説明

パネル開閉装置

【課題】装置本体とパネルとの間に指などが挟み込まれた場合でも、これを直ぐに検知して怪我や装置の故障を防止することのできる簡易構造のパネル開閉装置を提供する。
【解決手段】装置本体1の部位を遮蔽するパネル2と、該パネル2を装置本体1の部位が露出される開放位置と装置本体1の部位が遮蔽される閉鎖位置との間で移動させるパネル駆動部10と、パネル駆動部10の駆動によりその動作速度に応じたパルスを出力するパルスエンコーダ20と、パネル駆動部10の駆動によりパネル2が閉鎖位置の方向に移動されている途中でパルスエンコーダ20から出力されるパルスの幅又は間隔が規定値を超えたときパネル駆動部10の動作方向を逆向きに変換する制御部と、を備えたパネル開閉装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車載用電子機器に用いられる電動式のパネル開閉装置に係わり、特にパネルの閉鎖時に装置本体との間に指などが挟み込まれることによる怪我や装置の故障を防止できるようにしたパネル開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用電子機器として、CDプレーヤやDVDプレーヤといったディスク駆動装置ほか、ラジオ受信機、及びラジオ受信機と一体構造のカセットテープデッキなどが一般に良く知られているが、近年では上記のような機器を装置本体としてその前面に開閉自在なパネルを設け、その開閉動作により装置本体の前面を必要に応じて遮蔽したり露出させたりすることのできる装置が普及している。
【0003】
その種の装置として、装置本体の前面に回動可能なパネルと該パネルを閉鎖位置に保持するロック機構とを設け、ロック機構によるパネルのロックを解除したときにパネルがバネの弾力により開放するようにしたものが知られる(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるようなパネル開閉装置では、パネルの開放がバネ力により自動的に行われるものの、パネルの閉鎖は手動により行われるので高級感に欠け、しかもパネルを閉鎖方向に勢いよく押圧した場合、装置本体が強い衝撃力を受けて故障したり、子供が指を挟み込まれるなどして負傷する虞がある。
【0005】
尚、電動式にしてパネルの開閉動作が自動的に行われるようにしたパネル開閉装置も実用化されているが、係る装置でも装置本体と閉鎖時のパネルとの間に指などを挟み込んでしまう危険性があることは勿論、指や異物が挟み込まれた場合にはパネル駆動部に過負荷が作用して装置の故障原因となる。
【0006】
上記のような問題に関連し、車両用電動スライドドアを開閉させるモータの制御を行うべく、モータの軸の回転角に応じた大きさの電圧を出力するポテンショメータを用い、その出力電圧を所定時間毎にA/D変換器によりデジタル変換し、これに基づき上記電圧の単位時間当たりの変位量を演算し、算出された変位量が閾値以下のときにモータに対して停止信号が送信されるようにした安全装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
そして、係る車両用電動スライドドアの安全装置によれば、スライドドアに指などが挟み込まれた場合にモータが停止されることから安全性が向上し、しかもモータに作用する過負荷を防止してその寿命を延長できるなどの効果が得られる。
【0008】
【特許文献1】特開平9−246735号公報(発明の実施の形態)
【0009】
【特許文献2】特開2004−19199号公報(発明の実施の形態)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のような車両用電動スライドドアの安全装置は、ポテンショメータの出力電圧をA/D変換するので、アナログ入力の誤差による影響を受けてスライドドアの移動中にモータが不用意に停止してしまう虞があり、しかもデジタル変換された信号に基づきその都度演算を実行して閾値との比較を行うことから制御回路が複雑になる。
【0011】
又、モータの停止動作はポテンショメータから出力される電圧のサンプリング時間間隔に依存するので、サンプリング時間間隔が大きければスライドドアに指が挟まれた場合でもモータの即時停止が行えず、その応答性を上げるためにサンプリング時間間隔を小さくすると処理能力の高い回路構成を要求されてコスト高を招く。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は装置本体と開閉動作が自動で行われるパネルとの間に指などが挟み込まれた場合でも、これを直ぐに検知して怪我や装置の故障を防止することのできる簡易構造のパネル開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るパネル開閉装置は、装置本体の部位を遮蔽するパネルと、該パネルを前記装置本体の部位が露出される開放位置と前記装置本体の部位が遮蔽される閉鎖位置との間で移動させるパネル駆動部と、該パネル駆動部の駆動によりその動作速度に応じたパルスを出力するパルス出力手段と、前記パネル駆動部の駆動によりパネルが閉鎖位置の方向に移動されている途中で前記パルス出力手段から出力されるパルスの幅又は間隔が規定値を超えたとき前記パネル駆動部の動作方向を逆向きに変換する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
又、上記装置本体が車両のダッシュボード内に固定される車載用電子機器であり、パネルにより遮蔽される部位が車室内に向けられる前面部とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るパネル開閉装置によれば、パネル駆動部の動作速度に応じたパルスを出力するパルス出力手段を備え、その出力パルスの幅又は間隔に基づいてパネル駆動部の制御を行うことから、複雑な制御回路を構成せずして移動中のパネルに負荷が作用したことを検知でき、パネルの閉鎖時に装置本体との間に指を挟み込んでしまった場合でも、これを直ぐに検知してパネルを開放することができる。従って、安全性が高く、過負荷による装置の故障も防止できる。
【0016】
又、装置本体が車載用電子機器とされることから、運転中にパネルの背後に指を挟み込まれることに起因して交通事故を引き起こすこともなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係るパネル開閉装置を示した斜視概略図である。図1において、1は装置本体であり、その前面には回動式のパネル2が設けられる。
【0018】
装置本体1は、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、DVDレコーダ、ラジオ受信機、又はラジオ受信機一体型のカセットテープデッキなどであり、その前面はベゼル部3を有して該ベゼル部3の内側がパネル2により遮蔽される構成とされる。
【0019】
本例において、パネル2は、液晶セルから成る表示部4を方形状の枠体5により保持して構成される液晶ディスプレイであり、表示部4の両側には開閉釦6を含む各種の操作スイッチ類が配される。
【0020】
図2は、係るパネル開閉装置の使用態様を示す。図2において、7は車内センターコンソールを構成するダッシュボードであり、その内部には車載用とされる装置本体1が車室側にパネル2を有する前面を向けて固定される。
【0021】
ここで、図1はパネル2が閉鎖位置にあって装置本体1の前面部を遮蔽している状態を示しているが、この状態でパネル2に設けられる開閉釦6を押圧操作することにより、パネル2が図2の想像線で示されるように装置本体1の前方に倒伏し、これによりパネル2で遮蔽されていた装置本体の前面部が露出するようになっている。尚、図2の想像線はパネル2の開放位置を示している。
【0022】
図2及び図3において、10は装置本体1内に設けられてパネル2を開放位置と閉鎖位置との間で移動させるパネル駆動部であり、係るパネル駆動部10はロータ軸を有する駆動源11(電気モータ)と、その駆動力をパネル2に伝達する伝動機構12とで構成される。
【0023】
本例において、伝動機構12は駆動源11のロータ軸に固着されるウォーム13、そのウォームと噛み合うウォームホイール部14Aを有する二段ギヤ14、二段ギヤの大径歯車部14Bと噛み合うピニオン15、ピニオンと噛み合うラック16、ラックと平行に設けられるスライド17、及びラックとスライドの各先端に接続するリンク18を有し、該リンク18の先端が移動支点としてパネル2の下部両側面に設けられる支点部2Aと結合される構成としてある。尚、ラック16とスライド17は連結されて互いに長さ方向に摺動可能に支持される。又、パネル2の上部両側面にはガイドピン2Bが突設され、そのガイドピン2Bが装置本体1の前面ベゼル部3の左右内側面に形成されるガイド溝8内に摺動自在にして嵌め込まれている。
【0024】
これにより、駆動源11を正逆に駆動すると、ロータ軸の回転駆動力がウォーム13、二段ギヤ14、ピニオン15、ラック16、及びリンク17を介してパネルの支点部2Aを装置本体1の前後方向に移動させる往復直線運動に変換され、しかしてガイド溝8に沿ってガイドピン2Bの上下移動が行われつつパネル2が図2の実線で示される閉鎖位置と想像線で示される開放位置との間で移動されるようになっている。
【0025】
尚、パネル2は開放位置において、ガイドピン2B側よりも支点部2A側が前方に押し出されて稍傾斜した態で倒伏されるのであり、このとき装置本体1の露出領域はベゼル部3内の上方部分とされるが、閉鎖位置ではその露出領域を含めてベゼル部3内の全領域が遮蔽される。又、露出領域にはCDなどのディスク、又はカセットテープなどを出し入れする図示せぬ開口部が形成される。
【0026】
一方、図2のように、装置本体1内にはパネル駆動部10の駆動によりその動作速度に応じたパルスを出力するパルス出力手段として、パルスエンコーダ20が設けられる。図4から明らかなように、係るパルスエンコーダ20は、ラック16と噛み合うギヤ21の軸部に固着した回転格子22と、回転格子22を挟んで該回転格子の回転軸方向に相対向して設けた光源23及び受光素子24(フォトダイオード)とを具備して構成されるもので、回転格子22には光源23から発せられた光を透過させるための図示せぬスリットが回転方向に等間隔で形成される。
【0027】
これによれば、パネル駆動部10の駆動によりその動作量に応じた数のパルスを出力し、係るパネルの幅(パルス幅)及び間隔(パルス間隔)がパネル駆動部10の動作速度に対応して変化する。つまり、パネル駆動部10の動作速度が上がればパルス幅及びパルス間隔は小さくなり、逆にパルス駆動部10の動作速度が下がればパルス幅及びパルス間隔は大きくなる。
【0028】
尚、パネル駆動部10は通常、一定の速度で駆動されるのでパルスエンコーダ20から出力されるパルスの幅W及び間隔Sは図5(A)のように一定であるが、パネル2に負荷が作用すれば、パネル駆動部10の動作速度が低下するので図5(B)のようにパルス幅W及びパルス間隔Sは大きくなる。
【0029】
従って、パルスエンコーダ20から出力されるパルスに基づき、そのパルス幅W又はパルス間隔Sが大きくなった場合には、パネル2の移動を阻害するような負荷が発生したものと判断することができる。そこで、本発明はパネル駆動部10の駆動によりパネル2が閉鎖位置の方向に移動されている途中でパルス幅W又はパルス間隔Sが規定値を超えたとき、パネル駆動部10の動作方向を逆向きに変換するようにしている。
【0030】
これによれば、閉鎖中のパネル2と装置本体1との間に指を挟み込んでしまった場合でも大事に至らず、しかもパネル駆動部10が過負荷により故障することも防止できる。
【0031】
尚、指を挟み込む危険性は主としてパネルの閉鎖動作に際して発生するが、パネル2が閉鎖位置の方向に移動している途中だけでなく、パネル2が開放位置の方向に移動している途中でも、パルスエンコーダ20から出力されるパルスに基づきその幅W又は間隔Sが規定値を超えたとき、パネル駆動部10を停止させるかその動作方向を逆向きに変換することが好ましく、これにより開放中のパネル2を故意に制止させようとした場合でもパネル駆動部10に対する過負荷を防止することができる。
【0032】
尚、パネル駆動部10の動作速度は外気温などでも少なからず変動するので、パネル駆動部10を停止乃至は逆動作させるための規定値は、パネル駆動部10の動作速度が無負荷状態でばらつく範囲の上限よりも稍大きく設定することが好ましい。
【0033】
又、本例において、パルスエンコーダ20はラック16に接続されるが、その回転格子22を駆動源11のロータ軸、又は二段ギヤ14かピニオン15の軸に取り付けるようにしてもよい。
【0034】
次に、図6はパネル駆動部を制御する制御系のブロック図を示す。30はCPUや記憶素子などを具備して構成される制御部(制御手段)であり、この制御部30にはモータドライバ31を介してパネル駆動部の駆動源11が接続される。又、パネル駆動部10の動作量、動作速度はパルスとしてパルスエンコーダ20により検出されるが、係るパルスエンコーダ20は制御部30に接続されて該パルスエンコーダ20による出力パルスが制御部30に入力される構成としてある。
【0035】
そして、制御部30は上記の規定値を格納する記憶部を有し、その規定値とパルスエンコーダ20から出力されるパルスの幅W又は間隔Sを逐次比較し、そのパルス幅W又はパルス間隔Sが規定値を超えた場合、パネル2の閉鎖中には駆動源11に対して逆転信号又は停止信号と逆転信号を送信し、パネル2の開放中には駆動源11に対して停止信号又は停止信号と逆転信号を送信する。
【0036】
このため、パネル2の閉鎖中に装置本体1との間に指を挟み込んだ場合でも、パネル2の動作方向が開放方向に変換して指の抜き取りが可能となる。尚、本例においてパネル駆動部10の逆向きの動作は制御部30に設けられるタイマーにより所定時間だけ行われるが、これをパルスエンコーダ20から出力されるパルスの数に基づいて所定のパルス数だけ逆動作させるようにしてもよい。
【0037】
次に、以上のように構成されるパネル開閉装置の動作について説明する。図7はパネルの閉鎖動作を示すフローチャートである。先ず、パネル2が開放位置にあって開閉釦6を押圧操作すると、パネル駆動部10を構成する駆動源11が一方向に駆動し、これによってパネル2が閉鎖位置に向かって移動を開始する。このとき、制御部30はパルスエンコーダ20から出力されるパルスの間隔S(又はパルス幅W)と予め設定された規定値との比較を行い、パネル2が閉鎖位置に到達するまでパルス間隔Sが規定値以下であれば、パネル2が閉鎖位置に到達した時点で駆動源11が停止される。
【0038】
尚、パネル2が閉鎖位置(及び開放位置)に到達したか否かは図示せぬリミットスイッチにより検知されるが、これをパルスエンコーダ20から出力されるパルスを計数することにより検知することもできる。
【0039】
一方、パネル2が閉鎖位置に向かって移動している途中で、パルス間隔Sが規定値を超えた場合には、制御部30からパネル駆動部の駆動源11に対して停止信号と逆転信号が送信される。これによりパネル駆動部(駆動源11)が停止され、その直後にパネル駆動部10の逆転動作が行われてパネル2が開放位置に向かう方向に移動される。この動作は上記タイマーによる計時に基づいて所定時間だけ行われ、所定時間経過後にはパネル駆動部(駆動源11)が停止されて待機状態となるが、タイマーを用いずにパネル2を開放位置に復帰させるようにしてもよい。尚、待機状態で開閉釦6を押圧操作した場合パネル駆動部10は、パネル2が閉鎖位置の方向に移動するよう駆動される。
【0040】
以上、本発明について説明したが、パルス出力手段は上記のようなパルスエンコーダに限らず、例えば回転格子に代えて長さ方向に等間隔でスリットが形成される移動スケールを用い、これをラックに取り付け、その移動スケールの移動方向両側に光源と受光素子を対向配置するようにしてもよい。又、パネルはその一端縁を装置本体にヒンジで結合する態様でもよく、その配置場所も装置本体の前面部に限らず、家屋内などに据え置かれる装置本体にしてその上面部にパネルを配するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るパネル開閉装置を示す斜視図
【図2】パネルの移動状態を示す説明図
【図3】パネル駆動部の構成例を示す平面概略図
【図4】パルス出力手段の構成例を示す説明図
【図5】パルス変化を示す説明図
【図6】パネル駆動部の制御系を示すブロック図
【図7】パネルの閉鎖時の処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0042】
1 装置本体
2 パネル
6 開閉釦
10 パネル駆動部
11 駆動源
16 ラック
20 パルスエンコーダ(パルス出力手段)
30 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の部位を遮蔽するパネルと、該パネルを前記装置本体の部位が露出される開放位置と前記装置本体の部位が遮蔽される閉鎖位置との間で移動させるパネル駆動部と、該パネル駆動部の駆動によりその動作速度に応じたパルスを出力するパルス出力手段と、前記パネル駆動部の駆動によりパネルが閉鎖位置の方向に移動されている途中で前記パルス出力手段から出力されるパルスの幅又は間隔が規定値を超えたとき前記パネル駆動部の動作方向を逆向きに変換する制御手段とを備えたパネル開閉装置。
【請求項2】
装置本体が車両のダッシュボード内に固定される車載用電子機器であり、パネルにより遮蔽される部位が車室内に向けられる前面部とされる請求項1記載のパネル開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−156480(P2006−156480A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340919(P2004−340919)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(391043815)サンヨー・オートメディア・センディリアン・バハド (36)
【住所又は居所原語表記】Plot 10,Phase 4,Prai Industrial Estate,13600 Prai,Penag.Malasya
【Fターム(参考)】