説明

ディスクブレーキ装置

【課題】ブレーキパッドの取り扱い性が良好で、トルク受け部へ負荷される力の分散を可能とするディスクブレーキ装置を提供する。
【解決手段】トルク受け面と当接する耳部75,85の先端形状を鉤形とし、前記トルク受け面に対して押し引き双方のトルクを伝達する構成としたブレーキパッド70,80およびトルク受け部を備えたディスクブレーキ装置10であって、前記ブレーキパッド70,80は、複数のパッド片72,82(72a,72b,82a,82b)と、複数のパッド片72,82におけるプレッシャプレート74a,74b,84a,84b同士の対向面の一部を嵌合させるジョイント部材78,88とを有し、複数のパッド片72,82をそれぞれ1つのブレーキパッド70,80として取り扱い可能とし、ロータ回転方向の力を受けた際には、ジョイント部材78,88へ嵌入された範囲で前記各パッド片72,82間の距離が変化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に係り、特に制動用に用いられるブレーキパッドに特徴を有するディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置のうち、例えばフィスト型(キャリパ浮動型)のものでは、現在その殆どがピン摺動構造を採用しており、構成部材としてのサポートは、これに対応し易い鋳物が用いられることが多い。キャリパ浮動型に限らず、ディスクブレーキ装置では、ロータに圧接されたブレーキパッドがロータと共に回転しようとする力を、キャリパまたはサポートに設けられたトルク受け部で受け止めることで、制動力を生じさせるようにしている。このため、制動力はロータの回出側に位置するトルク受け部に集中することとなり、これを支えるためにサポートやキャリパには強度保持を目的とした補強部材や肉厚構造が必要とされていた。
【0003】
このような実情に鑑み、ブレーキパッドを介して伝達される制動力を、ロータの回入側と回出側との双方に位置するトルク受け部で受け止めることが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示されているように、ブレーキパッドの耳部先端を鉤形とし、トルク受け部との間でフック作用が得られる構造とする事で、ロータの回入側に位置するトルク受け部には引っ張りの力が作用し、ロータの回出側に位置するトルク受け部には押し付けの力が作用することとなり、制動力を得るための力が回入側のトルク受け部と回出側のトルク受け部とに分散して作用することとなると考えられている。
【特許文献1】特開2005−155656号公報
【特許文献2】特開2004−332871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが実際には、高剛性体同士の組み付けの場合、ブレーキパッドにおける耳部とトルク受け部との間でピッチにズレがあると、一方は当接したが他方は当接しないといった現象が生じてしまうことがある。このため、高剛性体同士の組み付けにより上記のような作用を奏するためには、組み付ける側の部材、組み付けられる側の部材共に高い精度での加工が必要となり、生産コストの高騰を招くこととなってしまう可能性がある。
【0005】
1つの提案として、特許文献2に開示されているような分割型のブレーキパッドを採用することも考えられるが、この場合サポートやキャリパに対する組み付け性に問題が生ずる。
そこで本発明では、ブレーキパッドの取り扱い性が良好で、トルク受け部へ負荷される力の分散を効果的に奏することのできる構造を有するディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るディスクブレーキ装置は、トルク受け面と当接する耳部の先端形状を鉤形とし、前記トルク受け面に対して押し引き双方のトルクを伝達する構成としたブレーキパッドおよびトルク受け部を備えたディスクブレーキ装置であって、前記ブレーキパッドは、ライニングとプレッシャプレートとを備えた複数のパッド片と、前記複数のパッド片におけるプレッシャプレート同士の対向面の一部を嵌合させるジョイント部材とを有し、前記複数のパッド片を1つのブレーキパッドとして取り扱い可能とし、ロータ回転方向の力を受けた際には、前記ジョイント部材へ嵌入された範囲で前記各パッド片間の距離が変化することを特徴とする。
【0007】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記ジョイント部材をロータの軸方向への撓み、およびロータ円周方向への圧縮を可能とする弾性部材により構成することが望ましい。
【0008】
このような特徴を有することにより、ブレーキパッドを構成する各パッド片がロータの摺動面に追従して個別に傾きを持つことが可能となる。よって、ブレーキパッドの定着安定性を図ることが可能となる。また、ロータの円周方向への圧縮を可能とすることにより、制動時に生じた衝撃の緩衝効果を大きくすることができ、制動時に生ずる音の抑制や、衝撃緩和による安全を確保できる強度の向上およびこれに伴うキャリパやサポートの軽量化を図ることができる。
【0009】
さらに、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記パッド片におけるプレッシャプレートであって、前記ライニングを貼付した主面と反対側となる主面に、断面円弧状となる山形の凸部を形成し、インナ側ブレーキパッドではピストンにおけるブレーキパッド押圧面の輪郭部が、アウタ側ブレーキパッドでは爪部が、それぞれ前記凸部の頂点部分に接触する構成とすることが望ましい。
【0010】
このような構成とすることで、各パッド片がロータの摺動面に追従して個別に傾くことをより促進させることができる。したがって、ブレーキパッドの定着安定性を、より向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような構成のディスクブレーキ装置によれば、複数のパッド片により構成されるブレーキパッドでありながら、これらのパッド片をジョイント部材に嵌合させている。このため、その取り扱いは1つのブレーキパッドと同様とすることができ、良好なものとなる。また、ジョイント部材に嵌入された範囲で、各パッド片間の距離、すなわちブレーキパッド全体における耳部から耳部までの寸法を変化させることが可能となるため、トルク受け部へ負荷される力を効果的に分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のディスクブレーキ装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明のディスクブレーキ装置に係る実施形態のうち、キャリパ浮動型のディスクブレーキ装置についての分解斜視図を示すものである。また、図2は、図1に示すディスクブレーキ装置を組み付けた形態を示す斜視図である。本実施形態に係るディスクブレーキ装置10は、サポート20とキャリパ50、及びブレーキパッド70,80を基本として構成されている。
【0013】
前記サポート20は、実施形態に係るディスクブレーキ装置10を車両に取り付けるための支持部材の役割と共に、詳細を後述するブレーキパッド70,80を介して伝達される図示しないロータの回転力を受けとめるトルク受け部材としての役割も担う。本実施形態に係るサポート20は、サポート本体22と、当該サポート本体22に取り付けられるトルク受け部構成部材26a,26bとより成るいわゆる板金サポートである。板金サポートは、機械加工された部材同士を組み付けることで構成されるため、寸法出しが比較的容易であり、鋳型を介すること無く製造できるため、設計変更に対する迅速な対応が可能となる。
【0014】
本実施形態に係るサポート20では、トルク受け部構成部材26a,26bに形成するトルク受け部を次のような構成としている。すなわち、切欠き状に形成され、詳細を後述するブレーキパッド70,80における耳部75,85が当接する押圧トルク受け面30と、押圧トルク受け面30の下方側(ロータ内周側)にポケット状に形成された凹部31を介して前記押圧トルク受け面30と対向するように形成したフック部32aにより構成される引き圧トルク受け面32とを有する。このような構成のトルク受け部では、押圧トルク受け面30は、当該トルク受け部がロータの回出側に位置する場合の制動時に作用し、引き圧トルク受け面32はトルク受け部がロータの回入側に位置する場合の制動時に作用する。なお、図1からも読み取れるように、1つのサポート20に対してトルク受け部構成部材26a,26bは2つ設けられ、それぞれのトルク受け部構成部材26a,26bには、インナ側とアウタ側とに配設するブレーキパッド70,80を支持するためのトルク受け部がそれぞれ形成されている。
【0015】
また、トルク受け部構成部材26a,26bには、詳細を後述するキャリパ50を支持するためのボルト34を挿通させるための貫通孔28が形成されている。さらに、サポート本体22には、サポート20を車両に固定するためのボルト孔24が形成されている。
【0016】
上記のような構成のトルク受け部には、詳細を後述するブレーキパッド70,80の軸方向への摺動をサポートするパッドクリップ36が配設される。パッドクリップ36は、図1に示すように、押圧トルク受け面30への当接部分を基準として下片側は凹部31、フック部32aに沿ってこれらを包み込む断面形状を有するものとし、上片側は詳細を後述するブレーキパッド70,80の耳部75,85をロータ外周側から押さえるような形状としている。なお、トルク受け部に対するパッドクリップ36の固定は、複数設けられた固定爪36aでトルク受け部構成部材26a,26bを挟み込むことで成される。また、パッドクリップ36は、ベース部40を介してインナ側とアウタ側とを一体に形成されている。
【0017】
前記キャリパ50は、シリンダ部52と爪部58、ブリッジ部56、およびアーム部60とを主な構成要素としている。前記シリンダ部52は、詳細を後述するブレーキパッド70に対向する面に凹部を有するピストン54が備えられ、シリンダ部52の内部に作動油が流入することにより、ピストン54が押し出される構成とされた動力部材である。前記爪部58は、前記シリンダ部52と対向して配設され、アウタ側に配置されたブレーキパッド80のプレッシャプレート84a,84bを支持し、前記ピストン54の押し出しに伴って生ずる反力を受けてブレーキパッド80をロータへ押し付ける反力受け部材である。前記ブリッジ部56は、ロータを跨いでシリンダ部52と爪部58とを一体に連結する連結部材である。また、前記アーム部60は、シリンダ部52を基点としてロータの回入側と回出側とのそれぞれに延設され、トルク受け部構成部材26a,26bに形成した貫通孔28を挿通させたボルト34を介してサポート20にキャリパ50を固定するための支持部材である。本実施形態に係るアーム部60は、図1、図2に示すように、アーム部60の先端に摺動ピンの摺動部62を形成し、ブーツ64内に配置した図示しない摺動ピンの端部に、前記ボルト34が連結する構成を採る。
【0018】
前記ブレーキパッド70,80は、図3に示すように、複数分割型の構造としており、本実施形態では回入側パッド片72a,82aと回出側パッド片72b,82b、およびジョイント部材78,88とから構成することとしている。各パッド片72,82(回入側パッド片72a,82a、回出側パッド片72b,82b)はそれぞれ、摩擦部材であるライニング76と、当該ライニング76が貼付される金属板であるプレッシャプレート74,84(74a,74b,84a,84b)とから構成されている。各プレッシャプレート74,84は、対向する側の端部(キャリパ50中心側に位置することとなる端部)に凹凸部を形成している。また、回入側パッド片72a,82aにおけるプレッシャプレート74a,84aは回入側に、回出側パッド片72b,82bにおけるプレッシャプレート74b,84bは回出側にそれぞれ耳部75,85を形成している。そして、本実施形態では、各プレッシャプレート74,84に形成する耳部75の先端部を鉤形部77としている。これにより、各パッド片72,82がロータの回入方向の力(キャリパ中心方向へ向かう力)を受けた際、鉤形部77がトルク受け部における引き圧トルク受け面32に押し付けられ、制動力を生じさせることとなる。
【0019】
前記ジョイント部材78,88は、上記のような構成の回入側パッド片72a,82aと回出側パッド片72b,82bとをキャリパ50の中心付近で連結する連結部材であり、各パッド片72,82の凹部へ嵌まり込み、各パッド片72,82の凸部73,83を嵌入させる構造とされている。具体的には、ジョイント部材78,88の長手方向外形寸法を、各パッド片における凹部の高さ寸法L1と同一またはややマイナスとし、ジョイント部材78,88の断面には各パッド片72,82における凸部83を嵌入する貫通孔79,89を形成している。このため、ジョイント部材の肉厚は、プレッシャプレート74(74a,74b),84(84a,84b)の肉厚よりも若干厚いものとなる。
【0020】
ここで、各パッド片72,82は、ジョイント部材78,88を介して1つのブレーキパッド70,80として取り扱いが可能となり、嵌入された凸部73,83の嵌入代の範囲でのスライドにより、ブレーキパッド70,80全体として、ロータの円周方向への僅かな伸縮を可能としている。このため、回入側パッド片72a,82aでは引き圧トルク受け面32へ回転力が作用し、回出側パッド片72b,82bでは押圧トルク受け面30へ回転力が作用すると共に、ジョイント部材78,88における嵌入部の摺動抵抗(凸部73,83と貫通孔79,89との間の抵抗)、およびジョイント部材78,88の押圧により、ジョイント部材78,88が緩衝材となり、制動時における衝撃を緩和することとなる。
【0021】
ジョイント部材78,88の構成材料としては、金属やカーボン素材といったいわゆる高剛性体であっても、ゴムやシリコン、エンジニアリングプラスチック等のいわゆる弾性体であっても良い。なお、コスト面を考慮しなければ、高剛性体と弾性体との組み合わせにより、より効果的な作用を奏するものとしても良い。
【0022】
例えばジョイント部材78,88を高剛性体で構成した場合には、上述した効果を奏することができるに留まるが、ジョイント部材78,88を弾性体で構成した場合には、ロータの軸方向にわずかな撓みを生じさせることができるため、ロータ主面に対する各パッド片72,82の追従性を向上させることができる。よって、ロータに対するブレーキパッド70,80の定着安定化を図ることができる。また、ジョイント部材78,88を弾性体で構成した場合には、上記緩衝材としての効果がより高いものとなる。
【0023】
なお、ジョイント部材78,88を高剛性体により構成する場合には、凸部73,83に対する貫通孔89の公差はプレッシャプレート74,84の厚みに対して0または僅かにプラスとし、ジョイント部材78,88を弾性体により構成する場合には、同公差を0または僅かにマイナスとすると良い。また、ブレーキパッド70,80を構成するジョイント部材78,88は、サポート20に組み付けた際、インナ側はピストン54の凹部の中に(図4参照)、アウタ側は爪部58の間に収まることとなる(図5参照)。このため、プレッシャプレート74,84から突出するかたちとなるジョイント部材78,88であっても、押圧動作に影響を及ぼすことは無い。
【0024】
次に、上記のような構成のディスクブレーキ装置10の動作について説明する。まず、シリンダ部52に対して、ペダルやレバーを介して作動油が導入される。シリンダ部52に作動油が導入されると、シリンダ部52内部に配置されたピストン54が、ロータ(不図示:インナ側ブレーキパッド70とアウタ側ブレーキパッド80との間に配置される)へ向かって押し出される。押し出されたピストン54は、ロータとシリンダ部52の間に配置されたインナ側ブレーキパッド70のプレッシャプレート74a,74bを押圧し、ブレーキパッド70におけるライニング76をロータ摺動面へと圧接させる。インナ側ブレーキパッド70がロータに圧接されると、反力を受けたキャリパ50は摺動ピンの摺動によりインナ側へスライドする。キャリパ50のスライドにより、ロータのアウタ側に位置する爪部58がロータへ近接することとなり、爪部58とロータとの間に配設されたブレーキパッド80は、爪部58によりプレッシャプレート84a,84bが押圧され、ロータの摺動面へ圧接されることとなる。
【0025】
ロータに圧接されたブレーキパッド70,80は、接触面で摩擦を生じさせ、ロータの回入側から回出側へ向けてロータの回転に連れ回るような力を受ける。このため、回出側パッド片72b,82bはトルク受け部構成部材26bにおける押圧トルク面30に耳部75,85を当接させ、回入側パッド片72a,82aはトルク受け部構成部材26aにおける引き圧トルク受け面32に耳部75,85における鉤形部77,87を当接させることとなる。この際、両者が各トルク受け面(押圧トルク受け面30、引き圧トルク受け面32)に当接するまでに、ジョイント部材78,88が押圧または引き圧され、嵌入された凸部73,83の摺動摩擦や、ジョイント部材78,88の伸び、圧縮等の撓みにより、各パッド片72,82が各トルク受け面に当接する際の衝撃を和らげることとなる。このため、従来は押圧の力を受けるトルク受け面にのみ作用していたロータが回転する力が、ロータ回出側の押圧トルク受け面30とロータ回入側の引き圧トルク受け面32とに分散されることとなると共に、ジョイント部材78,88により緩衝されるため、サポート20を構成する部材の肉厚を薄くしたり、補助部材を無くした場合であっても、制動力を受け止めるのに十分な強度を確保することができることとなり、サポート20の軽量化を図ることが可能となる。
【0026】
そして、ブレーキパッド70,80が各トルク受け面に当接し、車両に固定されたサポート20における各トルク受け面がロータの回転力を受け止めることにより、車両に対する制動力が生ずることとなる。
【0027】
上記のような構成のディスクブレーキ装置10によれば、ブレーキパッド70,80がトルク受け面に衝突する際の衝撃、および音を抑制することが可能となる。また、ブレーキパッド70,80がトルク受け面に衝突する際の衝撃や制動時に伝達される力が押圧トルク面30と引き圧トルク受け面32とに分散して作用することとなるため、トルク受け面を構成するサポート20から補助部材等を除外した場合であっても十分な強度を確保することができることとなり、サポート20の軽量化が可能となる。
【0028】
次に、本発明のディスクブレーキ装置に係る第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るディスクブレーキ装置の殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係るディスクブレーキ装置と同様である。よって本実施形態では、第1の実施形態に係るディスクブレーキ装置との相違点についてのみ詳細に説明することとする。なお、本実施形態に係るディスクブレーキ装置と、第1の実施形態に係るディスクブレーキ装置との相違点は、ブレーキパッドの構成にある。なお、その機能を同一とする箇所には図3、図4の符号に100を足した符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0029】
本実施形態に係るディスクブレーキ装置のブレーキパッド170,180は、図6〜図8に示すように(図6では例としてインナ側ブレーキパッドとして記載)、ブレーキパッド170を構成する各パッド片172a,172bのプレッシャプレート174a,174bに、断面円弧状となる山形の凸部171を形成した点にある。凸部171は、インナ側ブレーキパッド170においては、凹部を有するピストン54の外周部分が当接する位置であり(図7参照)、アウタ側ブレーキパッド180においては爪部58が当接する位置に設けることとする(図8参照)。また、本実施形態に係るブレーキパッド170,180では、ジョイント部材178,188を弾性体により構成することが望ましい。
【0030】
ピストン54と凸部171、爪部58と凸部181がそれぞれ上記のような配置関係となるようにし、ジョイント部材178,188を弾性部材により構成することにより、ピストン54と凸部171、爪部58と凸部181はそれぞれ点接触することとなる。そして、各パッド片172,182(172a,172b,182a,182b)はライニング176,186の接触する摺動面の傾きに倣うように個別に傾くことが可能となる。よって、制動時には各パッド片172,182がロータの歪み等に対応してその摺動面の傾きを変化させることとなり、ブレーキパッド170,180の定着安定化を図ることが可能となる。
【0031】
上記実施形態では、ディスクブレーキ装置としてフィスト型のものを例に挙げて説明した。しかしながら、上記ブレーキパッドの構成は、オポーズド型のディスクブレーキ装置にも適応させることができる。オポーズド型のディスクブレーキ装置に採用した場合であっても、制動時にトルク受け部に作用する力が分散するため、十分な強度を確保したままキャリパの肉厚を薄くすることができる。よって、キャリパの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】発明に係るディスクブレーキ装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】ディスクブレーキ装置の組み付け状態を示す斜視図である。
【図3】(A)は分解状態、(B)は組み付け状態を示すブレーキパッドの斜視図である。
【図4】インナ側ブレーキパッドとピストンとの配置関係を示す図である。
【図5】アウタ側ブレーキパッドと爪部との配置関係を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係るディスクブレーキ装置に採用するブレーキパッドの構成を示す分解図(A)と、組み付け図(B)である。
【図7】第2の実施形態に係るインナ側ブレーキパッドとピストンとの配置関係を示す正面図(A)と平面図(B)である。
【図8】第2の実施形態に係るアウタ側ブレーキパッドと爪部との配置間k性を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10………ディスクブレーキ装置、20………サポート、22………サポート本体、24………ボルト孔、26a,26b………トルク受け部形成部材、28………貫通孔、30………押圧トルク受け面、31………凹部、32………引き圧トルク受け面、32a………フック部、34………ボルト、36………パッドクリップ、36a………固定爪、40………ベース部、50………キャリパ、52………シリンダ部、54………ピストン、56………ブリッジ部、58………爪部、60………アーム部、62………摺動部、64………ブーツ、70………ブレーキパッド、72(72a,72b)………パッド片(回入側パッド片,回出側パッド片)、73………凸部、74(74a,74b)………プレッシャプレート、75………耳部、76………ライニング、77………鉤形部、78………ジョイント部材、79………貫通孔、80………ブレーキパッド、82(82a,82b)………パッド片(回入側パッド片,回出側パッド片)、83………凸部、84(84a,84b)………プレッシャプレート、85………耳部、86………ライニング、87………鉤形部、88………ジョイント部材、89………貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク受け面と当接する耳部の先端形状を鉤形とし、前記トルク受け面に対して押し引き双方のトルクを伝達する構成としたブレーキパッドおよびトルク受け部を備えたディスクブレーキ装置であって、
前記ブレーキパッドは、ライニングとプレッシャプレートとを備えた複数のパッド片と、
前記複数のパッド片におけるプレッシャプレート同士の対向面の一部を嵌合させるジョイント部材とを有し、前記複数のパッド片を1つのブレーキパッドとして取り扱い可能とし、
ロータ回転方向の力を受けた際には、前記ジョイント部材へ嵌入された範囲で前記各パッド片間の距離が変化することを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記ジョイント部材をロータの軸方向への撓み、およびロータ円周方向への圧縮を可能とする弾性部材により構成したことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記パッド片におけるプレッシャプレートであって、前記ライニングを貼付した主面と反対側となる主面に、断面円弧状となる山形の凸部を形成し、
インナ側ブレーキパッドではピストンにおけるブレーキパッド押圧面の輪郭部が、アウタ側ブレーキパッドでは爪部が、それぞれ前記凸部の頂点部分に接触する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−168168(P2009−168168A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7405(P2008−7405)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】