説明

コンバイン

【課題】作物の収穫作業中であっても、燃料が高温となることでエンジンの作動不良が生じることを防止できるコンバインを提供する。
【解決手段】コモンレール式ディーゼルエンジン71を搭載したコンバインであって、前記ディーゼルエンジン71の回転及び機体の走行速度を制御する制御手段100と、走行速度Vを設定する変速操作手段94と、当該変速操作手段94の操作量Aを検出し前記制御手段100に送信する変速操作量検出手段94aと、前記制御手段100からの出力値を基に、前記変速操作手段94の操作量Aに対応する走行速度Vとする変速手段82aと、前記コモンレール754に供給される燃料の温度tを検出する燃料温度検出手段171と、を備え、前記制御手段100は、前記燃料の温度tが第一設定温度T1を越えると、前記操作量Aに対応する設定走行速度を低減することで走行速度Vを制限する制御をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンレール式エンジンを搭載したコンバインの制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインはエンジンによって駆動力を得て、走行しながら作物の収穫作業を行う。そのため、収穫作業中のエンジンには、相当の負荷がかかる。例えば、特許文献1に示すようなコンバインにおいて、エンジンの過負荷状態の発生を事前にオペレータに知らせて、走行速度を落とさせることで、エンスト状態となる不具合を解消する技術は公知となっている。
【0003】
特に、コモンレール式エンジンにおいては、このエンジンの過負荷状態によって燃料の温度が上昇するとサプライポンプ内で焼き付きが発生し、制御手段によって制御することが困難となり、ひいてはエンジンの故障の原因となってしまう。したがって、コモンレール式エンジンを搭載したコンバインにおいては、燃料の温度の上昇を起因とするエンジンの動作不良が生じて、収穫作業を中止しなくてはならない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−238016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、作物の収穫作業中であっても、燃料が高温となることでエンジンの作動不良が生じることを防止できるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したコンバインであって、前記ディーゼルエンジンの回転及び機体の走行速度を制御する制御手段と、走行速度を設定する変速操作手段と、当該変速操作手段の操作量を検出し前記制御手段に送信する変速操作量検出手段と、前記制御手段からの出力値を基に、前記変速操作手段の操作量に対応する走行速度とする変速手段と、前記コモンレールに供給される燃料の温度を検出する燃料温度検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記燃料の温度が第一設定温度を越えると、前記操作量に対応する設定走行速度を低減することで走行速度を制限する制御をするものである。
【0008】
請求項2においては、前記制御手段には、前記第一設定温度よりも高温の第二設定温度が設定され、前記燃料の温度が第二設定温度を越えると、エンジン出力を所定出力以下に低減させるものである。
【0009】
請求項3においては、前記制御手段は、前記第二設定温度よりも高温の第三設定温度が設定され、前記燃料の温度が第三設定温度を越えると、前記エンジン回転数を設定エンジン回転数まで低減するものである。
【0010】
請求項4においては、前記制御手段には、表示手段が接続され、前記制御手段は、燃料の温度が前記第一設定温度、前記第二設定温度、又は前記第三設定温度を越えると、それぞれに対応した制御が行われていることを前記表示手段に表示するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、燃料の温度が第一設定温度を越えると、走行速度が制限されるので、作物の処理量が所定量以下に減り、エンジンにかかる負荷が軽減される。このため、エンジンの発熱量も下がり、燃料の温度の上昇を防止することができる。したがって、作物の収穫作業を適正に行いながら、言い換えれば、定格回転数で作業機を駆動しながら、燃料が高温となることでエンジンの作動不良が生じることを防止できる。
【0013】
請求項2においては、エンジン出力を低減させることで、必然的に走行速度を下げる。走行速度が下がると刈取作業による刈取作物の処理量が減るため、エンジンにかかる負荷が軽減される。このため、エンジンの発熱量も下がり、燃料の温度の上昇を防止することができる。したがって、作物の収穫作業を行いながら、燃料が高温となることでエンジンの作動不良が生じることを防止できる。
【0014】
請求項3においては、エンジン出力を低減させることで、必然的に走行速度を下げる。走行速度が下がると作物の処理量が減るため、エンジンにかかる負荷が軽減される。このため、エンジンの発熱量も下がり、燃料の温度上昇を防止することができる。したがって、エンジンを段階的に制御することで収穫作業を行いながら、エンジンの作動不良が生じる前に、エンジンを最低エンジン回転数とすることで収穫作業を停止して、燃料が高温となることでエンジンの作動不良が生じることを防止し、燃料が低温となってから再び作物の収穫作業を行うことができる。
【0015】
請求項4においては、作物の収穫作業を行いながら、燃料が高温となることでエンジンの作動不良が生じることを防止することができる。またコンバインの操縦者が燃料の温度によるエンジンの状態及びそれに伴う制御状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコモンレール式ディーゼルエンジンの吸気通路及び排気通路の構成を示す概略図。
【図3】同じく燃料供給部の構成を示す概略図。
【図4】コンバインの動力伝達の構成を示す概略図。
【図5】コンバイン及びエンジンの制御機構を示す概略図。
【図6】主変速レバーの操作量と走行速度の関係を示す図。
【図7】コンバイン及びエンジンの制御態様を示したフロー図。
【図8】図7の処理Cにおけるコンバイン及びエンジンの制御態様を示したフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
まず、図1を用いて、コンバイン1の全体構成について説明する。
【0019】
コンバイン1には、走行部10、刈取部20、脱穀部30、選別部40、穀粒貯溜部50、排藁処理部60、エンジン部70、ミッション部80、及び、操縦部90が備えられる。
【0020】
走行部10は、機体フレーム2の下部に設けられる。走行部10は左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11・11等を有し、左右のクローラ式走行装置11・11により機体を前進又は後進方向に走行させることができるように構成される。
【0021】
刈取部20は、機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部20は分草具21、引起装置22、切断装置23、及び、搬送装置24等を有し、分草具21により圃場の穀稈を分草し、引起装置22により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置23により引き起こし後の穀稈を切断し、搬送装置24により切断後の穀稈を脱穀部30側へ搬送することができるように構成される。
【0022】
脱穀部30は、機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部20の後方に配置される。脱穀部30は、フィードチェーン31、扱胴32、及び受網等を有し、フィードチェーン31により刈取部20の搬送装置24からの穀稈を受け継いで排藁処理部60側へ搬送し、扱胴32及び前記受網により搬送中の穀稈を脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0023】
選別部40は、機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部30の下方に配置される。選別部40は、揺動選別装置、風選別装置、穀粒搬送装置、及び藁屑排出装置等を有し、前記揺動選別装置により脱穀部30から落下する脱穀物を穀粒と藁屑や塵埃等とに揺動選別し、前記風選別装置により揺動選別後のものを更に穀粒と藁屑や塵埃等とに風選別し、前記穀粒搬送装置により選別後の穀粒を穀粒貯溜部50側へ搬送する一方、前記藁屑排出装置により藁屑や塵埃等を外部へ排出することができるように構成される。
【0024】
穀粒貯溜部50は、機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部30及び選別部40の右側方に配置される。穀粒貯溜部50は、穀粒タンク51、及び穀粒排出装置52等を有し、穀粒タンク51により選別部40から搬送されてくる穀粒を一時的に貯溜し、穀粒排出装置52により貯溜中の穀粒を穀粒タンク51から排出し、さらに任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0025】
排藁処理部60は、機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部30の後方に配置される。排藁処理部60は排藁搬送装置や、排藁切断装置等を有し、前記排藁搬送装置により脱穀部30のフィードチェーン31からの脱穀済みの穀稈を受け継いでこれを排藁として外部へ排出する、又は前記排藁切断装置へ搬送し、当該排藁切断装置により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0026】
エンジン部70は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部50の前方に配置される。エンジン部70はエンジン71等を有し、動力(出力回転)をエンジン71からこれを駆動源とする各部の装置に適宜の伝動機構を介して供給し、エンジン71により各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0027】
ミッション部80は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部70の前方に配置される。ミッション部80は油圧式無段変速装置(以下、単に「HST」と記す)82を含むトランスミッション81等を有して、エンジン部70のエンジン71の出力回転が走行部10や、刈取部20等の各装置へ供給される前に、HST82により当該出力回転を変速することができるように構成される(図4参照)。
【0028】
操縦部90は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部70及びミッション部80の上方に配置される。操縦部90は操縦席91、ステアリングハンドル92を含む操作具類、及びステップ等を有し、操縦席91にステップ上の作業者を着座させ、操作具類により作業者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0029】
このようにして、コンバイン1は、操縦部90での操作具類の操作によって、エンジン部70からエンジン71の出力回転を各部の装置に供給して、走行部10にて機体を走行させながら、刈取部20で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部30で刈取部20からの穀稈を脱穀し、選別部40で脱穀部30からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部50で選別部40からの穀粒を貯溜するととともに、排藁処理部60で脱穀部30からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0030】
次に、図2及び図3を用いてエンジン部70のエンジン71について説明する。
【0031】
エンジン71は、コモンレール式のディーゼルエンジンであって、エンジン本体72、吸気通路73、排気通路74、及び燃料供給部75を備える。四つの燃焼室721が形成されたエンジン71としているが、限定するものではなく一つ又は二つ以上形成されていてもよい。
【0032】
図2に示すように、エンジン本体72は、シリンダブロック、シリンダヘッド、クランク軸等を有するとともに、燃焼室721を有する。エンジン本体72には、エンジン回転センサ170が設置される。エンジン回転センサ170は、制御手段100と接続され、エンジン71の運転時に回転するクランク軸の回転を検出し、この検出信号を制御手段100へ送信する。
【0033】
吸気通路73は、吸入空気を外部からエンジン本体72の燃焼室721に導く通路である。吸気通路73には、図示しないエアクリーナ、吸気スロットル731及び吸気マニホールド732が空気の流れる方向(図中の白抜き矢印参照)に沿って順に設けられる。
【0034】
エアクリーナは、コンバイン1の外部からの吸入空気の埃等の異物を濾過して、この異物が吸入空気に混入した状態で燃焼室721に侵入することを防止している。
【0035】
吸気スロットル731は、例えばステッピングモータ又はDCサーボモータによって駆動されるバタフライバルブを用いて、エンジン本体72の燃焼室721へ供給される吸入空気の流量を調整する。具体的には、吸気スロットル731は、バタフライバルブ(以下、吸気弁733とする)の開度をステッピングモータで構成された吸気開度調節アクチュエータ734を作動させることで調節して、吸気通路73の通路断面積を変化させることによって燃焼室721へ供給される吸入空気の流量を調量可能とする。吸気開度調節アクチュエータ734は、制御手段100と接続されて、この制御手段100により吸気スロットル731が開閉制御される。
【0036】
吸気マニホールド732は、エアクリーナによって濾過された後、吸気スロットル731によって調量された吸入空気を、各気筒の燃焼室721に均等に配分する。吸気マニホールド732は四つの通路に分岐するように形成されて、エンジン本体72のシリンダヘッドに固設されている。
【0037】
排気通路74は、エンジン本体72から排出される排気ガスを介してコンバイン1の外部まで導く通路である。排気通路74には、排気マニホールド741、排気スロットル742、及び排気浄化装置(図示省略)が排気ガスの流れる方向(図中の太矢印参照)の上流側から下流側に向かって順に設けられている。
【0038】
排気マニホールド741は、四つの燃焼室721から延びる通路を一つの通路に合流させる形状とし、燃焼室721から排出される排気ガスを集合させる。
【0039】
排気スロットル742は、例えばステッピングモータ、DCサーボモータ又は圧力ダイヤフラムによって駆動されるバタフライバルブを用いて、排気通路74の内部に生じる排気圧力を調整する。具体的には、排気スロットル742は、バタフライバルブ(以下、排気弁743とする)の開度をステッピングモータで構成された排気開度調節アクチュエータ744を作動させることで調節して、排気通路74の通路断面積を変化させることによって排気圧力を調整可能とする。排気開度調節アクチュエータ744は、制御手段100と接続されて、この制御手段100により排気スロットル742が開閉制御される。
【0040】
図3に示すように、燃料供給部75は、主として、燃料タンク751、燃料フィルタ752、サプライポンプ753、コモンレール754、インジェクタ755、及び、各種接続管等によって構成される。ここで、図3に示す太矢印は、燃料の流れる方向を示すものである。
【0041】
図1及び図3に示すように、燃料タンク751は、コンバイン1の機体フレーム2の後部上に配置され、燃料タンク751に接続される図示しないフィードポンプから燃料フィルタ752、低圧管75aを介して、サプライポンプ753の吸入側に接続され、フィードポンプ及びサプライポンプ753の駆動により、燃料タンク751内の燃料が、燃料フィルタ752及び低圧管75aを介して、サプライポンプ753に吸い込まれる。サプライポンプ753はエンジン71近傍に配置され、クランク軸から動力が伝達される。
【0042】
サプライポンプ753の側面には、燃料温度検出センサ171が取り付けられる。燃料温度検出センサ171は、制御手段100と接続され、サプライポンプ753内に吸い込まれた燃料の温度tを検出し、この検出信号を制御手段100へ送信する。ただし、燃料温度検出センサ171はサプライポンプ753の吐出部に設けて、吐出される燃料の温度を検出する構成としてもよい。
【0043】
サプライポンプ753の吐出側は、高圧管75bを介してコモンレール754と接続される。また、サプライポンプ753は、燃料の吸い込み量を調整するための調量弁と、調量弁を経由した燃料を加圧してコモンレール754に圧送するためのプランジャとを有する。調量弁は、調量アクチュエータ753aによって作動し、調量アクチュエータ753aは制御手段100と接続され、制御手段100によって調量アクチュエータ753aが作動される。
【0044】
プランジャは往復運動することで、燃料が加圧されてコモンレール754に圧送される。つまり、燃料タンク751内の燃料は、コモンレール754に圧送されて、コモンレール754内に蓄えられる。
【0045】
なお、サプライポンプ753は、燃料戻管75cを介して、燃料タンク751と接続される。これにより、サプライポンプ753内の余剰燃料は、燃料タンク751へ戻される。
【0046】
コモンレール754は、エンジン本体72の外側面に固定される。コモンレール754は、筒形状に形成された部材であり、高圧燃料を蓄圧するための蓄圧室を有する。コモンレール754の一端部には、レール圧センサ172が配置される。レール圧センサ172は、制御手段100と接続され、コモンレール754内の圧力(レール圧)を検出し、その検出値を制御手段100に送信する。
【0047】
コモンレール754には、各燃料噴射管75dを介して、エンジン本体72の気筒毎に配置された各インジェクタ755がそれぞれ接続される。
【0048】
各インジェクタ755は、燃料噴射バルブ756を有し、この燃料噴射バルブ756に接続された噴射アクチュエータ757により作動する。噴射アクチュエータ757は、制御手段100と接続され、制御手段100によってその作動を制御される。
【0049】
噴射アクチュエータ757・757・・・により燃料噴射バルブ756・756・・・の開閉(作動時間)を調整することによって、コモンレール754に蓄えられた高圧の燃料がインジェクタ755・755・・・からエンジン71の各燃焼室721に噴射される。噴射アクチュエータ757・757・・・を制御することにより、インジェクタ755・755・・・から各燃焼室721に噴射される燃料の噴射量及び噴射時期を調整することが可能となっている。
【0050】
なお、コモンレール754の他端部には、戻管コネクタ758を介して、コモンレール戻管75eの一端が接続される。さらに、コモンレール戻管75eの他端は、燃料タンク751に接続される。戻管コネクタ758は、減圧バルブ(図示省略)を有し、この減圧バルブは、コモンレール754内の燃料の圧力が一定以上になると開弁するように構成される。コモンレール754の余剰の燃料は、燃料戻管75c及びコモンレール戻管75eを介して、燃料タンク751に回収される。
【0051】
こうして、エンジン71は、吸気弁733からの開度、排気弁743からの開度、エンジン回転センサ170からのエンジン回転速度、燃料温度検出センサ171からの燃料温度、レール圧センサ172からのレール圧に基づいて、個々の状況に適合した燃料の噴射量、噴射時期ならびに噴射圧を算出し、これを実現できるように、後述する制御手段100によって制御される。
【0052】
次に、図4を用いて、コンバイン1の動力伝達機構について説明する。
【0053】
動力伝達機構は、出力回転をエンジン部70のエンジン71から各部の装置に伝達することができるように構成される。
【0054】
具体的には、エンジン71の出力軸71aが、ミッション部80のトランスミッション81の入力軸81aとプーリ及びベルトにより連動連結されて、エンジン71の出力回転がHST82に伝達可能とされる。そして、エンジン71の出力回転がHST82やトランスミッション81の変速装置等により変速されて、トランスミッション81の出力軸81b・81bから走行部10のクローラ式走行装置11・11に伝達可能とされる。
【0055】
トランスミッション81の別の出力軸81cは、一方向クラッチ81d及び刈取クラッチ26を介して刈取入力軸25と連動連結されて、出力回転がトランスミッション81から刈取部20の引起装置22、切断装置23及び搬送装置24(図1参照)に伝達可能とされる。この出力回転の伝達は刈取クラッチ26の入り切り状態に応じて変更される。刈取クラッチ26は、作業クラッチの実施の一形態である。
【0056】
さらに、エンジン71の出力軸71aは、脱穀クラッチ34を介して脱穀入力軸33と連動連結されて、出力回転がエンジン71から脱穀部30の扱胴32に伝達可能とされる。この脱穀入力軸33が選別入力軸(不図示)と連動連結されて、出力回転がエンジン71から選別部40の前記揺動選別装置や、前記風選別装置や、前記穀粒搬送装置や、前記藁屑排出装置にも伝達可能とされる。これらの出力回転の伝達は脱穀クラッチ34の入り切り状態に応じて変更される。脱穀クラッチ34は、作業クラッチの実施の一形態である。
【0057】
エンジン71の出力軸71aは、排出コンベア軸53と連動連結されて、出力回転がエンジン71から穀粒貯溜部50の排出コンベア52aを含む穀粒排出装置52に伝達可能とされる。
【0058】
刈取クラッチ26及び脱穀クラッチ34は、それぞれ後述の制御手段100による駆動制御にてソレノイド等のクラッチアクチュエータが駆動されることで、出力回転を伝達することが可能な入り状態又は出力回転の伝達を遮断する切り状態に切り換えられるように構成される。
【0059】
こうして、出力回転がエンジン71から各部の装置に伝達されるとき、走行部10では、クローラ式走行装置11・11が駆動可能とされる。このクローラ式走行装置11・11が駆動される場合に、走行機体、即ちコンバイン1が任意の走行速度で走行する。
【0060】
刈取部20では、引起装置22及び搬送装置24が、走行機体の前進時に、刈取クラッチ26が入り状態とされた場合に、駆動速度を走行速度と同調させて駆動され、刈取クラッチ26が切り状態とされた場合に停止される。同様に、脱穀部30では、フィードチェーン31が、走行機体の前進時に、刈取クラッチ26が入り状態とされた場合に駆動され、刈取クラッチ26が切り状態とされた場合に停止される。
【0061】
また、脱穀部30では、扱胴32が、脱穀クラッチ34が入り状態とされた場合に駆動され、脱穀クラッチ34が切り状態とされた場合に停止される。同様に、選別部40では、前記揺動選別装置や、前記風選別装置や、前記穀粒搬送装置や、前記藁屑排出装置が、脱穀クラッチ34が入り状態とされた場合に駆動され、脱穀クラッチ34が切り状態とされた場合に停止される。
【0062】
次に、図5を用いて、HST82による走行速度の変速構成について説明する。
【0063】
HST82には、可変容量型のポンプ82P、固定容量型のモータ82Mが備えられる。ポンプ82Pとモータ82Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、ポンプ82Pとモータ82Mとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
【0064】
ポンプ82Pは、プランジャ、シリンダ、可動斜板、制御軸を有する。シリンダは、前記入力軸81aに相対回転不能に支持され、複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。ポンプ82Pは、ポンプ容量調整手段である変速アクチュエータ82aが作動することによって、制御軸にて可動斜板を傾転させ、プランジャの往復摺動するストロークを変更させる。そうして、ポンプ82Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
【0065】
モータ82Mには、プランジャ、シリンダ、モータ軸、固定斜板が備えられる。シリンダはモータ軸に相対回転不能に支持される。固定斜板はモータ本体に固定され、ポンプ82Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダ及びモータ軸を回転させる。
【0066】
HST82は、変速操作手段である主変速レバー94の変位(操作量)を変速操作量検出手段である主変速操作量検出手段94aが検出し、制御手段100によって変速アクチュエータ82aが操作可能とされる。変速アクチュエータ82aは、コンバイン1に備えられる後述の制御手段100と接続される。
【0067】
次に、図5を用いて、コンバイン1の制御機構について説明する。
【0068】
制御機構は、燃料温度検出センサ171の出力値、つまり、サプライポンプ753の燃料の温度tに基づいて、エンジン71及びコンバイン1の状態を調節し、燃料の温度tを適正値にする温度制御を行うことができるように構成される。
【0069】
制御機構は、主として、制御手段100、主変速レバー94、刈取レバー96、脱穀レバー97、主変速操作量検出手段94a、刈取検出手段96a、脱穀検出手段97a、走行速度検出センサ101、エンジン回転センサ170、燃料温度検出センサ171、レール圧センサ172、変速アクチュエータ82a、吸気開度調節アクチュエータ734、排気開度調節アクチュエータ744、噴射アクチュエータ757、及び、表示手段99等を備える。
【0070】
制御手段100は、CPU等の演算装置と、RAM、ROM、及びHDD等の記憶装置とを備える。記憶装置には、各種のプログラムやデータに加えて、図6に示す制限速度情報が記憶される。この制限速度情報は、例えば、主変速レバー94の操作量Aが第一操作量A1である場合、温度制御が実行されているときには設定走行速度V1、温度制御が実行されていないときには設定走行速度V2となるように、走行速度Vを制限する情報である。つまり同じ操作量Aであっても、温度制御が実行されているときには設定走行速度Vが遅くなる。
【0071】
制御手段100には、前述のように、主変速操作量検出手段94a、刈取検出手段96a、脱穀検出手段97a、走行速度検出センサ101、エンジン回転センサ170、燃料温度検出センサ171、及びレール圧センサ172が接続されるとともに、吸気開度調節アクチュエータ734、排気開度調節アクチュエータ744、及び変速アクチュエータ82aが接続される。さらに、制御手段100は、表示手段99が接続される。
【0072】
主変速レバー94は、HST82の変速比を設定する操作具であり、操縦部90に配置される。主変速レバー94は、主変速操作具の実施の一形態である。主変速レバー94の操作量Aは、主変速操作量検出手段94aにより検出することができる。主変速操作量検出手段94aはポテンショメータやロータリエンコーダ等で構成される。なお、本実施形態においては、主変速操作具を主変速レバー94により構成するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。即ち、主変速操作具は、スライド式やダイヤル式のスイッチ等により構成することも可能である。
【0073】
刈取レバー96は、刈取クラッチ26(図4参照)の入り状態と切り状態とを切り換える操作具であり、操縦部90に配置される。刈取レバー96の操作位置、即ち刈取クラッチ26を入り状態にするための「入」位置及び刈取クラッチ26を切り状態にするための「切」位置は、刈取検出手段96aにより検出することができる。刈取検出手段96aは、スイッチ等で構成される。刈取検出手段96aは、作業検出手段の実施の一形態である。
【0074】
脱穀レバー97は、脱穀クラッチ34(図4参照)の入り状態と切り状態とを切り換える操作具であり、操縦部90に配置される。脱穀レバー97の操作位置、即ち脱穀クラッチ34を入り状態にするための「入」位置及び脱穀クラッチ34を切り状態にするための「切」位置は、脱穀検出手段97aにより検出することができる。脱穀検出手段97aは、スイッチ等で構成される。脱穀検出手段97aは、作業検出手段の実施の一形態である。
【0075】
走行速度検出センサ101は、コンバイン1の走行速度Vを検出するものである。走行速度検出センサ101は、HST82の出力軸81b・81bの回転数を検出する回転数センサにより構成される。なお、本実施形態においては、走行速度検出センサ101を出力軸81b・81bの回転数を検出する回転数センサにより構成するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。即ち、走行速度検出センサ101は、クローラ式走行装置11・11の駆動輪の回転数を検出するセンサや、対地速度センサ等によって構成することも可能である。
【0076】
エンジン回転センサ170は、前述の通り、エンジン71のクランク軸の回転速度を計測するためのものである。
【0077】
燃料温度検出センサ171は、前述の通り、サプライポンプ753内の燃料の温度tを検出するためのものである。
【0078】
レール圧センサ172は、前述の通り、コモンレール754内の圧力(レール圧)を検出するためのものである。
【0079】
吸気開度調節アクチュエータ734は、制御手段100からの制御信号(パルス信号)によって、吸気弁733を作動させ、吸気スロットル731の開度を調整するためのものである。本実施形態の吸気開度調節アクチュエータ734は、ステッピングモータで構成され、制御手段100によって送信されるパルス信号に対応して吸気スロットル731の開度が変更され、そのパルス信号を制御手段100が記憶することで吸気スロットル731の開度が認識できる。しかし、吸気スロットル731の開度を検出する開度検出手段を別に設ければ、DCサーボモータのように吸気スロットル731の開閉作動のみを行うものであってもよい。
【0080】
排気開度調節アクチュエータ744は、制御手段100からの制御信号(パルス信号)によって、排気弁743を作動させ、排気スロットル742の開度を調整するためのものである。本実施形態の排気開度調節アクチュエータ744は、吸気開度調節アクチュエータ734と同様にステッピングモータで構成されているため、制御手段100が排気スロットル742の開度を認識できる。しかし、排気スロットル742の開度を検出する開度検出手段を別に設ければ、DCサーボモータのように排気スロットル742の開閉作動のみを行うものであってもよい。
【0081】
変速アクチュエータ82aは、HST82の制御軸にて可動斜板の角度を変更させることにより、当該HST82の変速比を変更するものである。
【0082】
噴射アクチュエータ757は、前述のように、燃料噴射バルブ756を作動させることでインジェクタ755から噴射される燃料を燃焼室721へと供給するものである。
【0083】
表示手段99は、温度制御を行っている旨を表示するためのものである。表示手段99は、操縦部90に配置され、操縦席91に着座する作業者が認識できる位置にある。表示手段99には、燃料の温度tが第一設定温度T1、第二設定温度T2、第三設定温度T3を越えた場合の各制御状態が表示される。
【0084】
制御手段100は、主変速操作量検出手段94a、刈取検出手段96a、脱穀検出手段97aに接続され、主変速レバー94の操作量A、刈取レバー96及び脱穀レバー97の操作位置(操作量A)を検出信号として受信することができる。
【0085】
制御手段100は、刈取検出手段96a及び脱穀検出手段97aの出力値に基づいて、刈取レバー96及び/又は脱穀レバー97が「入り」状態であるか否かを検知する。
【0086】
制御手段100は、種々のデータやプログラム等に基づいて、変速アクチュエータ82aの動作を制御することで、主変速レバー94の操作量Aに対応する走行速度Vを変更する制御を行う。具体的には、制御手段100は、走行速度検出センサ101からの出力値、制限速度情報を基に、変速アクチュエータ82aを作動させ、コンバイン1の走行速度Vを増減させる。制御手段100は、温度制御状態において、燃料が設定温度より高くなるとコンバイン1の走行速度Vを低下させるように制御する。このため、刈取部20での作物の刈取量が減少し、刈取部20及び脱穀部30(その他の各部)において相対的に作物の処理量が減少し、エンジン71にかかる負荷が軽減される。ひいては、燃料の温度tの上昇を防止することができる。
【0087】
なお、制御手段100は、走行速度を制限した場合、主変速レバー94の操作量に対応する、前記HST82におけるポンプ82Pの可動斜板に連動連結した制御軸の回動量が、走行速度を制限する前に比べて小さくなるように、HST82の変速アクチュエータ82aを制御する。これにより、作業者は、走行速度が制御手段100により制限された場合であっても、走行速度が制限される前と同様に、主変速レバー94の全操作範囲を利用して、主変速レバー94により走行速度を無段階に変更することが可能となる。
【0088】
制御手段100は、エンジン回転センサ170、燃料温度検出センサ171、及びレール圧センサ172からの検出値、ならびに、種々のデータやプログラム等に基づいて、調量アクチュエータ753a及び噴射アクチュエータ757の作動を制御する。そうすることで、制御手段100は、サプライポンプ753とコモンレール754内の圧力、及びインジェクタ755の燃料噴射バルブ756の開閉(動作時間)を制御し、コモンレール754に蓄えられた高圧の燃料がインジェクタ755・755・・・から各燃焼室721に噴射されるときの燃料の噴射量及び噴射時期の制御を行う。この制御により、エンジン71の出力を変更することができる。例えば、エンジン71の出力が下がることで、コンバイン1は必然的に走行速度Vが下がり、それに伴い収穫作業による作物の収穫量を減少させることができる。
【0089】
制御手段100は、エンジン回転センサ170、燃料温度検出センサ171、及びレール圧センサ172からの検出値、ならびに、種々のデータやプログラム等に基づいて、吸気開度調節アクチュエータ734、排気開度調節アクチュエータ744、調量アクチュエータ753a及び噴射アクチュエータ757の作動を制御する。
そうすることで、制御手段100は、吸気スロットル731及び排気スロットル742の開度、サプライポンプ753内の燃料圧、及び噴射アクチュエータ757の開閉(動作時間)を制御し、燃焼室721内の空燃比を調整しエンジン回転数を制御する。この制御により、エンジン回転数を最低エンジン回転数となるまで減少させると、コンバイン1の走行を停止させ、収穫作業を中止させることができる。ここでの収穫作業の中止とは、コンバイン1の走行が停止することで、強制的に作物の収穫作業が行えなくすることを意味する。
【0090】
次に、図7、図8を用いて制御手段100による燃料の温度tを判断基準とする制御の流れについて説明する。
【0091】
まず、ステップS101において、制御手段100は、収穫作業状態であるかどうかを判断する。つまり、制御手段100は、作業検出手段である刈取検出手段96a及び脱穀検出手段97aの検知情報に基づいて、コンバイン1が収穫作業状態であるか否かを判定する。具体的には、脱穀レバー97が「入り」、又は、刈取レバー96及び脱穀レバー97の両方が「入り」の状態であるか否かの判断である。なお、収穫作業状態であるか否かの判断は、副変速レバーが作業用の低速位置に操作されているか走行用の高速位置に操作されているかで判断してもよい。
【0092】
制御手段100が、収穫作業状態でない走行モードである、即ち、脱穀レバー97が「入り」でないと判断した場合、再度ステップS101の処理を行う。つまり、燃料の温度tによる制御は開始されない。この場合、制御手段100は、主変速レバー94の操作位置(操作量A)に応じて、機体が通常の最高速度までの範囲で走行可能なように、HST82の変速アクチュエータ82aを制御する(図6の二点鎖線を参照)。
【0093】
一方、制御手段100が、収穫作業状態であると判断した場合、ステップS102に移行し、燃料の温度tによる制御が開始される。
【0094】
ステップS102において、制御手段100は、燃料の温度tを取得し、ステップS103に移行する。つまり、燃料温度測定手段である燃料温度検出センサ171によって計測された燃料の温度tが制御手段100の記憶装置に記憶される。
【0095】
ステップS103において、制御手段100は、燃料の温度tが第一設定温度T1を越えているか否かを判定する。ここで、第一設定温度T1は予め制御手段100の記憶装置に設定された閾値である。
制御手段100は、燃料の温度tが第一設定温度T1を越えていると判断した場合、ステップS104に移行する。
制御手段100は、燃料の温度tが第一設定温度T1以下であると判定した場合、再度ステップS102の処理を行う。
【0096】
ステップS104において、制御手段100は、走行速度Vの制限を行う。具体的には、制御手段100の記憶手段に記憶したマップ(制限速度情報(図6参照))を基に、例えば、操作量A2に対応する走行速度Vを通常の設定走行速度Vnから制御後の設定走行速度Vcへと低減させることで、操作量Aに対応する走行速度Vを相対的に低減させる。ただし、設定割合(例えば80%)減少させたり、HST82の斜板を設定角度低速側に回動したりするように制御することもできる。
制御手段100は、主変速レバー94の操作量A2を主変速操作量検出手段94aからの検出値によって算出する。そして制限操作情報を基に、低減した設定走行速度Vcを演算し、設定走行速度Vcとなるように、制御手段100は、走行速度検出センサ101からの検出値によってフィードバックしながら変速アクチュエータ82aを作動させる。そして、制御手段100は、この制御(以下第一制御状態という)をおこなっている旨を表示手段99に表示する。具体的には、表示手段99に「燃料温度上昇、走行速度制限中」等の文言を表示する。
次に、制御手段100は、ステップS105に移行する。
【0097】
ステップS105において、制御手段100は、ステップS104の実行から所定時間が経過したあとに、燃料の温度tを取得し、ステップS106に移行する。
【0098】
ステップS106において、制御手段100は、燃料の温度tが第一設定温度T1を越えているか否かを判定する。
制御手段100は、燃料の温度tが第一設定温度T1を越えていると判断した場合、ステップS108に移行する。
制御手段100は、燃料の温度tが第一設定温度T1以下であると判定した場合、ステップS107に移行する。
【0099】
ステップS107において、制御手段100は、第一制御状態を解除して、操作量A2に対応する通常の設定走行速度となるように、走行速度Vを設定走行速度Vnとなるように増速させる。
そして、制御手段100は、表示手段99に表示された第一制御状態である旨の表示を消去し、再びステップS102の処理をする。
【0100】
ステップS106において、燃料の温度tが第一設定温度T1を越えている場合、ステップS108に移行する。
ステップS108において、制御手段100は、燃料の温度tが第二設定温度T2を越えているか否かを判定する。
制御手段100は、燃料の温度tが第二設定温度T2を越えていると判断した場合、ステップS109に移行する。
制御手段100は、燃料の温度tが第二設定温度T2以下であると判定した場合、再びステップS105の処理をする。
【0101】
ステップS109において、制御手段100は、エンジン出力の低減及び表示手段99にその制御を行う旨を表示する。具体的には、制御手段100は、サプライポンプ753及び噴射アクチュエータ757の適宜の操作をすることでインジェクタ755から吐出する燃料噴射量を減少させ、エンジン出力を低減させる。そして、制御手段100は、この制御(以下第二制御状態という)をおこなっている旨を表示手段99に表示する。具体的には、表示手段99に「燃料温度上昇、車速及びエンジン出力の制限中」等の文言を表示する。
次に、制御手段100は、ステップS110に移行する。
【0102】
ステップS110において、制御手段100は、前ステップ(S109、S113、又はS117)の実行から所定時間が経過した後、燃料の温度tを取得し、ステップS111に移行する。
【0103】
ステップS111において、制御手段100は、燃料の温度tが第二設定温度T2を越えているか否かを判定する。
制御手段100は、燃料の温度tが第二設定温度T2を越えていると判断した場合、ステップS113に移行する。
制御手段100は、燃料の温度tが第二設定温度T2以下であると判定した場合、ステップS112に移行する。
【0104】
ステップS112において、制御手段100は、エンジン出力を低下させる制御(第二制御)を解除して、表示手段99の表示内容の変更の制御を行う。
制御手段100は、第二制御状態を解除して、表示手段99に第一制御状態である旨を表示する。具体的には、制御手段100は、第一制御状態における設定走行速度Vnに対応するように、インジェクタ755からの燃料噴射量を第二制御状態の燃料噴射量よりも増加させ、エンジン出力を増大させる。そして、制御手段100は、第二制御が解除され第一制御のみがおこなわれている旨を表示手段99に表示する。具体的には、表示手段99に「燃料温度上昇、車速制限中」等の文言を表示する。そして、再びステップS105の処理をする。
【0105】
ステップS111において、制御手段100は、燃料の温度tが第二設定温度T2を越えている場合には、ステップS113に移行する。
ステップS113において、制御手段100は、燃料の温度tが第三設定温度T3を越えているか否かを判定する。ここで、第三設定温度T3は予め制御手段100の記憶装置に設定された閾値であり、サプライポンプ753が高温の燃料によって焼き付く手前の温度である。
制御手段100は、燃料の温度tが第三設定温度T3以下であると判定した場合、再びステップS110の処理をする。
制御手段100は、燃料の温度tが第三設定温度T3を越えていると判断した場合、ステップS114に移行する。
【0106】
ステップS114において、制御手段100は、エンジン回転数を最低エンジン回転数まで低減させ、表示手段99にその制御を行っている旨を表示する。ここで、最低エンジン回転数とは、エンジン71がアイドリング状態となるエンジン回転数である。具体的には、制御手段100は、各種センサの検出値及び種々のデータやプログラム等に基づいて、エンジン回転数が最低エンジン回転数となるように、吸気開度調節アクチュエータ734、排気開度調節アクチュエータ744、調量アクチュエータ753a及び噴射アクチュエータ757を操作して、吸気スロットル731及び排気スロットル742の開度、コモンレール754内の圧力、及び噴射アクチュエータ757の開閉時間(動作時間)を制御し、燃焼室721内の空燃比を調整して、エンジン回転数が最低エンジン回転数となるように制御する。そして、制御手段100は、最低エンジン回転数となるように制御(以下、第三制御とする)がなされている旨を表示手段99に表示する。例えば、表示手段99に「燃料温度上昇、アイドリング状態」等の文言を表示する。なおこのときアイドリング状態では、作物の収穫作業ができないので、脱穀レバー97を「切り」側に回動するように表示することもできる。また、脱穀クラッチ34がモータ等のアクチュエータで制御可能な構成であれば、脱穀クラッチ34をOFFとなるようにアクチュエータを作動させる。
【0107】
次に、制御手段100は、ステップS115に移行する。
ステップS115において、制御手段100は、前ステップ(S114、又はS116)の実行から所定時間が経過したあとに、燃料の温度tを取得し、ステップS116に移行する。
【0108】
ステップS116において、制御手段100は、燃料の温度tが第三設定温度T3を越えているか否かを判定する。
制御手段100は、燃料の温度tが第三設定温度T3を越えていると判断した場合、ステップS115に移行する。
制御手段100は、燃料の温度tが第三設定温度T3以下であると判定した場合、ステップS117に移行する。
【0109】
ステップS117において、制御手段100は、第三制御を解除し、つまり、吸気開度調節アクチュエータ734、排気開度調節アクチュエータ744、調量アクチュエータ753a及び噴射アクチュエータ757を操作して、エンジン回転数を回転数設定手段(アクセルレバー)で設定した元の回転数に増加させる。そして、表示手段99に第二制御を行っている旨を表示する。制御手段100は、再びステップS110の処理をする。
【0110】
したがって、前記制御様態において、燃料の温度tが第一設定温度T1よりも高く第二設定温度T2以下の場合、第一制御がなされ、燃料の温度tが第二設定温度T2よりも高く第三設定温度T3以下の場合、第二制御がなされ、燃料の温度tが第三設定温度T3よりも高い場合、第三制御がなされる。つまり、燃料の温度tが低い方から、段階的にコンバイン1の収穫作業に影響が少ない制御がなされるように構成される。
【0111】
以上の如く、本実施形態のコンバイン1は、
コモンレール式ディーゼルエンジン71を搭載したコンバインであって、
前記ディーゼルエンジン71の回転及び機体の走行速度を制御する制御手段100と、
走行速度Vを設定する変速操作手段(主変速レバー94)と、
当該変速操作手段(主変速レバー94)の操作量Aを検出し前記制御手段100に送信する変速操作量検出手段(主変速操作量検出手段94a)と、
前記制御手段100からの出力値を基に、前記変速操作手段(主変速レバー94)の操作量Aに対応する走行速度Vとする変速手段(変速アクチュエータ82a)と、
前記コモンレール754に供給される燃料の温度tを検出する燃料温度検出手段(燃料温度検出センサ171)と、
を備え、
前記制御手段100は、前記燃料の温度tが第一設定温度T1を越えると、前記操作量Aに対応する設定走行速度を低減することで走行速度Vを制限する制御をするものである。
【0112】
このように構成することにより、燃料の温度tが第一設定温度T1を越えると、走行速度Vが制限されるので、作物の処理量が所定量以下に減り、エンジン71にかかる負荷が軽減される。このため、エンジン71の発熱量も下がり、燃料の温度tの上昇を防止することができる。したがって、作物の収穫作業を適正に行いながら、言い換えれば、定格回転数で作業機を駆動しながら、燃料が高温となることでエンジン71の作動不良が生じることを防止できる。
【0113】
本実施形態のコンバイン1の前記制御手段100には、前記第一設定温度T1よりも高温の第二設定温度T2が設定され、前記燃料の温度tが第二設定温度T2を越えると、エンジン出力を所定出力以下に低減させるものである。
このように構成することにより、エンジン出力を低減させることで、必然的に走行速度Vを下げる。走行速度Vが下がると収穫作業による作物の処理量が減るため、エンジン71にかかる負荷が軽減される。このため、エンジン71の発熱量も下がり、燃料の温度tの上昇を防止することができる。したがって、作物の収穫作業を行いながら、燃料が高温となることでエンジン71の作動不良が生じることを防止できる。
【0114】
本実施形態のコンバイン1の前記制御手段100は、前記第二設定温度T2よりも高温の第三設定温度T3が設定され、前記燃料の温度tが第三設定温度T3を越えると、前記エンジン回転数を設定エンジン回転数まで低減するものである。
このように構成することにより、エンジン出力を低減させることで、必然的に走行速度Vを下げる。走行速度Vが下がると作物の処理量が減るため、エンジン71にかかる負荷が軽減される。このため、エンジン71の発熱量も下がり、燃料の温度tの上昇を防止することができる。したがって、エンジン71を段階的に制御することで収穫作業を行いながら、エンジン71の作動不良が生じる前に、エンジン71を最低エンジン回転数とすることで収穫作業を停止して、燃料が高温となることでエンジン71の作動不良が生じることを防止し、燃料が低温となってから再び作物の収穫作業を行うことができる。
【0115】
本実施形態のコンバイン1の前記制御手段100には、表示手段99が接続され、
前記制御手段100は、燃料の温度tが前記第一設定温度T1、前記第二設定温度T2、又は前記第三設定温度T3を越えると、それぞれに対応した制御が行われていることを前記表示手段99に表示するものである。
このように構成することにより、作物の収穫作業を行いながら、燃料が高温となることでエンジン71の作動不良が生じることを防止することができる。またコンバイン1の操縦者が燃料の温度tによるエンジン71の状態及びそれに伴う制御状態を把握することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 コンバイン
71 ディーゼルエンジン(エンジン)
82a 変速アクチュエータ(変速手段)
94 主変速レバー(変速操作手段)
94a 主変速操作量検出手段(変速操作量検出手段)
99 表示手段
100 制御手段
171 燃料温度センサ(燃料温度検出手段)
754 コモンレール
A 操作量
t 燃料の温度
T1 第一設定温度
T2 第二設定温度
T3 第三設定温度
V 走行速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレール式ディーゼルエンジンを搭載したコンバインであって、
前記ディーゼルエンジンの回転及び機体の走行速度を制御する制御手段と、
走行速度を設定する変速操作手段と、
当該変速操作手段の操作量を検出し前記制御手段に送信する変速操作量検出手段と、
前記制御手段からの出力値を基に、前記変速操作手段の操作量に対応する走行速度とする変速手段と、
前記コモンレールに供給される燃料の温度を検出する燃料温度検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記燃料の温度が第一設定温度を越えると、前記操作量に対応する設定走行速度を低減することで走行速度を制限する制御をすることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御手段には、前記第一設定温度よりも高温の第二設定温度が設定され、前記燃料の温度が第二設定温度を越えると、エンジン出力を所定出力以下に低減させることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第二設定温度よりも高温の第三設定温度が設定され、前記燃料の温度が第三設定温度を越えると、前記エンジン回転数を設定エンジン回転数まで低減することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御手段には、表示手段が接続され、
前記制御手段は、燃料の温度が前記第一設定温度、前記第二設定温度、又は前記第三設定温度を越えると、それぞれに対応した制御が行われていることを前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−60934(P2012−60934A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208256(P2010−208256)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】