説明

データ復旧方法及びデータ復旧装置

【課題】不要なデータが復旧されず、情報セキュリティの点で優れたデータ復旧方法を提供する。
【解決手段】ファイル化されたデータが時系列順にユーザ領域の先頭から記録された記録メディアに対してデータを復旧するデータ復旧方法であって、ユーザ領域の先頭から順にデータを読み出し、データおよびデータの記録日時情報を検出する検出ステップと、検出された記録日時情報を、比較元となる基準記録日時情報と比較し、記録日時情報が新しいときには検出されたデータを復旧データとして出力し、記録日時情報が古いときには検出されたデータを復旧しない復旧ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ記録メディアに対し、復旧対象選別機能を有したデータ復旧方法及びデータ復旧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像や音声等のデータをファイルとしてデータ記録メディアに記録する装置が一般的になっている。データ記録メディアに記録されたファイルデータは、ファイルシステムによってファイルとして管理されており、個々のファイルサイズや記録日時情報、クラスタやセクタ等のユーザ領域の使用状況等のファイル管理情報を、ファイルデータと共にデータ記録メディアに記録する。ここで、ユーザ領域とは一般に映像や音声等のファイルデータを記録する領域であり、これに対しシステム領域とは、一般にユーザ領域に記録されたファイルデータをファイルとして扱うためのファイル管理情報を記録する領域である。つまり、ユーザ領域に記録されたファイルデータがファイルとして正しく認識され、正常に展開されるためには、ファイルデータだけでなく、ファイル管理情報も正しくシステム領域に記録されている必要がある。
【0003】
そのため、このファイル管理情報が破損、または消失する事態に対して、ユーザ領域に記録されたファイルデータのみからファイルを復旧させる方法が各種提案されている。一例として、ファイルデータを複数のユニットに分割し、各ユニットにシーケンス情報と、データを記録した機器を識別する情報とを付与して記録することにより、ファイル管理情報が正常でない状況において、その情報を元に連続するユニットを特定し、ファイルデータ復旧を可能とする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−111960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のデータ復旧方法によりデータ記録メディアからデータ復旧処理を行うと、ユーザ領域に保持されたデータが全て復旧されるため、意図しないデータまで復旧されてしまうという課題があった。
【0005】
すなわち、ファイル化された映像データや音声データが記録されたデータ記録メディアにおいて、データ記録後にファイル管理情報を失ったファイルの復旧を目的として、データ記録メディアのユーザ領域に記録されたファイルの復旧処理を行うと、復旧したいファイルを記録した時点以前に、データ記録メディアに記録され、かつユーザによって消去(ファイル管理情報が消去)された、復旧を意図しないファイルまで復旧されてしまう可能性があった。このことは、複数のユーザがひとつのデータ記録メディアを共同使用するような場合には、データ復旧後に他の利用者が記録した不要なデータを削除する等のデータ取捨選択作業が必要であるという課題があった。また、データの復旧により他の利用者が記録したデータも容易に閲覧可能となるため、情報セキュリティの観点において課題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、不要なデータが復旧されず、情報セキュリティの点で優れたデータ復旧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデータ復旧方法は上記課題を解決するために、ファイル化されたデータが時系列順にユーザ領域の先頭から記録された記録メディアに対してデータを復旧するデータ復旧方法であって、ユーザ領域の先頭から順にデータを読み出し、データおよびデータの記録日時情報を検出する検出ステップと、検出された記録日時情報を、比較元となる基準記録日時情報と比較し、記録日時情報が新しいときには検出されたデータを復旧データとして出力し、記録日時情報が古いときには検出されたデータを復旧しない復旧ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のデータ復旧方法によれば、復旧したいデータの条件にあてはまらないデータについてはデータ記録メディアから復旧しないため、データ記録メディアのユーザ領域に残る過去の利用者のデータを復旧させないといった、情報セキュリティ保護機能と、不要なデータが復旧されないことから、復旧後のデータの取捨選択の作業が不要となるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明のデータ復旧装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、本発明のデータ復旧方法を実現するためのプログラムを実行することにより、コンピュータをデータ復旧装置として機能させる構成について説明する。図1において、データ記録メディア101は、データ復旧の対象となる記録媒体であり、映像信号等のデータがファイル化して記録される。データ記録メディア101としては、ハードディスク、光ディスクおよび半導体メモリ等が一般的である。データ記録メディア101は、データ復旧装置に対して着脱可能に構成されていてもよい。インタフェース102は、データ記録メディア101とI/Oバス103との間の信号伝達を実現している。CPU104は、データ復旧装置における演算および制御処理を行う。メモリ105は、データ記録メディア101が保持しているデータの復旧処理等において、一時的なデータ記憶および復旧処理により抽出したファイルデータを記憶するために使用する。CPU104は、プログラムをハードディスク等の不揮発性記録メディア(図示せず)からメモリ105に読み込んで実行するが、メモリ105のうち不揮発性メモリで構成された領域にプログラムを記憶しておいてもよい。ユーザは、入力部106を使用して復旧処理の開始および中止命令をデータ復旧装置に与えたり、復旧対象ファイルの選択条件を入力する。表示部107は、CPU104が行う復旧処理の進捗状況、復旧ファイルの再生結果、メタデータ情報および復旧対象ファイルの選択条件等を表示する。以上の構成は一般的なコンピュータの主要構成である。
【0011】
図2は、データ記録メディアにおけるデータ記録領域の状態の一例を示す図である。図2においてデータ記録メディア101のデータ記録領域は、一般的に、ファイル管理情報を保持するシステム領域201と、データが記録されるユーザ領域202とを備える。図2におけるデータ記録メディア101には、ファイル203、ファイル204およびファイル205が記録されている。すなわち、ユーザ領域202にはファイル203、ファイル204およびファイル205のデータが記録され、システム領域201にはこれらのファイルに対するファイル管理情報が記録されている。このようなデータ記録メディア101に対するフォーマット等のデータ消去処理は、データ自体をユーザ領域202に保持したまま、システム領域201上のファイル管理情報だけを消去する処理である。
【0012】
図3は、データ消去処理後のデータ記録メディアにおけるデータ記録領域の状態を示す図である。図3におけるデータ記録メディア101は、図2に示した状態からデータ消去処理を行い、ファイル管理情報のみを削除した状態となっている。本発明のデータ復旧装置は、データ記録メディア101のファイル管理情報が破損または消失しているかどうかに関わらず、ユーザ領域202のみから復旧のための情報を取得することでデータ復旧を実現する。本実施の形態においては、データ記録メディア101のファイルシステムをFAT32、ファイルの記録単位であるクラスタサイズを32KBとし、復旧対象ファイルをMXF(Material eXchange Format:SMPTE 377M参照)ファイルとする。
【0013】
ユーザ領域202には映像データのMXFファイル、音声データのMXFファイルの両方が記録されているものとし、MXFファイル中の映像データフォーマットはDIF(SMPTE 370M参照)とする。また、これらの映像データおよび音声データに対応するメタデータは、同一のUMID(Unique Material IDentifier:SMPTE 330M参照)を保持することによりMXFファイルと関連付けられたXML(Extensible Markup Language)ファイルに記録されているものとする。ここでUMIDとは、データをファイルとして記録するカメラレコーダ等において、1回の記録動作によって生成される映像データ、音声データおよびメタデータ等、対応するデータのファイル同士を関連付けるために付与されるIDである。XMLファイルには各種日時情報やUMIDの他に、記録機材やファイルのデータサイズ等、MXFファイルに関する様々なメタデータが記録されている。
【0014】
図4は、メタデータを含むXMLファイルの一例を示す図である。XMLファイルは、タグがユーザ独自に指定可能なマークアップ言語XMLにより記述されたファイルであり、様々なメタデータを階層構造に分けて保持することが可能である。日時情報の記述例として、撮影開始日時であれば<Main>の<ClipContent>の<ClipMetadata>の<Shoot>の階層下に、<StartDate>2007−04−16T06:58:28+00:00</StartDate>(グリニッジ標準時における2007年4月16日6時58分28秒)のように日時情報がタグに挟まれ構造化テキストとして記録されている。そのため、階層構造に従いタグを特定することで日時情報も取得することができる。その他にも、ビデオのデータサイズであれば、<Main>の<ClipContent>の<EssenceList>の<Video>の<VideoIndex>の階層下に<DataSize>97440000</DataSize>と記述され、記録機材名であれば<Main>の<ClipContent>の<ClipMetadata>の<Device>の階層下に<ModelName>CAMERA−A</ModelName>と階層構造化されたタグにはさまれ記述される。
【0015】
図5は、ユーザ領域に記録されたMXFファイルと、UMIDにより関連付けられたXMLファイルに記述される日時情報との関係を示した図である。なお、図5においては模式的に各XMLファイルをユーザ領域202の外側に記載したが、実際にはXMLファイルは他のファイルと同様にユーザ領域202のどこかに記録されている。復旧対象ファイルのMXFファイルヘッダおよびそれらに関連付けられたXMLファイルには同じUMIDが記述されていることから、復旧対象ファイルと同じUMIDを持つXMLファイルを検出することによりファイルの日時情報の取得を実現している。具体的には、データ記録メディア101のユーザ領域内をユーザ領域始端から順に検索していき、MXFファイルヘッダが検出されたらそのMXFファイルヘッダからUMIDを取得し、続いて再びユーザ領域始端から順にXMLファイルの検出を行う。XMLファイルが検出されたらそのXMLファイルからUMIDを取得し、ここで取得されたUMIDが、先に取得したMXFファイルヘッダのUMIDと一致するか比較する。両者が一致すれば、MXFファイルと関連付けられたXMLファイルとして特定される。
【0016】
ここで、XMLファイルから取得されたファイル日時情報は、複数のクリップ記録日時の新旧関係を判別するためにだけ用いられることから、必要とする日時情報は必ずしもXMLファイルに記述されるメタデータに限定されない。例えば、MXFファイルのファイルヘッダに含まれる日時情報や、ファイルに含まれる各フレームのデータに連続して記録されるタイムコードからでもクリップの新旧関係は判別可能である。一般的に、フォーマット直後のデータ記録メディア101にデータが記録される際、ユーザ領域の先頭からデータが順に記録されるため、ファイルに付与される日時情報もユーザ領域始端から時系列的に新しくなる。例えば、図5においてデータ記録メディア101のフォーマット後にMXFファイル501およびMXFファイル502を順次記録するとすれば、ユーザ領域始端からMXFファイルデータ501が記録され、次にMXFファイル501より後方のユーザ領域にMXFファイルデータ502が記録される。さらに続けてMXFファイル503が記録される場合、MXFファイル502より後方のユーザ領域にMXFファイルデータ503が記録される。よって、ユーザ領域後方に記録されたMXFファイルがより新しい日時情報を保持することとなる。しかし、MXFファイル501記録以前に記録されたデータ(MXFファイル504)が、フォーマットなどのファイル管理情報消去処理後も、ユーザ領域後方に上書きされることなく残っている場合、ユーザ領域後方に記録されたデータがより新しい日時情報を保持しているとは限らず、最後に記録されたデータ(MXFファイル503)の終端位置を境に時系列が過去に戻る現象が発生する。本発明では、この時系列が過去に戻る現象を検出し、ユーザ領域から過去のデータ記録メディア利用者のデータが復旧されることを防止する機能を実現する。
【0017】
なお、本実施の形態においては、各MXFファイルの記録終了後に、各MXFファイルとUMIDで関連付けられたXMLファイルが、記録されたMXFファイルに関するデータサイズや記録開始日時、記録終了日時といったメタデータを保持したファイルとして記録される。XMLファイルは、UMIDによりMXFファイルと関連付けが可能なため、記録される位置は考慮する必要がない。
【0018】
図6は、本発明において、復旧対象の選別を実現する復旧処理の手順の1つを示したフローチャートである。インタフェース102にファイル管理情報を破損または消失したデータ記録メディア101が接続された場合、ファイルの記録日時情報新旧比較演算に使用される基準日時情報Tbがどのような時間情報と比較しても小さい値となる0で初期化される(S601)。復旧処理開始の合図として、キーボードやマウスといった一般的な入力装置を使用してもよい。次に、データ記録メディア101のユーザ領域202始端から復旧対象データをクラスタ単位でメモリ105に読み込む(S602)。再びステップS602が実行される場合は、次のクラスタが読み込まれる。データ記録メディア101のファイルシステムがFAT32であれば、記録単位であるクラスタのサイズが32KBであり、ユーザ領域202がクラスタの境界から始まっているため、ユーザ領域202の始端から32KB単位でデータを読み込むことにより、クラスタ単位でデータを読み込むことが出来る。データ読み込み単位をクラスタと等しくすることにより、読み込んだデータの先頭とMXFファイルの先頭が一致し、データの始端アドレスの特定が容易となる。しかし、ファイルシステムによりクラスタサイズは異なり、ファイル先頭もファイルヘッダより特定可能なため、読み込み単位を任意のサイズで実現してもよい。
【0019】
次に、ステップS603として、読み込み処理実行結果の判定を行う。これは、ユーザ領域202に含まれる全てのデータを読み込んだ場合における復旧処理の終了判別である。図6におけるステップS602からステップS613の一連の処理ステップを繰り返し、最終的にデータ読み込み位置がメディア101のユーザ領域202終端まで到達し、さらなるユーザ領域202からの読み込み処理が不可能となった場合には、処理を終了する(S603)。ユーザ領域202からデータ読み込みが可能な場合、MXFファイルの始端を特定するため、読み込んだ復旧対象データの中にMXFファイルヘッダが存在するか判別を行う(S604)。MXFファイルヘッダの特定は読み込んだ32KBデータの先頭がMXFファイルヘッダに含まれるHeader Partition Pack Key Valueと一致するかどうかで判定可能である。
【0020】
ここで、MXFファイルの基本構造について説明する。図7は、MXFファイルの基本構造を示した図である。図7において、MXFファイルは、ファイルヘッダ701、ファイルボディ702およびファイルフッタ703を備えている。ファイルヘッダ701はヘッダパーティションパック704およびヘッダメタデータ705を備え、Header Partition Pack Key Valueはヘッダパーティションパック704に含まれる。また、XMLファイルと関連付けされるUMIDは、ファイルヘッダ701のヘッダメタデータ705に含まれている。一般的にファイル先頭にはファイルヘッダが存在し、ファイルの種類に応じた固有データパターンを保持しているため、MXFファイル以外であっても、読み込んだデータの中に特定の固有データパターンが存在するか検索することで、ファイルの先頭を特定できる。
【0021】
ステップS604において固有データパターンが検出されない場合はMXFファイルの先頭ではないと判断し、ユーザ領域から次の32KBデータを読み込むステップS602に戻る。一方、MXFファイルヘッダを検出した場合、この復旧対象データは復旧対象ファイルの先頭のデータであるので、まずMXFファイルヘッダからUMIDを取得し、同じUMIDを保持するXMLファイルを上述したように検索、特定する。そして、関連付けられたXMLファイルから日時情報を読み取り、復旧対象ファイル記録日時情報として復旧対象ファイル日時情報Taに記録する(S605)。なお、MXFファイルヘッダのサイズが大きいためにメモリ105に読み込んだ復旧対象データ中にUMIDが含まれていない場合には、順次続きのデータを読み込んでいき、UMIDを取得すればよい。
【0022】
次にステップS606において、復旧対象ファイルを復旧するかどうかの判別を行う。ステップS605で取得した復旧対象ファイル日時情報Taと基準日時情報Tbとを比較し、Taの日時情報がTbに比べ古い場合、復旧処理を終了する。これは図5に示したような、時系列が過去に戻る現象を検知したからであり、図6に示されるフローチャートにおいては、これよりユーザ領域202上でこれより後方に存在するMXFファイルは復旧されない。
【0023】
また、復旧対象ファイル日時情報Taが基準日時情報Tbに比べ新しい場合、基準日時情報Tbを復旧対象ファイル日時情報Taの値で書き換え、基準日時情報Tbを更新する(S607)。ここで、日時情報Taと基準日時情報Tbの比較は、新旧関係のみが有効であり、TaとTbの時間差は考慮しないものとする。
【0024】
次に復旧対象ファイル終端特定を目的としたデータ読み込み処理について説明する。ステップS604で特定したMXFファイルの始端アドレスから、連続的に32KB単位でユーザ領域202からデータを読み込み(S608)、ステップS608において指定した領域が読み込み可能であったか判別する(S609)。読み込みが不可能であった場合、ユーザ領域202終端のためファイル終端の検知に失敗したと判断し、データ記録メディア101からのデータ読み込みオフセットを、直前に検出されたファイル始端の次のクラスタまで戻す(S613)。これにより、ファイル終端を検出する過程で見逃したファイル始端を検出することが可能となる。続いて、ステップS602に戻り、終端の検知に失敗したファイルヘッダ後方から32KB読み込み、次のファイル先頭検出処理に戻る。
【0025】
ステップ608での読み込み処理が可能であった場合、ステップS610において読み込んだ32KBデータがファイル終端であるか判別を行う。ファイル終端を判別する方法として、復旧対象ファイル終端に記録されるファイルフッタの検出により特定する手段を用いる。具体的には、MXFファイルの終端にはMXFファイルフッタが存在するため、読み込んだ32KBデータの中にMXFファイルフッタに含まれるFooter Partition Pack Key Valueが検出されるかどうかでファイルの終端の判定を行う。もしFooter Partition Pack Key Valueが検出されれば、そのクラスタが、ファイルの終端と特定できる。一般的なファイルの構造として、ファイル始端にはファイルヘッダが、ファイル終端にはファイルフッタが付与されるため、ファイル固有のフッタデータパターンを検出することにより、MXFファイル以外のファイルの終端を検出することも可能となる。
【0026】
上記のファイルフッタを用いる方法以外にも、復旧対象ファイル終端の次に記録されるファイルヘッダの位置をもとに終端を特定する方法や、ファイルヘッダ等に付与されたデータサイズ情報をもとにファイル始端から終端までのオフセットを算出して、終端を特定する方法を用いてもよい。
【0027】
まず、復旧対象ファイル後方に記録される、次のファイルのヘッダの位置をもとに終端を特定する手段について説明する。
【0028】
複数ファイルの各々が連続したクラスタに記録されたメディアにおいて、最後に記録されたファイルを除くと、ファイル終端が記録されたクラスタの次のクラスタには、次のファイルヘッダが記録される。よって、次のファイルヘッダを検出し、論理ブロックアドレスを特定することにより、ファイル終端の論理ブロックアドレス特定が可能となる。
【0029】
次に、XMLファイルに付与されたデータサイズ情報をもとに終端を特定する方法について説明する。メタデータを保持するXMLファイルからファイルデータサイズを取得し、ファイル始端から終端までのオフセットを特定する。そのオフセットにユーザ領域からファイル先頭までのオフセットを加えることでファイル終端を特定することが可能となる。
【0030】
以上のようにしてファイル始端およびファイル終端が特定されると、データ記録メディア101からファイル始端およびファイル終端で示されるファイル記録範囲をメモリ105に読み出して、ファイルとして抽出する(S611)。その後、抽出したファイルを記録メディアに出力する(S612)。ここで、出力先として、ハードディスク等、入力先とは別の記録装置に出力してもよい。その後、ステップ613でメディアからのデータ読み込みオフセットを、直前に検出されたファイル始端の次のクラスタまで戻し、ステップS602に戻りステップS602からステップS613までのステップを繰り返す。図6に示したフローチャートにおける終了条件は、ファイルの始端検出過程においてメディアのユーザ領域202を全て読み終えるか(S603)、時系列が過去に戻る記録日時情報の古いファイルを検出するか(S606)の2通りであるが、任意のタイミングで入力部から指令を送り復旧処理を終了してもよい。
【0031】
なお、ステップ611において抽出されるファイル記録範囲に、複数のファイルデータが混在する場合、特定のファイルデータのみを抽出する必要がある。これはデータ記録装置がデータ記録メディア101に対して同時に複数のファイルデータを記録する際に発生する記録様態である。具体的には、映像データと音声データを別ファイルで記録するカメラレコーダにおいては、ファイルデータが混在して記録される。この場合の抽出方法について、図8を用いて説明する。図8は、ユーザ領域の連続領域中に複数のファイルデータが混在した状態を示す図である。図8において、ファイル801、ファイル802はデータ始端からデータ終端まで連続した一つの領域に記録されているのに対し、ファイル803はその記録領域中に他のファイルデータ804およびファイル805が混在している。このようなデータの混在に対し、ステップS611ではクラスタ単位でデータ判別を行い、復旧対象ファイルのデータのみを抽出する。具体的には、映像データフォーマットとして使用されるDIFには、80バイト毎に、シーケンス番号を含んだ3バイトのIDが付与されているため、連続したシーケンス番号を含んだIDが80バイト毎に検出されるかどうかでクラスタ単位のDIFデータを判別できる。仮に、復旧対象ファイルとは異なるデータが混在している場合、連続したシーケンス番号を含むIDが検出されないため、非対象データとして分別する。但し、映像データと音声データのみが混在しているという条件であれば、映像データ(DIF)を判別し、残りのデータを音声データとすることで、残りの音声データも抽出することが可能となる。このように、記録データには決められた間隔でデータにIDが付与されているものがあり、それらが決められた間隔でクラスタから検出されるかどうかを判別することにより、そのクラスタが復旧対象ファイルのデータか判別することができる。
【0032】
図9は、復旧処理の他の手順を示したフローチャートである。これは、図6の復旧処理におけるステップS606がステップS901に変更されたものであり、他は図6と同様であるので説明は省略する。復旧対象ファイル日時情報Taと基準日時情報Tbとを比較し、Taの記録日時情報がTbに比べ古い場合、ステップS606においては復旧処理を終了していたが、S901においては復旧処理を終了せずに、ステップS602に戻る。これにより、復旧対象ファイル日時情報Taが古いファイルの復旧処理を飛ばし、次のMXFファイルの先頭検出処理に移行するため、データ記録メディアのユーザ領域すべてを検索することが可能となり、ユーザ領域後方に記録された記録日時情報の新しいMXFファイルも復旧対象となる。
【0033】
図10は、復旧処理のさらに他の手順を示したフローチャートである。これは、図9の復旧処理にステップS1001が加えられたものであり、他は図9と同様であるので説明は省略する。ステップS1001では、復旧対象ファイルがユーザ領域202において最も記録アドレスが小さいファイル、すなわち先頭ファイルであるかどうかを判別する。この判別は、ユーザ領域202を始端から検索し、最初にファイル始端を検出したファイルであれば先頭ファイルとみなすことで実現できる。ステップS1001において現在の復旧対象ファイルが先頭ファイルであると判別したときにはステップS607に進み、それ以外はステップS607を飛ばしてその次のステップS608へと進む。図6および図9のフローチャートにおいては、常に基準日時比較情報Tbを直前に検出した復旧対象ファイル日時情報Taに更新するステップS607が実行されていたのと異なり、ユーザ領域先頭に記録された先頭ファイルの日時情報でのみ基準日時情報Tbが更新される。これにより、データ記録メディア101のフォーマット後、最初に記録したデータより新しいデータのみ復旧されることを実現する。
【0034】
また、復旧対象の選択機能の手段として、日時情報以外にも、XMLファイルからコーデック、機種名、場所、記録者などメタデータに付与される各種設定情報を読み込み、ユーザ領域先頭に記録されたファイルと同じ設定のファイルを復旧対象とする方法も有効である。図11は、ユーザ領域におけるデータの記録位置と設定情報の関係を示す図である。図11において領域先頭に記録されたMXFファイル501と、その設定情報である記録機材CAMERA−Aと同じ設定情報を保持するMXFファイル503の二つのみが復旧対象となる方法である。図12は、記録日時情報を除く各種設定条件から復旧対象ファイルの選択を実行する復旧処理の手順を示したフローチャートである。ステップS1201〜S1204以外は図10と同様であるので説明は省略する。ステップS1201において、基準設定情報Sbを初期化する。ステップS1202において、ユーザ領域先頭に記録されたMXFファイルの設定情報を復旧対象ファイル設定情報Saに保持する。ステップS1203において、ユーザ領域先頭ファイルの設定情報Saを基準設定情報Sbにコピーする。ステップS1203はユーザ領域先頭に記録されたMXFファイル読み込み時しか実行されないため、Sbはこの復旧処理が終了するまで、この先頭ファイルの設定情報を保持することとなる。次にステップS1204において、復旧対象ファイルの設定情報Saが基準設定情報Sbと等しいMXFファイルのみ復旧処理が実行されるため、他のMXFファイルは復旧されない。復旧したいMXFファイルの設定が複数ある場合や、複数の組み合わせにより構成される場合等も、基準設定情報Sbを複数用意し、ファイルに付与された設定情報とそれぞれ比較することにより選択可能である。また、ユーザ領域先頭に記録されたファイルと同じ設定でなくとも、復旧を目的とするファイルの設定条件が既知である場合、設定情報Sbをあらかじめ設定することにより、その設定条件と同一の設定条件を保持するファイルのみを復旧する方法や、同時に記録日時情報による復旧対象ファイルの選択処理を併用する方法も有効である。また、復旧対象となるMXFファイルに関連付けられたXMLファイルから、各種メタデータ情報を表示部107に表示し、その情報をもとに、ユーザが復旧するかしないか判断して入力部106に入力し、入力部から復旧指示信号が出力されれば検出したデータの復旧を行い、非復旧指示信号が出力されればデータの復旧を行わないようにする方法も有効である。
【0035】
図13は、復旧処理のさらに他の手順を示したフローチャートである。これは、図9の復旧処理におけるステップS611のデータ抽出、ステップS612のファイル出力を、データ復旧処理の最後に移行したものであり、復旧対象データの復旧情報をステップS1301でメモリに保持しておき、全ての復旧対象データの復旧情報を取得した後に、復旧対象データの生成を行う処理方式であり、図6、図9、図10、図12の全ての手順において採用することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では復旧するデータを映像データからなるMXFファイルおよび音声データからなるMXFファイルとし、日時情報の取得先をXMLファイルとしたが、日時情報やタイムコードを保持、または保持したメタデータと関連付けられたファイルであれば、それらを復旧対象データとしてもよい。
【0037】
一般的に、ファイル記録された映像データや音声データには記録時間情報や記録装置名やコーデック名などを保持したヘッダやメタデータがIDなどで関連付けられて共に記録される。新たにデータを記録する際、ファイルシステムの記録規則に従い日時情報の新しいファイルデータがデータ記録メディアに配置される。よって、データ記録メディアのユーザ領域から検出されるメタデータからデータ記録時間情報を読み取り、ファイルシステムの配置規則に従い時系列的に日時情報が新しくなる映像データや音声データのみを復旧し、日時情報が過去に戻るファイルデータを検出した地点で復旧処理を中断、もしくは次のファイルデータ検出に移行することで、復旧を目的としたファイルデータの記録以前に、データ記録メディアに記録され、ファイル管理情報が消去されたファイルデータが、記録時間情報が時系列的に古くなる地点から復旧されないため、意図しないデータ復旧の防止が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかるデータ復旧方法及びデータ復旧装置は、記録媒体のファイル管理データに破損や消失が発生し、ユーザ領域に記録されたデータからファイルを復旧する際、ユーザ領域に記録データが保持されている過去のデータ記録メディア利用者のデータ復旧防止が可能なため、特に、業務用ビデオカメラレコーダ等の不特定多数で使用するデータ記録メディアからファイルを復旧する際にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明が適用されるデータ復旧装置のシステム構成を示す図
【図2】データ記録メディアにおけるデータ記録領域の構成を示す図
【図3】ファイル管理情報を消失したメディアのデータ記録領域の構成を示す図
【図4】XMLファイルの一例を示す図
【図5】ユーザ領域におけるMXFファイルの記録位置とXMLファイルに記録された日時情報の関係を示す図
【図6】本発明の復旧対象を選別処理する1手順を示したフローチャート
【図7】MXFファイルの基本構造を示す図
【図8】ユーザ領域における複数のファイルが混在したデータを示す図
【図9】本発明の復旧対象を選別処理する1手順を示したフローチャート
【図10】本発明の復旧対象を選別処理する1手順を示したフローチャート
【図11】ユーザ領域におけるMXFファイルの記録位置とXMLファイルに記録された設定情報の関係を示す図
【図12】本発明の復旧対象を選別処理する1手順を示したフローチャート
【図13】本発明の復旧対象を選別処理する1手順を示したフローチャート
【符号の説明】
【0040】
101 データ記録メディア
102 インタフェース
103 I/Oバス
104 CPU
105 メモリ
106 入力部
107 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイル化されたデータが時系列順にユーザ領域の先頭から記録された記録メディアに対して前記データを復旧するデータ復旧方法であって、
前記ユーザ領域の先頭から順にデータを読み出し、前記データおよび前記データの記録日時情報を検出する検出ステップと、
検出された前記記録日時情報を、比較元となる基準記録日時情報と比較し、前記記録日時情報が新しいときには検出された前記データを復旧データとして出力し、前記記録日時情報が古いときには検出された前記データを復旧しない復旧ステップと、
を備えたデータ復旧方法。
【請求項2】
前記基準記録日時情報は、前記検出ステップにて直前に検出したデータに対応する記録日時情報である、請求項1記載のデータ復旧方法。
【請求項3】
前記基準記録日時情報は、前記ユーザ領域から最初に検出されたデータに対応する記録日時情報である、請求項1記載のデータ復旧方法。
【請求項4】
ファイル化されたデータが時系列順にユーザ領域の先頭から記録された記録メディアに対して前記データを復旧するデータ復旧方法であって、
前記ユーザ領域の先頭から順にデータを読み出し、前記データおよび前記データの設定情報を検出する検出ステップと、
検出された前記設定情報を、比較元となる基準設定情報と比較し、前記設定情報が等しいときには検出された前記データを復旧データとして出力し、前記設定情報が等しくないときには検出された前記データを復旧しない復旧ステップと、を備えたデータ復旧方法。
【請求項5】
前記基準設定情報は、前記検出ステップにて直前に検出したデータに対応する設定情報である、請求項4記載のデータ復旧方法。
【請求項6】
復旧を意図するデータが保持する設定情報を前記基準設定情報として設定する設定ステップをさらに備えた、請求項4記載のデータ復旧方法。
【請求項7】
ファイル化されたデータが時系列順にユーザ領域の先頭から記録された記録メディアに対して前記データを復旧するデータ復旧方法であって、
前記ユーザ領域の先頭から順にデータを読み出し、前記データおよび前記データの設定情報を検出する検出ステップと、
検出された前記設定情報を表示部に表示する表示ステップと、
入力部が、ユーザの入力に応じて修復指示信号および非修復指示信号のいずれかを出力する入力ステップと、
前記入力部から復旧指示信号が出力されれば検出された前記データの復旧を行い、非復旧指示信号が出力されれば検出された前記データの復旧を行わない復旧ステップと、を備えたデータ復旧方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のデータ復旧方法における各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8記載のプログラムを記憶するメモリと、
前記プログラムを実行するCPUと、
前記記録メディアを接続するためのインタフェースと、
を備えたデータ復旧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−66941(P2010−66941A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231717(P2008−231717)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】