説明

シラン架橋性難燃ポリオレフィンとシラノール触媒樹脂組成物からなる電線成形体の製造方法

【課題】耐熱性が良好で、さらに難燃性を高次元で両立させた電線成形体の提供。
【解決手段】成分(a)ポリエチレン系樹脂、成分(b)ポリプロピレン系樹脂、成分(c)芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体及び/またはその水素添加物、成分(d)酸変性樹脂、成分(e)非芳香族系ゴム用軟化剤、成分(f)有機過酸化物、成分(g)シランカップリング剤、成分(h)金属水和物を溶融混練して成分(A)シラン架橋性難燃ポリオレフィンを製造する工程I、
成分(a)、(b)、(c)から選ばれる重合体と、成分(i)シラノール縮合触媒を溶融混練して成分(B)シラノール触媒樹脂組成物を製造する工程II、
及び、上記成分(A)と成分(B)とを混合、導体上に溶融成形し、水の存在下で架橋する工程III、を有する電線成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線成形体の製造方法に関し、具体的には成分(A)(シラン架橋性難燃ポリオレフィン)を製造する工程I、成分(B)(シラノール触媒樹脂組成物)を製造する工程II、成分(A)と成分(B)との混合し導体上に溶融成形を行う工程IIIを有する電線成形体の製造方法であって、特定の成分を特定量比で溶融混練した成分(A)と成分(B)を製造、使用することを特徴とする。本発明の電線成形体の製造方法は、機械的特性と難燃性を従来品に比べ高次元に兼ね備えた電線成形体の製造を可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火災時の安全の観点から、発煙性が低く、ハロゲン化水素等の有害ガスの発生の少ないハロゲンフリー難燃性樹脂組成物で被覆した電線の検討が行われている。ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物としては、主としてポリオレフィン系の樹脂をベースポリマーとし、難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を多量に配合したものが使用されている。
【0003】
しかしながら、ベースポリマーとして使用されるポリエチレンや、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィンは、程度の差こそあるものの、常温領域では結晶部を有する結晶性のポリマーであるため比較的剛性が高く、また無機化合物である難燃性金属水和物を大量に配合する必要があるため、電線成形体に求められる伸びや柔軟性、成形加工性が十分でない。そのため、剛性を低くするために低結晶性の柔軟なベースポリマーを使用する必要がある。しかし、ベースポリマーの結晶性低下に伴って電線成形体の強度が低下するという問題があり、また、ベースポリマーの結晶性低下に伴ってベースポリマーの融点も低下して比較的低温でも加熱変形性が著しく増大するために電線成形体の耐熱性が低下するという問題もある。そこで、このような強度及び耐熱性の低下を補うために一般的には、これらのポリマー間の架橋が行われている。
このような架橋には、電子線架橋、架橋剤架橋、シラン架橋などの方法が用いられるが、中でもシラン架橋は、大規模な製造設備が不要であり、操作が簡便であるという利点がある。しかし、大量の金属水和物を難燃剤として含むポリオレフィン組成物からなる電線成形体のシラン架橋では、金属水和物と架橋成分との接触による早期架橋を防止しつつ十分な架橋度を達成することが課題となっている。
その一方で、電線成形体には、厳しい難燃性規格、例えば、UL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standard for Electrical Wires,Cables,and Flexible Cords))などに規定されている垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)、VW−1規格や水平難燃規格、JIS C3005に規定される60度傾斜難燃特性等が定められており、近年はさらに厳しい難燃性規格に対応することが要求されている。しかも、安全性の面から、難燃性以外の諸物性でも規格が定められる傾向にあり、高い難燃性を備えつつ、耐熱性他諸物性も優れる材料への要求が高まっている。
しかしながら、難燃性の向上は機械的特性の低下を招くことが多く、難燃剤である金属水和物の架橋樹脂中での分散性の向上により耐熱性を維持することが課題となっている。
【0004】
そこで、シラン架橋難燃性ポリオレフィンによる電線成形体の製造においては、架橋工程が様々に検討されてきた。
例えば特許文献1には、シラノール縮合触媒、金属水和物、吸水剤を含有する難燃ポリオレフィンと、不飽和シラン化合物を含有するキャリアーポリマーとを溶融混合し、次いで水分中で架橋する方法が開示されている。
特許文献2には、シラングラフト化ポリオレフィンと金属水和物を含む成分と、ポリオレフィン、シラノール縮合触媒、架橋剤を含む成分とを溶融混合し、次いで水分中で架橋する方法が開示されている。
特許文献3には、ポリオレフィン、有機過酸化物、シラノール縮合触媒、金属水和物を含む樹脂組成物と、シラン変性ポリオレフィンとを溶融混合し、次いで水分中で架橋する方法が開示されている。
しかし、これらの架橋方法ではなおも金属水和物の均一分散性、複雑な工程等に問題があり、難燃性だけでなく他の諸性質を高次元で兼ね備える電線成形体を効率よく製造する方法は未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−235431号公報
【特許文献2】特開2000−212291号公報
【特許文献3】特開2006−131720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、シラン架橋難燃ポリオレフィン組成物からなる難燃性と耐熱性他諸物性を高次元で両立させた電線成形体の効率的製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ベースポリマー、有機過酸化物、シランカップリング剤、金属水和物を特定量比で含有するシラン架橋性難燃ポリオレフィン成分を製造する工程、ポリマーとシラノール縮合触媒を特定量比で含有するシラノール触媒組成物を製造する工程、上記シラン架橋性難燃ポリオレフィン成分と上記シラノール触媒組成物とを特定量比で溶融混合し、成形する工程を有する方法により、難燃性と耐熱性他諸物性を高次元で兼ね備える電線成形体が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1):成分(a)ポリエチレン系樹脂30〜100質量部、成分(b)ポリプロピレン系樹脂 0〜40質量部、成分(c)芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体及び/またはその水素添加物 0〜40質量部、成分(d)酸変性樹脂 0〜15質量部、成分(e)非芳香族系ゴム用軟化剤 0〜30質量部(ただし、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量を100質量部とする)、及び、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部に対して成分(f)有機過酸化物0.1〜1質量部、成分(g)シランカップリング剤1〜6質量部、成分(h)金属水和物50〜250質量部、を成分(f)有機過酸化物の反応温度以上で一括溶融混練して成分(A)(シラン架橋性難燃ポリオレフィン)を製造する工程I、成分(a)、(b)、(c)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体 100質量部と、成分(i)シラノール縮合触媒 0.1〜8質量部、を溶融混練して成分(B)(シラノール触媒樹脂組成物)を製造する工程II、及び、上記成分(A)と成分(B)とを(A):(B)=10:1〜100:1(質量比)の割合で混合、導体上に溶融成形し、次いで水存在下で架橋する工程III、を有することを特徴とする電線成形体の製造方法。
【0008】
好ましい実施態様として、以下の(2)ないし(8)の電線成形体の製造方法を挙げることができる。
(2):前記成分(a)ポリエチレン系樹脂が、エチレン単独重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレンとエチルアクリレートとの共重合体(EEA)、エチレンとメチルメタクリレートとの共重合体(EMMA)、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(EVA)、エチレンとエチルメタクリレートとの共重合体(EMA)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることを特徴とする上記(1)に記載の電線成形体の製造方法。
(3):前記成分(d)酸変性樹脂が、酸変性ポリオレフィン及び/又は酸変性スチレン系エラストマーであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の電線成形体の製造方法。
(4):前記成分(h)金属水和物が、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電線成形体の製造方法。
(5):前記成分(h)金属水和物は未処理及び/又は脂肪酸処理金属水和物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電線成形体の製造方法。
(6):溶融成形が溶融押出成形であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電線成形体の製造方法。
(7):電線成形体がソーラーケーブル用であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の電線成形体の製造方法。
(8):電線成形体がTUV2Pfg1169で規定されるホットセット試験に適合することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電線成形体の製造方法。
【0009】
また本発明は、以下の通りである。
(9):上記(1)〜(8)のいずれかに記載の電線成形体の製造方法によって製造された電線成形体。
(10):ソーラーケーブル用である上記(9)に記載の電線成形体。
(11):TUV2Pfg1169で規定されるホットセット試験に適合することを特徴とする上記(9)または(10)に記載の電線成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、難燃性のみならず耐熱性、さらに強度、伸び、外観のいずれをも高次元で達成した電線成形体を効率よく製造することができる。
本発明の製造方法で得られる電線成形体は難燃性のみならず耐熱性、さらに強度、伸び、外観のいずれをも高次元で備えるため、さらに加工して種々の電線被覆材として使用でき、特に、過酷な条件で長期使用されるソーラーケーブルに適している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[工程I]
本発明の工程Iは、成分(A)(シラン架橋性難燃ポリオレフィン)を製造する工程である。
成分(A)は、(a)ポリエチレン系樹脂30〜100質量部、(b)ポリプロピレン系樹脂0〜40質量部、(c)芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体及び/またはその水素添加物0〜40質量部、(d)酸変性樹脂0〜15質量部、(e)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜30質量部(ただし、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量を100質量部とする。)、及び、上記成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部に対し、(f)有機過酸化物0.1〜1質量部、(g)シランカップリング剤1〜6質量部、(h)金属水和物50〜250質量部を必須とする。工程Iでは、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)を含む成分(A)の成分が(f)有機過酸化物の反応温度以上で一括溶融混練される。
【0012】
(a)ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和エステル共重合体などが使用できる。具体的には、低・中・高密度ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレンとエチルメタクリレートとの共重合体(EMA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などが使用できる。成分(a)は上記の各種重合体から選ばれる1種でもよく、また上記の各種重合体から選ばれる2種以上の混合物であってもよい。上記(a)成分としては、酢酸ビニル含有率が20〜80質量%、好ましくは25〜45質量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることができる。
上記成分(a)の密度は、柔軟性を考慮すると0.915g/cm以下が好ましく、更に好ましくは密度0.905 g/cm以下である。また、引張強度を考慮すると0.870g/cm3以上が好ましく、さらに好ましくは0.880g/cm以上である。上記成分(a)のメルトマスフローレート(JIS K 6924−2準拠、190℃、荷重2.16kgで測定) が0.1〜20g/10分のものが好ましい。
成分(a)の配合量は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部中、30〜100質量部、好ましくは40〜80質量部である。これが30質量部未満では得られる電線成形体の強度が低下し、好ましくない。
【0013】
(b)ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体のいずれもが使用できる。プロピレン・α−オレフィン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれもが使用できる。具体的には、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダムブロック共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1三元共重合体等が挙げられる。上記(b)成分としては結晶性プロピレン(共)重合体が好ましい。結晶性プロピレン(共)重合体としては、DSC測定による融点が、Tmが140〜167℃、好ましくは150〜167℃、△Hmが25〜83mJ/mgの範囲のものが、得られる電線成形体の耐熱性の点で好ましい。
成分(b)の配合量は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部中、0〜40質量部、好ましくは5〜25質量部である。これが40質量部よりも多いと得られる電線成形体の柔軟性が劣り、好ましくない。
【0014】
(c)芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体及び/またはその水素添加物は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体及び該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及びその水添ブロック共重合体である。上記(水添)ブロック共重合体(以下、(水添)ブロック共重合体とは、ブロック共重合体、及び/又は、水添ブロック共重合体を意味する。)は、芳香族ビニル化合物を5〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%含む。
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは好ましくは、芳香族ビニル化合物のみから成るか、または芳香族ビニル化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と(水素添加された)共役ジエン化合物(以下、(水素添加された)共役ジエン化合物とは、共役ジエン化合物、及び/又は、水素添加された共役ジエン化合物を意味する)との共重合体ブロックである。
(水素添加された)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは好ましくは、(水素添加された)共役ジエン化合物のみから成るか、または(水素添加された)共役ジエン化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。
これらの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA、(水素添加された)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBのそれぞれにおいて、分子鎖中の芳香族ビニル化合物または(水素添加された)共役ジエン化合物の分布は、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合せであっていてもよい。
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAあるいは(水素添加された)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBが2個以上ある場合には、それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
(水添)ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択され、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
また、(c)芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体の水素添加物において共役ジエン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
上記した構造を有する本発明に供する水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜1,500,000であり、より好ましくは10,000〜550,000、さらに好ましく50,000〜400,000の範囲である。分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より好ましくは、2以下である。水添ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。なお、本発明における分子量はGPCにより、分子量が既知であるポリスチレンを基準として求めた値である。従って、該値は相対的な値であり、絶対値ではなく、さらに、基準サンプル、装置、データ処理方法等GPCの各条件により±30%程度のばらつきが有り得る。
これらのブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号明細書に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合させて得ることができる。上記方法により得られたブロック共重合体に、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重合体が得られる。
上記(水添)ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共
重合体(SEEPS)、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBBS)等を挙げることができる。本発明においては、該(水添)ブロック共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
成分(c)の配合量は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部中、0〜40質量部、好ましくは5〜30質量部である。これが40質量部よりも多いと得られる電線成形体の強度が劣り、好ましくない。
【0015】
(d)酸変性樹脂としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された樹脂であればいずれも使用できる。不飽和カルボン酸の例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が挙げられ、その誘導体の例としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸等のエステルおよび無水物が挙げられる。上記樹脂としては、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体などのエチレン系重合体、プロピレン系重合体、スチレン系エラストマー(SEBS、SEPS、SEEPS)が挙げられる。(a)ポリエチレン系樹脂との混和性の点から、上記樹脂がエチレン系重合体であるものが好ましい。
成分(d)の配合量は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部中、0〜15質量部、好ましくは0〜10質量部である。これが10質量部よりも多いと得られる電線成形体が硬すぎて好ましくない。
【0016】
(e)非芳香族系ゴム用軟化剤としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤が挙げられる。一般にゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。本発明の成分(e)として用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は上記区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。本発明で用いられるゴム用鉱物油軟化剤は、上記のパラフィン系及びナフテン系が好ましい。芳香族系の軟化剤は、分散性が悪く好ましくない。 非芳香族炭化水素系ゴム用軟化剤として、パラフィン系の鉱物油軟化剤が特に好ましく、パラフィン系のなかでも芳香族環成分の少ないものが特に適している。
パラフィン系軟化剤を構成している化合物としては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)及び、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
室温で液状であるパラフィン系軟化剤の市販品としては、日本油脂株式会社製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、出光石油化学株式会社製のIP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8重量%以上のイソパラフィン)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)等が挙げられる。
成分(e)の配合量は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部中、0〜30質量部、好ましくは0〜20質量部である。これが30質量部よりも多いとブリ−ドアウトを生じやすく、得られる電線成形体に粘着性を与えるおそれがあり、機械的性質も低下するため好ましくない。
【0017】
(f)有機過酸化物としては、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3、3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
成分(f)の配合量は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部に対して0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.6質量部である。これが0.1質量部よりも少ないと架橋を十分達成できず、得られる電線成形体の強度が劣る。これが1質量部よりも多いと架橋が過剰となり得られる電線成形体の柔軟性が失われる。
【0018】
(g)シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を末端に有するシランカップリング剤、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。中でも、末端にエポキシ基および/またはビニル基を有するシランカップリング剤がさらに好ましい。これのシランカップリング剤は1種単独でも、2種以上併用して使用してもよい。
【0019】
(h)金属水和物としては、無機系難燃剤として配合されるものであって、特に限定はしないが、例えば、ハイドロマグネサイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらは、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。また、金属水和物は樹脂との親和性を増すために表面処理剤で処理したものを用いてもよい。表面処理剤としては、シラン化合物(シランカップリング剤)、脂肪酸、リン酸エステル等を用いることが出来る。表面処理剤として使用される脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸等の飽和及び不飽和の脂肪酸が挙げられる。
成分(h)の配合量は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部に対して50〜250質量部、好ましくは55〜230質量部である。これが50質量部よりも少ないと十分な難燃性が得られず、250質量部よりも多いと成分(A)の流動性が低下し、各成分の分散性が劣り、電線成形体の表面外観と強度が劣る。
【0020】
成分(a)〜(h)の溶融混練には、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、多軸押出機等の混練装置が使用できる。溶融混練温度は(f)有機過酸化物の反応温度以上である。好ましくは、使用する(f)有機過酸化物の1分半減期温度以上である。また溶融混練温度の上限は樹脂成分や軟化剤成分、難燃剤の劣化を考慮して決定されるが好ましくは250℃、さらに好ましくは230℃である。
【0021】
[工程II]
本発明の工程IIは、重合体と(i)シラノール縮合触媒を溶融混練して成分(B)(シラノール縮合触媒樹脂組成物)を製造する工程である。
【0022】
(i)シラノール縮合触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオレエート、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、カプリル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸鉄、チタン酸エステル、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ−イソプロピルチタン−エチルアミン錯体、ヘキシルアミン錯体、ジブチルアミン錯体、ピリジン錯体等が挙げられる。
重合体としては成分(A)に用いた成分(a)、(b)、(c)から選ばれる少なくとも1種が使用できるが、相溶性の点で成分(a)が好ましい。
(i)シラノール縮合触媒の含有量は、重合体100質量部に対して0.1〜8質量部、好ましくは1〜5質量部である。これが0.1質量部よりも少ないとシラン架橋させた際、架橋が不充分であり、目的とする耐熱性が得られない。8質量部よりも多いと架橋が部分的に過剰となり、スコーチが発生し、電線成形体の外観が悪化する。
重合体と成分(i)の溶融混練は、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、多軸押出機等の混練装置が使用できる。溶融混練温度の下限は成分(a)、(b)、(c)から選ばれる少なくとも1種の重合体溶融温度以上であり、その上限は樹脂成分や触媒成分の劣化を考慮して決定されるが、溶融混練温度は好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは140〜220℃である。
【0023】
[工程III]
本発明の工程IIIは、工程Iで製造した成分(A)と工程IIで製造した成分(B)とを混合、導体上に(直接、あるいは絶縁材料を被覆しその上に)溶融成形し、次いで水存在下で架橋する工程である。成分(A)と成分(B)との混合比は、(A):(B)=10:1〜100:1の質量比であり、好ましくは15:1〜50:1の質量比である。成分(B)の割合が1割以上になると押出外観が悪化し、1%未満になると架橋度が低下し充分な耐熱性が得られない。成分(A)と成分(B)との溶融成形には各種押出機を使用できる。押出機としては例えば単軸押出機、2軸押出機、多軸押出機等のいずれもが使用できる。水存在下での架橋は定法に従うが、具体的には50〜90℃の温水に5〜48時間浸漬して行うことができる。
本願組成物(工程I、IIで得られた成分(A)および成分(B)を工程IIIにおいて混合した組成物)を電線成形体として成形する際には、導体に直接被覆しても良いし、導体に絶縁材料を被覆した後、その上に被覆しても良い。
導体の種類に制限はなく、銅、アルミ、合金、などいずれであってもよく、これらをメッキ処理あるいは被覆処理したものであってもよい。また、撚線、シールド線、編組線等のいずれの構造でもよい。
【0024】
[その他の配合成分]
本発明のシラン架橋性難燃ポリオレフィンとシラノール触媒樹脂組成物からなる電線成形体においては、本発明の目的を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、アルミナ等の無機充填剤、発泡剤(有機系、無機系及びマイクロカプセル系)、難燃剤(赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、アンチモン及びシリコーン)等を配合することができる。酸化防止剤としては、例えば、2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐p‐クレゾール、2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール、2,4‐ジメチル‐6‐tert‐ブチルフェノール、4,4‐ジヒドロキシジフェニル、トリス(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐tert‐ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤;ホスファイト系酸化防止剤;チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。これらのうち、フェノール系酸化防止剤及びホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
【0025】
本発明の製造方法で得られた電線成形体は、さらに加工して種々の電線被覆材に用いられる。本発明の製造方法で得られた電線成形体は、大量に配合された金属水和物が均一に分散し、かつ十分に架橋されているため、難燃性に優れることはもちろんのこと、耐熱性、強度、柔軟性、成形品表面外観にも優れる。優れた耐熱性は、ホットセット試験により高温に曝された後の変形が少ないことで確認でき、このことは、本発明の製造方法で得られた電線成形体は、高温下での短絡事故を生じ難い安全性の高い電線被覆材として有用であることを示している。電線被覆材としては、押出成形にて成形される各種の電線被覆が挙げられるが、具体的にはソーラー発電機等発電機用、自動車等車輌用、建築用、電気機器用、フラットケーブルなどがある。本発明の製造方法で得られた電線成形体は、特に、屋外の過酷な環境で長期使用されるソーラーケーブルとして有用である。特にソーラーケーブルに用いる場合には、導体上に絶縁材料を被覆した後、その上に本願組成物(工程I、IIで得られた成分(A)および成分(B)を工程IIIにおいて混合した組成物)を被覆して電線成形体とすることが出来る。
電線成形体の径、導体とシースの種類は、ソーラーシステムにおける使用部位・目的に応じて適宜選択され、制限は無い。
本発明の電線成形体がソーラーケーブルに適することは、TUV2Pfg1169で規定されるホットセット試験に適合することで実証される。TUV2Pfg1169は、ソーラーケーブル安全性規格として最も信頼されている規格の一つであり、本規格に合格した電線成形体はソーラーケーブルに求められる高い安全性を備えることを示す。したがって本発明の製造方法で得られた電線成形体は、より高い耐候性と耐熱性、安全性を備えたソーラーケーブルの製造を可能にする。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における評価方法ならびに使用した材料を以下に示す。
【0027】
[成分(A)シラン架橋性難燃ポリオレフィン]
・成分(a):
(a‐1)エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(EVA):エバフレックスEV180(三井デュポンポリケミカル株式会社製)、酢酸ビニル含有率33質量%、MFR0.2g/10分。
(a‐2)エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(EVA):V9000(三井デュポンポリケミカル株式会社製)、酢酸ビニル含有率41質量%、MFR0.3g/10分。
(a‐3)メタロセン系触媒使用直鎖状低密度ポリエチレン:カーネルKF360T(日本ポリエチレン株式会社製)、密度0.898g/cm、MFR3.5g/10分。
・成分(b):
結晶性プロピレン系ブロック共重合体:PB270A(サンアロマー株式会社製)、MFR0.7g/10分;ピークトップ温度(Tm)160℃。
・成分(c):
水添ブロック共重合体:SEPTON4055(株式会社クラレ製)、スチレン含有量30質量%;スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、質量平均分子量:260,000、数平均分子量:200,000、分子量分布(Mw/Mn):1.3、水素添加率:90モル%以上。
・成分(d):
無水マレイン酸変性ポリエチレン:フサボンドN493(デュポン株式会社製)、酸変性率0.5%、MFR1.6g/10分。
・成分(e):
パラフィンオイル:ダイアナプロセスオイルPW‐90(出光興産株式会社製)、動的粘度(40℃、95.54cst)(100℃、11.25cst)、流動点15℃。
・成分(f):
有機過酸化物:パーヘキサ25B(日本油脂株式会社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペロオキシ)−ヘキサン)、1分半減期温度179℃。
・成分(g):
シランカップリング剤:SZ6300(東レ・ダウコーニング株式会社製)、ビニルトリメトキシシラン、平均分子量148.2、沸点125℃、引火点25℃。
・成分(h):水酸化マグネシウム:マグニフィンH7(アルベマール日本株式会社製)、表面未処理合成水酸化マグネシウム、比表面積8m/g。
【0028】
[成分(B)シラノール触媒樹脂組成物]
・重合体:
(a‐1)エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(EVA):エバフレックスEV180(三井デュポンポリケミカル株式会社製)、酢酸ビニル含有率33質量%、MFR0.2g/10分。
(a‐4)高密度ポリエチレン:ハイゼックス5600B(株式会社プライムポリマー製)、密度935kg/m、MFR0.45g/10分。
・(i)シラノール縮合触媒:
ネオスタンU‐810(日東化成株式会社製)、ジオクチルスズジラウレート、融点25℃、粘度38mPa・s/30℃。
【0029】
[電線成形体の各種試験の評価方法]
(1)引張強さ・引張伸び:
JIS K 7113に準拠し、2mm厚に押出成形したテープを80℃にて24時間温水処理したものを、3号ダンベル型試験片に打ち抜いて使用した。また、引張速度は、室温にて200mm/分とした。
(2)押出外観性:
該押出テープの表面外観を目視にて観察し、表面の荒れやざらつき、フローマーク等の表面平滑性・美観を損ねる性状を検出した。これらが観察されず外観が良好なものは○、これらが観察され外観が悪いものは×として評価した。
(3)加熱変形率:
JIS C 3005に準拠し、2mm厚の該押出テープを80℃にて24時間温水処理したものから、試験片を打抜いて使用した。試験温度は140℃とし、荷重は1kgとした。
(4)ホットセット:
TUV2Pfg1169に準拠し、2mm厚に押出成形したテープを80℃にて24時間温水処理したものを、3号ダンベル型試験片に打ち抜いて使用した。試験温度は200℃とし、荷重20N/cmを15分間、荷重0N/cmを5分間の1サイクル試験を実施した。TUV2Pfg1169に準拠したホットセット試験により、同規格(伸び百分率が、有荷重条件下で100%以下、無荷重条件下で25%以下)に合格した場合を○、不合格の場合を×で表示した。
(5)難燃性(酸素指数):
JIS K 7201に準拠し、3mm厚にプレス成形したシートを80℃にて24時間温水処理したものから、試験片を打ち抜いて使用した。
【0030】
[実施例1〜16、比較例1〜10]
(1)成分(A)シラン架橋性難燃ポリオレフィンとその対照品の製造。
以下の表1に示す配合処方に従い、室温にて全成分をドライブレンドし、加圧ニーダーを用いて樹脂温度200〜230℃で溶融混練を行い、排出後、得られた組成物を電熱ロールにてシート化、ペレタイザーを用いてペレット化した。その結果、表1の配合処方CO−FR1、CO−FR2、CO−FR3、CO−FR4、CO−FR5、CO−FR8、CO−FR9、CO−FR10、CO−FR11、CO−FR12、CO−FR13、CO−FR14、CO−FR15で表示される本願発明の成分(A)シラン架橋性難燃ポリオレフィンと、表1の配合処方CO−FR6、CO−FR7で表示されるシラン架橋性難燃ポリオレフィン(対照品)を得た。
(2)成分(B)シラノール触媒樹脂組成物とその対照品の製造。
以下の表2に示す量の各成分を用い、室温にて全成分をドライブレンドし、二軸押出機を用いて重合体成分の溶融温度以上(具体的には150〜200℃)で溶融混練を行い、ストランド形状に押出後、水槽にて冷却実施し、ペレタイザーを用いてペレット化した。その結果、表2の配合処方SMB1、SMB4で表示される本願発明の成分(B)シラノール触媒樹脂組成物と、表2の配合処方SMB2、SMB3、SMB5で表示されるシラノール触媒樹脂組成物(対照品)を得た。
(3)その他の対照成分の製造。
以下の表3に示す量の各成分を用い、室温にて全成分をドライブレンドし、二軸押出機を用いて溶融混練を行い、ストランド形状に押出後、水槽にて冷却実施し、ペレタイザーを用いてペレット化した。
その結果、表3の配合処方CO1で表示されるシラン架橋性ポリオレフィン(対照品)を得た。
以下の表4に示す量の各成分を用い、室温にて全成分をドライブレンドし、加圧ニーダーを用いて溶融混練を行い、排出後、得られた組成物を電熱ロールにてシート化、ペレタイザーを用いてペレット化した。その結果、表4の配合処方FR1で表示される難燃性樹脂組成物(対照品)を得た。
(4)成形体の製造と評価。
上記(1)、(2)、(3)によって得られた成分(A)、成分(B)、または対照品のペレットを、表5及び表6に示す比率にて更にドライブレンドし、20mm押出機にて2mm厚のテープ形状に押出し、80℃にて24時間温水処理した後、得られた成形品について前記の各種評価試験を実施した。各成形品の評価結果を以下の表5及び表6に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
表5の評価結果が示すように、本発明の製造方法を行った実施例1〜16では、引張強さ、引張伸び、押出外観性、加熱変形性、ホットセット試験結果、難燃性のいずれもが優れる電線成形体が得られた。
これに対して表6の評価結果が示すように、成分(A)だけを用いてシラン架橋を行わなかった比較例1ではホットセット試験結果が劣り、耐熱性が得られない。工程IIIで所定の成分(A)と成分(B)の量比を用いなかった比較例2では押出外観性が劣る。成分(A)と成分(B)の対照品を用いた比較例3,4では、引張伸び、押出外観性、ホットセット試験結果のいずれかが劣る。成分(A)の対照品と成分(B)を用いた比較例5,6ではホットセット試験結果が劣る。
対照品CO1及び対照品FR1と、成分(B)とを用いた比較例9,10では、加熱変形性、ホットセット試験結果、難燃性のいずれかが劣る。2種の対照品だけを用いた比較例7,8でも、加熱変形性、ホットセット試験結果、難燃性のいずれかが劣る。このように、本発明の工程I、工程II,工程IIIのいずれかで所定の条件を満たさない製造方法を行った比較例1〜11では、引張強さ、引張伸び、押出外観性、加熱変形性、ホットセット試験結果、難燃性のいずれか1以上が目立って劣る成形体しか得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の電線成形体の製造方法は、簡便な工程で難燃性と耐熱性、強度、柔軟性、外観のすべてを高次元で兼ね備える電線成形体の生産を可能とする。本発明の製造方法で得られる電線成形体は高い難燃性と耐熱性を有するために厳しい環境下でも高い安全性を発揮するため、各種電線被覆材、特にソーラーケーブルに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)ポリエチレン系樹脂30〜100質量部、成分(b)ポリプロピレン系樹脂 0〜40質量部、成分(c)芳香族ビニル系化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体及び/またはその水素添加物0〜40質量部、
成分(d)酸変性樹脂 0〜15質量部、成分(e)非芳香族系ゴム用軟化剤 0〜30質量部(ただし、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量を100質量部とする)、及び、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の合計量100質量部に対して成分(f)有機過酸化物0.1〜1質量部、成分(g)シランカップリング剤1〜6質量部、成分(h)金属水和物50〜250質量部を、成分(f)有機過酸化物の反応温度以上で一括溶融混練して成分(A)(シラン架橋性難燃ポリオレフィン)を製造する工程I、
成分(a)、(b)、(c)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体 100質量部と、成分(i)シラノール縮合触媒 0.1〜8質量部、を溶融混練して成分(B)(シラノール触媒樹脂組成物)を製造する工程II、
及び、上記成分(A)と成分(B)とを(A):(B)=10:1〜100:1(質量比)の割合で混合、導体上に溶融成形し、次いで水存在下で架橋する工程III、
を有することを特徴とする電線成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成分(a)ポリエチレン系樹脂が、エチレン単独重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレンとエチルアクリレートとの共重合体(EEA)、エチレンとメチルメタクリレートとの共重合体(EMMA)、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(EVA)、エチレンとエチルメタクリレートとの共重合体(EMA)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項1に記載の電線成形体の製造方法。
【請求項3】
前記成分(d)酸変性樹脂が、酸変性ポリオレフィン及び/又は酸変性スチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の電線成形体の製造方法。
【請求項4】
前記成分(h)金属水和物が、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線成形体の製造方法。
【請求項5】
前記成分(h)金属水和物は未処理及び/又は脂肪酸処理金属水和物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電線成形体の製造方法。
【請求項6】
溶融成形が溶融押出成形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電線成形体の製造方法。
【請求項7】
電線成形体がソーラーケーブル用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電線成形体の製造方法。
【請求項8】
電線成形体がTUV2Pfg1169で規定されるホットセット試験に適合することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電線成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電線成形体の製造方法によって製造された電線成形体。
【請求項10】
ソーラーケーブル用である請求項9に記載の電線成形体。
【請求項11】
TUV2Pfg1169で規定されるホットセット試験に適合することを特徴とする請求項9または10に記載の電線成形体。

【公開番号】特開2012−255077(P2012−255077A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128583(P2011−128583)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】