左右方向に水平に横設される。つまり、駆動パイプ115は、横伝動パイプ113と前後方向に所定間隔をとって互いに平行に並設される。
【0050】
左右の引起縦伝動パイプ116は、横伝動パイプ113の上方に配置され、横伝動パイプ113の左右の端部から前斜上方へ向けて立設される。引起横伝動パイプ117は、横伝動パイプ113の前上方に配置され、左右の引起縦伝動パイプ116の上端部の間に左右方向に水平に横設される。
【0051】
複数の引起駆動パイプ118は、引起横伝動パイプ117の下方に配置され、引起横伝動パイプ117の左右中途部から左右方向に所定間隔ごとに下方へ向けて延設される。また、連結フレーム119は、引起横伝動パイプ117の後方に配置され、引起横伝動パイプ117の左右中途部から縦伝動パイプ112の後部まで後方へ向けて延設される。
【0052】
こうして、刈取フレーム110は、刈取入力パイプ111と、縦伝動パイプ112と、横伝動パイプ113と、複数の分草フレーム114と、駆動パイプ115と、左右の引起縦伝動パイプ116と、引起横伝動パイプ117と、複数の引起駆動パイプ118と、連結フレーム119とを一体的に連結して構成される。
【0053】
このような刈取フレーム110に、分草具21や、引起装置22や、切断装置23や、搬送装置24などが適宜に支持される。刈取フレーム110に支持される際、分草具21と、引起装置22と、搬送装置24とは、この順で前から後に向けて配置され、切断装置23は、引起装置22の後方で搬送装置24の搬送始端部の下方に配置される。
【0054】
図4にも示すように、分草具21には、四条分五つの分草板211が備えられる。これらの分草板211はそれぞれ先細形状とされ、複数の分草フレーム114、即ち左右の外側分草フレーム114Aおよび三つの内側分草フレーム114Bの先端部に前方へ向けて突設される。
【0055】
引起装置22には、四条分四つの引起ケース221が備えられる。各引起ケース221はタイン付チェーン222などを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。これらの引起ケース221は分草具21の後方で左右方向に適宜の間隔をとって並べて配置され、複数の分草フレーム114と複数の引起駆動パイプ118との間に前低後高の傾斜状に立設される。
【0056】
搬送装置24には、掻込機構241と、搬送機構245とが備えられる。掻込機構241は、搬送装置24の前部側に配置され、この搬送装置24の搬送始端部となるように設けられている。一方、搬送機構245は、搬送装置24の後部側に配置され、搬送装置24の搬送中途部および搬送終端部となるように設けられている。
【0057】
掻込機構241には、左右の掻込装置242L・242Rと、四つの掻込輪243とが備えられる。左右の掻込装置242L・242Rは、それぞれ左右一対で一組の突起付ベルトなどを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。左右の掻込装置242L・242Rは、それぞれ引起ケース221の後方に配置され、引起ケース221側から後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。
【0058】
左右の掻込装置242L・242Rは、またそれぞれ左右一対で一組の突起付ベルトを左または右側二つの引起ケース221の間に向けて前方へ大きく開くように配置される。つまり、左右の各掻込装置242L・242Rは、二つの引起ケース221の前部側の左右幅が広くなり、後部側の左右幅が狭くなるように配置される。
【0059】
四つの掻込輪243は、それぞれスターホイルとされ、回転駆動可能に構成される。各掻込輪243は、左右の掻込装置242L・242Rの各突起付ベルトの後部下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。
【0060】
搬送機構245には、左右の下部搬送装置246L・246Rと、上部搬送装置247と、縦搬送装置248と、補助搬送装置249とが備えられる。各搬送装置はチェーンなどを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。
【0061】
左下部搬送装置246Lは、左掻込装置242Lの後方に配置され、左掻込装置242L側から右斜後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。右下部搬送装置246Rは、右掻込装置242Rの後方に配置され、右掻込装置242R側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。
【0062】
上部搬送装置247は、引起装置22の後方であって右下部搬送装置246Rの上方に配置され、右掻込装置242R側から左斜後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。縦搬送装置248は、左下部搬送装置246Lの後方であって、上部搬送装置247の下方に配置され、左下部搬送装置246L側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。補助搬送装置249は、縦搬送装置248の後方であって、上部搬送装置247の下方に配置され、縦搬送装置248側から後方へ向けて脱穀部30の搬送装置31まで延設される。
【0063】
切断装置23には、主切断刃231と補助切断刃232とからなる複数の円盤形状の切断刃と、駆動アクチュエータ233とが備えられる。主切断刃231および補助切断刃232は、後述するように、掻込機構241の下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。駆動アクチュエータ233は、主切断刃231および補助切断刃232の近傍に配置され、これらの主切断刃231および補助切断刃232と連動連結される。
【0064】
さらに、これらの分草具21および各装置を支持する刈取フレーム110では、刈取入力パイプ111の内部に刈取入力軸155が内挿されるとともに、その他の各パイプの内部に刈取伝動軸が内挿される。そして、引起装置22および搬送装置24が各刈取伝動軸や刈取入力軸155などを含む動力伝達機構を介してエンジン部70のエンジン71と連動連結される。
【0065】
こうして、引起装置22および搬送装置24は、エンジン部70のエンジン71を駆動源としてこれから供給される動力を得て、駆動することができるように構成される。また、切断装置23は、駆動アクチュエータ233を駆動源としてこれの動力を用いて、単独で駆動する、言い換えればエンジン71から独立して駆動することができるように構成される。
【0066】
このような構成により、刈取部20において、各装置が駆動される場合に、分草具21の分草板211により圃場の穀稈が一条ごとに分離するように分草された後、引起装置22で引起ケース221により分草後の穀稈が引き起こされる。つづいて、搬送装置24の掻込機構241で左右の掻込装置242L・242Rと掻込輪243とによりそれぞれ左または右側二つの引起ケース221の間から導入される引起後の左または右側二条分の穀稈の株元側が一束に掻寄せられ掻き込まれる。
【0067】
このとき、切断装置23で主切断刃231および補助切断刃232により引越後の穀稈が株元側で切断される。切断された後、穀稈は搬送装置24の搬送機構245で右下部搬送装置246Rにより右二条分の穀稈が左斜後方へ搬送されると同時に、左下部搬送装置246Lにより左二条分の穀稈が右斜後方へ搬送されて、四条分の穀稈の株元側が右下部搬送装置246Rの搬送終端部付近で合流させられる。
【0068】
次に、上部搬送装置247により四条分の穀稈の穂先側が寄せ集められながら左斜後方へ搬送されるとともに、縦搬送装置248により右下部搬送装置246Rの搬送終端部付近にて合流させられた四条分の穀稈の株元側が脱穀部30の搬送装置31へ向けて後斜上方に搬送され、補助搬送装置249により穀稈の株元側が縦搬送装置248から脱穀部30の搬送装置31へ渡される。このようにして、刈取部20で穀稈の一連の刈取作業が行われる。
【0069】
また、刈取部20において、刈取フレーム110は、縦伝動パイプ112の前後中途部を機体フレーム2の前下部から前方へ向けて延設される油圧シリンダ等の昇降アクチュエータ5の先端部に連結させ、後述の制御手段8による駆動制御にて昇降アクチュエータ5が伸長または収縮駆動されることで、刈取入力パイプ111回りに上下方向に回動できるように構成される。
【0070】
すなわち、刈取フレーム110は、昇降アクチュエータ5の伸長駆動時には刈取入力パイプ111回りに上方へ回動され、昇降アクチュエータ5の収縮駆動時には刈取入力パイプ111回りに下方へ回動される。これにより、刈取部20が刈取フレーム110の上方への回動時に機体に対して上昇され、刈取フレーム110の下方への回動時に機体に対して下降されることとなる。
【0071】
つづいて、切断装置23付近の構成について詳細に説明する。
【0072】
図5および図6に示すように、切断装置23には、前記引起装置22により引き起こされる穀稈の条数、即ち刈り取る穀稈の刈取条数と同数の複数の主切断刃231と、一つの補助切断刃232とからなる複数の切断刃と、駆動アクチュエータ233とが備えられる。ただし、複数の切断刃に補助切断刃を含まずに切断装置を構成することも可能である。
【0073】
本実施形態においては、刈取条数が四条であるので、切断装置23には、第一主切断刃231Aと、第二主切断刃231Bと、第三主切断刃231Cと、第四主切断刃231Dとなる四つの主切断刃231と、補助切断刃232とが備えられる。つまり、切断装置23には、五つの切断刃が備えられる。
【0074】
第一から第四主切断刃231A〜231Dは、それぞれ所定幅の径をもって円盤形状に形成され、同一形状とされる。補助切断刃232は、主切断刃231と同様に円盤形状に形成され、第一から第四主切断刃231A〜231Dよりも小径とされる。そして、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232は、その外周縁部に刃部を、中心部に固定部を有して構成される。
【0075】
なお、第一から第四主切断刃231A〜231Dの径は、一条分の穀稈を切断することができる程度に設定される。一方、補助切断刃232の径は、第一から第四主切断刃231A〜231Dの径よりも小さな範囲で切断装置23の切断幅に応じて適宜に設定される。実際には、補助切断刃232は切断装置23の切断幅に応じて適切な径をもったものに変更されて用いられる。
【0076】
第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232は、横伝動パイプ113よりも前方であって、左右の外側分草フレーム114Aの間に、この順に左から右に向かって配置される。ここで、第一から第四主切断刃231A〜231Dは、各々同一平面上で、左右方向に同一直線上に並べられる。補助切断刃232は、第一から第四主切断刃231A〜231Dと略同一平面状上で、複数の主切断刃231のうち、最外側に位置する左右一方(右方)の第四主切断刃231Dの外側方に並べられる。
【0077】
複数の主切断刃231のうち、左右他方(左方)の最外側に位置する第一主切断刃231Aは、平面視で刃部の左端部が左外側分草フレーム114Aと若干重複するように、左外側分草フレーム114Aのすぐ内側に配置される。第二主切断刃231Bは、平面視で刃部の左右の各端部が内側分草フレーム114Bと若干重複するように、隣り合う内側分草フレーム114Bの間に配置される。第三主切断刃231Cは、平面視で刃部の左右の各端部が内側分草フレーム114Bと若干重複するように、隣り合う内側分草フレーム114Bの間に配置される。
【0078】
第四主切断刃231Dは、平面視で刃部の左端部が内側分草フレーム114Bと若干重複するように、内側分草フレーム114Bのすぐ外側に配置される。補助切断刃232は、平面視で刃部の右端部が右外側分草フレーム114Aと若干重複するように、右外側分草フレーム114Aのすぐ内側に配置される。つまり、第四主切断刃231Dと補助切断刃232とはともに隣り合う内側分草フレーム114Bと外側分草フレーム114Aとの間に配置される。
【0079】
これらの主切断刃231のうち、隣り合う主切断刃231は、互いに一部を重複させず、相互間にあらかじめ左右方向に所定幅をとって配置される。具体的には、第一主切断刃231Aと第二主切断刃231Bと、第二主切断刃231Bと第三主切断刃231Cと、第三主切断刃231Cと第四主切断刃231Dとが、それぞれ相互間に内側分草フレーム114Bの左右幅と略同程度の幅をとって配置される。
【0080】
一方、隣り合う補助切断刃232と第四主切断刃231Dとは、互いに一部を重複させて配置される。こうして、第一から第四主切断刃231A〜231Dと左外側分草フレーム114Aまたは内側分草フレーム114Bとが、それぞれ平面視で互いの間に隙間が生じないように配置されるとともに、補助切断刃232と右外側分草フレーム114Aおよび第四主切断刃231Dとが、それぞれ平面視で互いの間に隙間が生じないように配置される。
【0081】
ここで、補助切断刃232は、前述のように、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの間の左右幅が、他の分草フレーム114間の左右幅よりも大きく設定されていることから、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの間に、隣り合う第四主切断刃231Dとともに、これと一部重複するように配置される。
【0082】
そのうえで、第一から第四主切断刃231A〜231Dは、それぞれ搬送装置24の掻込機構241に備えられた各掻込輪243の略直下方に配置され、引起装置22側が低くなり、脱穀部30側が高くなる、即ち前低後高の傾斜状に設けられる。こうして、掻込輪243と第一から第四主切断刃231A〜231Dとはともに前低後高の傾斜状に設けられ、互いに異なる傾斜度合いをもって、即ち平行とはならずに上下に並べられる。
【0083】
各第一から第四主切断刃231A〜231Dの水平な地面に対する傾斜度合いは、各掻込輪243の水平な地面に対する傾斜度合いよりも緩やかに設定される。言い換えれば、各第一から第四主切断刃231A〜231Dの水平な地面に対する傾斜度合いは、各掻込輪243が各第一から第四主切断刃231A〜231Dよりも水平な地面に対してより大きく傾くように設定される。
【0084】
各第一から第四主切断刃231A〜231Dの傾斜度合いは、更にその後方に配置された刈取フレーム110の横伝動パイプ113が側面視における第一から第四主切断刃231A〜231Dの脱穀部30側への延長線よりも下方に位置するように設定される。なお、複数の掻込輪243の傾斜度合いは同一に設定される。
【0085】
また、補助切断刃232は、複数の掻込輪243のうち、最外側に位置する右掻込輪243の右下方に配置され、第一から第四主切断刃231A〜231Dと同様に前低後高の傾斜状に設けられる。補助切断刃232の傾斜度合いは、第一から第四主切断刃231A〜231Dの傾斜度合いと同程度に設定される。
【0086】
補助切断刃232は、更に第四主切断刃231Dの前部の右外側方で、刃部の前端側が第一から第四主切断刃231A〜231Dの刃部の前端側と左右方向に揃うように前寄りに配置される。これにより、補助切断刃232の後方であって、第四主切断刃231Dの後部の右外側方に、即ち切断装置23の右端部に、駆動アクチュエータ233を設置可能とする大きさをもったアクチュエータ設置用空間235が形成される。
【0087】
図7および図8に示すように、駆動アクチュエータ233は、アクチュエータ設置用空間235に設けられる。駆動アクチュエータ233は、油圧モータとされ、動力を第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に伝動機構を介して供給し、これらを回転駆動させることができるように構成される。なお、駆動アクチュエータ233は、電動モータなどとしてもよく、油圧モータに限定するものではない。
【0088】
駆動アクチュエータ233は、走行機体の任意位置に備えられるコントローラ等の制御手段8により駆動制御される。この制御手段8には、図9に示すように、駆動アクチュエータ233が接続されるとともに、操縦部90に備えられる駆動スイッチ94a等の操作手段94と、刈取部20の引起装置22や搬送装置24の駆動状態を検知する手段として、前述の刈取クラッチ162の入切状態を検出するセンサ等の刈取クラッチ検出手段171などとが接続される。
【0089】
そして、駆動アクチュエータ233は、制御手段8によって、操作手段94の駆動スイッチ94aの手動操作に応じて正転方向へ駆動、または逆転方向へ駆動、または停止されるように駆動制御される。また、駆動アクチュエータ233は、制御手段8によって、停止されるように駆動制御されている場合に、刈取クラッチ検出手段171にて刈取クラッチ162が切断状態から接続状態に切り替えられたことが検出されると駆動されるように駆動制御される。こうして、切断装置23が刈取部の引起装置22および搬送装置24と連動して駆動を開始するものとされる。
【0090】
この駆動アクチュエータ233は、アクチュエータ設置用空間235において、横伝動パイプ113と駆動パイプ115との間に介設される。駆動パイプ115は、前述のように配置されるとともに、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の下方、特にこれらの固定部の下方付近を通るように配置され、左右の各端部で外側分草フレーム114Aの前低後高の傾斜状とされた後部に連結される。
【0091】
駆動パイプ115には、左右方向に延伸されるパイプ本体115aに対して、第一延出部115bと、複数の第二延出部115cとが備えられる。
【0092】
第一延出部115bは、補助切断刃232の下方付近で、パイプ本体115aの右側部から前後へ向けて前低後高状に延設される。第一延出部115bは、前端部が補助切断刃232の固定部の下方を通って刃部よりも突出しない程度に前方へ向けて延出される一方、後端部が刃部よりも突出するように後方へ向けて延出され、この後端部で駆動アクチュエータ233と連結される。
【0093】
複数の第二延出部115cは、それぞれ第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の固定部の下方に配置される。これらの第二延出部115cのうち、四つの第二延出部115cはそれぞれパイプ本体115aの左右中途部から、一つの第二延出部115cは第一延出部115bから前斜上方へ向けて、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232のすぐ手前まで延設される。
【0094】
そして、このようにパイプ本体115aと、第一延出部115bと、複数の第二延出部115cとから構成される駆動パイプ115の内部に、切断装置23の伝動機構が設けられる。この伝動機構には、縦駆動軸236や、横駆動軸237や、複数の回転駆動軸238や、複数のベベルギヤなどが備えられる。
【0095】
縦駆動軸236は、第一延出部115bの内部に配置され、補助切断刃232の固定部の下方を通るように、駆動アクチュエータ233から前下方へ向けて延設される。縦駆動軸236は、前後方向の適宜の箇所で第一延出部115bに軸受を介して回転自在に支持されるとともに、駆動アクチュエータ233の出力軸と連動連結される。なお、縦駆動軸236は、駆動アクチュエータ233の出力軸を兼ねるものとすることも可能である。
【0096】
横駆動軸237は、パイプ本体115aの内部に配置され、第一から第四主切断刃231A〜231Dの固定部の下方を通るように、縦駆動軸236の中途部から左方向へ延設される。横駆動軸237は、左右方向の適宜の箇所でパイプ本体115aに軸受を介して回転自在に支持されるとともに、縦駆動軸236とベベルギヤを介して連動連結される。
【0097】
複数の回転駆動軸238は、それぞれ第二延出部115cの内部に配置され、横駆動軸237または縦駆動軸236の中途部から上方へ向けて、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の固定部まで延設される。複数の各回転駆動軸238は、上下方向の適宜の箇所で第二延出部115cに軸受を介して回転自在に支持されるとともに、第一から第四主切断刃231A〜231D側の回転駆動軸238は、横駆動軸237とベベルギヤを介して連動連結され、補助切断刃232側の回転駆動軸238は、縦駆動軸236とベベルギヤを介して連動連結される。
【0098】
そして、第一から第四主切断刃231A〜231Dが、側面視で回転駆動軸238の軸心方向に対し直交するように、固定部で第一から第四主切断刃231A〜231Dの裏側に位置する回転駆動軸238の先端部に固設される。同様に、補助切断刃232が、側面視で回転駆動軸238の軸心方向に対し直交するように、固定部で補助切断刃232の裏側に位置する回転駆動軸238の先端部に固設される。
【0099】
こうして、駆動アクチュエータ233は、第一から第四主切断刃231A〜231Dと、縦駆動軸236や横駆動軸237や複数の回転駆動軸238などにより連動連結される。駆動アクチュエータ233は、更に補助切断刃232と、縦駆動軸236や回転駆動軸238などにより連動連結される。
【0100】
よって、駆動アクチュエータ233が制御手段8の駆動制御に基づいて駆動された場合に、動力が駆動アクチュエータ233から第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に伝動機構を介して伝達されて、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232が回転駆動軸238を回転中心として回転駆動される。
【0101】
回転駆動時における第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の回転速度は、制御手段8により駆動アクチュエータ233の駆動制御が行われることによって、任意に調節可能とされる。第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232により穀稈が切断される際、これらの切断刃の回転速度は、一定の回転速度となるように設定されるとともに、互いに同一の回転速度となるように設定される。
【0102】
なお、第一から第四主切断刃231A〜231Dの回転速度と、補助切断刃232の回転速度とは、異なるように設定することも可能である。たとえば、第一から第四主切断刃231A〜231Dの回転速度を補助切断刃232の回転速度よりも速くなるように設定することが可能である。
【0103】
また、第一から第四主切断刃231A〜231Dの回転方向は、伝動機構によって、隣り合う主切断刃231の回転方向が互いに異なる回転方向となるように設定される。具体的には、第一から第四主切断刃231A〜231Dの回転方向は、第一主切断刃231Aと第二主切断刃231B、第二主切断刃231Bと第三主切断刃231C、第三主切断刃231Cと第四主切断刃231Dとの回転方向がそれぞれ互いに異なる回転方向となるように設定される。
【0104】
補助切断刃232の回転方向は、隣り合う主切断刃231の回転方向と同一の回転方向となるように設定される。具体的には、補助切断刃232の回転方向は、第四主切断刃231Dの回転方向と同一の回転方向となるように伝動機構で設定される。
【0105】
本実施形態においては、第一主切断刃231Aと第三主切断刃231Cとの回転方向は、図5における時計回り方向に設定され、第二主切断刃231Bと第四主切断刃231Dの回転方向は、図5における反時計回り方向に設定される。補助切断刃232の回転方向は、第四主切断刃231Dと同様に、図5における反時計回り方向に設定される。
【0106】
よって、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232が回転駆動される場合、第一主切断刃231Aと第二主切断刃231Bとは、それぞれ上方の掻込輪243と同一の回転方向、即ち掻込輪243および左掻込装置242Lの掻込方向に回転駆動される。第三主切断刃231Cと第四主切断刃231Dとは、それぞれ上方の掻込輪243と同一の回転方向、即ち掻込輪243および右掻込装置242Rの掻込方向に回転駆動される。
【0107】
一方、補助切断刃232は、第四主切断刃231Dとその上方の掻込輪243と同一の回転方向、即ち掻込輪243および右掻込装置242Rの掻込方向に回転駆動される。
【0108】
なお、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の各々の回転方向は、前記とは逆の回転方向に切り替えることも可能となっている。この回転方向の切替は、操縦部90の操作具が操作されることなどで、制御手段8により駆動アクチュエータ233が駆動制御され、以前とは逆の回転方向となる正転方向または逆転方向に駆動されることで行われる。
【0109】
このような構成により、切断装置23付近においては、引起装置22と、搬送装置24とが駆動される場合に、切断装置23も手動もしくは自動で駆動される。つまり、駆動アクチュエータ233から第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に動力が伝達され、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232が前述のように設定された回転速度および回転方向で回転駆動される。
【0110】
そして、分草後に引き起こされた左または右側二条分の穀稈が、搬送機構の左右の掻込装置242L・242Rや掻込輪243により後方へ掻き込まれながら、それぞれ一条分ごとに左右の外側分草フレーム114Aと内側分草フレーム114Bとの間、または内側分草フレーム114B同士の間を通って、各分草フレーム114により第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232側に向かって案内される。
【0111】
一条分ごとの穀稈が、各分草フレーム114により案内されて、第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に至ると、各穀稈が株元側で左外側分草フレーム114Aと内側分草フレーム114Bとの間では、第一主切断刃231Aにより切断され、内側分草フレーム114B同士の間では、それぞれ第二主切断刃231Bまたは第三主切断刃231Cにより切断される。また、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの間では、第四主切断刃231Dおよび補助切断刃232とにより切断される。
【0112】
この際、穀稈は第一から第四主切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232により掻込輪243および左右の各掻込装置242L・242Rの掻込方向に送られつつ切断されるとともに、左右の各掻込装置242L・242Rや掻込輪243により更に左または右側二条分ごとに一束に掻寄せられ掻き込まれる。そして、前述のように、搬送機構245の左右の下部搬送装置246L・246Rにより後方へ搬送される。このようにして、切断装置23付近での作業が行われるようになっている。
【0113】
最後に、刈取部20における切断装置23と、搬送装置24(引起装置22)との駆動制御、特に各装置を停止状態とさせる駆動制御について説明する。
【0114】
前述のような刈取部20を備えるコンバイン1において、図9に示すように、刈取部20には、刈取部20と圃場面との対地高さ位置を検出して圃場に植立する未刈穀稈を刈り取るときの刈高さ位置を検出するセンサ等の刈高さ位置検出手段172が備えられる。走行部10またはミッション部80には、走行機体の車速を検出するセンサ等の車速検出手段173が備えられる。
【0115】
操縦部90には、操作手段94の一部として、刈取部20の引起装置22および搬送装置24を駆動または停止させるための刈取クラッチレバー94bと、刈取部20を昇降させて刈高さ位置を調節するための刈取昇降スイッチ94cと、刈取部20を所定の刈高さ位置まで上昇させるための刈取オートリフトスイッチ94dと、刈取部20を所定の刈高さ位置まで下降させるための刈取オートセットスイッチ94eと、後述の第一から第三の設定刈高さ位置を設定するための刈高さ位置設定器94fとが備えられる。
【0116】
操縦部90には、操作手段94の一部として、走行機体の車速を調節するための主変速レバー94kおよび副変速レバー94mと、後述の設定車速を設定するための車速設定器94nとが更に備えられる。
【0117】
これらの刈高さ位置検出手段172と、車速検出手段173と、操作手段94の刈取クラッチレバー94bと、刈取昇降スイッチ94cと、刈取オートリフトスイッチ94dと、刈取オートセットスイッチ94eと、刈高さ位置設定器94fと、車速設定器94nとは、刈取クラッチ162の入切状態を検出する刈取クラッチ検出手段171と、刈取部20の切断装置23を駆動または停止させるための駆動スイッチ94aと同様に制御手段8に接続される。
【0118】
また、刈取フレーム110を上下方向に回動させて刈取部20を昇降させるための昇降アクチュエータ5と、刈取クラッチ162の入切状態を切り替えるための刈取クラッチアクチュエータ167とが、主切断刃231および補助切断刃232を回転駆動させるための駆動アクチュエータ233と同様に制御手段8に接続される。
【0119】
そして、前述のように、駆動アクチュエータ233が制御手段8により駆動スイッチ94aの手動操作に応じて駆動制御可能とされるとともに、刈取クラッチアクチュエータ167が制御手段8により刈取クラッチレバー94bの手動操作に応じて駆動制御可能とされる。こうして、切断装置23と搬送装置24とが互いに異なる操作手段の操作にて手動で駆動または停止状態に切替可能とされる。
【0120】
また、昇降アクチュエータ5が制御手段8により刈取昇降スイッチ94cの操作に応じて駆動制御可能とされる。その際、駆動アクチュエータ233が制御手段8により刈高さ位置検出手段172の検出結果に応じて昇降アクチュエータ5と連動して駆動制御可能とされる。
【0121】
具体的には、刈取昇降スイッチ94cが下降操作された場合、昇降アクチュエータ5が刈取昇降スイッチ94cの操作量に応じて収縮駆動される。この昇降アクチュエータ5の収縮駆動によって、刈取フレーム110が下方へ回動されて、刈取部20が任意の刈高さ位置まで下降される。
【0122】
一方、刈取昇降スイッチ94cが上昇操作された場合、図10に示すように、昇降アクチュエータ5が刈取昇降スイッチ94cの操作量に応じて伸長駆動される(S11)。この昇降アクチュエータ5の伸長駆動によって、刈取フレーム110が上方へ回動されて、刈取部20が任意の刈高さ位置まで上昇される。
【0123】
そして、このとき、刈取クラッチ検出手段171にて刈取クラッチ162の入状態が検出されているとともに、駆動アクチュエータ233が駆動されている(S12)場合、つまり刈取部20にて搬送装置24と切断装置23とが駆動状態とされている場合には、刈高さ位置検出手段172にて刈高さ位置が随時検出され、その検出された刈高さ位置Hが予め設定された第三設定刈高さ位置H3に到達したか否かの判定が行われる(S13)。
【0124】
その結果、刈高さ位置検出手段172にて検出された刈高さ位置Hが第三設定刈高さ位置H3に到達していないと判定された場合、昇降アクチュエータ5が伸長駆動されている間は、同様の判定が繰り返し行われつつ、駆動アクチュエータ233が主切断刃231および補助切断刃232の回転数が一定となるように通常どおりに駆動される。これによって、主切断刃231および補助切断刃232が任意に設定された一定の回転速度で駆動され、切断装置23が駆動状態とされる。
【0125】
一方、刈高さ位置検出手段172にて検出された刈高さ位置Hが第三設定刈高さ位置H3に到達したと判定された場合、駆動アクチュエータ233が強制的に停止される(S14)。これによって、主切断刃231および補助切断刃232の回転駆動が停止され、切断装置23が自動的に停止状態とされる。
【0126】
このように刈取部20の上昇時に切断装置23が停止状態とされた場合であっても、刈取部20において、搬送装置24はその駆動源が切断装置23の駆動源とは異なるため、刈取クラッチ162が入状態とされているときには駆動状態とされる。この搬送装置24は、刈取クラッチレバー94bの手動操作や、後述の刈取オートリフトスイッチ94dの手動操作にて停止状態とされる。
【0127】
なお、第三設定刈高さ位置H3は、制御手段8に接続される操作手段94の刈高さ位置設定器94fにて任意に設定可能である。
【0128】
そのうえ、昇降アクチュエータ5が制御手段8により刈取オートリフトスイッチ94dや刈取オートセットスイッチ94eの操作およびに刈高さ位置検出手段172の検出結果に応じて駆動制御可能とされる。その際、駆動アクチュエータ233が刈高さ位置検出手段172の検出結果に応じて、また刈取クラッチアクチュエータ167が刈取クラッチ検出手段171の検出結果に応じて昇降アクチュエータ5と連動して駆動制御可能とされる。
【0129】
具体的には、刈取オートセットスイッチ94eが操作された場合、図11に示すように、昇降アクチュエータ5が刈高さ位置検出手段172にて検出される刈高さ位置Hが予め設定された第二設定刈高さ位置H2になるまで収縮駆動される(S21)。この昇降アクチュエータ5の収縮駆動によって、刈取フレーム110が下方へ回動されて、刈取部20が第二設定刈高さ位置H2まで自動的に下降される。
【0130】
そして、このとき、刈取クラッチ検出手段171にて刈取クラッチ162の切状態が検出されるとともに、駆動アクチュエータ233が停止されている(S22)場合、つまり刈取部20にて搬送装置24と切断装置23とが停止状態とされている場合には、刈高さ位置検出手段172にて検出された刈高さ位置Hが第二設定刈高さ位置H2に到達したか否かの判定が行われる(S23)。
【0131】
その結果、刈高さ位置検出手段172にて検出される刈高さ位置Hが第二設定刈高さ位置H2に到達すると、駆動アクチュエータ233が駆動される(S24)。この駆動アクチュエータ233の駆動によって、主切断刃231および補助切断刃232が任意に設定された一定の回転速度で駆動され、切断装置23が駆動状態とされる。
【0132】
同時に、刈取クラッチアクチュエータ167も駆動される(S25)。この刈取クラッチアクチュエータ167の駆動によって、刈取クラッチ162が入状態に切り替えられ、刈取部20の搬送装置24が自動的に駆動状態とされるとともに、脱穀部30の搬送装置31が同じく自動的に駆動状態される。
【0133】
また、刈取オートリフトスイッチ94dが操作された場合、図12に示すように、昇降アクチュエータ5が刈高さ位置検出手段にて検出される刈高さ位置Hが予め設定された第一設定刈高さ位置H1に到達するまで伸長駆動される(S31)。この昇降アクチュエータ5の伸長駆動によって、刈取フレーム110が上方へ回動されて、刈取部20が第一設定刈高さ位置H1まで自動的に上昇される。
【0134】
ここで、第一設定刈高さ位置H1は、第三設定刈高さ位置H3よりも高い位置となるように設定される。そのため、刈取部20の上昇の過程で、刈取クラッチ検出手段171にて刈取クラッチ162の入状態が検出されるとともに、駆動アクチュエータ233が駆動されている(S32)場合、つまり刈取部20で搬送装置24と切断装置23とが駆動状態とされている場合には、刈高さ位置検出手段172にて刈高さ位置が随時検出され、その検出された刈高さ位置Hが予め設定された第三設定刈高さ位置H3に到達したか否かの判定が行われる(S33)。
【0135】
その結果、刈高さ位置検出手段172にて検出された刈高さ位置Hが第三設定刈高さ位置H3に到達していないと判定された場合、昇降アクチュエータ5が伸長駆動されている間は、同様の判定が繰り返し行われつつ、駆動アクチュエータ233が主切断刃231および補助切断刃232の回転数が一定となるように通常どおりに駆動される。これによって、主切断刃231および補助切断刃232が任意に設定された一定の回転速度で駆動され、切断装置23が駆動状態とされる。
【0136】
一方、刈高さ位置検出手段172にて検出された刈高さ位置Hが第三設定刈高さ位置H3に到達したと判定された場合、駆動アクチュエータ233が強制的に停止される(S34)。これによって、主切断刃231および補助切断刃232の回転駆動が停止され、切断装置23が自動的に停止状態とされる。
【0137】
そして、このときにも、刈取部20の上昇の過程で、刈高さ位置検出手段172にて刈高さ位置が随時検出され、その検出された刈高さ位置Hが予め設定された第一設定刈高さ位置H1に到達したか否かの判定が行われる(S35)。
【0138】
その結果、刈高さ位置検出手段172にて検出される刈高さ位置Hが第一設定刈高さ位置H1に到達したと判定されると、刈取クラッチアクチュエータ167が駆動される(S36)。この刈取クラッチアクチュエータ167の駆動によって、刈取クラッチ162が切状態に切り替えられ、刈取部20の搬送装置24が自動的に停止状態されるとともに、脱穀部30の搬送装置31が同じく自動的に停止状態とされる。
【0139】
こうして、搬送装置24は、切断装置23が停止状態とされた後、つづいて停止状態とされる。なお、第一設定刈高さ位置H1および第二設定刈高さ位置H2は、刈高さ位置設定器94fにて任意に設定可能である。
【0140】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、分草具21により分草された複数条の穀稈を引き起こす引起装置22と、引起装置22により引き起こされた複数条の穀稈を切断する切断装置23と、切断装置23により切断された穀稈を脱穀部30側へ搬送する搬送装置24とを有する刈取部20を備え、刈取部20を走行機体に対して昇降可能に構成するものであって、穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃、即ち複数の主切断刃231および補助切断刃232と、これらの複数の主切断刃231および補助切断刃232を回転駆動させる駆動アクチュエータ233とを、刈取部20の切断装置23に備えるとともに、刈取部20の刈高さ位置を検出する刈高さ位置検出手段172と、切断装置23の駆動アクチュエータ233の駆動を制御する制御手段8とを備えて、制御手段8は、刈取部20の昇降時に、刈高さ位置検出手段172にて検出された刈取部20の刈高さ位置Hが、予め設定された第三設定刈高さ位置H3に到達した場合、複数の主切断刃231および補助切断刃232の回転駆動を停止させるように、駆動アクチュエータ233の駆動を制御するものとされる。
【0141】
これにより、刈取作業の終了によって、操作手段94を操作して、刈取部20を上昇させた場合、即ち刈取部20で切断装置23による穀稈の切断を行わなくなった場合に、この刈取部20の搬送装置24を駆動させたまま、切断装置23を自動的に停止させる、言い換えれば、切断装置23を搬送装置24に対して先行させて自動的に停止させることが可能となる。
【0142】
つまり、刈取部20で切断装置23による穀稈の切断が完了して、切断装置23を駆動させる必要はないが、搬送装置24を駆動させる必要はある場合に、具体的には、切断装置にて切断された刈取穀稈を完全に脱穀部30まで搬送することができなかった場合に、流込クラッチ164を入状態にするなどして搬送装置24を継続的に駆動させても、切断装置23を複数の主切断刃231および補助切断刃232を極力回転駆動させないように停止させることが可能となる。
【0143】
したがって、このような場合に切断装置23を停止させて、補助作業者などがコンバイン1付近で手刈りを行ったり、または手扱きを行うためにコンバイン1に近づいたりしても、回転駆動する複数の主切断刃231および補助切断刃232により小石などが補助作業者などに向かって跳ね飛ばされることをなくすことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0144】
また、駆動アクチュエータ233は、車速検出手段173の検出結果に応じて駆動制御することも可能である。
【0145】
図13に示すように、車速検出手段173の検出結果に基づいて走行機体が走行中であることが検知されている(S41)とき、刈取クラッチ検出手段171にて刈取クラッチ162の入状態が検出されるとともに、駆動アクチュエータ233が駆動されている(S42)場合、つまり刈取部20で搬送装置24と切断装置23とが駆動状態とされている場合に、車速検出手段173にて車速が随時検出され、その検出された車速Vが予め設定された設定車速V1よりも低下しているか否かの判定が行われる(S43)。
【0146】
その結果、車速検出手段173にて検出された車速Vが設定車速V1よりも低下していないと判定された場合、同様の判定が繰り返し行われつつ、駆動アクチュエータ233が主切断刃231および補助切断刃232の回転数が一定となるように通常どおりに駆動される。これによって、主切断刃231および補助切断刃232が任意に設定された一定の回転速度で駆動され、切断装置23が駆動状態とされる。
【0147】
一方、車速検出手段173にて検出された車速Vが設定車速V1よりも低下したと判定された場合、その後に車速が減速されると、車速検出手段173にて検出された車速Vが更にゼロに向かって低くなるに従って、駆動アクチュエータ233が主切断刃231および補助切断刃232の回転数が一定の割合で徐々に減少するように変速駆動される(S44)。これによって、主切断刃231および補助切断刃232が車速と同様に回転速度を減速させながら駆動される。ただし、主切断刃231および補助切断刃232の回転速度は、一定の切断性能を維持することができる程度で変速される。
【0148】
そして、このときにも、車速の減速過程で、車速検出手段173にて車速が随時検出され、その検出された車速Vがゼロに到達したか否かの判定が行われる(S45)。
【0149】
その結果、車速検出手段173にて検出された車速Vがゼロに到達したと判定されると、つまり走行機体が停止状態となると、駆動アクチュエータ233が強制的に停止される(S46)。これによって、主切断刃231および補助切断刃232の回転駆動が停止され、切断装置23が停止状態とされる。
【0150】
なお、この切断装置23の停止状態では、走行機体が再発進しても、駆動スイッチ94aの操作がなければ、駆動アクチュエータ233は駆動されず、切断装置23は停止状態に維持される。
【0151】
このように走行機体の車速がゼロとなって、切断装置23が停止状態とされた場合であっても、刈取部20において、搬送装置24はその駆動源が切断装置23の駆動源であるエンジン71とは異なるため、刈取クラッチ162が入状態とされているときには駆動状態とされる。この搬送装置24は、刈取クラッチレバー94bの手動操作や、後述の刈取オートリフトスイッチ94dの手動操作にて停止状態とされる。
【0152】
なお、設定車速V1は操作手段94に含まれる車速設定器94nにて任意に設定可能である。
【0153】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバインは、また、分草具21により分草された複数条の穀稈を引き起こす引起装置22と、引起装置22により引き起こされた複数条の穀稈を切断する切断装置23と、切断装置23により切断された穀稈を脱穀部30側へ搬送する搬送装置24とを有する刈取部20を備え、刈取部20を走行機体に対して昇降可能に構成するものであって、穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃、即ち複数の主切断刃231および補助切断刃232と、これらの複数の主切断刃231および補助切断刃232を回転駆動させる駆動アクチュエータ233とを、刈取部20の切断装置23に備えるとともに、走行機体の車速を検出する車速検出手段173と、切断装置23の駆動アクチュエータ233の駆動を制御する制御手段8とを備えて、制御手段8は、複数の主切断刃231および補助切断刃232の回転駆動時に、車速検出手段173にて検出された車速Vがゼロになった場合、複数の主切断刃231および補助切断刃232の回転駆動を停止させるように、駆動アクチュエータ233の駆動を制御するものとされる。
【0154】
これにより、刈取作業の終了によって、走行機体を停止させた場合、即ち刈取部20で切断装置23による穀稈の切断を行わなくなった場合に、この刈取部20の搬送装置24を駆動させたまま、切断装置23を自動的に停止させる、言い換えれば、切断装置23を搬送装置24に対して先行させて自動的に停止させることが可能となる。
【0155】
つまり、走行機体の走行停止によって刈取部20への穀稈の供給が停止して、切断装置23を駆動させる必要はないが、搬送装置24を駆動させる必要はある場合に、具体的には、切断装置23にて切断された刈取穀稈を完全に脱穀部30まで搬送することができなかった場合に、流込クラッチ164を入状態にするなどして搬送装置24を継続的に駆動させても、走行機体の走行の停止と同時に、切断装置23を複数の主切断刃231および補助切断刃232を極力回転駆動させないように停止させることができる。
【0156】
したがって、このような場合に切断装置23を停止させて、補助作業者などがコンバイン1付近で手刈りを行ったり、または手扱きを行うためにコンバイン1に近づいたりしても、回転駆動する複数の主切断刃231および補助切断刃232により小石などが補助作業者などに向かって跳ね飛ばされることをなくすことができ、安全性の向上を図ることができる。
【0157】
本発明の一実施形態に係るコンバインは、また、制御手段8は、複数の主切断刃231および補助切断刃232の回転駆動時に、車速検出手段173にて検出された車速Vが予め設定された設定車速V1よりも低くなった後、更にゼロに向かって低くなるに従って、複数の主切断刃231および補助切断刃232の回転数を減少させるように、駆動アクチュエータ233の駆動を制御するものとされる。
【0158】
これにより、走行機体を停止させるときに、走行機体の減速にあわせて複数の主切断刃231および補助切断刃232の回転速度も徐々に減速させることが可能となる。したがって、切断装置23の回転駆動する複数の主切断刃231および補助切断刃232により小石などが周辺の作業者などに向かって跳ね飛ばされにくくすることができ、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体構成を示す左側面図。
【図2】動力伝達機構の構成を示す図。
【図3】刈取部の構成を示す左側面図。
【図4】刈取部の構成を示す平面図。
【図5】切断装置の構成を示す平面図。
【図6】切断装置の構成を示す左側面図。
【図7】切断装置の駆動系の構成を示す平面図。
【図8】切断装置の駆動系の構成を示す部分断面図。
【図9】制御手段の機能ブロック図。
【図10】刈取昇降スイッチが上昇操作された場合における各アクチュエータの駆動制御の流れを示す図。
【図11】刈取オートリフトスイッチが操作された場合における各アクチュエータの駆動制御の流れを示す図。
【図12】刈取オートセットスイッチが操作された場合における各アクチュエータの駆動制御の流れを示す図。
【図13】刈取作業後に走行機体が停止された場合における駆動アクチュエータの駆動制御の流れを示す図。
【符号の説明】
【0160】
1 コンバイン
8 制御手段
20 刈取部
21 分草具
22 引起装置
23 切断装置
24 搬送装置
172 刈高さ位置検出手段
173 車速検出手段
231 主切断刃
232 補助切断刃
233 駆動アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分草具により分草された複数条の穀稈を引き起こす引起装置と、
前記引起装置により引き起こされた複数条の穀稈を切断する切断装置と、
前記切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを有する刈取部を備え、
前記刈取部を走行機体に対して昇降可能に構成するコンバインであって、
穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃と、これらの切断刃を回転駆動させる駆動アクチュエータとを、前記刈取部の切断装置に備えるとともに、
前記刈取部の刈高さ位置を検出する刈高さ位置検出手段と、
前記切断装置の駆動アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えて、
前記制御手段は、前記刈取部の昇降時に、前記刈高さ位置検出手段にて検出された刈取部の刈高さ位置が、予め設定された設定刈高さ位置に到達した場合、複数の切断刃の回転駆動を停止させるように、前記駆動アクチュエータの駆動を制御する、コンバイン。
【請求項2】
分草具により分草された複数条の穀稈を引き起こす引起装置と、
前記引起装置により引き起こされた複数条の穀稈を切断する切断装置と、
前記切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを有する刈取部を備え、
前記刈取部を走行機体に対して昇降可能に構成するコンバインであって、
穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃と、これらの切断刃を回転駆動させる駆動アクチュエータとを、前記刈取部の切断装置に備えるとともに、
前記走行機体の車速を検出する車速検出手段と、
前記切断装置の駆動アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えて、
前記制御手段は、前記複数の切断刃の回転駆動時に、前記車速検出手段にて検出された車速がゼロになった場合、前記複数の切断刃の回転駆動を停止させるように、前記駆動アクチュエータの駆動を制御する、コンバイン。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数の切断刃の回転駆動時に、前記車速検出手段にて検出された車速が予め設定された設定車速よりも低くなった後、更にゼロに向かって低くなるに従って、前記複数の切断刃の回転数を減少させるように、前記駆動アクチュエータの駆動を制御する、請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−22278(P2010−22278A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187745(P2008−187745)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】