説明

コンバータ制御装置、およびこのコンバータ制御装置を用いた系統連系インバータシステム

【課題】並列接続された各DC/DCコンバータの寿命を可及的に均一化させるコンバータ制御装置を提供する。
【解決手段】コンバータ制御装置8に、運転させるDC/DCコンバータの台数を決定する台数決定部83と、運転させるDC/DCコンバータの優先順位を決定する優先順位決定部86と、決定された運転台数と運転優先順位とに基づいて、運転させるDC/DCコンバータを決定する運転制御部87とを設けた。優先順位決定部86は、積算異常回数に1を加算した値を積算電力量に乗算した算出値を算出し、当該算出値が小さいほど優先順位が高くなるように決定するようにした。算出値が小さいほど優先的に運転されるので、各DC/DCコンバータの積算電力量が均一化され、何らかの問題が生じている可能性があるDC/DCコンバータの使用が制限される。これにより、各DC/DCコンバータの寿命が均一化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された複数のDC/DCコンバータを制御するコンバータ制御装置、およびこのコンバータ制御装置を用いた系統連系インバータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電源から出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する系統連系インバータシステムが開発されている。複数の太陽電池を直列接続した太陽電池モジュールを直流電源とした系統連系インバータシステムにおいて、太陽電池モジュールとインバータとの間にDC/DCコンバータを設けて、太陽電池モジュールの出力電力が最大となるように太陽電池モジュールの出力電圧を制御するものが開発されている。
【0003】
図9は、このような系統連系インバータシステムを示す図である。同図においては、系統連系インバータシステムA10が電力系統Bに連系している状態を示している。系統連系インバータシステムA10は、直流電源10が出力する直流電圧をDC/DCコンバータ210,220,230で変圧し、インバータ30で交流電圧に変換して、電力系統Bに出力する。系統連系インバータシステムA10においては、3つのDC/DCコンバータ210,220,230を並列接続して用いている。これにより、各DC/DCコンバータ210,220,230に流れる電流が分散されるので、各DC/DCコンバータ210,220,230の容量を小さいものとすることができる。
【0004】
太陽電池の発電電力は日射強度によって変化する。太陽電池の発電電力に応じて、並列接続されたDC/DCコンバータのうちの運転させるDC/DCコンバータの数を調整する制御方法が開発されている。この運転させるDC/DCコンバータの優先順位を決定する方法として、各DC/DCコンバータの運転時間に基づいて決定する方法が開発されている。当該方法は、各DC/DCコンバータの運転時間をそれぞれ積算しておき、積算された運転時間が短いものほど優先的に運転させるものである。一定のDC/DCコンバータばかりが運転されると、部品の劣化が進行して、当該DC/DCコンバータの寿命が短くなる場合がある。積算された運転時間が短いものほど優先的に運転させるようにすれば、各DC/DCコンバータの運転時間が均一化されるので、一定のDC/DCコンバータの寿命が短くなることが抑制され、各DC/DCコンバータの寿命を均一化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−127573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、運転時間を均一化させることが各DC/DCコンバータの寿命を均一化させるとは限らない。例えば、供給される電力が大きい場合、DC/DCコンバータの半導体素子の劣化は促進される。したがって、運転時間が短くても、DC/DCコンバータの寿命が短くなる場合がある。また、初めから半導体素子に何らかの問題があって、DC/DCコンバータの寿命が短くなる場合がある。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、並列接続された各DC/DCコンバータの寿命を可及的に均一化させるように、各DC/DCコンバータの運転を制御するコンバータ制御装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供されるコンバータ制御装置は、並列接続された複数のDC/DCコンバータの運転を制御するコンバータ制御装置であって、運転させるDC/DCコンバータの台数を決定する台数決定手段と、前記各DC/DCコンバータに供給される電力量または電流をそれぞれ個別に積算する積算手段と、前記各DC/DCコンバータの異常による停止回数をそれぞれ個別にカウントして積算する異常回数積算手段と、前記積算手段によって積算された各積算電力量または各積算電流と、前記異常回数積算手段によって積算された各積算異常回数とに基づいて、運転させるDC/DCコンバータの優先順位を決定する優先順位決定手段と、前記台数決定手段によって決定された前記台数と、前記優先順位決定手段によって決定された前記優先順位とに基づいて、運転させるDC/DCコンバータを決定し、各DC/DCコンバータの運転を制御するための信号を出力する運転制御手段とを備えている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記優先順位決定手段は、前記積算電力量または各積算電流に前記積算異常回数に関する値を乗算した乗算値をDC/DCコンバータ毎に算出し、前記乗算値が小さい順に前記優先順位を決定する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記積算異常回数に関する値は、前記積算異常回数に所定数を加えた値である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記各DC/DCコンバータの起動回数をそれぞれ個別にカウントして積算する起動回数積算手段をさらに備え、前記優先順位決定手段は、前記乗算値を、前記起動回数積算手段によって積算された各積算起動回数をさらに乗算することで算出する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記各DC/DCコンバータの運転時間をそれぞれ個別にカウントして積算する運転時間積算手段をさらに備え、前記優先順位決定手段は、前記乗算値を、前記運転時間積算手段によって積算された各積算運転時間をさらに乗算することで算出する。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記運転制御手段は、前記台数が変化したときに、前記優先順位に基づいて運転させるDC/DCコンバータを決定する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記台数決定手段は、前記複数のDC/DCコンバータの入力側の接続点に供給される電力または電流に基づいて、運転させるDC/DCコンバータの台数を決定する。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供される系統連系インバータシステムは、並列接続された複数のDC/DCコンバータと、本発明の第1の側面によって提供されるコンバータ制御装置と、前記複数のDC/DCコンバータから出力される直流電力を交流電力に変換して系統に出力するインバータとを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、台数決定手段によって決定された台数と優先順位決定手段によって決定された優先順位とに基づいて、並列接続された複数のDC/DCコンバータから運転させるDC/DCコンバータが決定され、この決定に基づいて各DC/DCコンバータの運転が制御される。優先順位決定手段は、各DC/DCコンバータの積算電力量および積算異常回数に基づいて、運転させるDC/DCコンバータの優先順位を決定する。したがって、積算電力量が少ないDC/DCコンバータほど優先順位を高くし、積算異常回数が少ないDC/DCコンバータほど優先順位を高くすることができる。これにより、各DC/DCコンバータは積算電力量が少ないほど優先的に運転されるので、各DC/DCコンバータの積算電力量が均一化される。したがって、一定のDC/DCコンバータの積算電力量ばかりが増大して、当該DC/DCコンバータの寿命が短くなることを抑制することができ、各DC/DCコンバータの寿命を均一化させることができる。また、各DC/DCコンバータは積算異常回数が少ないほど優先的に運転されるので、何らかの問題が生じている可能性があるDC/DCコンバータの使用が制限される。したがって、当該DC/DCコンバータの寿命が早く到来することを抑制することができ、各DC/DCコンバータの寿命を均一化させることができる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るコンバータ制御装置の第1実施形態を備えた系統連系インバータシステムを示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るコンバータ制御装置の内部構成を説明するためのブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る優先順位決定部による優先順位の決定方法を説明するための例を示す表である。
【図4】第1実施形態に係るコンバータ制御装置を備えた系統連系インバータシステムの他の実施例を示すブロック図である。
【図5】第2実施形態に係るコンバータ制御装置の内部構成を説明するためのブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る優先順位決定部による優先順位の決定方法を説明するための例を示す表である。
【図7】第3実施形態に係るコンバータ制御装置の内部構成を説明するためのブロック図である。
【図8】第4実施形態に係るコンバータ制御装置の内部構成を説明するためのブロック図である。
【図9】従来の系統連系インバータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るコンバータ制御装置の第1実施形態を備えた系統連系インバータシステムを示すブロック図である。系統連系インバータシステムAは、直流電源1が出力する直流電力をインバータ3で交流電力に変換して電力系統Bに出力するものである。同図に示すように、系統連系インバータシステムAは、直流電源1、DC/DCコンバータ21,22,23、インバータ3、電流センサ4,61,62,63、電圧センサ5,71,72,73、およびコンバータ制御装置8を備えている。
【0022】
直流電源1は、複数の太陽電池を直列接続した太陽電池モジュールを有しており、太陽電池が太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して生成した直流電力を出力する。太陽電池モジュールは、太陽電池が受ける日射強度により異なる電力を出力する。したがって、日射強度が大きい昼間に出力される電力は大きくなり、日射強度が小さい朝や夕方に出力される電力は小さくなる。また、昼間でも、雲などによって太陽が遮られた場合、一時的に日射強度が小さくなって、出力される電力が一時的に小さくなる。
【0023】
DC/DCコンバータ21,22,23は、入力端と出力端とがそれぞれ互いに接続されて、並列接続されている。DC/DCコンバータ(以下では、省略して単に「コンバータ」と記載する。)21,22,23は、当該入力端の接続点(以下では、「入力側接続点」とする。)aが直流電源1に接続されており、当該出力端の接続点(以下では、「出力側接続点」とする。)bがインバータ3に接続されている。コンバータ21,22,23は、コンバータ制御装置8から入力される信号に応じて、図示しないスイッチング素子をオン・オフ動作させることにより、直流電源1から入力される直流電圧を昇圧または降圧する。コンバータ21,22,23は、昇圧または降圧された直流電圧をインバータ3に出力する。系統連系インバータシステムAが電力系統Bに連系している状態では、インバータ3の入力端(接続点b)の電圧(以下、必要に応じて「バス電圧」とする。)Vdが一定となるようにインバータ3により制御されているので、コンバータ21,22,23は、直流電源1から出力される電圧を所定の電圧に制御することができる。
【0024】
インバータ3は、図示しないスイッチング素子をオン・オフ動作させることで、コンバータ21,22,23から入力される直流電力を交流電力に変換する。インバータ3は、図示しないローパスフィルタによりスイッチングノイズが除去された交流電力を電力系統Bに出力する。なお、図1においては、インバータ3の電力変換動作を制御する制御装置を省略している。系統連系インバータシステムAが電力系統Bに連系している状態では、インバータ3は、バス電圧Vdを一定に制御することによって、コンバータ出力の変化分を交流有効電力として系統に出力する。
【0025】
電流センサ4は、直流電源1と入力側接続点aとの間に直列に接続されており、直流電源1が出力する電流を検出するものである。電流センサ4は、検出した電流の電流値Iをコンバータ制御装置8に出力する。
【0026】
電圧センサ5は、直流電源1と入力側接続点aとの間に接続されており、直流電源1が出力する電圧を検出するものである。電圧センサ5は、検出した電圧の電圧値Vをコンバータ制御装置8に出力する。
【0027】
電流センサ61,62,63は、それぞれコンバータ21,22,23の入力側に直列に接続されており、それぞれコンバータ21,22,23に入力される電流を検出するものである。電流センサ61,62,63は、それぞれ検出した電流の電流値I1,I2,I3をコンバータ制御装置8に出力する。
【0028】
電圧センサ71,72,73は、それぞれコンバータ21,22,23の入力側に接続されており、それぞれコンバータ21,22,23の入力側の電圧を検出するものである。電圧センサ71,72,73は、それぞれ検出した電圧の電圧値V1,V2,V3をコンバータ制御装置8に出力する。なお、電圧値V1,V2,V3は、理論上、電圧値Vに一致する。したがって、電圧センサ71,72,73を省略して、電圧値V1,V2,V3の代わりに電圧値Vを用いるようにしてもよい。
【0029】
コンバータ制御装置8は、コンバータ21,22,23を制御するものである。コンバータ制御装置8は、電流センサ4,61,62,63からそれぞれ電流値I,I1,I2,I3を入力され、電圧センサ5,71,72,73からそれぞれ電圧値V,V1,V2,V3を入力されて、コンバータ21,22,23を制御するための信号を出力する。
【0030】
コンバータ制御装置8は、電流値Iおよび電圧値Vから算出される出力電力値Pが最大になるように制御を行う。また、コンバータ制御装置8は、コンバータ21,22,23を運転させるか否かの制御も行う。すなわち、直流電源1から入力される電力が大きい場合、より多くのコンバータを運転させて各コンバータにかかる負担を分散させる。一方、直流電源1から入力される電力が小さい場合、コンバータで消費される電力を減少させるために、運転させるコンバータを少なくする。
【0031】
コンバータ制御装置8は、各コンバータに供給された電力量の積算値(以下では、「積算電力量」とする。)と各コンバータが異常発生により停止された回数(以下では、「積算異常回数」とする。)とに基づいて、運転させるコンバータの優先順位(以下では、「運転優先順位」とする)を決定する。コンバータは、一般的に、供給される電力が大きくなるほど半導体素子の発熱量が大きくなり、熱損失が大きくなるので、寿命が短くなる。したがって、コンバータ制御装置8は、積算電力量が小さいほど運転優先順位を高くするようにして、各コンバータの積算電力量が均一化されるようにしている。また、異常発生により停止された回数が多いコンバータは、半導体素子に何らかの問題が生じている可能性がある。そのようなコンバータは、寿命が短い可能性があるので、できるだけ使用しない方が、寿命の到来を遅くすることができる。したがって、コンバータ制御装置8は、積算異常回数が小さいほど運転優先順位を高くするようにしている。
【0032】
図2は、コンバータ制御装置8の内部構成を説明するためのブロック図である。コンバータ制御装置8は、電力算出部81、PWM信号生成部82、台数決定部83、電力量積算部84、異常回数積算部85、優先順位決定部86、および、運転制御部87を備えている。電力量積算部および異常回数積算部は各コンバータに対応してそれぞれ設けられているが、図2においては省略して、コンバータ21に対応する電力量積算部84および異常回数積算部85のみを記載している。
【0033】
電力算出部81は、直流電源1から出力される電力を演算により算出するものである。電力算出部81は、電流センサ4から入力される電流値Iと電圧センサ5から入力される電圧値Vとから、直流電源1の出力電力値P(=V・I)を算出し、PWM信号生成部82および台数決定部83に出力する。なお、電流センサ4、電圧センサ5および電力算出部81に代えて、電力センサを直流電源1と入力側接続点aとの間に設けて、直流電源1の出力電力を直接検出してPWM信号生成部82および台数決定部83に出力するようにしてもよい。
【0034】
PWM信号生成部82は、電力算出部81から入力される出力電力値Pを最大とするように制御するためのPWM信号を生成する。出力電力値Pを最大とするための制御は、いわゆる最大電力追従制御として公知であるので、説明を省略する。PWM信号生成部82は、生成したPWM信号を運転制御部87に出力する。
【0035】
台数決定部83は、運転させるコンバータの台数(以下では、「運転台数」とする。)を決定するものである。台数決定部83は、電力算出部81から入力される出力電力値Pに基づいて運転台数を決定し、運転制御部87に出力する。台数決定部83には所定の電力値Pa,Pb,Pc(0<Pa<Pb<Pc)があらかじめ設定されており、台数決定部83は出力電力値Pを所定の電力値Pa,Pb,Pcと比較することにより運転台数を決定する。すなわち、0≦P<Paの場合は運転台数を0台とし、Pa≦P<Pbの場合は運転台数を1台とし、Pb≦P<Pcの場合は運転台数を2台とし、Pc≦Pの場合は運転台数を3台とする。
【0036】
なお、出力電力値Pが所定の電力値Pa,Pb,Pc付近で頻繁に増減したときに、運転台数が頻繁に切り替わってしまうことを抑制するために、ヒステリシスを設けておくようにしてもよい。例えば、所定の電力値Paの代わりに所定の電力値PauとPad(Pau>Pad)とを設定しておき、出力電力値Pが電力値Pauより大きくなった後は出力電力値Pを電力値Padと比較するようにし、出力電力値Pが電力値Padより小さくなった後は出力電力値Pを電力値Pauと比較するようにすればよい。
【0037】
なお、台数決定部83による運転台数の決定方法は、これに限られない。出力電力値P以外の要素も運転台数の決定に考慮するようにしてもよい。また、直流電源1の出力電流の電流値Iに基づいて運転台数を決定するようにしてもよい。この場合、電流センサ4から入力される電流値Iを、あらかじめ設定されている所定の電流値と比較することで決定すればよい。また、日射強度や時刻に応じて運転台数を決定するようにしてもよい。
【0038】
電力量積算部84は、コンバータ21に供給された電力量を積算するものである。電力量積算部84は、電流センサ61より入力される電流値I1と電圧センサ71より入力される電圧値V1とから、単位時間Δtにコンバータ21に供給された電力量を算出し、これを積算することで積算電力量W1(=Σ(V1・I1・Δt))を算出する。電力量積算部84は、算出した積算電力量W1を優先順位決定部86に出力する。図2において図示しないが、コンバータ22に供給された電力量を積算した積算電力量W2(=Σ(V2・I2・Δt))を算出する電力量積算部、および、コンバータ23に供給された電力量を積算した積算電力量W3(=Σ(V3・I3・Δt))を算出する電力量積算部も、コンバータ制御部8に備えられている。積算電力量W1と同様に、積算電力量W2およびW3も、優先順位決定部86に出力される。なお、電力量積算部84による積算電力量W1の積算方法は、これに限られない。例えば、電流センサ61および電圧センサ71に代えて電力センサを設け、当該電力センサによって検出された電力値に基づいて電力量を積算するようにしてもよい。
【0039】
異常回数積算部85は、コンバータ21が異常発生により停止された回数を積算するものである。コンバータ21には、異常が発生した場合に運転を停止させる各種の保護機能が備えられている。例えば、電流が増加しすぎたことを検出する過電流検出装置や、発熱量が増加して温度が上昇しすぎたことを検出する過温度検出装置などの異常検出装置が備えられている。これらの異常検出装置は、異常を検出した場合に、異常検出信号をコンバータ制御装置8に出力する。コンバータ制御装置8は、異常検出信号を入力された場合、コンバータ21の運転を停止させるために、PWM信号の出力を停止する。異常回数積算部85は、この異常発生に基づくPWM信号の停止回数をカウントする。異常回数積算部85は、カウントした停止回数を積算異常回数X1として、優先順位決定部86に出力する。図2において図示しないが、コンバータ22の異常発生による停止回数である積算異常回数X2をカウントする異常回数積算部、および、コンバータ23の異常発生による停止回数である積算異常回数X3をカウントする異常回数積算部も、コンバータ制御部8に備えられている。積算異常回数X1と同様に、積算異常回数X2およびX3も、優先順位決定部86に出力される。なお、異常回数積算部85による積算異常回数X1の積算方法は、これに限られない。
【0040】
本実施形態において、異常回数積算部85は、いずれの異常検出装置が出力した異常検出信号であるかに係らず、異常発生回数をカウントしているが、これに限られない。例えば、所定の異常検出装置による異常検出の場合のみ異常発生回数をカウントするようにしてもよいし、異常検出装置によって重み付けを行ってカウントするようにしてもよい。例えば、過電流検出装置から異常検出信号を入力された場合は「1」ずつカウントするが、過温度検出装置から異常検出信号を入力された場合は「3」ずつカウントするようにしてもよい。
【0041】
優先順位決定部86は、コンバータの運転優先順位を決定するものである。優先順位決定部86は、電力量積算部84などから入力される積算電力量W1,W2,W3、および、異常回数積算部85などから入力される積算異常回数X1,X2,X3に基づいて運転優先順位を決定する。優先順位決定部86は、決定した運転優先順位の情報を運転制御部87に出力する。
【0042】
優先順位決定部86は、積算電力量W(W1,W2,W3)と積算異常回数X(X1,X2,X3)とから、下記(1)式により算出値Z(Z1,Z2,Z3)を算出する。

Z=W・(X+1) ・・・・・ (1)
【0043】
優先順位決定部86は、算出された算出値Z(Z1,Z2,Z3)が小さいほど、対応するコンバータの運転優先順位を高いものとする。例えば、Z1<Z2<Z3の場合、コンバータ21の運転優先順位を1番高くし、コンバータ23の運転優先順位を1番低くする。当該運転優先順位は運転させる優先順位なので、起動させる優先順位は同じであり、停止させる優先順位は逆になる。例えば、すべてのコンバータの運転が停止されている場合、運転優先順位の高いものから起動させることになり、すべてのコンバータが運転されている場合、運転優先順位の低いものから停止させることになる。なお、本実施形態では、算出値Zが同じ値の場合、積算異常回数Xが小さい方の運転優先順位を高くするようにしている。さらに、積算異常回数Xも同じ値の場合、コンバータ21がコンバータ22より運転優先順位が高くなり、コンバータ22がコンバータ23より運転優先順位が高くなるようにしている。なお、算出値Zが同じ値の場合の運転優先順位の決定の方法は、これに限られない。
【0044】
図3は、優先順位決定部86による優先順位の決定方法を説明するための例を示す表である。
【0045】
同図において、コンバータ21の積算電力量W1は400MW、積算異常回数X1は0回となっている。上記(1)式により算出値Z1を算出すると、Z1=W1・(X1+1)=400・(0+1)=400となる。同様に、コンバータ22についての算出値Z2は、Z2=W2・(X2+1)=300・(0+1)=300となり、コンバータ23についての算出値Z3は、Z3=W3・(X3+1)=100・(4+1)=500となる。したがって、Z2<Z1<Z3となるので、コンバータ22の運転優先順位が1番高くなり、コンバータ23の運転優先順位が1番低くなる。同図右端の「運転優先順位」欄では、運転優先順位の高い順に1から3が記載されており、コンバータ22が優先順位1番、コンバータ21が優先順位2番、コンバータ23が優先順位3番であることを示している。
【0046】
同図の例では、積算異常回数が同じであるコンバータ21とコンバータ22のうち、積算電力量が少ないコンバータ22の運転優先順位の方が高くなっている。また、コンバータ23は、コンバータ21および22と比べて積算電力量が少ないにもかかわらず、積算異常回数が多いために、コンバータ21および22より運転優先順位が低くなっている。
【0047】
上記(1)式において積算異常回数Xに「1」を加えているのは、算出値Zが「0」になることを防ぐためである。すなわち、異常による停止が1度もなかった場合は積算異常回数Xが「0」となるので、これを積算電力量Wに乗算した値は「0」になる。そうすると、積算電力量Wが全く考慮されなくなってしまう。本実施形態では優先順位の決定に積算電力量Wを反映させるために、積算異常回数Xが「0」であっても算出値Zが「0」にならないようにしている。なお、積算異常回数Xに加算する値は「1」に限られず、適宜設定することができる。また、積算異常回数Xが「0」の場合(すなわち、1度も異常発生による停止がなかった場合)、積算電力量Wに係らず、そのコンバータを優先的に使用するという考えの下に、積算異常回数Xをそのまま積算電力量Wに乗算した値を用いるようにしてもよい。また、積算電力量Wの代わりに、積算電力量Wに所定数を加算または減算したものを用いるようにしてもよい。
【0048】
また、算出値Zを乗算ではなく、加算によって算出するようにしてもよい。例えば、下記(2)式により算出値Zを算出するようにしてもよい。

Z=W+X・100 ・・・・・ (2)

なお、積算異常回数Xに乗算する値は「100」に限られず、適宜設定することができる。また、積算電力量Wの代わりに、積算電力量Wに所定数を乗算または除算したものを用いるようにしてもよい。
【0049】
また、積算電力量Wおよび積算異常回数Xの逆数を用いるようにしてもよく、例えば、下記(3)、(4)式により算出値Zを算出するようにしてもよい。

Z=(1/W)・{1/(X+1)} ・・・・・ (3)
Z=(100/W)+{1/(X+1)} ・・・・・ (4)

これらの場合、算出された算出値Zが大きいほど、対応するコンバータの運転優先順位を高いものとする必要がある。
【0050】
優先順位決定部86による運転優先順位の決定方法は上記に限られず、積算電力量Wが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算異常回数Xが小さいほど運転優先順位が高くなるように決定すればよい。
【0051】
図2に戻って、運転制御部87は、コンバータ21,22,23の運転を制御するための信号を出力するものである。運転制御部87は、台数決定部83から入力される運転台数と、優先順位決定部86から入力される運転優先順位の情報とから、運転させるコンバータを決定する。すなわち、運転制御部87は、運転優先順位の高いものから運転台数だけ、コンバータを運転させるように決定する。例えば、運転優先順位がコンバータ22、コンバータ21、コンバータ23の順である場合に、運転台数が2台であった場合は、コンバータ22および21を運転させることを決定する。運転制御部87は、PWM信号生成部82から入力されたPWM信号を、運転させることを決定したコンバータに出力する。一方、運転させないコンバータには、オフ信号を出力する。例えば、コンバータ22および21を運転させ、コンバータ23を運転させない場合、運転制御部87は、コンバータ21および22に出力する信号P1およびP2をPWM信号生成部82から入力されたPWM信号とし、コンバータ23に出力する信号P3をオフ信号とする。これにより、コンバータ21および22は運転され、コンバータ23は運転されない。
【0052】
本実施形態において、運転制御部87は、台数決定部83から入力される運転台数が変化したときに、優先順位決定部86から入力される運転優先順位の情報に基づいて、運転させるコンバータを決定する。すなわち、運転台数が変化したときに、停止させるコンバータ、または、起動させるコンバータを決定する。例えば、先の例の場合、コンバータ21および22が運転されている状態で運転台数が2台から1台に変化したとき、運転制御部87は、運転優先順位の高いコンバータ22を運転させ、運転優先順位の低いコンバータ21および23を運転させないことを決定し、信号P1をオフ信号に切り替える。これにより、コンバータ21の運転が停止され、コンバータ22の運転は継続される。また、例えば、コンバータ22のみが運転されている状態で運転台数が1台から2台に変化したとき、運転制御部87は、運転優先順位の高いコンバータ21および22を運転させ、運転優先順位の低いコンバータ23を運転させないことを決定し、信号P1をPWM信号に切り替える。これにより、コンバータ21が起動され、コンバータ23の運転停止は継続される。
【0053】
本実施形態において、運転制御部87は、運転台数が変化しないときに運転優先順位が変化しても、運転させるコンバータを切り替えず、運転台数が変化したときに、そのときの運転優先順位に基づいてコンバータを起動または停止させる。なお、すべてのコンバータの運転優先順位を考慮せずに、運転台数が増加および減少したときに起動および停止させるコンバータの候補だけで運転優先順位を考慮して、起動および停止させるコンバータを決定するようにしてもよい。例えば、コンバータ21および22が運転されている状態でコンバータ23の運転優先順位が1番高くなった後、運転台数が2台から1台に変化した場合、コンバータ22より運転優先度が低いコンバータ21を停止するようにしてもよい。すなわち、全てのコンバータのうち運転優先順位が最も高いコンバータ23を起動させて、コンバータ21および22を停止させるのではなく、現在運転中のコンバータ21および22のうち運転優先順位の低いほうを停止させるようにしてもよい。
【0054】
また、運転台数が変化しない場合でも、運転優先順位が変化したときに、運転させるコンバータを切り替えるようにしてもよい。例えば、コンバータ21および22が運転されている状態でコンバータ23の運転優先順位がコンバータ21より高くなった場合、運転優先順位が変化したときに、コンバータ23を起動させて、コンバータ21を停止させるようにしてもよい。この場合、常に運転優先順位を反映させることができるが、運転させるコンバータの切り替えが多くなる。
【0055】
なお、コンバータ制御装置8は、アナログ回路として実現してもよいし、デジタル回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータをコンバータ制御装置8として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0056】
本実施形態においては、台数決定部83で決定された運転台数と、優先順位決定部86で決定された運転優先順位とに基づいて、運転させるコンバータが決定される。優先順位決定部86は、各コンバータの積算電力量Wおよび積算異常回数Xから算出された算出値Z(=W・(X+1))が小さいほど、対応するコンバータの運転優先順位を高いものとする。したがって、各コンバータは、積算電力量Wが小さいほど運転優先順位が高くなり、優先的に運転されるので、各コンバータの積算電力量Wが均一化される。これにより、一定のコンバータの積算電力量Wばかりが増大して、当該コンバータの寿命が短くなることを抑制することができる。すなわち、各コンバータの寿命を均一化させることができる。
【0057】
また、各コンバータは、積算異常回数Xが小さいほど運転優先順位が高くなり、優先的に運転される。これにより、半導体素子に何らかの問題が生じている可能性があるコンバータの使用が制限されて、当該コンバータの寿命が早く到来することを抑制することができる。すなわち、各コンバータの寿命を均一化させることができる。
【0058】
上記第1実施形態では、オフ信号を入力することでコンバータを運転させないようにする場合について説明した。コンバータを運転させない場合に、さらに、当該コンバータと直流電源1との接続を開放するようにしてもよい。
【0059】
図4は、開閉器によってコンバータと直流電源1との接続を開放する実施例を示すブロック図である。同図においては、インバータ3および電力系統Bの記載を省略している。なお、同図において、上記第1実施形態に係る系統連系インバータシステムA(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0060】
同図に示す系統連系インバータシステムA’は、入力側接続点aとコンバータ21,22,23との間に、それぞれ開閉器91,92,93が設けられている点で、図1に示す系統連系インバータシステムAとは異なる。系統連系インバータシステムA’において、運転制御部87(図2参照)は、運転させることを決定したコンバータにPWM信号を出力し、対応する開閉器を接続状態にする。また、運転させないコンバータにオフ信号を出力し、対応する開閉器を開放状態にする。本実施例の場合、運転させないコンバータと直流電源1との接続を完全に遮断することができる。
【0061】
上記第1実施形態では、各コンバータの積算電力量Wおよび積算異常回数Xに基づいて運転優先順位を決定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、積算電力量Wに代えて、各コンバータに供給された電流の積算値である積算電流を用いるようにしてもよい。この場合、電力量積算部84に代えて、電流センサ61より入力される電流値I1を積算する電流積算部を設け、算出した積算電流を優先順位決定部86に出力すればよい。この場合、積算電流が小さいほど運転優先順位が高くなり、優先的に運転されるので、各コンバータの積算電流が均一化される。これにより、一定のコンバータの積算電流ばかりが増大して、当該コンバータの寿命が短くなることを抑制することができる。すなわち、各コンバータの寿命を均一化させることができる。
【0062】
また、運転優先順位を決定するために他の要素を考慮するようにしてもよい。運転優先順位を決定するために各コンバータの起動回数も考慮する場合を第2実施形態として、以下に説明する。
【0063】
図5は、第2実施形態に係るコンバータ制御装置の内部構成を説明するためのブロック図である。なお、同図において、上記第1実施形態に係るコンバータ制御装置8(図2参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0064】
同図に示すコンバータ制御装置8aは、起動回数積算部88を備えている点、および、優先順位決定部86が積算電力量W、積算異常回数Xに加えて各コンバータが起動された回数(以下では、「積算起動回数」とする。)に基づいて運転優先順位を決定する点で、図2に示すコンバータ制御装置8とは異なる。
【0065】
起動回数が多いコンバータは、内部の半導体素子に電流が流れて内部損失が発生する機会が多くなるので、一般的に、寿命が短くなる。したがって、コンバータ制御装置8aは、積算起動回数が小さいほど運転優先順位を高くするようにして、各コンバータの積算起動回数が均一化されるようにしている。また、系統連系インバータシステムA’(図4参照)の場合、コンバータ21,22,23の起動と運転停止に連動して、開閉器91,92,93の接続と開放が行われる。開閉器は、開閉が繰り返されると接点の劣化が生じて、寿命が短くなる。各コンバータの積算起動回数を均一化させることは、各開閉器の寿命を均一化させる効果もある。
【0066】
起動回数積算部88は、コンバータ21が起動された回数を積算するものである。運転制御部87は、コンバータ21を起動させる場合、信号P1をオフ信号からPWM信号に切り替える。起動回数積算部88は、この切替回数をカウントする。起動回数積算部88は、カウントした切替回数を積算起動回数Y1として、優先順位決定部86に出力する。図5において図示しないが、コンバータ22が起動された回数である積算起動回数Y2をカウントする起動回数積算部、および、コンバータ23が起動された回数である積算起動回数Y3をカウントする起動回数積算部も、コンバータ制御部8に備えられている。積算起動回数Y1と同様に、積算起動回数Y2およびY3も、優先順位決定部86に出力される。なお、起動回数積算部88による積算起動回数Y1の積算方法は、これに限られない。例えば、電流センサ61が出力する電流値I1により、コンバータ21に流れる電流を検出して、コンバータ21の起動回数をカウントするようにしてもよい。
【0067】
優先順位決定部86は、積算電力量W1,W2,W3、および、積算異常回数X1,X2,X3に加えて、起動回数積算部88などから入力される積算起動回数Y1,Y2,Y3に基づいて運転優先順位を決定する。優先順位決定部86は、積算電力量W(W1,W2,W3)、積算異常回数X(X1,X2,X3)、および積算起動回数Y(Y1,Y2,Y3)から、下記(5)式により算出値Z(Z1,Z2,Z3)を算出する。

Z=W・(X+1)・Y ・・・・・ (5)
【0068】
図6は、第2実施形態に係る優先順位決定部86による優先順位の決定方法を説明するための例を示す表である。
【0069】
同図において、コンバータ21の積算電力量W1は400MW、積算異常回数X1は0回、積算起動回数Y1は50回となっている。上記(5)式により算出値Z1を算出すると、Z1=W1・(X1+1)・Y1=400・(0+1)・50=20000となる。同様に、コンバータ22についての算出値Z2は、Z2=W2・(X2+1)・Y2=300・(0+1)・80=24000となり、コンバータ23についての算出値Z3は、Z3=W3・(X3+1)・Y3=100・(4+1)・60=30000となる。したがって、Z1<Z2<Z3となるので、コンバータ21の運転優先順位が1番高くなり、コンバータ23の運転優先順位が1番低くなる。同図の例では、コンバータ21はコンバータ22より積算電力量が大きいが積算起動回数が小さいため、コンバータ21の優先順位はコンバータ22より高くなっている。
【0070】
なお、算出値Zの算出式は、上記(5)式に限定されない。上記(1)〜(4)式と同様に、適宜設定された式を用いるようにしてもよい。
【0071】
優先順位決定部86による運転優先順位の決定方法は上記に限られず、積算電力量Wが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算異常回数Xが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算起動回数Yが小さいほど運転優先順位が高くなるように決定すればよい。
【0072】
第2実施形態において、各コンバータは、積算起動回数Yが小さいほど運転優先順位が高くなり、優先的に運転されるので、各コンバータの積算起動回数Yが均一化される。これにより、一定のコンバータばかり起動と運転の停止が繰り返されて、当該コンバータの寿命が短くなることを抑制することができる。すなわち、各コンバータの寿命を均一化させることができる。また、開閉器を用いてコンバータと直流電源1との接続を開放する構成の場合、積算起動回数Yを均一化させることで、各開閉器の寿命も均一化させることができる。
【0073】
次に、運転優先順位を決定するために各コンバータの運転時間を考慮する場合を第3実施形態として、以下に説明する。
【0074】
図7は、第3実施形態に係るコンバータ制御装置の内部構成を説明するためのブロック図である。なお、同図において、上記第1実施形態に係るコンバータ制御装置8(図2参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0075】
同図に示すコンバータ制御装置8bは、運転時間積算部89を備えている点、および、優先順位決定部86が積算電力量W、積算異常回数Xに加えて各コンバータが運転された時間(以下では、「積算運転時間」とする。)に基づいて運転優先順位を決定する点で、図2に示すコンバータ制御装置8とは異なる。
【0076】
コンバータは、一般的に、運転された時間が長くなるほど寿命が短くなる。したがって、コンバータ制御装置8bは、積算運転時間が短いほど運転優先順位を高くするようにして、各コンバータの積算運転時間が均一化されるようにしている。
【0077】
運転時間積算部89は、コンバータ21が運転された時間を積算するものである。運転制御部87は、コンバータ21を運転させる場合、信号P1としてPWM信号を出力し、コンバータ21を運転させない場合、信号P1としてオフ信号を出力する。運転時間積算部89は、信号P1としてPWM信号を出力している時間を計時する。運転時間積算部89は、計時された時間を積算して積算運転時間T1として、優先順位決定部86に出力する。図7において図示しないが、コンバータ22が運転された時間である積算運転時間T2を積算する運転時間積算部、および、コンバータ23が運転された時間である積算運転時間T3を積算する運転時間積算部も、コンバータ制御部8に備えられている。積算運転時間T1と同様に、積算運転時間T2およびT3も、優先順位決定部86に出力される。なお、運転時間積算部89による積算運転時間T1の積算方法は、これに限られない。例えば、電流センサ61が出力する電流値I1により、コンバータ21に流れる電流を検出して、コンバータ21に電流が流れている時間を積算するようにしてもよい。
【0078】
優先順位決定部86は、積算電力量W1,W2,W3、および、積算異常回数X1,X2,X3に加えて、運転時間積算部89などから入力される積算運転時間T1,T2,T3に基づいて運転優先順位を決定する。優先順位決定部86は、積算電力量W(W1,W2,W3)、積算異常回数X(X1,X2,X3)、および積算運転時間T(T1,T2,T3)から、下記(6)式により算出値Z(Z1,Z2,Z3)を算出する。

Z=W・(X+1)・T ・・・・・ (6)
【0079】
なお、算出値Zの算出式は、上記(6)式に限定されない。上記(1)〜(4)式と同様に、適宜設定された式を用いるようにしてもよい。
【0080】
優先順位決定部86による運転優先順位の決定方法は上記に限られず、積算電力量Wが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算異常回数Xが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算運転時間Tが小さいほど運転優先順位が高くなるように決定すればよい。
【0081】
第3実施形態において、各コンバータは、積算運転時間Tが小さいほど運転優先順位が高くなり、優先的に運転されるので、各コンバータの積算運転時間Tが均一化される。これにより、一定のコンバータばかりが運転されて、当該コンバータの寿命が短くなることを抑制することができる。すなわち、各コンバータの寿命を均一化させることができる。
【0082】
次に、運転優先順位を決定するために各コンバータの起動回数と運転時間を考慮する場合を第4実施形態として、以下に説明する。
【0083】
図8は、第4実施形態に係るコンバータ制御装置の内部構成を説明するためのブロック図である。なお、同図において、上記第1実施形態に係るコンバータ制御装置8(図2参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0084】
同図に示すコンバータ制御装置8cは、起動回数積算部88および運転時間積算部89を備えている点、および、優先順位決定部86が積算電力量W、積算異常回数Xに加えて、積算起動回数Yおよび積算運転時間Tに基づいて運転優先順位を決定する点で、図2に示すコンバータ制御装置8とは異なる。
【0085】
優先順位決定部86は、積算電力量W1,W2,W3、および、積算異常回数X1,X2,X3に加えて、起動回数積算部88などから入力される積算起動回数Y1,Y2,Y3、および、運転時間積算部89などから入力される積算運転時間T1,T2,T3に基づいて運転優先順位を決定する。優先順位決定部86は、積算電力量W(W1,W2,W3)、積算異常回数X(X1,X2,X3)、積算起動回数Y(Y1,Y2,Y3)、および積算運転時間T(T1,T2,T3)から、下記(7)式により算出値Z(Z1,Z2,Z3)を算出する。

Z=W・(X+1)・Y・T ・・・・・ (7)
【0086】
なお、算出値Zの算出式は、上記(7)式に限定されない。上記(1)〜(4)式と同様に、適宜設定された式を用いるようにしてもよい。
【0087】
優先順位決定部86による運転優先順位の決定方法は上記に限られず、積算電力量Wが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算異常回数Xが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算起動回数Yが小さいほど運転優先順位が高くなり、かつ、積算運転時間Tが小さいほど運転優先順位が高くなるように決定すればよい。
【0088】
第4実施形態は、第1ないし第3実施形態の全ての効果を奏することができる。
【0089】
上記第1ないし第4実施形態においては、コンバータが3台の場合について説明したが、これに限られない。本発明は、コンバータが2台の場合でも、4台以上の場合でも適用することができる。
【0090】
また、上記第1ないし第4実施形態においては、直流電源1が太陽電池モジュールの場合について説明したが、これに限られず、例えば、燃料電池などであってもよい。また、風力発電装置、水車などの水力発電装置、地熱発電装置、波力発電装置などにより発電された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。自然条件などにより出力される電力が変動する電源において、本発明は特に有効である。
【0091】
本発明に係るコンバータ制御装置および系統連系インバータシステムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るコンバータ制御装置および系統連系インバータシステムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0092】
A,A’ 系統連系インバータシステム
1 直流電源
21,22,23 DC/DCコンバータ
3 インバータ
4,61,62,63 電流センサ
5,71,72,73 電圧センサ
8,8a,8b,8c コンバータ制御装置
81 電力算出部
82 PWM信号生成部
83 台数決定部
84 電力量積算部
85 異常回数積算部
86 優先順位決定部
87 運転制御部
88 起動回数積算部
89 運転時間積算部
91,92,93 開閉器
B 電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数のDC/DCコンバータの運転を制御するコンバータ制御装置であって、
運転させるDC/DCコンバータの台数を決定する台数決定手段と、
前記各DC/DCコンバータに供給される電力量または電流をそれぞれ個別に積算する積算手段と、
前記各DC/DCコンバータの異常による停止回数をそれぞれ個別にカウントして積算する異常回数積算手段と、
前記積算手段によって積算された各積算電力量または各積算電流と、前記異常回数積算手段によって積算された各積算異常回数とに基づいて、運転させるDC/DCコンバータの優先順位を決定する優先順位決定手段と、
前記台数決定手段によって決定された前記台数と、前記優先順位決定手段によって決定された前記優先順位とに基づいて、運転させるDC/DCコンバータを決定し、各DC/DCコンバータの運転を制御するための信号を出力する運転制御手段と、
を備えている、コンバータ制御装置。
【請求項2】
前記優先順位決定手段は、前記積算電力量または積算電流に前記積算異常回数に関する値を乗算した乗算値をDC/DCコンバータ毎に算出し、前記乗算値が小さい順に前記優先順位を決定する、
請求項1に記載のコンバータ制御装置。
【請求項3】
前記積算異常回数に関する値は、前記積算異常回数に所定数を加えた値である、
請求項2に記載のコンバータ制御装置。
【請求項4】
前記各DC/DCコンバータの起動回数をそれぞれ個別にカウントして積算する起動回数積算手段をさらに備え、
前記優先順位決定手段は、前記乗算値を、前記起動回数積算手段によって積算された各積算起動回数をさらに乗算することで算出する、
請求項2ないし3のいずれかに記載のコンバータ制御装置。
【請求項5】
前記各DC/DCコンバータの運転時間をそれぞれ個別にカウントして積算する運転時間積算手段をさらに備え、
前記優先順位決定手段は、前記乗算値を、前記運転時間積算手段によって積算された各積算運転時間をさらに乗算することで算出する、
請求項2ないし4のいずれかに記載のコンバータ制御装置。
【請求項6】
前記運転制御手段は、前記台数が変化したときに、前記優先順位に基づいて運転させるDC/DCコンバータを決定する、
請求項1ないし5のいずれかに記載のコンバータ制御装置。
【請求項7】
前記台数決定手段は、前記複数のDC/DCコンバータの入力側の接続点に供給される電力または電流に基づいて、運転させるDC/DCコンバータの台数を決定する、
請求項1ないし6のいずれかに記載のコンバータ制御装置。
【請求項8】
並列接続された複数のDC/DCコンバータと、請求項1ないし7のいずれかに記載のコンバータ制御装置と、前記複数のDC/DCコンバータから出力される直流電力を交流電力に変換して系統に出力するインバータとを備えている、系統連系インバータシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−161215(P2012−161215A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21287(P2011−21287)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】