説明

ディスクブレーキ装置用パッドクリップ

【課題】ディスクブレーキ装置の生産性を落とす事無く、サポートへの組付け性の容易化と密着性向上の両立を図ることのできるディスクブレーキ装置用パッドクリップを提供する。
【解決手段】ディスクブレーキ装置のサポートに形成された凸部を挟持して配置されるパッドクリップ10であって、前記凸部を上下方向から挟持する挟持部14に、前記凸部を幅方向から挟持する挟持爪22を備え、挟持爪22には、前記凸部に対する付勢力を生じさせるフレーム部24と、前記凸部の基部側から前記凸部の先端側へ向かって延設されて、その先端を前記凸部の側面に付勢させる楔部28と、を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置用のパッドクリップに係り、特にサポートへの組み付け性と、倒れ防止効果を両立させたパッドクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置用パッドクリップは従来から知られており、サポート等のトルク受け部に凸部を形成し、これを挟持するタイプのものや、トルク受け部に凹部を形成し、この凹部に拡開保持されるタイプのものが知られている。このようにしてトルク受け部に対する保持力を得ているパッドクリップは、いずれのタイプであっても、トルク受け部からの脱落防止、トルク受け部に対する密着性の向上、および組付け容易性という点が課題とされてきている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているパッドクリップは、図9に示すように、トルク受け部1の上部(挟持部)1aに溝2を設け、パッドクリップ3の脚部中心付近から爪4を切り出し、この爪4をトルク受け部1に設けた溝2に引っ掛けてパッドクリップ3の抜け止めを図るというものである。
【0004】
また、特許文献2に開示されているパッドクリップは、図10に示すように、トルク受け部に設けられた凸部1bの下側に位置する凹状のトルク受け面の側面に段部1cを形成したサポート1に組付けられるものであり、パッドクリップ3には、前記段部1cに引っかかる挟持爪5を設けるという構成としている。なお、図10において、図10(A)はパッドクリップの組付け状態を示す正面図であり、図10(B)は同図(A)におけるB−B断面を示す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−67635号公報(8頁20行−9頁17行、図4)
【特許文献2】特開2005−2949134号公報(段落0017−0021、図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているようなパッドクリップの形態と、サポートにおけるトルク受け部との関係によれば、パッドクリップの脱落を防止することができることは勿論、爪の突っ張り作用により、パッドクリップをトルク受け部に押し付け、密着性を高めることも可能となる。密着性を高めれば、パッド組付け後の姿勢、挙動も安定する。しかし、トルク受け部に図9に示すような溝を加工することは、サポートを加工する上で、クランプ形態を変えたり、専用の切削工具を用いる必要が生じ、生産性の悪化を招くこととなるといった問題が生ずる。
【0007】
また、特許文献2に開示されているパッドクリップでは、サポートへの密着性、および倒れ防止効果を高く維持するためには、挟持爪による挟持力を相当高める必要性がある。このため、挟持爪の剛性(バネ定数)が高く、組付け性に問題が生ずる。
【0008】
本発明では、上記のような問題を解決し、ディスクブレーキ装置の生産性を落とす事無く、組付け性の容易化と脱落防止効果向上の両立を図ることのできるディスクブレーキ装置用パッドクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るディスクブレーキ装置用パッドクリップは、ディスクブレーキ装置のサポートに形成された凸部を挟持して配置されるパッドクリップであって、前記凸部を上下方向から挟持する挟持部と、前記凸部を幅方向から挟持する挟持爪を備え、前記挟持爪には、前記凸部に対する付勢力を生じさせるフレーム部と、前記凸部の基部側から前記凸部の先端側へ向かって延設されて、その先端を前記凸部の側面に付勢させる楔部と、を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置用パッドクリップにおいて前記挟持爪は、前記挟持部の幅方向に延設される一対の板片により構成され、前記板片に設けられる切欠きにより、前記フレーム部と前記楔部とを構成すると良い。
【0011】
このような特徴を有することにより、切欠き部の幅により、挟持爪のバネ定数を調整することができる。これにより、高い倒れ防止効果を発揮しつつ、組付け容易性も確保することができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置用パッドクリップにおいて前記挟持爪は、前記板片の先端を挟持方向と逆側へ折り曲げた折返し部を有するようにすると良い。
【0013】
このような特徴を有することにより、折返し部がサポートの凸部への組付け時のガイドとしての役割を担うこととなる。このため、挟持爪は凸部に押付けられることにより拡開されることとなり、組付け容易性を向上させることができる。
【0014】
上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置用パッドクリップでは、前記切欠きはU字状とし、前記フレーム部の内側に前記楔部を配置することができる。
【0015】
このような特徴を有することにより、楔部が単一となることより、楔部の傾斜角度の微調整(角度合わせ)を行う必要性が無く、高い生産性を確保することができる。
【0016】
上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置用パッドクリップでは、前記切欠きは板片の外側を向いた一対のL字状とし、前記フレーム部の両脇に前記楔部を配置することができる。
【0017】
このような特徴を有することにより、楔部の当接面の幅を仮想的に長くすることができる。よって、安定性が増し、倒れ防止効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置用パッドクリップによれば、サポート側に加工を施す事無く密着性を確保し、パッドを組付けた後での姿勢、挙動が安定するという効果を奏することができるため、ディスクブレーキ装置の生産性を落とす事が無い。また、凸部に対する付勢力を生じさせるフレーム部の調整により、挟持爪のバネ定数の調整が可能となるため、サポートに対する組付け性の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係るパッドクリップの形態を示す斜視図である。
【図2】パッドクリップを組付けるサポートの構成例を示す斜視図である。
【図3】トルク受け部に対する組付け状態を示す正面図である。
【図4】図3(A)におけるA−A断面を示す図である。
【図5】トルク受け部の凸部に段差を設けた場合におけるパッドクリップの組付け状態を示す正面図である。
【図6】図5(A)におけるA′−A′断面を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係るパッドクリップの形態を示す斜視図である。
【図8】インナ側とアウタ側を一体とするパッドクリップの例を示す斜視図である。
【図9】従来のパッドクリップとトルク受け部との関係を示す部分断面側面図である。
【図10】トルク受け部に段差を有するサポートと、このサポートに組付けられるパッドクリップの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のディスクブレーキ装置用パッドクリップの実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、図2を参照して、本実施形態に係るパッドクリップを取り付けるサポートについて説明する。なお、図2は、パッドクリップを取り付ける前のサポートの状態を示す斜視図である。
【0021】
本実施形態に係るパッドクリップ10を取り付けるサポート50は、複数のトルク受け部52(52a〜52d)と、当該複数のトルク受け部52を連結するためのフレームとより成る。トルク受け部52は、ロータの回入側(図2においては左側とする)と回出側(図2においては右側とする)、およびロータのインナ側とアウタ側にそれぞれ設けられる。インナ側トルク受け部52a,52bとアウタ側トルク受け部52c,52dとはそれぞれ、サポートブリッジ部54を介して一体化されている。また、ロータ(不図示)の回入側に設けられるインナ側トルク受け部52aとロータの回出側(図2においては右側とする)に設けられるインナ側トルク受け部52bとは、メインフレーム56により連結されており、ロータの回入側に設けられるアウタ側トルク受け部52cとロータの回出側に設けられるアウタ側トルク受け部52dとは、サブフレーム58により連結されている。
【0022】
このような構成のサポート50は、キャリパ浮動型のディスクブレーキ装置に用いられるものであり、サポートブリッジ部54には、キャリパを摺動可能に取り付けるためのスライドピンを挿入する穴60が形成されている。また、メインフレーム56には、サポートを車両等に固定するためのボルトを螺合させる雌ネジ孔62が形成されている。
【0023】
サポート50におけるトルク受け部52(インナ側トルク受け部52a,52b、アウタ側トルク受け部52c,52d)には、凸部70とトルク受け面78が形成されている。凸部70は、サポートを正面視した際の形状をほぼ矩形としており、その上面72と下面76を詳細を後述するパッドクリップ10における挟持部14によって挟持される。
【0024】
トルク受け面78は、ブレーキパッド80(図3(B)参照)における耳部82(図3(B)参照)を収容し、耳部側面が当接する部位であり、上述した凸部70の下側に設けられる。
【0025】
上記のような構成のサポート50は、図2に示す例の場合、鋳造により外形形成をし、凸部70やトルク受け面78を機械加工により切削されて形成される。このような構成とすることで、複雑な形状形成(デザイン性も含む)と、必要な寸法出しとを、比較的容易に行うことが可能となる。
【0026】
次に、図1、図3、および図4を参照して、本実施形態に係るパッドクリップの構成について説明する。なお、図1は、実施形態に係るパッドクリップの形態を示す斜視図である。また、図3において図3(A)はサポートに対してパッドクリップを組付けた状態を示す正面図であり、図3(B)はパッドクリップに対してブレーキパッドを組付けた状態を示す正面図である。また、図4は、図3(A)におけるA−A断面を示す部分拡大断面図である。
【0027】
本実施形態に係るパッドクリップ10は、インナ側に設けられるトルク受け部52a,52bと、アウタ側に設けられるトルク受け部52c,52dとのそれぞれに別体として配置される。図1に示すパッドクリップ10はインナ側に設けられるトルク受け部52a,52bに配置されるものであるが、アウタ側に設けられるトルク受け部52c,52dに配置されるパッドクリップ10とは、長手方向中心線を基準として線対称な構成とされる。このため、本実施形態では主にインナ側のパッドクリップの構成についての説明を行うこととする。パッドクリップ10の構成部材としては、ステンレス板や、防錆処理を施した鉄板などであれば良く、平板状に切り出された構成部材を折り曲げ形成することによって形作られている。
【0028】
パッドクリップ10を構成する脚部は、ガイドフレーム12と、挟持部14、パッド保持部32とから成る。ガイドフレーム12は、詳細を後述する挟持部14の上部押さえ片16に連結された板片であり、挟持部14の開口を拡開する方向へ延設されることで、パッドクリップ10の組付け容易性を向上させる役割を担う。
【0029】
挟持部14は、上述したサポート50におけるトルク受け部52に形成された凸部70を図中上下方向から挟持して、パッドクリップ10の抜け止め、および密着保持を図るための部位である。具体的には、凸部70を上下方向から挟持する上部押さえ片16と下部押さえ片20、および上部押さえ片16と下部押さえ片20とを連結する連結片18とを有する。
【0030】
本実施形態に係るパッドクリップ10は連結片18に、挟持爪22を有する。挟持爪22は、図示しないロータの軸方向、すなわちトルク受け部52の幅方向から凸部70を挟持する役割を担う。
【0031】
挟持爪22は、フレーム部24と、折返し部26、および楔部28を備える。フレーム部24と、折返し部26、および楔部28は、1枚の板片に形成された略U字状の切欠きにより区分けされる。
【0032】
フレーム部24は、切欠きの外側に位置し、挟持部14の連結片18と接続された部位であり、連結片18との間に第1の曲げ部40(図4参照)を有する。第1曲げ部40は、挟持爪22の先端側をブレーキパッド80の配置方向と逆側に折り曲げるための部位であり、θとして90度以上の曲げ角を有することにより、挟持爪22の先端をパッドクリップの幅方向中心へ向けることができる。このような構成とすることにより、挟持爪22による凸部70の挟持効果を高めることができる。
【0033】
折返し部26は、第2の曲げ部42を介してフレーム部24の先端に延設され、挟持爪22の先端を外側(パッドクリップ10の幅方向中心を基点として外側)へ向けるための部位である。このような構成を有することにより、挟持爪22の先端を拡開状態とすることができ、凸部70への組付け性を向上させることができる。
【0034】
楔部28は、切欠きを介してフレーム部24の内側に設けられる板片である。第2の曲げ部42を介して折返し部26が外側に折り曲げられることにより、楔部28の先端は、パッドクリップの幅方向中心側を向くこととなる。これにより楔部28は、サポート50への組付け状態では、凸部70の基端部側から先端部側へ向かって引っかかる、いわゆる反しの作用を持ちつつ凸部70に付勢することとなる。よって、サポート50に対して高い密着性を発揮することができる。
【0035】
本実施形態では、連結片18および上部押さえ片16の板幅を、下部押さえ片20よりも狭く構成している。このような構成とすることにより、第1に、連結片18と上部押さえ片16との間のバネ定数が下がり、サポート50への組付け性が向上することとなる。また第2に、当該部分の板幅を狭めたことにより、連結片18から突設される挟持爪22を長くすることができ、バネ定数の調整、および加工性を向上させることができる。さらに第3に、同一面積を有する板材からのパッドクリップ10の取り個数(板取性)を向上させることが可能となるといった効果を奏することができる。
【0036】
また、パッド保持部32は、サポート50に装着されるブレーキパッド80における耳部82を保持するための部位である。パッド保持部32は、挟持部14における下部押さえ片20と、下部押さえ片20と対向して設けられるパッド保持片36、および下部押さえ片20とパッド保持片36を連結するトルク受け片34とより構成される。トルク受け片34は、上述した下部押さえ片20との成す角θが鋭角の範囲内となるように形成される。このため、パッドクリップ10をサポート50におけるトルク受け部52へ取り付けた際には、トルク受け部52におけるトルク受け面78から離間する方向へ延設する形態を採ることとなる(例えば図3(A)参照)。パッド保持片36は、トルク受け片34に対して、ブレーキパッド80の配置方向へほぼ直角に設けられる。このため、下部押さえ片20とパッド保持片36との間に形成される空間は、入口側が狭く、トルク受け片34に近づくほど広くなるような形態を採ることとなる。なお、トルク受け片34近傍における下部押さえ片20とパッド保持片36との間隔は、ブレーキパッド80における耳部82の幅(高さ)よりも少し大きくすることが望ましい。
【0037】
このような構成とすることで、パッド保持片36は、ブレーキパッド80の耳部82下面へ付勢することとなり、ブレーキパッド80を安定して保持することが可能となる。また、好ましくは反アンカ側(ロータの入口側)のパッドクリップ10において、サポート50と下部押さえ片20、パッド保持片36との隙間を拡開させることで、ブレーキパッド80の耳部82を挿入する際にトルク受け片34には反りが生ずることとなる。このため、トルク受け片34は、トルク受け部52との間で、バネ作用を生じさせることができ、ロータ正転時ブレーキパッド80はアンカ側に押付けられ、ロータ逆転制動時にもブレーキパッド80がトルク受け部52におけるトルク受け面78に衝突する際の衝撃を和らげることも可能となる。
【0038】
上記のような特徴を持つパッドクリップ10は、図3〜図5に示すように、ガイドフレーム12と上部押さえ片16との間の円弧部分(R部)、並びに下部押さえ片20とトルク受け片34との間の円弧部分(R部)、および挟持爪22における折返し部26を導入のきっかけとして、上部押さえ片16を凸部70の上面72に、下部押さえ片20を凸部70の下面76にそれぞれ摺動させると共に、楔部28の先端を凸部70の側面74に摺動させながら、パッドクリップ10の挟持部14をトルク受け部52の凸部70へと押し込むことにより組付けられる。
【0039】
パッドクリップ10をサポート50のトルク受け部52に密着させることで、ブレーキパッド80の位置が安定して保たれ、耐ノイズ性が向上する。つまり、ロータの空転時と制動時のパッド変位が少なくなり、ブレーキパッド80が安定して保たれる。
【0040】
また、上記のようなパッドクリップ10によれば、トルク受け部52に溝等を設けることをしなくとも、十分な挟持力を得ることができ、倒れ防止効果を高めることができると共に、ディスクブレーキ装置の生産性を良好に保つことが可能となる。
【0041】
また、本実施形態に係るパッドクリップ10を採用する場合、図5、図6に示すように、凸部70の側面に段差部70aを設ける(素材でも加工でも可)ようにしても、本実施形態に係るパッドクリップ10を採用することができる。ここで、図5は凸部に段差を設けたトルク受け部に対するパッドクリップの組付け状態を示す図であり、図5(A)はパッドクリップ単体の組付け状態を示す正面図であり、図5(B)はブレーキパッドを組付けた際のパッドクリップの状態を示す正面図である。また、図6は、図5(A)におけるA′−A′断面を示す図である。
【0042】
段差部70aは、パッドクリップ10をサポート50に組付けた状態において、楔部28の先端が位置する部位に設けるようにすると良い。このような構成とすることによれば、図6に示すように、楔部28が段差部70aに引っ掛かり、上記実施形態よりもさらに確実な脱落防止効果を発揮することが可能となる。
【0043】
なお、凸部70に対し、段差部70aに替えて溝(不図示)を設けるようにしても、楔部28の先端が溝に嵌り込むことで、段差部70aを設けた場合と同様な効果を発揮することができる。
【0044】
次に、本発明のディスクブレーキ装置用パッドクリップに係る第2の実施形態について、図7を参照して説明する。なお、本実施形態に係るパッドクリップ10aの殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係るパッドクリップ10と同様である。よって、その機能を同一とする箇所には図面に同一符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0045】
本実施形態に係るパッドクリップ10aと、第1の実施形態に係るパッドクリップ10との相違点は、挟持爪22の形態にある。本実施形態に係るパッドクリップ10aでは、挟持爪22にフレーム部24、折返し部26、楔部28、および第1の曲げ部40、第2の曲げ部42を保持しつつ、切欠きの形態を変えることにより、挟持爪22全体の形態に違いを持たせている。具体的には、挟持爪22を構成する板片に設ける切欠きを、板片の外側を向いた略L字状とし、この切欠きを板片の中心を基点として線対称に一対設ける構成としたのである。
【0046】
このような構成とすることにより、フレーム部24は板片の中心に位置することとなり、楔部28は、切欠きを介してフレーム部24の両脇に一対設けられ、全体として、いわゆる碇型の体を成すこととなる。
【0047】
挟持爪22の形態をこのようなものとした場合、楔部28の幅を仮想的に広げることができる。このため、パッドクリップ10aの倒れ方向に対する耐性、すなわち回転方向への楔効果を高めることができ、倒れ防止効果を高めることができる。その他の構成、作用、効果については、上述した第1の実施形態に係るパッドクリップ10と同様である。
【0048】
上記実施形態ではいずれも、インナ側のトルク受け部52a,52bに配置するパッドクリップと、アウタ側のトルク受け部52c,52dに配置するパッドクリップは、別体として形成される旨記載した。しかしながら本発明に係るパッドクリップは、図8に示すように、インナ側とアウタ側に配置される2つの脚部を有する1つのパッドクリップ10bとして構成しても良い。この場合、インナ側に配置されるパッドクリップとアウタ側に配置されるパッドクリップは、ガイドフレーム12の先端同士をブリッジ部11により接続する構成とすると良い。ブリッジ部11をサポートブリッジ部54に沿わせる形状とすれば、ロータを跨いでパッドクリップ10bを配置することが可能となるからである。
【符号の説明】
【0049】
10………パッドクリップ、12………ガイドフレーム、14………挟持部、16………上部押さえ片、18………連結片、20………下部押さえ片、22………挟持爪、24………フレーム部、26………折返し部、28………楔部、32………パッド保持部、34………トルク受け片、36………パッド保持片、50………サポート、52(52a〜52d)トルク受け部、54………サポートブリッジ部、56………メインフレーム、58………サブフレーム、70………凸部、72………上面、74………側面、76………下面、78………トルク受け面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキ装置のサポートに形成された凸部を挟持して配置されるパッドクリップであって、
前記凸部を上下方向から挟持する挟持部と、
前記凸部を幅方向から挟持する挟持爪を備え、
前記挟持爪には、前記凸部に対する付勢力を生じさせるフレーム部と、前記凸部の基部側から前記凸部の先端側へ向かって延設されて、その先端を前記凸部の側面に付勢させる楔部と、を設けたことを特徴とするディスクブレーキ装置用パッドクリップ。
【請求項2】
前記挟持爪は、前記挟持部の幅方向に延設される一対の板片により構成され、前記板片に設けられる切欠きにより、前記フレーム部と前記楔部とを構成したことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置用パッドクリップ。
【請求項3】
前記挟持爪は、前記板片の先端を挟持方向と逆側へ折り曲げた折返し部を有することを特徴とする請求項2に記載のディスクブレーキ装置用パッドクリップ。
【請求項4】
前記切欠きはU字状とし、前記フレーム部の内側に前記楔部を配置したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のディスクブレーキ装置用パッドクリップ。
【請求項5】
前記切欠きは板片の外側を向いた一対のL字状とし、前記フレーム部の両脇に前記楔部を配置したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のディスクブレーキ装置用パッドクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−208664(P2011−208664A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74331(P2010−74331)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】